前半から続く)


l  ユーロ圏の改革

VOX 7 December 2012

On the way to implementing a European Redemption Fund: Creating the right incentives for Eurozone countries’ structural reforms

Stefano Scalera, Riccardo Pacini

VOX 9 December 2012

Macroprudential supervision in banking union

Dirk Schoenmaker

FT December 10, 2012

Europe must stay the austerity course

By Olli Rehn

FT December 10, 2012

German middle class must save the euro

By Nicolas Berggruen and Nathan Gardels

ユーロを救うためにドイツは貯蓄を使いたくない.誰でも他人の付けは支払わない.しかし,それは短期的な見方である.もしユーロ圏を失えば,ドイツはもっと多く支払うことになる.

ドイツの中産階級の繁栄は,労働市場改革と構造改革を先行して実施したことによるものだ.これはアメリカや日本が経験してきた脱工業化に対抗して行われた.今日,ドイツの製造業は経済の25%を占めるが,アメリカは12%,日本は20%である.

しかし,ドイツ人は,ユーロを失ったときに工業はどうなるか,と真剣に議論したことが無い.その時ドイツマルクは急激に増価し,ドイツの競争力は失われる.ドイツ企業はこの機会を利用し,生産コストの安い他国に工場を移転し,脱工業化が一気に進むだろう.

グローバル化した世界でも,ドイツが繁栄を分かち合う公平な社会であるためには,安定したユーロ圏が欠かせないのだ.それは,銀行同盟から始まって,財政統合,政治統合を求める.そして,ドイツのユーロ圏内経常黒字が減るときだけ,財政移転は減少する.

最近のメルケルの行動は,この点を理解したからであるだろう.メルケルがドイツの中産階級にこれを説得できるか,次の選挙で問われることになる.

SPIEGEL ONLINE 12/10/2012

De Facto Loss of Sovereignty

Cyprus Makes Big Concessions for Bailout

By Christian Reiermann and Markus Dettmer

WSJ December 10, 2012

A New Industrial Policy for Europe

By JOSÉ MANUEL SORIA, ÁLVARO SANTOS PEREIRA, CORRADO PASSERA, ARNAUD MONTEBOURG AND PHILIPP RÖSLER

NYT DECEMBER 11, 2012

3 Unorthodox Ways to Solve Europe’s Debt Crisis

By PETER EAVIS

ヨーロッパの指導者たちは大胆な改革を避けている.すなわち,ユーロ圏を離脱させない,破たんさせない,厳格な融資条件を付ける.

しかし,経済は悪化し,相互の不信感が強まっている.ラディカルな行動が必要な時期が来ている.それは,1.危機の根本にある政府債務を処理する.債務削減は困難であるから,その返済期間を延長する.2.ECBが債務を,新しく設立した他の機関によって吸収する.3.ユーロ圏を分割する.赤字諸国からなる南欧ユーロは,ドイツ中心の北欧ユーロに対して切り下げる.ただし,切り下げは一時的であって,構造改革を進めたのちに再統一する.

FT December 12, 2012

Cure for Europe lies at the state level

By LeszekBalcerowicz

銀行同盟でユーロ危機を解決できる,というのは間違いだ.将来の危機は,ヨーロッパ規模のガバナンスより,各国の国内政策が失敗を避けることにかかっている.特にユーロ圏の大国は,その健全な経済政策を維持しなければならない.大国には市場の規律が十分に働かず,他の小国に与える影響も強い.

ヨーロッパ規模のマクロ政策を改善する基準とサーベイランスは重要である.しかし,危機の前にも多くの基準があった.しかし,その効果には限界があった.各国の政治文化を改善することが重要である.アメリカでも,連邦政府は各州の政策を変更するよう求めない.

銀行同盟は,危機を防ぐ真実の一部を含む.しかし,危機には二種類ある.一つは,ギリシャのように,財政の悪化で起きる.もう一つは,アイルランドのような,民間市場の信用バブルだ.どちらも銀行同盟があれば解決できた,という問題ではない.

WSJ December 12, 2012

Building a Sturdier Euro

By WOLFGANG SCHÄUBLE

危機を回避するためではなく,ユーロ圏の間違った制度設計を正し,成長の基盤とするような改革を始めなければならない.ドイツはその展望を持っている.

