前半から続く)


l  アメリカ経済

FT October 12, 2012

Why America’s fiscal cliff may be a gentle hill

Robert Reich

Project Syndicate 15 October 2012

Closing America’s Jobs Deficit

Laura Tyson


l  金融緩和策の限界

Project Syndicate 12 October 2012

Hard to be Easing

Nouriel Roubini

QE3は,アメリカの景気回復につながる即効的な政策か? 世界の,特に,アメリカのリスク資産を増やすことは何を意味するか? GDP成長と株式市場の膨張にどのような異なる影響を及ぼすか?

過去のQE,株価,金融政策が実物経済に影響する経路,銀行の融資,ドル安による貿易収支,商品市場,資産効果,などを検討しても,景気回復をもたらすには限界がある.バーナンキ議長が強調した消費者や投資家の信頼回復は,どれほど持続的な効果なのか? 他方,長期的なリスクは確実だ.

FT October 15, 2012

Why modern monetarists are sceptical about QE3

By Douglas Irwin

ケインズ主義もインフレ抑制のタカ派も大量の債券購入(QE)には懐疑的だ.しかし,市場マネタリストは積極的である.バーナンキのQE支持は,Milton Friedmanの貨幣供給を重視する金融政策の考え方に一致する.


l  中国の行方

Project Syndicate 12 October 2012

Poison-Proofing China

Henry I. Miller

FT October 14, 2012

China: Beyond the conveyor belt

By Kathrin Hille and Rahul Jacob

中国の労働人口の変化と彼らの希望の変質にともない,ストライキや離職者が増えてきた.そして100万人を雇用し.iPhonesを生産するFoxconnに代表される,中国製造業の未来は,沿岸部から内陸部へ,海外へ,機械化・ロボット導入へと,急速に向っている.

Global Times | 2012-10-14

Rule of law offers foundation for long-term democratic hopes

By Kishore Mahbubani

中国は,史上最速で生活水準の上昇を達成し,同時に,世界最大の中間層を抱えて民主主義の要求に直面する.急速な政治体制の変化が崩壊をもたらし,生活水準も引き下げることは,ソビエト連邦が示したことだ.

中国の将来の発展のためには,政治改革を拒否するのではなく,多様な意見を吸い上げる方が良い.共産党の内部で「党内民主主義」を活用し,もっと選挙を利用するのが良いだろう.

西側社会は政治の改革を民主化と同一視するが,それは民衆が政治に失望していることの裏返しである.理論とは異なり,西側の民主主義でも,特殊利益を守る強力な団体が政府を支配する.このようなモデルを中国がまねることは大失敗につながる.

長期的には民主化が進むとしても,中国がそれに先立って重視するべきは,法の支配,である.その意味は,庶民も,共産党の幹部も,同じ法によって,同じ法廷で裁く,ということだ.すべての市民が同じ法に従うことで,中国の政治システムの正統性は高められる.それは,一見,共産党のパワーを低下させるように思えるだろうが,逆である.共産党の信頼が高まり,パワーは強化されるだろう.

法の支配は,地方政府の政治家や官僚が恣意的に権力を行使し,汚職や犯罪に及ぶことを罰する.これは,各地で増大する抗議活動や社会不安を最も効果的に予防するものである.長期的に,「中国の春」を回避する最善の方法は,法の支配を強化することだ.

重要なことは,良い法律を定めることより,それを実施する良い人々を見つける方が難しい,ということを知っておくことだ.シンガポールの教訓として,最高の人材を判事にすることが重要だ.彼らに十分な報酬を与え,贈賄や圧力から保護しなければならない.

何世紀もしてきたように,堤防を強化して,河川の氾濫から人々を守るべきだ.

FT October 16, 2012

China needs a robust credit infrastructure

By Henny Sender

景気刺激策として行われた融資の膨張と,世界景気の悪化により輸出が減少し,中国の成長も減速する中で,企業の業績も悪化してくる.また,地方や,担保のない,民間の中小企業へは十分な融資が流れない.

