【法令番号 】平成八年七月十二日条約第六号
【施行年月日】平成八年七月二十日外務省告示第三百九号
海洋法に関する国際連合条約をここに公布する。
海洋法に関する国際連合条約
この条約の締約国は、
海洋法に関するすべての問題を相互の理解及び協力の精神によって解決する希望に促され、また、平和の維持、正義及び世界のすべての人民の進歩に対する重要な貢献としてのこの条約の歴史的な意義を認識し、
千九百五十八年及び千九百六十年にジュネーヴで開催された国際連合海洋法会議以降の進展により新たなかつ一般的に受け入れられ得る海洋法に関する条約の必要性が高められたことに留意し、
海洋の諸問題が相互に密接な関連を有し及び全体として検討される必要があることを認識し、
この条約を通じ、すべての国の主権に妥当な考慮を払いつつ、国際交通を促進し、かつ、海洋の平和的利用、海洋資源の衡平かつ効果的な利用、海洋生物資源の保存並びに海洋環境の研究、保護及び保全を促進するような海洋の法的秩序を確立することが望ましいことを認識し、
このような目標の達成が、人類全体の利益及びニーズ、特に開発途上国(沿岸国であるか内陸国であるかを問わない。)の特別の利益及びニーズを考慮した公正かつ衡平な国際経済秩序の実現に頁献することに留意し、
国の管轄権の及ぶ区域の境界の外の海底及びその下並びにその資源が人類の共同の財産であり、その探査及び開発が国の地理的な位置のいかんにかかわらず人類全体の利益のために行われること等を国際連合総会が厳粛に宣言した千九百七十年十二月十七日の決議第二千七百四十九号(第二十五回会期)に規定する諸原則をこの条約により発展させることを希望し、
この条約により達成される海洋法の法典化及び漸進的発展が、国際連合憲章に規定する国際連合の目的及び原則に従い、正義及び同権の原則に基づくすべての国の間における平和、安全、協力及び友好関係の強化に頁献し並びに世界のすべての人民の経済的及び社会的発展を促進することを確信し、
この条約により規律されない事項は、引き続き一般国際法の規則及び原則により規律されることを確認して、
次のとおり協定した。
第一部 序
第一条 用語及び適用範囲
1 この条約の適用上、
(1)「深海底」とは、国の管轄権の及ぶ区域の境界の外の海底及びその下をいう。
(2)「機構」とは、国際海底機構をいう。
(3)「深海底における活動」とは、深海底の資源の探査及び開発のすべての活動をいう。
(4)「海洋環境の汚染」とは、人間による海洋環境(三角江を含む。)への物質又はエネルギーの直接的又は間接的な導入であって、生物資源及び海洋生物に対する害、人の健康に対する危険、海洋活動(漁獲及びその他の適法な海洋の利用を含む。)に対する障害、海水の水質を利用に適さなくすること並びに快適性の減殺のような有害な結果をもたらし又はもたらすおそれのあるものをいう。
(5)(a)「投棄」とは、次のことをいう。
(i)廃棄物その他の物を船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物から故意に処分すること。
(ii)船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物を故意に処分すること。
(b)「投棄」には、次のことを含まない。
(i)船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物及びこれらのものの設備の通常の運用に付随し又はこれに伴って生ずる廃棄物その他の物を処分すること。ただし、廃棄物その他の物であって、その処分に従事する船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物によって又はこれらに向けて運搬されるもの及び当該船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物における当該廃棄物その他の物の処理に伴って生ずるものを処分することを除く。
(ii)物を単なる処分の目的以外の目的で配置すること。ただし、その配置がこの条約の目的に反しない場合に限る。
2 (1)「締約国」とは、この条約に拘束されることに同意し、かつ、自国についてこの条約の効力が生じている国をいう。
(2)この条約は、第三百五条1の(b)から(f)までに規定する主体であって、そのそれぞれに関連する条件に従ってこの条約の当事者となるものについて準用し、その限度において「締約国」というときは、当該主体を含む。
第二部 領海及び接続水域
第一節 総則
第二条 領海、領海の上空並びに領海の海底及びその下の法的地位
1 沿岸国の主権は、その領土若しくは内水又は群島国の場合にはその群島水域に接続する水域で領海といわれるものに及ぶ。
2 沿岸国の主権は、領海の上空並びに領海の海底及びその下に及ぶ。
3 領海に対する主権は、この条約及び国際法の他の規則に従って行使される。
第二節 領海の限界
第三条 領海の幅
いずれの国も、この条約の定めるところにより決定される基線から測定して十二海里を超えない範囲でその領海の幅を定める権利を有する。
第四条 領海の外側の限界
領悔の外側の限界は、いずれの点をとっても基線上の最も近い点からの距離が領海の幅に等しい線とする。
第五条 通常の基線
この条約に別段の定めがある場合を除くほか、領海の幅を測定するための通常の基線は、沿岸国が公認する大縮尺海図に記載されている海岸の低潮線とする。
第六条 礁
環礁の上に所在する島又は裾礁を有する島については、領海の幅を測定するための基線は、沿岸国が公認する海図上に適当な記号で示される礁の海側の低潮線とする。
第七条 直線基線
1 海岸線が著しく曲折しているか又は海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所においては、領海の幅を測定するための基線を引くに当たって、適当な点を結ぶ直線基線の方法を用いることができる。
2 三角州その他の自然条件が存在するために海岸線が非常に不安定な場所においては、低潮線上の海へ向かって最も外側の適当な諸点を選ぶことができるものとし、直線基線は、その後、低潮線が後退する場合においても、沿岸国がこの条約に従って変更するまで効力を有する。
3 直線基線は、海岸の全般的な方向から著しく離れて引いてはならず、また、その内側の水域は、内水としての規制を受けるために陸地と十分に密接な関連を有しなければならない。
4 直線基線は、低潮高地との間に引いてはならない。ただし、恒久的に海面上にある灯台その他これに類する施設が低潮高地の上に建設されている場合及び低潮高地との間に基線を引くことが一般的な国際的承認を受けている場合は、この限りでない。
5 直線基線の方法が1の規定に基づいて適用される場合には、特定の基線を決定するに当たり、その地域に特有な経済的利益でその現実性及び重要性が長期間の慣行によって明白に証明されているものを考慮に入れることができる。
6 いずれの国も、他の国の領海を公海又は排他的経済水域から切り離すように直線基線の方法を適用することができない。
第八条 内水
1 第四部に定める場合を除くほか、領海の基線の陸地側の水域は、沿岸国の内水の一部を構成する。
2 前条に定める方法に従って定めた直線基線がそれ以前には内水とされていなかった水域を内水として取り込むこととなる場合には、この条約に定める無害通航権は、これらの水域において存続する。
第九条 河口
河川が海に直接流入している場合には、基線は、河口を横切りその河川の両岸の低潮線上の点の間に引いた直線とする。
第十条 湾
1 この条は、海岸が単一の国に属する湾についてのみ規定する。
2 この条約の適用上、湾とは、奥行が湾口の幅との対比において十分に深いため、陸地に囲まれた水域を含み、かつ、単なる海岸のわん曲以上のものを構成する明白な湾入をいう。ただし、湾入は、その面積が湾口を横切って引いた線を直径とする半円の面積以上のものでない限り、湾とは認められない。
3 測定上、湾入の面積は、その海岸の低潮線と天然の入口の両側の低潮線上の点を結ぶ線とにより囲まれる水域の面積とする。島が存在するために湾入が二以上の湾口を有する場合には、それぞれの湾口に引いた線の長さの合計に等しい長さの線上に半円を描くものとする。湾入内にある島は、湾入の水域の一部とみなす。
4 湾の天然の入口の両側の低潮線上の点の間の距離が二十四海里を超えないときは、これらの点を結ぶ閉鎖線を引き、その線の内側の水域を内水とする。
5 湾の天然の入口の両側の低潮線上の点の間の距離が二十四海里を超えるときは、二十四海里の直線基線を、この長さの線で囲むことができる最大の水域を囲むような方法で湾内に引く。
6 この条の規定は、いわゆる歴史的湾について適用せず、また、第七条に定める直線基線の方法が適用される場合についても適用しない。
第十一条 港
領海の限界の画定上、港湾の不可分の一部を成す恒久的な港湾工作物で最も外側にあるものは、海岸の一部を構成するものとみなされる。沖合の施設及び人工島は、恒久的な港湾工作物とはみなされない。
第十二条 停泊地
積込み、積卸し及び船舶の投びょうのために通常使用されている停泊地は、その全部又は一部が領海の外側の限界よりも外方にある場合にも、領海とみなされる。
第十三条 低潮高地
1 低潮高地とは、自然に形成された陸地であって、低潮時には水に囲まれ水面上にあるが、高潮時には水中に没するものをいう。低潮高地の全部又は一部が本土又は島から領海の幅を超えない距離にあるときは、その低潮線は、領海の幅を測定するための基線として用いることができる。
2 低潮高地は、その全部が本土又は島から領海の幅を超える距離にあるときは、それ自体の領海を有しない。
