IPEの果樹園2012

今週のReview

10/22-27

 

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アメリカ大統領選挙のTV討論 ・・・イランの変革 ・・・エコノミストと権力 ・・・キューバ危機50周年 ・・・ノーベル平和賞 ・・・ユーロ圏の妥協 ・・・金融緩和策の限界 ・・・中国の行方 ・・・富裕層と政治 ・・・中国とアジア ・・・死者を観ない ・・・オバマ,シリア,リビア ・・・グローバリゼーションの死

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  アメリカ大統領選挙のTV討論

WP 10/11/2012

VP debate: Biden seemed real, Ryan plastic

By Richard Cohen

ジョー・バイデンJoe Bidenは,選挙戦のいかなる点でも,オバマより上手にバラク・オバマを売り込んだ.バイデンは議論を支配し,強力で,自信を示していた.彼は老いた暴れ馬かもしれないが,ハートがあった.

それに対して,ポール・ライアンPaul Ryanは鉄のように冷たく,話は混成物で,ある意味,あまりにも保険数理士であった.彼は若さの負い目を示し,経験不足の青二才で,自分が何を話しているのかも分かっていなかった.

バイデンは感情的で,大ぼら吹きかもしれないが,本物であった.バイデンは古いタイプの政治家かもしれないが,他方,ライアンは,赤い蝶ネクタイをしたプラスチックの若者だった.社会保障制度について言及しながら,われわれ若者は,と年寄りを安心させるように話した.だが,老人たちは若者を信用できない.若者たちは老後を軽視しているからだ.彼らには年金を失う恐怖など想像もできないだろう.

バイデンはライアンを圧倒し,しばしば議論をさえぎり,目玉を動かし,不賛成であるとつぶやいた.その笑いは,まさにバットマン映画のジョーカーであり,ジャック・ニコルソンのようだった.脅迫じみた,歯をむき出す笑い方を嫌う人もいただろうが,私は楽しんだ.

NYT October 12, 2012

The Generation War

By DAVID BROOKS

副大統領候補の論争は,政策に関する論争であるだけでなく,アメリカ人の「異なる世代の戦い」であった.

バイデンは1973年に上院議員になった.ニューディールの時代がまだ繁栄していた時代の民主党の大物政治家たちが世界を放浪したころだ.彼の何もかもが,カソリックの,労働者階級の暮らしを思わせた.

バイデンが模様曜日の夜に見せたアメリカン・オペラは,党派的な好みによる異なった反応を呼ぶだろう.それは目立つことのなかったオバマの選挙キャンペーンにおいて,ラテンアメリカ風のソープオペラをふんだんに提供し,民主党の沈滞ムードを吹き飛ばした.

しかし,この数週間,バイデンを攻撃するのは共和党員だけではない.無所属の人々は何を求めているのか? もっと尊敬できる政治を,アメリカ人がそれを手本とするような政治交渉を求めている.敬意を示して,相手の言い分を聞くべきだ.バイデンは,彼らから見て,最悪の旧政治を示す戯画であった.

それは単にマナーの問題ではない.財政の崖をどうするか? 財政再建を超党派で合意できるか? アメリカの長期債務を減らし,成長を高める政策に,どうやって合意するのか? 多くの人は,バイデンのようなやり方で複雑な取引は不可能だ,と思っただろう.

ライアンの示す時代は,1950年代ではない.スポーツ・ジムの時代だ.アメリカを覆うテレビ文化,その調子はクールで,ホットではない.能力主義が働き,若者たちは衝突しなくなった.ライアンは,オバマと同じ,この時代に属する.自覚ある,プロフェッショナリズムを好む.

感情的には,バイデンが討論を支配した.しかし,民主党員たちは,オバマ政権が消耗したのではないか,と不安を覚えただろう.注目を集めたのはロムニー=ライアンの政策だ.

多くの視聴者にとって,バイデンは,旧い家具だ.

WP October 12, 2012

The Biden-Ryan show: Good TV but a dull debate

WP October 12, 2012

A performance Obama sorely needed

By Eugene Robinson

guardian.co.uk, Tuesday 16 October 2012

The lame rules for presidential debates: a perfect microcosm of US democracy

Glenn Greenwald

二大政党による討論の支配は,彼らに献金する企業にとって都合の悪い論点をすべて取り上げないようにする政治システムである.

