前半から続く)


l  メキシコのソーダ税

NYT November 3, 2013

Mexico's Soda Pop Ploy

By DAVID TOSCANA

私は大学を出てすぐにコカコーラで働いた.研修を受けてから,毎日,トラックを運転して,メキシコ各地にコカコーラのボトルを届けたのだ.

教会にも,売春宿にも届けた.同じようなソフトドリンクや,チップスなど,ジャンクフードの配送トラックしか走らない道路を,全く地図にないような土地まで,コカコーラを届けた.政府も知らない,病院も,学校も,飲み水もないような土地まで行った.今,メキシコで最も危険な職業の一つが,配送トラックの運転手だ.強盗や強請に遭い,殺されることもある.

2006-12年のFelipe Calderón大統領は,麻薬戦争に没頭し,社会契約が破棄されて信頼を失った.市民の安全も,学校の改善もできずに,政治家たちは非合法に私腹を肥やしていた.しかし,最悪の方法は,市民への増税だ.

砂糖の入った飲料1リットル当たり1ペソ(約8セント)の課税が木曜日に議会で成立した.その目的は,肥満の解消である.メキシコはアメリカと,世界一の肥満率を競っている.メキシコは暑く,国民はソフトドリンクの消費に頼っている.多国籍企業が管理し,コマーシャルは盛んに消費を称え,細菌に汚染されていない(通常は)のだから.他の健全な代替物もないのに,ソーダの消費を非難するのは,マリー・アントワネット風に,「ワインでも飲みなさい」である.

こうして政府が集める約10億ドルは,はたして何に使われるのか? フロリダ,テキサス,カリフォルニアで,政治家たちが不動産を買うだけではないか?

そうだ.もっと良い方法がある.ソーダではなく,汚職に課税しよう.


l  中国の権力と社会変化

FT November 4, 2013

China: Red restoration

By Jamil Anderlini

習近平Xi Jinpingが権力を握って1年たつが,外国企業は汚職事件や価格操作,国営メディアのキャンペーンで標的となった.経済改革と政治改革を進め,法システムを強化し,経済に占める国家の役割を低下させると期待されたが,現実には,共産党の正当性が侵食されるのを阻止するためにナショナリズムを強めた伝統の復活に頼ったのだ.

先月後半,明治乳業は中国から撤退する最初の国際企業になった.中国政府は外国企業と競争する国内の粉ミルク企業を支援するために300億元の支出を決め,その後,政府機関の調査により,明治乳業は価格を下げるように強いられていた.3月,フォルクスワーゲンが国営テレビで安全でないと伝えられ,38万台をリコールした.この数週間でも,サムソンのスマートフォンが保証書を批判され,スターバックスはカフェラッテの料金が高すぎる,と複数の国営メディアが伝えた.

FT November 4, 2013

China plans to prove the sceptics wrong

By Gideon Rachman

BLOOMBERG Nov 4, 2013

China Is Choking on Its Success

By William Pesek

中国はディケンズ時代のイングランドなのか? 大気汚染がひどくなれば,政治家たちは対策に向けて動くはずだ.しかし,それはイギリスやアメリカの話である.中国は巨大な一党支配国家であり,彼らの正当性はもっぱら8%の経済成長にかかっている.しかも,党の幹部たちは既存の生産システムで大きな富を得ている.

中国は予測不可能な世界をもたらしつつある.1970年代に美しい環境を取り戻すため,日本やアメリカを助けたような民主的な市民的制度を欠いたまま,むしろ高度な汚職に染まった制度の下で,中国は環境問題に直面している.

共産党は土地収奪の紛争に関心をそらせたり,外国メディアが大げさに報道していると非難したりするが,街を歩けば飛行場の喫煙ルームに迷い込んだような現実を疑う余地などない.解決策は明白である.直ちに石炭の使用をやめることだ.莫大な外貨準備を使えば,天然ガスに移行することは可能である.

ただし,それには長期にわたる成長の減速と,国営企業を通じて製剤と富を支配するエリートたちの反対を抑えねばならない.石炭を燃やす工場を人口の少ない陜西省や内モンゴルに移転するだけで,毎年,都市に増える自動車も抑えられない.今の指導部には,それだけの政治的資本がないのだ.

NYT November 5, 2013

Too Big to Breathe?

By THOMAS L. FRIEDMAN

NYT November 5, 2013

On Becoming China’s Farm Team

By MARK BITTMAN

NYT November 5, 2013

China’s Leaders Confront Economic Fissures

By KEITH BRADSHER

FT November 6, 2013

The ghost at China’s third plenum: demographics

By David Pilling

中国は豊かになる前に老いていく.その平均的生活水準は,エクアドルとジャマイカの間である.

