今週のReview
3/14-3/19
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IPEの想像力 3/14/11
3・11東北地方太平洋沖大地震が発生した。マグニチュード8.8、震度7が記録され、すでに死者は数百人を報告している。翌朝、長野県でも短時間に震度6の地震が続いて起きた。
・・・仙台市の海岸に200〜300人の遺体が流れ着いた、という。高台でも、谷間を駆け上った津波により家屋が全滅している。岩手県陸前高田市では、人口2万3000人の街全体が津波によってほぼ消滅した。ホームページはつながらず、その被害規模もまったく分からない。
・・・水と懐中電灯、情報を得るためのラジオが要る。携帯電話はつながらない。自動車は道路の状態が分からず、至る所で渋滞している。食糧もガソリンもなくなるだろう。夜になれば停電で明かりもなく、泥だらけで寝る場所はない。水に濡れたまま、氷点下の屋外で暖も取れない。余震のたびに傾いた家屋の倒壊を恐れて、人々は路上に集まって夜を明かす。
・・・原子力発電所の冷却水が止まった、というニュースに驚く。非常用の発電機が動かず、冷却水が流れない。そんなこと、あるのか? チャイナ・シンドローム。チェルノブイリ原発事故のように、爆発すれば関東圏が汚染されて住めなくなる? SF映画みたいな現実が迫っている。
・・・米軍の空母が出動して、冷却水が止まったままの福島原発に冷却剤を輸送している、という。米軍は、朝鮮半島非常時に北朝鮮の核兵器や原発の安全を確保するため、準備していたはずである。それが日本で使用されなければならないのか?
・・・地震国に原発を建設した以上、大地震にも耐えられる構造と、何重にも安全対策を施し、非常時の対応マニュアルが整理されていなければならない。それらはどうなったのか? 東京電力の責任は重い。戦略石油備蓄がタンクの破壊で流出した、という。アラブ諸国の騒乱で石油価格が上昇する中、これもどうなるのか? 石油の無い、地震国であれば、エネルギーを原発や世界市場に依存することは、不安定さ、災害や国際政治のリスクを免れない。日本政府はもっと地熱エネルギーやバイオによって維持可能な生産・消費のパターンを目指すべきだ。
・・・関東や東日本で、卒業式や入試が延期され、あるいは中止されている。地方選挙の延期も検討されている。政府は、特に自衛隊や厚生省を動かし、全力を挙げて事態の収拾に取り組んでいる、と枝野官房長官は強調した。韓国政府や在日米軍、さらに主要諸国が救援チームを派遣したいと申し入れた。
・・・輸送システムや情報通信インフラが失われた。金融機関は大丈夫か? 阪神大震災では、日銀が特融を行い、手形も割り引いたと思う。ATMはストップし、自宅にも帰れないまま、人々の不安と不満が高まる。
・・・国際取引や決済で、日本の金融機関が破たんする恐れはないのか? 格付けを下げた日本国債の売り、急激な円安や株価暴落は起きないのか? 週末の対応次第で週明けの市場が大きく変動するだろう。ニュースを見ると、日本の金融機関が資金を必要としてアメリカの証券を売る、という予測で、円高になっている。今後は円安が進むのか? あるいは、対外資産を急速に取り崩すため、しばらく円高が続くのか? 産業への影響は抑えられるか?
・・・連鎖的な株安や通貨不安が起きるのか? 日本発の世界恐慌が本当に起きるか? アメリカの景気回復にも影響する。オバマ政権は全面的な支援を約束した。安全資産への逃避行動は、ドルよりも、ドイツ国債に向かい、ユーロ高を起こしているという。ユーロ市場における各国国債の価格差が拡大するかもしれない。それはユーロ圏内の赤字諸国で負担が増し、デフォルトやユーロ圏解体の不安を強める。
・・・ロサンゼルス大地震やニューオーリンズ水害では略奪が起きた。政府の対応や発言内容が不信を生じると支持率が急落する。インド洋大津波では、各地で欧米観光旅行者が犠牲になり、欧米諸国や中国、日本などを加えた国際的な援助と救助活動が続いた。ハイチでは政府機能がマヒしたまま国際援助を受けたが、1年以上たっても復興は進まない、という。災害後の救済と復興には、その社会の生命力と組織力(ガバナンス)が示されると思う。
・・・自動車など、主要な輸出産業でグローバル・サプライチェーンが停止する。中国や韓国、アジア経済にも影響するだろうか? アラブの騒乱を超えるブラック・スワンなどないはずだった。日本の地震は予想されていたことだ。しかし、問題は政府の対応と市場心理だ。
・・・ハリケーン・カトリーナと、インド洋大津波と、チェルノブイリ原発事故が同時に襲って、日本列島を破壊してゆく。災害の大きさに応じて、対応の遅れ、復興の混乱が非難と中傷、政治不信を高める。1週間、1ヶ月経ってから、政府が政策担当能力を失うケースも多い。
・・・逆に、復興に向けた投資が迅速に行われるなら、災害は実物経済に大きな影響を残さない。地域によっては、逆に、復興のための大きな需要が生まれる。キンドルバーガーが指摘したような、戦争や災害後のフェニックス効果はあるか? 西日本の企業、アメリカ西海岸や韓国では、復興特需がある。
・・・その後も原発の冷却水は減少し、燃料棒が露出している、と報道された。爆発が起きた、ともいう。大規模な水蒸気(あるいは水素)爆発で放射性物質が飛散すれば、原発被害の方が地震や津波の被害よりも、長期におよぶ、大きな犠牲やコストを生じる。
・・・チェルノブイリのような応急のコンクリート詰めによる封鎖ではなく、放射性物質の飛散を防ぐ方策は無いのか? アメリカやロシア、ヨーロッパにも対策のアイデアを求めて、必要な資材が日本にないなら支援を受けるしかない。偏西風で太平洋に飛散すると思うが、もしこれが東風で朝鮮半島や中国大陸に向かうなら、在日米軍だけでなく、韓国・中国政府や人民解放軍からも監視と発言・介入を受けるだろう。
・・・被災地では物資が補給できず、これからさらに苦しい。同時に、その影響を受けていない地域でも、物資の備蓄や買い占めが起きるのではないか? モノ不足で価格が上昇し、投機が強まる。しかし、被災地域を除けば開かれた市場が機能しており、ショックを吸収できるだろう。他方、通貨・金融市場が不安定化する。
・・・被災しなかった地域の住民は、被災者をどのように助け、日本の経済や社会をどのように再建できるだろうか? 貨幣や財政を共有しているから、これは東西ドイツ再統一、朝鮮半島統一の逆である(あるいは、ソ連解体)。突如として社会インフラを失い、貧しくなった(さらに、放射能汚染された)地域が、日本国内に誕生した。
・・・復興債を発行してはどうか? 震災から立ち直る道はある。政府は被災者に、慰めと希望を与え、社会的な共感・連帯を示すときだ。
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アカデミー賞作品のシリーズで、「ミリオンダラー・ベイビー」を観ました。
自分を愛してくれた父が亡くなった後、トレーラーハウスに住む家族から離れて、ウェイトレスとして働きながら、ボクシングに魅せられた31歳の女性。それが主人公のマギー・フィッツジェラルドだ。視力の悪化した元ボクサーで、掃除夫としてジムで働いていたエディが、最初に、彼女の才能を認める。
74歳のクリント・イーストウッドがボクシング・ジムの経営者、フランキー・ダンで、最初は拒んでいたが、彼女のトレーナーになる。選手を大切にしたが、ダンは人付き合いの下手な、不器用な人生を送ってきた。マギーの熱意に、ダンも基礎からボクシングを厳しく教えるようになる。
マギーは素晴らしい戦績を上げた。4回戦でも、6回戦でも、1回でKO勝ちを続けた。ダンはマギーの健闘を称え、「モ・クシュラ」(Mo Chúisle)というゲール語の刺繍を付けた緑色のガウンを贈る。ゲール語の言葉の意味は、訊かれたが言わない。
アメリカで対戦相手がいなくなり、経験を積ませるため、ダンはヨーロッパ諸国を転戦させる。そしてどこでも、マギーの勝利を称える「モ・クシュラ」の大歓声が上がった。
イギリスで、とうとうチャンピオンシップの機会をつかむ。ダンは、チャンピオンが反則の多い、ラフな性格であるのを嫌ったが、100万ドルの賞金を得るために対戦を決める。マギーは優勢であった。汚い手を使う相手に、ダンも反則技を教える。そして勝利するはずが、チャンピオンのひじ打ちで転倒したマギーの頭部と、椅子が激突する。
首・頸椎を骨折し、神経も断裂した。マギーは全身マヒになる。回復させると約束して、ダンは医師を探し続けたが、できなかった。ベッドの上で動かない手足は壊死して、医師はマギーの足を切断する。ボクシングはできない。マギーは絶望した。毎日ベッドのわきに座って、ダンは本を読む。マギーは、子供のときに父が森で殺した、動けない飼い犬のことをダンに話したことがあり、それを思い出させる。自分の安楽死を頼むためだ。
ダンは教会に行っても救われず、ついに安楽死を手伝う。アドレナリンを大量に注射する前に、ダンはマギーに「モ・クシュラ」の意味を教える。「お前は私の鼓動、私のすべてだ。」 マギーはそれを知って喜び、それから、装置を外されて意識を失う。
・・・こんな悲しい結末の映画をアメリカ人が観るか? プロダクションが結末の修正を強く求めたのではないか? たとえチャンピオンにはなれなくても、もっと別の終わり方をしてほしい、と思いました。
これは2004年のアメリカ映画です。当時は9・11の後、イラク戦争の経過をめぐる論争と金融ビジネスの好調さが、まだ強く意識されていないまでも、深刻な社会的軋轢を生じつつあった時代ではないでしょうか?
