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研究紹介

第二グループ研究紹介

ナノ繊維・粒子の構造制御技術を応用した新規ナノ複合材料の
信頼性とその安定化

1. 研究目的

当,第2グループでは,複合材料を高機能化すると共に,その複合材料の高機能を活用した応用研究を行っている.中でも特に,ナノ物質の構造や形態を評価し,その機能発現メカニズムを解明することで高機能な複合材料の開発を目指している. 具体的な活動としては,新規ナノ物質による高強度・高機能化複合材料の発現メカニズムの解明とその把握したメカニズムを応用した新規ナノ物質添加複合材料の開発技術を展開し,ナノ繊維・粒子の構造制御技術を応用した複合材用の信頼性の安定化を行っている.またナノ物質介在による界面の接合状態の把握とそのメカニズムの解明による強度向上の提案を行い,ナノ複合材料界面の構造解析による高強度化強度発現メカニズム解明と最適形状,形態,配置の力学的設計指標の構築を行っている.さらに,ナノ複合材料界面の構造解析による摩擦・摩耗特性の発現メカニズムの解明も行い,ナノ物質添加複合材料表面の摩擦・摩耗特性向上のためのナノ物質の構造制御技術の提案も行っている.またナノ複合材料界面の構造解析による減衰特性の発現メカニズムの解明し,ナノ物質添加複合材料の減衰特性の把握とメカニズム解明による最適減衰特性への構造制御の技術の確立も行っている.

2. 主な研究成果

微細ガラス繊維の母材への添加による平織りCFRPの疲労き裂進展の抑制効果に関してその疲労寿命に対する効果を定量把握し,その上で複合材料中の繊維表面付近を進行するき裂進展をモデル化した評価実験を実施し,これにより繊維束周辺でのMode-I およびMode-II破壊じん性は,微細繊維添加によりそれぞれ,5.5~6.5倍,および2.6~4.9倍に向上する事を示した.また,CNTマルチスケール複合材料の成形と力学特性評価を行うとともに,CVDにてPAN系炭素繊維表面にCNTを成長させるプロセスを確立し,CNT析出にともなって炭素繊維/エポキシ樹脂間のIFSSが約224%,ILSSが約32%それぞれ改善できる事や,CNT析出による界面特性の向上がよりマクロなスケールにおいても得られる事を示した.また,ナノクレイの一種であるハロイサイトナノコンポジットの創製と特性評価を行い,アスペクト比が大きいハロイサイトを用いると補強効果が発現する事や,硫酸処理を1時間行うと,未処理材と比較してハロイサイト含有率6wt%の複合材料の引張強度が10%改善できるなどを明らかにした.また,CNT添加PPS複合材料のトライボロジー特性についても検討し,CNTを添加することによって,射出成形後のCNT/PPS複合材料の摩擦係数は添加率と相関性を持たないが,HV硬さと耐摩耗性が向上することを明らかにした.さらにゴム,ポリマー,金属やその粒子からなる複合構造物の実際のアプリケーションの応用研究例の一つとして,2層対称積層ベルト構造を考慮した複合構造を有するタイヤの接地・転動時における半径方向振動挙動をを解析的に明らかにできる力学モデルを提案した.

(1)ナノおよびサブミクロン物質の介在による複合材料の強じん性化機構の例

図1

(2)改善された複合材料の実際性能を評価する実験例

図2

(3)高機能化された複合材料の高弾性特性を利用した伝動軸継手の開発例
 その耐久性保障試験の実例

図3
3. 主な論文

[1]Nguyen Tien Phong, Mohamed H Gabr, Le Hoai Anh, Vu Minh Duc, Andrea Betti, Kazuya Okubo, Bui Chuong, Toru Fujii, Improved fracture toughness and fatigue life of carbon fiber reinforced epoxy composite due to incorporation of rubber nanoparticles, Journal of Materials Science, Vol.48, Issue 17, pp.6039-6047 (2013)

[2]Matsubara, T.Koizumi, N.Tsujiuchi, Y.Hirano,and F.Nakamur, The Effect of Contact Patch Restriction for Tire Vibration Characteristics, Proceedings of ISMA2012
International Conference on Noise and Vibration Engineering, pp.1595-1602 (2012)

[3]Ke Liu, Hitoshi Takagi, Ryosuke Osugi and Zhimao Yang, Effect of physicochemical structure of natural fiber on transverse thermal conductivity of unidirectional abaca/bamboo fiber composites, Composites Part A, Vol.43, pp.1234-1241 (2012)

グループリーダー自己紹介

大窪 和也
理工学研究科 教授
(副センター長)

プロフィールと連絡先
同志社大学理工学部エネルギー機械工学科,および同志社大学大学院理工学研究科教授.
繊維強化高分子系複合材料の新開発および耐久性の研究,自動車用CVT(無断変速機)の伝動特性の構造評価,搬送用ゴムベルトの走行エネルギー特性の構造評価,などを専門分野とし,その一環として,最近では環境に優しい天然繊維や高性能カーボン繊維を用いる高機能複合材料の開発と応用研究を主なテーマとしている.
所属学会は,日本機械学会,日本材料学会(複合材料部門委員会),ゴム協会,ベルト伝動技術懇話会,自動車技術会.日本接着学会.

連絡先:〒610-0321 京都府京田辺市多々羅都谷1-3
研究室の声
当研究室は,同志社大学の大学院工学研究科と理工学部に所属し,主に構造物の力学的な挙動の原理や,その応用を研究する研究室である.教授2名(藤井透,大窪和也)と,例年,大学院生約20~30名(後期課程院生を若干名を含む),学部学生15~20名の程度の学生により構成される比較的大所帯なゼミである.主には,
 Ⅰ 先端複合材料の構造と開発に関する研究
 Ⅱ 環境に優しい新材料の開発(低炭素化社会に向けた取り組みのテーマ)
 Ⅲ 動力機械または動力ユニット構造に関する研究
の3つのテーマを研究の柱に,これらに属する各種の課題テーマについて,構造工学の視点から研究に取り組んでいる.当研究室では実際の社会ニーズへの貢献と学界活動,国際化を活動の主眼としており,当研究室の学生諸君には国内外での口頭発表を研究室修了の要件としている.当研究室の最新の動向に関しては,逐次,以下のページをご参照頂きたい.
研究室HP:http://amsel.doshisha.ac.jp/index.html

当グループを構成する各研究室のホームページ
藤井・大窪研究室:http://amsel.doshisha.ac.jp/
松岡・平山研究室:http://www1.doshisha.ac.jp/~tribolab/
辻内研究室:http://moavic.main.jp/

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