IPEの果樹園2012

今週のReview

10/29-11/3

 

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21世紀の世界秩序 ・・・中国の新指導部 ・・・アメリカの外交政策 ・・・日本の企業家とガバナンス ・・・ヨーロッパ分裂の危機 ・・・アメリカ大統領選挙 ・・・成長は人を幸せにするか? ・・・財政刺激策は有効か? ・・・日本化する ・・・人民元の通貨ブロック ・・・アジアの平和

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  21世紀の世界秩序

BLOOMBERG Oct 18, 2012

Hunger Makes a Mockery of Today’s World Economy

By William Pesek

東京の帝国ホテルロビーには,IMF年次総会のために,ラガルド専務理事をはじめ,ドイツ財務相Wolfgang Schaeuble,オーストラリア蔵相Wayne Swan,日銀の白川総裁,インド財務相Palaniappan Chidambaram,などが集まっていた.

しかし,誰もが見過ごしているKanayo Nwanzeこそ,国連の食糧支援機関として重要なthe International Fund for Agricultural Developmentの総裁であった.ラガルドやガイトナーが国際金融システムを守ろうとしているのは誰でも知っている.しかしNwanzeが失敗すれば,資本主義も維持できない.

「世界はグローバルな村になった.2007-08年の食糧価格危機は,人々に発想の転換を迫った.世界の40の都市で食糧暴動が起きたからだ.政府は倒れ,政治不安が広まった.」

アラブの春も,ある意味では,食糧価格の高騰が引き起こしたのだ.安価な食糧の時代は終わって,地球温暖化が進んでいる.12ドル以下の生活をしている人々は,食糧価格が上がれば生きて行けない.

アジアでは11ドルや2ドルで生活する人々が各地に何千万人もあふれているのに,世界の成長のエンジンと期待されている.他方,ヨーロッパは崩壊し,アメリカも十分に成長できない.これほど多くの貧困を抱える土地に,投資家が期待するのは矛盾している.インドだけでも12億人の人口の4分の3が十分な食料を得られていない.中国も,インドネシアも,フィリピンも,ベトナムも,次の食糧価格高騰が襲うだろう.

世界の秩序が維持されるには,彼らが十分に食べられるだけの食糧を生産するしかない.アジアの諸政府が無視している小規模農家と女性こそ,この問題の解決策だ.

世界の農場の85%2ヘクタール以下であり,5億人の小農民が耕している.彼らは発展途上諸国で消費される食糧の80%,全人類が消費する3分の1を生産する.彼らの生産性を高め,生活水準を改善することで,2050年までに増加する30億人が食糧を得られる.

女性こそがすべての鍵である.子供の栄養状態,教育,健康状態を改善し,小さな投資(自邸者,家具,道具)を行う.女性が成功するコミュニティーは繁栄する.そして,彼女たちのコミュニティーが世界経済のブロックとなり,健全な国家や市場を形成する.

東京に集まった人々は何もできなかった.ヨーロッパの債務危機も解決できないし,経済成長をもたらす合意もできない,貿易を増やす,不平等を減らす,気候変動を抑える,優れたアイデアもない.中国は,日本との子供じみた喧嘩で,来なかった.こうした状態がグローバルな指導力の水準を示す.

ヨーロッパの債券でも,中国の人民元でも,アメリカの失業率でも,日本国債の格付けでもない.アイオワのトウモロコシ価格やイスラマバードの小麦価格が上昇することこそ,世界秩序を崩壊させる.

The Guardian, Friday 19 October 2012

The end of the New World Order

Seumas Milne

2008年,晩夏,二つの事件で「新しい世界秩序」は終わった.

8月,アメリカの保護国であるグルジアが南オセチアをめぐってロシア軍と衝突した.グルジアは,旧ソ連圏の共和国で,アメリカのネオコンが好む国だった.その権威主義的な大統領は,NATOの東への拡大として,グルジアのNATO加盟を強く働きかけた.チェイニー副大統領とブッシュはロシアの占領を強く非難し,黒海にアメリカ海軍を送って警告したが,反撃することはなかった.ロシア軍も占領を解かなかった.アメリカの軍事力が超越的な世界支配をもたらす,という神話は終わった.