第十四条 基線を決定する方法の組合せ
沿岸国は、異なる状態に適応させて、前諸条に規定する方法を適宜用いて基線を決定することができる。
第十五条 向かい合っているか又は隣接している海岸を有する国の間における領海の境界画定
二の国の海岸が向かい合っているか又は隣接しているときは、いずれの国も、両国間に別段の合意がない限り、いずれの点をとっても両国の領海の幅を測定するための基線上の最も近い点から等しい距離にある中間線を越えてその領海を拡張することができない。ただし、この規定は、これと異なる方法で両国の領海の境界を定めることが歴史的権原その他特別の事情により必要であるときは、適用しない。
第十六条 海図及び地理学的経緯度の表
1 第七条、第九条及び第十条の規定に従って決定される領海の幅を測定するための基線又はこれに基づく限界線並びに第十二条及び前条の規定に従って引かれる境界画定線は、それらの位置の確認に適した縮尺の海図に表示する。これに代えて、測地原子を明示した各点の地理学的経緯度の表を用いることができる。
2 沿岸国は、1の海図又は地理学的経緯度の表を適当に公表するものとし、当該海図又は表の写しを国際連合事務総長に寄託する。
第三節 領海における無害通航
A すべての船舶に適用される規則
第十七条 無害通航権
すべての国の船舶は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、この条約に従うことを条件として、領海において無害通航権を有する。
第十八条 通航の意味
1 通航とは、次のことのために領海を航行することをいう。
(a)内水に入ることなく又は内水の外にある停泊地若しくは港湾施設に立ち寄ることなく領海を通過すること。
(b)内水に向かって若しくは内水から航行すること又は(a)の停泊地若しくは港湾施設に立ち寄ること。
2 通航は、継続的かつ迅速に行わなければならない。ただし、停船及び投びょうは、航行に通常付随するものである場合、不可抗力若しくは遭難により必要とされる場合又は危険若しくは遭難に陥った人、船舶若しくは航空機に援助を与えるために必要とされる場合に限り、通航に含まれる。
第十九条 無害通航の意味
1 通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる。無害通航は、この条約及び国際法の他の規則に従って行わなければならない。
2 外国船舶の通航は、当該外国船舶が領海において次の活動のいずれかに従事する場合には、沿岸国の平和、秩序又は安全を害するものとされる。
(a)武力による威嚇又は武力の行使であって、沿岸国の主権、領土保全若しくは政治的独立に対するもの又はその他の国際連合憲章に規定する国際法の諸原則に違反する方法によるもの
(b)兵器(種類のいかんを問わない。)を用いる訓練又は演習
(c)沿岸国の防衛又は安全を害することとなるような情報の収集を目的とする行為
(d)沿岸国の防衛又は安全に影響を与えることを目的とする宣伝行為
(e)航空機の発着又は積込み
(f)軍事機器の発着又は積込み
(g)沿岸国の通関上、財政上、出入国管理上又は衛生上の法令に違反する物品、通貨又は人の積込み又は積卸し
(h)この条約に違反する故意のかつ重大な汚染行為
(i)漁獲活動
(j)調査活動又は測量活動の実施
(k)沿岸国の通信系又は他の施設への妨害を目的とする行為
(l)通航に直接の関係を有しないその他の活動
第二十条 潜水船その他の水中航行機器
潜水船その他の水中航行機器は、領海においては、海面上を航行し、かつ、その旗を掲げなければならない。
第二十一条 無害通航に係る沿岸国の法令
1 沿岸国は、この条約及び国際法の他の規則に従い、次の事項の全部又は一部について領海における無害通航に係る法令を制定することができる。
(a)航行の安全及び海上交通の規制
(b)航行援助施設及び他の施設の保護
(c)電線及びパイプラインの保護
(d)海洋生物資源の保存
(e)沿岸国の漁業に関する法令の違反の防止
(f)沿岸国の環境の保全並びにその汚染の防止、軽減及び規制
(g)海洋の科学的調査及び水路測量
(h)沿岸国の通関上、財政上、出入国管理上又は衛生上の法令の違反の防止
2 1に規定する法令は、外国船舶の設計、構造、乗組員の配乗又は設備については、適用しない。ただし、当該法令が一般的に受け人れられている国際的な規則又は基準を実施する場合は、この限りでない。
3 沿岸国は、1に規定するすべての法令を適当に公表する。
4 領海において無害通航権を行使する外国船舶は、1に規定するすべての法令及び海上における衝突の予防に関する一般的に受け入れられているすべての国際的な規則を遵守する。
第二十二条 領海における航路帯及び分離通航帯
1 沿岸国は、航行の安全を考慮して必要な場合には、自国の領海において無害通航権を行使する外国船舶に対し、船舶の通航を規制するために自国が指定する航路帯及び設定する分離通航帯を使用するよう要求することができる。
2 沿岸国は、特に、タンカー、原子力船及び核物質又はその他の本質的に危険若しくは有害な物質若しくは原料を運搬する船舶に対し、1の航路帯のみを通航するよう要求することができる。
3 沿岸国は、この条の規定により航路帯の指定及び分離通航帯の設定を行うに当たり、次の事項を考慮する
(a)権限のある国際機関の勧告
(b)国際航行のために慣習的に使用されている水路
(c)特定の船舶及び水路の特殊な性質
(d)交通のふくそう状況
4 沿岸国は、この条に定める航路帯及び分離通航帯を海図上に明確に表示し、かつ、その海図を適当に公表する。
第二十三条 外国の原子力船及び核物質又はその他の本質的に危険若しくは有害な物質を運搬する船舶
外国の原子力船及び核物質又はその他の本質的に危険若しくは有害な物質を運搬する船舶は、領海において無害通航権を行使する場合には、そのような船舶について国際協定が定める文書を携行し、かつ、当該国際協定が定める特別の予防措置をとる。
第二十四条 沿岸国の義務
1 沿岸国は、この条約に定めるところによる場合を除くほか、領海における外国船舶の無害通航を妨害してはならない。沿岸国は、特に、この条約又はこの条約に従って制定される法令の適用に当たり、次のことを行ってはならない。
(a)外国船舶に対し無害通航権を否定し又は害する実際上の効果を有する要件を課すること。
(b)特定の国の船舶に対し又は特定の国へ、特定の国から若しくは特定の国のために貨物を運搬する船舶に対して法律上又は事実上の差別を行うこと。
2 沿岸国は、自国の領海内における航行上の危険で自国が知っているものを適当に公表する。
第二十五条 沿岸国の保護権
1 沿岸国は、無害でない通航を防止するため、自国の領海内において必要な措置をとることができる。
2 沿岸国は、また、船舶が内水に向かって航行している場合又は内水の外にある港湾施設に立ち寄る場合には、その船舶が内水に入るため又は内水の外にある港湾施設に立ち寄るために従うべき条件に違反することを防止するため、必要な措置をとる権利を有する。
3 沿岸国は、自国の安全の保護(兵器を用いる訓練を含む。)のため不可欠である場合には、その領海内の特定の水域において、外国船舶の間に法律上又は事実上の差別を設けることなく、外国船舶の無害通航を一時的に停止することができる。このような停止は、適当な方法で公表された後においてのみ、効力を有する。
第二十六条 外国船舶に対して課し得る課徴金
1 外国船舶に対しては、領海の通航のみを理由とするいかなる課徴金も課することができない。
2 領海を通航する外国船舶に対しては、当該外国船舶に提供された特定の役務の対価としてのみ、課徴金を課することができる。これらの課徴金は、差別なく課する。
B 商船及び商業的目的のために運航する政府船舶に適用される規則
第二十七条 外国船舶内における刑事裁判権
1 沿岸国の刑事裁判権は、次の場合を除くほか、領海を通航している外国船舶内において、その通航中に当該外国船舶内で行われた犯罪に関連していずれかの者を逮捕し又は捜査を行うために行使してはならない。
(a)犯罪の結果が当該沿岸国に及ぶ場合
(b)犯罪が当該沿岸国の安寧又は領海の秩序を乱す性質のものである場合
(c)当該外国船舶の船長又は旗国の外交官若しくは領事官が当該沿岸国の当局に対して援助を要請する場合
(d)麻薬又は向精神薬の不正取引を防止するためこ必要である場合
2 1の規定は、沿岸国が、内水を出て領海を通航している外国船舶内において逮捕又は捜査を行うため、自国の法令で認められている措置をとる権利に影響を及ぼすものではない。
3 1及び2に定める場合においては、沿岸国は、船長の要請があるときは、措置をとる前に当該外国船舶の旗国の外交官又は領事官に通報し、かつ、当該外交官又は領事官と当該外国船舶の乗組員との間の連絡を容易にする。緊急の場合には、その通報は、当該措置をとっている間に行うことができる。
4 沿岸国の当局は、逮捕すべきか否か、また、いかなる方法によって逮捕すべきかを考慮するに当たり、航行の利益に対して妥当な考慮を払う。
5 沿岸国は、第十二部に定めるところによる場合及び第五部に定めるところにより制定する法令の違反に関する場合を除くほか、外国の港を出て、内水に入ることなく単に領海を通航する外国船舶につき、当該外国船舶が領海に入る前に船内において行われた犯罪に関連していずれかの者を逮捕し又は捜査を行うため、いかなる措置もとることができない。
第二十八条 外国船舶に関する民事裁判権
1 沿岸国は、領海を通航している外国船舶内にある者に関して民事裁判権を行使するために当該外国船舶を停止させてはならず、又はその航路を変更させてはならない。