なぜか、サッチャー時代の炭鉱閉鎖を背景とした、バンド(吹奏楽団)のイギリス映画『ブラス!』(Brassed Off)を思い出す。
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家族や友人を失った多くの人たちが、これから再生と復興のために、生きる力を維持しなければなりません。「国力を挙げて取り組む。」その通りです。
苦しくても希望の持てる、復興のイメージを支持することが重要です。被災者たちが住宅と雇用を得る道はある、と示してください。
l 救援、物資の補給・支援、医療・衛生が欠かせない。
l 遺体の回収・埋葬、破壊された家屋やインフラの回復、それらは遺族や関係者の気持ちを十分に汲むこと。
l 治安の維持。社会不安の解消。発電機と交番。水、食料、トイレ。情報がどこで得られるか。
l 政治家や政党の紛争を回避する。主要政党が合意し、積極的なアイデアを競い合う。知識と能力のある政治家を与野党から救援・復興のために任命する。
l ボランティアや国際NGOが救援活動に有効に参加できるような枠組みを、政府も加わり組織する。特に、救援活動の詳細をインターネット上で報告する。
l 世界中から建設機械・重機を集めて、ボランティアや衛生班が遺体を回収しつつ、大型の障害物を撤去する。
l 救済・復興作業に被災者を積極的に短期雇用し、一緒に計画を立ててもらう。
l 土地・田畑の整理について、証券化や信託など、革新的手法も含めて、明確なルールを示す。公的監督を行い、不正や弱者への詐欺を許さない。
l 住民の協力と意思決定メカニズムを組織し、復興を加速する。駅前の整備や街路、商店街の復興に参加してもらう。
l 避難所から仮設住宅、集合住宅の建設。高齢者や個人による復興困難なケースに対する対策。複数のメニューを用意し、選択的な参加を促す。
l 地区全体の復興計画や政府・民間信託管理のルールを統一する。
l 春になって被災者には疲れが蓄積するばかりではないか? 長期の復興を闘う被災地域の精神を励ますために、日本中から吹奏楽団を募って、町や村を巡回してもらう。
l 被災を免れた地域で、賛同する個人の住宅に、被災者支援・週末泊を企画する。
l 若者や中高年の長期雇用確保。産業の復興と誘致。地域の関係者を代表する復興委員会を組織する。
l 企業・個人の移住やディアスポラ(国内外への離散・出稼ぎ)を支援する。
l 補助金や低利融資を民間部門の再生に向けて選択的に与える。企業・商店の倒産整理や外国資本の誘致を目標として掲げ、日本における産業立地をアイルランドのように改善する。
l アジア市場と国際競争・協力を意識して、農業、水産業、林業、観光業の長期的な戦略を立てる。
l 復興のための財源を国債の増発ではなく、震災復興債券として新しく発行し、国民や企業の貯蓄から追加的に購入してもらう。政府支出と雇用増によるデフレ解消につなげる。
l 日本も、ヨーロッパやアジアも、世界大戦で耐乏生活を経験し、相互扶助の精神を示した。政府はその具体的な例を挙げて、国民に話しかけてはどうか?
この大災害によって、日本は変わるのか? 何が、どのように? これは日本が戦争で負けたほどの衝撃だ。
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「文明の衝突」は間違いだ ・・・中国と世界の調整過程 ・・・アラブの目覚め ・・・アメリカの雇用と成長 ・・・西側はリビアに介入するべきか? ・・・市場と政治的なウソ ・・・ユーロ危機と債務危機 ・・・日本 ・・・インド洋の安全保障
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主要な出典 Bloomberg, The Guardian, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, The Observer, The Times, SPIEGEL ONLINE, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
l 「文明の衝突」は間違いだ
NYT March 3, 2011
Huntington’s Clash Revisited
By DAVID BROOKS
冷戦後の世界秩序とは、文明間の衝突だ、とHuntingtonは予想した。普遍的な文明は存在せず、文化的なブロックに分かれて価値観をめぐる闘争が始まる。その中でも、Huntingtonはアラブ世界と西側との対立を重視した。
国民国家ではなく、アラブの人々はイスラム教の信仰を中心に秩序を築き、多元主義、個人主義、民主主義、といった西側のリベラルな価値観を受け入れない。アラブの独裁体制は脆く、特に若者の失業問題などによって崩壊するかもしれないが、混乱の末に誕生する秩序は民主主義ではなく、イスラム教によって正当化される。イスラム教の世界は、外部との境界線で戦争を繰り返しており、西側諸国は距離をおく方が良い。
今から見れば、Huntingtonの議論は帰属による間違い(Fundamental Attribution Error)を犯した。彼が性質と見なしたものは、状況によって変化するのだ。
アラブの民衆は本質的にナショナリスティックではない、多元主義や民主主義を求めない、とHuntingtonは主張したが、今起きている各国の騒乱は、それが許されなかったからだ、ということを示している。恐怖による支配のもとでは、人々は陰謀におびえ、体制側が望むように、政治的な受動性を示していた。しかし状況が変化すれば、人々は本当のアイデンティティを示し、欲求を満たそうとする。
Huntingtonは、文化の定義も間違っていた。われわれは確かに何らかの文化や集団に分類できる。誰もが特異な存在だ。しかし、Huntingtonは普遍的な政治的価値を矮小化し、文化的価値を誇張した。彼がそうした理由はわかる。世界のエリートたちが文化のパワーを全く認めていなかったからだ。
文化の違いは重要だ。しかし、今やアラブの民衆も普遍的な自由を渇望し、普遍的な人権を求めている。
最後に、Huntingtonは歴史的変化の本質を誤解した。それは、直線的な、予測可能な軌跡を描くのではない。騒乱の時代には、そのような変化ではなく、一歩を踏み出す者が一人、また一人いると、それが瞬く間に波及し、数百万人が行動する。中心を持たない群衆が動き始める中で、その影響は広がっていく。
民衆は普遍的な渇望に動かされ、歴史の軌跡を大きく開く力がある。石に刻まれた軌跡や本質をも変えるのだ。
l 中国と世界の調整過程
FT March 3 2011
The China Syndrome
By By FT Reporters (James Kynge, Richard McGregor, Daniel Dombey, Martin Arnold, Helen Warrell and Cynthia O’Murchu)
われわれは中国と競争している。パプアニューギニアで資源が見つかれば、採掘するのはExxonMobilだが、中国があらゆる方法で、毎日、それを得ようとやってくる。クリントン国務長官は、アメリカが「情報戦争」で中国に敗退してきた、と語った。「中国は太平洋の諸島にも6億ドルの開発計画を示している。アメリカには何があるか? ゼロだ。」
暴露された外交公電を紹介しながら、アメリカ国務省や現地外交官が中国企業と中国政府の「汚い」「強引な」影響力増大に強い警戒感を示している。特にアフリカでは顕著であり、アルジェリアには早くも4万人の中国人がいる。ブラジル政府も中国向けの輸出増大を歓迎して、アメリカとの交渉をあまり重視しなくなる。
FT March 4 2011
Who will be China’s next leaders?
