(前半から続く)
l ハリケーン・サンディ襲来
guardian.co.uk,
Friday 2 November 2012
Hurricane
Sandy: it hit the Caribbean too, you know
Garry Pierre-Pierre
メディアはニューヨークの被害を伝えることにばかり熱心だが,ハリケーンはハイチ,ジャマイカ,キューバなど,カリブ海諸国も襲った.彼らは世界で最も貧しい諸国であり,災害に備えることもできない人々だった.
世界の姿は正しく映らない.
FT November
2, 2012
US
economy vulnerable to more than hurricanes
Mohamed El-Erian
Project
Syndicate 04 November 2012
A
Democratic Hurricane
Ian Buruma
NYT
November 4, 2012
Sandy
Versus Katrina
By PAUL KRUGMAN
Project
Syndicate 08 November 2012
Underinvesting
in Resilience
Michael Spence
災害に対する緊急の対応能力は,カトリーナの教訓が生かされている.しかし,もう一つ重要なことは,インフラへの投資だ.現代の経済活動はインフラ環境の継続性に大きく依存している.
l 日本をめぐる考察
FT November
2, 2012
What
a waist!
新入りが減少して,最悪の労働供給不足を起こしている相撲制度の改革は急務であろう.
若者の関心を失わせる難解なルールは止めるべきだ.相撲部屋に住み込んで,夜明け前からけいこすることに特別な意味はない.こんなことを資金集めに利用すべきではないし,力士への報酬が少なすぎる.
財源を得るにはグローバルな観衆を求めることだ.アメフトよりも迅速に立ち会い,ビーチバレーよりも露出度は高い.モンゴルから横綱を得ているが,もっと人口の多い地域を開拓するべきだ.アメリカやヨーロッパに,人材募集のスタッフを派遣すればよい.
そして,もっとオープンに議論せよ.誰が横綱になるべきか.力士の行動を監視できる専門家が必要だ.
NYT November
2, 2012
Outrage
in Okinawa
NYT November
2, 2012
Chinese
Patrol Ships Pressuring Japan Over Islands
By MARTIN FACKLER
VOX 7
November 2012
Currency
intervention as global monetary easing: The case of Japan in 2003-04
Petra Gerlach-Kristen, Robert McCauley,
Kazuo Ueda
2012-11-08
(China Daily)
Tokyo
on the wrong path
By Cai Hong
l ユーロ圏内の対立
YaleGlobal,
2 November 2012
Europe,
Not Euro, May Break Apart
Joergen Oerstroem Moeller
VOX 2
November 2012
TARGET2
as a scapegoat for German errors
Paul De Grauwe, Yuemei Ji
ユーロ圏の解体は世界に金融危機を頻発させる源泉になる.
ユーロ圏EZのTARGET2に累積した不均衡は,経常収支不均衡と資本移動という,二つの経路で生じている.意見が分かれるのは,ドイツの8000億ユーロの債権が意味するリスクの性格について,である.
この経常収支黒字は,バブルの期間,TARGET2に債権として現れることが無かった.それは主にドイツの銀行が赤字諸国に融資していたからだ.自動車会社が自動車の購入者に融資を提供しているようなものである.経常収支不均衡は資本移動で相殺されていた.
それはリスクが無いかのような誤解を生んだ.この融資の結果としてドイツの経常黒字も累積していった.それは黒字国ドイツにとって大きなリスクであるが,そもそも銀行の融資にはリスクが含まれていたのだ.すなわち,このリスクは最近のTARGET2における債権急増がもたらしたものではない,ということだ.何よりECBによる無制限の債券購入こそがこの不均衡を拡大した,という主張は正しくない.不均衡の多くはそれ以前に形成されたものだから.
資本移動は,ドイツによる赤字国への融資と,ユーロ圏の解体を恐れた人々による資産の移転が起こしている.前者は,ユーロ圏解体で債務不履行になった諸国への債権を持つドイツの銀行を政府が救済なければならないから,ドイツのリスクである.それはTARGET2の有無とは関係ない.