2 沿岸国は、外国船舶が沿岸国の水域を航行している間に又はその水域を航行するために当該外国船舶について生じた債務又は責任に関する場合を除くほか、当該外国船舶に対し民事上の強制執行又は保全処分を行うことができない。
3 2の規定は、沿岸国が、領海に停泊しているか又は内水を出て領海を通航している外国船舶に対し、自国の法令に従って民事上の強制執行又は保全処分を行う権利を害するものではない。
C 軍艦及び非商業的目的のために運航するその他の政府船舶に適用される規則
第二十九条 軍艦の定義
この条約の適用上、「軍艦」とは、一の国の軍隊に属する船舶であって、当該国の国籍を有するそのような船舶であることを示す外部標識を掲げ、当該国の政府によって正式に任命されてその氏名が軍務に従事する者の適当な名簿又はこれに相当するものに記載されている士官の指揮の下にあり、かつ、正規の軍隊の規律に服する乗組員が配置されているものをいう。
第三十条 軍艦による沿岸国の法令の違反
軍艦が領海の通航に係る沿岸国の法令を遵守せず、かつ、その軍艦に対して行われた当該法令の遵守の要請を無視した場合には、当該沿岸国は、その軍艦に対し当該領海から直ちに退去することを要求することができる。
第三十一条 軍艦又は非商業的目的のために運航するその他の政府船舶がもたらした損害についての旗国の責任
旗国は、軍艦又は非商業的目的のために運航するその他の政府船舶が領海の通航に係る沿岸国の法令、この条約又は国際法の他の規則を遵守しなかった結果として沿岸国に与えたいかなる損失又は損害についても国際的責任を負う。
第三十二条 軍艦及び非商業的目的のために運航するその他の政府船舶に与えられる免除
この節のA及び前二条の規定による例外を除くほか、この条約のいかなる規定も、軍艦及び非商業的目的のために運航するその他の政府船舶に与えられる免除に影響を及ぼすものではない。
第四節 接続水域
第三十三条 接続水域
1 沿岸国は、自国の領海に接続する水域で接続水域といわれるものにおいて、次のことに必要な規制を行うことができる。
(a)自国の領土又は領海内における通関上、財政上、出入国管理上又は衛生上の法令の違反を防止すること。
(b)自国の領士又は領海内で行われた(a)の法令の違反を処罰すること。
2 接続水域は、領海の幅を測定するための基線から二十四海里を超えて拡張することができない。
第三部 国際航行に使用されている海峡
第一節 総則
第三十四条 国際航行に使用されている海峡を構成する水域の法的地位
1 この部に定める国際航行に使用されている海峡の通航制度は、その他の点については、当該海峡を構成する水域の法的地位に影響を及ぼすものではなく、また、当該水域、当該水域の上空並びに当該水域の海底及びその下に対する海峡沿岸国の主権又は管轄権の行使に影響を及ぼすものではない。
2 海峡沿岸国の主権又は管轄権は、この部の規定及び国際法の他の規則に従って行使される。
第三十五条 この部の規定の適用範囲
この部のいかなる規定も、次のものに影響を及ぼすものではない。
(a)海峡内の内水である水域。ただし、第七条に定める方法に従って定めた直線基線がそれ以前には内水とされていなかった水域を内水として取り込むこととなるものを除く。
(b)海峡沿岸国の領海を越える水域の排他的経済水域又は公海としての法的地位
(c)特にある海峡について定める国際条約であって長い間存在し現に効力を有しているものがその海峡の通航を全面的又は部分的に規制している法制度
第三十六条 国際航行に使用されている海峡内の公海又は排他的経済水域の航路
この部の規定は、国際航行に使用されている海峡であって、その海峡内に航行上及び水路上の特性において同様に便利な公海又は排他的経済水域の航路が存在するものについては、適用しない。これらの航路については、この条約の他の関連する部の規定(航行及び上空飛行の自由に関する規定を含む。)を適用する。
第二節 通過通航
第三十七条 この節の規定の適用範囲
この節の規定は、公海又は排他的経済水域の一部分と公海又は排他的経済水域の他の部分との間にある国際航行に使用されている海峡について適用する。
第三十八条 通過通航権
1 すべての船舶及び航空機は、前条に規定する海峡において、通過通航権を有するものとし、この通過通航権は、害されない。ただし、海峡が海峡沿岸国の島及び本土から構成されている場合において、その島の海側に航行上及び水路上の特性において同様に便利な公海又は排他的経済水域の航路が存在するときは、通過通航は、認められない。
2 通過通航とは、この部の規定に従い、公海又は排他的経済水域の一部分と公海又は排他的経済水域の他の部分との間にある海峡において、航行及び上空飛行の自由が継続的かつ迅速な通過のためのみに行使されることをいう。ただし、継続的かつ迅速な通過という要件は、海峡沿岸国への入国に関する条件に従い当該海峡沿岸国への入国又は当該海峡沿岸国からの出国若しくは帰航の目的で海峡を通航することを妨げるものではない。
3 海峡における通過通航権の行使に該当しないいかなる活動も、この条約の他の適用される規定に従うものとする。
第三十九条 通過通航中の船舶及び航空機の義務
1 船舶及び航空機は、通過通航権を行使している間、次のことを遵守する。
(a)海峡又はその上空を遅滞なく通過すること。
(b)武力による威嚇又は武力の行使であって、海峡沿岸国の主権、領土保全若しくは政治的独立に対するもの又はその他の国際連合憲章に規定する国際法の諸原則に違反する方法によるものを差し控えること。
(c)不可抗力又は遭難により必要とされる場合を除くほか、継続的かつ迅速な通過の通常の形態に付随する活動以外のいかなる活動も差し控えること。
(d)この部の他の関連する規定に従うこと。
2 通過通航中の船舶は、次の事項を遵守する。
(a)海上における安全のための一般的に受け入れられている国際的な規則、手続及び方式(海上における衝突の予防のための国際規則を含む。)
(b)船舶からの汚染の防止、軽減及び規制のための一般的に受け入れられている国際的な規則、手続及び方式
3 通過通航中の航空機は、次のことを行う。
(a)国際民間航空機関が定める民間航空機に適用される航空規則を遵守すること。国の航空機については、航空規則に係る安全措置を原則として遵守し及び常に航行の安全に妥当な考慮を払って運航すること。
(b)国際的に権限のある航空交通管制当局によつて割り当てられた無線周波数又は適当な国際遭難無線周波数を常に聴守すること。
第四十条 調査活動及び測量活動
外国船舶(海洋の科学的調査又は水路測量を行う船舶を含む。)は、通過通航中、海峡沿岸国の事前の許可なしにいかなる調査活動又は測量活動も行うことができない。
第四十一条 国際航行に使用されている海峡における航路帯及び分離通航帯
1 海峡沿岸国は、船舶の安全な通航を促進するために必要な場合には、この部の規定により海峡内に航行のための航路帯を指定し及び分離通航帯を設定することができる。
2 1の海峡沿岸国は、必要がある場合には、適当に公表した後、既に指定した航路帯又は既に設定した分離通航帯を他の航路帯又は分離通航帯に変更することができる。
3 航路帯及び分離通航帯は、一般的に受け入れられている国際的な規則に適合したものとする。
4 海峡沿岸国は、航路帯の指定若しくは変更又は分離通航帯の設定若しくは変更を行う前に、これらの採択のための提案を権限のある国際機関に行う。当該権限のある国際機関は、当該海峡沿岸国が同意する航路帯及び分離通航帯のみを採択することができるものとし、当該海峡沿岸国は、その採択の後にそれに従って航路帯の指定若しくは変更又は分離通航帯の設定若しくは変更を行うことができる。
5 ある海峡において二以上の海峡沿岸国の水域を通る航路帯又は分離通航帯が提案される場合には、関係国は、権限のある国際機関と協議の上、その提案の作成に協力する。
6 海峡沿岸国は、自国が指定したすべての航路帯及び設定したすべての分離通航帯を海図上に明確に表示し、かつ、その海図を適当に公表する。
7 通過通航中の船舶は、この条の規定により設定された適用される航路帯及び分離通航帯を尊重する。
第四十二条 通過通航に係る海峡沿岸国の法令
1 海峡沿岸国は、この節に定めるところにより、次の事項の全部又は一部について海峡の通過通航に係る法令を制定することができる。
(a)前条に定めるところに従う航行の安全及び海上交通の規制
(b)海峡における油、油性廃棄物その他の有害な物質の排出に関して適用される国際的な規則を実施することによる汚染の防止、軽減及び規制
(c)漁船については、漁獲の防止(漁具の格納を含む。)
(d)海峡沿岸国の通関上、財政上、出入国管理上又は衛生上の法令に違反する物品、通貨又は人の積込み又は積卸し
2 1の法令は、外国船舶の間に法律上又は事実上の差別を設けるものであってはならず、また、その適用に当たり、この節に定める通過通航権を否定し、妨害し又は害する実際上の効果を有するものであってはならない。
3 海峡沿岸国は、1のすべての法令を適当に公表する。
4 通過通航権を行使する外国船舶は、1の法令を遵守する。
5 主権免除を享受する船舶又は航空機が1の法令又はこの部の他の規定に違反して行動した場合には、その旗国又は登録国は、海峡沿岸国にもたらしたいかなる損失又は損害についても国際的責任を負う。
第四十三条 航行及び安全のための援助施設及び他の改善措置並びに汚染の防止、軽減及び規制
海峡利用国及び海峡沿岸国は、合意により、次の事項について協力する。
(a)航行及び安全のために必要な援助施設又は国際航行に資する他の改善措置の海峡における設定及び維持
(b)船舶からの汚染の防止、軽減及び規制
第四十四条 海峡沿岸国の義務
