前半から続く)


 EU改革

FP DECEMBER 22, 2017

If You’re Not a Democracy, You’re Not European Anymore

BY JAN-WERNER MUELLER

ポーランド政府の行った司法制度のいわゆる「改革」は、ヨーロッパの基本的価値、特に法の支配に対する深刻な脅威として、欧州委員会から欧州連合基本条約の第7条による修正が求められるだろう。もしワルシャワがその修正に応じなければ、ポーランドはEUの集団的な意思決定に参加する権利を停止される。

加盟国が「無法国家」に逸脱したとき、これを処罰できないなら、EUの真価が問われる。ポーランドとハンガリーの右派政権がそうだ。

7条は、1990年代の後半に、オーストリアとイタリアの要求で基本条約に追加された。当時は、基本的価値が当然のことと認められていたし、中東欧の新加盟諸国で何か間違ったことを決定するかもしれないと懸念する理由があった。しかし、皮肉なことに、イタリアはベルルスコーニのせいで、オーストリアはハイダーの自由党のせいで、両国は民主主義に対する重大な疑問を生じる国になっている。

右派の政治家たちは巧妙に基本的価値を文化の問題と混ぜて有権者にアピールする。しかし、これは彼らが言うような全ヨーロッパにおける「文化戦争」ではなく、民主主義の重要な制度的インフラが問題になっている。彼らに対する圧力としては、第7条を行使するより、EUによる財政移転を制限する措置の方が効果的である。

アウディやメルセデスのようなドイツ企業はハンガリーで非常に優遇されている。EUの真ん中で、保守政治家たちがソフトな権威主義体制に寛容であれば、極右政党や、基本的価値を無視する右派政権に対する圧力も強まらない。犠牲となるのは、ポーランドやハンガリーの市民たちだ。

Bloomberg 20171222

Euro-Zone Reform Proposals Don't Go Far Enough

By Sony Kapoor

過去の銀行破たんから教訓を学び、政府債券の危機を予防し、緩和し、解決することを学ばないとしたら、EUは愚かであろう。現在の改革はまだ不十分だ。

政府債券危機は、景気循環を緩和するアプローチによって回避できる。EUの成長安定協定は財政赤字や債務累積を制限するために必要だが、経済状態に応じて変化するパラメーターを入れて、不況の時期には財政赤字を増やすことができる定義が望ましい。また、GDPにリンクした債券を各国政府が発行し、債務返済を成長と逆に連動させる。これは銀行の破たんに求められるベイル・インに対応するルールだ。

不安定化した市場で満期債券の借り換えを行うことが銀行や政府債券の破たんにつながる。新しいバーゼル合意Ⅲは、銀行が短期資金によって長期融資を行う能力を制限する。同様のことを、政府債券の満期構造にも適用するのが良い。

現在、銀行のバランス・シートにストレス・テストが求められ、その国の経済状態が変化するリスクに耐えられるよう求められている。政府もストレス・テストによって危機に対応するプランを検討しておくべきだろう。リビング・ウィル(生前遺言、破たん処理計画)として、債務危機において削減する支出や増税の項目を示すべきだ。それは政権にとっての政治的優先順位を示すことになり、債務危機の透明性を高め、債務処理の主導権を執り、有権者への説明責任と処理スピードを高める。

銀行への取り付けが発生してしまったら、危機の封じ込め、波及・感染の阻止、信用回復が求められる。危機緩和策である。適時に、しかも迅速に、流動性を供給することが、銀行にも、政府債券にも重要だ。危機においてECBが流動性を供給し、銀行システムは政府債券を大量に購入した。また、欧州委員会はEMFを提案している。EMFからの資金は、破産処理を進める機関に優先的に供給されるのが良い。

