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IPEの種 2/13/2006
広島の地方入試を手伝ってきました.・・・一週間! ホテルの部屋には,毎日新聞を届けてもらいました.中でも,二つの記事が印象に残っています.
まず,2月5日,立花隆「ロッキード事件発覚30年:闇世界の核心突けず」です.
「第一に,それはいまでこそ田中角栄の事件になっているが,事件発覚当初は,あれは何よりも児玉誉士夫の事件だった.そして,十七億五千万円にものぼる児玉領収証が残されていたというのに,児玉ルートの金の流れは,ほとんど解明されないままに終わった.
結局,解明されたのは,基本的に丸紅ルートの金の流れだけである.丸紅ルートを経由した六億二千万円のうち,ピーナツ領収証分五億円が田中角栄に流れた資金で,ユニット領収証一億二千万円が,いわゆる全日空ルートの二人の政府高官(橋本登美三郎元運輸相と佐藤孝行元運輸政務次官),それに立件されずに灰色高官で終わった十三人の政府高官(政治家)たちである.
結局,児玉ルートの金の流れは,口の固さを誇るブラック世界のプロ中のプロが何も語らなかったために,秘密が全く漏れずに終わった.同時に,もうひとつ存在したとされる小佐野ルートの金の流れも,児玉同様口が固かった小佐野によって秘密が守られた.結局,ウワサばかりさかんであった,対潜哨戒機P3Cの問題とか,韓国ルート(大韓航空あるいは韓国空軍へのロッキード機の売りこみ)」も解明できなかった,と.
だから,「ライブドア」でその轍を踏むな,と立花氏は書きます.組織犯罪者=右翼=暴力団=政治家のルートは消えることなく,さらに,海外ネットワークも含めた,経済・金融犯罪の新しいルートが暴力組織と融合し,日本の「エスタブリシュメント」を侵食している,と推測できます.欧米で注目される「マネー・ロンダリング」は,犯罪集団が政府や企業,支配層を結び付ける「闇世界」の別称です.他方,「道路公団」や「高速道路建設」,「防衛庁建設工事談合」では,政治家・官僚の「伝統的な」利権システムが崩れていないことを示しました.
次に,その翌日(2月6日)目にした,「「真実なき文書」に疑問」という記事です.韓国政府が,金大中氏の拉致事件に関して,当時(1973年)の田中角栄首相が韓国政府と事件の収拾策で秘密合意していた内容を,一方的に公表しました.韓国政府の外交文書によれば,・・・拉致にKCIAは関与しなかった.警視庁は捜査を続け,KCIAが関与したと分かれば「政治決着」を見直す,しかし,「それは建前」でしかない,と田中首相は明言した.金大中氏は日本に来ない方が良い.・・・などと,日韓両政府は合意していました.しかし,それを国民には秘密にして,表向き日本政府は,金大中氏の再訪日と「原状回復」を求めたのです.
なぜ軍事独裁政権の報告書をそのまま公表するのか? と池明観氏は憤慨します.氏はT・K生という匿名で,73〜88年,「韓国からの通信」を雑誌『世界』に連載しました.政府・秘密警察の関わった主権侵害・人権侵害を問うことなく,軍事独裁政府の報告書をそのまま公表することに,一体,どんな意味があるのか? 日本の政治家たちが臆病で卑劣なために,政治的な裏取引に応じた,と示しているから,韓国政府はこれを公表したのでしょうか? 韓国の民主化や日韓関係の正常化,友好促進・協調関係に反する,愚かな行為だ,と現政権を批判します.
金大中拉致事件もロッキード事件も風化し,今では,田中角栄や朴正熙を英雄視する形で,歴史の見直しを議論することさえあります.
BS・NHKで,The Economist編集長,ビル・エモット氏が日本経済の復活を議論していました.銀行の不良債権,企業の過剰設備,過剰人員が解消された,というのがその理由です.こうした停滞の源泉がようやく取り除ける状態に向かっているのはその通りかもしれません.しかし,ここに至る過程で,さまざまな選択の失敗,試行錯誤があったことを,どう評価するべきでしょうか? 遅かったとはいえ,改革に成功した,というのは,物足りない発言であり,むしろ日本への深い諦めを感じました.
日本の社会には力がある,とエモット氏は断言します.技術力が高く,企業や,その他の組織もまとまりがあって,回復を競い合うだろう,と予想します.・・・本当に,そうでしょうか? 繰り返し「改革」を唱えてきた政治家や企業が,日本の社会に活力を与える触媒になったとは信じられません.さまざまな組織で信頼される優秀な指導者が,尊敬される指導理念を掲げて,社会的革新の一部になっているケースがどれほどあると言うのでしょうか? むしろ「改革」を唱えるほど,不信と軽蔑,失望,冷笑,互いの縄張り争いや潰し合いが続いているように思います.
他方,フランスがドイツをEUに包み込んだように,日本は中国をアジアの近隣諸国と地域統合に包み込むべきだ,と氏が主張したことは正しいと思います.ただし問題は,時とともに,しかも急速に,中国をアジアに包み込むのではなく,アジアが中国に呑み込まれる,という状態に近づくことです.日本政府は,朝鮮半島や台湾の平和的な民主化,インドの経済発展,また,インドネシアの津波被害やカシミールの地震被害について,さらに積極的な貢献を行うべきでしょう.
高速道路を建設する予算で,カシミールにどれだけ住宅や道路を復興できるでしょうか? また,北朝鮮の政治指導者・体制と民衆とを区別し,韓国政府と一緒に,輸出経済特区の運営を提案してはどうでしょうか?
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