前半から続く)


l  グローバリゼーションの不安定化

WP June 1, 2013

The dark side of globalization

By James Stavridis

イラン,北朝鮮,アフガニスタンの反政府勢力,シリアの内戦,サイバー攻撃,化学兵器,テロ,・・・ しかし,私が眠れない恐怖を感じたことはそれではない.最も恐るべき脅威は,たとえば,麻薬戦争の拡大であった.

グローバリゼーションの恐怖とは,人々の行動が同時化し,個人の危険な行動,犯罪集団などが,秩序に対する大きな脅威に転化することである.

Project Syndicate 03 June 2013

Globalizing the Security Council

Antonio de Aguiar Patriota

FT June 6, 2013

Nations are chasing the illusion of sovereignty

By Philip Stephens

国家が戻ってきた.1945年の多角的秩序・国際機関は崩壊し,各地にナショナリズムが復活してきた.伝統的な国家主権が強調され,1648年のウェストファリア体制が理想になる.

共産主義が崩壊したとき,人々はポストモダン国家を夢見た.関心が共有され,平和と繁栄を分かち合う.EUは新しい国際秩序のモデルであった.グローバリゼーションが相互依存を強める中で,それは夢ではなく厳しい現実になった.伝染病,テロ攻撃,核拡散,大規模移民,・・・ 資本移動,グローバル・サプライ・チェーン,デジタル時代の緊密化,・・・

その流れは,新興諸国がますます,既存の支配国家が作ったルールに従うより,国家を強化するにつれて転換した.彼らは,ホッブズの絶対的主権を求めた.アメリカは世界の警察官を辞任し,ヨーロッパはユーロ危機で分裂した.主権は犯すべきでない,という主張が,シリア内戦を激化させた.

しかし,アイルランドで聞いたように,グローバリゼーションを支持する声は今もある.大国であれ,小国であれ,相互依存の現実を否定することはできない.非国家主体へのパワーの分散も続くだろう.ヨーロッパの世界経済に占める割合は縮小し,中国の環境悪化やグローバルな開放システムへの依存は続く.比較的自給的なアメリカでも,その安全や繁栄を孤立して維持できはしない.

人々はナショナリズムに回帰できないし,新しい枠組みを求めている.しかし,政治家がそれを実現するより,失敗した例が歴史にはあまりに多い.


l  米中首脳会談

NYT June 1, 2013

How to Play Well With China

By IAN BREMMER and JON M. HUNTSMAN Jr.

オバマ政権が採ってきた姿勢は,基本的に,真剣な対話を含まないヘッジ政策であった.中国の台頭に備えて,より多くの資源をアジアに移す「アジア旋回」を採用した.しかし,それが中国の多くの政府関係者に,冷戦下の封じ込めを感じさせた.中国の不満は米中対立に悪化する恐れがある.

アメリカと中国は,世界最大の経済圏,世界最大の貿易国,世界最大の汚染源である.アメリカは世界最大の債務国であり,中国は世界最大の債権国だ.世界経済のバランス回復,気候変動,無法国家の処罰,アジアの平和,など,アメリカと中国が協力しなければ何も解決できない.

アメリカは中国に自分たちの望むアプローチを採用させることはできない.アメリカはそのようなパワーを持っていない.中国はあらゆる点でアメリカと異なっており.何世紀にもわたってそうであった.それゆえ,中国は新しいルールを決めるだろうし,アジアや世界の覇権をアメリカと争うだろう.

米中G2の枠組みは機能しない.中国指導部がそれを受け入れない.中国は自国を発展途上国とみなし,アメリカと同じような広範な責任を引き受ける気はない.しかし,米中双方は,特定の分野に限って,互いの信頼や協力を得ることができる.

オバマ大統領と習主席は,原則に合意し,パートナーシップを高めるために共同声明を準備するときだ.相互の利益が明白な分野として,クリーン・エネルギーの技術開発,科学研究の協力,発展途上諸国の紛争解決,がある.

他方,中国が核心的利益と考える問題で,アメリカの批判は他の分野でも協力を拒む結果になる.チベット,領土紛争,人権,など,アメリカは中国の立場も認めたうえで,正直な仲介者になることだ.アメリカの進めるTPPは,中国を孤立させるものではない.むしろ,中国との貿易拡大に不安を感じている諸国を安心させるものである.

中国企業のアメリカ投資が摩擦を生じたが,米中はこの問題で,どの分野を拒み,どの分野は歓迎するのか,明確にしておくべきだ.中国における知的所有権や投資制限,ハッカーも問題である.