リーマンの破たんがグローバルな金融危機を生じ、ギリシャ政府債券からユーロ圏に危機が波及したように、信頼できる破たん処理の枠組みがなければならない。特別な体制を設けたことで、EUの銀行を資本再強化し、再編し、破たん処理することができる。その場合、処理コストをステークホルダーの間でどのように分担するかが問題だ。返済できなくなった政府債券を処理する予測可能な、公式に認められたメカニズムが欠かせない。

そのようなメカニズムが信用されるには、政府からの独立性が求められる。その役割はIMFが担うべきだ。

FT December 28, 2017

2017 saw Europe’s mainstream centre shut out in the cold

JOHN LLOYD

NYT DEC. 28, 2017

E.U. Reminds Poland How a Democracy Acts

By THE EDITORIAL BOARD

NYT DEC. 28, 2017

France Fails to Face Up to Racism

By THE EDITORIAL BOARD

NYT DEC. 28, 2017

What Happened to Germany’s Social Democrats?

Jochen Bittner

ドイツで、そしてヨーロッパ中で、社会民主主義への支持は衰退している。ドイツ社会民主党は、19世紀後半から20世紀に、再分配政策を指導して支持を得た。国民国家は、彼らが主張する労働者の権利や再分配を行う枠組みとして欠かせなかった。

しかし、この枠組みが動揺している。1989年のベルリンの壁崩壊後、社会民主党自身がグローバル化した世界を受け入れた。超国家的な、世界市場競争を加速し、ドイツも素晴らしい新世界を主導する国家の1つになったのだ。

ここには2つの矛盾がある。1.民主主義の衰退。国民国家に代わる、超国家的なガバナンスを唱え、ダヴォスやブリュッセルが新しいエリートたちの首都になった。しかし、それは各国の議会から権限を奪い、国民のパワーを制限したのだ。民主主義を取り戻すために、人々は底辺から街頭に終結し、各地で抗議した。

労働と資本との団結は、まったくの欺瞞ではなかった。市場自由化と政治統合は富をもたらすより良い条件を実現したからだ。しかし、トリクル・ダウンは少なかった。

2の矛盾は、グローバル化が福祉国家を解体したことだ。かつてシュレーダーは、社会民主党を率いて首相となり、ドイツの競争力を高めるために社会福祉を削減した。その後、政府が難民や移民を受け入れたことで、人々は社会福祉の削減をした政府に反発を抱いた。

アメリカのthe Rust Beltに匹敵するドイツのthe Ruhrgebietでは、左派の支持者の多くが社会民主党から離反した。指導部はそれを極右の煽動として非難し、一層のリベラルな目標を示したからだ。ベルリンの若者と、衰退する地域の失業者たち、その両方を惹きつけるアイデアがなければ、社会民主党の衰退は止められない。


 中東の新秩序

FP DECEMBER 22, 2017

Iran’s North Korean Playbook to Protect Its Nuclear Program

BY JOHN HANNAH

PS Dec 23, 2017

The New Fulcrum of the Middle East

JOSCHKA FISCHER

世界秩序の移行期をわれわれは生きている。中東のマクロレベルにおける力学も変わった。

フランスとイギリスがサイクス=ピコ条約で分割した境界線は今に至るが、イスラエルが建国して以来、アラブとの紛争が中東政治の中心を占めた。199391日のオスロ合意において両者の立場は最も接近したが、エルサレムの地位は未解決のままだった。

2003年、アメリカ主導でイラク侵攻が行われ、2010年後半にアラブの春が起きてから、イスラエル・パレスチナ紛争は中東地域の中心問題ではなくなった。2011年からは、シリア内戦とイスラム国が支配的なテーマになった。イランとサウジアラビアはさまざまな形で代理戦争と外交上の衝突を示している。

しかし、アメリカのドナルド・トランプ大統領がエルサレムにアメリカ大使館を移すと宣言してから、情勢が変わった。1967年の6日間戦争の後、イスラエルが一方的に東エルサレムを併合したが、国際社会はこれを認めてこなかった。エルサレム問題でイスラエルの占領を認めることは、2国家案を破壊するとわかっていたからだ。

