IPEの果樹園2012
今週のReview
12/17-22
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中国の改革 ・・・エジプト革命 ・・・財政の崖 ・・・アメリカの安全保障 ・・・アジアの紛争 ・・・日本の選挙 ・・・ヨーロッパの差別 ・・・製造業の将来 ・・・ユーロ圏の改革 ・・・ヨーロッパとアジア ・・・北朝鮮のミサイル発射 ・・・資本規制のルール ・・・中央銀行の模索
[長いReview]
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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP:
Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian,
NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington
Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)
l 中国の改革
BLOOMBERG
Dec 5, 2012
China
and the U.S., Capitalism’s Odd Couple
By Yukon Huang
米中の経済モデル,もしくは,ワシントン・コンセンサスと北京コンセンサスとの対立は,市場型の資本主義(現実にはそうでもないが,皆が豊かになれる)と権威主義体制(機会も成果も平等に分かち合う)との対比で表される.
米中ともに,特定の分野で秀でた成果を示す.アメリカは技術革新,中国は数億人の生活を改善する集団的な解決策.しかし,前者は個人的な権利を優先して長期の必要が満たされず,後者は個人の権利を無視している.
両方のシステムは鋭く対立するように見えるが,将来に挑む課題は驚くほど共通している.すなわち,1.所得分配の不平等を緩和し,2.効果的な規制のシステムを確立し,3.財政・金融システムの改革,4.革新を助けることである.
米中ともに,システムのインサイダーはアウトサイダーよりも優先され,不平等な分配を強めている.グローバリゼーションは,必要な熟練の水準を高め,アメリカの中産階級労働者を苦しめ,中国の賃金格差を拡大した.また,財政赤字に紛糾するアメリカの政府は,革新を促す役割を弱めてしまった.中国は,労働者の移動と産業構造の高度化が求められている.
アメリカは金融市場の暴走や独占企業を抑え,中国は政府の行動を監視する,効果的な規制システムが必要である.中国の高速鉄道事故が示したように,国家部門でも規制と実施の主体は分離すべきである.
双方とも,GDPに占める公的部門の割合は増している.革新や不平等に関する公的部門の役割が増しているからだ.米中とも,見えざる手と政府との新しい協力関係は模索されているのであって,戦争するよりも,共通の課題をめぐる対話を通じて,より多くのものを得るだろう.
Project
Syndicate 13 December 2012
Regime
Change in China?
Minxin Pei
指導者の交代は,氷山に衝突するタイタニック号の上で演出された行事に過ぎない.共産党の支配は終わることがほぼ確実だ.
天安門事件も,ソ連崩壊も,中国共産党は乗り越えた.それでも,崩壊するのは驚くことではない.中国は多くの点で特異な性格を示すが,一党支配体制の崩壊のダイナミズムは明白で,避けられないからだ.
指導者の弱さに示される政治的頂点からの衰退は,体制が庇護された,リスクを避ける後継者を育てることにより避けられない.システムは動脈硬化を起こし,エリートによる略奪が広まっている.それが「腐敗」の問題だ.革命の第一世代は,たとえ間違ったものであっても,理想を掲げていた.強い感情的,イデオロギー的な動機から,革命を擁護し,腐敗は起きなかった.しかし,その後の世代は理想を軽視し,機会主義的に行動する.彼らにとって政治的な地位は投資であり,得られるものを最大化することが合理的である.後継者たちの動機は,より多くの略奪に向けた欲望と,時流から見捨てられる恐怖である.
そのダイナミズムは強力で,多くの兆候が示されているのに,共産党支配の終わりを予測する人が少ないことこそ問題である.それは,伝統的に,独裁体制は強固で,崩壊しない,と人々に信じ込ませるからだ.ソビエト連邦も,インドネシアのスハルトも,エジプトのムバラクも,崩壊する直前まで誰も崩壊することなど考えられなかった.革命家Leon Trotskyが述べたように,体制は崩壊してから,それが避けられないものであったことを示すのだ.
