−ご挨拶−
この度、2004年度から文部科学省法科大学院等専門職大学院教育推進プログラムとして実施してきました「国際的視野と判断力をもつ法律家の養成」プロジェクトは、当初の計画どおり2007年3月31日をもって終了することになりました。ここに、皆様に、その成果をご報告いたしますとともに、プロジェクト遂行においてご支援・ご協力いただきましたことに対して心から感謝申し上げます。このプロジェクトで整備してまいりました様々な事業は、今後とも、本学のカリキュラムに活かしていくとともに、広く学外および社会一般に還元させていただく所存でございます。これからも、皆様の温かいご理解とご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
「国際的視野と判断力をもつ法律家の養成」 同志社大学司法研究科(法科大学院) 研究科長 プロジェクト・リーダー |
深田 三徳 |
本プロジェクトでは、2004年度秋から様々なプログラムを実施してきました。特に、連続公開講座・国際セミナー等では国内をはじめ、アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス、オーストリア、スペイン、イラン、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチン、中国、韓国、シンガポール、香港、インド、パキスタンから研究者や実務家を幅広く招聘し、国際セミナーを計97回、国際シンポジウムを計9回開催し、国際法務の課題の究明と啓発に取り組んでまいりました。
また、連続公開講座「グローバル・コミュニティの法的課題」「外から見た日本法」の両シリーズでは、それぞれ異なったトピックで3回ずつ講座を開講しました。連続公開講座については、積極的な広報活動を行い、関西圏から多くの実務家や研究者の参加を得ることができました。その他、日本法に関するワークショップやCSR(企業の社会的責任)をテーマにした国際討論会などを開催しました。これらの講演内容は、講師の許可を得た一部のものに関してビデオや音声テープに保存し、学生の学習・勉学に資するため貸し出ししているほか、広く一般社会へ成果を還元するため、講演ビデオのインターネットを利用した無料配信の準備もすすめています。また、本プロジェクトでは、「実践的国際法務トレーニング・コース(仮称)」の整備のために、具体的に①国際関係科目の充実、すなわち新規講義の内容・教授法の開発および開講準備や既存の科目の内容の点検・改善・充実②インターネットを通じた海外との同時・双方向の授業やセミナーの組織③海外法律事務所・国際機関・NPOへのエクスターンシップ手配④海外ロースクールとの学生・教員交換のための態勢整備を進めてまいりました。
①の国際関係科目の充実では、実務家との交流を深めるとともに、それを通して、渉外法務科目を充実させていくことをねらいとして、2006年度に実務家の方に、渉外法務科目の一部について授業を公開しました。対象は裁判官、検察官、弁護士の方々で、国際租税法については税理士の方にもご来聴いただきました。高い関心が寄せられ、実際に来聴し、実務に基づく知見をクラスで共有するなどの優れた効果を挙げました。2007年度以降は、実務家を対象とした聴講制度に移行しました。
その他、アメリカの司法制度等を学ぶ「American Law in Actionプログラム」を実施し、2006年3月、本学の藤倉皓一郎教授とグアム法曹協会のメンバーでもあるColin P.A. Jones助教授が本学学生9名を引率し、グアムで実際の刑事および民事裁判の見学、グアムの法制度の特徴の紹介、現地の法曹界(裁判官、検察官、国選弁護人および個人弁護士)メンバーとのミーティングや法律図書館の紹介などを行いました。このプログラムは、2007年度から法科大学院の正課のカリキュラムに取り入れます。また、ヨーロッパの司法制度を学ぶための研修「Comparative Law in Europe Liveプログラム」の開発も行いました。これはヨーロッパ(ドイツ、フランス、ルクセンブルク)の司法機関、大学等を訪問し、ヨーロッパの生の比較法を学ぶ研修旅行です。このプログラムも、2007年度からは法科大学院の正課のカリキュラムに取り入れます。
その他、外国語による日本法図書(文献)および図書資料等の収集をしました。これは海外協定校などからの教員・学生の便宜に資するためで、日本法を外国語で解説した図書など約400点を収集しました。これらの図書資料は、本プロジェクト関係者等の日常的な利用に供しています。日本人学生が日本法を外国語で表現し、紹介する力をつけることが出来るほか、外国人学生を対象とする日本法の論文指導や日本法講座を開く際の資料としても利用可能です。
②の海外との同時・双方向授業では、海外の大学とのインターネットを通じた同時・双方向の授業やセミナーの試行のためにテレビ会議システム(Polycom社のVSX7000s)一式を購入し、システムを用いて、2006年6月に、シドニー大学法学部の講師による同時双方向授業を行ったほか、ハーゲン大学やカリフォルニア大学デービス校の担当者とテレビ会議を行いました。また、2007年2月にザルツブルグにあるパリス・ロドロン大学、3月にボストンにあるサーフォーク大学ロースクール、モスクワ大学と国際商事模擬仲裁のトレーニングを行いました。
③の海外法律事務所エクスターンシップに関して、本学は、JTJB法律事務所(シンガポール)、Blake Dawson法律事務所(オーストラリア)、Center for International Legal Studies(オーストリア)との間でインターンシップに関する覚書に調印しました。これにより、来年度から始まる新カリキュラム「海外インターンシップ」の受け入れ先が整備されました。2006年度にはJTJB法律事務所の所長が、海外エクスターンシップに関する説明会を開催。2006年8月、9月に、学生3名がJTJB法律事務所でインターンシップを行いました。さらに、2007年3月には、Blake Dawson法律事務所で学生1名がインターンシップを行う予定です。
④の海外ロースクールとの学生・教員交換で本学は、4校と学生交換、教員交換を含む学術交流に関する覚書に調印しました。また、本学教員が協定校に出張し、本学学生の留学受け入れについて交渉しました。特にウィスコンシン大学とは、Dual Degree Programの実施についてほぼ合意に達し、実現に向けて細部を調整しています。また協定校の担当者等を招き、学生を対象としたアメリカ・ロースクール留学に関するQ&Aセッションを実施しました。
■■同志社大学法科大学院学術交流協定校■■
- ウィスコンシン大学ロースクール(アメリカ)
2004年12月締結
- テュービンゲン大学法学部(ドイツ)
2005年7月締結
- デューク大学ロースクール(アメリカ)
2005年8月締結
- ワシントン大学ロースクール(アメリカ)
2006年2月締結
本プロジェクトでは、活動内容を学内外に広く知っていただくため、ホームページを開設し、プロジェクトの概要紹介、セミナーの告知、実績の公開を行ってきました。また、2005年度と2006年度には、本プロジェクトの取り組みを紹介したパンフレットを作成しました。ホームページにつきましては、実績報告のためにプロジェクト終了後も当分の間、公開したいと考えております。 また、本プロジェクトで実施した国際セミナーのうち、いくつかのものについては、公刊いたしました。
3年にわたるプロジェクトは終了いたしますが、同志社大学法科大学院はその成果をもとに、今後とも「国際的視野と判断力をもつ法律家の養成」に取り組んでまいりますので、みなさまのご支援、ご協力を賜りますよう、改めてお願い申し上げます。
| Doshisha Law School 2007 March |
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