パート1から)

l  ミャンマーの変革

FT March 30, 2012

The Lady and a laureate, but can she be a legislator?

Aung San Suu Kyiは選挙戦に似合わない.鉛筆のような細身の体にブラウスをまとい,まとめた髪には花を挿している.選挙戦というより,VIPとの茶会に招かれたような姿である.しかし,この占拠がミャンマーの将来を決める重要な選挙であり,彼女がその結果を左右できる15年近い自宅軟禁を解かれたばかりの人物なのだ.

何年も孤立した後で,国民は彼女を支持するのか? 約束通り,システムを変えることができるのか? 議会に選出されれば,結果を求められる.

Suu Kyi の自伝を書いたBertil Lintnerは,多くの群衆が彼女の演説に集まるのは,彼女が単なる政治家ではなく,この体制の「悪」を滅ぼす「神に近い存在」であるからだ,ということを知らねばならない,という.

国民は彼女の説明を必ずしも求めない.彼女も特定の政策を掲げていない.時には多くの雇用を,優れた教育を,汚職の撲滅を求める.それはポピュリストの印象だ.彼女は経済学が得意ではないようだ.

問題は,次に何が起きるか,だ.高い支持率は,経済を回復させることと同じではない.Suu Kyiはスマートで,聡明である.しかし,政党として,NLDはどうか? 彼女の周りには,多くの投獄されていた元政治家が集まっている.彼らは経済学を知らないし,ビジネスの経験もない.

選挙を通じて,Suu Kyiという人格がミャンマーの民主化を動かすことに新しい不安が生じた.彼女の個人的な影響力に頼りすぎる.彼女の街頭演説が,先週,病気を理由に中止になった.Suu Kyiの健康問題が,民主化や政治の行方に重大な問題を示すことがわかった.

政府・軍は外国の影響をこれまで何度も非難している.しかし,Suu Kyiは既に多くの犠牲を払って,強くなった.

1160議席のうちの48議席が争われるだけで,この選挙で民主化は終わらない.その前途には困難が待っている.

FP MARCH 30, 2012

The Lady’s Leap of Faith

BY CHRISTIAN CARYL

FP MARCH 30, 2012

16 Ways to Fix Burma

guardian.co.uk, Monday 2 April 2012

Aung San Suu Kyi's victory does not bring Burma freedom

Zoya Phan

補欠選挙によっても,スー・チーの政党は,議会全体の約5%の議席を占めるだけであり,80%は軍とその支持政党が支配している.しかし,スー・チーは選挙を通じて多くの国民を動員することに成功した.そして,その限られた政治スペースを真の民主化改革の舞台にするつもりだ.

もう一つの心配は,少数民族との武力衝突である.ミャンマーは独立以来,カレン族と争っている.政府は民主化に関するスー・チーとの協力に踏み切ったが,少数民族の弾圧は続いている.タイには多くの難民キャンプがある.

スー・チーが尊重する自由という価値を,少数民族に対しても忘れないことだ.

guardian.co.uk, Monday 2 April 2012

Burma: the eye of the needle

FT April 2, 2012

Lift sanctions or Myanmar’s moment may be lost

By Thant Myint-U

FP Monday, April 2, 2012

A bittersweet celebration in Burma

Posted By Christian Caryl

WSJ April 3, 2012

The Asean Way Won Burma Over

By NAJIB RAZAK

ASEANは加盟国に制裁や叱責を行う機関ではなく,改革の勇気をたたえる機関として,経済成長と政治的発展を促し,影響力を発揮している.

特に,ミャンマーに対する対応で,西側諸国の外交との違いは明白である.なぜならASEANは,単なる連盟ではなく,家族なのだ.他の加盟国の成功を望み,その苦境にもこれを助けることが求められる.アジアでは,伝統的に家族の価値が重視されてきた.

それに加えて,加盟国が政治改革を進められるように,ASEANは貿易や成長,発展を加盟国間で促してきた.マレーシア,タイ,インドネシアなど,ASEAN各国が改革を進めて成果を競う中で,ミャンマーの指導者たちも取り残されるという不安を強めただろう.

マレーシアは,植民地時代の法律を廃して,もっと近代的な,マレーシア国民の生命と権利を守るものに置き換えてきた.それは革命ではなく,発展である.選挙の透明性を高め,超党派の改革委員会を選挙制度の健全化に求めてきた.

ASEANは,緊密で,温かい関係を求める.それがASEANサミットの最終宣言,一つのコミュニティー,一つの運命,で示されている.

