IPEの果樹園2019

今週のReview

3/11-16

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アメリカの「社会主義」 ・・・オムレツから卵を作る ・・・インドとパキスタンの紛争 ・・・ヨーロッパ政治の再編 ・・・グローバルな税制改革 ・・・米中貿易戦争

[長いReview

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主要な出典 FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Foreign Policy, The Guardian, NYT: New York Times, PS: Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, Yale Globalそして、The Economist (London)

[これは英文コラムの紹介です.私の関心に従って,いくつか要点を紹介しています.関心を持った方は正しい内容を必ず自分で確かめてください.著者と掲載機関の著作権に従います.] 


 アメリカの「社会主義」

NYT Feb. 28, 2019

Socialism and the Self-Made Woman

By Paul Krugman

イヴァンカIvanka Trumpについて雑談してはどうか?

彼女は最近、グリーン・ニュー・ディールについて、その一部に含まれる、政府の雇用保障という考えを否定した。トランプ嬢は、アメリカ人なら何でも就きたい仕事に就く、と言う。上昇する可能性を持つ国に住んでいるのだ、と。

父親の名前でビジネスしている人間に、自立精神のレクチャーなどしてほしくない。しかし、社会的な上昇に関しても多くの研究がある。アメリカはこの点で特に例外的だ。例外的なほどに悪い。貧しい親の子供は貧しいままで、裕福な家庭の子供は豊かな地位に就く。他の先進国に比べて、それが多い。

アメリカ人が思っているのとは逆に、ヨーロッパに比べて、われわれの社会的移動性の方が低いのだ。

アメリカの例外的に低い社会的移動性は、その例外的な高い所得の不平等性とは区別される。しかし、これらは明らかに関係がある。不平等と移動性の強いマイナスの相関関係を「ギャツビー・カーブ」と呼んだりする。

社会的移動性の高い国はどこか? 北欧諸国である。カナダも高い。そして、北欧諸国は、単に不平等が少ないだけでなく、われわれよりもずっと大きな政府、ずっと大きなセーフティーネットを持っている。それらは共和党が「社会主義」として非難するものだ。もちろん、本当の社会主義とは違う。

もし共和党の右派か、進歩的な民主党が、その政策を実行した場合、どうなるだろうか?

ティーパーティが政策を決めるとしたら、メディケイド、フード・スタンプ、その他の貧困層を助けるプログラムを大幅に削減し、公教育の予算も削る。他方、富裕層の所得を増やすような減税、相続税の廃止で多くの金を子孫に残す。

対照的に、もし進歩的な民主党員たちが政策を実現すれば、国民すべてに医療保険、無料か、補助を受けた大学授業料、そして、中低所得の両親に質の高い幼児教育を利用可能にするだろう。彼らはその費用を、高所得や多額の資産に課税して得る。

どちらの政策が、裕福な者の子供を豊かに保ち、貧しい者の子供が貧困から逃れられないような、階級システムに固定するのだろうか? われわれが住みたいと思う国にするには、世界中の高い社会的移動性を示す国が採っている政策、まさに、共和党が社会主義とみなす政策が必要なのだ。

FT March 1, 2019

Quantitative easing was the father of millennial socialism

David McWilliams

FP MARCH 1, 2019

Bernie Sanders Still Doesn’t Pass the Commander-in-Chief Test

BY SUZANNE NOSSEL

NYT March 5, 2019

What’s Left of the Center-Left?

By Ross Douthat

NYT March 4, 2019

Medicare for All’: The Impossible Dream

By David Brooks

FT March 7, 2019

Fear versus socialism — America’s looming choice

Edward Luce

アメリカ人の多くは「社会主義」を望むのか? 多くの人々が現在のやり方にうんざりしている。「社会主義者たち」が求めているのは、より累進的な税制、国民全体への医療保険制度、学生ローンと学費の大幅引き下げ、インフラの近代化、である。

その費用は莫大だ。アメリカ人が負担する具体的な方法、見通し、は立っていない。

これはヨーロッパの社会民主主義が実現していることだ。しかし、彼らは戦争の荒廃を経験した後、ファシズムの再現を恐れて実現した。アメリカが平和時に実現するのはむつかしい。

たとえ「社会民主主義」であるとしても、トランプは2020年の大統領選挙を「自由と社会主義の戦い」と宣伝するはずだ。彼にとって、それはベネズエラだ。


 オムレツから卵を作る

The Guardian, Fri 1 Mar 2019

We now know the great prize of Brexit: becoming Trump’s prey

Jonathan Freedland

覚えているだろうか? 2016年の国民投票に向けて多くの甘い約束がなされた。毎週35000万ポンドのボーナスだ。離脱というのは、痛みのない、リスクのない、選択肢だと思った。そして輝かしいアメリカとの通商協定だ。