中国の高齢化が急速に進むことをどれほど強調しても正しく伝えることは難しい.平均余命は,1949年の35歳から現在は75歳に改善された.ほとんど奇跡である.しかも,出生率は人口を維持する2.1人よりもはるかに低い,1.5人に急落した.

中国は人口過剰から人口不足に,歴史上最速で転換した,と研究者は言う.2011年には労働力が減少した.日本も最初に減少したのは1990年であった.中国にとって不吉なことに,日本はその後,20年間も経済が停滞している.

FT November 7, 2013

Finance: Plugged into the party

By Henny Sender and Tom Mitchell

アメリカの銀行が「プリンセリング」とのコネクションだけで利益を確保できるような時代は終わった.江沢民,温家宝,朱鎔基の子供や孫たちは,こうしたコネクションであった.

NYT November 7, 2013

If You Think China’s Air Is Bad ...

By DAMIEN MA and WILLIAM ADAMS

NYT November 7, 2013

China’s Dirty Air

Project Syndicate NOV 7, 2013

China’s Plenum Test

MINXIN PEI

Project Syndicate NOV 7, 2013

China’s Untapped Growth Potential

ZHANG JUN


l  インドの火星探査

FT November 4, 2013

India goes to Mars

もし成功すれば,インドは火星に到達した4番目の国になる(アメリカ,ロシア,EUに続く).

Project Syndicate 06 November 2013

Arming the Elephant

Brahma Chellaney

インドとアメリカの関係は,単に武器を買うだけでなく,長期的に見て持続的な,武器の共同生産体制に及ぶのか? アメリカがインドに攻撃的な武器を売るのは,中国に対する抑止力を高めるためではないか?

NYT November 7, 2013

Child Mortality in India


l  プエルトリコ

FT November 4, 2013

America’s Greece

ワシントンの政治的なデフォルトではなく,財政統合を欠き,経済力や政治システムに劣る通貨圏の一部にはデフォルトの懸念がある.ヨーロッパにギリシャがあるように,アメリカにはプエルトリコがある.プエルトリコの財政は経済状態と一致しない.


Project Syndicate 04 November 2013

Why Wealth Taxes Are Not Enough

Kenneth Rogoff

金融危機後の財政状態を健全化するのに,一時的な資産課税は有効か? そのアイデアは魅力的だが,政治的紛糾と資産の流出をもたらし,実際的な解決策ではない.

BLOOMBERG Nov 5, 2013

Of Debt, Growth, Interest Rates and History

By Carmen M. Reinhart


l  核軍拡から共存へ

Project Syndicate 04 November 2013

Latin America’s Lessons for Nuclear Diplomacy

Juan Gabriel Tokatlian

イランとP5+1(国連安保理常任理事国+ドイツ)との交渉には,これまでにない強い期待がある.西側経済の不透明性や中東・北アフリカの政情不安など,困難な状況はあるが,交渉が進むためにも,非核化交渉が成功した「最善のケース」を双方が学ぶべきである.それは「革新的思考」で非核化を実現したブラジルとアルゼンチンだ.

多年にわたって,両国は核兵器を求めていた.国内には核保有を支持する勢力があった.その核武装が近づくにつれて,国際社会は神経質になっていた.軍事的に見て,状況はエスカレートしそうであった.しかし,戦略的な指導力と国内政治システム,経済的相互依存は,核軍拡競争を原子力のパートナーシップに転換させた.

その経験から学ぶべき5つの教訓がある.

1.マキシマリスト,最大限の要求は失敗するしかない.協力は常に可能だ.

2.部分的な,漸進的手法が,信頼と互恵を高める.包括的,恒久的戦略ではない.

3.リアリズムが不可欠だ.理想主義は役に立たない.

4.国際機関・ルールが決定的に重要だ.

5.すべてのアクターの戦略的目標を組み込むこと.

Project Syndicate 04 November 2013

Iran’s Nuclear Quandary

Bennett Ramberg


l  主権廃止のドイツ・モデル

Project Syndicate 04 November 2013

Falling for Germany

Harold James

ドイツはヨーロッパ諸国,さらには中国にも賞賛されている.それは優れた経済状態や,国内に極右の反ヨーロッパ勢力がいないことによるだろう.しかしさらに,国家主義的な統一と発展を経て,主権の数を一貫して歴史的に減らしてきた姿勢が,これからのEU政治統合を指導する地位にふさわしいからだ.