3週間後,アメリカのグローバルな金融支配の中心で,信用危機が起き,アメリカ第4位の投資銀行,リーマンブラザーズが倒産した.そして1930年代以来,最も深刻な経済危機が西側世界を襲う.

1990年,父の方のブッシュ大統領が「新しい世界秩序」を宣言したとき,軍事的にも,経済的にも,世界にアメリカと対抗できる国はなかった.しかし,911からリーマン・ショックまでに,アメリカが築いた,史上かつてない真のグローバル帝国,「世界秩序」は激変した.

ブッシュの戦争,「テロとの戦い」がいかに大きな失敗であったかは,彼らの行った殺戮,拷問,誘拐が西側の主張する人権を深く損なったことに示されている.それでもアメリカは,弱小な国家の隷属民に対して,その支配を軍事的に強制できなかったのだ.彼らは反撃を準備し,アメリカは同盟諸国を失った.

世界は4つの転換を迎えた.1.アメリカ一極の軍事支配が終わった.2.西側の支配する金融・経済秩序が終わった.3.中国の台頭が世界の弱小国に異なる成功モデルを示した.4.ラテンアメリカで成立した社会主義・社会民主主義政権がアメリカの求めるモデルと異なる進歩的秩序を発見した.

もちろん,それぞれに多くの弊害や問題点がある.しかし,アメリカが「テロとの戦い」を対テロ戦略として「海外緊急作戦」に改名しても,その失敗は深刻なままだ.Rupert Murdochは,反米プロパガンダを「ファシストの左翼」と攻撃し,トニー・ブレアもタリバン政権が崩壊したとき,自分たちの侵攻作戦が正しく,それを非難する者たちは間違っていたことが「証明された」と主張した.その後,10年たって,彼が間違っていたことは誰にでもわかる.

この30年間,西側のエリートたちは,規制緩和,民営化,減税ばかり主張してきた.それが成長と繁栄をもたらす,と.しかし2008年のはるか前から,「自由市場」モデルは批判されていた.民主的に決定されたわけもない銀行や大企業の重役にパワーが集中し,貧困や社会的不正義が蔓延する,と.経済的にも,エコロジー的にも,持続できない秩序である.民営化は公的サービスのコストを増大させ,賃金を引き下げ,労働条件は悪化し,腐敗がはびこるだろう,と批判されていた.その後,すべてが起きたのだ.

歴史家のEric Hobsbawmは,2008年の崩壊を,右派にとっての1989年「ベルリンの壁崩壊」である,と述べた.左派は,今も体系的な対抗案を示していない.しかし,政治経済秩序のモデルというのは,予め準備されて提示できるものではない.ソビエト権力も,ケインズ的な福祉国家も,レーガン=サッチャーのネオリベラリズムも,特別な歴史的条件の中で,イデオロギー的な即興から生まれた.

より民主的で,平等かつ合理的な基礎に立って,経済は再建されるだろう.経済とエコロジーの危機は,社会的な所有や,一層の公的介入を求めており,富と権力の移動をもたらすだろう.新しいグローバルな秩序,社会・経済モデルの革新は,21世紀最初の危機によって,その可能性を広げたのである.

FT October 19, 2012

US consensus on free trade is faltering

By Christopher Caldwell

大統領候補たちのやる気のない討論の中で,唯一,彼らが合意したのは中国との貿易不均衡と自由貿易への不満であった.有権者の多くが不満を感じているからだ.

NYT OCTOBER 19, 2012

Immigration and American Jobs

By EDUARDO PORTER

アメリカの中産階級が信じている移民流入のダイナミクスがある.ラテンアメリカからの貧しい数百万人の移民が,非合法にやって来て,より賃金の高いアメリカ人労働者を仕事から追い出し,あるいは,その賃金を下げてしまう,というのだ.