通貨同盟を危機に対して強くし,経済・政治統合を深化させる.既存の制度や新制度を用いて正当性を高め,条約の改正も目指す.懐疑派が言うような,これは時間稼ぎではない.

ユーロ圏の設計ミスは,参加する最も弱い国にも同じ金利を許すことで,安価な資本が流入し,仮想的な富が投機を刺激した.政府は競争力を損なうことも無視して,この機会に拡大策を採った.消費者も債務を増大させた.しかし,景気が悪化すると,実効性のない安定協定は財政の健全化に失敗した.こうした偏ったインセンティブを正すべきだ.

危機はチャンスである.ヨーロッパは連隊を重視し,制度を改革することで新しい成長の機会にしなければならない.世界最高の福祉システムを守るのは,公的債務ではなく,そのような成長なのである.

SPIEGEL ONLINE 12/12/2012

French-German Compromise

Chances Improve for EU Deal on Bank Supervision

SPIEGEL ONLINE 12/13/2012

Hollande's World

French in Denial as Crisis Deepens

By Romain Leick

Project Syndicate 13 December 2012

The Euroless Union?

Barry Eichengreen

ユーロ危機は少し鎮まったように見える.しかし,メルケルは選挙だ.それに関わって,あるいは,その後も,危機は必ず戻ってくる.

南欧は競争力を回復するほど改革していない.北欧は十分な需要をもたらさない.債務の負担は重すぎるし,ヨーロッパ経済はまだ成長できない.大陸中で政治の亀裂は深まっている.ユーロ圏崩壊の亡霊は解消できていない.

崩壊の結果は深刻だろう.経済混乱は近隣諸国の憤慨を招き,EU条約を無視して,自国を守る資本規制や銀行システムの囲い込みを図る.資本逃避を恐れて国境は封鎖され,各国は自国のみで生き残りを図る.

EUは生き残れるか? もし政治機関を意味するなら,EUは生き残る.その制度は半世紀を経て,容易に消滅しないものになった.他方,単一市場はどうか? ユーロ懐疑派は生き残るというが,ユーロ支持派は,単一市場もユーロとともに消滅する,と主張する.

EUの法体系や「統合の深化」という目標も,閉鎖的な主権に戻る動きとの緊張関係がどうなるのか,わからない.指導者と国民が決めるだろう.


l  ヨーロッパとアジア

Project Syndicate 07 December 2012

Tolerance or War

David H. Shinn

少数派への差別や迫害はなくならない.歴史上,何度も,大規模な虐殺や報復が起きている.社会や政治がこうした非寛容さを許す態度は,どのような土地や政治制度も含めて,いまだに強く残っている.民主主義や法の支配は,こうした非寛容さを克服する試みであるが,エジプトやシリアが示すように,その答えにはならないようだ.

WP December 9, 2012

From the Ruins of Empire: The Intellectuals Who Remade Asia’ by Pankaj Mishra

帝国主義へのラブレターであるとして,Niall Ferguson’s “Civilization: The West and the Rest”に対する激しい批判的批評をPankaj Mishraが発表した.それはthe London Review of Booksを知的な戦場に変えた.

BLOOMBERG Dec 10, 2012

Why Asia’s Insurgencies Are Europe’s Shame

By Pankaj Mishra

今年の最も重要な出来事は,フィリピン政府とモロ・イスラム解放戦線との和平合意ができたことである.

ヨーロッパの帝国主義者たちが,アジアの社会に分割統治を導入して,あるエスニック集団を優遇し,人為的な境界線を引き,社会的・宗教的な差異を政治対立に変え,他の集団を弾圧した.多くの教育ある現地人は,宗教的・エスニック的なアイデンティティを帝国主義支配に反対する基盤とした.

こうして,自治の原則が,相対的に見て同質的なヨーロッパから多文化的なアジアに輸出された.それは,急いでねつ造された民族社会を増やし,パッチワークの諸集団,ばらばらのアイデンティティが重なった,統治できない国民国家となった.

その後,植民地後の支配者たちはその遺産,すなわち,中央集権化された国家・統治機構,広大かつ資源豊富な領土を保持しようとして,各地の流血を招いた.アジアの国民国家では,宗教やエスニックの少数派を制圧できなかった.東パキスタンや東チモールなど,分離独立派が勝利するケースでも,その犠牲は非常に大きかった.また領土の統一を守るため,政府はしばしば軍部に権力を委ねた.