2国家案は、これまで両者が合意した唯一の解決策だが、時とともに信頼されなくなり、イスラエルはヨルダン川西岸への入植を拡大した。イスラエルにはジレンマがある。パレスチナ人に自分たちの国を諦めさせるとしたら、彼らは市民権を求めるだろう。イスラエルは人口の多くをパレスチナ人が占める国になる。民主的国家か、ユダヤ人国家か、どちらかになるしかない。その両方は実現できない。

少なくとも理論上は、第3の選択肢がある。それはガザ地区とシナイ半島北部をパレスチナ国家にすることだ。他方で、西岸地区はイスラエルとヨルダンに分割される。しかし、この場合もイスラエルのジレンマは解決できない。

トランプのエルサレムに関する声明が出ても、サウジアラビア、エジプト、ヨルダンという、アラブ諸大国が強い反対を示さなかったことは重要だ。その理由は、サウジアラビアが単独で同盟を呼びかけ、イランと戦争するには、弱いからだ。サウジアラビアは地域の軍事大国であるイスラエルとの協力を必要としている。

サウジアラビアとイスラエルとの同盟が現れる中東世界の新秩序は、これまでと全く異なり、予測不可能だ。

FP DECEMBER 22, 2017

Palestine Is a Victim of the Iranian-Saudi War

BY KIM GHATTAS

NYT DEC. 27, 2017

The Yemen Crucible

By THE EDITORIAL BOARD

FP DECEMBER 28, 2017

U.S.-EU Obligations Should Cut Both Ways in 2018

BY PETER ROUGH


 ビットコイン

Bloomberg 20171222

What Is Bitcoin Good For?

By Megan McArdle

ビットコインを手に入れるために18000ドルも支払うのはなぜか? ビットコインに何か良いことができるのか?

もしビットコインを決済システムだと思うなら、それはVisaMasterのようなプラスチック・マネーと、あるいはPayPal、銀行口座間御決済と、競争する。もしビットコインを貨幣とみなすなら、それはドルやユーロ、円と競争する。


 南アフリカ

FT December 23, 2017

Cyril Ramaphosa, a leader’s long wait to save South Africa

ALEC RUSSELL


 中国の世界戦略

FT December 23, 2017

Beijing pressure drives Hong Kong and Taiwan down diverging paths

Ben Bland in Hong Kong and Edward White in Taipei

NYT DEC. 27, 2017

China Is Pushing Its Luck With the West

By LUKE PATEY

西側の価値を損ない、世界の民主主義諸国が享受している自由を破壊する、中国のグローバルな試みに警報が鳴り始めた。

アメリカの指導的な企業、Apple and LinkedInに対して、中国の膨大な市場に参入させる代わりに、中国のルールを受け入れる、すなわち検閲に従うよう求めた。

アメリカの大学が、中国政治の孔子学院から資金を受け取り、研究の自由を制限している。

オーストラリアでは、中国共産党と結びついた中国人ビジネスマンが、外交政策に影響を持つため、指導的な2つの政党に多額の献金をした。

オーストラリア労働党の期待の星であったSam Dastyariが上院議員を辞任した。彼は中国からの資金を受けたくて、中国政府寄りの立場をとったと疑われている。

中国の最大の貿易相手であるEUも、北京の行動を懸念している。ドイツでは、情報機関が中国によるドイツ政治家と外交官の個人情報収集を非難した。元デンマーク首相でNATO総司令官でもあったAnders Fogh Rasmussenは、EUに中国による投資を調査し、制限する手段を求めた。

「一帯一路」イニシアティブによる発展途上諸国への進出も問題を生じている。パキスタンやミャンマーでは、中国からのインフラ建設とその融資条件に関して、国家の主権が失われたという批判が起きている。

ラテンアメリカでは、例えばアルゼンチンで、環境基準を満たしていないという不満がある。アフリカでも、中国の建設会社が土地の取得や地元での雇用を増やす努力をしないまま、鉄道や道路を建設している、という抗議が起きている。