By Geoff Dyer
WP Sunday, March 6, 2011
China's leadership cowers
WSJ MARCH 7, 2011
Time to Straighten Out America's Taiwan Policy
By RUPERT HAMMOND-CHAMBERS
YaleGlobal , 7 March 2011
Don’t Look for Jasmine Revolution or Tea in China
Frank Ching
FT March 7 2011
China: A democracy is built
By Geoff Dyer
自分たちのジャスミン革命を呼び掛けるインターネットの声は弾圧されてきましたが、ブームの中で起きている不動産価格の上昇は政治的安定を脅かす最大の不安です。急速な都市化と工業化によって、商品価格や都市の不動産価格が上昇し、バブルの発生が懸念されています。
都市に流入する人々が増える中で、政府所有の住宅から民間アパートに移ることは、社会的に上昇して都市中産階級に参加し、社会管理や監視を逃れるチャンスなのです。しかし、それは都市の政府が農民から取り上げ、あるいは借家人を追い出して、土地を不動産開発に使用する際の厳しい社会対立と切り離せません。住宅の解体を拒む農民が殺される事件(業者によれば事故)も起きています。
温家宝首相は昨年、住宅価格の高騰を抑える、と断言しました。住宅価格は最大の政治問題となっており、さまざまな対策が議論されています。他方、都市生活の苦しさを描いた人気の連続ドラマが放映を禁止されました。都市中産階級に中でも、先に住宅を得て住宅ブームによる利益を得た者と、特に大学を卒業したばかりの者とでは、大きな格差・不平等が生じています。
政治権力は資本と組み合わされ、市場経済の自由な競争から、クローニー・キャピタリズムの独占体制へと変化し、所得や所有の差が拡大している、という意見が紹介されています。価格を抑制する政策として住宅融資を抑制し、同時に、低所得層向けの公共住宅を建設するように地方政府に求めています。また、不動産税の導入も議論されています。土地収用をめぐる抗議や紛争も増えています。不動産ブームは内陸の都市にも波及しています。土地がより大きな富を意味することを知った人々は、より激しく抵抗します。
1989年は近代化の仕方をめぐる対立だったが、今は近代化の社会的コストが対立を生じている、と指摘されます。しかし、論争は各地のレベルに起きているだけで、中央政府には向けられていません。このままバブルが続けば、それも変わるでしょう。
FT March 8 2011
The US-China affair is likely to result in mutual pain
By John Plender
March 8 (Bloomberg)
China’s 10% Growth Faces Risk of 10% Inflation
William Pesek
最近の事件は、中国が持続的に成長する能力の限界に達したことを示している。中でもインフレは、中東のような抗議デモを起こしていないが、大衆を不安にする。
非常に有能な政策担当者たちが経済を運営しているけれど、長期の爆発的成長は、それを減速させる際に、食糧や石油の価格上昇、西側からの投機資金流入、貧富の格差拡大、そして、より大きな開放性、といったさまざまな要因を考慮しなければならない。
インフレを抑えなければならないが、労働人口の増加に見合う雇用創出のために8%程度の成長を確保し、都市スラムが形成されるのを避け、銀行に不良債権が増えるのを防ぐ、などの重要な目標がある。どれほど小さな抗議デモも認めない、という中国政府は、メディアを非難するよりも、こうした難しい課題を解決しなければならない。
FT March 9 2011
Hong Kong’s land system that time forgot
By David Pilling
guardian.co.uk, Thursday 10 March 2011
In China, to get rich is not always glorious
Isabel Hilton
中国政府の国家情報局は、中国人の94%が幸せではない、と答えたことを報道しないよう命じた。すべてのウェブサイトは、中国人の94%が不幸である、という話を排除しなければならない。
ギャラップ社によれば、デンマークは82%が幸せと答えて第1位。中国は、わずか6%が幸せで、125位だった。中国の回答者は都市部に住み、生活水準は比較的高いのに、生活水準の改善を正当性の根拠にする政府にとって苦しい結果であった。
物質的な満足は相対的なものだ。中国で先に豊かになったのは、非常に豊かになった少数派が共産党のエリートたちだ。この10年間、平均的な家計の所得はGDPの割合として一定であり、貧富の差が拡大してきた。
3000人の代表を前に報告された中国の第12次5カ年計画には、その不満に応えるため、経済発展の方向を変える政策が盛り込まれている。輸出指向の、低賃金、低付加価値の経済ではなく、より環境に優しい、より平等な発展を目指す。それは世界最速の高齢化、工業化による汚染、発ガン物質、土壌汚染、など、このまま発展を続けると破綻するしかないモデルだ。
日本、台湾、韓国がそうであったように、中国も発展を高度化する時期であり、研究開発に投資する。温暖化で西側を非難するだけでなく、一緒に解決しようとするだろう。
(chinadaily.com.cn) 2011-03-10
A slowing Chinese economy?
By Barry Eichengreen
中国は成長率の目標を7%に下げた。過去5年間の平均成長率が11%であったから、これは大きな減速だ。しかし、前の5カ年計画の目標も7.5%であったから、それは重要でないかもしれない。中央政府は、成長が目標より過熱しても、それを抑制する傾向を示していない。それは、しかし、批判するのではなく、世界不況を回避するために中国が最大限努力したことの成果でもある。
中国政府が成長能力を過小評価したのではない、減速に向かう理由が存在する。
中国は、農業から工業へと労働力を移動することで成長率を高めてきた。それはGDPの45%に及ぶ著しく高い投資率によって実現された。内外の圧力が高まって、経済のバランスを回復するとき、製造業と輸出から、サービス業と国内支出に重点が変わる。労働者はより高い賃金と短い労働時間を求め、投資よりも国内消費を増やすだろう。これらが成長の減速をもたらす。
問題は、減速するかどうかではなく、いつ減速するか、である。一人当たり所得が一万ドル以上に達した諸国で、高度成長が急速かつ持続的に減速した39のケースを研究した結果、所得水準が1万6500ドルに達したとき、減速が起きているとわかった。中国は10%の成長を続ければ2014年にそれに達する。さらに、中国の労働人口は急速に高齢化しており、製造業部門の雇用が全体の20%を超えるとサービス業が拡大して生産性上昇も減速する。それゆえ、成長の減速はより速く来るだろう。
問題は、世界がそれを準備しているか、である。そして、中国に続く諸国が世界に成長のダイナミズムを供給してくれるかどうか。
(chinadaily.com.cn) 2011-03-10
Will China's rise lead to war?