フィリピンの和平合意は,あまりにも流血に穢れたヨーロッパの国民国家とは異なる関係を示している.それは,多民族のハプスブルク帝国で育ったユダヤ人のJoseph Rothが,「すべての人間を国籍や人種に帰属させる」近代的なナショナリズムを嫌ったのと同じである.マイノリティーを第三市民とし,偏見を持つことを国民国家が尊重する.

20世紀ヨーロッパの歴史的犯罪は,その間違いを証明した.


NYT December 8, 2012

A Family, for a Few Days a Year

By RACHEL L. SWARNS

Project Syndicate 10 December 2012

Immigration and American Power

Joseph S. Nye

移民はアメリカの経済成長を維持し,人口規模による順位を維持する.それは移民を受け入れる社会だからであり,日本が同じように移民を受け入れることは難しい.移民受け入れはアメリカのソフトパワーであり,グローバリゼーションの時代に,アメリカは中国と人口規模で競うことはできないが,移民はアメリカの視野や知識を広げ,さまざまな文化を吸収する.その意味でアメリカは,人口に勝る中国を超えている.


NYT December 8, 2012

A Switch at Midlife, to Make a Difference

By MARCI ALBOHER


l  北朝鮮のミサイル発射

WSJ December 10, 2012

A Korean Missile and a Policy Misfire

By JACK DAVID

guardian.co.uk, Wednesday 12 December 2012

North Korea's rocket launch has fired up neighbouring elections

Simon Tisdall

北朝鮮のミサイル発射は,韓国と日本で進む選挙過程において,軍事強硬派の候補者に対する支援になっただろう.

FT December 12, 2012

Pyongyang’s threat

NYT December 12, 2012

North Koreans Launch Rocket in Act of Defiance

By CHOE SANG-HUN and DAVID E. SANGER

BLOOMBERG Dec 12, 2012

Take a Deep Breath Over North Korea's Rocket Launch

By William Pesek

北朝鮮のミサイル技術には,二つの反応が考えられる.John Boltonのように,激しく非難し,体制の崩壊に備えるか,あるいは,深呼吸して,冷静に影響を分析するか.このミサイル発射成功は,体制に転換への時間を与えた.キム・ジョンウンは,スイスで教育を受けた,脱冷戦期の新しいタイプの指導者である.国内権力を確立した後,彼は新しい方針で内外の局面における転換を目指すだろう.この発射実験を中国は歓迎しなかったが,実施した.

GPSと厳格な制裁の時代に,武器輸出や脅迫で国を維持することは困難だ.経済援助と開放経済,そして世界に対する親和的な理解を持つ国際路線によって,国家を前進させる.

WSJ December 12, 2012

Downrange From North Korea

Global Times | 2012-12-12

Pyongyang launch upsets security framework

By Ding Gang


FT December 11, 2012

West may regret lack of support for Syrian rebels

Michael Ignatieff


l  資本規制のルール

VOX 11 December 2012

The multilateral approach to capital controls

Olivier Blanchard, Jonathan D Ostry

IMFが資本規制を認める研究を発表した.資本移動による利益は,リスクに対する十分な注意を要する,と認めた内容だ.そして,突然の大規模な資本移動に対して,マクロ経済や金融の安定性を守るために,資本規制することが必要なケースを特定している.

その際,多角的な思考が不可欠である.ケインズとホワイトの論争が再現されている.資本移動は,その両端で規制が勝手に行われるなら止まってしまう,協力が必要だ,と彼らは考えた.

資本規制の有益な,4つのケースが重要だ.1.対外不均衡の調整を緩和する.2.交易条件の変化を緩和する.3.資源輸出部門の生産を促す.4.金融部門の安定性を維持する.

しかし,資本規制は他国においてコストを生じる.ある国が輸出を伸ばすために採用した間違った為替レートや補助金を維持するだけかもしれない.IMFによる国際サーベイランスなどが他国への影響を監視し,国際協調を促すことだ.