独自の質問をする団体は排除されたし,追加質問で候補者が困惑したから,それ以降の討論では追加質問もなくなった.聴衆からの質問も,事前に文書で提出させるようになった.進行役の司会者も,単に時間を測るだけだ.

NYT October 16, 2012

How to Score the Debate

By THOMAS L. FRIEDMAN

大統領候補の討論が終わる前に,私はこの原稿を書いている.だから,私にできることは,どのように採点するかを示すことだろう.

私の採点システムは,アメリカ人の多くが次の大統領に本当に望む,と私が思うことを基準にしている.つまり私は,この大統領選挙でアメリカは変わる,と思うのだ.多くのアメリカ人は何かが間違っていると感じている.何もしなければ,アメリカもギリシャや日本のようになる.われわれがこの混乱を味わうに至った理由を,どちらの候補が正しく理解し,それに立ち向かう気があるのか,私は見たいのだ.

第一に,私は正直な診断を聴きたい.グローバリゼーションと情報革命で,財・サービスの購入,販売,生産,デザインの仕方が変わった.旧式の仕事は消滅し,新規の仕事が創出されるスピードが増した.新しい良い仕事には,ますます高度な技能・技術が求められる.アメリカは,歴史的に見て,そうした変化に公教育の拡大で対応してきた.種痘教育が普及し,高等教育が拡大した.しかし1980年代から,高等教育以後の教育を普及させてグローバリゼーションとITに対応するべきだったのに,われわれはそうしなかった.高校の卒業者は増えず,大学卒もなかなか増えなかった.

アメリカで増えたのは,サブプライム・ローンで膨張した住宅建設と小売部門に吸収される未熟練労働者の雇用であった.ウォール街の雇用も増えたが,それは金融業が「創造的破壊」を進める産業ではなく,J.バグワッティが「破壊的創造」と呼んだ,非生産的な金融手段をもたらす産業に変わったからだった.

われわれの雇用創出エンジンは,あまりにも長期にわたって,競争的なグローバル・マーケットから逃れ,内向きの部門へ,持続できない水準まで雇用を拡大した.それは,不均衡で脆弱な雇用であった.過剰な債務と信用による消費の権利を前提していたのだ.その間,われわれの起業や技術革新は,世界ランキングを落としていった.

この教育における赤字は,アフガニスタンとイラク,二つの戦争と大型減税政策で国庫に大穴を開けた時代に重なった.アメリカは深い穴に落ちたのだ.

この穴から抜け出すには,政府支出を削って,増税し,改革しなければならないが,同時に,インフラや研究,教育に投資して経済を刺激しなければならない.候補者たちが,訴えることを聴きたいと思う.

第二に,この課題に必要な規模に注意する.雇用を増やすインフラ投資,起業を促す刺激策,信頼できる(景気回復に伴う)赤字削減計画,技術変化に見合う成人教育の拡大,など.確かにオバマ政権はそう言ってきたが,選挙戦では重視されていない.ロムニーの弱点ばかり宣伝している.

第三に,負担を公平にするよう訴え,第四に,財政再建のためではなく,次の世代のために強いアメリカを復活させる,という気概を示してほしい.

そして,どちらの候補もそれを示せないなら,次の大統領がだれであっても,アメリカはさらに後退する.

NYT OCTOBER 16, 2012

Obama Bares His Teeth

By FRANK BRUNI

The Guardian, Wednesday 17 October 2012

Obama's backtracking on the Benghazi terror attack deceives only himself

John Bolton

The Guardian, Wednesday 17 October 2012

Obama's fightback against Romney leaves both men looking for a knockout

Jonathan Freedland

SPIEGEL ONLINE 10/17/2012

Falling Short

Obama Again Fails to Reveal Mitt the Monster

A Commentary by Gregor Peter Schmitz

火曜日の討論で,オバマはかなり改善したが,それでも,ロムニーを撃ち落とすことにはしくじった.選挙キャンペーンで示している,冷酷な資本家,というイメージをロムニーは免れ,ミスター・アベレージ(平均的アメリカ人)を演じたからだ.

火曜日の晩,6000万人の視聴者に,二人のロムニーが上演された.