アメリカは、Charles Glaserが最近のForeign Affairsで指摘したように、中国の台頭を受け入れて、国際システムの一層の調整によって摩擦を減らす考えを持っている。特に、台湾問題だ。
WSJのRUPERT HAMMOND-CHAMBERSによる論説も、アメリカの強い指示で対等な関係の中台交渉を促すよう求めています。
それは、東アジアにおける中国の主導的な地位を認める、ということでしょうか?
l アラブの目覚め
FP MARCH 3, 2011
Spreading the Wealth
BY TODD MOSS
カダフィを追放できたら、さらに政治が混迷し、ひどい政治体制が現れるかもしれない。そうならないためには、次の支配者がリビアの富を何に使うべきか?
1979年のイラン革命後、政府は生活物資に補助金を与えた。ガソリンの価格は1リットルが10セントで、ボトル入りの水より安くなった。しかし、こうした補助金はイランのGDPの4分の1にも達し、維持できなくなっている。そこでイラン政府は、貧困家庭への直接給付を目指す新しい政策を発表した。
貧困家庭への現金支給は世界各地で行われ、成果を上げている。ブラジル、インド、メキシコ、南アフリカ、など。官僚が補助金や国際支援の配分を決めるよりも、貧困家庭に等分に分配してしまうほうが、彼ら自身が最も必要な用途に使う。そして、政府や官僚が富の配分を決めることこそ、腐敗や独裁の条件だ。
「資源の呪い」は、こうした貧困家庭の給付を市民が監視することで解決できる。政府・権力者が支援を独占するのではなく、むしろ民間部門にすべて配分してしまい、その復興からの課税によって歳入を得るようにする。民主主義とは、自分たちが納税して支える政府のすることを監視し、それについて発言することであるから、これこそ憲法制定に組み込むべき重要な改革だ。
もうひとつ問題がある。貧困家庭への直接給付を実施できるか? もしインドが試みているようなDNA情報による認証システムや、アフリカでも広がっている携帯電話による支払や決済システムを利用すれば、巨大な官僚組織を動かさず、貧困家庭が直接に国際支援を受け取れるだろう。
FT March 3 2011
A sledgehammer blow to Turkish democracy
By Dani Rodrik
トルコは、イスラム教圏の国で世俗化と近代化に成功した優れた例である。しかし、アラブの騒乱がそのモデルを求めているとき、トルコはその歴史や国内の指導者たちによる政治的謀略によって混迷しつつある。
ジャーナリストの弾圧やインターネットの自己規制が増えている。軍隊は繰り返し政治に介入してきた。警察国家を求める政治勢力と組んだErdogan首相は間違っている。このままでは、イスラム教国家にならないまでも、メディアや裁判所を支配するロシアのような警察国家になってしまう。
FT March 3 011
Five pointers for the Middle East
By Philip Stephens
アラブ世界の民衆蜂起について、5つの考察。バルカン半島で内戦状態が終わっても、その後の秩序回復や復興は容易に進まなかった。政治的・経済的な「自由」のためのインフラ投資や「法の支配」を実現する過程は容易ではない、と覚悟すべだ。
即座に解決できるものはない。当面、短期的なショックを緩和するために支援の枠組みを構築するべきだ。
1.騒乱は反米やイスラム過激派に向かっていない。2.介入は極端なケースに限定するべきだ。ブレアのように「移行期を管理する」と発言するのは間違いだ。3.経済的な支援を惜しんではならない。中東世界の将来を安定させるには「マーシャル・プラン」が必要だ。支援だけでなく、貿易や投資の機会を与え、移民の規制ルールを緩和するべきだ。4.ヨーロッパは、アメリカだけでなく、中国やトルコなど、新興諸国と積極的に協力するべきだ。5.その賭け金は余りにも大きい。うまく行けば、民主化され、繁栄する中東が普遍的な価値観を共有し、過激派の暴力が広まるのを抑える。失敗すれば、経済の衰退、石油価格の高騰、政治の過激化、際限のない移民流出が起きる。
オバマの発言は素晴らしいが、アメリカは動けないだろう。ヨーロッパの政治家たちが行動しなければならない。
FT March 4 2011
Mugabe’s lessons in light-touch tyranny
By Alec Russell
WP Friday, March 4, 2011;
Iran might not be the big winner of Mideast uprisings
By Dalia Dassa Kaye
WP Friday, March 4, 2011
Why the Mideast revolts will help al-Qaeda
By Michael Scheuer
WSJ MARCH 4, 2011
How to Build Democracies in the Mideast
By DENIS MACSHANE
FP MARCH 4, 2011
Cairo 1.5
BY JAMES TRAUB
guardian.co.uk, Friday 4 March 2011
The LSE's Libya connection is only the tip of the iceberg
Emmanuel Akpan-Inwang
外国の独裁者・政治家が英米の大学を舞台に学位や政治的コネを得て、その見返りに多額の寄付をしているのは、カダフィの息子に限りません。
辞任したLSE学長、Howard Daviesは、LSEをフェビアン協会と持つ創設以来の関係を薄め、グローバル・エリート養成のための大学に変身させてきました。
WP Saturday, March 5, 2011
The Arab uprising spreads to Iraq
NYT March 5, 2011
The $110 Billion Question
By THOMAS L. FRIEDMAN
「アメリカが今年1100億ドルも支援しているアフガニスタンやパキスタンの政府は、アラブ民衆が崩壊させたことをわれわれが称賛しているのと同じ、腐敗し、民衆に支持されていない政府ではないか?」
9・11以後、アメリカはイスラム過激派との「アイデアの戦争」を続けてきた。しかし、パキスタンの情報部や軍部は、しばしば政治を支配し、われわれにはイスラム過激派から国を守っている、とささやき続けている。それは嘘だ。かれらこそ、過激派の種をまき、テロ組織を支援しているのだ。
NYT March 5, 2011
Arabs Rise, Tehran Trembles
By KARIM SADJADPOUR
guardian.co.uk, Sunday 6 March 2011
The Arab spring requires a defiantly European reply
Jackie Ashley
「ヨーロッパの民主主義に相互依存があるとしたら、それこそが先週示されたのだ。リビアやアラブ諸国からの難民がイタリアやフランスにも、イギリスと同様に、押し寄せた。急上昇した石油価格はベルリンでもバーミンガムでも問題となった。もし介入が行われるなら、それはイギリスだけでなく、EU、アメリカ、他のアラブ諸国と一緒に行われる。」
そんなとき、労働党は何をしているのか? 危機が政治を右派に傾けることを悲観しているだけではいけない。経済の安定化、雇用の確保を重視せよ。ヨーロッパとの連帯、統合化を指導せよ。マルチラテラリズムや「断固とした」対応に関して、保守党政権に対抗せよ。
アラブの春がわれわれに求めたものに、労働党が応えるときだ。
FT March 6 2011
Change on the Nile
WP Sunday, March 6, 2011;
Obama's low-key strategy for the Middle East
By David Ignatius
オバマの直感は民衆の側に立つことを示した。しかし、オバマの発言は抑えたものにとどまる。その「戦略的な寡黙さ」の意味は、「これはあなたたちの革命だ。われわれが問題ではない。」
オバマは、政権を得たときから、これまでのアメリカとアラブ諸国との関係は壊れている、と感じていた。オバマ政権は、たとえ長期の同盟国であっても、その専制政治が揺らいだとき、救出に駆けつけなかった。「現状維持は安定性を意味しない。」政権顧問はそう語った。情報部の分析は「アメリカとエジプトの関係は変化し、悪化さえするだろうが、われわれがともに生きる世界である。それは本質的に敵対するものではない。」
LAT March 7, 2011
The high cost of oil
By Michael J. Graetz
中東世界において広がる民衆蜂起と石油価格の上昇に対して、アメリカの外交政策は失敗したと批判される。
しかし、OPECが石油会社に「取り分」を要求して、1973年10月、石油禁輸と価格引き上げを実現し、支配権を奪って以来、アメリカ政府は石油供給の安定を優先して産油諸国に協力してきた。ニクソン政権はサウジアラビアやイランを冷戦の同盟国として重視し、その独裁体制にもかかわらず、援助と経済的な相互依存を支持したのだ。
しかし、反ソビエトと石油供給を目指した政策は失敗だった。イランは反米のイスラム体制に変わり、湾岸諸国にもイスラム過激派が誕生し、石油の富から支援されている。それでもアメリカ政府は産油諸国の専制支配体制を支持し続けている。問題は、アメリカの外交政策より、国内のエネルギー政策が失敗したことだ。世界人口の4%でしかないアメリカが世界の石油生産の25%を消費している。今日、アメリカは石油の50%を輸入しており、それは1973年には35%であった。
オバマ政権はリビアの政治体制を民衆に支持されていないと批判した。しかしその体制は、アメリカ国内の石油政策と一緒に、放棄されねばならない。
WP Monday, March 7, 2011
Why Egypt has to be the U.S. priority in the Middle East
By Robert Kagan and Michele Dunne
アメリカとヨーロッパが最優先する目標を見失ってはならない。それはエジプトが民主化を完成し、経済的に繁栄することだ。
エジプトはアラブ世界の中心であり、頭脳である。Gamal Nasserが汎アラブ主義を唱えたのも、Anwar Sadatが中東和平の仕組みを変えたのも、エジプトである。8000万人の人口は、イラク、サウジアラビア、シリアを合わせた規模であり、活発な市民社会と独立したメディアを持っている。さまざまな政治勢力が存在し、司法制度も尊敬されている。エジプトが民主化に成功すれば、アラブ世界は新しい時代に入る。アラブの春はエジプトにおいて生死を分かつのだ。
オバマ政権がエジプトの政治変化に大げさな介入を控えてきたことは正しい。しかし、その重要性を考えれば、可能な支援、特に経済支援を怠ることは許されない。スマートで、目標を絞った、時機を得た支援が必要だ。すなわち、債務免除、自由貿易、援助内容の見直し、民間投資、内外の関係省庁や機関を統括する中東移行担当長官を任命する。
この歴史的機会を逸してはならない。
FP MARCH 7, 2011
¡Viva la Recesión!
