HOME > 研究紹介:第三グループ

研究紹介

第三グループ研究紹介

高周波直接通電抵抗加熱を用いた接合手法とナノ繊維・粒子による
接合支援材料の開発

1. 研究目的

連続炭素繊維強化熱可塑樹脂基複合材料(CFRTP)は,量産性,リサイクル性などの面で,量産車両の車体軽量化材料として広く自動車産業において注目されている.しかしながら,素材,成形方法の開発は精力的に行われているものの,最終組み立てに必要な接合技術の開発が遅れているのが現状である.FRTPの場合,電磁誘導加熱やレーザ加熱を用いた加熱溶着法,また,金属メッシュを接合界面に設置し,その金属を直接通電加熱して接合する方法が開発されているが,金属メッシュ適用による重量増加,金属/樹脂界面のはく離などに課題を残している.本センターでは,すでに,CFRTPを被接合部材として,炭素繊維束と樹脂不織布を組み合わせた新しい接合支援材料を開発し,その接合強度の評価を行ってきた[1].しかしながら,究極的には被接合部材間を強化材が橋渡しするような接合はこれまで実現できていない.一方,近年,炭素繊維表面にカーボンナノチューブ(CNT)を析出させる技術が開発されている[2].本研究では,このCNT修飾炭素繊維を用いた接合支援部材やナノ繊維の配列を制御した接合支援部材を開発し,強固な接合が実現できる熱可塑複合材料の接合技術の開発を目指す.さらに,接合強度と接合部ナノ繊維の形態や繊維配向との関係を解析し,ナノ複合材料の接合理論を構築する.

2. 主な研究成果

炭素繊維開繊糸を接合支援部材として高周波直接通電抵抗加熱溶着を行った場合,40秒程度で250℃まで加熱することが出来,鋼板部材のスポット溶接強度である8MPa(スポット溶接部の強度を接合部の面積で除した値)の2倍以上を達成することが出来た[1]。CNT修飾炭素繊維を用いた接合支援部材を接合支援部材として利用することにより,さらなる接合強度の向上が期待できる. エレクトロスピニング法を用いてカーボンナノチューブ(CNT: Carbon Nano Tube)を分散させたポリ乳酸(PLA: Poly Lactic Acid)ナノファイバーの創製を行うとともに,その機械的特性を評価した[3].

高周波直接通電抵抗加熱溶着模式図

図1

エレクトロスピニング法を用いたナノファイバーの創製とその機械的特性評価手法の開発

図2
3. 主な論文

[1]仲野由将,田中和人,片山傳生,篠原正浩,炭素繊維への直接通電抵抗加熱を用いたCFRTPの溶着,日本材料学会複合材料部門委員会第5回自動車用途コンポジットシンポジウム,pp59-69(2013)

[2]Kimiyoshi Naito,Jenn-Ming Yang,Yuta Inoue,Hiroshi Fukuda,The effect of surface modification with carbon nanotubes upon the tensile strength and Weibull nodulus of carbon fibers,J.Mater.Sci.,Vol.47,pp.8044-8051(2012)

[3]名倉真史,田中和人,片山傳生,CNT複合PLAナノファイバーの創製とその機械的特性評価、日本材料学会第62回学術講演会,Paper number616(2013)

グループリーダー自己紹介

田中 和人
生命医科学研究科 教授

プロフィールと連絡先
同志社大学工学部機械系学科に所属していた成形加工研究室は,2008年4月の生命医科学部設立に伴い,バイオメカニクス研究室に移籍しました.バイオメカニクス研究室では,ヒトのため,安心・安全な社会を築くことを目的に,生体・医療材料だけでなく,自動車をはじめとするものづくりに関わる全ての材料を対象として,創製・成形方法の開発,機械的特性評価方法の開発と信頼性評価に関する研究を進めています.教員(2名),学生(M2:11名,M1:13名,4回生:21名)の総勢47名という大所帯の研究室であり,積極的に共同研究を実施していますのでお気軽にご連絡下さい.

連絡先:〒610-0394 京田辺市多々羅都谷1-3
TEL/FAX:0774-65-6408
E-mai:ktanaka@mail.doshisha.ac.jp
研究テーマ紹介

I 熱可塑樹脂基複合材料(FRTP)の成形技術開発と材料特性評価
 ・自動車用途CFRTPの開発
 ・直接通電抵抗加熱方法を用いた炭素繊維強化熱可塑樹脂複合材料の
  高速成形システムの開発
 ・炭素繊維への直接通電抵抗加熱を用いた成形と接合方法の開発
 ・易分解性ポリ乳酸複合材の創製とその機械的特性評価
 ・ダイヤフラム成形を用いたFRTPの成形性評価
 ・熱可塑樹脂複合材料の成形シミュレーション
 ・三次元非接触ひずみ測定システムを用いたノンクリンプファブリック
  (Non-Crimp-Fabric : NCF)の賦形性評価
 ・Pull-out試験による繊維/樹脂界面破壊特性評価
 ・高温下での熱可塑樹脂複合材料の機械的特性評価

Ⅱ 生体・医療材料の創製とその信頼性確保に関する研究
 ・エレクトロスピニング法を用いたナノファイバーの創製と
  機械的特性評価手法の開発
 ・生体薄膜材料(角膜や網膜など)の機械的特性評価手法の開発と信頼性確保

当グループを構成する研究室のホームページをご覧下さい。
研究室HP:http://tkatayam.doshisha.ac.jp/

ポスター発表で質問に答えるM2の学生

Ignaas Verpoest名誉教授(ルーベン工科大学,左)と2011年から1年間在外研究を受け入れてくださったAdriaan Beukers名誉教授(デルフト工科大学,右)と

ページのトップへ戻る