また,移行期の混乱や無秩序への恐怖が共産党支配の継続を正当化している.しかし,1974年以降の中国は,エリートが指導する改革であったことからもわかるように,共産党支配が終わってもエリートたちは混乱を避けられるだろう.中国共産党は主要政党の一つとなって生き残る.メキシコや台湾でそうであるように.
また,たとえ混乱したものであるとしても,それは共産党支配が続くよりもましである.インドネシアの民主主義やロシアのプーチンによる支配体制には重大な欠陥が多くあるけれど,独裁体制よりも大きな改善である.
中国のエリートと大衆が権威主義的な支配を拒むなら,新しい政治システムが始まる好条件を得るだろう.
l エジプト革命
NYT
December 6, 2012
Egypt’s
Agony
FT
December 7, 2012
Morsi’s
betrayal
WP December
10, 2012
Egypt’s
revolution is far from over
By Marwan Bishara
エジプトの革命は終わらない.
モルシMohamed Morsiは,反革命派から革命を守るために,また,新憲法の草案作成が行き詰まったのを打開するために,新しい,広範な権力を自らに与えた.そのことが政治的な大騒動を招いている.最高裁は,大統領が法の支配を超える,と非難した.大衆抗議活動は,大統領に決定の取り消しを求めている.
しかしエジプトは政治,社会,経済における無数の挑戦に直面しており,アラブ革命は始まったばかりである.カイロの交通渋滞と同じように,混沌,喧騒,渋滞が至る所で起きている.人々は自分がどこに着くのかもわからない.
革命は,また,国民の意識を変えた.第一に,長い年月にわたって政治的発言を抑圧されてきた人々が,「世論」として政治を動かしつつある.市民たちはその政治的な重要性を認識し,自分たちの希望を満たす代表を求めている.
第二に,エジプト国民は市民国家を求めている.軍事的な共和制や神政政治を明確に拒否した.イスラム主義者の多くもこれを受け入れている.法によってイスラム主義を強制することはできない.モルシやイスラム同胞団がそれを試みるなら,大衆的な抗議によって阻まれるだろう.
第三に,憲法による民主制が政府システムとして多数に受け入れられた.しかし,植民地体制崩壊後の戦争や主権,国家建設に直面したエジプトと同様に,民主制だけが国民の最優先課題ではない.
今や,反革命の騒乱が満ちている.治安部隊,軍の師団,官僚,旧オリガーキーが,旧秩序の復活を目指して集結しているのだ.反動的な勢力は,革命の混乱,大衆の不満,制度変革の低迷,などを利用して,政府による権威主義的開発の信用を失わせる.
革命は,イスラム主義を広め,原始的な激情を解放した.エジプト経済の惨状や国家制度の脆弱さは,それらに対応できていない.しかし,大衆は宗教的なスローガンを求めているのではない.イスラム主義者の運動も選択しなければならない.イスラム教の信仰を持つ民主派になるか,あるいは,民主化の利益を失うのか?
若者たちは,民主派,リベラル派,フェミニスト,など,彼らがタハリール広場を占拠し,アラブ世界の各地で,革命を成し遂げてきた.今,反革命が攻勢にある.若者たちは広場の占拠を早く解きすぎたのだ.
しかし,彼らは経験を積んだ.他の進歩派,世俗派,リベラル派と同盟を組んで,反革命との苦しい戦いにも勝利するだろう.
NYT December 11, 2012
Can God Save Egypt?
By THOMAS L. FRIEDMAN
地中海の上空を飛べば,何が見えるか? 北には,ヨーロッパの超国民国家システムに亀裂を生じている.南には,アラブの国民国家システムがひび割れている.これは不安を強める光景である.だからこそアメリカが,経済の再生と,グローバルな安定性を達成するために,行動しなければならない.エジプトとシリアの内紛がシステムを崩壊させるなら,混乱は一気に深まる.
神はエジプトの民を救わない.
モルシとムスリム同胞団は2011年のタハリール広場に遅れて参加した.彼らは民衆による革命を利用し,それを自分たちの利益に変えたのだ.しかし,若者たちが求めているのは自由であって,信仰ではない.