BY CHARLES KENNY
経済成長が民主化をもたらす、という近代化理論とは逆に、経済停滞が民衆の蜂起をもたらした。近代化理論は間違っていたのか?
FT March 8 2011
How to read the second Arab awakening
By Richard Haass
アラブの第二の目覚め。外交評議会の会長、Richard Haassが、その現実的な評価を試みる。
「われわれの見ているものが本当の民主化革命であるかどうか、確かではない。」とHaassは注意します。現体制を倒すことによって、それまで反体制派が合意してきた目標は失われる。その後に無秩序が現れるかもしれない。
断固として反対派を弾圧すれば、体制は崩壊しないだろう。リビアはそうだ。しかしそのあとも、反対運動が繰り返し現れる。革命の一般化は止めるべきだ。国によって政治情勢は異なる。確実に言えることは、真の王制は市民たちに受け入れられるが、専制的な王朝支配はそうではないことだ。王族はより憲法に従い、王制を緩和するだろう。
アメリカのように力があっても、外部からできることは少ない。民主化のために何ができるのか知ることもできないからだ。現状では、シリアやイランよりも、エジプトやバーレーンに対する圧力が強いことは皮肉である。非暴力革命には特殊な条件が必要である。非暴力で体制転換が成功したエジプトのケースは、警察や軍隊が市民に対して正当性を失っても弾圧する準備ができていなかった。
部分的な民主化が不安定さを増し、ポピュリストや原理主義者に政権を乗っ取られる危険がある。中東の世論がより多く反映される場合、政府はテロ対策に協力しなくなり、イスラエルとの和平にも消極的になるだろう。石油価格と供給の安定化に協力する姿勢も失われる。
全面的な民主化はより望ましいが、実現はより難しい。民主主義が機能する条件は、この地域にまだほとんどないからだ。中産階級の登場、3000ドルの所得水準、真に独立した制度を持つ、発達した市民社会。
無秩序、内戦、警察国家、宗派対立、厳格なイスラム教支配、それらすべては現在の権威主義体制に代わる可能性がある。民衆蜂起にもかかわらず、より大きな自由をもたらさない。体制の崩壊は、革命の最も部分である。革命後の改革がどうなるか、そのペース、順序、中身についての対立がすでにエジプトで表面化している。
guardian.co.uk, Tuesday 8 March 2011
These winds of change may now reach across the Sahara
Wangari Maathai
SPIEGEL ONLINE 03/08/2011
Zero Hour in the Middle East
What the Arab World's Past Can Tell Us About Its Future
By Bernhard Zand
中東・北アフリカの歴史を通じて、現在の政治的騒乱を理解し、その解決策を探します。
オスマン・トルコが革命と近代化によって支配を放棄した地域に、ヨーロッパ列強が進出し、境界線の無い、政治的混沌が広がりました。石油の富は支配体制を変えることなく、その内部の格差を拡大したのです。
この騒乱と無秩序を超えて、もはや帝国も冷戦もない中東・北アフリカ地域の安定化を目指すとき、第二次世界大戦後のヨーロッパが秩序を回復し、経済復興した歴史が想起されます。アメリカによるマーシャル・プラン。ヨーロッパ共同体を築いたシューマン・プラン。さらに、独仏伊英の企業が協力するDesertec計画です。それは中東・北アフリカ地域において太陽発電で得たエネルギーをヨーロッパに輸送するインフラ投資計画です。
ドイツのGuido Westerwelle外相は、チュニジアの選挙準備のために320万ユーロを援助する、と約束しました。
WP Tuesday, March 8, 2011;
The Arab world isn't clamoring for our help
By Anne Applebaum
保守派の政治ラジオや強硬派の元国連大使なら、そんな発言もするだろう。しかし、「世界中から・・・アメリカの軍事介入を求める声が上がっている。」 ・・・本当に? Applebaumは耳をすましたけれど、何も聞こえない。
エジプトの民主化運動は、アメリカからの資金援助を受け取ることでさえ迷っている。ヨーロッパやアジアで、アメリカの海兵隊がトリポリの海岸に上陸するのを望む声などない。日曜日、イギリスの保守党政権は単独で反政府派と接触を試みたようだ。特殊部隊とM16がベンガジ近郊に着陸した。しかし、彼らはただちに拘束され、手錠をかけられて尋問され、国外に出された。反政府軍は明らかに、外国と接触することなど望まないのだ。
彼らが西側の支援を拒む理由は明白だ。すなわち、イラク。アメリカ軍はイラクの反体制派について何も知らず、一握りの亡命者だけに情報を頼った。兵士たちはアラビア語を話せず、バクダッドで何をするかも命令されなかった。無能さと混乱、そして暴力が蔓延した。8年の内戦は数万人の犠牲者を出している。脆弱な民主体制を樹立したが、それを望む国などない。
反政府派というのは誰のことか? 単なる盗賊かもしれない。そのスポークスマンという者から電文を頼りに報道している。イギリスの脱出騒ぎが示したように、スパイなど役に立たない。
リビアへの制裁を強化し、人道支援を行うべきだ。もし反政府派が敗退し始めたら、飛行禁止空域の設定も検討するだろう。しかし、ペンタゴンがリビアに民主主義国家を樹立する用意は無い。
「歴史の正しい側に立つのはよいことだ。ジョージ・W・ブッシュをいまだに支持する者たちが、彼の提唱した「フリーダム・アジェンダ」について、政権時にも忘れていたくせに、今頃自慢するのに私は驚いている。しかし、正しいこと、たとえ道徳的に正しくても、それがすべてではない。同時に重要であるのは、有能であること、一貫し、十分な知識があることだ。」
WP Tuesday, March 8, 2011;
After the revolution, establishing democracy
By Roza Otunbayeva
FT March 9 2011
Push ahead now for a solution in Palestine
By Marwan Muasher and Javier Solana
FT March 9 2011
Europe meets the Arab awakening
FT March 10 2011
Middle East: Gas leak in the house
WSJ MARCH 10, 2011
Technology Shapes Revolution
By JEREMY WAGSTAFF
WP Thursday, March 10, 2011;
A transition for Arab economies
By David Ignatius
政治革命は経済活動を停止させる。すべての党派が賃金引き上げを求めているが、それは財政的な破滅を意味する。
マーシャル・プランが求められる。しかし、アメリカに財政的な余裕はないし、チュニジアやエジプトにそれを利用する行政組織もない。アメリカからの支援を受け取ることに反対する国内世論もある。多角的なマーシャル・プランが必要だ。
WP Thursday, March 10, 2011;
Why Saudi Arabia is stable amid the Mideast unrest
By Nawaf Obaid
WSJ MARCH 10, 2011
Is U.S. Democracy Just Talk?