FT April 4, 2012

Myanmar: Opening up

By Gwen Robinson

スー・チーのNLDが勝利した日に,取引所では通貨kyatが新しく自由取引される日でもあった.1ドルに対する最初のレート,818Ktはそれまでの公定レート,6.4Ktを大幅に減価したものであった.この変化こそ,軍人たちが支配するミャンマーと,周辺の東南アジア諸国で進む金融・経済改革との差を示すものであった.

天然ガスの埋蔵量が豊富なミャンマーだが,停電が起きる.一人当たりGDP800USドルの国では,携帯電話も非常に限られたエリートしか持っていない.しかし,改革派の政策は既に大きな影響を及ぼしつつある.

Kyatの為替レートを管理された変動制にすることが重要だ,とIMFJ.スティグリッツなど,改革派に親しい関係者は言う.援助や資本流入がインフレを起こす状況に対応するためだ.

政府に支援される政党Union Solidarity and Development partyが,Thein Sein大統領の支持する改革派であった.しかし,彼らは次の選挙でも厳しい結果を予想しただろう.1年以上前に権力を握ったThein Seinは,保守的な退役軍人たちの影響力を考慮しつつ,競合する改革案の間で微妙なバランスを取ってきた.外部から称賛されたような政治犯の釈放,少数民族との和解は,内部の激しい反発を招くものであった.強硬派を抑えるためにも,西側との関係完全が経済的利益をもたらす,ということを示す必要がある.

しかし,と国連のミャンマーにおける代表Charles Petrieは考える.人々の期待の急速に高まり,西側の行動の遅れが,次第に問題を悪化させるかもしれない.多くの意見では,制裁解除を速めるのがよい.しかし,投資が殺到して経済を破滅させる,と懸念する声もある.

すでに中国,タイ,インドとの国境貿易は膨大な規模に達しているはずだが,ほとんどが非公式である.韓国やマレーシアも加わって,多くの投資が流入している.

通貨制度の改革は,西側からの投資のカギを握る.すでに制裁解除の前から,西側の大手投資家が野村証券やUBSによって組織され,ミャンマーの投資機会を下見している.アメリカの大富豪で,投資家でもあるJim Rogersは,ミャンマーが1979年の中国の位置にある,という.「中国とインドの間で,6000万人の人口を持ち,豊富な資源,農業・・・何でもある.」

ミャンマーの企業家たちも,その機会を逃さないつもりだ.

WSJ April 4, 2012

Sanctions Worked in Burma


l  世銀総裁指名

FT March 30, 2012

The right time for a renaissance man?

By Gillian Tett

キム博士Jim Yong Kimは,5歳でアメリカにわたり,父の強い希望で勉学に励んだ.ハーヴァード大学では医士として知識を習得したが,その後,科学とはもっとも縁のないような,人類学で博士号を取得した.韓国の文化と医薬産業との関係を調査したのだ.

彼の人生そのものが,現代世界を失敗に導いたサイロ型(たこつぼ思考)の知識人を打破することであった.結核とエイズの解明に,細菌や生物学と,貧困層の文化的・経済的な相互関係とを組み合わせた研究で,革新をもたらした.「メディカル・アンソロポロジー」は,全体主義的な,ルネサンス的発想,多分野にわたる知識を総合するインテリの姿を示している.

今はどこでも,大学,官僚,企業の中に多くの専門家がいる.科学者はデータに埋もれて,部族的な境界線を守っている.他方,社会科学はその程度が少ない.二つの分野が衝突しても,しばしば互いを理解できない.物理学者にとって,人類学者はヒッピーだ.まともな訓練も受けていない.他方,社会科学者にとって,西側の物理学者は文化的に傲慢で,人間の経験が持つ統合性・包括性を無視している.

Jonah Lehrerは著書(Imagine: How Creativity Works)で,21世紀が直面する問題は,異なった分野の専門家たちを結びつける専門家を見出すことだ,と述べた.

キム博士が韓国の出身であること,エコノミストではないこと,国際組織管理に従事していないこと,などが議論されている.しかし,ダートマス大学の管理に従事し,学生たちとの対話では優れた人間味を示した.すなわち,白い革ジャケットを着て,ラップ・ダンスを踊った.

キム博士の世銀総裁指名は,21世紀の文芸復興21st-century renaissanceに生きる男女を祝福する事件だろう.

FT April 2, 2012

World Bank: An exercise of influence

By Alan Beattie

FP Monday, April 2, 2012

A missed opportunity at the World Bank

Posted By Stephen M. Walt

Jim Yong Kimが適任かどうか,私にはわからない.しかし,この指名により,オバマ政権が外交的な重要機会を失ったことは明らかだ.アメリカは事実上の拒否権を持ち,これまでもベトナム戦争を指揮したマクナマラRobert McNamaraや,イラク戦争で同罪のウォルフォヴィッツPaul Wolfowitzを世銀総裁に指名したことがある.