この説明はほとんど間違いだ.

移民が高卒以下のアメリカ人労働者を圧迫する証拠をエコノミストは探した.それはわずかなものだ.全体としては,移民がアメリカ人の雇用を減らすわけではなかった.

むしろ調査によれば,国境の南から来る貧しい,教育を受けない労働者も含めて,移民はアメリカ経済全体に,長期的なプラスの影響を与える.アメリカ企業の利潤を増やし,財やサーボスの価格を下げ,投資や雇用の機会を増やすからである.Giovanni Perian economist at the University of California at Davis)は,1990-2007年の期間,移民の流入は,労働者一人当たり国民所得を,2007年の価値で年平均5400ドル高めた,という.

これは,(労働市場の)需要と供給の法則に反するように見える.しかし,移民労働者と国内労働者とは同じ(労働力)ではない.たとえ教育を受けていないアメリカ人労働者でも英語が話せる.低賃金の移民労働者が大量に流入するFresnoで,彼らを雇って,より安価に屋根を作る仕事が増えるとき,同時に,現場監督のアメリカ人労働者も雇用する.Mr. Peri and Chad Sparberは,移民労働者が大量に流入する諸州で,銀行員,ウェイター,販売員のアメリカ人雇用が増えたことを発見している.こうして移民は,投資増大や生産性の上昇に役立っている.

確かに不況の時期には,移民のせいで仕事を失う労働者が増える.それは新しい投資や雇用が増えないからだ.あるいは,50歳で,高度な教育を受けていない労働者が,新しい仕事に就けないのは移民のせいだ,と思う.しかし,長期的には,ほとんどの未熟練労働者も利益を受ける.移民労働者は,むしろ,アメリカの中産階級にとって,グローバリゼーションや技術革新の衝撃から守ってくれる堤防なのである.

イチゴ畑の労働者も十分な賃金を得た時代を懐かしむアメリカ人は,安価な外国人労働力が得られなければ,アメリカにイチゴ畑はなくなってしまうことを知らない.もっと安価なイチゴが輸入されるだろう.農場がなくなれば,その土地の雇用はもっと失われる.

guardian.co.uk, Monday 22 October 2012

It's not just energy prices – private markets are failing all around us

Michael Meacher

エネルギー市場,労働市場,住宅市場,年金,そして,銀行.いずれも市場はうまく機能していない.多くの分野で民営化は失敗した.

銀行は特に,自由化されて,その関心を,イギリスに必要な産業,投資,輸出の促進に集中するのではなく,むしろ不動産,海外での投機,税金の回避に向けるようになった.

Global Times | 2012-10-22

China determined to be new kind of great power in 21st century

By Chen Xiankui

世界中で,中国が覇権国家になるかどうか,と話し合っている.第4回,米中戦略経済会議で,胡錦濤主席は明確に主張した.中国は21世紀の新しいタイプの大国になるだろう.

それは,他国と敵対せず,西側ともWin-Winの関係を築き,世界の他の地域を開発し,中国の性格を帯びたアジア的社会主義国家として,平和的に国際的地位を高める.

たとえば,米中不均衡は,中国からアメリカ製品の購入を増やし,アメリカへの投資を促した.国内需要を刺激する政策を継続し,経済発展のタイプを転換しつつある.中国は,この経済危機の中でも,アメリカやヨーロッパへの債券投資を維持している.

アメリカ軍のアジア旋回にも関わらず,中国はアジア諸国と協力関係を推進している.また,新しい大国の責任として,ラオス,ミャンマー,タイと一緒に,メコン川流域の法実施システムで協力している.アフガニスタンとの警察協力も推進している.

領土紛争でも従来型の抗議ではなく,交渉を重視している.また,中東の民主化では,住民への共感を示し,同時に,国連の名を借りた西側の軍事介入,内政干渉には反対している.