WSJ October 17, 2012

Dashing China's All-Consuming Ambitions

By JOSEPH STERNBERG

2012-10-17 (China Daily)

Erroneous reports on yuan

By Zhang Yongjun

SPIEGEL ONLINE 10/18/2012

Murder, Sex and Corruption

The Battle for China's Most Powerful Office

By Erich Follath and Wieland Wagner

中国指導部をめぐる政治抗争について.


l  新興市場

Project Syndicate 12 October 2012

Emerging-Market Resilience

Michael Spence

WP October 15, 2012

The BRIC rescue that wasn’t

By Robert J. Samuelson

Project Syndicate 15 October 2012

Africa’s Big Boom

Jean-Michel Severino, Emilie Debled


l  富裕層と政治

NYT October 13, 2012

The Self-Destruction of the 1 Percent

By CHRYSTIA FREELAND

NYT October 13, 2012

Which Millionaire Are You Voting For?

By NICHOLAS CARNES

FT October 17, 2012

Legitimacy rests on restoring opportunity

By Raghuram Rajan

金持ちが自分の富を守るために所有権や法律を強制している,という主張は間違いだ.民主主義と自由企業とは繁栄する経済に一緒に見いだされる.富裕層が自分の力で富を築いたと有権者が信じる社会では,所有権が尊重される.すなわち,競争的で,公平で,透明な市場があれば,人々は自分も同じように裕福になれると思うのだ.逆に,違法な手段で富を蓄積したオリガークがいるロシアでは,所有権や法律が尊重されない.

民主主義は信頼を失っている.それは,十分な機会を提供できず,社会的給付のために所有権を損なうからだ.工業諸国では,教育や支援システムを充実させて,中産階級の成功の機会を増大させるべきだ.


l  中国とアジア

guardian.co.uk, Sunday 14 October 2012

China would be wise to accept Japan's olive branch over the Senkaku Islands

Peter Wynn Kirby

日本人を憎悪する中国メディアのキャンペーンは行き過ぎだ.それは,ジョージ・オーウェルの『1984』の組織された「憎悪」を思わせる.実際の日本人の多くは,第二次世界大戦後の70年間,工業化された世界で,真の平和主義者だと言える.そして,政府によって刺激された憎悪は,オーウェルが指摘したように,誰に向かうかわからず,共産党政治局にも向かうだろう.

今や,中国政府は,「ニクソン訪中」のチャンスを,逆に,自分たちが手にしている.戦争における憎しみや心の傷はあっても,今や日中間の補完性と利益とは明らかだ.実際には起こりそうにないが,中国の新しい指導部が和解を求めるなら,中国経済の減速を逆転し,日本を再活性化するために,両国は協力関係を深めることができる.

日本側にその条件があっても,中国側のナショナリストたちは抑えられない.

BLOOMBERG Oct 14, 2012

Asia Knows How to Get Along With a Bigger China

By Pankaj Mishra

オバマ政権の「アジア旋回」は中国封じ込めの意図をあまりにも示し過ぎた,とジャカルタのジャーナリストは抗議した.他のアジア諸国でも,こうした意見はある.西側の権力政治に翻弄される前の,中華的なアジアの秩序に関するロマンチックな,あるいは,排外的なアジア主義である.

他方,西側の見解では,近隣諸国を威嚇する中国に,国際システムの「責任ある利害関係者stakeholder」となるように求める.これも同様に西側に都合のよい解釈だ.そして,中国嫌いのアメリカ議員たちによれば,平和的な台頭を唱えながら,Huaweiに代表される中国企業は西側経済への「トロイの木馬」である.

しかし中国は,西側諸国と違って,歴史的に他国に軍事介入したことがほとんど無い.ヨーロッパでは継続して,この千年間,流血による国境線の変更が行われてきたが,中国と近隣諸国との国境線は,約7世紀にわたって,ほとんど変化していない.中国はアジアにとって,儒教文化を広め,貿易と外交関係の中心地であり,華僑の商業ネットワークをはじめ,地域経済の中心でもあった.近隣諸国は中国の覇権を受け入れることで,物的,政治的に,大きな利益を受けてきたのだ.中国も,その関係を承認した.誰も西側の考える国家の名目的な「平等性」などに迷わなかった.