その後、すぐにBrexit担当大臣になったDavid Davisは言った。投票から数週間後だ。「我々はEUよりもはるかに大きな自由貿易圏を交渉できる。」 アメリカと合意し、中国とも合意すれば、われわれの貿易圏はEUのほぼ2倍になるだろう、と。

Brexit推進派は、EUの制約を振り払い、「英語圏」を受け入れることだ。22マイルの海峡を挟んだ玄関先の諸国ではなく、3000マイル向こうの巨大な市場がわれわれを待っている。オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカ。

バラク・オバマが英語圏の幻想を批判したとき、離脱派の群集が示した怒りを覚えているだろうか? 離脱後のイギリスはアメリカとの通商交渉の列の最後に並ぶだろう、と警告したのだ。ただちにボリス・ジョンソンは人種差別的な隠語を使い、イギリスの有権者に訴えた。オバマは「半分ケニヤ人さ。」 他方、新しく大統領に選出されたトランプは、英米がすぐに何かできる、と述べた。

トランプの交渉チームは、今までのアメリカ政府と全く違う。それは政府機関の知識に頼らず、作業はすべてトランプに忠誠な者だけが持っている。Robert Lighthizerは、中国との交渉を指導したが、UKとの交渉目標を示した。アメリカの農産物に対する包括的な市場を開くことだ。イギリスのスーパーに塩素で消毒されたアメリカのチキンが並ぶ、。

その要求のいくつかは以前の政権と同じものだ。しかし、トランプ・チームが新しい要求もする。アメリカは、サービスに関してもイギリスのすべての障壁を廃止するように求める。他方、アメリカはその障壁をすべて維持する。ばかばかしいほど一方的な要求だ。

今や、われわれはアメリカ・ファーストのトランプ政権が要求することに抵抗するほど大きな市場を持たない。Brexit後のイギリスは、中規模の国家であり、Noとは言えない。

それは通商交渉ではない。アメリカにとって、政治が重要である。Brexitによる利益は何もない。この3年間で、世界は安定ではなくなった。より危険になった。ヨーロッパを離脱するのは、いつでも、間違いであっただろう。しかし、トランプの慈悲に頼るのは、狂気の沙汰である。

NYT March 2, 2019

The Official British Policy? Mayhem

By Roger Cohen

SWINDON, Englandは、平均的なイギリス人が住む。2016年には、54.6%Brexitを支持した。それは最初の開票結果であり、混乱を示唆していた。

イギリスはヨーロッパの足かせを外す、と言うが、あまりにも多くのことがかかわり、あまりにも少ししかわからない。Brexitがイギリスを破壊した。イギリスが分断される。保守党のメイ首相の部屋には酸素が失われている。46年間のEU加盟を終わることに奮闘して、沈没しつつあるからだ。

WTO議長のPascal Lamyが、オムレツから卵を作るのはむつかしい、と述べた。かつてイギリスにとって大陸は少し嫌なところで、遠かった。EUはそれを変えた。金融、貿易、法律、価値、文化。イギリスは国境のない28の国民と同じ巨大市場を形成し、5億人と、平和、安定性、そして空前の繁栄を、不均等にだが、実現している。イギリスがそこから自分たちを切り離すのは、興味深い自傷行為であり、ドナルド・トランプを選挙で支持したのと同じ、われわれの時代の絶望を意味する。

主要な政党である保守党と労働党は、Brexitによる嵐に襲われて、離脱、内紛、分裂を生じた。ほかでも西側民主主義はリベラリズムの失敗により動揺し、左右の強硬派が勢いを増していた。彼らは不平等と無気力に対して、社会主義、あるいは、イギリスを再び偉大にする、を唱えた。

人々がブリュッセルに対する不満を感じていたことに注目して、“Take Back Control”は優れた選挙スローガンとなって感情をかきたてた。他方、“Remain”は現状維持である。多くの人々はEUを意識せず、魅力のない主張だった。

しかし、実際は、Brexitの決定は災難である。嘘によってできた“Fantasy Brexit,”が、3年の交渉で得たのは“Reality Brexit”であった。低成長、低投資、愚かな政治家たちの退場だ。離脱に代わる通商条約は一部しか締結されていない。トランプは永久に続かない。しかし、Brexitは続く。

先月、ホンダがSwindon2番目の雇用をもたらす企業だが、工場閉鎖を発表した。3500人が失業する。

ギグエコノミー(ITによる経済変化)はEUのせいではない。移民が増えたことも、億万長者に好まれる税制に変えたのも、賃金が上がらないのも。「EUが国民のスケープゴートになった。」

