「大人の歯列矯正よもやま話」/きのうきょうあす(No.132)
【始めた動機】 顎が小さい割には立派で丈夫な永久歯が生えてきて、小学生の頃から上の前歯が1本飛び出しているのが嫌でたまりませんでした。その上、見えない奥歯の歯並びも今思えば相当悪く、口の中を噛んだり口内炎になったりというトラブルが絶えませんでした。歯科に行く度に「磨きにくい歯だねえ」と言われるのも憂鬱で、いつか矯正をしようと思い続けていたのですが、時間的、経済的な条件が整ったのが約2年半前。そのころ中途半端に顔を出して疼いていた親知らずの抜歯をきっかけに始めることにしました。
【矯正はお金がかかる?】 かかります。通常は保険がききませんので、最初の検査から桁違いのお金がかかってしまいます。医師の裁量に任される部分が大きく、使う装置や方法等によっても随分額が違うようです。ちなみに私の場合、治療を開始する時点でまとめて50万円強、月1回の調整の度に5000円強支払っています。最も安価なメタルの装置を使用しており、教育目的の診療がある大学病院ということもあるのでしょうが、私の知る限りこれは安い方です。この費用に意義を見出せるかどうかが、実は大きな問題なのですが。
【矯正は痛い?】 痛いです。個人差はありますが、痛くないとはとても言えません。装置を入れた直後、調整した直後は、確実にバイオリズムが低下します。嘘みたいな話ですが、レタス1枚が痛くて噛み切れなくなるのです。この時ほど健康な歯の大切さを、文字通り「痛感」することはありません。お豆腐とかリゾットとかスープとか、朝食はシリアルを牛乳でとことんふやかして……という非常食で凌ぎます。また、装置が口中の粘膜にあたって傷がついたり口内炎になったりします。この状態で講義をするのは本当に辛い……。でも人間というのは慣れるもので、数日我慢すれば痛みは必ず治まってしまうのです。そうなれば、実は食べられないものは殆どありません。装置が外れる可能性があるので、余りかたいもの等は避けますが、細切れにして何でも食べる!ただし、体調が優れない時は、どうにも装置が鬱陶しくてしんどいのですが。
【矯正は時間がかかる?】 装置をつけて1年半になろうとしています。成長期にある子供より大人の方が早く終わると言われていますが、どうなのでしょう?私の先生は「いつ終わりますか?」という質問をさせない雰囲気を持つ方なのですが、たまにポロッとこぼされる「見込み」に一喜一憂しているのが実情です。
【矯正はみっともない?】 こんな装置は、やはりつけていないにこしたことはありません。特に大人になってからだと抵抗がありますし、職業上の理由で無理な方も多いでしょう。私がセラミックや透明の目立たない装置、舌側矯正でなく、「いかにも」というメタルの装置になったのは、ひとえに病院の方針で選択の余地がなかったからなのですが、結果的には良かったと思っています。というのは、避けられない発音障害(舌足らずな話し方になる)があるので、装置が目立っていると、いちいち説明しなくても理解してもらえるからなのです。ですから、発音障害が酷かった当初は、何よりも電話に困りました。「えっ?」と聞き返される度に激しく落ち込んだものです。もう一つ、食事をすると装置に食べ物が付着してみっともないという事実があります。さらに、食後もれなく歯磨きが要求されます。これは切実な問題で、「お食事に誘われて」とか「旅先で食べ歩き」とかの楽しみは一体どうなる?と暗澹としたものですが、結局一緒に食事をしたい人がいればみっともなくてもそうするし、食べ歩きたければ歯磨きに困っても食べ歩いてしまうのです。そのうち食べ方のコツがつかめてきますし、何よりも自分が気にするほど周りは気にしてくれてはいないようです。
【矯正してよかったか】 まだ途中なので何とも言えませんが、後悔はしていません。見た目が悪かった前歯の突出だけでなく、全く気にしていなかった歯の高さや噛み合わせの深さ等もどんどん改善されていくのには正直驚いています。噛み合わせと健康が密接に関係していることは広く知られるようになってきましたし、これからは色々な意味で歯に対する意識を高めることが必要になってくるのではないでしょうか。ここでご紹介した以上の体験談に関心をお持ちの方は、自称「口元評論家」の浦坂までお気軽にどうぞ!
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