Project Syndicate 13 December 2012

Global Capital Rules

Dani Rodrik

IMFの姿勢は,今も資本自由化の原則を支持している.ただ,わずかなケースを,厳しい条件で認めただけだ.資本規制は「最後の手段」であり,各国の金融システムが改革されるなら,国際的な金融取引の自由化が進む,と考える.しかし,この主張は2つの点で間違っている.

1.政策決定を微調整するルールは機能しない.・・・それはアメリカの銃規制が失敗していることと似ている.銃の売買や保有を自由にしたまま,個人の行動を細かく識別.管理できる,という.銃ではなく,それを犯罪に利用する個人が悪い,と.しかし,公的機関の能力は限られており,十それ自体を直接に管理する社会のほうが結果は優れている.金融市場でも,リスクの自己管理を金融機関に求め,基準や監視を唱えることは失敗だった.その社会的コストは大きすぎる.

2.各国の金融システムは収斂しない.・・・各国の金融規制は,先進諸国でも大きく異なっている.金融技術の革新は,金融規制とともに,国によって大きく異なる.


l  中央銀行の模索

FT December 12, 2012

New broom clears way for Old Lady

NYT December 12, 2012

Fed to Hold Rates Down Until Jobless Rate Is Below 6.5%

By BINYAMIN APPELBAUM

FT December 13, 2012

FT Person of the Year: Mario Draghi

By Lionel Barber and Michael Steen

FT December 13, 2012

Banks should rediscover the art of caution

By JamesGrant

FT December 13, 2012

Central banks should see beyond inflation

By PaulMarshall

将軍たちと同じように,中央銀行家も先の戦争を戦っている.彼らが経歴を重ねる上で,インフレとの戦いが重要だった.ドイツのエコノミストたちは,1920年代のライヒスバンクの失敗が,ハイパーインフレーションとヒトラーの政権獲得をもたらした,と信じている.

しかし,今では,日本やアメリカが示すように,インフレを促すことが債務の重圧を緩和する政策として求められている.

FT December 13, 2012

Digital threat to Fed’s jobless target

By Gillian Tett

連銀が失業率を目標に金融政策を決定する(失業率が6.5%を下回るまで,金融緩和を続ける)と発表した.

しかし,同時に,アメリカの輸出入銀行が融資を急速に伸ばした(昨年25%)にもかかわらず,雇用は減少した(マイナス12%),というデータを示している.これは経済全体でも起きている.ジョブレス・リカバリーである.

その原因を,エコノミストは景気循環の初期である,と説明し,政治家は,中国のせいだ,という.どちらも輸出入銀行の示す現実と矛盾している.この傾向を説明するには,経済のデジタル化(digitisation)を見なければならない.Brian Arthurによれば,それは生産性上昇の60-80%を説明する.

成長はコンピューターとバーコードが結ぶネットワークによって起きており,人間を節約する.楽観論者は,19世紀に農業の技術革新が進んだとき,労働者たちが都市に新しい雇用を見出した,という.今回も同様に,生産性上昇は新しい成長分野と雇用をもたらすだろう.

もちろん,バーナンキの目標は容易に達成されないから,議会はバーコード利用を,中国のスウェットショップ(苦汗工場)を攻撃するのと同じ激しさで攻撃するだろう.

NYT DECEMBER 13, 2012

Volcker Spots a Problem

By SIMON JOHNSON


NYT DECEMBER 12, 2012

Examining the Support for Same-Sex Marriage

By FRANK BRUNI


NYT DECEMBER 12, 2012

The Human Cost of Cheap Clothing

パキスタンとバングラデシュの工場火災は,400人以上の犠牲者を出した.こうした工場は安全審査を受けていたが,自己を防げなかった.そしてアメリカのウォルマートやシアーズが大量に衣料品を彼らから輸入している.

・・・ボトム・アップとトップ・ダウンで対策を強化せよ.・・・製品ではなく,各国政府の無能さを攻撃するべきだ.・・・アメリカ企業も行動を起こせ.・・・労働者が守られるべきだ.・・・価格を引き上げて,安全性の改善に支出せよ.・・・政治.・・・金融市場.・・・国際的な集団行動.