米中双方から,オバマと習に直接連絡できる作業グループを設けるのがよい.そして,紛争のリスクを避け,特にサイバー攻撃問題で,双方のレッド・ラインがどこにあるかを確認するのだ.習は,ゴルバチョフと同じように改革の必要性を認めているが,情報公開の必要性は認めない.オバマにもそれを変えることはできない.

この二人の関係は,レーガンとゴルバチョフ以上に重要である.なぜなら,両国は相互の経済構造を確実に破壊する力を持っているからだ.

FT June 2, 2013

Obama and Xi tackle ‘trust deficit’

BLOOMBERG Jun 2, 2013

The Coming Cool War With China

By Noah Feldman

BLOOMBERG Jun 2, 2013

What Germany’s Iron Chancellor Can Show Red China

By Pankaj Mishra

FT June 3, 2013

Obama and Xi must halt the rise of a risky rivalry

By Gideon Rachman

中国の成長はアメリカの覇権を終わりに向かわせる.その感覚は,たとえアメリカの市民がはるかに豊かで,きれいな空気を吸えるとしても,外交的な転換を意味するだろう.両国は「ツキディデスの罠」を避けなければならない.すなわち,追い上げられる国が不安によって,戦争の危険を冒すのだ.それはすでに,日中間の衝突に示されているかもしれない.アメリカは日本の安全保障に関わる約束をしている.

他方,アメリカ政府の「アジア旋回」で刺激された,中国の不安も解消されていない.

2013-06-03 (China Daily)

A meeting of immense scope

By Kenneth Lieberthal

FT June 4, 2013

The great powers’ relationship hinges on the Pacific

By Robert Zoellick

米中は,世界最強の国として戦略的な関係を結ぶ.

アメリカはすでに大国であるが,そのパワーは現状維持の政策ではなく,アメリカの理想や利益を拡大するものである.中国は新興の大国であるが,その政策は秩序と不干渉に関する伝統的見解に依拠している.

米中両国は,21世紀の新しい問題や脅威に対して,経済的な相互依存だけでなく,経済と安全保障との関係がどうなっているかを理解して,外交を決定しなければならない.中国もアメリカも,それぞれの改革案を持っており,相互利益の理解から議論を始めるべきだ.食料,安全保障,水,エネルギー,環境,そして,より深く,流動的な,中国の貯蓄を民間部門の発展や投資に広く利用できる金融市場が,共通の利益である.

中国もアメリカも国内的な理由で改革を目指しているが,協力することでそれはさらに前進する.中国のサービス分野と情報技術における競争が,WTOとの交渉が推進するだろう.また,中国が人民元取引を自由化すれば,国際通貨制度は複数通貨によって機能するだろう.開発や環境問題でも,協力の機会が多く存在する.

安全保障分野での関係構築は,一層の難しい.しかし,経済的機会を保証することを基礎に,海洋の自由,オープン・スカイ,エネルギーと資源への自由アクセス,大量破壊兵器の拡散防止,などで協力できる.アジア太平洋における両国の相違は,こうしたグローバルな関心を圧倒するかもしれない.しかし,中国の行動が近隣諸国の反発を招くなら,アメリカの同盟諸国の繁栄と拡大から孤立することになる.アメリカと中国は協力して,平和的な諸国家の地域統合を推進するべきだ.

オバマと習は.型どおりの挨拶を超えて,彼らの戦略を和解させる必要がある.

FT June 4, 2013

Global Insight: China’s ‘great power’ call to the US could stir friction

By Jamil Anderlini in Beijing

NYT June 4, 2013

U.S.-China Meeting’s Aim: Personal Diplomacy

By MARK LANDLER and JACKIE CALMES

FP JUNE 4, 2013

Xi's Not Ready

BY MICHAEL AUSLIN

こうした首脳会談でも,同盟諸国との関係を扱う視点が重要だ.日本やイギリスに比べて,中国との関係は全く異なる.中国は今も,先端軍事技術を盗み,知的財産を盗み,世界中でルールに従わない無法国家を支援している.

それでもアメリカが対話を試みる理由は,単純化すれば,アメリカが中国に経済的に依存しているからだ.両国間の貿易や投資がどうなるか,中国の軍備強化がどうなるか,アメリカ政府は心配している.そして,オバマ政権は中国を,RIMPACの海軍演習に招待し,最高レベルの戦略経済対話を毎年開催する.

これでは人参ばかりで,棍棒はない.国際政治の基本を忘れている.指導者の個人的な親密さで,国家の行動は変わらない.オバマ政権は,対話重視という罠に落ち込んでいる.外交を決めるのは国益であり,そのリストを持って,結果を得なければならない.

WSJ June 4, 2013

The Path to Double Happiness

By HENRY M. PAULSON JR.