NYT OCTOBER 17, 2012

Binders, Keepers

By DAVID BROOKS and GAIL COLLINS

WP October 17, 2012

A clear win for Obama

By Eugene Robinson

NYT OCTOBER 17, 2012

How Not to Choose a President

By GARY GUTTING

古代ギリシャの作品を読むと,大統領の間違った選び方がわかる.

古代ギリシャ人は,失敗がその政治家の無能さを証明するものではない,と考える.オイディプスは恐ろしい結末を迎えるが,それは彼の無能さの故ではなかった.彼は明敏で,粘り強く,勇敢であった.しかし,彼は運命の犠牲者であった.

ギリシャの作品は,政治家にとって事態が悪化する理由を説明しない.それは幸運化,不運でしかないからだ.ところが我々は,しばしば,事件が政治家の決定と関係ないことを忘れている.たとえば,11月の雇用統計は重大であるかもしれない.失業者数が急減すればオバマは再選され,急増すれば敗北するからだ.しかし実際は,そうした数字がオバマの経済問題に関する処理能力を示すわけではない.「あなたは4年前よりも暮らし向きが良くなったか?」という質問もそうだ.それは景気循環を動かす多くの要因を無視している.

我々はまた,最も熟慮された,優れた決定であっても,指導者の管理できないような理由で失敗に至ることを忘れがちである.オバマの特殊部隊が優れたビン・ラディン殺害計画を立て,オバマが優れた判断をしたことは,作戦が成功する証明であるとみなされているが,それは同様に,失敗で終わったかもしれないのだ.カーター大統領の人質救出作戦が成功していれば,彼は再選され,優れた大統領という評価を得ていたかもしれない.ギリシャ人は個人的な弱点にも寛容である.政治をスポーツに例えるのも間違いだ.スポーツはルールに従って結果を出すが,政治家は決定の後も事態に関与し続ける.

つまり,失敗を候補者の能力や性格と結びつけて考えることが間違っているのだ.現在のアメリカのシステムでは,二大政党が候補者を絞り込む際に,彼らのガバナンス能力(つまり専門的な顧問を選択する能力)や個人的性格,失敗の記録を詳しく検討している.

では,どのように大統領を選ぶべきか? それは,個人ではなく,政党を基準に選ぶ,ということだ.われわれが合理的に期待できるのは,この国が勝利した候補者の政党のイデオロギーによって進路を決める,ということだから.

FT October 18, 2012

No holds barred in White House bout

By Gary Silverman in New York

WP October 18, 2012

Romney goes from Etch a Sketch to sketchy

By E.J. Dionne Jr.


l  イランの変革

NYT October 11, 2012

Why Iran Can’t Follow China’s Lead

By RAY TAKEYH

中国は,イランの宗教指導者たち,アヤトラであるハメネイが注目するべき話を提供している.すなわち,中国では権威主義的な政治体制を,そのイデオロギーが消滅した後も,長期にわたって生き延びているからだ.

中国の指導者たちは1970年代後半から,慎重に,マルクス主義のイデオロギーを離れ,資本主義的な繁栄を掲げるようになった.今も,それが人民の最高の利益である,と主張している.物質的な豊かさと自由とを交換することで,峡湾主義を失っても,彼らは権力を維持した.

しかし,イランにはそのようなイデオロギーの柔軟性が存在しない.宗教は,政治的なイスラムとして,国家の基礎であり,聖職者たちの権威の唯一の源泉である.厳格なイスラム教のイデオロギーを失えば,アヤトラたちは無意味になる.

だから彼らは,中国式の改革に似た姿勢を示した指導者たち,権力に関わるイランの鄧小平,ラフサンジャニやハタミを弾圧して追放した.そして,革命が永遠であることを国民に説いた.イラン国民は,政治的自由を諦める代わりに,宗教的な救済を得るのである.

こうした政治的追放によって,伝統的な警察国家は,神聖国家から,全体主義国家へと変貌する.ハメネイは国際的な孤立も恐れない.むしろ,西側との関係が東欧の共産主義体制を破滅させ,国際秩序に統合化した中国が継承してきたイデオロギーを失った,と彼らは思っている.

国民を阻害し,社会から孤立したイランのエリートたちの将来は,困難であろう.

Project Syndicate 17 October 2012

Time to Test Iran

Richard N. Haass

イランの核兵器開発については,二つの選択肢に関心を絞ってきた.小規模の核武装を許して共存するか,開発を数年遅らせるために空爆するか,である.

