Q&A

ここでは,障がい学生支援に関わる現場スタッフの方や,受講生の中に障がい学生がいる科目担当者から受けた質問に対する回答集を紹介しています.基本的には同志社大学内で実施している対応の例が主となっております点をご留意ください.

Q:同志社大学では,全盲学生に対して,どのような合理的配慮を提供していますか.

大きく分けると,(1)入試での配慮,(2)授業での配慮,(3)授業以外での配慮があります.

(1)入試での配慮としては,試験問題の点訳,点字答案の墨訳を行っています.試験は別室受験,時間延長で実施しています.現在のところ,文系・全学部日程のみで対応しています.

(2)授業での配慮としては,①授業資料や試験問題のテキストデータ化・点訳,②サポート学生による読み上げ・説明,③サポート学生による代筆,④試験についての別室受験,時間延長,⑤点字で入力された文書(答案用紙など)の墨訳を行っています.

(3)授業以外での配慮としては,①キャンパス内(今出川~新町~烏丸~室町キャンパス間も含む)移動の補助,②大学配布文書(登録資料等)のテキストデータ化・点訳,③図書館での対面朗読,④その他(登録のサポート,掲示板の情報等についての連絡)を行っています.

Q:テキストデータ化とはなんですか.点訳とは違うのですか.

Wordなどで作成した文書をテキストデータに変換することです.テキストデータになった情報を,「音声点字携帯情報端末」(ブレイルメモ,ブレイルセンスなど)に入れると,情報を自動的に,点字や音声に変換して出力することができます(オレンジで囲んだ部分が点字表示部).本学では,語学テキストや試験問題などを除いては,原則として,テキストデータの提供を行っています.テキストデータ化の詳細はこちら.

Q:見だしのマスを空けないといけないのはなぜですか.

一般的な書式では,見だしの項目が小さくなるごとに,字下げを行いますが,点字用のテキストデータの場合は,その逆になります(見出し以外は,基本的に,左詰めです).ルールに則って見だしの字下げを行っておくと,視覚障がい学生が資料の構成を把握しやすくなります.

Q:Wordで作成したレジュメを自分(科目担当者)でテキストデータ化しようと思います.どのようなルールがありますか.                                             

同志社大学では,テキスト化の注意点として科目担当教員に以下のような注意点を示しています.

【テキストデータ化の際の注意点】

1. テキストデータ化の際,図・表・写真が消えますので,できるだけ以下のように補足してください.

(1)図,写真,表は「図:あり」「写真:あり」「表:あり」と表記いただき,「●●をしようとしている写真」など口頭等で説明してください.

(2)図に伴い,図に入れたテキストも消えますので,必要があれば追加してください.

(3)表をテキスト化する場合は,列データを横に並べるのではなく,セル毎に縦に並べる形にしてください(下記参照).

 

2. 下線部・強調文字は,テキストデータにすると消えますので,下線が引かれていることや強調文字であることを口頭等で説明してください.

 

3. 読み上げソフトによる誤読を防ぐため,ひとかたまりの文には,改行を入れないでください.なお,誤読しやすい専門用語については,用語の後ろに(よみがな)を入れるか,口頭で注意してください.

 

4.レジュメのページ数と点字のページ数は異なりますので,左上に実際のページ番号を記載してください.例:P1

 

5. 1~5のほか,もし可能であれば,以下のような加工をしていただくと,検索がしやすくなります.

(1)大項目は半角6マス,中項目は半角4マス,小項目は半角2マスあけてください.

(2)見出しに使用する数字は,「 Ⅰ 」→「 1. 」→「(1)または① 」の順にしてください.

 

以上は,同志社大学でお願いしている基本ルールです.本人からの要望,相談に基づき,柔軟に読みやすい方法へ変更することもできます.

 

【参考例:括弧の意味合い】( ):穴あき問題、括弧が必要な時    「 」:会話、強調するとき『 』:下線箇所、書名など        【 】 タイトルなど[ ] :件名など※〈 〉《 》はほとんど使用しない

Q:テキストデータ化の基本ルールは必ず守らないといけませんか.