海峡沿岸国は、通過通航を妨害してはならず、また、海峡内における航行上又はその上空における飛行上の危険で自国が知っているものを適当に公表する。通過通航は、停止してはならない。
第三節 無害通航
第四十五条 無害通航
1 第二部第三節の規定に基づく無害通航の制度は、国際航行に使用されている海峡のうち次の海峡について適用する。
(a)第三十八条1の規定により通過通航の制度の適用から除外される海峡
(b)公海又は一の国の排他的経済水域の一部と他の国の領海との間にある海峡
2 1の海峡における無害通航は、停止してはならない。
第四部 群島国
第四十六条 用語
この条約の適用上、
(a)「群島国」とは、全体が一又は二以上の群島から成る国をいい、他の島を含めることができる。
(b)「群島」とは、島の集団又はその一部、相互に連結する水域その他天然の地形が極めて密接に関係しているため、これらの島、水域その他天然の地形が本質的に一の地理的、経済的及び政治的単位を構成しているか又は歴史的にそのような単位と認識されているものをいう。
第四十七条 群島基線
1 群島国は、群島の最も外側にある島及び低潮時に水面上にある礁の最も外側の諸点を結ぶ直線の群島基線を引くことができる。ただし、群島基線の内側に主要な島があり、かつ、群島基線の内側の水域の面積と陸地(環礁を含む。)の面積との比率が一対一から九対一までの間のものとなることを条件とする。
2 群島基線の長さは、百海里を超えてはならない。ただし、いずれの群島についても、これを取り囲む基線の総数の三パーセントまでのものについて、最大の長さを百二十五海里までにすることができる。
3 群島基線は、群島の全般的な輪郭から著しく離れて引いてはならない。
4 群島基線は、低潮高地との間に引いてはならない。ただし、恒久的に海面上にある灯合その他これに類する施設が低潮高地の上に建設されている場合及び低潮高地の全部又は一部が最も近い島から領海の幅を超えない距離にある場合は、この限りでない。
5 いずれの群島国も、他の国の領海を公海又は排他的経済水域から切り離すように群島基線の方法を適用してはならない。
6 群島国の群島水域の一部が隣接する国の二の部分の間にある場合には、当該隣接する国が当該群島水域の一部で伝統的に行使している現行の権利及び他のすべての適法な利益並びにこれらの国の間の合意により定められているすべての権利は、存続しかつ尊重される。
7 1の水域と陸地との面積の比率の計算に当たり、陸地の面積には、島の裾礁及び環礁の内側の水域(急斜面を有する海台の上部の水域のうちその周辺にある一連の石灰岩の島及び低潮時に水面上にある礁によって取り囲まれ又はほとんど取り囲まれている部分を含む。)を含めることができる。
8 この条の規定に従って引かれる基線は、その位置の確認に適した縮尺の海図に表示する。これに代えて、測地原子を明示した各点の地理学的経緯度の表を用いることができる。
9 群島国は、8の海図又は地理学的経緯度の表を適当に公表するものとし、当該海図又は表の写しを国際連合事務総長に寄託する。
第四十八条 領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚の幅の測定
領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚の幅は、前条の規定に従って引かれる群島基線から測定する。
第四十九条 群島水域、群島水域の上空並びに群島水域の海底及びその下の法的地位
1 群島国の主権は、第四十七条の規定に従って引かれる群島基線により取り囲まれる水域で群島水域といわれるもの(その水深又は海岸からの距離を問わない。)に及ぶ。
2 群島国の主権は、群島水域の上空、群島水域の海底及びその下並びにそれらの資源に及ぶ。
3 群島国の主権は、この部の規定に従って行使される。
4 この部に定める群島航路帯の通航制度は、その他の点については、群島水域(群島航路帯を含む。)の法的地位に影響を及ぼすものではなく、また、群島水域、群島水域の上空、群島水域の海底及びその下並びにそれらの資源に対する群島国の主権の行使に影響を及ぼすものではない。
第五十条 内水の境界画定
群島国は、その群島水域において、第九条から第十一条までの規定に従って内水の境界画定のための閉鎖線を引くことができる。
第五十一条 既存の協定、伝統的な漁獲の権利及び既設の海底電線
1 群島国は、第四十九条の規定の適用を妨げることなく、他の国との既存の協定を尊重するものとし、また、群島水域内の一定の水域における自国に隣接する国の伝統的な漁獲の権利及び他の適法な活動を認めるものとする。そのような権利を行使し及びそのような活動を行うための条件(これらの権利及び活動の性質、限度及び適用される水域を含む。)については、いずれかの関係国の要請により、関係国間における二国間の協定により定める。そのような権利は、第三国又はその国民に移転してはならず、また、第三国又はその国民との間で共有してはならない。
2 群島国は、他の国により敷設された既設の海底電線であって、陸地に接することなく自国の水域を通っているものを尊重するものとし、また、そのような海底電線の位置及び修理又は交換の意図についての適当な通報を受領した場合には、その海底電線の維持及び交換を許可する。
第五十二条 無害通航権
1 すベての国の船舶は、第五十条の規定の適用を妨げることなく、第二部第三節の規定により群島水域において無害通航権を有する。ただし、次条の規定に従うものとする。
2 群島国は、自国の安全の保護のため不可欠である場合には、その群島水域内の特定の水域において、外国船舶の間に法律上又は事実上の差別を設けることなく、外国船舶の無害通航を一時的に停止することができる。このような停止は、適当な方法で公表された後においてのみ、効力を有する。
第五十三条 群島航路帯通航権
1 群島国は、自国の群島水域、これに接続する領海及びそれらの上空における外国の船舶及び航空機の継続的かつ迅速な通航に適した航路帯及びその上空における航空路を指定することができる。
2 すべての船舶及び航空機は、1の航路帯及び航空路において群島航路帯通航権を有する。
3 群島航路帯通航とは、この条約に従い、公海又は排他的経済水域の一部分と公海又は排他的経済水域の他の部分との間において、通常の形態での航行及び上空飛行の権利が継続的な、迅速なかつ妨げられることのない通過のためのみに行使されることをいう。
4 1の航路帯及び航空路は、群島水域及びこれに接続する領海を貫通するものとし、これらの航路帯及び航空路には、群島水域又はその上空における国際航行又は飛行に通常使用されているすべての通航のための航路及び船舶に関してはその航路に係るすべての通常の航行のための水路を含める。ただし、同一の入口及び出口の間においては、同様に便利な二以上の航路は必要としない。
5 1の航路帯及び航空路は、通航のための航路の入口の点から出口の点までの一連の連続する中心線によって定める。群島航路帯を通航中の船舶及び航空機は、これらの中心線のいずれの側についても二十五海里を超えて離れて通航してはならない。ただし、その船舶及び航空機は、航路帯を挟んで向かい合っている島と島とを結ぶ最短距離の十パーセントの距離よりも海岸に近づいて航行してはならない。
6 この条の規定により航路帯を指定する群島国は、また、当該航路帯内の狭い水路における船舶の安全な通航のために分離通航帯を設定することができる。
7 群島国は、必要がある場合には、適当に公表した後、既に指定した航路帯又は既に設定した分離通航帯を他の航路帯又は分離通航帯に変更することができる。
8 航路帯及び分離通航帯は、一般的に受け入れられている国際的な規則に適合したものとする。
9 群島国は、航路帯の指定若しくは変更又は分離通航帯の設定若しくは変更を行うに当たり、これらの採択のための提案を権限のある国際機関に行う。当該権限のある国際機関は、当該群島国が同意する航路帯及び分離通航帯のみを採択することができるものとし、当該群島国は、その採択の後にそれに従って航路帯の指定若しくは変更又は分離通航帯の設定若しくは変更を行うことができる。
10 群島国は、自国が指定した航路帯の中心線及び設定した分離通航帯を海図上に明確に表示し、かつ、その海図を適当に公表する。
11 群島航路帯を通航中の船舶は、その条の規定により設定された適用される航路帯及び分離通航帯を尊重する。
12 群島国が航路帯又は航空路を指定しない場合には、群島航路帯通航権は、通常国際航行に使用されている航路において行使することができる。
第五十四条 通航中の船舶及び航空機の義務、調査活動及び測量活動、群島国の義務並びに群島航路帯通航に関する群島国の法令
第三十九条、第四十条、第四十二条及び第四十四条の規定は、群島航路帯通航について準用する。
第五部 排他的経済水域
第五十五条 排他的経済水域の特別の法制度
排他的経済水域とは、領海に接続する水域であって、この部に定める特別の法制度によるものをいう。この法制度の下において、沿岸国の権利及び管轄権並びにその他の国の権利及び自由は、この条約の関連する規定によって規律される。
第五十六条 排他的経済水域における沿岸国の権利、管轄権及び義務
1 沿岸国は、排他的経済水域において、次のものを有する。
(a)海底の上部水域並びに海底及びその下の天然資源(生物資源であるか非生物資源であるかを問わない。)の探査、開発、保存及び管理のための主権的権利並びに排他的経済水域における経済的な目的で行われる探査及び開発のためのその他の活動(海水、海流及び風からのエネルギーの生産等)に関する主権的権利
(b)この条約の関連する規定に基づく次の事項に関する管轄権