ルターによる宗教改革以来,大まかに言って100年ごとに,ドイツの政治単位は10分の1に減少した.1648年,ウェストファリア条約は神聖ローマ帝国の中にあった独立した政治体の数を3000-4000から300-400に縮小した.ナポレオン戦争の後,ドイツ連邦に残った領邦の数は39に減った.

その後の戦争と平和で,小ドイツ主義のドイツ帝国が成立し,ヨーロッパのドイツ語圏は,オーストリア・ハンガリー(もしくは,ハプスブルク帝国)とともに,スイス連邦の3つになった.いずれも伝統的な国民国家ではない.1949年には東西ドイツに分割されて4つになったが,その傾向は明らかだ.

ドイツ政府の指導する,強力かつ連邦的なヨーロッパには,100年後,ドイツを含めて,国民国家はすべて消滅する.


l  周辺の再編

NYT November 4, 2013

U.S. Checked in Central Asia

By JOSHUA KUCERA

ソ連崩壊後,アメリカは中央アジアを戦略の中心に据えた.しかしその後,ロシアと中国が中央アジアでアメリカに代わり,西側は黒海沿岸を境界とした.

Global Times | 2013-11-4

Central Asia in uncertain transition

By Global Times

Project Syndicate 05 November 2013

Is China a Friend of Africa?

Simplice Asongu

中国の投資はアフリカ経済に貢献しているか? 新植民地主義という批判もあれば,新パートナーシップと呼ぶ者もある.どちらが正しいのか?

1.資源の多い,弱い政府の国にばかり投資する.2.地元の労働者より,中国からの労働者ばかり雇用する.3.賃金が非常に安い.4.環境規制や社会的規制を無視している.5.技術やスキルを移転しない.

こうした批判には根拠がない.確かに,中国企業の優位は低賃金にあるが,欧米企業は少数の幹部しか雇用しないから高賃金である.経済特区に集まるため,地元企業との関係が築けない.受入国の長期的な戦略が,中国(など,諸国)からの投資と発展につなぐ.

Project Syndicate 05 November 2013

Asia’s Middle Eastern Shadow

Shlomo Ben-Ami

FT November 7, 2013

America will not easily escape the Mideast fires

By Philip Stephens

Project Syndicate NOV 7, 2013

The Kennedy Temptation

IAN BURUMA


l  ユーロ圏の日本化と再国民化

FT November 5, 2013

Prompt action required on eurozone deflation

By John Plender

ユーロ圏の「日本化」は避けられないのか?

失業,金利,為替レートなど,ユーロ圏は日本よりも債務や競争力の調整に不利な条件下にあるから,同じように均衡回復を延期することはできない.

FT November 5, 2013

What to do with the eurozone banking system?

Lorenzo Bini Smaghi

Project Syndicate 05 November 2013

Europe’s Non-Rhetorical Values

Leszek Balcerowicz

Project Syndicate 06 November 2013

The European Banking Disunion

Daniel Gros

金融危機以来,ユーロ圏の金融市場は再国民化renationalizationしてきた.対外赤字を資本流入で埋めていた時期には,再国民化は困難であった.今は均衡化しつつあり,再国民化も可能である.そして,高金利の重圧から解放される.あるいは,完全な銀行同盟があれば,周辺部でも低金利が実現する.金融市場は国民化するか,統合化しなければならない.しかし,現実には,その中間である.魚でも鳥でもない.

銀行を守る財政基盤が国民的なままであれば,平等な競争条件は実現しない.このまま金融市場の統合化をすればそれは「植民地化」になる.すなわち,財政的な強い諸国の銀行が低コストで資本を調達でき,財政的に弱い諸国の銀行を買収する.

FT November 7, 2013

A weak euro is Europe’s best means of beating deflation

By Martin Feldstein

ドイツが財政再建を望むなら,それによる不況を回避するため,ECBの金融緩和でユーロ安を容認することだ.

NYT November 7, 2013

European Central Bank Makes a Surprise Rate Cut

By JACK EWING


l  コンゴ内戦の終結

NYT November 5, 2013

Congolese Rebel Group Says It Is Laying Down Arms

By NICHOLAS KULISH

NYT November 5, 2013

After Outside Pressure, Rebels in Congo Lay Down Their Arms

By NICHOLAS KULISH


l  投資協定

Project Syndicate 05 November 2013

South Africa Breaks Out

Joseph E. Stiglitz

南アフリカが投資協定を更新しなかったことは正しい.アメリカは,企業の所有権を確立すると主張している.しかし,憲法が国民に保障する以上の所有権を外国企業に約束する理由はない.実際は,多国籍企業が民主的な政府の行動する権利を奪うものだ.