NYT December 12, 2012

Tibet Is Burning

By XU ZHIYONG

WSJ December 13, 2012

Taiwan's Youth Fights for Democracy, Again

By J. MICHAEL COLE

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The Economist December 1st 2012

Survival of the biggest

Egypt: On the edge

Central banks’ power: The grey man’s burden

The bank of England’s new boss: Canada guy

Free exchange: Savers’ lament

(コメント) インターネットが結びつけた異業種からの急激な膨張,世界制覇に対して,消費者は楽しみ,監督者は警戒しています.そのあまりに急速な拡大と資金力に,他の産業や新興企業は飲み込まれてしまう? 彼らが独占力を破壊的な戦争に使うかもしれない? しかし,記事は楽観しています.

エジプトのモルシ大統領が取った措置は,それまでの期待を崩して,次の革命もしくは独裁体制を準備します.

他方,中央銀行と金融政策に関する考察が,新しい時代の重要な構成要素であることを示す記事があります.灰色の制服を着た中央銀行家たちが世界経済のスター選手に変わったことを歓迎するより,それは過剰な期待で,むしろ破滅する仕組みではないか?

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IPEの想像力 12/17/12

政治は言葉だ,と思います.言葉によって説得し,言葉によって本物の支持や信頼を得る.真情を汲み上げ,伝えきれない思いも受けて,国民の総意を生み出す.そのような想像力が政治には求められます.

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政治が築く総意は,現実の変化を正しく理解し,問題に合った制度や,和解・調整のシステムを実現するよう,支配的政治集団に求めます.

たとえば,日本の労働市場や政治システムがもっと効果的に機能するとき,日本はダイナミックな経済成長と社会制度改革のモデルとして,グローバルな競争に負けない,優れたガバナンスの見本となるでしょう.そのためには,過去ではなく未来を見て,自民党も民主党も,変革を唱え続ける時代を避けられないはずです.

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政権交代は重要です.選挙がいずれの党派の恒久的な優位も約束しない,という自覚,そして長期的な平和と繁栄の展望,それを実現する戦略の優劣を見極める,という国民の態度と発言,に注目します.今は,多数派が政治権力に姿を与える瞬間だからです.

小選挙区になったことの成果は,政権交代の可能性を高め,主要政党が具体的な改革とその成果を競い合う姿を示す点でした.民主党の大幅な後退は,この制度のメリットを示す結果でもあります.イギリスがそうであるように,与党と野党は交代し,それゆえ,多数を得た与党は政策を実現して任期を終わるまで安定した政権を維持するでしょう.また,野党は次の選挙をにらんで,有権者が認める政策と長期戦略を持つ政権構想に全力で取り組み,その革新性を描くために十分な時間をかけるのです.

勝利は敗北の始まりであり,敗北こそ日本を変えるための革新の第一歩です.

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安倍首相が外交で失敗しても,自民党は議席を失うわけではなく,首相を交代させても政権を維持するでしょう.

誰であれ,中国や韓国,ロシアとの新しい均衡状態に合意しなければなりません.安倍首相が,アメリカの安全保障に強く関与して国民の合意を得るなら,政治的な金融緩和と円安促進,株高の成長戦略が人々の意識を変え,大きく成功するかもしれません.その勢いで憲法改正に挑むでしょう.しかし,外交・安全保障における強硬策,政治的な関与を強める金融緩和と財政拡大策が,一定の合理性を持つとしても,長期的に持続する,経済構造や国際システムの改革につながる,とは思えません.

安倍氏の歴史観と憲法改正が意味する方向は,日本の中でも,アジアや欧米の諸国からも,もっとも疑念を招いているものです.都合の良い「識者」ではない,党派や国民をも超えた委員会と協力して,新しい政治共同体・社会契約を描く勇気を示してほしいです.

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原発,社会保障(年金・医療・介護),派遣労働,・・・という問題は,選挙だけに拠らず,別の枠組みを作って,国民に向けた,真剣な議論を進めることです.

根本的な変革は,きっと,教育のシステムにも至るでしょう.優れた高い能力を得る人々が,社会のために貢献するような,ふさわしい条件を(インターネットで)得て,さまざまな技術や芸術,人間を豊かにするすべての経験と社会的な創意工夫を広げます.そのために,もっと早くから労働に従事し,意欲さえあれば学習する機会を,教育は豊富に提供します.

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もちろん,これは想像です.安倍内閣が,これから具体的に構想し,その力を行使します.

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