前半から続く)


l  金融政策の考察

Project Syndicate 27 April 2012

Bringing It All Back Home

Howard Davies

guardian.co.uk, Sunday 29 April 2012

To understand this crisis we can look to the Long Depression too

Donald Sassoon

FT April 29, 2012

Brave but bloated

By Claire Jones, Ralph Atkins and Robin Harding

FT April 30, 2012

Now is not the time for boring central bankers

By PhilippHildebrand

FT May 1, 2012

After the bonfire of the verities

By MartinWolf

FT May 2, 2012

Our central bankers are intellectually bankrupt

By RonPaul

FT May 3, 2012

Consider the small nations caught in the central bank crossfire

By Gill Marcus

Project Syndicate 03 May 2012

Better than Basel

Stefano Micossi


l  多国籍企業への課税

NYT April 28, 2012

How Apple Sidesteps Billions in Global Taxes

By CHARLES DUHIGG and DAVID KOCIENIEWSKI


l  消滅する日本

NYT April 28, 2012

Incredible Shrinking Country

By ROSS DOUTHAT

P. D. James の小説“THE Children of Men” は,未来の,子供が生まれない男性ばかりになった世界を描く.この高齢化するイギリスは人類消滅に適応していく.女性は人形を乳母車に入れてあやし,家族は子猫に洗礼してやる.国営のポルノ・ショップがリビドー啓発に励むが,自殺者が急速に増える.労働者として移民の流入を奨励するが,老いて働けなくなると国外追放する.ついに,地球最後の子供が生まれ,「オメガ」と呼ばれる.その子は長じて,退屈,傲慢,非社交的な,破壊的人間となる.

この小説は,現在すでに見られる兆候を誇張したディストピアだ.発展した諸国では,オランダやスウェーデンのように安楽死が合法化され,ヨーロッパには移入民を増やそうとする国がある.しかし,特にこの小説が予言的であるのは,子供を作れない男たちの国として,日本がすでにあることだ.

人口学者のNick Eberstadtは,日本が地球上でも人口減少の特異なケースである,という.日本がこれほど出生率を低下させ,高齢化が(見かけ上は)人口減少を抑制している背景には,リベラリズムと伝統文化の不幸なミックスがある.日本は世界の中でも宗教性の低い国であり,伝統的な見合いや家族の義務として結婚する者が減少し,しかも離婚率は北欧並みに大きく上昇した.

非嫡出子への伝統的な差別は残り,未婚の出産や育児は少ない.21世紀になっても,移民の流入に不信感が強い.2009年に,日本へ帰化した人数は,スイスに帰化した人数のわずか3分の1であった.しかもスイスの人口は日本のわずか6%である.

James のディストピアは日本に存在している.発達した諸国で最高レベルに属する自殺率.インターネットを介して仲間を集める自殺者たち.結婚式用に「レンタルできる」家族・親族.老人たちを慰めるために開発された「赤ちゃんロボット」.両親に依存して暮らす「パラサイト・シングル」の急増.そして,友達がおらず,ビデオゲームやインターネット,漫画を楽しみに,両親の家でいつまでも暮らす「引きこもり」.

確かに,20年前のアメリカ衰退論者は間違っていなかった.しかし覇権を奪うはずの日本がこれほど急速に消滅へと進むのは予想しなかった.アメリカの将来も心配だが,日本のような落日は来ないだろう.

WSJ April 30, 2012

In Osaka, the Man Who Should Be King

By KEN HIJINO

FP Tuesday, May 1, 2012

National Geographic Society goes Japanese for Clinton-Noda dinner

Posted By Josh Rogin

FT May 2, 2012

Japanese donate to buy disputed islands

By Mure Dickie in Tokyo

FP MAY 2, 2012

Japan Awakens

BY MICHAEL AUSLIN

日本の防衛政策は変化してきた.特に,北朝鮮の核実験やミサイル発射により,ミサイル防衛網の構築では,アメリカ軍との緊密な協力を支持している.特に,尖閣諸島をめぐる中国との紛争は大きな衝撃となった.日本の戦後の制約は徐々に緩和されてきた.自衛隊を海外に派遣し,武器輸出や開発におけるアメリカとの協力を認めた.日本は地域の安全保障により大きな役割を担うだろう.