YaleGlobal, 22 October 2012

Al Qaeda’s Resurgence

Bruce Riedel

guardian.co.uk, Wednesday 24 October 2012

We must stop protecting the rich from market forces

Ha-Joon Chang

最近,亡くなったアメリカ人作家,Gore Vidalは書いた.アメリカの経済システムは「貧者のための自由企業と,富者のための社会主義」である,と.2008年の金融危機以来,その戯画はアメリカだけでなく世界中の資本主義システムに当てはまるようになって,「アメリカ化」された.貧者はますます市場の圧力にさらされ,国家の保護を失い,裕福な者たちは国家からの空前の保護を受け,実質的ななんの厳しい条件も付いていない.

社会福祉の不正受給は処罰するのに,豊かな諸国の政府はタックス・ヘイブンを放置し,大企業や超富裕層の個人が税負担を不当に免れるのを容認し続けている.こうしたVidalのいう「アメリカン・システム」は,当然,強い抗議に遭っている.最近,フランス政府は,公的支援を受けたプジョー・シトロエンの自動車会社に,配当や再投資に関する厳しい条件を課した.

不公平なバランスを正すべきだ.

FP OCTOBER 24, 2012

Tell Us the One About the Robots, Mr. President

BY PETER W. SINGER

ロボット技術の進化は,火薬,蒸気機関,コンピューターと同じように,政治や社会を転換する歴史的事件になるだろう.それは,自動式真空掃除機から軍事ドローン(無人偵察機)まで,われわれの生活すべてに影響し始めている.ロボティックスが大統領選挙の主要論叢テーマにも上がってきた.

アメリカ空軍は8000基以上の無人システムを保有し,海軍は他に12000機を保有する.議会の承認を得ることなく,オバマ政権はパキスタンやイエメンでこれらを利用してきた.財政赤字の削減が求められるとき,一機が1兆ドルもするF35戦闘機を購入し続けるのか,あるいは,その一部を軍事ロボットや無人ジェット機(たとえば海軍のX-47 UCAS)の開発に回すのか? イラン核開発工場に対するウィルス攻撃も起きている.他国の開発と利用も止められない.

ロボティクスは経済成長にも重要な役割を果たす.すでに,宇宙空間が民間の無人飛行に開放された.その将来の利用ルールや管理主体,地上におけるプライヴァシー問題などは,どうなるのか? 雇用問題は選挙戦の最も重要なテーマである.ロボットの利用が自動車工場をデトロイトに回帰させた主要な要因であるが,多くの自動車労働者は新しい工場に戻れなかった.

大統領は答えなければならない.

SPIEGEL ONLINE 10/25/2012

A Visit to Google Land

The Intransparent Methods of an Internet Giant

グーグルは快適だ.早く,簡単で,無料の,グーグルに皆が集まってくる.インターネット圏を旅するすべてがここで手に入る.この世界で何かがほしいと思えば,グーグルの検索が教えてくれる.どんな情報もそろっている.スマートフォンが普及したことで,今やグーグルは遍在するようになった.世界とは,グーグルが私たちに与える世界である.

1996年に,スタンフォード大学の学生であったSergey Brin and Larry Pageの二人が始めた検索機能である.1997年,1の後に0100個続く数字,googolから名付けて,Googleになった.

しかし,これほどGoogleが人を集めることで,それに疑問や不満を感じる人や企業も出てくる.最も重要な疑問は,「Googleがインターネット世界を調査する方法は,厳密に言って,どの程度まで中立なのか?」 なぜなら,Googleはインターネット世界のゲート・キーパーだから.サーチ・エンジンによって,私たちが何を見つけ,何を注文するか,が決まる.私たちがどこで情報を得るか,どの店で買い物するか,が決まる.