(i)人工島、施設及び構築物の設置及び利用
(ii)海洋の科学的調査
(iii)海洋環境の保護及び保全
(c)この条約に定めるその他の権利及び義務
2 沿岸国は、排他的経済水域においてこの条約により自国の権利を行使し及び自国の義務を履行するに当たり、他の国の権利及び義務に妥当な考慮を払うものとし、また、この条約と両立するように行動する。
3 この条に定める海底及びその下についての権利は、第六部の規定により行使する。
第五十七条 排他的経済水域の幅
排他的経済水域は、領海の幅を測定するための基線から二百海里を超えて拡張してはならない。
第五十八条 排他的経済水域における他の国の権利及び義務
1 すベての国は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、排他的経済水域において、この条約の関連する規定に定めるところにより、第八十七条に定める航行及び上空飛行の自由並びに海底電線及び海底パイプラインの敷設の自由並びにこれらの自由に関連し及びこの条約のその他の規定と両立するその他の国際的に適法な海洋の利用(船舶及び航空機の運航並びに海底電線及び海底パイプラインの運用に係る海洋の利用等)の自由を享有する。
2 第八十八条から第百十五条までの規定及び国際法の他の関連する規則は、この部の規定に反しない限り、排他的経済水域について適用する。
3 いずれの国も、排他的経済水域においてこの条約により自国の権利を行使し及び自国の義務を履行するに当たり、沿岸国の権利及び義務に妥当な考慮を払うものとし、また、この部の規定に反しない限り、この条約及び国際法の他の規則に従つて沿岸国が制定する法令を遵守する。
第五十九条 排他的経済水域における権利及び管轄権の帰属に関する紛争の解決のための基礎
この条約により排他的経済水域における権利又は管轄権が沿岸国又はその他の国に帰せられていない場合において、沿岸国とその他の国との間に利害の対立が生じたときは、その対立は、当事国及び国際社会全体にとっての利益の重要性を考慮して、衡平の原則に基づき、かつ、すべての関連する事情に照らして解決する。
第六十条 排他的経済水域における人工島、施設及び構築物
1 沿岸国は、排他的経済水域において、次のものを建設し並びにそれらの建設、運用及び利用を許可し及び規制する排他的権利を有する。
(a)人工島
(b)第五十六条に規定する目的その他の経済的な目的のための施設及び構築物
(c)排他的経済水域における沿岸国の権利の行使を妨げ得る施設及び構築物
2 沿岸国は、1に規定する人工島、施設及び構築物に対して、通関上、財政上、保健上、安全上及び出入国管理上の法令に関する管轄権を念む排他的管轄権を有する。
3 1に規定する人工島、施設又は構築物の建設については、適当な通報を行わなければならず、また、その存在について注意を喚起するための恒常的な措置を維持しなければならない。放棄され又は利用されなくなった施設又は構築物は、権限のある国際機関がその除去に関して定める一般的に受け入れられている国際的基準を考慮して、航行の安全を確保するために除去する。その除去に当たっては、漁業、海洋環境の保護並びに他の国の権利及び義務に対しても妥当な考慮を払う。完全に除去されなかった施設又は構築物の水深、位置及び規模については、適当に公表する。
4 沿岸国は、必要な場合には、1に規定する人工島、施設及び構築物の周囲に適当な安全水域を設定することができるものとし、また、当該安全水域において、航行の安全並びに人工島、施設及び構築物の安全を確保するために適当な措置をとることができる。
5 沿岸国は、適用のある国際的基準を考慮して安全水域の幅を決定する。安全水域は、人工島、施設又は構築物の性質及び機能と合理的な関連を有するようなものとし、また、その幅は、一般的に受け入れられている国際的基準によって承認され又は権限のある国際機関によって勧告される場合を除くほか、当該人工島、施設又は構築物の外縁のいずれの点から測定した距離についても五百メートルを超えるものであってはならない。安全水域の範囲に関しては、適当な通報を行う。
6 すべての船舶は、4の安全水域を尊重しなければならず、また、人工島、施設、構築物及び安全水域の近傍における航行に関して一般的に受け入れられている国際的基準を遵守する。
7 人工島、施設及び構築物並びにそれらの周囲の安全水域は、国際航行に不可欠な認められた航路帯の使用の妨げとなるような場所に設けてはならない。
8 人工島、施設及び構築物は、島の地位を有しない。これらのものは、それ自体の領海を有せず、また、その存在は、領海、排他的経済水域又は大陸棚の境界画定に影響を及ぼすものではない。
第六十一条 生物資源の保存
1 沿岸国は、自国の排他的経済水域における生物資源の漁獲可能量を決定する。
2 沿岸国は、自国が入手することのできる最良の科学的証拠を考慮して、排他的経済水域における生物資源の維持が過度の開発によって脅かされないことを適当な保存措置及び管理措置を通じて確保する。このため、適当な場合には、沿岸国及び権限のある国際機関(小地域的なもの、地域的なもの又は世界的なもののいずれであるかを問わない。)は、協力する。
3 2に規定する措置は、また、環境上及び経済上の関連要因(沿岸漁業社会の経済上のニーズ及び開発途上国の特別の要請を含む。)を勘案し、かつ、漁獲の態様、資源間の相互依存関係及び一般的に勧告された国際的な最低限度の基準(小地域的なもの、地域的なもの又は世界的なもののいずれであるかを問わない。)を考慮して、最大持続生産量を実現することのできる水準に漁獲される種の資源量を維持し又は回復することのできるようなものとする。
4 沿岸国は、2に規定する措置をとるに当たり、漁獲される種に関連し又は依存する種の資源量をその再生産が著しく脅威にさらされることとなるような水準よりも高く維持し又は回復するために、当該関連し又は依存する種に及ぼす影響を考慮する。
5 入手することのできる科学的情報、漁獲量及び漁獲努力量に関する統計その他魚類の保存に関連するデータについては、適当な場合には権限のある国際機関(小地域的なもの、地域的なもの又は世界的なもののいずれであるかを問わない。)を通じ及びすべての関係国(その国民が排他的経済水域における漁獲を認められている国を含む。)の参加を得て、定期的に提供し及び交換する。
第六十二条 生物資源の利用
1 沿岸国は、前条の規定の適用を妨げることなく、排他的経済水域における生物資源の最適利用の目的を促進する。
2 沿岸国は、排他的経済水域における生物資源についての自国の漁獲能力を決定する。沿岸国は、自国が漁獲可能量のすべてを漁獲する能力を有しない場合には、協定その他の取極により、4に規定する条件及び法令に従い、第六十九条及び第七十条の規定(特に開発途上国に関するもの)に特別の考慮を払って漁獲可能量の余剰分の他の国による漁獲を認める。
3 沿岸国は、この条の規定に基づく他の国による自国の排他的経済水域における漁獲を認めるに当たり、すべての関連要因、特に、自国の経済その他の国家的利益にとっての当該排他的経済水域における生物資源の重要性、第六十九条及び第七十条の規定、小地域又は地域の開発途上国が余剰分の一部を漁獲する必要性、その国民が伝統的に当該排他的経済水域で漁獲を行ってきた国又は資源の調査及び識別に実質的な努力を払ってきた国における経済的混乱を最小のものにとどめる必要性等の関連要因を考慮する。
4 排他的経済水域において漁獲を行う他の国の国民は、沿岸国の法令に定める保存措置及び他の条件を遵守する。これらの法令は、この条約に適合するものとし、また、特に次の事項に及ぶことができる。
(a)漁業者、漁船及び設備に関する許可証の発給(手数料その他の形態の報酬の支払を含む。これらの支払は、沿岸国である開発途上国の場合については、水産業に関する財政、設備及び技術の分野での十分な補償から成ることができる。)
(b)漁獲することのできる種及び漁獲割当ての決定。この漁獲割当てについては、特定の資源若しくは資源群の漁獲、一定の期間における一隻当たりの漁獲又は特定の期間におけるいずれかの国の国民による漁獲のいずれについてのものであるかを問わない。
(c)漁期及び漁場、漁具の種類、大きさ及び数量並びに利用することのできる漁船の種類、大きさ及び数の規制
(d)漁獲することのできる魚その他の種の年齢及び大きさの決定
(e)漁船に関して必要とされる情報(漁獲量及び漁獲努力量に関する統計並びに漁船の位置に関する報告を含む。)の明示
(f)沿岸国の許可及び規制の下で特定の漁業に関する調査計画の実施を要求すること並びにそのような調査の実施(漁獲物の標本の抽出、標本の処理及び関連する科学的データの提供を含む。)を規制すること。
(g)沿岸国の監視員又は訓練生の漁船への乗船
(h)漁船による漁獲量の全部又は一部の沿岸国の港への陸揚げ
(i)合弁事業に関し又はその他の協力についての取決めに関する条件
(j)要員の訓練及び漁業技術の移転(沿岸国の漁業に関する調査を行う能力の向上を含む。)のための要件
(k)取締手続
5 沿岸国は、保存及び管理に関する法令について適当な通報を行う。
第六十三条 二以上の沿岸国の排他的経済水域内に又は排他的経済水域内及び当該排他的経済水域に接続する水域内の双方に存在する資源
1 同一の資源又は関連する種の資源が二以上の沿岸国の排他的経済水域内に存在する場合には、これらの沿岸国は、この部の他の規定の適用を妨げることなく、直接に又は適当な小地域的若しくは地域的機関を通じて、当該資源の保存及び開発を調整し及び確保するために必要な措置について合意するよう努める。