確かにリアリストの議論では,国際機関が自国の利益を実現する手段であり,最も頼りになる人物を指名するはずだ.しかし,明敏なリアリストなら理解しているように,アメリカの選択を他国に押し付けるのは怨嗟を広め,特に,中国やブラジル,インドなど,新興諸国はアメリカの拘束を逃れる努力を強めるだろう.他国は反米感情をため込み,世界中でアメリカのイメージを損なうような他の集会を開く.

だから私は,オバマがナイジェリアの女性財務大臣で,元世銀管理部長Ngozi Okonjo-Iwealaを指名すべきであった,と思うのだ.彼女の政策エコノミストとしての手腕を,私は評価できないが,Jagdish Bhagwatiが大いに賞賛しているのも印象的だった.

アメリカの外交政策としては,アメリカがその地位に就く人物を,できるだけ他国が受け入れやすい形で,行使するべきだった.その一つの方法は,象徴的な譲歩を示すことだ.アフリカ連合が候補として示した女性は,幸いにも,ハーヴァード大学を卒業し,MITPh.Dを得た秀才で,世界銀行の豊富な経験を持つ.なぜ彼女を指名しなかったのか?

 

Project Syndicate Apr. 2, 2012

The Hazard of Second Best

Mohamed A. El-Erian

FT April 4, 2012

My pitch to build a brave new World Bank

By José Antonio Ocampo

Global Times | April 04, 2012

Kim nomination points to World Bank healthcare shift

Project Syndicate Apr. 4, 2012

What Should the World Bank Do?

Jose Antonio Ocampo

Project Syndicate 05 April 2012

Obama’s Blunder at the Bank

Jagdish Bhagwati

オバマの世銀総裁指名は間違いだ. Jim Yong Kimではなく,Ngozi Okonjo-Iwealaという優れた候補者がいたのだから.

Okonjo-Iweala is witty, articulate, and no wimp when it comes to taking on shoddy arguments. She is a dream candidate to lead the World Bank.

オバマが指名を間違った最大の理由は,マクロ政策を軽視したことだろう.中国やインドが示したように,貿易や投資を自由化し,民営化を行うことが,貧困を減らす重要なエンジンであった.「ネオ・リベラル」批判に加わるJim Yong Kimは,こうしたことがわからない.


FP MARCH 30, 2012

This Week at War: The Navy's Pacific Problem

BY ROBERT HADDICK

FP Tuesday, April 3, 2012

Will China climb down in the South China Sea?

Posted By Steve LeVine


NYT March 31, 2012

Why Nations Fail

By THOMAS L. FRIEDMAN

“Why Nations Fail”の著者たちは,アメリカと中国について注意している.アメリカは「包括的な経済制度」の国で,中国は「抽出的な経済制度」の国だろうか? あるいは,そうであったものが逆転したのだろうか? 前者は権力や富を広く分かち合うが,後者はそれを奪い取る.

政治改革,教育システム,不平等.それは,アラブ世界についても,中国につても問題であるが,アメリカでこそ問題となる.


l  日本の変革

The Observer, Sunday 1 April 2012

What's the story of the next decade? The rebirth of Japan

Will Hutton

小さなことだが,日本は多くの点で優れている.たとえば,成田空港で安全チェックのために靴を脱ぐとき,スタッフはスリッパを渡してくれる.それはメッセージだ.空港スタッフはあなたが快適であるように,あなたが望むものを知っています.

日本では,タクシーのドアが自動で開く.トイレの座席は暖められ,洗浄してくれる.驚くほど豊富な種類の食べ物がある.人間の望むものをかなえることへの情熱が,日本の繁栄を実現した.

しかし,この20年間,日本は低迷している.通産省の産業育成,経団連や銀行と結びついた緩やかな企業集団,世界市場におけるブランド,こうしたものが機能しなくなった.それでも5兆ドルを超える経済規模を持つが,経済の保守主義は失意と絶望に向かう.

改革を約束して登場し,さまざまな失策を犯したが,民主党政権への支持は自民党を超えている.政府に招かれて,私は質問を受けた.労働市場の弾力性と確実性とを共に満たすような,21世紀の社会契約とは何か? 20世紀後半に日本に繁栄をもたらした企業と関係者の利益を重視する資本主義を,より民主的な形で再生するにはどうすれば良いか? (改良された)よい資本主義を求めている.

日本人は繁栄を再生したいと強く願っている.東北の震災と福島原発事故は,その必要を強めた.原発の運転再開には多くの厳しい条件をクリアしなければならない.活性化した市民の政治意識は,効果的な監視,情報の透明性,国際安全基準の達成,などを求めている.日本の資本主義改良は,こうした市民たちによる,下からの要求で始まる.