しかし,ここにきて第三の選択肢が登場した.交渉による解決である.イランにとって低すぎない,アメリカと,イスラエル,その他の世界にとっては,受け入れられないほど高すぎない代償の選択だ.

この選択肢は,何年も前からあったけれど,関心を集めなかった.しかし,状況が変化したのだ.イランは経済危機,特に通貨価値の急落でインフレが進み,生活困難から体制への不満が高まっている.また,アラブの春は,中東のどのような政治体制も永遠に続かないことを示した.イスラエルは,アメリカと共同で,あるいは単独でも,空爆を計画している.

今やイラン政府に対して,包括的な合意の条件を示すときだ.そして,妥結の期限を示す.その重要な部分は公開されるべきだ.公開することで,イラン国民は政府が何を要求されているかを知り,他国はイスラエルとアメリカが空爆する前に示した交渉条件を知り,イラン政府が合意した場合,後の不履行を責められ,それが攻撃に十分な理由を与えることになる.

アメリカ国民は,戦争という選択の前に,何を交渉したかを知るべきだ.


FP OCTOBER 11, 2012

Not All That It Can Be

BY WINSLOW WHEELER


l  エコノミストと権力

BLOOMBERG Oct 11, 2012

Celebrity Economist Rushes to Save India

By William Pesek

Raghuram Rajanは,世界金融危機が迫っていることを2005年から警告していた.インドのシン首相は,Rajanにインド財務相の最高顧問に就くよう要請した.

Rajanの就任は5つの点で優れている.1.改革の焦点(起業を促す金融部門と農業の成長を阻害している流通部門).2.シカゴ学派(生産性の改善を求めて供給側を改革する),3.知識人の再輸入(インドからの大量の知識人流出と再輸入),4.インドが,適時,的確に,決断を行うこと(インドが世界経済にとって次のエンジンになる),5.シン政権が改革派の本性を取り戻した.

NYT October 13, 2012

Romney’s Go-To Economist

By DAVID SEGAL

ロムニーは,当選したら1200万人の雇用を創出する,と約束した.CNNのアンカー,Ali Velshiは,これをばかげたアイデアとして描いた後,ロムニーの選挙参謀で,コロンビア大学のビジネス・スクール部長であるハバードR. Glenn Hubbardを紹介した.・・・こんな不可能な政策を決めたとき,あなたはそばにいたのか?

「それは完全に可能なことだ.景気回復に関する政策効果のモデルも,歴史データも,それを示している」と,ハバードは応えた.「197475年,そして198182年の景気回復期を観れば,このレンジの雇用が創出されている.我々は間違った政策ミックス,ひどいショック,異なる条件にあるが,もっとずっと良くなりうるのだ.」

ハバードは政権内エコノミストである.ジョージ・W・ブッシュの大型減税政策も設計した.もしロムニーが当選すれば,財務長官や,バーナンキの次の連銀議長にもなれるだろう.

ハバードだけでなく,サマーズLawrence H. Summersもヘッジ・ファンドへの助言で520万ドルを稼ぐ.しかし,ハバードは企業の利益を実現し,もっと潤沢な収入を獲得している.彼が財務長官になれば,大幅な支出削減は間違いない.

WP October 15, 2012

A dangerous economic tug of war

By Lawrence Summers


l  キューバ危機50周年

guardian.co.uk, Friday 12 October 2012

How Cuba won the missile crisis

Richard Gott

WP October 12, 2012

Asking the 3 a.m. question

By David Ignatius

すべての大統領選挙は,ある程度まで,午前3時の問題に関する国民投票である.すなわち,午前3時の緊急電話で起こされた大統領が,核戦争の決断をする.あなたは,彼がその決定を委ねてよい人物だ,と思うか?

キューバ危機の50周年に,この点を考察するのはふさわしい.しかし,今も,危機の過程には多くの答えられない問題がある.そして当時は,いかに多くのことが正しく理解されていなかったか,ということに驚く.

FP OCTOBER 12, 2012

Of Myths and Missiles

BY STEPHEN SESTANOVICH

ゲルブの論説Leslie Gelb, "The Myth That Screwed Up 50 Years of U.S. Foreign Policy" を批判する.ゲルブは,キューバ危機の強硬策が成功した,という神話が,アメリカ外交を誤らせ,今も,テヘランやタリバンとの妥協を拒んでいる,というのだ.