WSJ May 3, 2012

Japan's Dubious Claim to the Diaoyus

By HAN-YI SHAW

(China Daily) 2012-05-03

Ishihara's poisoned tongue wags again

By Cai Hong


WSJ April 29, 2012

At What Cost EU Membership?

By MARIAN L. TUPY


l  北朝鮮の崩壊後

NYT April 29, 2012

The Day After

By BILL KELLER

北朝鮮で起きていることはほとんど何もわからない.最近,北朝鮮の強制収容所から逃げた男,Shin Dong-hyukの恐るべき物語を読んだ.Blaine Harden “Escape from Camp 14”である.奴隷として死ぬまで労働を強いるthe slave labor campsの一つであり,体制にとって信頼できない者とその親類縁者,約20万人が収容されている.

Shin Dong-hyukはあらゆる意味で収容所の産物である.収容所の看守が選んだ模範囚の男女によって生まれ,電流を流したフェンスの外の世界を知らない.この物語は,なぜ北朝鮮が,ヒトラーや,スターリン,毛,ポル・ポトよりも長くその体制を維持しているか,を教えている.すなわち,強制的な孤立,衰弱死の恐怖,人間性を失うほどの飢餓,そして,国家への完全な服従,である.Shin は,6歳の少女が死ぬまで殴打されるのを見た.Shin自身の情報で自分の母と兄弟が公開処刑されても,彼は良心の呵責を感じなかった.

しかし,かつて誰もが崩壊を予想する中で,北朝鮮が生存すると分析した専門家,Marcus Nolandは,最近,北朝鮮の体制が衰微する兆候を見ている.それは29歳の金正恩が権力を継承して,ミサイルの発射実験に失敗したことにも顕著である.それにとどまらず,非合法な商取引が広がって,「市場が国家の統制力を侵食している」という.「1800カロリーで生き延びる彼らが<アラブの春>のように反乱を起こす力はない」けれど,内乱やクーデタ,隣国との戦争から崩壊に至る可能性は高い.

つまり,われわれは間違った問題を解いていたのだ.北朝鮮をどうすれば交渉の席に就かせることができるか? (彼らは決して武器を手放さない.) どうすれば崩壊を促せるか? (中国が崩壊を恐れて支援する限り,制裁には意味がない.)

むしろ,重要な問題は,崩壊後に何が起きるか,である.中国,韓国,日本,ロシアが,核物質の秘密組織への流出を恐れて殺到するだろう.パニックに陥った司令官が(警告通り)ソウルに爆弾の雨を降らせるかもしれない.中国やロシアが軍事的優位を得ようと軍隊を送るのではないか? 収容所の司令官たちは証拠を隠滅するために囚人たちを殺戮して埋めてしまうのではないか?  再建過程で,どうやって韓国を破産から守れるか? など.

崩壊後の問題は少なくとも10年以上続くだろう.

SPIEGEL ONLINE 05/02/2012

A Glimpse of North Korea

Travels in the Empire of Kim Jong Un


WSJ April 29, 2012

Iran and Obama's Syria Hesitation

By JOHN BOLTON

WP May 1, 2012

How long must Syrians wait?

By Richard Cohen

NYT May 1, 2012

Tanks, Jets or Scholarships?

By THOMAS L. FRIEDMAN

アラブの春から1年がたったとき,アメリカは二つのことをした.どちらも13で始まる.一つは,エジプトに13億ドルの軍事援助を行った.もう一つは,レバノンの公立学校に1350万ドルのアメリカ留学奨学金を与えた.

どちらがアメリカにとって友好関係を深め,安定性をもたらす意味があるだろうか?

Project Syndicate 02 May 2012

The Anarchy Factor in Syria

Itamar Rabinovich


l  移民政策の解決

FT April 30, 2012

A bottom-up solution to America’s immigration dilemma

Jagdish Bhagwati and Francisco Rivera-Batiz

アメリカの正しい移民政策をめぐって,アリゾナなどの厳格な規制が最高裁に合憲性を問われている.オバマの民主党と,ロムニーの共和党は,移民政策について全く意見がかみ合わない.しかし,正しい移民政策は合意できる.それを州間の移民労働者を求める競争によって決めればよい.