もし日本が,日銀の金融政策や金融システムの改革に成功し,マクロ的な条件を改善できれば,ダイナミックなハイテク技術に優れた中堅企業が無数にある.彼らの成長を促し,動脈硬化を起こした巨大企業に挑ませ,グローバル化をも促すことだ.

21世紀のアジアは,日本の復活と中国の再転落で始まる.

BLOOMBERG Apr 3, 2012

Herbert Hoover Returns With Awful Economic Ideas

By William Pesek

ハーバート・フーバーは大恐慌を拡大した責任があるために記憶され,橋本竜太郎も「アジアのフーバー」として記憶されている.バブル後の日本経済が回復する過程を,間違った増税によって損なったのだ.

野田佳彦も,フーバー経済学を信奉し,その列に加わる.先週,消費税を3年かけて10%に引き上げるために大きく前進したからだ.デフレが進み,人口が減少し,貧困層が増えているのは気にしない.野田は増税によって世界最悪の債務依存を減らす,という.

野田首相の政治的指導力を称賛する政治家もいるが,それはデタラメだ.むしろ逆噴射によって,日本で始まった回復の芽をつぶしてしまうだろう.

真の指導力があるなら,本当の改革を進めるべきだ.債務比率はそうではない.インフレを調整すれば,日本の2012GDP1992年よりも少なくなった.

野田首相は,貿易自由化を進めて,農民など,特殊利益団体によって改革を阻む者たちを退場させる.原発やエネルギー産業に利益を持つ旧業界に代えて,グリーン革命によるエネルギーと雇用拡大を推進する.企業経営者にもっと株主に対して配慮させ,責任を持たせる.正社員としてもっと女性を雇用し,彼女たちの昇進を促す.育児の支援を充実させ,子供のいる若い夫婦に減税する.移民の流入を歓迎する.日本全体で英語の利用を広めて,経営者には英語に堪能な韓国人や中国人,インドネシア人を採用する.新規採用の慣行を改革し,学生たちが学業をあきらめて就職活動に奔走するのを止めさせる.日本の若者も,もっと社会活動や海外旅行を経験するべきだ.企業は円高に対する不満を繰り返さず,それを利用する.日銀と協力して金融緩和し,消費者ではなく,融資を増やせない銀行に課税する.ベンチャー・キャピタルを奨励する.

史上最大の株式公開で成功したZuckerbergは富を作り,野田は富を破壊する.


l  韓国の自殺率

guardian.co.uk, Sunday 1 April 2012

South Korea's economic reforms – a recipe for unhappiness

Ha-Joon Chang

Naze

なぜ優れた経済成長や世界企業を称賛される韓国で,その国民はOECDの中で最も不幸を感じているのか?

World Values Surveyによれば,OECDの最下位ではなく,下から2番目だが,ヨンセ大学の研究では,子供の幸福度が裕福な諸国では最悪だった.自殺率の順位で見れば,2009年,10万人あたり28.4人の韓国は,19.7人の日本を大きく引き離して1位である.しかし,1995年まで,韓国の自殺率はOECD平均より少し下の約10人だった.

その原因は,1997年の金融危機後に行われた経済改革である.市場は外国投資家に開放され,大企業は国際的な投資家の圧力を感じるようになった.投資を最小に,短期の利益を増やすことだ.零細企業は資金が得られなくなった.規制緩和で銀行は消費者金融など,利益を大きな分野に向かったからだ.

労働者たちは安定した雇用条件を失い,解雇されて,もっと低い賃金で「派遣」労働者になった.長期雇用契約を持たない労働者の比率はOECD内で最も高くなった.年上の労働者たちも,もっと若い,安価な派遣労働者に代替される圧力を受けた.

韓国には福祉国家が無かった.OECDでは,メキシコに次いで2番目にGDPに対する社会保障の規模が小さい.労働者たちは,失業,強制的な早期退職,疾病への恐怖を感じた.それは子供たちの受験勉強を激しい圧力にさらした.子供たちは長時間の勉強とストレスで,精神を病み,自殺者が増えた.しかも,安定した職場を求めて,才能ある若者は医者や弁護士に集中し,他の分野に行かなくなった.それは技術革新や成長をも損なうだろう.

イギリスやヨーロッパの緊縮財政や社会保障改革は,韓国の経験を学ぶべきだ.不安定な職場が人々を生産的にすることはなく,絶望を深める.


guardian.co.uk, Sunday 1 April 2012

Afghanistan: our modern opium war

Pratap Chatterjee


パート3へ続く)