私がタハリール広場で見たものとは,60年間,檻に閉じ込められていた一匹にトラが解き放たれた姿であった.このトラについて,三つのことが言える.1.トラは二度と檻に戻らない.2.自分の利益のために,トラに乗ることはできない.3.トラは肉しか食わない.トラが求めているのは自由である.それ以外のニセ物は必ず破壊される.
l 財政の崖
NYT
December 6, 2012
The
Forgotten Millions
By PAUL KRUGMAN
一つはっきりさせておこう.アメリカは財政の危機に直面していない.アメリカが直面しているのは,雇用の危機である.
財政の崖があって,政府の赤字を解決しなければ経済は急速に悪化する,と多くの人が信じている.それは間違いだ.むしろ逆である.財政赤字が急速に減っていることが問題だ.それは,しかも,まったく政治的な理由で起きている.金融市場は政府に緊縮政策を求めていない.金利は低いまま(実質マイナス)である.財政赤字を削減しろ,と主張しているのは共和党員だ.その脅迫状が「財政の崖」である.
金融市場が,突如,政府に逆らうだろうか? アメリカがドルに困ることはない.印刷してもよいのだから.最悪でも,ドル価値の下落である.しかし,ドル安は景気回復にプラスである.
実際の来ているのは,雇用の危機である.この問題に対して,政治は何も組織的な改善策を示していない.長期失業者の水準は大恐慌以来,かつてない高さにある.490万人が6カ月以上職に就いていない.われわれは数百万人の悲劇を経験しているのだ.仕事を失い,貯蓄を失い,住宅を失い,夢を失う.個人も家族もバラバラになっていく.
NYT December
9, 2012
Robots
and Robber Barons
By PAUL KRUGMAN
経済状態は今も非常に悪いが,企業の利潤は記録的な高水準である.国民所得がますます不平等に分割されているからだ.
これはマルクス主義者の理論なのか? 情報経済の時代にふさわしくない? 少数の金融ビジネスなど,高利潤部門に必要な熟練・専門技術の教育ギャップが,分配の不平等をもたらす,という話を聞いたはずだ.しかし,それは時代遅れである.
むしろ,すねての労働者を犠牲にして資本の利潤は増えている.その理由は二つある.1.技術革新,すなわちロボット.2.独占力の強化,すなわち泥棒資産家(貴族)だ.
WSJ
December 9, 2012
Obama's
Historic Budget Opportunity
By ROBERT B. ZOELLICK
「財政の崖」をめぐって,再選後のオバマの戦術は,アメリカの債務を減らす成長戦略パッケージを犠牲にしつつある.それはアメリカのグローバルな評価を損なうだろう.アメリカの「統治不能」が注目される.
共和党はさまざまな理由で増税に反対しているが,一つは,支出削減が家計や企業のコスト削減にならないことだ.また,増税はいったん法案として通過すれば実施されるが,支出削減は多年度にわたって実施される.
大統領と共和党が妥協する際,オバマ大統領は税制の改革を通じて,社会保障費の財源を持続的な基礎に据える機会をとらえるべきだ.それは,世界中の諸国が政治システムの有効性を示す競争においても重要だ.
FT December
10, 2012
Fiscal
cliff standoff is a debate about the size of government
Glenn Hubbard
大きな政府は増税を意味する.それは政治哲学の問題だ.
WP December
12, 2012
Avoid the ‘cliff,’ restore the confidence
By Michael Bloomberg
FT December
13, 2012
Deficit-cutting
industry has poisoned US economic debate
Robert Reich
アメリカ経済の問題とは,良い職場が無い,成長が不十分なことである.財政に規律を取り戻さなければアメリカは雇用も成長も回復しない,と国民の多くが信じている.それは完全な間違いだ.
ヨーロッパが示すように,不況期に財政再建することは失敗する.労働者に職が無く,生産力に余剰があるなら,政府は支出を増やすべきであり,財政赤字は拡大しなければならない.それが無視されているのは,「赤字削減ビジネス」が成功したからだ.