ヨーロッパの帝国主義がこうしたアジアの秩序を破壊した.最初,アヘン戦争でイギリスが中国の覇権を破壊し,その後,日本は西側の国際秩序(競争的な帝国と国民国家)に従って中国を侵略した.今や,中国の「和平演変(平和的台頭)」がアジアをヨーロッパの支配する前,中国を中心とした秩序に戻すだろう.アジアに,中国との戦争を望む国はない.そして,中国には,儒教的な指導者の好む,「調和」を維持する義務がある.

しかし,最近の反日デモを観ると,中国も競争的なナショナリズムを支持し,西側の国際秩序に従うのか? かつて日本が示したように,そこには,新興の大国が好戦的な姿勢で秩序を変える,という規範がある.

Project Syndicate 14 October 2012

The Lessons of the China-India War

Brahma Chellaney

FT October 15, 2012

Asia: A relationship on the rocks

By Mure Dickie and Simon Mundy

FT October 15, 2012

Divided by a shared history

By Simon Mundy and Mure Dickie

NYT OCTOBER 17, 2012

Dissident Writer Calls for the Breakup of the Chinese ‘Empire’

By DIDI KIRSTEN TATLOW

WSJ October 17, 2012

This Empire Must Break Apart

By LIAO YIWU

19896月,天安門の虐殺で,最年少の犠牲者がLu Peng少年であった.彼は永遠に9歳のままだ.私は彼のことを忘れない.われわれが彼のことを忘れないように,彼の死を伝えるニュースを私は残しておく.

今日,私はもう一つの死者のニュース,すなわち,中国帝国の死を伝えたい.少年を殺すような帝国は,解体しなければならない.それが中国の伝統である.

秦の始皇帝Qin Shi Huangは中国帝国を初めて統一した.彼は万里の長城を築いて国家を牢獄に変え,焚書坑儒によって書物や知識人を焼き捨てた.全土から哲学者460人を呼び集めて,彼らを生きたまま焼き殺した.

激しい暴力の上に,多くの国家は成立した.2000年後,もう一人の専制君主,毛沢東は,始皇帝がわずか460人しか葬らなかったのに比べて,われわれは数万人の反革命分子を葬った,と自慢した.

子供と真実は,歴史において結びついている.子供を殺戮し,真実を拷問にかける.そのような王朝の死は近い.

FP OCTOBER 18, 2012

Those Islands Belong to Taiwan

BY YUNG-LO LIN

2012-10-18 (China Daily)

Abe's visit spells trouble

Global Times | 2012-10-18

Abe’s Yasukuni visit reeks of opportunism

Global Times | 2012-10-18

South Korea must stop violent policing

By Han Xudong 


l  イギリスの開放と革新

The Observer, Sunday 14 October 2012

Britain's future lies in a culture of open and vigorous innovation

Will Hutton


l  死者を観ない

NYT October 14, 2012

Death by Ideology

By PAUL KRUGMAN

ロムニーは死者を観ない.それは彼が死者を観たくないからだ.もし望めば,ロムニーとライアンが医療保険を改悪することで現れる醜い現実を観るだろう.

先週,ロムニーは,保険が無かったという理由で死んだアメリカ人はいない,と述べた.これは,ジョージ・W・ブッシュが,保健の無い者にも救急車が緊急治療してくれる,と述べたことを引き継いでいる.

彼ほど資産のない人間の生活について無関心であるから,このようなことが言えるのだ.保険の無い人にも,法が定めるように,緊急治療を拒むことはできない.しかし,ただではない.彼らは膨大な請求書を受け取る.それを支払えない,あるいは,支払わない者もいるが,請求額を恐れて緊急治療さえも受けない人が多いだろう.そして彼らの病状はさらに悪化してしまう.また,慢性的な病気は治せない.

バイデンとの討論で,ライアンはバウチャー制を持ち出した.「バウチャー」という言葉を共和党員は好む.嘘つきたちの説明では,ライアンの改革案は「高齢者医療保険制度をバウチャーシステムに貢献するものへと転換する」そうである.