スリランカは、中国とインド洋とをつなぐ重要な位置を占めるが、その戦略的な港湾を99年間の貸与として中国に管理される合意を結んだ。それも中国に対する債務を免除することの見返りである。

FP DECEMBER 27, 2017

The Battle of the Breadbaskets Is Coming to a Head

BY FRANCES TOWNSEND

アメリカは長く世界のパン籠(食糧庫)であった。その肥沃な土地と先端的な農耕技術によって、自国民を養い、世界人口に食糧を供給した。しかし、アメリカの食糧指導力は、中国からの深刻な挑戦を受けている。中国は自国民に食糧を供給し、世界の農業産業において重要なプレイヤーになるため、攻撃的な政策を採っているからだ。2050年には世界人口が100億に達すると予想される。食糧生産は70%増大しなければならず、世界経済の決定的要素になるだろう。

Bloomberg 20171228

Chinese Consumers Now Rule the World. Get Used to It

By Tracy Chen

中国を「世界の工場」と呼ぶのは、もはや正しくない。世界の消費者である。

投資と輸出による成長モデルは過去のものだ。さらに重要な変化は、その消費のパターンである。基本的な商品だけでなく、ますます多くが映画や旅行、医療に支出されている。投資家たちはこの地殻変動を見逃している。

こうした変化の副産物は、政治的にリスクを高めがちな経常収支の黒字が減少し、広義の資本流出が関心を高めていることだ。それは人民元の減価圧力を生じている。ただし、その傾向はまだ初期のものだ。中国の人口の都市化は続くから、需要パターンの変化も調整の余地がある。


 世界秩序の動揺

The Guardian, Mon 25 Dec ‘17

The Guardian view on the power of heresy

Editorial

ルターの宗教改革以後、世界の秩序や思想は大きく変わった。しかし、ルター以降、異端のパワーが認められた。異端を糾弾する者の心を支配するのは、論争ではなく、戦争の精神である。

正統と異端をめぐる宗教論争、そして、政治の論争は、今も重要な役割を果たしている。それは資源が枯渇し、それをめぐって人々が争いを強める時代の精神だ。

FT December 28, 2017

A year in charts: From bitcoin to Trump and chess playing robots

Tim Harford in London

2017年の重要問題は何か? セクシャル・ハラスメントの告発、ビットコインの価格暴騰、ドナルド・トランプの大統領就任、ソーラー・エネルギーの普及、ディープ・ラーニングによる人工知能が人間を超える能力を示す、株価上昇、ヨーロッパにおける反移民・人種差別の極右が支持を拡大、ポリオの撲滅、・・・

Bloomberg 20171228

The Great Trade War That Didn't Happen in 2017

By Daniel Moss

Bloomberg 20171229

Must-Reads of 2017: Progressives vs. Populists

By Clive Crook

Brexitもトランプも、対抗するなら、その根源を知らねばならない。彼らが主流派の政党を棄てたのではない。主流派政党が彼らを見捨てたのだ。

Joan C. Williams’s "White Working Class: Overcoming Class Cluelessness in America"

David Goodhart's "The Road to Somewhere: The New Tribes Shaping British Politics"

Mark Lilla's "The Once and Future Liberal: After Identity Politics."


 ラテンアメリカ

PS Dec 27, 2017

Why Has Latin America Turned Away from the Left?