リベラリズムはしばらく成功ていした。人々を、人種差別、性差別、ナショナリズム、偏見から解放した。しかし、生活に意味が失われ、快楽主義、物質主義に流れた。2008年の金融危機でリベラリズムは脱線した。人々は虚脱し、債務に苦しんだ。それに対してエリートたちが人々に与えたものは、偏見とナショナリズムの復活だった。

Brexitを決めた2016年、学生だったWill Dryは、家族がEUは失業と難民を意味すると言ったので、離脱に投票した。今、彼はOxfordを休んで、ロンドンでBrexitを止めるために闘っている。彼が共同代表を務める運動は、“Please stand up for our futures. Signed, young people.”と書いた青いバスをイギリス中で走らせている。それは離脱派が2016年に走らせた、「毎週、46200万ポンドがEUに支払われている。Brexitで国民医療サービスのために使おう。」と書いた赤いバスに対する反撃だ。

リベラルな民主主義は多くの市民にとって失敗だった。Brexitとトランプはその証拠だ。傲慢にもエリートたちはそれを無視した。様々な解決すべき問題がある。教育、医療、税金、移民は、その一部である。ブリュッセルを非難しても、何も解決しなかった。イギリス人はようやくそれが分かったはずだ。

The Guardian, Sun 3 Mar 2019

Europe can only give us more time if we have a clear Brexit plan

Tony Blair

FP MARCH 3, 2019

How to Make a New Party Succeed in Britain

BY GARVAN WALSHE

離党した議員たちが新しい政党を成功させるために、次の11のことをするべきだ。

1.新しい中道政党にはなるな。2.都市と大学町を押さえよ。3.反権力、反体制で行け。4.Brexitが起きた後だ。既存政党を攻撃せよ。5.地方にインフラを作れ。6.有名人に頼るな。7.あわててリーダーを決めなくてもよい。8.小さな資金源を増やせ。9.政策にこだわりすぎるな。10.近くの人々を大義に集めよ。11.アウトサイダー、シンクタンク、メディアを利用せよ

FP MARCH 3, 2019

The British System Is Stacked Against Breakaway Parties

BY MATTHEW GOODWIN

PS Mar 4, 2019

Brexit Is Hell

HAROLD JAMES

NYT March 4, 2019

Is There an Upside to Brexit?

By Jochen Bittner

329日に何が起きるのか? それはイギリスがEUを離脱するB-Dayだ。

EUのもっともグローバルな加盟国が離脱することは、EUの意味や使命を再考させる。新しいグローバルな対立が起きている。その要点は、自由と不自由との市場経済をめぐる対立だ。

これまで権威主義体制は市場経済と両立しない、と考えられていた。彼らは財政や統計を操作し、通貨を破壊する。しかし、中国はその前提を破壊した。人口14億人、25兆ドルの世界最大市場を実現している。次世代の技術、AIについても指導的地位を狙っている。

近代史において初めて、民主的な声が政府をチェックしない国に技術の指導力を渡す。その法的伝統は、個人の権利よりも国家を重視するものだ。ただし、その技術水準は、知的財産の窃盗、不公正な貿易、貧しい諸国、特にアフリカの政府に依存しており、持続するものではない。

中国は、イギリスの帝国とソ連崩壊から教訓を学んでいる。中国は、ヨーロッパと違い、戦略的な構想を維持している。ハンガリーやギリシャ、東シナ海で示したように、中国の莫大な資金力、攻撃的な外交と領土支配は、西側民主主義を侵食している。

ここにはBrexit後のイギリスとヨーロッパが戦略的に協力すべき課題がある。中国との公正な貿易を求める、拡大された西側同盟、ASEANTPPを含む概念だ。

FP MARCH 5, 2019

Hard Brexit Means Hard Times on the Toilet

BY STEPHEN PADUANO

FT March 7, 2019

After Brexit, Britain will be a rule-taker

Philip Stephens


 インドとパキスタンの紛争

FP MARCH 1, 2019

India’s Media Is War-Crazy

BY VAISHNAVI CHANDRASHEKHAR

FT March 2, 2019

India and Pakistan engage in a high-stakes game of brinkmanship

Amy Kazmin in New Delhi

PS Mar 4, 2019

India’s China Problem in Pakistan

SHASHI THAROOR

パキスタンからテロ攻撃があり、40人以上のインド人が犠牲になった。これはインドとパキスタンの紛争ではない。中国はまだパキスタンを支援し、その領土紛争にかかわっている。パキスタンのテロ指導者に対する国際的な制裁に拒否権を行使している。