バウチャーに転換して,赤字を節約すれば,老人たちは保険に代わるものを失い,多くの死者を生み出す.ロムニーが現実を観たくない理由である.


l  IMFの世界経済概観

FT October 14, 2012

The world is stuck in a vicious cycle

By Lawrence Summers

FT October 14, 2012

Heed siren voices to end fixation with austerity

By WolfgangMünchau

FT October 16, 2012

The fund warns and encourages

By Martin Wolf

VOX, 15 October 2012

Not making the grade: Report card on global financial reform

Laura Kodres

FT October 17, 2012

The IMF has not rejected austerity

Lorenzo Bini Smaghi


BLOOMBERG Oct 15, 2012

Nobel Shows That Economists Can Save Lives, Too

By Mark Whitehouse


l  オバマ,シリア,リビア

Project Syndicate 16 October 2012

Overcautious Obama

Anne-Marie Slaughter

選挙を前にして,オバマは二人に分裂した.2009年のカイロ演説を行ったオバマは,アメリカとイスラム圏との新しい関係を築こうとしたが,その後,新しいオバマは対テロ戦略の司令官となって多数のドローンを飛ばし,アルカイダとその関係者を攻撃し,オサマ・ビン・ラディンを暗殺した.

アメリカ人の安全を重視する指揮官としてのオバマは,カイロ演説のオバマが理解していたことを忘れてしまった.たとえば,シリアでは,予測できたように,予防できたことが何もかも起きている.サウジアラビアとイランの代理戦争,宗派と部族の武装集団による隔離,過激な集団への分極化,穏健派の沈黙,近隣諸国の不安定化,テロ集団の侵入,回復するまで何十年も要する流血がそうだ.

反政府派はアサドの爆撃機と戦い,支配地域を守るための武器を求め,市民たちを避難させる安全地帯を求め,アサドが住民を服従させるために何でもするなら世界が許さないことを示してほしい,と願った.

しかし,アメリカによる軍事力行使の選択は,アメリカの旅客機に対するテロを予想させる.他方,内戦が沈静化するまで待つ方が,介入によるアメリカ人のリスクを最小化する.あるいは,飛行禁止空域の設定も,事実上,シリア全域の飛行を禁止しなければならず,ダマスカスの空爆を含む.それはアサドへの国内的支持を強めるかもしれない.ロシアや中国が安保理決議に反対するから,地域の近隣諸国も協力を拒むかもしれない.アメリカの有権者も中東地域への新たな軍事介入を望まない.

しかし,コストとベネフィットの計算が困難な,バランスが明確でないときこそ,指導力が試される.大統領執務室の中で,シリア国民の声を代表する者はいない.アメリカの裏切りのコストを示す者もいない.アメリカが守ると約束した大義に従って,すなわち,人間の尊厳,自由,民主主義,平等を掲げて,軍の銃弾の前を行進する人々がいる.彼らを見殺しにすることは,中東の次の世代に大きな代償となって残るはずだ.

アメリカが行動しないことで,シリア国民の犠牲者が増え,紛争のバランスが変わるという,機会費用に関して指摘する者もいない.リビアを考えてみればよい.アメリカが介入したことで,何万人ものリビア国民の命が助かった.彼らはアメリカを支持し,アメリカ人の大使が殺害されたことに憤慨し,哀悼のため街頭を行進した.

アメリカが11月の選挙前に介入することは不可能だ,という.しかし,唯一のチャンスは地域の諸国が,すなわち,トルコ,サウジアラビア,ヨルダン,カタール,アラブ首長国連邦が,公然と,アメリカに指導力を発揮するよう求めることだ.大国には,グローバルな規範を支持して,またグローバルな問題を解決するために行動する,積極的な責任がある.

シリアにおける犠牲者は増加し,紛争が拡大している.悪い選択肢と,さらに悪い選択肢しかない.指導者はそれでも選択しなければならない.オバマは間違った.シリアにとって,地域にとって,アメリカにとって,悪い選択を行った.

WP October 18, 2012

Bulletproof glass distorts the diplomatic view

By Anne Applebaum

数か月前の深夜,私はトリポリの,誰もいない中心街を同僚たちと歩いた.私たちにはガードマンがおらず,もちろん,銃も携帯していなかった.しかし,そこは安全な地帯であると聞いていたし,自分の直観でも危険はないように思えた.