ANDRÉS VELASCO


 難民危機

PS Dec 27, 2017

The Evolution of the Refugee Crisis

ERIK BERGLÖF


 暗殺、投獄、買収

NYT DEC. 27, 2017

Rex Tillerson: I Am Proud of Our Diplomacy

By REX TILLERSON

FT December 28, 2017

Trump, Xi and a dark year for democracy

GIDEON RACHMAN

ドナルド・トランプは、今もアメリカのエスタブリシュメントたちにとって摩擦と憤懣を産む源であるが、私は彼を以前より理解できたように感じている。特に彼が、南アフリカ、トルコ、ブラジル、中国に外遊したことで。トランプは、喚き散らす指導者であり、デマゴーグであり、威張りたがる大統領、自分のビジネスと政治的関心とが混じってしまう権力者である。

トランプの登場と中国の台頭が、世界の政治的雰囲気を一変させてしまった。ワシントンからも、北京からも、すべての信号が不安を掻き立てる。アメリカはもはや他国の民主主義やクリーンな政府に関心がない。中国はますます、民主主義を受け入れるが市民社会を破壊する権威主義型モデルについて、自信を深めている。

リベラルな価値が破壊されていく影響を顕著に示すのは、南アフリカ、トルコ、ブラジルである。これら3か国は、指導的な中堅国家としてG20に参加している。数年前まで、リベラルで民主的な諸価値が着実に推進されていた。しかし、これら3か国のすべてで、腐敗・汚職と闘い、政治指導者の権力をチェックする独立した諸制度が、今や、維持されることも困難となっている。これらは別々の危機、異なる土地の事情によって起きているが、リベラルたちは誰もがグローバルな潮流に抗して進むことに苦しんでいる。

南アフリカでJacob Zumaは、10年に及ぶ政治腐敗で破たん国家をもたらした。Cyril RamaphosaANCの指導者に選ばれたことは希望である。他方、トルコは一層深刻だ。フェイク・ニュースを広め、個人的なカルトを育てるRecep Tayyip Erdogan大統領が、トルコを専制国家にしつつある。ある意味で、ブラジルの司法はこれに強い姿勢でのぞみ、現職の大統領であったDilma Rousseffを弾劾し、現在の大統領Michel Temerと前任者Luiz Inácio Lula da Silvaの汚職も告発する。その結果は、国民の強い政治不信であった。今や極右のポピュリストJair Bolsonaroが高い支持を得ている。

個人的な会話の中で、ブラジルの検察官が挙げた反汚職のモデルは、イギリス統治下の香港であった。しかし、その香港では、1997年にイギリスから領土を返還した際に、中国がアレンジした「12制度」は解体されつつある。香港民主化を唱えて闘った「雨傘革命」の指導者たちJoshua Wong, Nathan Law and Alex Chowは投獄された。

香港を圧殺し、他方で、「習思想」を共産党の後任イデオロギーとした中国は、対照的な2つの表情を示す。一方は、中国の飛躍に興奮するナショナリストたち。他方は、民主主義への移行がさらに遠くに流されたと感じて絶望するリベラルたち。

中国でも、世界のどこでも、リベラルな人々はもはやアメリカによって勇気を与えられることはない。トランプ政権が成立して数か月もたたない頃、中国はトランプのビジネスに欠かせない重要な商標を公認した。ある中国の学者は私に告白した。「われわれはアメリカ大統領も買収したようだ。」


 BrexitUK

The Guardian, Thu 28 Dec ‘17

The Guardian view on social mobility: lost in Brexitland

Editorial

Alan Milburnは、他のすべての委員とともに、the Social Mobility Commission委員会を突然に辞任した。そして、「<われわれ>と<奴ら>との分断された社会という意識が高まる中で、国民の結束は深く浸食されている」という辞表を書いた。

メイ政権は、第1に、EU離脱を実現することのほかには、そのエネルギーを注ごうとしない。委員会はバラバラで、勧告は無視され、医院が辞任しても補充されず、利用できる資源はわずかである。第2に、たとえメイがいわゆる「取り残された人々」に誠実な言葉を述べているとしても、前任者ン位比べて、社会的移動性は優先順位に入らない。

社会的移動性とは、子供たちがその両親よりも高い社会的地位を得られる可能性をとらえた言葉である。この言葉はGordon Brownによって国民の間に広まった。諸政策を統合する専門家として、Milburnが委員長に就くよう要請された。富裕層への増税から初期教育の重視まで、地域の政策の違いが調整された。年齢、地理、所得、資産によって分断された国家を委員会は検討した。