FP November 5, 2013

The Missing Option for Afghanistan: A Response to Steve Biddle

Posted By Paul Miller


l  アメリカ政治の正常化

theguardian.com, Wednesday 6 November 2013

2013 elections show Latinos and young voters can't be pinned down

Harry J Enten

FT November 6, 2013

New York elects first Democratic mayor in 24 years

By Shannon Bond in New York

FT November 6, 2013

Moderates make a comeback in US

ヴァージニア州知事選挙でティーパーティーの候補,Ken Cuccinelliが敗北した.Alabama, Detroit, New York,などでも,プラグマティズムが回復している.政府は開放的で,成果を挙げなければならない.ビジネス界も共和党を正常化するだろう.

Bill de BlasioNew Yorkで勝利したのは,進歩的な傾向を示すより,Michael Bloomberg3期に及ぶ市長時代が終わったことへの特別なケースである.それは財政破たんしたシカゴで白人の市長が当選したことと同じだ.


l  イスラエル

FT November 6, 2013

Israel set to become major gas exporter

By John Reed in Tel Aviv

イスラエルが南部の海岸沖でTamar海底天然ガスを開発する.この35億ドルのプロジェクトは,イスラエル投資家グループとアメリカの資源開発企業(Delek and Noble)によるイスラエル初の試みだ.西部のLeviathan fieldは未開発だが,最大規模の海底天然ガス開発である.

もしイスラエル国内の法廷論争が解決され,トルコやエジプトへの輸出が実現すれば,中東のエネルギー基地として,地政学や経済関係の基本的ルールを変えるだろう.イスラエル経済にも,20年間で600億ドルをもたらす.採掘量や課税によって政府系ファンドを通じた管理と投資を行い,「オランダ病」を回避するように計画している.

FT November 6, 2013

The Palestinian economy’s hard road out of isolation

By John Reed

FP NOVEMBER 7, 2013

Is Israel Doomed?

BY AARON DAVID MILLER

イスラエルは,短命であった十字軍の国家と同様に,その力を失うのか? あるいは,全ての難問に答えを見いだせないとしても,国際システムに属するダイナミックな国家として生き残るのか? 2048年の建国100周年に向けて,その対立するシナリオを検討する.


l  ギリシャの政治劇

FT November 6, 2013

Watch Greece – it may be the next Weimar Germany

By AristidesHatzis


Project Syndicate 06 November 2013

Stop Subsidizing Climate Change

Kevin Watkins


l  現代の奴隷制

NYT November 6, 2013

Slavery Isn’t a Thing of the Past

By NICHOLAS D. KRISTOF

先月,Walk Free Foundation が発行したGlobal Slavery Indexによれば,アメリカには約6万人の奴隷がいる.現代の奴隷は19世紀と違って,鎖でつながれ,市場で売買されてはいない.しかし,いたるところで見られる.彼らは国際人身売買で非合法にアメリカへ来る.暴力によって無報酬で労働を強いられ,あるいは,売春によって得た金はすべて斡旋業主に奪われる.

このインデックスによれば,世界には3000万人の奴隷がおり,インドが最も多い.モーリタニアなど,多くの国で,子供たちは奴隷として生まれる.ニューオーリンズで先月会ったClemmie Greenleeは,12歳のときから,売春を強いられた.多いときは1日に50人の相手をして,割り当てを達成しないなどの理由で,月に10回は殴打された.


l  タクシン共和国

BLOOMBERG Nov 7, 2013

Thailand’s Big Brother Drama

By William Pesek

タイは一人の億万長者に政治を支配されている.空港には「ようこそタイへ」とあるが,ここは「タクシン共和国」である.

タイに限らず,アジアにポピュリスト政治家があふれている.彼らにとって具体的な改革よりも,カリスマと才覚による人気が何よりだ.安倍晋三,習近平,ベニグノ・アキノ,ラフル・ガンディー.

20012月から20069月まで,タクシンはタイの民主主義を苦しめ,ロシアのオリガークでも恥じるほど,彼の家族と仲間に富が集まるようにした.ベルルスコーニのように,ビジネスの成功を政治に利用し,首相となって,地方を彼の政治基盤に変える「タクシノミクス」を実行した.経済のファンダメンタルズや技術革新を改善することなく,融資や補助金を注いだ.