PS Mar 4, 2019

The Drums of War in Kashmir

SHAHID JAVED BURKI

FP MARCH 5, 2019

Trump Doesn’t Want to Play Peacemaker

BY JAMES SCHWEMLEIN

YaleGlobal, Thursday, March 7, 2019

China and Saudi Arabia Converge on Pakistan

Dilip Hiro


 ヨーロッパ政治の再編

SPIEGEL ONLINE 03/01/2019

Interview with EPP Lead Candidate Manfred Weber

'Viktor Orbán Is Following the Wrong Political Path'

Interview Conducted by Melanie Amann and Peter Müller

ヨーロッパ議会選挙で中道右派European People's Party (EPP)の候補は何を目指すのか。

ホームとは、安全を意味する。・・・長い間知っている環境で、安心できる。世界には大きな変化が起きているから。ホームは遠くに重要だ。EPPはドイツのCSUも、オーストリアのFideszも含む。

PS Mar 1, 2019

Europe’s Leaders Are Aiding Italy’s Populists

YANIS VAROUFAKIS

FT March 7, 2019

Rise of the extreme right transforms Spanish elections

David Gardner

来月のスペイン総選挙は、フランコ体制が終わり民主化後の初の1977年選挙と同じ、重要な意味を持つだろう。しかも、一層、不確実である。

当時、ヨーロッパのアイデンティティが強く、中道右派と中道左派の2大政党によって国家は団結していた。各党がカタルーニャやバスクのナショナリストと組んで、マドリードの政権獲得と地方分権とが取引された。過去の亡霊は埋められた。

40年たって、2大政党は崩壊した。2017年、カタルーニャの分離を求めた住民投票は1978年憲法に違反し、カタルーニャの分断とスペイン・ナショナリズムを残した。右派の3政党が、ますます過激な主張を競い合った。

2007-2008年の金融危機が、不動産バブルと銀行の救済、その後の緊縮策を経て、厳しい爪跡を残した。それは右派を強め、女性の権利を後退させる文化戦争を生じた。バスクの分離派が行ったテロがスペインの民主政治に重しとなっていたが、カタルーニャのナショナリズムはその将来を暗くしている。

カタルーニャ問題を悪化させているのは右翼の人民党PPである。PPは自治権に関する反対運動を展開した。スペインの勝ち取った統一を犠牲にして、党の利益を追求したのだ。分離主義は政治のメインの争点となり、政治システムをアイデンティティ政治に毒した。他の2つの極右、VoxCiudadanos (Citizens)は、カタルーニャに対する反対運動によって支持を拡大した。

右派に反対する勢力も形成されつつある。少数政権を始動し、右派の反対で予算が成立せずに失脚したPedro Sánchezを中心とした社会主義者たちだ。彼らはカタルーニャとアンダルシアで支持されなければ政権を得られない。しかし、どちらもマドリード政府を攻撃し、極左のPodemosは内紛と幻滅に陥っている。

極右を含む右派政権の亡霊がよみがえるかもしれない。女性たちの権利を奪う右派に対して、「文化戦争」が選挙結果を左右する。

NYT March 6, 2019

Germany’s New Political Divide

By Alexander Görlach

人々はバヴァリアをドイツのテキサスと呼ぶ。美しい景観と好景気が特徴だが、それだけではない。テキサスと同様に、バヴァリアは歴史的に政治が分裂していたからだ。小さな町の保守派と、都市のリベラルと進歩派だ。

昨年の州議会選挙でそれが変化した。中道右派のキリスト教社会同盟が権力にとどまったが、議席を失い、社会民主党は都市部で一掃された。社会民主党はどこでも衰退していた。それが驚きではなく、失った議席の行き先だ。それがグリーン(緑の党)だった。

20世紀の後半、ドイツ政治の分断線は、保守派のキリスト教民主党(バヴァリアではその姉妹政党であるキリスト教社会同盟)とリベラルの社会民主党の間にあった。右派は、軍事を除いて、政府支出に反対し、堕胎や結婚に関する伝統的価値を重視した。左派は福祉国家の給付を増やし、よりオープンなドイツ文化を求めた。何より、中産階級は右派、労働者は左派、という階級的な分断があった。

21世紀になって、それが変わった。新しい社会的分断を、イギリス人のDavid Goodhartは、“anywheres”派と “somewheres”派と呼んだ。“Anywhere”派は、教育水準が高く、都市に居住する、リベラルな人々だ。“Somewhere”派は、教育水準が相対的に低く、いなかに居住する、家族や社会に関して保守的な人々だ。

