プログラム概要 執行組織 実績一覧 協定校 エクスターンシップ 授業公開(実務家対象) 図書(資料)目録
トップページへ ACCESS/MAP トップページへ ACCESS/MAP
海外法律事務所へのエクスターンシップ
 

シンガポールの渉外法律事務所Joseph Tan Jude Benny (JTJB)法律事務所に、本学学生をインターンとして受け入れてもらえる道が開けました。同事務所は、国際的な商事および海商法事件を中心に扱い、6カ国に事務所を有するなど、アジアを中心に国際展開しています。同事務所では、現地の学生に半年以上のインターンシップを実施していますが、本学学生には、双方に都合のよい時期に、1〜2週間程度の短期のインターンシップのチャンスが与えられます。申込みにあたっては、プロフェッショナルな心構えが求められますが、それに加えてTOEIC 900点以上または同等の英語力があれば採用される可能性は充分あります。インターンになれば、実際の事件記録を参照し、弁護士に随伴して裁判を傍聴できますし、弁護士のほか、長期のインターンや修習生と交流して、その経験から学ぶこともできます。また、自主的にリーガルリサーチや法的意見の起草をおこなう機会や資料も与えられます。コモン・ロー国の制度は日本とは随分異なりますので、シンガポールの法律事務所で実際に仕事を観察・体験するのは非常に貴重な経験になると思われます。また、現在オーストリアにあるUNCITRAL(国連国際商取引法委員会)、ベルギー、ルクセンブルグ、フランスにあるEUの諸国際機関、香港国際仲裁センター、オーストラリア、香港の法律事務所などでのエクスターンシップの可能性があり、実現に向けて条件を詰めているところです。

 
JTJB法律事務所 募集要項
参加学生の声
 

2006年8月21日から2週間、JTJBシンガポール事務所にてインターンシップを経験させて頂きました。報告書を3つのパートに分けて述べていきたいと思います。1つはJTJBの構成やシンガポールでの位置づけ。次に、インターンシップを通して事務所の中で学んだこと。最後に、シンガポールで実際にJTJBのクライアントとの会議に参加したこと、そして法廷傍聴したことについて述べていきたいと思います。

JTJBは海事法を専門とする法律事務所ですが、民事紛争や刑事事件など幅広く仕事をしています。事務所は10人のシニア弁護士、9人のジュニア弁護士、16人の秘書、会計士や船に関する専門職の方から構成されています。会計部門・運営部門、そして訴訟部門・不動産取引部門の4部門に機能は分類されます。シンガポールにおいて海事法を専門とする法律事務所は他にも存在しますが、数はそれほど多くはありません。

インターンシップを通して、事務所の中でジュニア弁護士が教えてくれるテーマは大きく2つに分類されます。1つは“シンガポールの法制度”。もう1つは“海事法”に関する知識です。“シンガポールの法制度”では、シンガポールの裁判所の種類と裁判管轄。“海事法”では、簡単なケースを基に訴訟が起こされるまでを見ていきます。

シンガポールにはSupreme CourtとSubordinate Courtが存在します。Supreme Courtは更にCourt of AppealとHigh Courtから成り、Subordinate CourtはFamily Court, Juvenile Court, Traffic Courtといった様々な裁判所から構成されます。どこの裁判所に訴えを提起するかは、特別裁判所以外は訴訟金額によって決まります。

シンガポールはイギリス法の流れを受け継いでいます。シンガポール独自の成文法は存在しますが、判例に関してはシンガポールだけではなくイギリスやカナダといったイギリス圏の国々の判例も法源となります。海事法についても同様であり、弁護士はWest Lawなどを通し広く判例を検索しています。訴訟においては成文法が適用され、成文法のない場合に判例が引用されます。判例がない場合、正義と公正から判決を下すことが裁判官に許されておりEquityと呼ばれています。

最後に、インターンシップを通して、クライアントとの2つのミーティング、裁判所からの意見聴取、刑事裁判、離婚訴訟に立ち合わせて頂きました。ミーティングは両方とも海事に関する訴訟の前段階に関するものでした。1つはエクソンモービル社がオイルを陸揚げしていた際にパイプラインが破損しオイルの品質が悪くなったというものでした。もう1つは船会社のパシフィック・インターナショナル・ライン(以下P.I.L.)が荷運びに依頼した船会社が天候不順のため荷物を海上に投棄。荷物の所有者がP.I.L.を訴えようとしているものでした。

訴訟を起こされ被告側に立つと多額の担保を要求されたり、船が差し押さえられたりといった不利益があります。一方、原告側に立つ場合には訴訟が維持できるかといった問題点があります。こういった点をミーティングを通して弁護士は判断しています。実際のミーティングに参加させていただくことで、弁護士がどういう話し方をクライアントとしているか、また問題解決のためクライアントへの助言の仕方を学ぶことができます。

傍聴させて頂いた刑事裁判は Public Utilities Act 違反に関するもので、実際の事件は2000年10月に起こったものでした。様々な証拠を提出し、違反は軽微なものであるので罰金で済ませて欲しいという活動でした。傍聴当日に判決が下される予定だったのですが、3時間程外で待たされた後、罰金額の算定に1週間かかるため判決は次週になるとのことでした。1つの法廷で複数の刑事事件が取り扱われ、事件の内容を事前に知っておかないと目の前で何が起こっているかも理解できません。

家庭裁判所も傍聴させて頂く機会がありました。事件は離婚訴訟であり、ここでも目の前に数多くの弁護士が座り自分の順番が来ると立ち上がり、5分くらいで次の事件に移ります。裁判官は2〜3の質問を当事者に投げかけ、問題があると期間を延長したり、通訳に適切な回答を求めるよう要求したりしていました。

Supreme Courtからの意見聴取にも付き添わせて頂きました。シンガポールでは書類はオンラインで裁判所に送られており、弁護士は裁判所に行きタッチパネルで操作し自分の順番が来るのを待ちます。自分の順番が来ると裁判官が待っている部屋に入り、質問を受け10分くらいで終わります。

このシンガポールインターンを通して、シンガポール法制度や海事法に対する理解が深まり、裁判傍聴を通して事件を身近に感じることができました。しかし、それ以上に法律事務所という環境で2週間を過ごすことで、法律事務所の雰囲気を実際に感じることができたことが意義深かったと思います。


TOP プログラム概要 執行組織 実績一覧 協定校
エクスターンシップ 授業公開(実務家対象) 図書(資料)目録 access/map