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The Economist October 26th 2013

South Korea’s education system: The great decompression

The future of Laos: A bleak landscape

Juvenile crime: Hard times

Illegal immigration: Over the top

Puerto Rico’s debt crisis: Puerto Pobre

(コメント) 特集記事としては,企業の新しい形態と,朝鮮半島の分析があります.韓国の「圧縮型」発展を支えたチェボルと教育システムが次の変化を妨げます.国際移民への反発が強まり,イギリスも移民に関する厳しい規制を盛り込んだ法律を定めました.プエルトリコは非課税の特権を失ったことでデフォルトの危機を迎えます.

いずれも正しいルールを見いだせない国際システムの難問ですが,それ以上に,ラオスと中国の記事に衝撃を受けます.ラオスはまるで「囲い込み」のように中国やベトナムからの投資を受け入れ,森林と土壌を失っています.そして中国では,都市への出稼ぎ労働者が子供たちを村に残し,あるいは,都市の戸籍がないために学校や医療のサービスを受けられず,若年層の犯罪が急増します.

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IPEの想像力 11/11/13

国家は競争し,次第にその外郭が壊れて,優れたガバナンスだけを残します.ドイツ人は100年単位で政治体の数を10分の1にした,という歴史に驚きます.

朝鮮半島では,今も国家が分断されたままです.

北に拉致されて,30年ぶりに帰ってくることができた漁師は,あまりにも大きく変わってしまったソウルの姿に「右も左もわからなかった」と言います.そして,何よりも,だれもが敵であるかのように激しく競争する社会に驚きます.

安全保障から,貿易・投資のシステムに話題を移しながらも,戦争によって征服されるよりも,貿易と投資を受け入れることの方が,ある意味で,社会は激しく変わるのだ,と説明したかったことを,受講生たちは理解してくれたでしょうか?

過度の受験競争を抑えようと,韓国政府は塾を法律で禁止しましたが,その法律が憲法違反の判決を受けて失敗した,と言います.10時以降の塾の営業を禁止しても,子供たちは自宅へ帰ってネットで勉強し続ける,というのが恐ろしいです.

日本でも,韓国でも,中国でも,子供を産む女性の数が減っています.韓国政府は子供を産まなかった女性の年金を減らす,という話も興味深いです.アメリカには若者に多くの目標があるけれど,韓国では公務員になるか,チェボルに就職するか,この2つしか目標がない.今では政府が率先して,ベンチャー企業を育て,映画や文化を育成し,輸出しています.

世界に現れた新しい頂点,ドバイやリオデジャネイロ,シンガポール,上海,に比べて,日本の都市は老朽化し,縮小していくでしょう.

明らかに,新興世界の諸都市とビジネス・エリートが急激に富を蓄積します.しかし,それに見合った政治システムは生まれているでしょうか? ベルルスコーニ,タクシン,ブルームバーグ,など,通信やメディアを支配する超富裕層の築く権力は様々な姿になります.他方,政治の世界では,貧富の格差,環境破壊,通貨・経済危機,攻撃的ナショナリズム,などを利用して,ポピュリストの政治家たちが互いに刺激し合います.

ミャンマーやラオス,カンボジアなど,開発の遅れた地域に流れ込む資本とビジネスマンは,「囲い込み」を再現します.土地を奪われて浮浪化する住民の姿は,まるで『ユートピア』です.すでに国土の30%を失った.それらをラオス政府は回復できないだろう,という政府高官は,将来に「1917年,レーニンの革命」を予想します.

急速な開発も,貧困と抑圧も,その底辺ではよく似た様相を呈します.伝染病や公衆衛生,治安問題,そして輸送や通信のインフラが最も激しく議論されています.こうした「都市問題」をめぐって,民主主義は具体的な制度や政策を革新してきたと思います.

底辺では,移民たちが非合法化され,国境を越えた人身売買や偽装結婚の形で,さまざまな奴隷制が広まっています.

アニメ作家たちは30年も前から,この現実を克明に描いています.それは第3次世界大戦後,「アキラ」で武装し,「攻殻機動隊」が都市の治安と政治システムを守り,「風の谷のナウシカ」が描くエコロジカル・タウンを全土に散在させた,2050年のJAPANです.

偶然このページを見た人は,3週間続けて,Reviewを全部読んでみてください.何か違った意味で,世界が変化していることを,あなたも意識しないでしょうか? まるで地面が鳴動し,地底から巨人たちが立ち上がってくるのが見えるような・・・ そんな気がしませんか?

100年後の世界に,国家はいくつ残っているのか?

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