1992年のロス・ペローによる第三党が成功し,Peter Peterson’s instituteなど,ウォール街の出資するシンクタンクが赤字削減を宣伝してきた.彼らはしばしばインフレ高進と高金利を警告するが,世界は未利用の生産力に満ちており,インフレの姿は見えない.社会保障費のコストも注目されるが,アメリカの医療保険システムは莫大な無駄を生じており,赤字削減の理由にするより,医療保険制度を改革する方が重要だ.
l アメリカの安全保障
NYT
December 6, 2012
At
Dawn We Sleep
By JOSEPH I. LIEBERMAN and SUSAN COLLINS
1941年12月7日は,真珠湾攻撃の日である.しかし当時の新聞は,日本が東南アジアを攻撃する,と伝えていた.そして,シンガポールのイギリス軍基地は強化され,アメリカの強力な空軍が控えているから,日本との戦争は起きないだろう,と考えた.
思い出すべきは,アメリカの敵が開戦の時期を決めるのであり,予想外な時期を選択する,ということだ.
それはインターネット空間における真珠湾攻撃a cyber-Pearl Harborであるかもしれない.
国防長官Leon E.
Panettaはそれを予想している.・・・彼らは列車を脱線させる.あるいは,より深刻なケースでは,致死的な化学物質を輸送する列車を転覆させる.彼らは主要都市の飲料水に毒を混ぜ,電力供給の結節部を破壊してアメリカの大部分を停電させる.複数の重要インフラを同時に攻撃する,というもっとも破壊的な予想では,物理的な攻撃が組み合わされる.攻撃は,軍事システムや通信システムを機能できなくする.・・・
FT December
10, 2012
America’s
drone war is out of control
By Gideon Rachman
グアンタナモ基地ほど議論されないが,オバマの無人偵察・攻撃機による対テロ戦略はさらに拡大するだろう.それはオバマのイメージが,ノーベル平和賞ももらうほど,支持されているからだ.しかし,その戦略が他の軍事大国の対テロ戦略にも取り入れられ,また,同盟国やジャーナリズムから批判されるのは確実だ.
それは戦争であって,CIAの諜報活動ではなく,軍が指揮するものである.その内容は議会やジャーナリズムに公開され,議論されるべきだ.それ以外のあり方を許せば,自由な社会も国際秩序も危険にさらされる.
FT December
10, 2012
Pax
Americana is ‘winding down’, says US report
By Geoff Dyer in Washington
FP DECEMBER 11, 2012
The Fierce Urgency of Now
BY DAVID ROTHKOPF
アメリカの世界戦略を構想する最新報告書が出た(the U.S. National Intelligence Council,
"Global Trends 2030").
その報告書は,内容が重要であるというのではなく,読者に時事ニュースのサイクルから抜け出すことを求める点で重要である.政治家は長期的な見方を採らない.ワシントンで長期が話題になるのは,嘘をついているか,政治家がいないか,長期戦略が無いからか,である.
しかし,歴史的な視点は政府の政策決定に役立たない.NICの研究は,軍事・経済的な地政学のいくつかの可能性を示したものすぎない.重要なのは,2013年に行う政策決定が,将来の世界を創るということだ.
FT December
13, 2012
State
versus citizen in tomorrow’s world
By Philip Stephens
将来の世界では,国家がますます攻撃的になり,かつ,ますます無能になる.新しく権力を得た市民たちは政府に多くのことを求めるだろう.その傾向は,ナショナリズムと国際紛争を増大させる.それが“Global Trends 2030: Alternative Worlds”の予測と,パックス・アメリカーナの消滅する過程に採るべき戦略の前提である.
二つのパワー・シフトが起きている.一つは,よく言われる,北から南,西から東へのシフトである.もう一つは,国家が集中していたパワーが失われる,国家から多国籍企業,資本移動,ネットワーク,個人へ,というシフトである.NICの報告はこの第二のシフトを明確にした.
繁栄が広まり,コストなしに情報が手に入ることは,多くの者にとって有益であるが,専制国家は不安定化する.そして,より分裂した,予測できない,変化する国際情勢に対して,国家は対応する能力を持たない.世界は多極化して,逆に多角化を抑える.なぜなら新しい力を得る国家や市民は要求を強め,競争して,互いを攻撃し,抑え込むから.政治家たちは国際機関を無視するだろう.