By DANIEL HENNINGER
l アメリカの雇用と成長
NYT March 3, 2011
How to Kill a Recovery
By PAUL KRUGMAN
NYT March 6, 2011
Degrees and Dollars
By PAUL KRUGMAN
消費が失われ、工場や事務所が余っているときに、誰が景気を支えるのか? 政府です。しかし、アメリカの財政支出は抑制されています。
失業が増える中で、オバマ大統領はフロリダのJeb Bush知事と一緒に、雇用を増やすために教育への投資を増やす、と宣言した。
KRUGMANは、教育がアメリカの雇用を守る、とは考えていません。技術進歩は高度な教育を受けた労働者への需要を減らしました。法律の処理も、コンピューター・チップの設計も、ソフトウェアが代替してしまう。つまらない雑用以外は残らない。
しかもグローバリゼーションが起きた。コンピューターと情報通信技術は、多くのサービス労働を海外に移転できる。高賃金・高等教育を受けた労働は、海外の低賃金労働に置き換わる。世界のサービス貿易が増えれば、アメリカの空洞化がさらに進むだろう。
大学を出ればよい仕事が得られた時代は終わったのです。KRUGMANは、労働者が交渉力を回復することを求めます。
WP Friday, March 4, 2011
Memo to Congress: Stop badgering Ben Bernanke
FT March 7 2011
Our best plan for growth is to set our cities free
By Edward Glaeser
雇用と成長をめぐって政治家たちは旧いアイデアを闘わせている。しかし、成長は都市再開発への投資・革新からやってくる。
技術進歩とグローバリゼーションは都市の重要性を高める。なぜなら都市こそは知識と革新への報酬を増やすからだ。18世紀のバーミンガムが織物工業を革新し続けたように、都市には優れた人々が集まって互いを刺激する。財、サービス、アイデアの交換が近接性によって加速する。
1.輸送システムに投資するな。高速道路網は分散化を加速した。2.才能ある人々が重要であり、都市への移民を歓迎せよ。3.都市を抑制する効果のある税制を撤廃せよ。企業誘致地区など要らない。
WP Monday, March 7, 2011
America's grim budget outlook
By Fareed Zakaria
アメリカの成長と繁栄は主に1950年代、60年代に行われた投資によって実現してきた。高速道路、公共教育、半導体やインターネット、GPSをもたらした科学研究。しかし、この20年を振り返るとき、われわれは次の成長のために投資したのか?
利益団体からの支持を得る補助金や消費を刺激する政策ばかりで、財政赤字を増やし続けた政治システムには、それができない。
March 8 (Bloomberg)
I Know the Secret to Economic Growth
Hillary Rodham Clinton
注目されていないが、最も成長している新興市場を私は知っている。それは中国でも、アジアでも、グリーン・テクノロジーでもない。女性たちだ。
アラブ世界の民衆革命と同じような衝撃波が広がるだろう。
March 8 (Bloomberg)
Greenspan Grapples for Growth With Ayn Rand’s Help
Amity Shlaes
FP Tuesday, March 8, 2011
Why isn't the iPhone made in America?
Posted By Clyde Prestowitz
FP MARCH 8, 2011
America Over a Barrel
BY EDWARD C. CHOW
1バレル100ドルの石油にアメリカ経済は調整できるか?
LAT March 4, 2011
A futile message to Pyongyang
By Selig S. Harrison
LAT March 4, 2011
North Korea: A nation in the dark
By Laura Ling
l 西側はリビアに介入するべきか?
guardian.co.uk, Friday 4 March 2011
Gaddafi's survival could end the Arab revolt
Simon Tisdall
少なくとも短期的にはカダフィが生き残り、リビアの体制維持はアラブ革命を終わらせるだろう。ゲイツ国防長官は、飛行禁止空域の設定はリビアの空軍力を破壊してから実施できるものであり、それは戦争を意味する、と反対する。
FP Friday, March 4, 2011
The consequences of inaction in Libya
Posted By Michael Singh
FP MARCH 4, 2011
This Week at War: The Jawbreaker Option
BY ROBERT HADDICK
FP Friday, March 4, 2011
Libyan ambassador: The U.S. must do more to stop Qaddafi’s massacre
Posted By David Kenner
リビアのアメリカ大使であったAli Aujaliは早期に辞任して反政府派に参加した。彼はアメリカがもっと直接行動を取って反政府軍を支援するように求めている。特に、飛行禁止空域の設定はアメリカの責務だ、と主張する。
(China Daily) 2011-03-04
Smooth evacuation
WSJ MARCH 5, 2011
Why America Will Stay on
By BRIAN M. CARNEY
WSJ MARCH 6, 2011
Obama's Libyan Abdication
FT March 7 2011
Fiction is a route to political truth
By Gideon Rachman
guardian.co.uk, Monday 7 March 2011
Obama is being driven towards Libya
Simon Tisdall
NYT March 7, 2011
Libyan Closure
By ROGER COHEN
アラブの春は西側の冬だ。
アメリカ議会や西側政府は次に質問に応えることだ。「われわれは長い間、アラブ政界の独裁者たちをどれほど支援し、利用し、加勢してきたのか?」 「その皮肉な専制支配体制の育成が、今は抑えようとしている聖戦戦士たちの西側社会に対する憤慨になってきたのか?」 西側が支援した頃のエジプトやリビアで、裁判なしに処刑された多数の人々の肉親が憎悪を高めていただろう。
西側は独裁体制を支持してきた点で道義的な立場を失っており、彼らの革命に関与する資格を持たない。反政府派を支援するためであっても、軍事介入は憎悪をもたらす。
FP Monday, March 7, 2011
What Obama needs to do with Libya -- and with the Joint Chiefs of Staff, today
Posted By Thomas E. Ricks
FP MARCH 7, 2011
Understanding Libya's Michael Corleone
INTERVIEW BY BENJAMIN PAUKER
guardian.co.uk, Tuesday 8 March 2011
Soft power is the best way for the west to intervene in Libya
Simon Tisdall
アラブ連盟やアフリカ機構はリビアへの介入や交渉を早期に始める姿勢を示していない。西側各国は、新興諸国、特に中国の消極的な姿勢にも制約されている。
西側が検討している選択肢を評価する。飛行禁止空域の設定。空港や滑走路への空爆。通信妨害や、情報収集と反政府派への提供など、隠れた軍事介入。特殊部隊の投入。反政府派への外交的な支援、国際協力、人道援助から開発支援、など、ソフト・パワー。
FP Tuesday, March 8, 2011
The time for a no-fly zone is now
Posted By Dov Zakheim
SPIEGEL ONLINE 03/08/2011
Debate Builds Steam
West Considers No-Fly Zone for Libya
NYT March 8, 2011
Washington’s Options on Libya
WP Tuesday, March 8, 2011;
Apply the Reagan Doctrine in Libya
By Marc A. Thiessen
軍事介入はせずに敵対する政権を倒すために、現在のゲイツ国防長官も加わっていたレーガン政権がやったことは、反政府派に武器を供給し、軍事訓練を外国で行い、情報を提供して政府の打倒を支援することだった。オバマもそうすればよい。