しかし,後者はドイツ政府(国民)の損失につながるリスクを増やすものではない.なぜなら,解体する際には,ドイツ政府が居住者のユーロ預金だけを新通貨に転換すると選択すれば,このリスクを切り離せるからだ.
不均衡のリスクはドイツの銀行が融資を行うときに選択したものである.
Project
Syndicate 02 November 2012
More
Leadership for More Europe
Carlo Secchi
Project
Syndicate 05 November 2012
Getting
to Normal
Daniel Gros
Project
Syndicate 05 November 2012
Europe’s
Regional Revolts
Ana Palacio
カタロニアとスコットランドの分離独立運動は何を意味するのか?
ナショナリズムのさまざまな形をとるが,分離独立派の主張はよく似ている.自治を取り戻し,それ以外の条件は継承する,というわけだ.EUがその動きを刺激した面がある.しかし,政府の結んだ条約,特にEU加盟を,分離した後も分離国家の新政府が継承することはできない.
そこで,分離独立派は住民投票を強く主張するわけだが,国連が分離の条件として認める,地域住民の政治・経済・社会・文化の発展を既存の国家が妨げている,あるいは,例外的な外部条件の変化,は当てはまらない.
そのご都合主義は,EUの不況と財政危機によって強まった.銀行を救済する財源が,中央政府を介して,カタロニアから貧しい地域に移転される.これに憤慨した人々の意識を政治的に利用している.
スペインはEUに参加して,その恩恵も最も受けた国である.
もし独立すれば,カタロニアの経済は大きく悪化するだろう.スペイン,ユーロ,EUを失えば,そのGDPが20−25%も減少し,EU向け輸出の68%を失い,生産の50%はスペインの他の地域に移る,と推定される.
問題は,現在のEUが,住民たちに民主的な政策決定の意味を失わせたことだ.特に南欧諸国では,こうした不満が深刻である.ベルリンに彼らが訴えることはできないから,分離独立派が政治的支持を得やすい.
Project
Syndicate 06 November 2012
Europe’s
Plan A
Harold James
ユーロ圏の制度設計は最初から間違っていた,という新しい合意ができつつある.ベルリンの壁崩壊で生じた楽観論により,理解しないまま,欠陥のある共通通貨制度を作ってしまった.最初から失敗作だった,と.
しかし,この合意は真実から遠い.経済通貨同盟の報告書(ドロール報告)が提出されたのは1989年の4月であり,ベルリンの壁崩壊も,ドイツ再統一も,まだ全く予測できなかったことだ.さらに,通貨同盟の重要な諸問題は良く理解されており,その重大な障害に対する解決策も最初から提案に含まれていた.
ドロール報告を書いたのは,むしろ保守的な中央銀行総裁の委員会であり,そこにはイングランド銀行も含まれていた.主な議論は二つであった.一つは,資本市場がユーロ圏に及ぼす規律である.それに対応したスースの体系が必要だ,と述べている.もう一つは,より深刻な主張であり,ECBを最初からユーロ圏全体に及ぶ監督と規制の権限をもつ主体として提案したことだ.1990年のマーストリヒト条約においても,25条,プルーデンシャルの監視,としてこれが採用されている.
強い反対が起きたが,特にドイツ連銀は,物価の安定性を維持する彼らの金融政策目標を損なうと考えて,激しく抵抗した.また,このときに重要な役割を果たしたイングランド銀行のBrian Quinnは,その後,1991年のBCCI破綻処理を批判されて,信頼を失った.
ECBの金融監督に関する権限は,最初の条約に明記されていた.それに従うのが最短の解決策である.しかし,いまだに多くの政府はそれを主権侵害だと反対している.確かに,ECBが銀行監督を行えば,銀行整理の財政負担は各国政府に向かう.だからできない,という意見に,ドロールは同意しなかった.A.ハミルトンが19世紀に通貨統合を行ったとき,連邦政府の財政規模はGDPの3%程度でしかなかったからだ.