移民,オフショア化,金融不安定化,気候変動,武器の拡散,国際犯罪,テロ,などは個々の国家によっては処理できない.彼らはナショナリズムを高揚させ,他国を非難する.
l アジアの紛争
BLOOMBERG
Dec 6, 2012
Sandy
Reminds Tribeca What Life Is Like in Asia
By William Pesek
ハリケーン・サンディーはニューヨーク市民に混乱する未来に備えるべきことを認めさせた.アジアにはそのような余裕はない.すでに,気候変動,環境破壊,都市問題の混乱に住んでいるからだ.
アジア太平洋地域の経済が実現した成果は有名であるが,その住民が被っている災害は知られていない.1980年から2008年まで,世界の自然災害の犠牲者は,その40%がこの地域で生じた.温暖化はアジアで深刻な災害を多発させ,成長を損なうだろう.
特に,アジアでは急速な都市化と海面の上昇,都市計画の欠如,森林破壊,とが同時に起きている.災害に瀕した地域に住む人口は,1980年代の2400万人から1億5200万人に増えた.それに見合うインフラ投資が必要だ.
貧しい諸国は先進国の求めるような成長を抑制する温暖化ガスの規制には同意しない.しかし,70億人が地球に住むことは環境破壊を加速する.政府が協力して,アジア版マンハッタン・プロジェクトthe Asian Green Growth Projectを提唱するときだ.6兆6000億ドルの外貨準備を利用して,温暖化防止技術の研究開発を促進する.それはアジア版グリーン成長計画であり,化石燃料によって青空と将来世代の可能性を奪うことのない,もう一つの成長を発見する.
それは,唯一,大規模な,協力した,創造的な,資金提供によって可能になる.
FT December
9, 2012
Philippines
backs rearming of Japan
By David Pilling and Roel Landingin in
Manila and Jonathan Soble in Tokyo
FT December 12, 2012
Asia: Sparring partners
By Mure Dickie
中国の顧客は東芝やソニーではなく,フィリップのテレビを買う.オランダとの間には領土問題が無いからだ.
日本企業は9・15と呼ぶようになった.それは中国東部の港湾都市,Qingdaoのジャスコが3000人の暴徒によって襲撃され,略奪された日である.地元の警察は反日デモを止めようとしなかった.
日中関係は,経済の良好な相互依存にも関わらず,以前から政治的には険悪で,「政冷経熱」と言われていた.この事件は,政治と経済が切り離せないことを企業家たちに教えた.日本製品のボイコットは企業にとって大きな損失となっている.自動車から消費財まで,売り上げが大幅に減少した.
しかし,その影響はQingdaoの労働者や経営者にも深刻であった.中国経済が高度化するためにも,日本の技術や企業の協力は欠かせない.
民主党が政権を執ったとき,鳩山首相はアメリカの資本主義を批判し,中国を含む東アジア共同体への協力関係を唱えた.しかし,今度の選挙では民主党が敗北し,日本が右傾化するだろう.日中関係の懸念は解消されず,日本が不況に向かう中で,外交問題が経済関係の安定化に役立つことはない.
Project Syndicate 12 December 2012
East Asia’s Turning Point
Brahma Chellaney
東アジアは地政学的な極度の緊張状態を生じつつある.経済的な相互依存だけでは平和は維持できない.それはむしろ不安定化や脅迫の条件でもある.
特に,ナショナリズムの悪循環を生じる日中関係の衝突を緩和するためには,まず日韓の間で歴史的な問題を解決することが重要だろう.
FP
DECEMBER 12, 2012
Ripe
for Rivalry
BY VICTOR D. CHA
2013年はアジアの紛争が勃発する年になるのか? それは20年前の予測であった.1993年にも,アジアは,ナショナリズム,対立する大国,歴史的不和,軍備拡大,エネルギー争奪,を理由に,紛争ぼっ発が予測されていた.(“it is Asia that seems far more likely to be the cockpit of great
power conflict.”)
紛争は回避されてきたが,いよいよその対立は緊張の頂点に達する,と国際関係論の専門家たちは考える.しかも,日中間の対抗だけでなく,アメリカの同盟国である日韓でも対立している.各国は国内政治でも国際的な攻撃性を増し,日本は急速に保守化する.