WSJ MARCH 8, 2011
The U.S. Should Keep Out of Libya
By RICHARD N. HAASS
guardian.co.uk, Wednesday 9 March 2011
Our duty to protect the Libyan people
Menzies Campbell and Philippe Sands
FT March 9 2011
Let’s boycott, isolate and sabotage Gaddafi
By Carne Ross
たとえ軍事介入を行わなくても、反政府派を支援する様々な選択肢を実行するべきである。
1.ボイコット。資産凍結や渡航制限だけでなく、カダフィやリビア政府・準政府機関の支払を拒否する。リビアへの石油代金支払いを停止する。
2.アイソレート。人道支援や国外脱出などを除いて、すべての移動を禁止する。アフリカ機構、アラブ連盟、EUはカダフィ大佐の国民に対する弾圧行為を非難する。
3.サボタージュ。リビアの軍事通信やITインフラを混乱させる。リビア軍のコントロール機能を妨害する。同じ方法で、反政府派を支援する。通信装置などを供給し、リビア軍の位置や弱点を知らせる。
WP Wednesday, March 9, 2011
Barack Obama's Libya straitjacket
NYT March 9, 2011
The Case for a No-Fly Zone
By NICHOLAS D. KRISTOF
NYT March 9, 2011
Libya Calling
By HISHAM MATAR
guardian.co.uk, Thursday 10 March 2011
Libya is a conundrum made in hell – or rather Downing Street
Simon Tisdall
The Guardian, Thursday 10 March 2011
Libya: The illusion of force
March 10 (Bloomberg)
Qaddafi’s End Depends on One Power Stepping Up
Annette Heuser
LAT March 10, 2011
One step at a time on Libya
Doyle McManus
l 市場と政治的なウソ
(chinadaily.com.cn) 2011-03-04
Machiavellian economics
By Harold James
国家のより高度な必要に応じるためであれば、うそ・虚偽も許される。マキャベリはそう主張した。政治的なウソの問題が、現代でも繰り返し論争に現れる。
ドイツの人気があった国防大臣Karl-Theodor zu Guttenbergは博士論文の嘘を認めるべきだったのか? アメリカのイラク侵攻は大量破壊兵器の嘘によって違法になるのか? アメリカの堕胎反対論者は堕胎を認めるPlanned Parenthoodの信用を損なうために俳優を送り込んで嘘をつかせてもよいか?
経済的マキャベリズム、すなわち、経済的必要によって嘘が正当化されることはもっとある。たとえば、大恐慌の際に、イタリアのファシスト政権はメディアを支配していた。イタリアの銀行もドイツやオーストラリアと同じように経営されていたから、銀行の破たんは避けられなかっただろう。しかし、イタリアではこの話題が一切国民に報じられなかった。そして、銀行パニックは起きず、不況も緩和された。
金融危機において果たす信認問題は、ムッソリーニの例を繰り返した。国家は安全を創り出す。ヒトラーは、ライヒスマルクの安定性を維持するために強制収容所は必要だ、と言うのを好んだ。
しかし個別の銀行や企業に嘘は許されない。その理由も明白だ。法によって虚偽を排除しなければ市場が機能しない。金融の虚偽は信用を破壊する。そして、同じ理由で、個別の政府も嘘は許されない。1994年のメキシコの危機も、今回のギリシャ危機も、政府の嘘が信用を破壊した。
政府の虚偽は法の強制や政府の権威を損なう点で、政治の嘘も同じである。1931年にムソリーニが維持できた嘘も、現代では不可能だ。嘘はさらに多くの虚偽をもたらし、破壊を拡大する。その後のイタリア経済に与えた嘘の影響は50年たっても続いている。
市場は情報を発見し続ける中で機能する。情報の流れを閉ざすことは、信認ではなく、歪みをもたらす。中東の騒乱が示すように、政治システムでもそうだ。それでも政府は、自分たちの方が優れている、と思いたがる。
FT March 6 2011
Trichet’s real reasons for a rate rise
By Wolfgang Münchau
FT March 10 2011
Investors should learn from 1994’s rate spikes
By Gillian Tett
FT March 6 2011
Financial rules must do more for developing countries
By Vincenzo La Via
l ユーロ危機と債務危機
SPIEGEL ONLINE 03/07/2011
Caught in the Euro Trap
Internal Opposition Grows to Further Bailout Measures
By Christian Reiermann and Michael Sauga
FT March 8 2011
Why the eurozone will survive
By Martin Wolf
ユーロ圏は解体しない。なぜなら、1.ユーロ圏はEUの政治プロセスに不可欠な部分である。2.参加国は長期的な利益を共有している。3.ユーロ圏には危機を処理する財政規模がある。
デフォルトとユーロ圏離脱の可能性、あるいは、ドイツが離脱する可能性は高くないが、債務の組み換えを行うことで回避できる。問題は、ユーロ圏がうまく行き過ぎたことだった。加盟国間の条件が収斂すると信じた銀行は、無責任な政府(ギリシャ)や愚かな個人投資家(アイルランド、スペイン)にも融資した。(融資した独仏などの)銀行が破たんするのを防ぐために、政府が民間債務を肩代わりしたが、その負担は余りにも大き過ぎた。また、ブームの頃の競争力悪化は容易に是正できないだろう。
しかし、債務の組み換えで赤字国の成長を確保すれば、ユーロ圏は解体しない。債務諸国(ギリシャ、アイルランド、ポルトガル)のGDPはユーロ圏全体のわずか6%だ。ユーロ圏の財政状態はアメリカよりも良い。
WSJ MARCH 8, 2011
The Future of the Euro: A Symposium
Barry Eichengreen, Hans-Werner Sinn, Martin Feldstein, Pedro Solbes and Steve H. Hanke
いずれも重要な論客です。Barry Eichengreenは、銀行を強化して、市場の規律をユーロ圏全体で貸し手と借り手に守らせる状態にすることが重要だ、と主張します。ただしそれは、ドイツが歴史的に確立した規律を他国に強制することではない、と。
Martin Feldsteinは、今もユーロの崩壊を予想します。異質な経済が集まって単一の金融政策・為替レートを採用すれば、失業や貿易不均衡が生じる。不況は悪化し、バブルも避けられない。歴史はこうした制度を否定したが、ユーロは政治的な理由で誕生し、維持されている。また、ドイツの納税者はユーロを維持するための財政移転を嫌うが、ドイツ企業は固定レートによる輸出増大を歓迎している。加盟国は貿易赤字でも切下げできない。
(chinadaily.com.cn) 2011-03-08
The EU's band-aid on a bullet hole
By Daniel Gros
包括的な救済パッケージがユーロ危機を終わらせるとは思えない。なぜならそれは問題の症状に対応するだけで、その原因を解決していないからだ。
メルケル首相は「ユーロ危機」ではなく「債務危機」だと主張する。しかも、これは政府と銀行の債務危機だ。それゆえ、債務超過の政府と支払不能の銀行を救済・処理するべきだが、パッケージは何も示さない。
EUが財政健全化や競争力の強化などを目指すのは必要なことだが、危機の前にはアイルランドも財政黒字国であった。周辺部の小国がバブルを生じて金融危機に至り、それがユーロ危機に波及してしまう問題と直接に結びつかない。重要な点は、ユーロ圏内の経済が緊密に結びついている中で、いずれの銀行破綻や財政破綻も、それを統一して監督するユーロ圏の監視システム、そして処理できる財政メカニズムがないことだ。
これは集合行為問題である。ユーロ圏の銀行は自己資本が不足しており、ストレス・テストは各国の金融当局が行うために、どの国も銀行の危機を隠そうとする。また、銀行や政府の強制的な処理や資本注入を、ユーロ圏全体で統一して行う主体がない。
FT March 9 2011
The EU must rethink Ireland’s deal
By Peter Sutherland