Googleはそれを説明できる,というが,極めて不十分であった.その結果は利用者や企業,経済にも影響する.情報が偏っていたり,操作されていたりするのではないか? 広告収入は莫大である.その価格が不当に決められ,独占状態を維持しているのではないか? 各国で告発が行われ,異なった判決が出ている.


l  中国の新指導部

FT October 18, 2012

Three choices facing China’s new leaders

Yukon Huang

中国の新指導部が直面するのは三つの問題である.1.国家と民間部門との関係をどうするか? 特に国有企業.2.政府と金融部門との関係をどうするか? 特に,特に,銀行.3.都市化のスピードと形態をどうするか? ことに,農村戸籍の管理.

庶民にとっては役人の汚職や貧富の差が拡大することに不満があるだろう.社会的な騒乱も各地で起きている.しかし諸問題の根源を解決しなければならない.

中国が世界第二の経済規模にまで成長したのは,指導者たちが民間部門の指導的な役割を許したからである.金融部門は基本的なインフラ整備に資源を集め,地域間の連携と労働力の移動性を高めた.その結果,中国の都市化が進み,規模の経済が利用できるようになった.

その成功は,さまざまな既得権を生じ,彼らはシステムを悪用するようになった.改革のために,新指導部はこれらを戦うだけの政治力を持たねばならない.

国家の役割は縮小するべきである.さまざまな政府機関が乱立し,特権的関係を利用して経済効率を低下させている.それらが改革を阻む政治勢力になる.また金融部門は,政府が民間部門に影響力を及ぼす主要な手段であったが,金融抑圧と大規模な投資に依存した成長パターンを展開してきた.逆に,革新を担う中小の民間企業,地方やサービス部門には十分な融資が行われていない.

他方,都市化の弊害は社会問題を起こしているが,中国の土地と人口の関係は,さらに都市化によって農業の生産性を高めるために人口を移動させるよう求める.むしろ都市のあり方や政治システムをもっと改善できるだろう.

新しい指導部がこうした問題に取り組むことは期待できない.歴史が示すように,先進的な試みに成功する地方から全国に広がるだろう.

BLOOMBERG Oct 18, 2012

Memo to China: Size Isn’t Everything

By Odd Arne Westad

FP OCTOBER 19, 2012

The Creation Myth of Xi Jinping

BY JOHN GARNAUT

Global Times | 2012-10-21

Leadership changes won’t shift China’s political reform direction

By Han Zhu

FT October 23, 2012

Puppy love found in running dogs

By Patti Waldmeir in Shanghai

北京政府は,人々がもっとペットに支出し,不満を忘れてほしい,と思っているかもしれない.上海でペット・フェア・アジアが開催された.

中国の共産主義時代にはペットを飼う文化が無かった.しかし,資本主義が広まるにつれて,中国にもペット文化が広まった.最初はグッチのハンドバッグと同じ,銀行勘定に代わる富のシンボルだった.しかし,今は,働き過ぎで,不安があり,子供の少ない,世界中の資本主義諸国と同じように,ペットにもっと実存的な欲求,すなわち,愛や仲間意識,老人の慰め,を求めている.

中国の資本主義がそれだけ老成してきたのだ.もうすぐ共産党大会を控えている指導者たちは,それを中国民衆の豊かさを表すものであるだけでなく,大きな不満を示すものとして見ているだろう.しかも,既に労働者は減少しつつあるのに,ペットを愛する中産階級の人々は,子育てよりも安価で,反抗的な態度を取らないペットを飼う方が好きで,子供は作らない.

NYT October 25, 2012

Billions in Hidden Riches for Family of Chinese Leader

By DAVID BARBOZA

「非常に貧しい」農家出身であった温家宝Wen Jiabao首相の一族が,莫大な資産を蓄えたのは,その政治的なコネを利用したからである.貧しかった母親は,今や90歳の裕福な老人となって,金融サービス会社の株を保有している.その価値は5年前に12000万ドルもした.

温家宝首相の親族は,彼の妻を含めて,少なくとも28億ドルの資産を支配している.政治エリートたちはその影響力を使って,急速に成長する中国経済で,私的な富を確保しているのだ.

