「阪神地区公立高等学校出身者のキャリア形成に関する調査」報告    目次 目次



Y 就業以外の社会活動について

就業以外の社会活動で参加したことがあるものを尋ねたところ(問28)、1/3が「特になし」と回答する一方で、「趣味・スポーツなどの活動」「PTA・子供会などの活動」「自治会・県人会などの活動」が2〜5割の回答を得た。「特になし」は男性に多く、その性別差は統計的に有意である。自治会などの地域に密着した地縁団体は、特に若年層の関心や参加意欲の低下により存続が危惧されているが、それでも就業以外の社会活動の典型例として、まだ一定の存在感はあると考えられる。

しかしながら、これらの社会活動が転職に役立った例は、現状では極めて少ないようである(問29)。唯一「趣味・スポーツなどの活動」が25サンプルの回答を得ているが、本調査では、趣味・スポーツの活動内容自体が転職に役立ったのか、それらの活動を通じた人的な繋がりが転職に役立ったのかが識別できていない。この点の克服を含めて、よりきめ細かい継続的な実態把握が求められる。

次に、社会活動の中でもNPO活動に焦点を絞り、その認識の程度を尋ねたところ(問30)、「知っている」「少しだけ知っている」と回答したサンプルをあわせて77.2%となった。特定のNPOに関する詳細な情報などではなく、NPOに関する一般的な情報を見聞きしたことがある方法・媒体としては、「テレビ・新聞・雑誌」というマスメディアが圧倒的多数であり、93.4%にあたる534サンプルが回答している(問31)。そのうち、NPOに関する一般的な情報を見聞きしたのがマスメディアのみであるサンプルが207と4割弱におよんでおり、NPOに関してマスメディアで提示されるような表面的あるいは型通りの知識しかを持ち合わせていないことが推察される。なお、その中から最も積極的に利用した方法・媒体を尋ねても(問32)、マスメディアを通じた受身の姿勢は変わらないが、その他の方法・媒体では、「ホームページ」の積極的活用が相対的に目立っている。

NPO活動への参加経験を尋ねたところ(問33)、「現在参加している」「参加したことがある」と回答したサンプルをあわせて9.1%となった。参加している(していた)NPOの主な活動分野は様々だが、中でも「保健・医療・福祉の増進」(17.9%)「文化・芸術・スポーツの振興」(10.7%)が比較的多い(問34)。そこでの活動頻度もさして多いとはいえず、「月に1〜2日」以下というサンプルが7割を占めていた(問35)。

NPO活動に参加する直接のきっかけとなったのは、「友人・知り合いなどからの紹介」(35.7%)が多い(問36)。次に多かった「企業・団体・自治体などの職場で活動し、NPOの業務と兼任している」(21.4%)が就業と密接に関係していることから、何らかのメディアを介してではなく、NPOあるいはNPO活動参加者が身近に存在し、直接接触する環境にあることが、その活動への参加に大きく寄与していると思われる。

NPO活動に対して持っているイメージについて、肯定的なイメージ(A群)と否定的なイメージ(B群)に分けてそれぞれ尋ねたところ(問37)、共に特定の選択肢に回答が集中する結果となった。前者は「世の中や人のためになる」(67.8%)「視野・見聞が広がる」(49.3%)「自分自身の成長や生きがいを得ることができる」(44.6%)といった項目であり、他はすべて2割程度までにとどまっている。後者は「十分な給料が得られない」(46.3%)「時間的な負担が大きい」(41.4%)「必要な制度が十分に整っていない」(36.7%)に加えて、「偽善的な雰囲気がある」(28.9%)「苦労や危険を伴う」(21.9%)などの非常に悪いイメージを抱いているサンプルも少なくない。

NPOに関する情報入手経路としては、マスメディアが圧倒的に主流であったことから、マスメディアが作りがちである特定のNPOのイメージが、NPO全体のイメージとして広く認識され、浸透している可能性がある。また、「キャリアを積むことができる」というイメージを持つサンプルが3.5%にとどまることから、NPO活動を何らかの形で仕事と繋げて考えているサンプルは極端に少なく、むしろ大半が仕事とはかけ離れた社会活動に過ぎないという認識であることが浮き彫りになっている。

最後に、将来的なNPO活動への参加の意志に関しては、「参加(継続)したい」「どちらかといえば参加(継続)したい」サンプルがあわせて38.6%、「参加(継続)したいと思わない」「どちらかといえば参加(継続)したいと思わない」サンプルがあわせて59.8%と、後者が前者を上回った(問38)。前述の情報入手経路および保有イメージと関連づけると、NPOに関する情報入手経路がマスメディアのみであるサンプルは、「苦労や危険をともなう」というイメージを強く持ち、NPO活動への参加の意思も希薄である。加えて、就業以外の社会活動への参加経験があるサンプルのほうが、NPO活動への参加の意思が強いことも統計的に確認されている。


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