二つの問題がある.1.ケネディーは明確に妥協した.アメリカはキューバへ侵攻しない,という約束だ.2.フルシチョフは,アメリカの軍事的威嚇だけで,トルコのミサイル撤去の前に妥協していた.その理由は,世界を核兵器で爆破するのは避けたかったからだ.戦略家たちは,超大国が他方の攻撃をどうすれば確信するか,議論してきた.フルシチョフはケネディーが攻撃すると信じたのだ.

アメリカ側は,ケネディーも政権幹部たち(the "ExComm")も,分裂し,混乱していた.顧問たちは軍事的な威嚇だけで解決できない,と考えた.しかしケネディーは,直接交渉や柔軟な姿勢など,顧問たちの提案を拒否した.他方,顧問たちは反対したが,ケネディーは,フルシチョフが公開書簡で要求したトルコのミサイル撤去を受け入れた.無視するよりも,それが必要だと考えたのだ.

ケネディーは,むしろ,こうして危機回避の代償を高くした.ゲルブが批判したような強硬策への信仰を高めたのではない.ケネディー政権の外交は,強硬な行動主義,不決断,公開の威嚇と裏取引,過剰な関与と出口戦略の模索,という特徴を示した.

アメリカは圧倒的な軍事的優位を持つから,戦略など必要ない,と彼らは考えるようになった.その場に合った危機管理があるだけだ.こうした外交姿勢はベトナムで試された.

guardian.co.uk, Monday 15 October 2012

Cuban missile crisis: how the US played Russian roulette with nuclear war

Noam Chomsky

NYT October 15, 2012

The Price of a 50-Year Myth

By MICHAEL DOBBS

guardian.co.uk, Tuesday 16 October 2012

Cuban missile crisis: are we safer now than we were 50 years ago?

Heather Hurlburt

FP OCTOBER 16, 2012

100% Right 0% of the Time

BY MICAH ZENKO

FT October 18, 2012

Learn the Cuba lesson and seize initiative

PhilipZelikow

しばしば看過されるシンプルな教訓がある.危機は,戦略的な主導権を持つ側が起こすのだ.戦略的な主導権を持つ,とは,時間,場所,関与の仕方を決めることだ.それは,外交でも,軍事でも,国家管理の重要事項だ.

大統領が行う最も重要なことは,取り組む課題を決めることだ.大統領は,事態に流されることを,激しく,強固な規律を用いて,拒まねばならない.彼はトラブルの海を見渡して,財政危機,シリア,イラン,ユーロ危機,中国との関係,など,その中から選択する.そしてタイムテーブルとアジェンダを決める.内外における同盟関係を見出し,行動に移る.

50年前のキューバにおいて,戦略的な主導権を持ったのはフルシチョフだった.フルシチョフは秘密裏にキューバの大規模な核ミサイル基地を建設する計画を持った.ベルリン危機を使って西側を威嚇し,勝利する,と考えていたからだ.フルシチョフはアメリカの中間選挙を狙って,そのとき,キューバにもミサイルが設置されているはずだった.

アメリカが危険を冒してU2偵察機により基地の準備状態を監視したことは,フルシチョフを驚かせた.J.F.ケネディーはテレビでミサイルの撤去を要求し,キューバへの海上輸送を封鎖する威嚇行動に出た.アメリカが戦略的な主導権を握ったのだ.アメリカはまた,ヨーロッパ,米州機構,国連において,主要同盟国に説明と協調行動求める計画を持っていた.

ソビエト側はミサイル設置が間に合わず,政治的なメンツを維持する収拾策を模索し始めた.急場で失敗すれば,ベルリンの計画も失う恐れがあった.アメリカは冷戦の危険な局面を終結させる機会を得たのだ.戦略的な主導権が重要だった.

次の大統領は,まず,経済と財政の安定性を再建することだ.少なくとも2013年前半まで,アメリカは新しい戦争を始めない.


l  ノーベル平和賞

guardian.co.uk, Friday 12 October 2012

The EU's badly timed prize

David Priestland

FT October 12, 2012

A bizarre tribute to Europe’s past shames its present

Mark Malloch-Brown

SPIEGEL ONLINE 10/12/2012

Ignoble Prize?