過去の移民法改正も,民主党系の大統領が試みた国外追放も,アメリカ国内の「非登録」(非合法)移民の暮らしを苦しくしただけで,移民流入を減らせなかった.国境警備の予算は爆発的に増え,国境にフェンスや要塞が建てられた.それは非合法移民たちをより危険な砂漠越えの道に追いやった.

法的かつ政治的に,実行可能な解決策が見つかると思う理由は,厳しい規制を行った州から規制の少ない,彼らに親切な州に,非業移民が大規模に移動しているからだ.厳しい規制はすたれるだろう.なぜなら彼らも移民労働者を必要としているからだ.


SPIEGEL ONLINE 04/30/2012

Nuclear Non-Proliferation Treaty

'It Is Our Shared Responsibility to Ensure We Do Not Fail'

FP APRIL 30, 2012

What Lies Beneath

BY WILLIAM TOBEY


l  Gゼロ世界の秩序

FP APRIL 30, 2012

The New Math of Geopolitics: Does It All Add Up to G-Zero?

A conversation between Ian Bremmer and David Rothkopf.

INTERVIEW BY DAVID ROTHKOPF

Ian Bremmer の新著(Every Nation for Itself: Winners and Losers in a G-Zero World)をめぐる二人の対話です.世界には指導的な秩序が無く,大国は内向きで無責任になり,国際機関によるガバナンスは無能である.第二次世界大戦後の,アメリカが指導する国際機関や制度化は終わったのだ.

2008年の金融危機以前は,米中関係がウィン・ウィン的な性格を維持していた.しかし,危機後の不況はその関係を変えた.ゼロ・サムに変わったのだ.

国際秩序にとって地殻変動はめったに起きない.それは第二次世界大戦以来のことだ.Gゼロ世界では,主要な大国が安全保障で合意を形成できない.すでにシリアがそうなっているように.中東でも,アジアでも,米中は新しい秩序に合意できない.

Project Syndicate 30 April 2012

Re-Capturing the Friedmans

J. Bradford DeLong

アメリカにおける不平等の拡大を観れば,今は1979年ほど,フリードマン夫妻の主張,小さな政府のリバタリアン,が支持されないだろう.なぜならフリードマン夫妻は三つの議論で自分たちの主張を正当化していたからだ.

1.マクロ経済の苦境は政府が引き起こすものであって,不安定な民間市場が原因だというのは間違っている.政府が大恐慌の原因だった,とフリードマンは主張した.しかし,実際はフリードマンの主張が違い形で,すなわち,財政政策に反対し,金融政策として,十分な流動性を供給せよ,となった.それはリバタリアンの意見ではない.

2.外部性は大きくないから,契約や法律によって解決できる.政府の規制や介入は問題を悪化させる.

3.政府が導入する強制的な差別化が無ければ,市場は平等な分配を実現する.

確かに,フリードマンが言うように,完全雇用と機会の平等がある,繁栄する社会が,政府の経済に対する関与を減らすだけで,最低限のセーフティー・ネット,裁判所,安定して増加する貨幣供給さえあれば,実現する,というのは素晴らしい話だ.しかし,フリードマンが描いた世界は,われわれが住む現実世界と全く違う.

FT May 1, 2012

The Middle East will suffer from our G-zero world

Ian Bremmer

Project Syndicate 01 May 2012

The Resistible Rise of Asia?

Brahma Chellaney

YaleGlobal, 2 May 2012

A Plague on All Houses

Pranab Bardhan

政治的陰謀,汚職,人権などが中国式の権威主義体制を色あせたものにしているが,アメリカやインドのそれに代わる政治体制も同様の問題に苦しんでいる.政府の機能マヒと不平等の拡大が国民の間にポピュリズムを広めてしまう.中国ではそれが,政府の操作するナショナリズムの形を取る.国営企業は大き過ぎて潰せない.資本の浪費は激しく,新規参入は阻まれてしまう.思想や意見交換の統制は革新を妨げ,創造性を破壊する.