中国のエリートたちが行っている蓄財は国民に秘密にされている.6月にはBloombergが習近平副主席の一族が行った蓄財を暴いたが,その後,Bloomberg Web siteへのアクセスは中国国内で政府によって遮断された.

温家宝の夫人Zhang Beiliは,中国でも裕福な女性として知られるが,そのダイヤモンド・宝石ビジネスが,夫の政治的コネを利用せずに成功したとは思えない.

他方,蓄財疑惑は,温家宝の引退後,彼の政治的影響力を弱めるだろう.共産党大会に向けて新しい人事が決まる過程で,中国国内の政治抗争が激化しているのだ.


l  アメリカの外交政策

FP OCTOBER 18, 2012

The Case for Intervention...

BY ROSA BROOKS

2008年,オバマの立場は明快だった.イラク,アフガニスタン,グアンタナモ,尋問,などについての政策は,民主党の支持者を動かし,彼をホワイトハウスに送り込んだ.しかし,今は違う.オバマの支持率は,国内でも,海外でも,急落している.

彼はビジョンを示せる候補だった.しかし,大統領になって,あまりにもビジョンを欠いた,機能しない,国家安全保障の機構に担がれ,危機から危機へ,次の数週間も見通しの持てない状況に落ち込んだ.安全保障のスタッフたちは口論ばかりで士気を欠き,ホワイトハウスの幹部職員たちも政策発表は巧みだが,その実施メカニズムは悲しいほどに不十分だ.

できたばかりの企業と同じで,アメリカには演説と高邁な理想だけでなく,それ以上のものが必要だ.

第一に,戦略を持たねばならない.政権には理想があるし,多くの目標リストがある.しかし,世界を理解する明確な戦略的視点を欠いているから,さまざまな行動の成功と失敗とを評価できない.何が重要で,何は些末なことであるか,区別できない.

オバマ大統領が戦略的な視野を持てないのは,その安全保障のスタッフや国務省の戦略家が無視され,影響力を失ったからだ.国家安全保障会議は,単なるスピーチ・ライターの集会になっている.

The Guardian, Friday 19 October 2012

How quaint the plans for Armageddon seem half a century later

Ian Jack

FP OCTOBER 19, 2012

The 9 Most Important Lessons From the Cuban Missile Crisis

記念シンポジウム(Harvard Kennedy School's Belfer Center for Science and International Affairs and Foreign Policy magazine)に集まった聴衆や専門家から,危機の教訓を選んだ.これは受賞者たちの意見である.

1.封じ込め政策とは何か,キューバ・ミサイル危機によって知るべきだ.

アメリカは,ソ連の諸都市を射程に収めることで「封じ込め」を図った.これに対して,アメリカの政策担当者は予想しなかったが,ソ連側もアメリカの諸都市を核攻撃の射程に収めることで対抗しようと考えた.その結果は,互いの軍事的脅威を下げるため,アメリカがトルコとキューバの核弾頭を取引し,譲歩したのだ.

例えば中国のような,新興国を抑えることには慎重でなければならない.軍事的な威嚇によって「封じ込め」を図ることは,長期的な信頼や協力を得るより,その国に一層の攻撃的な姿勢を採らせるだろう.

2.民主主義体制では,危険な対抗策にも国民の支持を得る必要があり,意図しない影響がその後の政策に及ぶ.

1962年のキューバ危機以来,アメリカの外交はキューバとカストロを悪者にして,交渉することを拒んできた.そのような姿勢は,かつて交戦国であったベトナムや日本と大きく異なる.ベトナムも悪者にされたが,その影響は薄れ,わずか40年で,社会主義体制のまま友好国となった.広島と長崎への原爆投下は,状況によって正当化され,その考えに異論を唱えることは厳禁された.しかし,国内で反対する者もいた.今,アメリカはイランやシリア,北朝鮮,スーダンへの制裁で国際的な連帯を得ているが,キューバに関しては,同盟諸国であっても,誰もアメリカの制裁を支持していない.

3.危機を回避したのはケネディーやフルシチョフではない.Vasili Arkhipovである.