WSJ June 5, 2013

Why China Frets Over America's Retreat

By DANIEL BLUMENTHAL

中国は秩序にただ乗りするだけだ.そのコストを支払う気はない.サミットでは,意外なことかもしれないが,中国がアメリカにもっと行動するよう求める.アメリカも,秩序の崩壊を防ぐ姿勢を示したがっている.

FT June 6, 2013

China and America should strike a grand bargain

By Arvind Subramanian

習近平主席は,来週,オバマ大統領と会談する.さらに10年の在職中に,次のアメリカ大統領,WTO事務総長,世界銀行総裁,IMF専務理事にも会うだろう.

それゆえ,これから米中は重大な合意に達する.アメリカがこうした機関でパワーの低下を受け入れ,中国がシステムの真の目的,自由で公平なグローバリゼーションのために,グローバルな指導力をより多く引き受ける.しかし,その前に,両国間で増大する相互不信を克服しなければならない.

中国は開放型のグローバル・システムから最大の利益を得ている.しかし,そのルールがアメリカによって作られてきたことを残念だと感じている.例えば,アメリカはIMFの投票権を譲らないし,世界銀行の融資能力をなかなか増やさない.だから中国はそれと並行する機関を設けた.

情報空間での諜報戦や中国の重商主義的な政策,国家資本主義,また,アメリカの進めるTPPが相互不信を強めている.

重大な合意とは,IMFや世界銀行のような多角的金融機関における中国のパワーと影響力を拡大し,米欧と均衡するまで,アメリカが協力することである.アメリカも,特に債務危機のヨーロッパも,すでにこうした機関で拒否権を持っていない.あるいは,もし彼らがそうしたければ,中国もそうするだろう.通貨でも,貿易でも,それは可能だ.

中国は,グローバルな金融ショックに対する集団的な保険を提供できる.中国は,新しい貿易自由化の多角的交渉を主催できる.チャイナ・ラウンドだ.もし中国が国内で,為替や金融の自由化,国家資本主義の抑制に向けた改革を進めるなら,その主張は信用される.

アメリカはなぜ協力するのか? 中国が既存の機関でパワーを得るなら,その内部にとどまって改革する動機が高まる.その場合,例えば,市場を閉ざすことや,知的所有権を損なうことを望まない.アメリカは,多角主義を通じて,行動を正当化する規範によって中国を抑制すること,ソフト・パワーによる中国への影響力を保持できる.

中国は,国内改革を進めながら,なぜ余分な責任を引き受けるのか? それは,これら2つの目標が一致するからだ.競争の促進や金融の自由化は,中国の国内改革でもある.国際システムの不安定化は好ましくない.

今,アメリカは相対的な衰退の中で,国際システムが中国の台頭に対する最大の防御であると理解する.そのために,本能と利益を抑えて,パワーを譲ることだ.

WP June 6, 2013

Why Washington should be engaging with China

By Carter Eskew


l  ユーロ危機と国家介入主義

NYT June 1, 2013

Prisoners of the Euro

By ROSS DOUTHAT

guardian.co.uk, Monday 3 June 2013

Recession culprits? Start with Alan Greenspan and Jean-Claude Trichet

Dean Baker

FT June 3, 2013

ECB backs away from use of ‘big bazooka’ to boost credit

By Michael Steen in Frankfurt

SPIEGEL ONLINE 06/03/2013

Angela Merkel on Europe

'We Are All in the Same Boat'

FT June 4, 2013

ECB’s untimely change of mind

Project Syndicate 04 June 2013

The Latin Difference

Harold James

フランスのオランドFrançois Hollande大統領は常に,新しいラテン同盟を唱えてきた.緊縮財政に対抗して,スペインやイタリアと同盟するのだ.その見解では,ラテンは所得や富をもたらす国家の能力をより拡大し,個人の仕事に執着する「プロテスタントに勝っている.

このヨーロッパの関するフランスの見方は,19世紀半ば,ナポレオン3世のフランス帝国が築いたラテン通貨同盟にさかのぼる.それはベルギー,イタリア,スイスを含み,世界通貨を目指していた.

当時,イギリスのエコノミスト,バジョットWalter Bagehotは,競争する2つの世界通貨として,ラテンとチュートニックがある,と応じた.彼が「チュートニック」と表現したプロテスタント世界には,南北戦争から回復するアメリカ,ドイツ,イギリスが含まれていた.そして,競争する中で,チュートニック通貨が優先される,と主張した.