「音声点字携帯情報端末」では,基本的に,文章の冒頭から順に,「カナ」情報に変換してデータが出力されます(点字も音声も同じ).しかし,講義を聴きながらレジュメを参照する場合,必ずしも,レジュメの最初から順に説明が行われるわけではありません.「2頁の2(2)にあるとおり・・・」などと,話が飛ぶことがあります.この場合,口頭で「2頁の2(2)」と明示していただけると,「音声点字携帯情報端末」の検索機能を使うことにより,該当箇所に飛ぶことができますが,その際,統一の書式が用いられ,ぺージ番号が入っていると,より容易,迅速,かつ,確実に該当箇所を探し出すことができます.もちろん,こうした書式がとられていなくても,時間や労力さえかければ全く読めないわけではないためのですが,学生の便宜のためできるだけ守っていただけると障がい学生が情報にアクセスしやすくなります.

Q:点字や音声への変換は自動で行われるため,誤変換されることが少なくないと聞きました.誤変換を防ぐために,他に気をつけておくべきことはありますか.  

元々の文章をtxt.形式で保存すると,文の途中で改行されたり,特殊な文字が「?」で表示されたり,図が入っていた箇所などに無駄なスペースが入ったりします.1つの単語や1つの文が改行により分断されたり,必要のないスペースがあると,「音声点字携帯情報端末」による点字や音声への変換が円滑に行うことができませんので,改行やスペースを削除する作業が必要です.

専門用語も誤変換される可能性がありますので,「約定(やくじょう)」「抵当直流(ていとうじきながれ)」とカッコ書きでふりがなをつけていただくと,正しく情報が伝わります.

Q:テキストファイル形式で保存する方法がわかりません.

Word文書は,「名前をつけて保存」→「書式なし(*.txt)」を選択→保存でテキストデータになります.(「リッチテキスト形式(RTF)(*.rtf)」では読み取れませんので,ご注意ください.)

 

保存をクリックすると,Wordでは,次のような画面が出ます.「日本語(シフトJIS)」が選択されていることを確認して,そのまま,OKとしてください.Word以外のソフトを使用されている場合は「日本語(シフトJIS)」を選択してください.

 

Q:テキストデータ化すると,テキストボックスに入っていた文章が消えてしまいました.どうしたらよいですか.

テキストデータ化すると,図や画像などが消えてしまいます.テキストボックスも消えてしまいますので,その中に入っていた文章も消えます.重要な情報であれば,その部分は,元の文書からコピーし,テキストデータに貼り付ける必要があります.下線や強調文字も他の文字と同じ扱いになりますので,下線がひかれていることや強調文字で強調されていることは,必要に応じて,口頭で説明してください.

Q:ExcelやPowerPointでも,テキストデータ化できますか.

Excelは,.txt形式で保存することができます.ただし,ファイルによっては.txt形式に変換できないことがありますし(セルの結合などの加工がされている場合),単純なテキストデータ化だけでは,内容が全く伝わらない場合が少なくありません.

文字情報については,コピー&ペーストで,テキストデータ化することができますが,表については,図の扱いと同じ問題があります(図のテキスト化についてはこちら).PowerPointでは,直接,txt.形式で保存することができませんので,1シートずつ,コピー&ペーストで,テキストデータ化することになります(図表が含まれている場合については,こちら).

アニメーションが入っている場合,文字が出てくる順序が,テキストデータ化したものとずれることがあります.「音声点字携帯情報端末」では,基本的に,文章の冒頭から順に,「カナ」情報に変換してデータが出力される(点字も音声も同じ)からです.

全盲学生が混乱しないためには,データをアニメーションの順番に並び替えていただくことが望ましいのですが,それはかなりの時間と労力を要します.並び替えが難しい場合には,口頭の指示などで対応していただければと思います.

Q:テキストデータ化された情報が点字や音声に変換されるということは,漢字の情報は伝えられないということなのでしょうか.       

一般に,点字によって,カナや数字,アルファベットは表現できますが,漢字は表現できません.ですから,紙に打ちだされた点字では,漢字の情報を伝えることができません.

しかし,「音声点字携帯情報端末」では,元データに含まれた漢字の情報を伝えることができます.キーを押せば,「音声」の「音」は「音楽の音」であることを確認できるしくみになっています.