グリーンの躍進はこの傾向を示す。グリーンは環境問題をテーマとしているが、ますます移民やゲイの結婚といった社会問題にも注目するようになった。それこそ“anywheres”派の関心である。社会民主党の階級的な政治も、キリスト教民主党の伝統的価値も、どちらも拒否する。

グリーンの主要な敵は自由民主党、通称、自由党である。グリーンも自由党も、旧2大政党が対立した文化問題では一致している。現在の争点は、技術(自由党はその役割を重視するが、グリーンは懐疑的である)、移民(自由党はカナダ型のルールによる規制、グリーンはより開放的な国境)、経済(前政権の論点を引き継ぐ)、である。

キリスト教民主党も社会民主党も存在するが、その立場は収れんし、時代遅れになった。3度の大連立による政権は、支持者にその違いが分からないものになった。他方、ドイツが直面する新しい困難には語ることが少ない。特に、気候変動だ。自動車産業において世界的な地位を維持しながら、どのようにして脱炭素社会を目指すのか?

グリーンは、言うまでもなく、経済コストを顧みずに、環境を重視した政策を追求する。自由党は、ビジネスや成長を重視し、グリーンの要求はイデオロギー的で、非科学的でさえあり、結局、失敗に終わる、と主張する。こうした政治的再編はドイツだけで起きていることではない。

グリーンと自由党は“anywheres”派の支持を争い、キリスト教民主党と、右派のポピュリスト、ナショナリストである「ドイツのための選択肢」は“somewheres”派の支持を求めて争う。グリーンと自由党が合わせて議会の多数を制するようになればドイツの政治は安定するのか。それは疑わしい。

20世紀の2大政党が極右の台頭に終わった歴史があるからだ。21世紀がその失敗を繰り返してはならない。


 新冷戦

FP MARCH 1, 2019

Failure in Hanoi Doesn’t Mean Peace Is Dead

BY PATRICIA KIM

FP MARCH 1, 2019

The New Cold War’s Warm Friends

BY CHRIS MILLER


 グローバルな税制改革

FT March 3, 2019

Politics enters the global battle against money laundering

Tom Keatinge

マネー・ロンダリングに関する情報収集、判定とブラックリストは、これまでFATFが独占してきた。しかし、欧州委員会が別の金融犯罪にかかわる諸国のリストを発表した。アメリカ財務省は直ちに反論した。金融市場により政治的な介入を行うケースが増えたことで、そのリストには不満が生じている。

FT March 8, 2019

The world needs to change the way it taxes companies

Martin Wolf

移動可能な資本とグローバル企業に対して、どうやって課税するのか? 金融的な複雑化を排して、投資を促す課税方法とは何か? 労働、生産活動には課税しない、レントに課税するのはどうしたらよいか? 複雑な課税回避を辞めさせるにはどうすべきか? 企業に対する課税の底辺への競争をどのような回避するか?

それは資本主義の政治的正当性にかかわる。ラディカルな税制改革が必要だ。生産要素ではなく、レント(地代、不労所得)に課税する。


 米中貿易戦争

NYT March 3, 2019

How Goes the Trade War?

By Paul Krugman

トランプの関税を支払ったのは、アメリカの企業と消費者だ。その額は関税収入よりも多く、アメリカは貧しくなった。

FT March 5, 2019

The US strategy is not the best way to deal with Huawei

Kishore Mahbubani

アメリカ政府はフアウェイに対する戦略的な決定を行った。しかし、その決定の背後に、一貫した戦略はあるのか? フアウェイの改革を促すことが目的か? あるいは、破壊したいのか? それは中国の台頭を管理するアメリカの包括的戦略の一部なのか? 世界はすでに、このままでは終わらない、と考えている。

フアウェイをルールに従わせることが目的なら、国際的な支持を得られるだろう。フアウェイがグローバル企業になるため、それをすでに進めている。中国企業の中でも、最も西側の価値を取り入れ、コーポレートガバナンスについても西側のトップ・コンサルタントを雇っている。

アメリカが安全保障上のリスクを指摘するのは正しい。しかし、アメリカにも、低コストで、第5世代のIT技術を提供する企業はない。アメリカの動機は疑わしい。

フアウェイはアジアやアフリカで支持されている。アメリカは彼らに安全保障に関するリスクやスパイ行為を警告するが、それはアメリカ国家安全保障局がしていることだ。ロシアもそうだろう。

中国が世界最高の地位に就くのを、アメリカははばめるのか?