トリポリの大使館が襲撃されてから,見方が変わった.大統領や国務長官がそのセキュリティーに責任を持つのではないし,事件の詳しい背景もわからなかったが,人々は外交官が非常な危険にさらされており,彼らを守ることに神経を使うようになった.

殺害されたChris Stevensは,人気のある,成功した,優れた外交官であった.国中を旅行し,人々と接する重要性を理解していたし,アラビア語も堪能であった.それは,多くのアメリカ人外交官が,要塞のような,しばしば中心街から遠く離れた大使館に住み,一歩も外に出ないことと対照的であった.

庶民と接することのない外交官は,物事を誤解し,また,人々に誤解されるだろう.多くのガードマンを連れたアメリカの外交官は,会うためにセキュリティー・チェックを強いるのであり,友人を作れないだろう.

ベンガジの攻撃以後,ますます多くのアメリカ人が防弾ガラスの向こうに消えた.Chris Stevensのセキュリティーを軽くしたのは間違いだった.しかし,今は過剰である.


l  シアヌークの訃報

WSJ October 16, 2012

Remembering Cambodia's Enigmatic King

By SETH LIPSKY


l  グローバリゼーションの死

WP October 17, 2012

What will replace the globalization model?

By David M. Smick

次のアメリカ政府を獲得する政党は,その後,1世代の間,権力から離れるだろう.それほどの困難と失策が彼らを待っている.

グローバリゼーション・モデルが破裂し,それに代わるモデルは見つからない.

4月から世界経済の状態は悪化している.世界貿易も,中国も,インドも悪化し始めた.ドーハ・ラウンドが命綱であるが,世界は通貨戦争の瀬戸際にある.アメリカが中国製タイヤに課税すると,中国はアメリカ性自動車に課税した.中国における賃金インフレ,アメリカではソフトウェアによるコスト削減を利用した製造業,次第にグローバリゼーション・モデルは時代遅れになる.

金融地涌化も世界中で攻撃され,金融の再国民化が進んでいる.国境を超える投資は以前より難しくなった.

ユーロ圏は非グローバリゼーションの中心である.ヨーロッパの銀行が新興市場への融資の8割を行ってきたが,今やユーロ危機で融資を恐れ,資本を回収している.アメリカや日本がそれに代わることもない.貿易金融は途絶し,非グローバリゼーションにギアが入って加速した.

アメリカ経済の回復も遅く,完全雇用には遠い.地政学的な危機は投資家を怯えさせ,リスク回避を強めている.金の卵を産む鶏だと喧伝されたグローバリゼーションが,高められた過剰な期待を満たせなくなった.その利益は,もちろん,不平等に分配された.

1970年代にはじまり,1980年代は緩やかに,そして1989年,ベルリンの壁崩壊後から加速して,世界の自由労働市場に参加する労働力は27億人から60億人に増加した.アメリカだけでも4000万人の雇用が生まれ,グローバルな貿易で毎年1兆ドルも豊かになった.ダウジョーンズ平均株価は,1979年の800ドルから,2007年末には13000ドルになった.

欠陥はあっても,だからグローバリゼーション・モデルは富をもたらす機械だった.世界中で政府は15兆ドルを支出し,中央銀行は5兆ドルを供給して,これを救出しようとした.

しかし,このモデルには亀裂が走り,もはや崩壊するしかないのに,新しいモデルは見つからない.大統領候補者たちにできるのは,恐ろしい可能性に触れない,というだけだ.


l  ロシアとテロリスト

NYT October 17, 2012

Mr. Putin’s Gift to Terrorists


l  鳩山由紀夫

WSJ October 18, 2012

Free Trade Can Lift Japan and Europe

By YUKIO HATOYAMA


l  アイルランド

WSJ October 18, 2012

Don't Expect a Celtic Comeback

By EDDIE HOBBS

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The Economist October 6th 2012

China’s state capitalism: Not just tilting at windmills

Relations with Myanmar: Less thunder out of China

Currencies: The weak shall inherit the earth

Free exchange: Tide barriers

Britain’s first modern philosopher: The significations of his words

Obituary: Eric Hobsbawm

(コメント) 中国の国有企業SOEsが世界クラスの活動を展開することに欧米諸国は警戒していますが,記事は,SOEsが改革を損なう重荷であり,将来の政治的障害になることを警戒します.また,ミャンマーが閉鎖的な独裁体制を見直す一つの理由は,中国への極端な依存が国民の間に不満を蓄積したからだ,と考えます.ミャンマーの宝石や森林資源,水力発電所の建設など,中国ビジネスの餌食になっている,と感じるからです.