ヨーロッパ人はアメリカの歴史からもっと学ぶことがある.
guardian.co.uk,
Thursday 8 November 2012
Greece
is ripe for radical change
Costas Douzinas
FT November
8, 2012
Stretched
at the seams
By Tony Barber
BLOOMBERG
Nov 4, 2012
Indonesia’s
New Economic Model
By Pankaj Mishra
l 中国新指導部の挑戦
BLOOMBERG
Nov 5, 2012
China’s
‘$2.7 Billion Problem’ Says Everything
By William Pesek
FT November
6, 2012
China
discovers its inner tree-hugger
By Patti Waldmeir in Shanghai
WP
November 6, 2012
Where
will China’s new leaders take the country?
FP
NOVEMBER 7, 2012
Xi
Jinping's Challenge
BY KENNETH LIEBERTHAL
FP
NOVEMBER 7, 2012
Reform
or Perish
BY MICHAEL PETTIS
「今や,その最も困難な時期を迎えた.1970年代光はoと80年代前半の最初の改革,1990年代半ばの第二の改革で可能になった,驚異的な経済成長の30年を経て,中国の新しい指導部は最大の経済的・政治的な課題に挑戦する.全く異なった金融システム,実質的な転換を経た国有部門,その両者を受け入れることのできる政治改革をともなう,新しい成長モデルを創造しなければならない.」
もし彼らが調整に失敗すれば,中国は悪名高い「中所得の罠」に陥って,発展途上諸国の中でも,この罠を抜け出せた国はほとんどないのだ.中国のこれまでの成長はその成功を保証しないだろう.投資中心の高成長から高所得国の地位に達する転換を遂げたのは,歴史的に見て,非常に少ない.
投資の多くがますます無駄なインフラや生産設備に消耗され,政府の債務を膨張させていく.それを認めて,北京は投資を減らそうとしている.しかし,投資の減少は経済変動を大きくし,政治的な反対を引き起こす.政府は,投資を減らすとともに,それに代わる国民の消費を増やすこと,が重要だ.
中国人の高い貯蓄性向により,消費はなかなか増えないだろう,という議論は間違いだ.富の多くは,家計から奪われているのだ.そのため,高成長の間に富を蓄えた国有部門から,家計への所得再分配を積極的に指導しなければならない.それはセーフティー・ネットの拡大や,農民への土地所有権の付与など,さまざまな方法がある.
この改革は中国にとっても,世界にとっても望ましいが,国有部門と市場のゆがみから多くの富を得ている特権的な人々は政治的な抵抗を強めるだろう.アメリカやヨーロッパは,この改革を進める中国政府の困難さを理解し,経常収支や資本収支の不均衡拡大に対しても,ある程度,受容する必要がある.
FT November
8, 2012
China’s
ever greater expectations
By Jamil Anderlini in Beijing
共産党大会を迎えて,北京はあたかも戒厳令下にあるようだ.豪華な花で飾られた天安門広場では,警官や治安スタッフの数の方が,一般市民よりも多いだろう.
中国共産党の治安に関する熱狂は,卓球のボールや風船,伝書鳩,果物ナイフ,コンピューターの電池まで禁止するに及んだ.
もし今度の指導部が次の交代まで共産党の権力を維持すれば,ソ連が保持する権威主義的社会主義体制による権力掌握の持続期間,69年,という記録を破る.しかし,舞台の影では,それを疑う声が驚くほど多く聞こえる.
最も驚いたのは,北京でも最高にホットなナイトクラブで,引退した警察幹部と裕福な不動産開発業者が,共産党の没落を祝って乾杯するのを見たときだった.
フランス革命は,かつて,大衆の貧困と,「ケーキを食べたら」というエリートの傲慢によって起きた,と言われた.しかし本当は,貧困ではなく,高まる期待に応えられなかったから起きたのだ.