それは、フアウェイに関しても、中国に関しても、手遅れである。アメリカの一方的な行動でそれを止めることはできない。しかし、多国間のルールによってグローバルに受け入れられるルールを採用させることはできるだろう。

しかし、トランプ政権は多国間アプローチを悪夢だと考える。

FT March 6, 2019

Xi Jinping needs a trade deal just as much as Donald Trump does

Raghuram Rajan

通商交渉は、選挙があるトランプの方が、選挙のない習近平よりも、強く合意を求めているから、中国に有利である。その考えは間違いだ。

選挙のない体制は、常に、正当性を指導部の能力によって試されている。もちろん、大衆的な抗議デモを力によって弾圧することはできる。しかし、そのコストは非常に高くつく。制御できなくなるリスクもある。

民主的な指導者には、前任者の失敗を非難することができる。またトランプは、株価が上昇するときには自分の支持に利用し、株価が下がれば無視することができる。中国にはそれができない。現在の景気減速は、共産党の失敗とみなされる。

習近平が政策を支配するほど、その責任を逃れられない。むしろ合意のために短期的な譲歩をしても、長期的な将来の安定性を得ることが重要になる。

PS Mar 6, 2019

Trump’s Imperial Overreach on Trade

DANIEL GROS

アメリカのトランプ政権は、異常な要求をUKEUに求めた。それは、中国と自由貿易協定を結ぶときは、それが、十分に透明な、適当なものであることを示すメカニズムを求める、というのだ。

貿易相手国にこうした「透明性」を求めるのは、一見、無害のようだが、実は、パートナーの通商政策に対する異常な政策介入である。Brexit後のイギリスには、アメリカの圧力を拒む力がない。しかし、EUUSではなくWTOのルールに従うこともむつかしいだろう。農業の保護などのせいで、十分広い分野で合意することができないからだ。

しかし、アメリカの要求はWTOのような経済的理由ではなく、貿易ブロック化して中国に対抗するためのものだ。それはナポレオンがロシアとの対立で要求し、特に北欧から強い反発を受けたものに似ている。

ナポレオンの帝国はこれで崩壊した。


 ヨーロッパの混乱

FP MARCH 3, 2019

Europe Isn’t Realistic. It’s Weak.

BY ADAM TOOZE

エジプトの軍事独裁政権とEUが外交的な関係を緊密化するのは、リアリズムとして正当化されている。確かに、難民危機を解決するには、その土地の平和を回復し、経済開発が進む必要がある。それには多額の資金と時間が必要だ。EUには限界がある。

しかし、EU内で難民を受け入れる合意ができないとき、問題を周辺の旧植民地国や軍事政権に頼って解決するのは、汚れた仕事をアウトソーシングすることだ。

これはリアリズムではなく、民主的なガバナンスを築けないヨーロッパの選択だ。

The Guardian, Mon 4 Mar 2019

Dear Europe, Brexit is a lesson for all of us: it’s time for renewal

Emmanuel Macron

ヨーロッパは単なる市場経済ではない。それはプロジェクトだ。われわれを団結させる国境や価値を守らねばならない。

PS Mar 4, 2019

Renewing Europe

EMMANUEL MACRON

Brexitの混乱からヨーロッパは何を学ぶか? ヨーロッパ統合は欠かせないし、危険な試みだった。しかし、現状にとどまってはならない。

自由、保護、進歩。ヨーロッパを再建して、それらを手に入れることができる。ナショナリストに利用されてはならない。人々が真に支配権を取り戻すのは、ヨーロッパの改革に参加するときだ。そこにはUKの場所もある。

FT March 6, 2019

Voters must save the EU from illiberal opponents

The Guardian, Thu 7 Mar 2019

Macron reached out to all Europeans, and what does he get? Scorn

Natalie Nougayrède


 国民国家から文明国家へ

FT March 4, 2019

China, India and the rise of the ‘civilisation state’

Gideon Rachman

19世紀に支持されたのは国民国家“nation state”の思想であった。21世紀は文明国家 “civilisation state”であろう。

それは領土や言語、エスニック集団だけでなく、独自に「文明」を主張する。中国、インド、ロシア、トルコ、そして、なんとアメリカも。

中国は西側の価値を拒んで、その繁栄の理由を儒教文化と能力主義的な科挙の伝統に求めた。インドのBJPとモディ首相はヒンディー主義を重視し、ロシアの理論家Vladislav Surkov、アメリカではSteve Bannonが、文明を説く。

それは西側とその国際秩序の衰退、非リベラルな独裁者を正当化する。


 金融政策

PS Mar 4, 2019

Modern Monetary Nonsense

KENNETH ROGOFF

トランプはすでに中央銀行の独立性を損なう主張をツイッターに書き込んだ。論争は始まっている。低インフレ、低金利を利用して、新しい政府支出プログラムを実現できるという民主党の一部の発想も間違っている。