パソコンでも,音声読み上げソフトを使えば,音声によって「変換」の状況をつかむことができます.学生がどの程度,そうした操作に慣れているかによりますが,音声ガイドを用いて,全盲の学生も,パソコンで,漢字かな混じりの文章を入力することができます.

Q:テキストデータ化すると,図が消えてしまいます.レジュメには図表がたくさん含まれているのですが,どうすればよいですか.             

まずは,全盲学生が受講するうえで,図表が有用かどうかをお考えください.図表は,しばしば,口頭や文章での説明に加え,それをより分かりやすくするために用いられます.視覚に障がいのない学生にとっては理解を促進するための図表が,視覚障がいの学生にとっては,かえって理解を阻害することになってしまいかねません.

その場合は,図を削除したうえで,テキストデータ化することになります.ただし,講義で図に言及することがある場合,削除部分に「図あり」または「図あり:●●に関する図」などと記載して,「他の学生のレジュメには,図が入っている」という情報を伝えておくほうが,混乱を与えません.

 

Q:関係図などの専門的な図を読み解くことも学生に身につけてもらいたいスキルなのですが,視覚障がいの学生にはどのようにして対応すればよいでしょうか.  

たとえば,法学部の実定法科目では,事実関係を整理するための当事者関係図がよく使われます.事実関係を口頭や文章で説明するのであれば,当事者関係図も不要です.

他方,概念などの相互関係を整理するための図については,単語をカテゴリーごとにまとめて示しておくと,より理解しやすくなるのではないかと思います.

 

Q:どのような場合に図の説明が必要でしょうか.

図表にしか情報が含まれていない場合には,内容に立ち入った説明が必要となります.

その際,図表を文章などで置き換えるのか,「触図」(凹凸のある図)+「点字」を用いてイメージをそのまま伝えるのかは,図によって何を伝えたいかによって変わってきます.

たとえば,以下のようなグラフの場合(大学等における障がい学生の在籍数),「何年には何人在籍している」という具体的な数値を伝えたいのであれば,グラフは不要で,数値を列挙していただく必要があります(すべての年でなく,重要な年の数値のみを抜粋することもあり得ます).「年々増加している」ことを伝えたいだけであれば,やはりグラフは不要であり,口頭または文章で,その旨を説明していただくことで足ります.また,ある年を境に急増したということをイメージとして伝えたいのであれば,「触図」に変換して伝えることが有効かもしれません(ただし,「触図」が有効かどうかは,当該学生のこれまでの経験とも深く関係します).

日本学生支援機構「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」より転載https://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/chosa_kenkyu/chosa/index.html

Q:講義中,イヤフォンで何か聴いているようなのですが,何を聴いているのですか.

「音声点字携帯情報端末」やパソコン,スマートフォンなどの機器の操作は,ボタンやアイコンに関する情報をすべて耳で確認しながら行います.六法などの資料をパソコンの音声読み上げソフトで聴いている場合もあります.一方の耳でそうした情報を確認しながら,もう片方の耳で講義を聴いているのです.

Q:図書館にある資料はどのようにして利用するのでしょうか.

同志社大学の文献検索システム(DOORS)やその他の資料検索システムは,残念ながら,全盲の方が利用できる仕様になっていません.検索ボタンなどがどこにあるかが,音声ガイドだけでは,つかみづらいために,視覚障がい学生が図書館での検索をする際にはサポートが必要です.

検索結果として画面に出てきた情報は,音声読み上げソフトを用いて聴くことができます.図書館にある資料については,対面朗読のサービスを提供しています.対面朗読室の写真はこちら

 

Q:障がいのない学生に配布した資料に記載された情報と,視覚障がい学生用にテキストデータ化した資料に記載された情報は,まったく同じでしょうか.やはり情報がある程度そぎ落とされてしまうのでしょうか. 

図表などが削除される分,全く同じ情報を提供することは難しいといえます.しかし,授業で伝達するべき重要な事項は,障がいの有無に関わらず正確,確実に伝達される必要があるでしょう.本プロジェクトでは,どのようにすれば,視覚障がい学生に,障がいのない学生に提供された情報と等しい情報が提供できるかを検討しています.

障がいのない学生用の資料

 

全盲学生用にテキストデータ化したレジュメ