2 同一の資源又は関連する種の資源が排他的経済水域内及び当該排他的経済水域に接続する水域内の双方に存在する場合には、沿岸国及び接続する水域において当該資源を漁獲する国は、直接に又は適当な小地域的若しくは地域的機関を通じて、当該接続する水域における当該資源の保存のために必要な措置について合意するよう努める。
第六十四条 高度回遊性の種
1 沿岸国その他その国民がある地域において附属書Iに掲げる高度回遊性の種を漁獲する国は、排他的経済水域の内外を問わず当該地域全体において当該種の保存を確保しかつ最適利用の目的を促進するため、直接に又は適当な国際機関を通じて協力する。適当な国際機関が存在しない地域においては、沿岸国その他その国民が当該地域において高度回遊性の種を漁獲する国は、そのような機関を設立し及びその活動に参加するため、協力する。
2 1の規定は、この部の他の規定に加えて適用する。
第六十五条 海産哺乳動物
この部のいかなる規定も、沿岸国又は適当な場合にほ国際機関が海産哺乳動物の開発についてこの部に定めるよりも厳しく禁止し、制限し又は規制する権利又は権限を制限するものではない。いずれの国も、海産哺乳動物の保存のために協力するものとし、特に、鯨類については、その保存、管理及び研究のために適当な国際機関を通じて活動する。
第六十六条 溯河性資源
1 溯河性資源の発生する河川の所在する国は、当該溯河性資源について第一義的利益及び責任を有する。
2 溯河性資源の母川国は、自国の排他的経済水域の外側の限界より陸地側のすべての水域における漁獲及び3(b)に規定する漁獲のための適当な規制措置を定めることによって溯河性資源の保存を確保する。母川国は、当該溯河性資源を漁獲する3及び4に規定する他の国と協議の後、自国の河川に発生する資源の総漁獲可能量を定めることができる。
3 溯河性資源の漁獲は、排他的経済水域の外側の限界より陸地側の水域においてのみ行われる。ただし、これにより母川国以外の国に経済的混乱がもたらされる場合は、この限りでない。排他的経済水域の外側の限界を越える水域における溯河性資源の漁獲に関しては、関係国は、当該溯河性資源に係る保存上の要請及び母川国のニーズに妥当な考慮を払い、当該漁獲の条件に関する合意に達するため協議を行う。
(b)母川国は、溯河性資源を漁獲する他の国の通常の漁獲量及び操業の形態並びにその漁獲が行われてきたすべての水域を考慮して、当該他の国の経済的混乱を最小のものにとどめるために協力する。
(c)母川国は、(b)に規定する他の国が自国との合意により溯河性資源の再生産のための措置に参加し、特に、そのための経費を負担する場合には、当該他の国に対して、自国の河川に発生する資源の漁獲について特別の考慮を払う。
(d)排他的経済水域を越える水域における溯河性資源に関する規制の実施は、母川国と他の関係国との間の合意による。
4 溯河性資源が母川国以外の国の排他的経済水域の外側の限界より陸地側の水域に入り又はこれを通過して回遊する場合には、当該国は、当該溯河性資源の保存及び管理について母川国と協力する。
5 溯河性資源の母川国及び当該溯河性資源を漁獲するその他の国は、適当な場合には、地域的機関を通じて、この条の規定を実施するための取極を締結する。
第六十七条 降河性の種
1 降河性の種がその生活史の大部分を過ごす水域の所在する沿岸国は、当該降河性の種の管理について責任を有し、及び回遊する魚が出入りすることができるようにする。
2 降河性の種の漁獲は、排他的経済水域の外側の限界より陸地側の水域においてのみ行われる。その漁獲は、排他的経済水域において行われる場合には、この条の規定及び排他的経済水域における漁獲に関するこの条約のその他の規定に定めるところによる。
3 降河性の魚が稚魚又は成魚として他の国の排他的経済水域を通過して回遊する場合には、当該魚の管理(漁獲を含む。)は、1の沿岸国と当該他の国との間の合意によって行われる。この合意は、種の合理的な管理が確保され及び1の沿岸国が当該種の維持について有する責任が考慮されるようなものとする。
第六十八条 定着性の種族
この部の規定は、第七十七条4に規定する定着性の種族については、適用しない。
第六十九条 内陸国の権利
1 内陸国は、自国と同一の小地域又は地域の沿岸国の排他的経済水域における生物資源の余剰分の適当な部分の開発につき、すべての関係国の関連する経済的及び地理的状況を考慮し、この条、第六十一条及び第六十二条に定めるところにより、衡平の原則に基づいて参加する権利を有する。
2 1に規定する参加の条件及び方法は、関係国が二国間の、小地域的な又は地域的な協定により定めるものとし、特に次の事項を考慮する。
(a)沿岸国の漁業社会又は水産業に対する有害な影響を回避する必要性
(b)内陸国が、この条の規定に基づき、現行の二国間の、小地域的な又
は地域的な協定により、他の沿岸国の排他的経済水域における生物資源の開発に参加しており又は参加する権利を有する程度
(c)その他の内陸国及び地理的不利国が沿岸国の排他的経済水域における生物資源の開発に参加している程度及びその結果としていずれかの単一の沿岸国又はその一部が特別の負担を負うことを回避する必要性が生ずること。
(d)それぞれの国の国民の栄養上の必要性
3 沿岸国の漁獲能力がその排他的経済水域における生物資源の漁獲可能量
のすべてを漁獲することのできる点に近づいている場合には、当該沿岸国その他の関係国は、同一の小地域又は地域の内陸国である開発途上国が当該小地域又は地域の沿岸国の排他的経済水域における生物資源の開発について状況により適当な方法で及びすべての当事者が満足すべき条件の下で 参加することを認めるため、二国間の、小地域的な又は地域的な及び衡平な取極の締結に協力する。この規定の実施に当たっては、2に規定する要素も考慮する。
4 内陸国である先進国は、この条の規定に基づき、自国と同一の小地域又は地域の沿岸国である先進国の排他的経済水域においてのみ生物資源の開発に参加することができる。この場合において、当該沿岸国である先進国がその排他的経済水域における生物資源について他の国による漁獲を認めるに当たり、その国民が伝統的に当該排他的経済水域で漁獲を行ってきた国の漁業社会に対する有害な影響及び経済的混乱を最小のものにとどめる必要性をどの程度考慮してきたかが勘案される。
5 1から4までの規定は、沿岸国が自国と同一の小地域又は地域の内陸国に対して排他的経済水域における生物資源の開発のための平等又は優先的な権利を与えることを可能にするため当該小地域又は地域において合意される取極に影響を及ぼすものではない。
第七十条 地理的不利国の権利
1 地理的不利国は、自国と同一の小地域又は地域の沿岸国の排他的経済水域における生物資源の余剰分の適当な部分の開発につき、すべての関係国の関連する経済的及び地理的状況を考慮し、この条、第六十一条及び第六十二条に定めるところにより、衡平の原則に基づいて参加する権利を有する。
2 この部の規定の適用上、「地理的不利国」とは、沿岸国(閉鎖海又は半閉鎖海に面した国を含む。)であって、その地理的状況のため自国民又はその一部の栄養上の目的のための魚の十分な供給を自国と同一の小地域又は地域の他の国の排他的経済水域における生物資源の開発に依存するもの及び自国の排他的経済水域を主張することができないものをいう。
3 1に規定する参加の条件及び方法は、関係国が二国間の、小地域的な又は地域的な協定により定めるものとし、特に次の事項を考慮する。
(a)沿岸国の漁業社会又は水産業に対する有害な影響を回避する必要性
(b)地理的不利国が、この条の規定に基づき、現行の二国間の、小地域的な又は地域的な協定により、他の沿岸国の排他的経済水域における生物資源の開発に参加しており又は参加する権利を有する程度
(c)その他の地理的不利国及び内陸国が沿岸国の排他的経済水域における生物資源の開発に参加している程度及びその結果としていずれかの単一の沿岸国又はその一部が特別の負担を負うことを回避する必要性が生ずること。
(d)それぞれの国の国民の栄養上の必要性
4 沿岸国の漁獲能力がその排他的経済水域における生物資源の漁獲可能量のすべてを漁獲することのできる点に近づいている場合には、当該沿岸国その他の関係国は、同一の小地域又は地域の地理的不利国である開発途上国が当該小地域又は地域の沿岸国の排他的経済水域における生物資源の開発について状況により適当な方法で及びすべての当事者が満足すべき条件の下で参加することを認めるため、二国間の、小地域的な又は地域的な及び衡平な取極の締結に協力する。この規定の実施に当たっては、3に規定する要素も考慮する。
5 地理的不利国である先進国は、この条の規定に基づき、自国と同一の小地域又は地域の沿岸国である先進国の排他的経済水域においてのみ生物資源の開発に参加することができる。この場合において、当該沿岸国である先進国がその排他的経済水域における生物資源について他の国による漁獲を認めるに当たり、その国民が伝統的に当該排他的経済水域で漁獲を行ってきた国の漁業社会に対する有害な影響及び経済的混乱を最小のものにとどめる必要性をどの程度考慮してきたかが勘案される。
6 1から5までの規定は、沿岸国が自国と同一の小地域又は地域の地理的不利国に対して排他的経済水域における生物資源の開発のための平等又は優先的な権利を与えることを可能にするため当該小地域又は地域において合意される取極に影響を及ぼすものではない。
第七十一条 前二条の規定の不適用
前二条の規定は、沿岸国の経済がその排他的経済水域における生物資源の開発に依存する度合が極めて高い場合には、当該沿岸国については、適用しない。
第七十二条 権利の移転の制限