WSJ November
8, 2012
The
World Holds Its Breath for China
By REBIYA KADEER
WSJ
November 8, 2012
Inner-Party
Democracy Is No Democracy
By Minxin Pei
「党内民主主義」は,共産党内の権力闘争をオープンにし,不安定化をもたらすだろう.それは政治システムの民主化とは全く別の問題である.
l 米中関係と国際政治
SPIEGEL
ONLINE 11/05/2012
SPIEGEL
Interview with Madeleine Albright
クリントン政権で国務長官を務めたオルブライトMadeleine Albrightがインタビューに応えた.
アメリカが海外の問題に関わることを,アメリカ国民自身が疑うようになっていた.だから,クリントンと私は主張したのだ.アメリカは今も「(国際システムに)欠かせない国家"indispensable nation"」である,と考えている.
ヨーロッパの重要性は変わらない.中国について,中東について,など・・・シリアについては,何ができるかを考えるべきだ.
The
Guardian, Wednesday 7 November 2012
Xi
Jinping and Barack Obama: two leaders facing very different crises
Timothy Garton Ash
アメリカと中国の指導者が,ほとんど同時に交代することは,私たちの頭に疑問を生じる.どちらがより強力になるのか? どちらの政治・経済危機がより深刻であるか? 矛盾するようだが,その答えは,中国,そして,中国,である.
中国は,その規模だけでなく,後発性の利益や,起業家精神,帝国の国家制度,富と権力への渇望,などが有利に働いている.中国が相対的に強力になれば,アメリカは相対的に弱くなる.しかし,中国はより深刻なシステム危機を抱えており,それゆえ,不安定で,予測不可能な,攻撃的国家になりそうである.
アメリカにも多くの問題がある.しかし,重要なことは,それらを皆が知っていることだ.中国はそうではない.中国のメディアは問題を伝えない.しかも,問題の多くは,そのレーニン主義的資本主義,というシステムによって起きている.
貨幣と政治の結びつきはアメリカの改革を妨げているが,同じことは中国にも言える.中国でも,危機は改革や革命の触媒となるだろう.中国でも改革の方向は,概ね,理解されている.すなわち,法の支配,説明責任,社会保障,エコロジー的な持続可能性,である.
アジア太平洋では,米中の覇権争いがその前兆を示し始めている.我々は,自分たちの生存に関わる意味で,彼らの改革が成功することを強く願っている.不幸な,国内問題を解決できない国が,外国に対して攻撃的になる傾向があるからだ.
FP
NOVEMBER 7, 2012
Time
for a Reset on Human Rights
BY SUZANNE NOSSEL
Project
Syndicate 08 November 2012
Drone
Wars
Barbara Lochbihler
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The Economist October 27th 2012
The man who must change China
Capital out-flows: The flight of
renminbi
Prostitute: Old profession, new debate
Banyan: Embarrassed meritocrats
White working class voters: Fed up with
everyone
The air war: The ads take aim
The world’s biggest construction
companies: Great wall builders
Thai multinationals: Coming to a plate
near you
(コメント) 中国の新しい指導者が解決しなければならない問題群があります.それを避けるなら,人民元の資本流出が増大するでしょう.中国の女性たちの中でも,社会保障や教育機会がなく,買春で生きるしかない場合,これを合法化するように求める者が現れています.中国の価値を反映する民主主義の試みは,これまで歴史上に現れた様々な例から考えても欧米と大きく異ならず,教育と競争を重視した,現在よりも能力主義的なものに向かうでしょう.
アメリカの選挙について.工業地帯の労働者たちが両候補に失望した様子,両陣営による政治広告の洪水が紹介されています.
世界の非アメリカ大企業に,日本企業の姿は消えてしまい,中国の建設企業,タイの食品加工企業,が並びます.