オバマのアジア旋回も必要な転換であったが,それは米中関係を損なった.北朝鮮が核兵器技術を完成し,弾道ミサイルを生産できるなら,地域の軍備拡大競争に点火するだろう.
BLOOMBERG
Dec 13, 2012
As
China Rises, So Do Australia’s Anxieties
By Jeffrey Goldberg
l 日本の選挙
YaleGlobal,
7 December 2012
Obama
Visits China-Tilting Cambodia
Sebastian Strangio
NYT December
8, 2012
A
Fringe Politician Moves to Japan’s National Stage
By MARTIN FACKLER
日本がその「ハト派(絶対平和主義)」外交を終わらせるかどうか,石原の動きに対する評価で示されるだろう.
FT December
9, 2012
Abe’s
return
「尖閣ショック」が自民党の安倍総裁を実現し,日本政治の右傾化を促した.中国の台頭に直面して,日本は軍備を強化するべきだし,平和主義の憲法を改正して軍隊を保有することを認めるべきだ.
また,民主党の失策が自民党への支持を高めた.さらに,デフレを解決するラディカルな政策の提唱が安倍への支持を高めた.つまり,中国の外交における失敗と,日本政治システムの機能不全とが,安倍を次期首相に導いた.
FT December
10, 2012
Monetary
policy: Back under control
By John Plender
安倍は,尖閣諸島に関する中国の姿勢を攻撃し,同時に,日本銀行を攻撃する.
世界中で金融危機を招き,その処理においても効果的な政策を見いだせない中央銀行は,厳しく批判されている.その独立性を奪うべきだ,という政治家たちの主張は,日本で最初に試されるだろう.「無制限の金融緩和」という安倍の主張は,すでに円安を導いている.
他方,中央銀行は余りにも多くの責任と権限を得ている,という中央銀行家からの批判もある.銀行救済や日伝統的な金融政策は中央銀行の従来のインフレ抑制に対する信頼を損なう.独立性を奪うことも,政府を助けるために紙幣の印刷に向かう,という懸念を生じる.すなわち,安倍が日銀に求めている姿勢だ.
そのポピュリスト的な金融政策が成功するかどうか,は別問題だ.日本は巨額の国債を発行しており,その市場が不安定化する恐れがある.専門家たちは,日本の外貨準備と対外収支は,まだ危機を生じないほど強い,と信じている.むしろ,民間部門が回復しない中で,金融市場の脆弱性が高まる,という問題があるだろう.
債券市場が正常な利回りを示し,機能を回復しなければならない.それは金融政策にできないことだ.
BLOOMBERG Dec 10, 2012
Hedge Funds May Profit Most From Japan’s Election
By William Pesek
これまで,J. Kyle Bassのようなヘッジ・ファンドのマネージャーたちが日本売りを試みて失敗してきた.貿易赤字,円の急落,12兆ドルの国債市場における利回り急騰.しかし,日本はギリシャではない.豊富な国内貯蓄と外貨準備があった.
安倍が首相となって示す政策は,悲観派のシナリオを実現するかもしれない.投資家と格付け会社は不安を高めている.日銀総裁を首相のイエスマンに変え,旧来型の公共投資で景気回復を唱えている.しかし,安倍が2006年に小泉改革後の政権を得たときより,状態ははるかに悪い.
民主党は失策を重ねたが,自民党の発想は世界の変化を無視し,時代錯誤だ.財政・金融の拡大策は30年に及びつつある経済停滞の一時的な救済でしかない.道路工事や日銀に円増刷を命じるより,規制緩和,自由化,革新を行う一群の企業が必要だ.
日本企業が世界に輸出する優れた商品を開発できた時代は,政治が重要ではなかった.しかし,今は違う.急速に高齢化する人口を抱えているのに,政治家たちは新しいアイデアを示さなかった.そのわずかな試みも,彼らはすべて逆転させた.日本の有権者は世界で最も変化を嫌う人々だ.
