パンデミック新時代

パンデミックはどのようにして起きるのか。未然に防ぐことはできるのか。なぜヒトは新興感染症に苦しめられるようになったのだろうか。
これらの疑問に答えていくのが本書である。

動物を食料のために狩る、家畜やペットとして飼育する。都市化と森林伐採などにより生活圏を急速に拡大し、世界中を移動する。
人類の生活様式こそが、パンデミックのリスクを高めていたのだ。

『世界が狭くなり人間と動物の接触が増えるのに合わせて、パンデミックは今より頻繁に発生するようになるだろう』(24ページ)
現在の人類がいかにパンデミックに脆弱になっているかを思い知らされる。

本書はコロナ前に書かれた本だが、これを読めば、新型コロナのパンデミックが起こるべくして起こったのだと納得できる。
というよりむしろ、新型コロナのパンデミックは起こりうる(起こり得た)いくつかの可能性の1つに過ぎないのかもしれない。

DNA解析や情報技術を活用したパンデミックの監視と予測のシステムの構築にも詳しく触れている。
「地球規模の免疫系」が完成し「パンデミック」という言葉が不要になる時が来ると、著者は考えている。

『パンデミックを予測し、防ぐために私たちはよりよい仕事をするべきで、それは可能だと考えることだ』(290ページ)
著者の力強い言葉が印象に残った。

(パンデミック新時代 人類の進化とウイルスの謎に迫る、ネイサン・ウルフ著、NHK出版、2012)