アイルランド新政権が提案した新しい融資条件をEU・IMFは受け入れるべきだ。それは十分な財政引き締めを行い、債務のGDP比率を3%以内にする健全化を1年遅らせるだけだ。先の融資条件は金利水準5.8%が危機の際に決められた。2010年にイギリスとオランダがアイスランドに融資した条件は、さらに長期の融資で3.2%であった。
モラル・ハザードを避けるために厳しい条件が必要だとしても、懲罰的な水準を意味しない。融資と成長の回復はヨーロッパの利益にかなう。フランスなどが強く求める法人税率の引き上げはアイルランド政府の産業政策であり、引き下げを拒む権利がある。欧州委員会もそれを認めている。それはユーロ圏だけでなく、EUとして統一したルールを作る問題である。
FT March 9 2011
Europe: Northern exposure
By Peter Spiegel in Brussels and Quentin Peel in Berlin
WSJ MARCH 9, 2011
Borrower, and Lender, Beware
By DANIEL GROS
「救済」融資の金利は高すぎる、というアイルランド国民の不満は間違いだ。
ギリシャやアイルランドはECBの金融政策と安定化融資の通常のルールに従って、すでに大幅な支援を受けている。国債の流通市場で両国の債券がECBによって買い取られているから、破綻を免れてきた。また、銀行システムを守るために政府は金融機関を支援し、ECBはそれらの政府に1%で融資している。両国への融資は約1000億ユーロ、ギリシャの国民所得の40%、アイルランドの80%に達している。各国中央銀行による銀行への緊急融資もECBによって支持され、アイルランドは約400億ユーロである。
ECBや安定化基金は、緊急融資の金利が高いと政治家に攻撃されている。その意味がわかっているのか? 制度が信認を失えば、政治家たちはその利益を失うことになる。
WSJ MARCH 9, 2011
Europe's Debt Addiction
FT March 10 2011
Europe’s pact is the first step to recovery
By John Llewellyn and Peter Westaway
ユーロ圏は解体しない。解体のコストは大き過ぎる。ユーロ圏はEU統合の政治的プロセスであり、ヨーロッパの政治家たちに広く支持されている。独仏はいかなる国の離脱も避けようとするだろう。
WSJ MARCH 11, 2011
The Running of the Euro Bank Bears
FP MARCH 8, 2011
Zakaria's World
BY JOSEPH S. NYE JR.
FT March 8 2011
America should not prosecute Julian Assange
By Joseph Nye
Fareed Zakariaの悲観論にJoseph Nyeは反対します。教育システムの失敗やインフラの老朽化は誇張されている。政治システムの硬直化も建国の精神にそれを是正する力がある。中国の権威主義体制には欠陥もあり、利点だけを羨むことはない。むしろアメリカは偏狭な閉鎖的精神に向かうことを恐れるべきだ。
アメリカ政府は、WikiLeaksの件でアサンジを告発するより、優れた情報収集・管理や、インターネットの時代に即した法律・原則を整備する努力に向かうべきだ。
l 日本
FT March 7 2011
Japan resigned to political drift
WSJ MARCH 8, 2011
The Tokyo Campaign Finance Inquisition
The Guardian, Tuesday 8 March 2011
Japan: Resigned to resign
なぜ日本の首相はこれほど短命なのか? 定説はない。天皇が要るから安定性を維持できる? 首相の交代は野球チームのコーチみたいなものだ? 戦後の教育システムが悪い? 首相の給与は少なく、閣内の権威も低い?
WSJ MARCH 9, 2011
Japan's Growing Sense of Crisis
By Michael Auslin
日本にエジプト革命が波及するのか? 日本の民主主義はまだ機能していない。これほど多くの問題があっても、エジプトどころか、イギリスに比べても、日本にはデモが起きない。さらに1世代を経済停滞で過ごすとしたら、その民主主義の特性として続く日本社会の安定性は、エジプトの騒乱よりも危険である。
WSJ MARCH 9, 2011
Making Sense of Japanese Cycles
By TAKUJI AIDA
WSJ MARCH 11, 2011
Japan's Shutdown About Nothing
アメリカの共和党と同じく、日本の国会でも、予算案を承認せずに財政を枯渇させる選択を野党は追求するのか?
FT March 7 2011
Monsters that lurk in the shadows of Wall St
By Francesco Guerrera
FT March 8 2011
King helps the case for banking reform
guardian.co.uk, Wednesday 9 March 2011
At 150, Italy gives the lie to the stories we tell the world about Europe
Timothy Garton Ash
イタリア統一、150周年、おめでとう! ・・・ようこそ、ベルルスコーニ王朝によるイタリア崩壊へ!
l インド洋の安全保障
WSJ MARCH 10, 2011
Leading in the Indian Ocean
By THOMAS G. MAHNKEN AND ANDREW SHEARER
中国の台頭は、急速にインド洋の重要性を高めている。テロとの戦いやイランの核開発に対するアメリカの関心に加えて、最近はオーストラリアがアメリカとの協力を求めている。
アジアで急速に成長する中国とインドは、エネルギーの供給や輸出においてインド洋に依存しており、中国はインドの最大の貿易相手国にもなった。貿易はオーストラリアの鉱山開発も刺激し、北部や西部に成長をもたらしている。
しかし、中国とインドの間には国境線やチベットなど、紛争が続いており、中国の軍備増強と、インド洋への進出や領土要求に、日本、フィリピン、韓国、ベトナムなど、各国が不安を感じている。中国はアフリカの角にも海賊掃討で進出し、ビルマ、スリランカ、パキスタンとの関係を強化している。インドがこれを心配するのは当然だ。
アメリカとオーストラリアが呼びかけて、インド洋の航行の安全を保障する多国間協力メカニズムを構築するときだ。
******************************
The Economist February 26th 2011
Blood and oil
The Arab uprisings: Endgame in Tripoli
The nervous Gulf: Bullets and bribes
The future of food: Crisis prevention
Japanese banks: Back from the dead
Comparing Chinese provinces with countries: All the parities in China
Thailand’s yellow shirts: Eat, talk, pray, revolt
The G20 process: Congregate, implicate, obfuscate
(コメント) アラブの春、石油と食糧の供給、そして、G20におけるグローバル・インバランスと調整をめぐる言葉の調整をめぐる調整。
石油の呪いが独裁体制の基礎であるのは明らかですが、これはベルルスコーニやタクシンがグローバリゼーションの富を取り込む超資産家であり都市や政治システムを買収する姿と重なります。カダフィも大量破壊兵器を放棄して西側に協調する姿勢を示した後、介入によって滅ぼされた、という間違った教訓を世界の独裁者たちに残さないよう、リビアの停戦と政治的妥協が見たいです。
日本の銀行がアジアや中国に進出した日本の企業とともに海外で預金や融資を増やしている、ということです。中国の省は、国家に匹敵する大きさです。いわば、中華合衆国であり、中国共産党連邦なのです。タイの王党派ナショナリスト・黄色シャツが、アビシット首相の代表する軍・エリート政党から切り捨てられる、という予想もあります。
パリG20の「指標的ガイドライン」という言葉の意味を尋ねられたとき、フランス財務大臣が行った説明を記事は非難しています。しかし、取り上げられた各国中央銀行総裁の発言はいずれも正当です。「不均衡」には「調整」が必要であり、そのためには「政策協調」が話し合われる。しかし、それは国内政策を制限する意味がある。その通りです。各国政府はそれを受け入れられない、という主張もいつも通りです。政府の主張が政治的な気分を表現しているだけである以上、専門家会議で合意を模索する、と思います。