FT December 11, 2012
Japan should scare the eurozone
Sebastian Mallaby
ユーロ圏は日本と同じ停滞の20年を経験する恐れがある.
「1990年代初めの東京と同じように」ユーロ圏でも政治や政策はほとんど変化せず,危機の経過を待ち続ける.構造改革は不十分で,債務や人口が長期に衰退をもたらすことを無視している.
確かに,日本が大したパニックも起こさずにゴジラ並みの債務を積み上げたことは,バランス・シート不況に対して必要な緩和策であった.しかし,もし民間の投資が回復すれば,その後の国際管理は非常に困難になる.また,日本のような社会的,政治的安定性を前提できないヨーロッパが,失業率の上昇に長く耐えることはないだろう.
2012-12-11 (China Daily)
Japan sets alarm bells ringing
By Wu Jinan
FT December 12, 2012
A missed opportunity for a thaw
By Mure Dickie
鳩山が民主党政権の日本外交を転換する機会に対して,中国政府の対応は歓迎しつつも慎重だった.特に,習近平を日本に招いて,日中関係を強化する期待は高まった.しかし,民主党の岡田外相は中国の核兵器削減姿勢を批判した.その後も,民主党政権は経験不足により,自民党時代の外交関係を変えることができないまま,沖縄の米軍基地移転問題で失敗し,尖閣諸島周辺の中国漁船拿捕で行き詰まった.
中国政府も,日本の転換を歓迎する姿勢を示すまで「長く待ち過ぎた」ことで,対日外交において失敗したのだ.
FT December
11, 2012
Japan’s
‘odd couple’ struggle to be heard
By Michiyo Nakamoto in Tokyo
FT December
12, 2012
Japan
dam debacle shows DPJ’s failings
By Mure Dickie in Tokyo
FT December
13, 2012
China
flies aircraft over disputed islands
By Mure Dickie in Tokyo
NYT December
13, 2012
Japan
Scrambles Jets in Island Dispute With China
By HIROKO TABUCHI
l ヨーロッパの差別
guardian.co.uk,
Friday 7 December 2012
Amsterdam's
'scum villages' show the illiberal new face of northern Europe
Owen Hatherley
故Tony Judtは,英米のネオリベラル資本主義に比べて,より平等で,都市・住宅の良好な,もう一つの社会モデルがある,と主張した.それは,1945年以後,資本と労働との間で結ばれた社会契約を基礎に,フランス,ドイツ,オランダ,スカンジナヴィア,で繁栄している.未来はここから始まるだろう,と.
しかし,表面的な印象とは違い,公営住宅は民営化され,都市再開発が進む.ドイツでも裕福な市民たちの生活は隔離され,貧困層や都市問題から守られている.アムステルダムの「ゴミ村"scum villages"」について掲げた住民の要求(コンテナに詰めて輸出せよ)を見れば,ヨーロッパのリベラルや社会民主主義の理想が,実際は,極右の移民・貧民層に対する攻撃と手を結んでいることを見る.
SPIEGEL
ONLINE 12/13/2012
The
Ugly German Rears Its Head
Why
Germany Can't Shed Its Troubling Past
An Essay by Dirk Kurbjuweit
2006年のドイツ・ワールド・カップは,まるでおとぎ話のように,過去の呪われたドイツをよみがえらせた.今年は,外国人排斥の論争が,それを再現している.ドイツがユーロ圏に対して緊縮策を要求する中で,その反発がナチスへの非難と重ねて起きる.ヨーロッパの不況は,ドイツ各地のナチス復活を示す現象と一緒に,アメリカで注目されている.
他の諸国でもナショナリストや右派の台頭は目立つが,ドイツへの関心は,かつてヒトラーがいたことで十分だ.
l 成長の限界
SPIEGEL
ONLINE 12/07/2012
Rising
Sea Levels and Less Rain
Better
Science to Hone Climate Change Warnings
By Olaf Stampf
SPIEGEL
ONLINE 12/07/2012
'Limits
to Growth' Author Dennis Meadows
'Humanity
Is Still on the Way to Destroying Itself'
1972年,環境派の教祖であるDennis Meadowsは『成長の限界』("The
Limits to Growth")を書いた.その後の経過は,彼の確信を変えなかった.成長は環境破壊によって終わる.それは地球の資源を無謀に開発した結果である.