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IPEの想像力 11/12/12
アメリカ大統領選挙が終わりました.世界の危機や戦争が,その結果を待っていたように,明日から激化するのではないか,と心配するより,今夜はオバマの再選を喜びたいです.
高い失業率にも関わらず,オバマが再選されたことは,ロムニーの主張に,多くの中産階級や貧困層が納得しなかったからでしょう.共和党の支持基盤が,白人の保守層に偏って,しかも,文化戦争のようなテーマを掲げる政治集団が主要な論争をゆがめた結果,ロムニーは穏健な,困惑する多数派の関心を無視してしまったように思います.
ロムニーは,オバマに代わる,もっと優れた経済戦略,財政再建策,外交政策を示す必要があったでしょう.そのチャンスはあったはずです.
オバマの勝利演説を聴きました.「前進しよう.」そして,「アメリカにとって最良の時代はこれから来る.」 と,オバマは支持者に訴えました.家族に感謝し,選挙運動に参加してくれたボランティアに感謝して,あなたたちがいたから,私は勝利できた.前進しよう,と訴えました.
前回選挙では,オバマの勝利演説に劣らず,マッケインの敗北演説も優れていました.今回は,ロムニーにその用意が無かったのでしょう.わずかな感謝と無念さが語られたにすぎません.(オバマは,敗北宣言も用意していたでしょう.それを聴いてみたい,と思いました.)
オバマについて,その選挙戦略の失敗,テレビ討論の失敗,財政刺激策や医療保険改革の説得における失敗,そして,特に,選挙を非難合戦にしたこと,が批判されました.経済政策や外交政策の難しさ,複雑さを,オバマなら雄弁に(イランでも,共和党でも)説得できる,という望みはかなわなかったのです.
それにもかかわらず,オバマの勝利宣言は彼の政治的センスの鋭さ,その輝きを示しました.すなわち・・・
選挙運動は,確かに,醜い,愚かなものになることがある.それは民主主義の欠陥であると認める.しかし,私たちは意見が一致しないときでも,こうして大いに議論する.一人ひとりに夢があり,自分が望むことを意見として表明できる.アメリカは彼らによって,彼らの献身や愛国心などによって,偉大な国になっている.
だから,意見を闘わせる政治過程が欠かせないのだ.選挙の結果で,それが消えるわけではない.これで答が出た,というのではない.
あなたたちのおかげで,私は大統領になれた.選挙を終えて,私たちはこの,ときには醜い戦いから,解放される.そして,敵も味方もなく,市民として,一緒にアメリカを前進させるのである.
年齢も,階級も,人種も,ゲイやストレートも,共和党も民主党もなく,人々のさまざまな違いを認めて,アメリカは一つになる.それが厳しい選挙を経ることの重要な意味なのだ.
・・・多分,オバマはこのようなことを訴えたのでしょう.演説のそれ以外の部分では,聴衆は多いにはしゃぎ,自分たちの<勝利>に沸いていました.しかし,演説のこの部分だけは,彼らが沈黙したことを私は観ました.この話を聴きながら,彼らは考えているようでした.自分たちの支持した大統領が,アメリカという国に何を求めているのか,自分たちにこの先何を望んでいるのか,勝利したことを告げるだけでなく,大統領として,国民に踏み込んだ訴えをしている,と感じたからです.
そして,聴衆はうなずき,オバマに再び歓声を送りました.オバマが,アメリカ合衆国の大統領になった瞬間である,と思いました.
誰が,なぜ,勝利したのか? 選挙の後も論争は続きます.なぜロムニーは敗北したのか?
巨大な金融機関の救済を,人々は許していないのです.住宅や職場を失った人々は,政府を許さない以上に,金融ビジネスで資産を築いた者を許せないでしょう.
製造業と中産階級の国を再生する,というのが,プライベート・ファンドではなく政府の役割である,と認めたのかもしれません.しかし,隣人を助け,相互扶助を重んじるアメリカ人は,決して大きな政府を好みません.