しかし,インドやアメリカの民主主義でも,政治が機能マヒを起こし,不平等が拡大している.それは近視眼的なポピュリズムに対する支持を強めてしまう.しかし,たとえ貧困層の救済として唱えられた政策でも,肥料への補助金のように,その利益は富裕者たちに流れるのだ.財政赤字の削減では,貧困層を減らすために必要なインフラ整備を削ってしまう.アメリカではそれが減税策に現れ,エネルギーや炭素に課税する合理的な提案,そして,医療や教育への支出を葬ってしまう.

極端に異質的で,対立する要素の多いインド社会では,集合行為が非常に難しい.国民規模の正統が衰退し,地方の,特殊利益を守る,領主的な政治勢力が,不安定な同盟に依拠して政策を決める.野党は,自分たちが政権を握ったときに唱えたはずの改革案を,今度は否定する.政党以外にNGOなどの議会外の政治活動がこの対立を緩和することはない.

インドでもアメリカでも,24時間放送のテレビが政治対立を刺激し続け,重要な問題から注意を分散してしまう.それゆえ,両国の民主主義制度は問題点を改善し,さらに,長期的問題に関して意思決定する制度的メカニズムを創案する時期である.アメリカのフィリバスターやインドの内閣不信任案提出は抑制されるべきだろう.また,両国とも特殊利益団体からの献金は監視を強めるべきだ.

極端な不平等の是正は,全体として,政治への信頼を取り戻す.それは短期的な犠牲を受けても,全体の利益を実現する長期の改革に支持を増やすだろう.


NYT May 1, 2012

Missed Chance

WP May 3 2012

A war that’s bigger than Afghanistan

By William Kristol

WP May 3 2012

Obama’s two-sided vision of peace


l  中国の経済改革

NYT May 1, 2012

China’s Vanishing Trade Imbalance

By EDUARDO PORTER

FT May 2, 2012

Time for China to give up financial repression

Yukon Huang

Project Syndicate 02 May 2012

Why a More Flexible Renminbi Still Matters

Kenneth Rogoff

中国経済の経常収支不均衡は急速に消滅した.しかし,今も不均衡は続いている.為替レートに過度の注目した論争は間違いであり,過剰投資への依存こそが問題なのだ.

中国における投資はGDPの半分を占め,世界の平均から見て2倍以上である.また消費はGDP40%でしかなく,それは同程度に発達した市場経済では60%である.

経常収支黒字が減った理由は,1.輸入原材料の価格高騰,2.先進経済の不況による中国からの輸出減少,3.人民元の実質為替レートの増価,4.金融危機の影響を恐れて政府が実施した莫大な追加投資,であった.

中国が人民元を変動為替レートに移行させる必要は,こうした様々なショックに対して,変動為替レートがそれを安定化するだろう,という点にある.だから,経常収支の黒字が消えたことによって重要な改革を忘れてはならない.

FP MAY 3, 2012

China's iPad Generation

BY DEBORAH JIAN LEE, SUSHMA SUBRAMANIAN


l  グローバリゼーション下の改革

BLOOMBERG May 1, 2012

Liberals Need To Exploit Progress, Not Fight It

By Clive Crook

グローバリゼーションとIT革命によって経済変化は加速している.その結果,ますます多くの仕事に特別なスキルが求められている.それによって人々が終身雇用を失い,より大きな経済的リスクを持つようになる.もう一つの結果は,所得格差の拡大である.

こうしたリスクと不平等は,すでにリベラルの主要なテーマになっているが,その対策には間違いがある.必要なことは,変化を阻止するのではなく,それに適応することだ.セーフティー・ネットは重要だ.年金制度は引退する者が増えて財政破たんにつながるから,存続のためには改革することになる.一括して給付を減らすのは間違いで,支給年齢の引き上げや資産制限を設けるべきだ.

リベラルにとって最も難しいのは,労働組合を改革の反対派として正しく糾弾することだ.アメリカの教員組合はその典型だ.供給側の弾力を失わせている.

変化の苦痛は減らすべきだが,リベラルがそれを妨げてはならない.