しかし、その活動は行き詰まっている。単に国家が縮小しているからとか、グローバリゼーションの影響というのではなく、保守党政権がそれを政治的成果とみなしていないからだ。保守党には、社会的移動性を能力主義と同じ意味だと考える者がいる。そうではない。才能を伸ばすのは、は平坦な競争条件以上のものである。しかも、能力主義・メリトクラシーは、容易に、エリートたちがその特権を正当化する言葉に転換される。

確かに、少数者のために行動する政治家はいない。しかし、イギリスという国全体のために、行動するべきだ。

FT December 28, 2017

Tilt Britain’s education system back towards skills training

ALISON WOLF

FT December 28, 2017

Brexit casts a shadow on the UK’s economic future

UK経済は減速した。Brexitは不況をもたらすと「専門家たち」の多くは予想していた。政府とイングランド銀行はそれを回避するよう努めてきた。

しかしFTの分析では、EUを離脱しないという国民投票が出た場合に比べて、現在のGDP0.9%減少している。それは、たまたま、離脱派がNHSに使えると主張していた額と等しい、週35000万ポンドである。歳入額を90億ポンド減らしたことになる。この減少額は数年にわたって増加するだろう。UKは離脱交渉を進めるために、EUに対する財政負担を受け入れた。

IMFBrexit投票の結果を要約している。「離脱を支持する国民投票の後、一気にポンドの減価が進み、消費者物価の上昇と家計の実質所得及び消費が減少した。世界経済が力強く成長する中でも、イギリスの民間投資はわずかしか増大せず、稼働率は高い。それは不確実性が高まったことによるものだ。」

この不確実性は将来に及ぶマイナスを意味する。EUからの移民の純流入も減少し、GDP1人当たりGDPを押し上げる、若い勤勉な労働力を失った。

UK経済が直面する課題は、Brexitだけでなく、1.政治の機能不全、すなわと、弱体な保守政権と、ラディカルな経済再編を要求する者たちによる労働党指導部。2.雇用状態は大きく改善しながら、生産性上昇が低迷していること、である。それは短期的に、インフレ圧力を強め、金融が引き締められるだろう。政治的危機が起き、ラディカルな野党の政権掌握が近づき、スタグフレーションという経済危機に向かうことで、次のポンド危機が起きる。

2018年のUK経済は、まだ多くの困難な状況に陥る。


 保護主義

FT December 29, 2017

A protectionist advance is far from inevitable

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The Economist December 16th 2017

Sharp power

China and the west: At the sharp end

Vladimir Putin’s victory lap: Mission accomplished

Energy disruptions in Europe: The cracking forties

Free exchange: A lost decade

Miniature robotics: Bot flies

(コメント) アメリカの株価上昇や、中国の春節を前にした賃金不払いへの闘い、ユーロ圏の不十分な改革、カタルーニャの選挙、マクロンの外交意欲、アメリカ石炭業への支援、など、話題はいっぱいです。

私が重要と思ったのは、中国の「シャープ・パワー」論、プーチンの中東外交、ヨーロッパにおける石油危機の懸念、小型ロボットの軍事利用、です。中国における政治の管理体制と経済の自由化を維持する監視・介入システムが、貿易・投資・安全保障ともかかわり、国境を越えて諸外国の政策を変更します。

プーチンが中東世界に軍事的関与を深めたのは、国内的な支持を高めるショーでした。しかし、オバマの政策転換、トランプの新外交が、ロシアに大きな成果を与えたようです。地域の秩序はこれほど急激に、上から、変化するのか、と思います。

世界金融危機の後、主要中央銀行が採用した劇的な金融緩和策は、金融制度改革の政治的意志を弱め、大恐慌後のような長期的制度構築を、銀行に関わる既得権に阻まれたようです。「失われた10年」だった、と評価します。