移民に対する姿勢も,宗教に対する姿勢も,オバマの方が共和党よりも支持された,と思います.より寛容で,自由なスタイルが,保守派の価値論争を拒みました.
ウォール街で「投資家のストライキ」が続くのか? それはわかりません.しかし,アメリカの政治システムが大統領を決めた以上,4年間の不況ではなく,回復を望むでしょう.また,再選されたオバマの支持者たちも,金融ビジネスの再規制や分配の公正さを回復するなら,投資家との妥協・合意を受け入れるはずです.
減税し,軍備拡大し,しかも,ただちに財政再建して,規制緩和により景気を急速に回復する,雇用は大幅に増える,というロムニーの主張は,投資家によほどの魔法の杖でもないと実現しないでしょう.誰もそんな約束を信じなかったと思います.シリコンバレーのハイテク企業家たちも,ロムニーの代表する金融資産家と保守派を信じなかったのです.
ロムニーが外交を担うことには,一層,強い懸念がありました.外交においても,ブッシュ政権のイデオロギーが再生することをオバマ再選は阻止したわけです.戦争ではなく,平和と和解を求めて,シリア介入や中東和平交渉の転換が起きるでしょう.その影響は,トルコ,ロシア,イラク,イラン,アフガニスタン,エジプト,パキスタン,ミャンマー,インド,中国・・・に及びます.
アメリカ国民が大統領を強く支持するなら,オバマは景気回復とともに大きく前進できるのです.
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ロイター通信が伝えるA.カレツキーの論説に興味を持ちました.オバマの再選が決まった今,経営者や投資家はマクロ政策の不確実性を心配しなくなり,投資の判断を下せる.共和党員も,オバマを1期で終わらせる,という政治目標は失われ,これ以上の審議拒否は支持基盤を損なうと考えるだろう.そしてオバマ自身も,これまでの成果を守り,景気回復を活かして政策を具体化するには,(レームダック状態を避けて)共和党と協力することが欠かせない,とよく理解している.
アメリカの停滞は終わり,「前進する」ことができるかもしれません.そして,各国はアメリカがもたらす衝撃に備え,むしろ機会をつかむことに集中します.
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYE8A703C20121108?sp=true
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学生たちと,シリア内戦をめぐる意見を交換しました.シリア政府軍の軍事力が優勢な中で,市民の犠牲者が増え,内戦の地域的な拡大と,住民の安全を守る義務が問われています.
ジョージタウン大学のマシュー・クレーニック,ブルッキングズ研究所のスザンヌ・マロニー,そしてイランの駐米大使ムサヴィアンの対立する主張がどれも明快でした.このような公開討論を持つことが,間接的に,彼らの政策決定にも影響すると思います.日中や日韓,アジア諸国でもできるでしょうか?
マシューは先制攻撃を支持します.誰も軍事的な解決が成功するとは考えず,外交的・政治的な解決を求めている.しかし,交渉のためには時間が必要であるから,その意味で,核兵器開発を遅らせる軍事的な攻撃が支持される.スザンヌは,相互の不信を強調しました.合意したことをどのように様々な施設や状況に応じて実施し,検証するのか,それが難しい.自国内で反対する者を説得しなければならない.ムサヴィアンは,それを妨げているのは,スザンヌが言うようなイランの国内政治ではなく,アメリカの政策だった,と主張します.イランは平和的な利用に制限していたし,地域の非核化を提案し,EUやロシア,日本,ブラジル,などと合意案を示した.すべてアメリカが拒んだ.
Yale
Center for the Study of Globalization
A
Preemptive Strike on Iran? Economic and Geopolitical Consequences
11
October 2012
http://yaleglobal.yale.edu/multimedia_list/video/8203
シリア内戦とイラン核兵器開発問題は,最も懸念されるアジアの軍事対立を回避するために,地域と世界の安全保障を考える重要なケースであると思います.
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