ゼロエミッション技術を基盤とした環境調和型エネルギ―グリッドの最適化研究


 ■ 研究プロジェクト ■


 ゼロエミッション技術を基盤とした環境調和型エネルギーグリッドの最適化研


 文部科学省の平成21年度私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に,研究プロジェクト「ゼロエミッション技術を基盤とした環境調和型エネルギーグリッドの最適化研究」が採択されました.
 本プロジェクトでは,学術フロンティア推進事業「ゼロエミッション・エネルギー変換研究システム」(平成15年度-平成19年度)の学術研究成果およびその後の国際的研究交流を培ってきた研究成果を基に,国外の諸機関との連携を推進し,事業実施期間中に環境調和型エネルギー・ゼロエミッション研究の中心的拠点となることを目指します.ここでは,特に各種の再生可能エネルギー・エネルギー貯蔵装置・燃料電池・各種エンジン形式のエネルギー変換装置およびコージェネレーションシステムなどの更なる高効率化とゼロエミッション研究を推進し,それらを統合したホロニックエネルギーパスによる居住区・都市域での環境調和型エネルギーグリッドの構築を目指します.


エネルギー変換研究センター長           2007.11- 山口 博司(工学研究科 教授)

                         -2007.11 千田 二郎(工学研究科 教授)


 共同研究プロジェクトの概要 

 本構想の共同研究プロジェクトは,現代社会におけるエネルギー・資源問題および環境破壊問題を背景に,人類の社会活動に必須のエネルギーを,究極の環境保全を想定して最適なエネルギー変換過程を経て供給するための基礎的・体系的な研究を行うことを目的としている.本学大学院工学研究科の各専攻では,この分野に関して個別に大きな研究業績を挙げている研究者が多く存在する.このため,これらの基礎研究を体系化し,さらに学外の産官学の研究機関と共同して,資源有効利用とその貯蔵や輸送,各種エネルギー変換システムの高効率化,ゼロエミッション化のためのエネルギー変換過程の物理・化学解析,さらに資源の起源からシステム利用全体にわたる最適化ライフサイクルアセスメントを行う.このように,これからの高度文明社会を支えるエネルギーと環境保全のための総合・学際的科学技術分野を本共同研究プロジェクトにおいて遂行することは,次世代技術開発の発展に対して極めて有意義であると考える.

 上記の研究プロジェクトを実施するために,大学院工学研究科を母体としたエネルギー変換研究センターを設置し,学外との共同研究の拠点とする.

 

 研究内容 

 ① 再生可能エネルギー・エネルギー輸送・貯蔵システムの最適化研究

  • 機能性流体を用いた高効率熱輸送システムの開発(山口博司)
  • 太陽光発電と安定電力供給型キャパシタ制御(石原好之)
  • 磁性材料の機能性評価と電気機器への適応技術の開発(藤原耕二)
  • 磁性流体を用いたエネルギー変換システム(Mark I. Shliomis:ベングリオン大学)
  • CO2ソーラーランキンと自然エネルギー(張信栄:北京大学)


 ② 水素を基軸としたエネルギーシステムの最適化研究

  • 次世代型高効率燃料電池の開発(稲葉稔)
  • ハイブリッドシミュレーションを用いた電極ならびに水素吸蔵材料の表面設計(白川善幸)
  • 水素製造のための高効率バイオエタノール改質器開発(平田勝哉)
  • 高容量水素-空気二次電池の開発(盛満正嗣)
  • 水と窒素からの常圧アンモニア電解合成の研究(伊藤靖彦)
  • 高次熱輸送と流体相互作用(P Kandaswamy:バハラチア大学)
  • エネルギー変換と流動制御エネルギーサイクルの研究(Florian DeVuyst:エコール セントラル パリ)

    ③ 高効率熱電交換エネルギーシステムの最適化研究

    • 高効率エンジン排熱回収・熱電交換システムの開発(稲岡恭二)
    • コージェネレーションシステムの熱工学的解析と高効率化手法の構築(千田衛)
    • ゼロエミッション化のための燃焼過程の化学反応動力学解析とシステム化(藤本元)
    • エネルギー変換過程における反応性流体の流体力学解析(水島二郎)
    • 燃料電池内の改質器および低圧力損失触媒コンバータの開発(舟木治郎)
    • ゼロエミッション・高効率熱機関システムの限界究明(和田好充:金沢工業大学)

     ④ ホロニックエネルギーパスによる環境調和型エネルギーデザインの提案

    • ホロニックエネルギーパスによる環境調和型グリーンエネルギーデザイン(千田二郎)
    • アーバンエリアCO2排出抑制型エネルギーノードの開発(伊藤正行)
    • ハードパスとソフトパスの協調・連携における最適制御術(高野頌)
    • 水素を基軸としたアーバン・エネルギー・ネットワーク研究(Scott Samuelsen:UC-Irvine)