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IPEの想像力 1/1/18

年末、国家消滅について河合雅司、夏野剛が、田原総一朗と議論する、激論クロスファイアの最後の話(1022日の放送)を観ました。かつて、日本がアジアの小国ベルギーになる、と考えたことを、私は思い出しました。

IPEの想像力 11/21/11

http://www1.doshisha.ac.jp/~yonozuka/Review2011/112111review_s.html

IPEの想像力 5/7/12

http://www1.doshisha.ac.jp/~yonozuka/Review2012/050712review_b.html

IPEの想像力 6/10/13

http://www1.doshisha.ac.jp/~yonozuka/Review2013/061013review_b.html

長期の課題として最も重要なものに、日本の政治は応えていない。田原はそう主張します。「人口減少カレンダー」(河合雅司『未来の年表: 人口減少日本でこれから起きること』)は、その1つを明確に示しました。

河合・・・2020年、50歳以上の女性が半数を超える。子供を産めない女性しかいない地方の町や村は消滅に向かう。市町村を単位とした日本の政治が不可能になるだろう。

夏野・・・バブル崩壊による若者の就職難。その後、非正規雇用による低所得、不安定な将来によって、若い夫婦が子供を育てられなくなっている。

正規雇用は、安定性を保証されていて、しかも賃金が高い。これは矛盾している。安定性の高い職場は賃金が低い。リスクを取る職場は賃金が高い。それが経済原則だ。

非正規雇用を正規にするのではなく、正規雇用の方をなくす。すべて非正規雇用にする方がよい。

若い労働力だけでは足りない。移民を入れることには問題がある。高齢者がもっと働く。アメリカでは、年齢による差別が法律で禁止されている。定年制も違法だ。雇用において年齢を尋ねてはいけない。

女性の労働力がもっと活躍できる社会にするべきだ。女性が専業主婦であったのは、高度成長期にできた常識である。それ以前は、女性が働くのが当たり前だった。

そのためにすべきことは何か? フランスでは、3歳から事実上の義務教育にして、育児に多くの金を政府が投入した。また、リカレント教育に取り組む。もはや、企業の寿命はそれほど長くない。企業内の年功序列制に頼ることは間違いであり、労働者が企業を移っていけることが重要だ。

河合・夏野・・・コンパクトシティ建設が地方にとって重要だ。東京一極集中を恐れるより、20万都市が地方にいくつもできる方が良い。

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こうした指摘は、私に、リバタリアンや、政治の中央による管理体制、権限の集中を予感させました。地方議会や選挙は、立候補する者もなく、話し合う意味を失いつつあります。そして、東京政府から任命された行政官が、中央から移転された財源を管理し、統治します。東京都の知事と日本政府とは一体化するのでしょう。

それは、強権型の自由市場、ローマ帝国や、現代のロシアのような、日本の未来です。

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30年以上前に、初めてオランダを旅したとき、小さなケーキ屋さんで、とてもおいしいケーキを食べました。それより驚いたのは、お店の女性が英語もドイツ語も、フランス語?も話したことです。ヨーロッパで生きる小国の高い能力を実感しました。

すでに、日本の旅館や食堂も、外国人観光客を歓迎する工夫に努めています。労働者や公務員としても、外国人労働者を必要とする機会は増えるでしょう。

オランダのワークシェアリングや、北欧の社会保障制度は、開放的な経済成長を維持する工夫であった、と思います。グローバルな秩序と統合化の時代に、日本はアジアの辺境に位置し、アジア各地のダイナミズムを取り込みながら平和を維持し、その安定的な調整を促す制度について優れた構想を提示することで生きるしかありません。

ドイツにとっての難民危機、日本にとっての北朝鮮ミサイル危機(そして軍事衝突)は、人口危機に対する社会改革の触媒となるとき、政治がその使命を果たしたと言えるのです。

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