FT March 6, 2019

The ECB must reconsider its plan to tighten

Martin Wolf

ユーロ圏は次の不況に最も近い経済圏だ。それはドイツが世界貿易に大きく依存しているからだ。デフォルトとユーロ圏離脱のリスクも再現している。国によるリスクに違いがあるという不安は、各国の競争力にも影響を生じている。

コア・インフレーションは1%あたりで、金利はゼロだ。次の不況が起きた場合、対応できない。インフレを高める政策に、日本のような巨額の政府債券を購入する方法は禁止されている。それは特にいくつかの国で政治的な反対が強いからだ。しかも、ECBは加盟諸国の政府債券を均等に保有しなければならない。

財政政策も限られている。特に、ドイツは財政再建を緩和するべきだ。しかし、ユーロ圏のためには、もっと大規模な拡大策が求められる。例えば、ECBEIBの大規模な投資を債券購入で支持することだ。

金融・財政政策による安定化を制約することは間違いだ。一層の非伝統的な拡大策を、違法であり、愚かであると反対する声には、古代ローマ人のように反論すべきだ。共和国の安全は常に最高の法である。もしシステムが安全でなければ、安全なものは何もない。

PS Mar 6, 2019

China’s Quiet Central Banking Revolution

MIAO YANLIANG

FT March 8, 2019

Will the ECB ever be able to abandon monetary stimulus?

Martin Sandbu


 通貨価値と開発

YaleGlobal, Tuesday, March 5, 2019

Does a Strong Currency Help, or a Weak One?

Farok J. Contractor


 金融規制

FT March 5, 2019

A Glass-Steagall for tech is not the answer to antitrust worries

Izabella Kaminska


 サイバー戦争の抑制と条約

PS Mar 5, 2019

Rules of the Cyber Road for America and Russia

JOSEPH S. NYE

2016年のアメリカ大統領選挙にロシアが介入したとアメリカの政府機関は批判している。こうしたサイバー攻撃や情報介入を抑止することが重要だ。

しかし、報復による抑止だけではエスカレーションの危険がある。情報を駆使したハイブリッド・ウォーの問題も深刻だ。イデオロギーが異なる米ソ間でも核抑止を交渉したように、外交交渉によって危険な行動を禁止する余地がある。

それが武器かどうかは、コンピューターの利用者の意図による。その意味で、情報戦争は核の抑止と異なる。軍備を検証し、縮小することができない。

伝統的な軍縮交渉ではなく、特定の民間施設を標的から排除すること、衝突を避ける最低限のルールを決めることはできる。双方が、国内政治過程への介入を嫌っている。ソフトパワーによる説得も有効だ。非政府機関を利用した情報操作なども含めて、追加の交渉が必要になる。それを制度化しておくべきだ。

情報戦争から民主主義の安全を守ることができる。


 中米のマーシャル・プラン

FP MARCH 5, 2019

A Central American Marshall Plan Won’t Work

BY RYAN C. BERG


 トランプ外交はリアリストか?

FP MARCH 5, 2019

The Tragedy of Trump’s Foreign Policy

BY STEPHEN M. WALT

トランプはリアリストの主張を示したが、現実には、寓話を振りまく人物だった。アメリカが過去に行った海外の介入や安全保障に関する負担を減らし、大規模インフラ投資で国内再建に集中する、と話した。ヨーロッパや中東はその地域の同盟諸侯にゆだね、もっと中国との対抗に集中する、と語った。

しかし、実際は違った。

FP MARCH 6, 2019

Maximum Pressure Yields Minimum Results

BY ARIANE TABATABAI


 トランプの2期目

PS Mar 7, 2019

Will Trump Win a Second Term?

ELIZABETH DREW

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The Economist February 23rd 2019

Can pandas fly?

Lexington: Diversity and its discontents

Essay: China’s future

Tax avoidance: Reclaiming the booty

Soybeans: Soy sources

Free exchange: Pillar of strength

(コメント) 中国bの成長はどうなるのか? すでに中産階級の消費がそれを担っています。しかし、習近平の方針は矛盾しています。アメリカの要求は、むしろ中国の成長モデルを蘇生させる、というわけです。

アメリカ社会のもう一つの悪夢は、メキシコからの移民、です。国境の壁をもてあそぶ大統領がアメリカを貧しくします。それは、国際的な課税回避、アメリカの大豆農場、そして、世界中のコミュニティー衰退、などとも関係しているでしょう。

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IPEの想像力 3/11/19

ニュースステーションを観ているとき、2つのことが気になりました。

1つは、野田政権が、復興にかかる費用を地方ではなく政府が負担する、と決めたことが重要な転機だった、と伝えていたこと。それは大規模工事を促したかもしれない。なるべく大きな計画、国の方針を多く取り入れて、計画を巨大化することが、建設業者や政治家の利益にもなっただろう。

もう1つは、陸前高田の市長選挙が、わずか5票差で、前回は圧勝した市長の、敗戦に近い辛勝となったこと。人々は迷い、強い疑問を感じていた。なぜもっと早く土地をくれなかったのか? なぜこんなに空き地ばかりの街に変わったのか? 何のための、だれのための復興なのか?