世界の通貨市場は何によって動いているのか? かつて言われたような,金利裁定やキャリー・トレードではなく,方向を見失ったトレーダーたちの姿が,各国の改革に時間を与えています.また,国際資本移動の規制を正当化するIMFの研究は,国際資本移動に対する新しいシステムにつながるのか? どちらも根本的な問題です.

二人の思想家について,興味深い記事が載っています.一人はトマス・ホッブズ(初めての本格的な業績集成),もう一人はエリック・ホブズボーム(訃報)です.

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IPEの想像力 10/22/12

戦争の決断(午前3時の緊急電話)が示すように,政治は死者と切り離せません.

政治家や権力に従うエコノミストたちは,死者を観ない.ブッシュやロムニーは,医療保険制度が無ければ治療を受けられない病人たちの死を観ない.ハバードは赤字削減の,ケネディーやフルシチョフは核戦争やベルリンの壁がもたらした冷戦の,EUは赤字諸国に対する緊縮策の,オバマはシリアへの軍事介入を避けた結果の死者を観ない.

Foxconnは(そしてiPhone利用者は)100万人の工場労働者たちの中で生じる自殺者を観ないし,中国は反日運動を刺激した後の紛争拡大と戦争で予想される死者を観ない.そしてグローバリゼーションは,始皇帝よりも,毛沢東よりも多くの,社会不安,通貨危機,戦争,死者をもたらしたでしょう.

中国の詩人Liao Yiwu(廖亦武)の激しい訴えに驚愕します.9歳の少年を殺すなら・・・中国帝国を解体せよ.

This inhuman empire with bloody hands,

at the root of so much suffering in the world,

this infinitely large pile of rubbish must break apart.

So that no more innocent children die,

it must break apart.

So that no new mother blamelessly loses her child,

it must break apart.

So that China's helpless and homeless migrant workers no longer need to toil as the world's slaves,

it must break apart.

So that we may finally return to the home of our ancestors and watch over their legacy and graves in the future,

it must break apart.

This empire must break apart,

for the sake of peace and the peace of mind of all humanity

—and

for the mothers of Tiananmen Square.

政治が死者をともなうことは,さまざまな言葉で表現されてきました.政治は戦争(あるいは,スポーツ)であり,通商摩擦や通貨市場は「見えざる戦争」なのです.

古代から,優れた指導者は河川に堤防を築き,運河を引いて農地を拡大することで,人々を守り,豊かにしました.政治家は,確かに,死者を減らすために決断しますが,同時に,死者の配分を決めています.自国民(の豊かな生活)を守るために,他国民を大量に殺すことを「勝利」と呼びます.

東アジアの秩序では中国の広める「儒教」が,西洋的には競争的国家を超える「法の支配」が,戦争や政治による死者を減らすためのガバナンスでした.今,アジアで,それが成功するかどうか,それはわかりません.

もし,Kishore Mahbubaniが主張するように,中国が(シンガポールから学んで)「法の支配」を確立し,優れた判事たちにより,社会の底辺層と政治エリートを,同じ法律,同じ法廷で,公平に裁く姿勢を明確にすれば,国内だけでなく,世界における威信をも高めるでしょう.中国は,近隣諸国とも,平和的な国際秩序再編に関する議論を始めます.

民主制は,その国の戦略を決める権限をだれが握るのか,自分たちの中から選ぶ制度であり,法と戦争を委ねる人物を決めます.あるいは,それに代わる制度が無いとき,詩人たちが死者を観て,人々の苦しみや悲しみに共鳴し,告発の言葉に変えるのです.

子供を奪われた母親の悲しみは,帝国を滅ぼします.

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