1 第六十九条及び第七十条に定める生物資源を開発する権利は、関係国の間に別段の合意がない限り、貸借契約又は許可、合弁事業の設立その他の権利の移転の効果を有する方法によって、第三国又はその国民に対して直接又は間接に移転してはならない。
2 1の規定は、1に規定する効果をもたらさない限り、関係国が第六十九条及び第七十条の規定に基づく権利の行使を容易にするために第三国又は国際機関から技術的又は財政的援助を得ることを妨げるものではない。
第七十三条 沿岸国の法令の執行
1 沿岸国は、排他的経済水域において生物資源を探査し、開発し、保存し及び管理するための主権的権利を行使するに当たり、この条約に従って制定する法令の遵守を確保するために必要な措置(乗船、検査、掌捕及び司法上の手続を含む。)をとることができる。
2 拿捕された船舶及びその乗組員は、合理的な保証金の支払又は合理的な他の保証の提供の後に速やかに釈放される。
3 排他的経済水域における漁業に関する法令に対する違反について沿岸国が科する罰には、関係国の別段の合意がない限り拘禁を含めてはならず、また、その他のいかなる形態の身体刑も含めてはならない。
4 沿岸国は、外国船舶を拿捕し又は抑留した場合には、とられた措置及びその後科した罰について、適当な経路を通じて旗国に速やかに通報する。
第七十四条 向かい合っているか又は隣接している海岸を有する国の間における排他的経済水域の境界画定
1 向かい合っているか又は隣接している海岸を有する国の間における排他的経済水域の境界画定は、衡平な解決を達成するために、国際司法裁判所規程第三十八条に規定する国際法に基づいて合意により行う。
2 関係国は、合理的な期間内に合意に達することができない場合には、第十五部に定める手続に付する。
3 関係国は、1の合意に達するまでの間、理解及び協力の精神により、実際的な性質を有する暫定的な取極を締結するため及びそのような過渡的期間において最終的な合意への到達を危うくし又は妨げないためにあらゆる努力を払う。暫定的な取極は、最終的な境界画定に影響を及ぼすものではない。
4 関係国間において効力を有する合意がある場合には、排他的経済水域の境界画定に関する問題は、当該合意に従って、解決する。
第七十五条 海図及び地理学的経緯度の表
1 排他的経済水域の外側の限界線及び前条の規定に従って引かれる境界画定線は、この部に定めるところにより、それらの位置の確認に適した縮尺の海図に表示する。適当な場合には、当該外側の限界線又は当該境界画定に代えて、測地原子を明示した各点の地理学的経緯度の表を用いることができる。
2 沿岸国は、1の海図又は地理学的経緯度の表を適当に公表するものとし、当該海図又は表の写しを国際連合事務総長に寄託する。
第六部 大陸棚
第七十六条 大陸棚の定義
1 沿岸国の大陸棚とは、当該沿岸国の領海を越える海面下の区域の海底及びその下であってその領土の自然の延長をたどって大陸縁辺部の外縁に至るまでのもの又は、大陸縁辺部の外縁が領海の幅を測定するための基線から二百海里の距離まで延びていない場合には、当該沿岸国の領海を越える海面下の区域の海底及びその下であって当該基線から二百海里の距離までのものをいう。
2 沿岸国の大陸棚は、4から6までに定める限界を越えないものとする。
3 大陸縁辺部は、沿岸国の陸塊の海面下まで延びている部分から成るものとし、棚、斜面及びコンチネンタル・ライズの海底及びその下で構成される。ただし、大洋底及びその海洋海嶺又はその下を含まない。
4 (a)この条約の適用上、沿岸国は、大陸縁辺部が領海の幅を測定するための基線から二百海里を超えて延びている場合には、次のいずれかの線により大陸縁辺部の外縁を設定する。
(i)ある点における堆積岩の厚さが当該点から大陸斜面の脚部までの最短距離の一パーセント以上であるとの要件を満たすときにこのような点のうち最も外側のものを用いて7の規定に従って引いた線
(ii)大陸斜面の脚部から六十海里を超えない点を用いて7の規定に従って引いた線
(b)大陸斜面の脚部は、反証のない限り、当該大陸斜面の基部における匂配が最も変化する点とする。
5 4(a)の(i)又は(ii)の規定に従って引いた海底における大陸棚の外側の限界線は、これを構成する各点において、領海の幅を測定するための基線から三百五十海里を超え又は二千五百メートル等深線(二千五百メートルの水深を結ぶ線をいう。)から百海里を超えてはならない。
6 5の規定にかかわらず、大陸棚の外側の限界は、海底海嶺の上においては領海の幅を測定するための基線から三百五十海里を超えてはならない。この6の規定は、海台、海膨、キャップ、堆及び海脚のような大陸縁辺部の自然の構成要素である海底の高まりについては、適用しない。
7 沿岸国は、自国の大陸棚が領海の幅を測定するための基線から二百海里を超えて延びている場合には、その大陸棚の外側の限界線を経緯度によって定める点を結ぶ六十海里を超えない長さの直線によって引く。
8 沿岸国は、領海の幅を測定するための基線から二百海里を超える大陸棚の限界に関する情報を、衡平な地理的代表の原則に基づき附属書IIに定めるところにより設置される大陸棚の限界に関する委員会に提出する。この委員会は、当該大陸棚の外側の限界の設定に関する事項について当該沿岸国に対し勧告を行う。沿岸国がその勧告に基づいて設定した大陸棚の限界は、最終的なものとし、かつ、拘束力を有する。
9 沿岸国は、自国の大陸棚の外側の限界が恒常的に表示された海図及び関連する情報(測地原子を含む。)を国際連合事務総長に寄託する。同事務総長は、これらを適当に公表する。
10 この条の規定は、向かい合っているか又は隣接している海岸を有する国の間における大陸棚の境界画定の問題に影響を及ぼすものではない。
第七十七条 大陸棚に対する沿岸国の権利
1 沿岸国は、大陸棚を探査し及びその天然資源を開発するため、大陸棚に対して主権的権利を行使する。
2 1の権利は、沿岸国が大陸棚を探査せず又はその天然資源を開発しない場合においても、当該沿岸国の明示の同意なしにそのような活動を行うことができないという意味において、排他的である。
3 大陸棚に対する沿岸国の権利は、実効的な若しくは名目上の先占又は明示の宣言に依存するものではない。
4 この部に規定する天然資源は、海底及びその下の鉱物その他の非生物資源並びに定着性の種族に属する生物、すなわち、採捕に適した段階において海底若しくはその下で静止しており又は絶えず海底若しくはその下に接触していなければ動くことのできない生物から成る。
第七十八条 上部水域及び上空の法的地位並びに他の国の権利及び自由
1 大陸棚に対する沿岸国の権利は、上部水域又はその上空の法的地位に影響を及ぼすものではない。
2 沿岸国は、大陸棚に対する権利の行使により、この条約に定める他の国の航行その他の権利及び自由を侵害してはならず、また、これらに対して不当な妨害をもたらしてはならない。
第七十九条 大陸棚における海底電線及び海底パイプライン
1 すべての国は、この条の規定に従って大陸棚に海底電線及び海底パイプラインを敷設する権利を有する。
2 沿岸国は、大陸棚における海底電線又は海底パイプラインの敷設又は維持を妨げることができない。もっとも、沿岸国は、大陸棚の探査、その天然資源の開発並びに海底パイプラインからの汚染の防止、軽減及び規制のために適当な措置をとる権利を有する。
3 海底パイプラインを大陸棚に敷設するための経路の設定については、沿岸国の同意を得る。
4 この部のいかなる規定も、沿岸国がその領土若しくは領海に入る海底電線若しくは海底パイプラインに関する条件を定める権利又は大陸棚の探査、その資源の開発若しくは沿岸国が管轄権を有する人工島、施設及び構築物の運用に関連して建設され若しくは利用される海底電線及び海底パイプラインに対する当該沿岸国の管轄権に影響を及ぼすものではない。
5 海底電線又は海底パイプラインを敷設する国は、既に海底に敷設されている電線又はパイプラインに妥当な考慮を払わなければならない。特に、既設の電線又はパイプラインを修理する可能性は、害してはならない。
第八十条 大陸棚における人工島、施設及び構築物
第六十条の規定は、大陸棚における人工島、施設及び構築物について準用する。
第八十一条 大陸棚における掘削
沿岸国は、大陸棚におけるあらゆる目的のための掘削を許可し及び規制する排他的権利を有する。
第八十二条 二百海里を超える大陸棚の開発に関する支払及び拠出
1 沿岸国は、領海の幅を測定する基線から二百海里を超える大陸棚の非生物資源の開発に関して金銭による支払又は現物による拠出を行う。
2 支払又は拠出は、鉱区における最初の五年間の生産の後、当該鉱区におけるすべての生産に関して毎年行われる。六年目の支払又は拠出の割合は、
当該鉱区における生産額又は生産量の一パーセントとする。この割合は、十二年目まで毎年一パーセントずつ増加するものとし、その後は七パーセントとする。生産には、開発に関連して使用された資源を含めない。
3 その大陸棚から生産される鉱物資源の純輸入国である開発途上国は、当該鉱物資源に関する支払又は拠出を免除される。
4 支払又は拠出は、機構を通じて行われるものとし、機構は、開発途上国、特に後発開発途上国及び内陸国である開発途上国の利益及びニーズに考慮を払い、衡平な配分基準に基づいて締約国にこれらを配分する。
第八十三条 向かい合っているか又は隣接している海岸を有する国の間における大陸棚の境界画定
1 向かい合っているか又は隣接している海岸を有する国の間における大陸棚の境界画定は、衡平な解決を達成するために、国際司法裁判所規程第三十八条に規定する国際法に基づいて合意により行う。
2 関係国は、合理的な期間内に合意に達することができない場合には、第十五部に定める手続に付する。