WP May 2, 2012

What Singapore can teach us

By Matt Miller

アメリカの騒がしく,汚れた,冷遇される,ロサンジェルス空港LAX, ダラス空港Dulles and ニューヨークのJFケネディー空港JFKを耐えて,シンガポールのチャンギ空港Changi airportへ着くと,私たちは啓示を受ける.ここは公共政策や統治の楽園だ,と.

仕事に打ち込む,高度な教育を受けたテクノクラート,長期の一党支配という「贅沢な条件」,それらが歴史的にユニークな配合を得て,政府は常に長期的視点で,プラグマティックに問題を解決する.国民を幸せにする独裁が,これほど成功したことはないだろう.経済発展,汚職の少なさ,交通・輸送システム,公共住宅,都市計画・気候変動対策,財政の健全さ,を観ればよい.

アメリカ人は,「大きな政府」か「小さな政府」か,と論争し続け,もっと重要な課題を忘れている.イデオロギーではなく,仕事が重要だ.税率は低く,ビジネスに適した環境で,政府は教育とインフラ整備・住宅に積極的にかかわる.こうしたエトスを,アメリカは失ったのだ.リベラルは,正しい指摘だが,シンガポールの市民的な自由が制限されているのを批判する.保守派は,間違って,積極的な,高度な能力を発揮する政府の姿を見ない.しかし,アメリカの再生に必要なものは,ここにある.


guardian.co.uk, Thursday 3 May 2012

China: one man, two empires, an unholy mess

人権活動家,Chen Guangchengのアメリカ大使館への避難問題に対応しつつ,「米中戦略経済対話」を開催した北京政府は,1989年と違って,共産主義者の自由貿易支持者たちは,もはや弾圧を続けることができない.

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The Economist, April 21st 2012

The third industrial revolution

Reshaping banking: The retreat from everywhere

The return of the euro crisis: Beyond battlefield medicine

Charlemagne: April showers on the euro

Free exchange: Joined-up thinking

France’s presidential election: The anti-Sarkozy vote

North Korea’s gulag: Never again?

North Korea’s prison camps: The gulag behind goose-steps

Myanmar’s army and the economy: The road up from Mandalay

Demography: China’s Achilles heel

(コメント) 生産工程が全面的にデジタル化することで何が起きるか? 特に,3Dプリンターを強調します.それは,工場制度を終わらせて,労働コストへの依存も消滅し,製造業や工業力というものを,もっと自由な概念に変質,あるいは,消滅させます.新しい製造業は,低賃金の新興諸国から離れて,豊かな諸国の先端産業地区に集積されるだろう,というわけです.しかし,特集記事は,それをむやみに拡大して,内容を薄めているように思います.むしろ,銀行業が超国籍化するブームを終えて本国に帰還していることに,もう一つの産業再配置を感じます.

ユーロ危機が再来,再再来,再々再・・・ いつまで続けるのか? フランス大統領選挙で,サルコジと汎サルコジが戦います.論争点は,こんな男にフランス大統領をさせるのか? です.ユーロ支持・EU官僚たちは,サルコジの再生を期待する態度が消えて,その演説に増えたEU統合批判に失望しています.どのようなユーロ債で,危機を終わらせるのか? 3つの提案を紹介しています.

北朝鮮の強制収容所に関する紹介があり,ミャンマーの軍政が経済や密輸を支配することへの警告があります.そして,どちらの政権にも関わってきた中国政府が,本当に対処できないような難点を,急激な人口変化(高齢化,社会保障システムの負担,労働力の不足,など)に見つけています.

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IPEの想像力 5/7/12

人口減少で衰退する諸国に,「オメガ」は生まれています.オメガというのは,NYTのコラムで知った,子供の生まれなくなった人類社会を描く小説で,最後に誕生した赤ん坊の名前です.

今日,届いた『フォーリン・アフェアーズ・レポート』2012No.5に,S.P.クレーマー「ベビー・ギャップ:出生率を向上させる方法はあるのか」が載っています.このReviewでも,The Economistの記事を含め,人口減少問題を扱った論説をいくつも紹介してきました.

日本はアジアのベルギーになる,と私は警告しましたが,クレーマーも書いています.「いずれ先進諸国は,第三世界という海に翻弄される小島のような存在になっていく」,と.