近代の経済的差異は,宗教的というより,2つの異なる制度的・憲法的な枠組みに由来する.ヨーロッパにおいて,それは2つの革命,すなわち,平和的で,富をもたらした,1688年のイギリス名誉革命と,暴力的で,富を破壊した,1789年のフランス革命に発している.

イギリスでは,浪費的で,専制的なスチュアートに対して反乱が起き,債務への新しいアプローチを採用するウィリアムとメアリーの王室を立てた.すなわち,代表制の議会で投票を行い,政府は国民全体に対して,債務支払いの責任を持つと表明するのだ.この立憲的アプローチが,宮廷の浪費や戦争への出費を抑えた.それは結果的に,借り入れコストを低下させ,うまく機能する資本市場を誕生させた.それは民間の借り入れコストも下げたのだ.

他方,フランスのアンシャン・レジームでは,規則的に財政破たんを繰り返したが,それは国家債務の満期を延長し,利払いを削減する形を取った.しかし,このことが新規借り入れコストを上昇させたため,フランスもイギリス型のアプローチを中途半端に採用した.すなわち,アメリカ独立革命の後,フランスの支配層は旧来の債務不履行というモデルに戻らず,東インド会社の再編に絡む投機で生じた民間投資家の損失も含めて,政府が吸収したのだ.

しかし,即座に既存の税制が限界に達し,より多くの歳入が得られないまま,大規模な没収による国有財産が政府債務の基礎にされた.それは金融・財政の安定化につながるよりも,国家の能力に対する過度の期待を生じ,社会的な緊張を強めた.

債務不履行を何としても避けるという原則がフランス革命に至った.政治システムが,あまりにも多くの債務を引き受け,コストを無視して支払いを続けたからだ.イギリスはその逆である.フランスには,リスクを正しく評価する資本市場もできなかった.

フランス革命が残した,国家主義的な社会改造,という強力な神話は,今も彼らを苦しめている.


NYT JUNE 2, 2013

The Geezers Are All Right

By PAUL KRUGMAN

FT June 4, 2013

Western healthcare can learn from advances in poorer nations

By MuhammadYunus


l  アフリカ

Project Syndicate 03 June 2013

East Asia’s Lessons for Africa

Joseph E. Stiglitz

アフリカの発展は,中国からの製造業の移転という新しい機会を得た.アフリカ諸国は,ガバナンスを回復し,明確な産業政策によって,限られた資源を生かすべきである.産業政策の原則は,特定産業の保護ではない.教育やインフラを整備することだ,と日本など,東アジアの経験が示している.


guardian.co.uk, Tuesday 4 June 2013

How to destroy the future

Noam Chomsky for TomDispatch, part of the Guardian Comment Network


l  天安門事件の記念集会

NYT June 4, 2013

Thousands Rally in Hong Kong on Tiananmen Square Anniversary

By GERRY MULLANY and CHRIS BUCKLEY


FP JUNE 4, 2013

Cristinanomics

BY DOUGLAS FARAH

FT June 5, 2013

Bankrupt ideas


l  スーザン・ライスの指名

NYT June 5, 2013

Two Liberal Voices for Intervention, but Not in Syrian War

By MARK LANDLER

WP June 6, 2013

Could Rice’s appointment signal a more activist U.S. foreign policy?

By Editorial Board

FP SEPT/OCT 2012

The Point Guard

BY JAMES TRAUB

BLOOMBERG Jun 5, 2013

What Susan Rice’s White House Promotion Means

By Jeffrey Goldberg

WP June 6, 2013

Susan Rice, a provocateur in the West Wing

By David Ignatius

ライスSusan Riceが,ドニロンTom Donilonに代わって,大統領の安全保障問題担当補佐官になる.信頼できるグレーのセダンから,より目立つ,神経質なスポーツカーに代わるようなものだ.政治的な交渉役から,大衆への唱道者に代わる.リスクを回避することにたけた者から,より冒険を好む者に代わる.

ライスは,Brent Scowcroftよりも,Zbigniew Brzezinski and Henry Kissingerに近い.オバマとの緊密な関係は,ライスの重要性を高めるが,他国はライスを裏で利用しようとするだろう.

ライスの最大の使命は,オバマに戦略的な外交の視点を加えることだ.ドニロンの外交は,むしろ受動的であった.ライスが加わることで,大統領は世界に向けた明確なメッセージを示し,漂流するイメージを払しょくする.クールで慎重な総司令官には,より情熱的な安全保障補佐官が似合うだろう.