Arkhipovはソ連の潜水艦の副司令官であった.潜水艦はアメリカ海軍に包囲され,酸素が足りなくなった.方位から逃れようとして核攻撃を受けるより,水面へ出て酸素を得るべきだ,と進言した.政治指導者たちは,操縦桿や発射ボタンの前にいない.

4.多国間協力が重要だ.アメリカは,米州機構OASを通じて,海上封鎖の正当化を試みた.

5.弾力的で,多様な軍事力を持つことが,選択肢の幅を広げる.

6.危機管理には,長期に維持されてきた原則や政策を逆転する必要がある.

・・・9.核兵器がどうしても必要か? プライドやゼロサム思考は,破滅に導くものでしかない.内政でも,外交でも,協力することが唯一の解決策だ.キューバ・ミサイル危機は善と悪との対決ではなかった.数百万人の犠牲者をもたらすまで,合意できないのか? 共通の立場を見出すべきだ.

FP OCTOBER 20, 2012

The Foreign Policy Superbowl

The Guardian, Sunday 21 October 2012

Western policy on Syria is failing on a monumental scale

Peter Hain

ロシアとイランの軍事支援が成功し,西側とその同盟諸国は大きな後退を味わった.国連事務総長の停戦と武器禁輸に向けた呼びかけは歓迎できる.しかし,英仏米と西側同盟国,トルコ,カタール,サウジアラビアは,だれもシリア内戦には勝利できない,と認めることだ.トルコが軍事介入を求めても,応じるべきではない.政治的解決が優先されるべきだ.

西側が体制転換を求めても成功しない.なぜならこれは野蛮な抑圧体制と民衆との戦いではないからだ.アサドの依拠するアラウィー派だけでなく,さまざまな少数派がシーア派による多数支配を恐れている.

これはスンニー派とシーア派,サウジアラビアとイランとの代理戦争にもなっている.しかも西側の意図を,ロシアや中国は信用しない.国連安保理でリビア制裁を支持したことを「騙された」と考えている.

政治的解決には,アサドと真剣に交渉し,ロシアとイランを関与させる必要がある.アサドの罪を問わず,(イラクで間違ったような)シリア軍を解体するようなこともしない.しかし,次の選挙は公正に行わせる.

FT October 21, 2012

Drones: Undeclared and undiscussed

By Geoff Dyer

FP October 22, 2012

Top ten questions you won't hear at tonight's debate

Posted By Stephen M. Walt

アフガンとパキスタンでの戦争,中東のテロ,イラン空爆,中国の台頭.こうしたテーマが大統領候補の討論で並ぶが,これでいいのか? 歴史的に見て,アメリカは最も多くの関心をヨーロッパに向けてきた.しかし,ユーロ危機は話題にならない.ラテンアメリカも.

オバマはタカ派の外交政策を選択してきた.ロムニーはそれを批判しないだろう.中東についても,中国についても,オバマとロムニーが中身のある討論をすることは期待できない.これはアメリカの真の外交政策を示すものではなく,アメリカ政治の実情を示すだけだ.

私が訊いてみたい質問を挙げよう.

1.どちらも2014年までにアフガニスタンの戦争を終わらせると約束する.できるのか? 2009年の増派は失敗だったのか?

2.どちらも軍歴はない.その子供たちにも.あなたたちは今まで,子供たちに軍人になって国に奉仕するよう勧めたことがあるか? もし無いなら,それはなぜか?

4.気候変動に対して,アメリカは十分に行動してきたか? 当選したら,あなたはどうするつもりか? たとえば,二人とも支持するフラッキング技術による採掘は,エネルギー価格を低下させ,温暖化を加速する.

6.日本が主張する尖閣諸島の領有を支持するか? もし日中間で軍事衝突が起きたら,あなたはどうするか?