クレーマーは,人口減少を逆転するのは難しいが,スウェーデンやフランスは成功した,と指摘します.特に,スウェーデンではミュルダール夫妻が早くも1934年に出版した本で,女性のキャリアアップと負担の社会化を唱えました.そして,子供が少ないか,いない家庭から,子供の多い家庭に,所得を再分配する政策を明確に唱え,スウェーデン政府は実行しています.

日本についても,絶対人口が既に減少しており,少子化対策は中途半端で,女性の社会進出も失敗している,とクレーマーは書いています.アメリカやヨーロッパ各国は,移民流入と帰化に積極的な政策を採ってきました.フランスの未婚出産が多いのは,パートナーとの安定した関係を維持できる大人たちが多いからです.それらを日本にふさわしくないと否定するのは愚かだと思います.

財政再建やユーロ危機を脱する方法として,緊縮策よりも,人口増加と若干のインフレを実現する方が社会にとって好ましいでしょう.それは,日本の財政再建やデフレ,人口減少についても言えます.たとえば,・・・女性がもっと社会進出できる,・・・若者が積極的に起業できる,・・・移民たちにも様々な機会が公平に与えられる,・・・子育ての負担が社会化される(子供のいない家庭や単身者,高所得を得ている高齢者が,子供を育てる低所得の家庭を積極的に助ける),・・・教育や医療,福祉サービスなど,様々な改革をその社会に合った形で実現すれば,人口減少を回避できます.

私は,穀物の国際価格の下落と自由貿易に関するKindlebergerの素晴らしい考察を思い出しました.鉄道の延長でウクライナなどから安価な穀物が流入したとき,農業をあきらめて「自由貿易」に従う国だけでなく,安価な穀物を輸入する一方で高付加価値の酪農に転換した国,価格を引き下げるために農民への政治支配と搾取を強めた国,あるいは,政府の無策によって農業が崩壊し,大量の移民流出に至った国があった,という話です.イギリス,オランダ,ポーランド,イタリア,です.

たまたま読んだ「プリンストン発 新潮流アメリカ by 冷泉彰彦」のコラム,「鴻海精密によるシャープ買収をどう考えるのか?」20120411日(水)に胸を打たれました(ニューズウィーク日本版).台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業グループは,AppleiPad組み立てと,色々な問題で注目されたFoxconnの親会社です.日本の報道では,これを「提携」や「共存共栄」と書くが,そうではない.日本の電器産業は衰退して,国内企業や銀行からの支援も得られず,円高でも買収に意欲を示した台湾企業に身売りするしかなかったのだ,と解説しています.

同様に,ロイターの記事を調べてみると,次世代の有機ELテレビではLG電子,サムソン電子,などの韓国企業が,シャープ,パナソニック,ソニーなどの日本企業をリードしている,と伝えています.台湾企業が恐れているのは,日本企業ではなく,中国企業の追い上げです.

日本の「プチ・オメガ」たちは,結婚しないまま両親の家に住みつき,インターネットや携帯電話,ゲーム,漫画だけで,楽しい毎日を送っています.彼らがたとえ就職できても,少子化は止まらず,日本企業を買収した韓国,台湾,中国の企業はアジア各国から重役を日本へ招き,人員整理を果敢に進めるでしょう.

非力を悔やんでも,喜ぶ者はありません.・・・連休です.ブックオフへ行って,司馬遼太郎の『世に棲む日日』を2冊だけ買ってきました(しかも,文庫本の1と3です).少し読みましたが,憂鬱を晴らす勇気をもらいました.かつて日本にも,吉田松陰のような傑物が誕生したのであれば,変化をもたらす私たちの可能性や能力を悲観してはならないな,と思います.

松陰の家は火災に遭って,一切を焼失し,町はずれの農家を借りて畑を耕して暮らしていた,と言います.貧しく,農家と何も変わらないながら,武士であるとは,公のために一命を捧げるという覚悟でした.父は,畑仕事の間にも,幼い松陰をあぜ道に正座させて,素読を行わせました.学問への熱意と危機感は,後に維新を突き動かす人々を生み出します.彼らが,国の形を変えたのです.

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