FP JUNE 5, 2013

The Circle of Trust

By Fred Kaplan

FP JUNE 5, 2013

Peace Offensive

BY AARON DAVID MILLER

Project Syndicate 05 June 2013

The Right Stuff in Foreign Policy

Joseph S. Nye


l  金融秩序の再建

FT June 6, 2013

‘Frankenstein’ CDOs twitch back to life

By Gillian Tett

FT June 6, 2013

Britain must fix its banks – not its monetary policy

By MartinWolf

FT June 6, 2013

Finance: Forced into the shadows

By Anne-Sylvaine Chassany and Henny Sender

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The Economist May 25th 2013

How to save Obama’s second term

The euro crisis: The sleepwalkers

Settlers in Xinjiang: Circling the wagons

(コメント) アメリカではオバマ政権が,ヨーロッパではメルケルやオランドが,中国では習近平が,国内秩序の再編と安定化に取り組んでいます.その成否は,今後の国際秩序に反映されるでしょう.

オバマは,共和党との対立を避け,移民法改革,社会的給付の整理,税制改革に取り組みます.ヨーロッパでは,ユーロ危機を何とか抑えたはずの指導者たちの無為と沈黙が「夢遊病者たち」として批判されます.しかし,中国の進める西域への入植政策こそ,日本や世界に恐怖を与える社会改造計画かもしれません.

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IPEの想像力 6/10/13

アベノミクスだけでなく,世界の金融政策,金融市場が不安定化しています.投資と貯蓄のバランスを回復するような新しいメカニズムへの展望は,容易に見つかりません.政府は,為替レートや株価に頼ることなく,日本の社会・経済制度を改革し,成長を取り戻す努力を続けるべきです.

・・・なぜなら,転換する国際秩序の下で,日本は成長するアジアの辺境にあるからです.

辺境は,中心からの支配が弱く,新しい試みが始まる土地です.しかしまた,次第に衰退し,変化の波から外れた,荒廃した土地にもなります.

日本は,確かに世界第2位の経済規模を実現したとき,アメリカに国際秩序の転換を要求しませんでした.安全保障でも,資源・エネルギーでも,市場や技術でも,日本はアメリカの秩序に大きく依存していたからです.中国は,はるかに自立した政策を目指し,強い文化的自尊心を持つでしょう.しかし,こうした理解は,どちらも急速に失われる条件に拠るものです.

地理的に見れば,中国が,インドとともに,アジアの成長に決定的な影響を及ぼす時代は続くでしょう.貿易や通貨圏を含めて,ヨーロッパがアフリカや中東の成長に関与し,アメリカが南北アメリカ大陸の成長に関与して,グローバルな秩序と統合を模索する時代が来ると思います.

その変化の中で,日本が韓国や中国と,ダイナミックに協力する余地は多くあるはずです.少なくとも,法と,言葉,市場を共有できるなら.

・・・そして,核兵器が廃棄された後,暴力的な衝突を回避し,ドローンや諜報戦を抑える法・制度的条件と技術を人々は追求します.

日本と中国,韓国との軋轢は,特別な例ではないでしょう.もしイギリスがインドのすぐ横に位置して,インドの経済規模がイギリスを抜き,外交的な発言力も持つようになったら,イギリスが民主的制度や成長の条件を世界に広めた,などと言えないほど,植民地時代の罪を責められるかもしれません.あるいは,ヨーロッパがアフリカの植民地化,奴隷制,人種差別主義について責められ,アメリカが中南米への干渉や軍事侵攻,冷戦下の独裁政権支持を責められるでしょう.

新しい時代の地域統合は,こうした国家・民族間の歴史的怨恨を,深い相互理解に導くことができる,優れた指導者や民間部門の協力関係によって左右されます.

人口規模からみて,将来,日本はアジアのベルギーになり,中国とインドが対立する問題の交渉を担う場として,多くの国際機関が立地する,文化的・風土的に洗練された島になるかもしれません.1年以上も政府が成立しないまま,政治的混乱・分離独立で迷走するベルギーになるのは困るけれど,アジアのオランダなら,私はかなり満足です.

・・・大国による秩序だけが現実を変えると思うなら,衰退の兆候を見逃します.アメリカも,中国も,ヨーロッパも,困難な課題に満ちています.

アメリカの元CIA諜報員は情報を持って香港にのがれ,香港やトルコでは強権体制に反発して民衆が声を上げ,ヨーロッパの危機を解決できない「夢遊病者」のような政治家たちへの不満は高まっています.

軍事力,言語,経済成長の条件が変われば,大国の優位は劣位になり,小国の劣位は優位にもなります.日本の文化を愛する者は世界中にいて,日本の風土を愛する者は世界中から支援を寄せるでしょう.それが,まだ国家として領土を主張する存在であるかどうか,わかりませんが,<日本>はアジアのオランダやウェールズであり,住民たちの希望を実現します.

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