経済システムと政策の変更を求める行動は,それを阻む政治・金融的なパワーに敗北するだろう.危機が起きることでしか転換はできない.たとえば,こう考えてみれば良い.
「私の隣人は裕福だった.彼女の電気代は所得の1%でしかなかった.その時ハリケーン・サンディーが来た.突然,彼女の住宅には電気がなくなった.生活は1%だけ悪化したのか? 違う.食べ物が腐った.電気がつかない.仕事もできなくなった.それは災厄であった.周りを見ればよい.あなたが座る椅子も,照明器具も,ガラス窓も,すべて同じ理由で失われる.われわれは安価なエネルギーによる生活を享受している.」
FP
DECEMBER 7, 2012
The
Climate Scofflaw
BY JAMES TRAUB
再選後,オバマは気候変動に対する行動を呼びかけた.ドーハの交渉は遅れ,いつものように,環境派の怒りはアメリカに向いている.
アメリカが京都議定書に参加しなかったことではなく,1.その行動が委縮し,2.発展途上諸国を説得していない,という点が問題である.すなわち,核拡散防止条約NPTと同じ問題があるのだ.
今や核兵器の拡散リスクは非国家主体にまで及び,ソ連が消滅して,アメリカの一方的な削減によるデモンストレーションが世界中の削減を刺激するしか方法が無い.しかし,上院はNPTを批准せず,たとえ批准しても中国やインドは従わない.特に,核兵器と違って,温暖化防止は各国の成長を抑制する.それは発展途上諸国には受け入れられないものである.
オバマに何ができるのか? アメリカが積極的な是正策を採用し,中国やインドを説得し,エネルギー効率の改善を助けることである.環境派はアメリカの「炭素税」とエネルギー転換,技術革新の刺激を支持する.しかし,オバマの方針とは,超党派的な,炭素価格を漸進的に引き上げ,雇用や成長につながる提案である.
すなわち,アメリカ国民が支持するような大規模な投資計画で,次世代のグリーン技術を実現するとともに,雇用や成長の刺激策にすることだろう.
FT
December 7, 2012
Britain
needs another grand vision tailored to what it can afford
By Janan Ganesh
The
Guardian, Friday 7 December 2012
Meet
the real William Beveridge
Geoffrey Wheatcroft
The
Observer, Sunday 9 December 2012
George
Osborne's savage attack on benefits is an affront to British decency
Will Hutton
l 製造業の将来
FP
DECEMBER 7, 2012
Who
Really Did Build That?
BY JAMES MANYIKA, JAANA REMES, LOUIS RASSEY
アップルがコンピューター生産の一部をアメリカに戻すと発表した.それは,必ずしもアメリカの製造業が復活することを意味しない.グローバルな生産システムの革命は続いている.
製造業とは何か? 正しく理解しなければ将来の戦略や政策は決められない.
1.製造業はダイナミックな過程を描いて,増大し,減少する.・・・GDPに示す製造業の割合は,20%から35%をピークに,逆U字型に変化し,現在,アメリカ12%,ドイツ18%,中国33%である.
2.製造業は,その割合が低下しても,生産性上昇,革新,貿易の焦点である.
3.製造業とサービス業は,バラバラにあるのではなく,ますます統合していく.
4.製造業は多様である.労働と資本とR&Dのどれに集約的か,で分類できるし,低コスト輸送システムや,高度技術者にどの程度依存しているか,でも分類される.・・・"global innovation for local markets," "global
technologies," "global innovation for local markets," "labor-intensive
tradeables."
5.製造業の将来の市場は発展途上諸国である.同時に,製品とデザイン,販売後のサービスも変化する.
6.旧式の発想は危険である.・・・1990年代から2000年の最初の10年間,多国籍企業は低コストの立地を探してきたが,そのような旧思考は危険になる.製造業はもっと微妙な,多くの要因を分析しなければならない.投入要素の変化に製造業が変化することを理解していなければ効果的な戦略や政策を決定できない.
(後半へ続く)