3 関係国は、1の合意に達するまでの間、理解及び協力の精神により、実際的な性質を有する暫定的な取極を締結するため及びそのような過渡的期間において最終的な合意への到達を危うくし又は妨げないためにあらゆる努力を払う。暫定的な取極は、最終的な境界画定に影響を及ぼすものではない。
4 関係国間において効力を有する合意がある場合には、大陸棚の境界画定に関する問題は、当該合意に従って解決する。
第八十四条 海図及び地理学的経緯度の表
1 大陸棚の外側の限界線及び前条の規定に従って引かれる境界画定線は、この部に定めるところにより、それらの位置の確認に適した縮尺の海図に表示する。適当な場合には、当該外側の限界線又は当該境界画定線に代えて、測地原子を明示した各点の地理学的経緯度の表を用いることができる。
2 沿岸国は、1の海図又は地理学的経緯度の表を適当に公表するものとし、当該海図又は表の写しを国際連合事務総長に及び、大陸棚の外側の限界線を表示した海図又は表の場合には、これらの写しを機構の事務局長に寄託する。
第八十五条 トンネルの掘削
この部の規定は、トンネルの掘削により海底(水深のいかんを問わない。)の下を開発する沿岸国の権利を害するものではない。
第七部 公海
第一節 総則
第八十六条 この部の規定の適用
この部の規定は、いずれの国の排他的経済水域、領海若しくは内水又はいずれの群島国の群島水域にも含まれない海洋のすべての部分に適用する。この条の規定は、第五十八条の規定に基づきすべての国が排他的経済水域において享有する自由にいかなる制約も課するものではない。
第八十七条 公海の自由
1 公海は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、すべての国に開放される。公海の自由は、この条約及び国際法の他の規則に定める条件に従って行使される。この公海の自由には、沿岸国及び内陸国のいずれについても、特に次のものが含まれる。
(a)航行の自由
(b)上空飛行の自由
(c)海底電線及び海底パイプラインを敷設する自由。ただし、第六部の規定の適用が妨げられるものではない。
(d)国際法によって認められる人工島その他の施設を建設する自由。ただし、第六部の規定の適用が妨げられるものではない。
(e)第二節に定める条件に従って漁獲を行う自由
(f)科学的調査を行う自由。ただし、第六部及び第十三部の規定の適用が妨げられるものではない。
2 1に規定する自由は、すベての国により、公海の自由を行使する他の国の利益及び深海底における活動に関するこの条約に基づく権利に妥当な考慮を払って行使されなければならない。
第八十八条 平和的目的のための公海の利用
公海は、平和的目的のために利用されるものとする。
第八十九条 公池に対する主権についての主張の無効
いかなる国も、公海のいずれかの部分をその主権の下に置くことを有効に主張することができない。
第九十条 航行の権利
いずれの国も、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、自国を旗国とする船舶を公海において航行させる権利を有する。
第九十一条 船舶の国籍
1 いずれの国も、船舶に対する国籍の許与、自国の領域内における船舶の登録及び自国の旗を掲げる権利に関する条件を定める。船舶は、その旗を掲げる権利を有する国の国籍を有する。その国と当該船舶との間には、真正な関係が存在しなければならない。
2 いずれの国も、自国の旗を掲げる権利を許与した船舶に対し、その旨の文書を発給する。
第九十二条 船舶の地位
1 船舶は、一の国のみの旗を掲げて航行するものとし、国際条約又はこの条約に明文の規定がある特別の場合を除くほか、公海においてその国の排他的管轄権に服する。船舶は、所有権の現実の移転又は登録の変更の場合を除くほか、航海中又は寄港中にその旗を変更することができない。
2 二以上の国の旗を適宜に使用して航行する船舶は、そのいずれの国の国籍も第三国に対して王張することができないものとし、また、このような船舶は、国籍のない船舶とみなすことができる。
第九十三条 国際連合、その専門機関及び国際原子力機関の旗を掲げる船舶
前条の規定は、国際連合、その専門機関又は国際原子力機関の公務に使用され、かつ、これらの機関の旗を掲げる船舶の問題に影響を及ぼすものではない。
第九十四条 旗国の義務
1 いずれの国も、自国を旗国とする船舶に対し、行政上、技術上及び社会上の事項について有効に管轄権を行使し及び有効に規制を行う。
2 いずれの国も、特に次のことを行う。
(a)自国を旗国とする船舶の名称及び特徴を記載した登録簿を保持すること。ただし、その船舶が小さいため一般的に受け入れられている国際的な規則から除外されているときは、この限りでない。
(b)自国を旗国とする船舶並びにその船長、職員及び乗組員に対し、当該船舶に関する行政上、技術上及び社会上の事項について国内法に基づく管轄権を行使すること。
3 いずれの国も、自国を旗国とする船舶について、特に次の事項に関し、海上における安全を確保するために必要な措置をとる。
(a)船舶の構造、段備及び堪航性
(b)船舶にお什る乗組員の配乗並びに乗組員の労働条件及び馴練。この場合において、適用のある国際文書を考慮に入れるものとする。
(c)信号の使用、通信の維持及び衝突の予防
4 3の措置には、次のことを確保するために必要な措置を含める。
(a)船舶が、その登録前に及びその後は適当な間隔で、資格のある船舶検査員による検査を受けること並びに船舶の安全な航行のために適当な海図、航海用刊行物、航行設備及び航行器具を船内に保持すること。
(b)船舶が、特に運用、航海、通信及び機関について適当な資格を有する船長及び職員の管理の下にあること並びに乗組員の資格及び人数が船舶の形式、大きさ、機関及び設備に照らして適当であること。
(c)船長、職員及び適当な限度において乗組員が海上における人命の安全、衝突の予防、海洋汚染の防止、軽減及び規制並びに無線通信の維持に関して適用される国際的な規則に十分に精通しており、かつ、その規則の遵守を要求されていること。
5 いずれの国も、3及び4に規定する措置をとるに当たり、一般的に受け入れられている国際的な規則、手続及び慣行を遵守し並びにその遵守を確保するために必要な措置をとることを要求される。
6 船舶について管轄権が適正に行使されず又は規制が適正に行われなかったと信ずるに足りる明白な理由を有する国は、その事実を旗国に通報することができる。旗国は、その通報を受領したときは、その問題の調査を行うものとし、適当な場合には、事態を是正するために必要な措置をとる。
7 いずれの国も、自国を旗国とする船舶の公海における海事損害又は航行上の事故であって、他の国の国民に死亡若しくは重大な傷害をもたらし又は他の国の船舶若しくは施設若しくは海洋環境に重大な損害をもたらすものについては、適正な資格を有する者によって又はその立会いの下で調査が行われるようにしなければならない。旗国及び他の国は、海事損害又は航行上の事故について当該他の国が行う調査の実施において協力する。
第九十五条 公海上の軍艦に与えられる免除
公海上の軍艦は、旗国以外のいずれの国の管轄権からも完全に免除される。
第九十六条 政府の非商業的役務にのみ使用される船舶に与えられる免除
国が所有し又は運航する船舶で政府の非商業的役務にのみ使用されるものは、公海において旗国以外のいずれの国の管轄権からも完全に免除される。
第九十七条 衝突その他の航行上の裏故に関する刑事裁判権
1 公海上の船舶につき衝突その他の航行上の事故が生じた場合において、船長その他当該船舶に勤務する者の刑事上又は懲戒上の責任が問われるときは、これらの者に対する刑事上又は懲戒上の手続は、当該船舶の旗国又はこれらの者が属する国の司法当局又は行政当局においてのみとることができる。
2 懲戒上の問題に関しては、船長免状その他の資格又は免許の証明書を発給した国のみが、受有者がその国の国民でない場合においても、適正な法律上の手続を経てこれらを取り消す権限を有する。
3 船舶の拿捕又は抑留は、調査の手段としても、旗国の当局以外の当局が命令してはならない。
第九十八条 援助を与える義務
1 いずれの国も、自国を旗国とする船舶の船長に対し、船舶、乗組員又は旅客に重大な危険を及ぼさない限度において次の措置をとることを要求する。
(a)海上において生命の危険にさらされている者を発見したときは、その者に援助を与えること。
(b)援助を必要とする旨の通報を受けたときは、当該船長に合理的に期待される限度において、可能な最高速力で遭難者の救助に赴くこと。
(c)衝突したときは、相手の船舶並びにその乗組員及び旅客に援助を与え、また、可能なときは、自己の船舶の名称、船籍港及び寄港しようとする最も近い港を相手の船舶に知らせること。
2 いずれの沿岸国も、海上における安全に関する適切かつ実効的な捜索及び救助の機関の設置、運営及び維持を促進し、また、状況により必要とされるときは、このため、相互間の地域的な取極により隣接国と協力する。
第九十九条 奴隷の運送の禁止
いずれの国も、自国の旗を掲げることを認めた船舶による奴隷の運送を防止し及び処罰するため並びに奴隷の運送のために自国の旗が不法に使用されることを防止するため、実効的な措置をとる。いずれの船舶(旗国のいかんを問わない。)に避難する奴隷も、避難したという事実によって自由となる。
第百条 海賊行為の抑止のための協力の義務
すべての国は、最大限に可能な範囲で、公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所における海賊行為の抑止に協力する。