 ■ 年度別の具体的研究内容 ■

2009年度は研究基盤の環境整備を開始し,国際ネットワークの体制構築を行い,研究テーマを立ち上げる.日中エネルギー変換セミナー,ノルウェーKIFEE会議および国内外研究会を開催する.また,各年次における評価委員会を立ち上げ,年度末に成果評価を行う.
2010年度以降では,各国のPD他若手研究者の招聘や,センターPD他若手研究者の海外派遣による研究交流の活性化を図り,各研究テーマを深化させる.
2011年度には総合研究テーマを[ゼロエミッション技術を基盤とした環境調和型エネルギーグリッドの最適化研究」と題し,前年度までに行われた分野別研究テーマのシステム化と融合化を図る.また,中間総括外部評価を実施する.
2012年度には中間総括外部評価による研究活動計画の見直しと修正を実施する.また国際的な共同研究の実施,研究者の人的国際ネットワークを構築する.
2013年度では研究成果の社会への還元と技術移転に努める.さらに「エネルギー資源環境国際研究会議」を海外で開催し,「Sustainable Energy 社会構築のための構想」の実現を世界に提言し,International Sustainable Institute 設置に向けての検討を行う.そして,最終総括外部評価を実施し,全体の研究成果について評価を行う.

共同研究内容の一部紹介

 ※タイトルをクリックで研究内容詳細のスライドを閲覧できます。

 

①<燃焼研究分野>  

①-1*燃料設計手法による高効率・低エミッション燃焼法の提案研究 (千田J)  

①-2*直接噴射・自着火型水素ディーゼル機関の基礎的研究 (千田J・藤本)  

①-3*バイオディーゼル機関の基礎的研究 (千田J)

 

②<システム研究分野>  

②-1*コージェネレーションシステムの高効率化に関する研究 (千田M・千田J・藤本・山口・稲岡)  

②-2*超臨界CO2を用いた太陽熱発電システムの特性評価 (山口)  

②-3*高効率エンジン排熱回収・熱交換器の高性能化 (稲岡) 

 

③<特殊流体・流体研究分野>  

③-1*電磁流体によるエネルギー輸送システム (山口)  

③-2*エンジン排気系、触媒内部の流動解析研究 (平田・舟木)  

③-3*燃料電池内部のガス拡散解析研究および燃料電池用水素改質器の開発 (平田・舟木) 

 

④<燃料電池・水素・電気化学研究分野>  

④-1*高効率中温域燃料電池用プロトン導電性固体電解質の開発 (稲葉)  

④-2*固体電解質材料の高プロトン伝導機構に関する量子化学計算シミュレーション (白川)  

④-3*電気化学触媒の開発 (盛満)  

④-4*水素エネルギーシステムとアンモニアエコノミー (伊藤Y)

 

⑤<エコタウン-デザイン提案> (千田J・稲岡)

 


 

 

主要研究員  共同研究の体制


■ 主要研究員 ■

本研究プロジェクトに参加する主な研究者

氏名     所属        研究テーマ

藤本 元   本学工学研究科教授   ゼロエミッション化のための燃焼過程の化学反応動力学解析とシステム化
千田 二郎  本学工学研究科教授   エンジンシステム内の高効率・低エミッション燃焼法の開発
千田 衛   本学工学研究科教授   コージェネレーションシステムの熱工学的解析
稲岡 恭二  本学工学研究科教授   高効率エンジン排熱回収・熱交換器の高性能化
水島 二郎  本学工学研究科教授   エネルギー変換過程における反応性流体の流体力学解析
平田 勝哉  本学工学研究科教授   燃料電池および排気触媒内部のガス流動解析
舟木 治郎  本学工学研究科准教授  排気触媒内のガス流動解析
高野 頌   本学工学研究科教授   微粒子の動力学的解析手法の開発と時空間構造計測法の確立
稲葉 稔   本学工学研究科教授   高効率中温域燃料電池用プロトン伝導性固体電解質の開発
伊藤 靖彦  本学工学研究科教授   高耐久性軽量水素貯蔵・輸送媒体の開発とエンジンシステムへの適用
盛満 正嗣  本学工学研究科准教授  電気化学触媒に関する研究
山口 博司  本学工学研究科教授   電磁流体を用いた高効率熱輸送システムの開発
白川 善幸  本学工学研究科教授   固体電解質材料の高プロトン伝導機構に関する量子化学計算シミュレーション
石原 好之  本学工学研究科教授   安定電力供給型キャパシタ制御、ソーラー・電力と熱のマネジメント制御
伊藤 正行  本学工学研究科教授   排ガスからのナノ粒子の生成と成長機構・環境動態の研究


■ 共同研究の体制 ■


本共同研究プロジェクトの各研究グループの主要な研究内容は,本学大学院工学研究科の電機系,機械系および化学系の研究者が遂行する.このほか,各分野での卓越的な研究成果を挙げている以下の学外研究機関との共同研究体制を整え,体系的・総合的な連携研究を行う.


▶ 国外連携研究機関


アメリカ     University of California - Irvine
         University of Wisconsin - Madison
イギリス     Imperial College London
イスラエル    Bharathia University
フランス     Ecole Centrale Paris
中国       北京大学
         湘潭大学

 


▶ 国内連携研究機関

京都大学大学院エネルギー科学研究科
京都大学大学院工学研究科
岡山大学大学院自然科学研究科
鳥取大学工学部数理工学科
(独)交通安全環境研究所
(独)国立環境研究所
(財)日本自動車研究所
舞鶴工業高等専門学校
(株)前川製作所
昭和電工(株)
昭和炭酸(株)
(株)フェローテック
(株)堀場製作所
(株)ヤンマー