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津田大介氏がネットに書いている記事を読みました。

「陸前高田に見る、7年の憂鬱」津田大介 (ポリタス編集長)2018311

「いまこそ人間ベースの復興を」津田大介 (ポリタス編集長)2019311

http://politas.jp/features/11/article/607

陸前高田の「高さ12.5メートル、全長約2kmの巨大防潮堤」は、工事を遅らせ、計画の修正を困難にし、住民たちが復興に参加する機会を失わせた。

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私は、311の後、初め、13メートルの津波を防ぐ堤防や、高台移転の話を聞いたとき、それは本当に正しい方針なのか、と不満でした。海によって生きてきた人々の、生活そのものを否定するように思いました。海が悪いのか? 海を遮断すること、海からできるだけ逃げることが、人々の将来を豊かにするだろうか? 私は、間違っている、と思ったのです。

13メートルまで津波が来ても倒れない構造物を、海岸沿いの商工業圏に建てるほうが良い、と思いました。それは高波を裂く尖端を持った、一種の、ノアの箱舟です。避難するための警報とネットワーク、定期的な訓練を必ず実施して、海とその恵みによって生きる日々を、だれもが安心して送ることができたでしょう。

「IPEの想像力 4/4/11

https://www1.doshisha.ac.jp/~yonozuka/Review2011/040411review_s.htm

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「IPEの想像力 3/12/12」・・・2012226日から10日間,東北の被災地を歩きました.

https://www1.doshisha.ac.jp/~yonozuka/Review2012/031212review.html

https://www1.doshisha.ac.jp/~yonozuka/Tohoku_2012.html

私は震災・津波から1年が過ぎたころ、東北の太平洋沿岸を訪ね、被災地を歩きました。

2019年、テレビで観る景色は、すっかり美しく建て替わった街もありますが、離散した住民は、特に高齢者にとって、家を再建する機会も意欲もないのです。

もっと柔軟な対応策はないのでしょうか? 高齢者にとっての集合住宅を、何か所か、異なるスタイル、異なる場所に配置してはどうでしょうか? 5人で住むシェアハウス。分離型集合住居。小学校に近い。海に近い。アパート型の支援・介護付き有料(一部自己負担)ホーム。自炊できる高台のシェアハウス。商業地に近い。郊外型。農場付属型。・・・高齢者にも、さまざまな理想があるはずです。

外国人の労働者が住む集合住宅を建てることに、住民たちが反対している、とテレビは伝えていました。住民には高齢者が多く、さまざまな摩擦を懸念します。そうかもしれません。

しかし、行政や若者たちのNGOが加われば、もっと互いを尊重し、有益な交流もできるでしょう。子供たちの遊ぶ、活気ある町に住めるでしょう。外国人を助けて、街をよくすることができるのは、高齢者の生きがいにもなるはずです。

震災が求めたユートピアの想像力は、厳しい経験を通じて、今も、人々の中に共有されているはずです。

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トランプは、なぜ壁を建てることにこだわるのか? The Economist“Diversity and its discontents” は、その理由を考えます。

産業基盤を失い、人口が減少し衰退していた町に、ヒスパニックが流入しています。彼らは、白人も黒人も望まないような仕事でも、低賃金で働くし、彼らの間でビジネスが生じ、町全体が活性化しますが、白人の住民たちは彼らを嫌います。英語を話せない。庭で鶏を殺して料理する。大音量で音楽を流す。話すときに近くに寄ってくる。それは文化的な摩擦だろう、とその土地で生まれた男性は答えます。

記事によれば、アメリカの大規模な社会変化が、トランプの壁建設に象徴されている、ということです。社会の変化を止めてほしいと願う人々に、トランプは空想的な解決策を示します。もっと長期の、具体的な解決策に取り組むよりも。住民の感じるさまざまな不安を解消するよりも。

ヒスパニックも変わるはずです。しかも、ヒスパニックたちは次第に投票権を得る、と記事は指摘します。

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「IPEの想像力 3/14/11」・・・3・11東北地方太平洋沖大地震が発生した。

https://www1.doshisha.ac.jp/~yonozuka/Review2011/031411review.htm

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