8.イランはアメリカより軍事的に弱く,近隣に多くの敵対国がある.特に,パキスタン,インド,イスラエルは核武装している.アメリカほど通常兵力で軍事的優位があっても核武装しているのであれば,イランが核兵器を保有するのは正しい,と言えないか? また,もしイランに,挑発に反撃したわけでもない,空爆を行うとしたら,それは1941年の日本による卑劣な真珠湾攻撃と,どこが違うのか?

10.オバマ大統領.もしあなたが2009年に戻れるとしたら,あなたが止めておきたい外交政策は何か?

WSJ October 22, 2012

The Great Game, Burma Edition

By IAN STOREY

FP OCTOBER 23, 2012

The All-Powerful President

BY MICAH ZENKO

アメリカ外交政策は,アメリカと世界に関する大きな思い込みに依拠している.

・・・アメリカの外交政策は,何か法的な根拠で行われるのではない.アメリカは行動し,それによって現実を変えるのだ.法律はそれを支持する.そして,アメリカは次の行動へ移る.

・・・我々はどこへ行っても,何をなすべきかを示す国である.人々はいつもアメリカを見る.われわれが,その価値と理想に従って,何かを示し,法の支配をもたらすから,人々はアメリカの声に耳を傾け,アメリカの指導力を渇望するのだ.

これは,私の知る世界ではない.アメリカの関与や影響力は求められていない.求められているのは,特定の国や論争に関するアメリカの政策が明確であることだ.それが明確でないと,アメリカは偽善者と責められる.彼らが求め,アメリカもその国益に一致するときだけ,アメリカは中心的な役割を担う.それ以外は,何もするな.

NYT October 23, 2012

Better Ways to Deal With China

By EDUARDO PORTER

リアリストの立場で,中国にタフな要求をするべきか? ロナルド・レーガンとベイカー財務長官が日本の黒字累積に対処したように,プラザ合意でドル安を促す.

しかし,中国は日本のようにアメリカに核の傘を依存していない.むしろ,中国を国際システムに取り込んで,成長させ,ルールを守る,民主的国家に変えることがアメリカの目標だ.中国を非難し,強硬策を採ることは,改革を目指す中国の国際派に不利益となる.

アメリカはWTOのルールに訴えて,中国に改善を求める方が良い.

FT October 24, 2012

US foreign policy ill-served by its election

By ZbigniewBrzezinski

選挙戦では,複雑な外交問題に対して,あまりにも単純化された処方箋が示される.シリアのアサド大統領は退陣せよ,イスラエルの強硬姿勢に敬意を表する,中国の「通貨操作」は処罰する,・・・そんなことでよいのか? 予想される混乱や報復も考慮せず?

1945年以後にできた中東の国境線は,第一次世界大戦後,イギリスとフランスが支配する時代に,オスマン帝国の崩壊ともかかわってできた,不安定なものでしかない.地域の大国であるトルコやイランでさえ,その国内にエスニック紛争や宗教紛争を抱えている.こうした地域で,アメリカがシリアに軍事介入すれば,地域全体に及ぶ爆発に向かう恐れがある.

その影響は,さらに他地域に及ぶだろう.ヨーロッパでは石油価格の上昇で,その金融的な回復が攪乱される.ヨーロッパ諸国間の対立が深まり,その結果,イギリスはヨーロッパの同盟諸国から離れて,ちょうど太平洋で日本がそうであるように,大西洋におけるアメリカに依存した国家になるだろう.

ロシアは自己保存のため中国に接近し,中国はアメリカの軍事的な「アジア旋回」や選挙における候補者たちの中国敵視に注意している.イスラエルは西岸地区をますます植民地化して,中東における永続する国家として受け入れられる機会を失いつつある.本当は,パレスチナ国家と死活的な関係を築き,シンガポールが東南アジアで果たしているような,地域の技術的・金融的な革新のセンターになれるのに.

新大統領は,シリア,イラン,ヨーロッパ,中国に関して,選挙後に本当の外交戦略を決めねばならない.

WP October 24, 2012

A country united, for a change

By David Ignatius


後半へ続く)