「阪神地区公立高等学校出身者のキャリア形成に関する調査」報告    目次 目次



X 転職について

転職経験者の転職回数は、1回が52.1%を占めており、転々と職を変えているサンプルはわずかである(問18)。平均転職回数は、1.8回であった。以下、一番最近(最後)の転職にあたっての状況を尋ねている。

転職にあたって利用した方法・媒体の中で、最も多かったのが「新聞・チラシ」であり、138サンプル(43.5%)が回答している(問19)。その「新聞・チラシ」を転職に直接結びついたものとして挙げたサンプルは81あり(問20)、後述する他の方法・媒体と比較しても効率的なほうである。「新聞・チラシ」を利用した理由としては、「時間や手間があまりかからない」(49サンプル)「費用があまりかからない」(34サンプル)「広く探すことができる」(24サンプル)が挙げられていた(問21)。81サンプル中65サンプルが女性であったが、現在「正規職員・従業員」として就業しているサンプルが17であるのに対して、それ以外の就業形態が20、就業していないサンプルが28という内訳からも、その利用の背景がうかがえよう。

利用した方法・媒体のうち、転職に直接結びついた割合をそれぞれ計算すると、「仕事関係者からの紹介」を利用した76サンプル中58サンプル(76.3%)が転職に直接結びついており、最も効率的であることが分かる。加えて「家族・親類・友人などからの紹介」も、その割合が73サンプル中47サンプル(64.4%)となっており、「つて」といわれる人的な繋がりの実効性の高さが見て取れよう。また、「ヘッドハンティング・スカウト会社」が13サンプル中7サンプル(53.8%)、「その他の民間職業紹介機関」が39サンプル中23サンプル(59%)と、いずれも高い割合を示しているが、利用サンプル自体が限定されている。その一方で、「公的職業紹介機関(ハローワークなど)」を利用した97サンプルのうち転職に直接結びついたのは27サンプル(27.8%)であり、他の方法・媒体と比較して低いことに留意したい。

転職先を選ぶにあたって、特に重視した項目としては、「勤務地」(47.3%)が最も多く、「労働時間・休日数」「自分がやりたい仕事である」「自分の能力・専門性が活かせる」がいずれも3割を超える回答を得た(問22)。これらは基本的な要件であり、重視するのは妥当であるものの、「勤務地」「労働時間・休日数」は女性に多く、逆に「自分の能力・専門性が活かせる」は男性に多く、その性別差はいずれも統計的に有意である。「自分がやりたい仕事である」や、それに次ぐ回答を得た「給料・福利厚生」を重視する傾向には、性別差は見られなかった。

一方、転職先を選ぶにあたって、十分把握できなかったと思われる項目としては、当然のことながら「職場の雰囲気・人間関係」(43.9%)が群を抜いて多く、「転職先の成長性・安定性」(21.1%)が続く(問23)。さらに50サンプルあまりの回答を得た項目に「理念経営戦略が優れている」(18.0%)「経営者が魅力的である」(17.7%)「給料・福利厚生」(17.0%)があるが、将来的な不確実性に起因するものではなく、本来ならば事前に十分に把握されるべき「給料・福利厚生」が含まれている点については、その要因をより細かく検討する必要があろう。

転職による所得変化については、サンプルが比較的若年層であり、最初の仕事を辞めた理由に「倒産・人員整理・解雇」などの回答はわずかしかなかったにもかかわらず、「かなり増えた」(14.8%)「やや増えた」(23.0%)よりも「やや減った」(18.0%)「かなり減った」(24.9%)をあわせた回答のほうが上回るという厳しい結果となった(問24)。ただし、所得減少もまた女性に顕著な傾向であり、統計的に有意な性別差を得ている。

現在転職を考えているかどうかを、就業していないサンプルについても新たな就職(復職)として全サンプルに尋ねたところ(問25)、潜在的な転職(就職)希望者は3割程度存在するとはいえ、具体的な行動をおこしておらず、実際に求職活動を行っているサンプルは5%に満たない。前述の転職による所得変化に関連して、所得減少が求職活動を導いているかどうかを転職経験者について確認したところ、所得が減少するほど転職志向は強まってはいるものの、統計的有意性はやや低めであった。

転職(就職)を考えるにあたって、主に利用している、もしくは利用したいと思う方法・媒体として、最も多く挙げられているのが50サンプル(17.3%)の「公的職業紹介機関(ハローワークなど)」であり、1割以上の回答を得たものに「仕事関係者などからの紹介」「新聞・チラシ」「転職情報サイト」があった(問26)。「公的職業紹介機関(ハローワークなど)」は、転職に直接結びついていないという前述の結果を踏まえると意外だが、利用する理由としては、半数以上が「転職(就職)先の情報がよくわかる」(26サンプル)「仲介先からの情報が信頼できる」(26サンプル)「費用があまりかからない」(29サンプル)「広く探すことができる」(25サンプル)を挙げている(問27)。雇用保険受給にかかわる制度の定着が最大の要因であろうが、まずは公的な機関へという信頼感や安心感のあらわれともとらえることができる。


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