Euroskeptics Call Nobel Honor an 'April Fool's Joke'

By Carsten Volkery in London

大陸ヨーロッパの政治指導者たちは受賞を喜び,ユーロ危機解決に向けて弾みをつけた,という.しかし,イギリスのような懐疑派はオスロの判断をばかげたものとして酷評し,呆れ果てた.ユーロ危機に苦しむ諸国でも,受賞は憤慨を巻き起こした.

ギリシャの野党Syrizaのスポークスマンは述べた.「EUのせいで,われわれは毎日,戦争状態を経験している.・・・平和的な(EU)などまったくありえない.」

guardian.co.uk, Saturday 13 October 2012

Let's dedicate the EU's Nobel peace prize to Europe's sexual revolution

Philip Oltermann

ノーベル平和賞は,2009年のオバマと同様に,EUの将来に向けて与えられたものだ.それは一言でいえば,「エラスムス」である.

それは1987年に設立されたEUの学生交換プログラムである.ヨーロッパ全体で250万人以上が利用した.外国の異性と結婚して帰国し無い者がいるのは,この計画の影の部分だ.

イタリアの小説家Umberto Ecoは,「エラスムスは最初の若いヨーロッパ世代を創造した」と述べた.それは「性革命」である,と.若いカタロニア人の男性がフランドル人の女性と恋に落ち,結婚してヨーロッパ人になる.その子供たちがそうであるように.

彼らは,子供たちとともに,戦争を叫ぶナショナリストの叫びを我慢しないだろう.さらに20年先には,彼らの中からメディア,ビジネス,政治の指導者が多く現れるだろう.そして,もしユーロ危機を収拾できれば,さらに長い平和の時代を築くだろう.

イギリスの懐疑派は,エラスムスではなく,自由貿易が国際結婚を促した,と言うだろう.しかし,ビジネスの仮面を被る前に,若者たちが出会う方が重要なのである.ヨーロッパの性的同盟こそ,ノーベル平和賞の受賞者である.

Project Syndicate 18 October 2012

A Europe for the World

Javier Solana


l  ユーロ圏の妥協

FT October 12, 2012

Greek crisis: Divided by a common currency

By Quentin Peel and Joshua Chaffin

WSJ October 13, 2012

Europe Lays the Foundations for Growth

By OLLI REHN

何気なく最近の論説を読む人たちが,ヨーロッパの諸政府はやみくもに緊縮政策の目標を達成するため行動し,欧州委員会は恣意的に決めた赤字削減額を強制することに執着している,と誤解しても仕方ないだろう.こうした有害な神話を粉砕するときだ.

欧州委員会が重視するのは,新聞の見出しを飾る名目値ではなく,合意された構造改革に向けて加盟国政府が行動しているかどうか,である.合意の重要な要素とは,構造的な中期の財政均衡化目標である.それは各国の事情を考慮して達成期限を遅らせることがある.

確かに,いま必要なのは財政刺激策であって,緊縮策ではない,という主張があるのは知っている.しかし,財政刺激策が有効である保証はないのだ.もし財政赤字を拡大して債券市場へのアクセスを失えば,それは大きなダメージになる.投資家の信頼を損なえば,資本逃避も起きかねない.

資本市場は,支出を増やして数年内に高い成長率を実現するよう求めているのではない.その国の財政収支が長期的に見て持続可能であればよいのだ.慎重な財政政策,福祉国家の持続可能性,構造改革の実施による成長と雇用の回復である.

それゆえ,各国の事情に合わせた財政再建が,ヨーロッパの経済政策の核心でなければならない.また,ヨーロッパレベルでは,"EMU 2.0"として制度の改革が必要である.

WSJ October 14, 2012

The Retreat of Globalization

By KEVIN WARSH And SCOTT DAVIS

FT October 15, 2012

A grand bargain to unify the eurozone

By Dennis Snower

ユーロ圏は二つの対立する解釈に縛られている.

債権諸国,特にドイツの国民は,地中海諸国の放漫財政の結果,勤勉に働く自分たちの貯蓄が奪われる,と感じている.債務諸侯,特にギリシャの国民は,ヨーロッパの覇権国家,ドイツが押し付ける緊縮策のせいで,社会の枠組みが崩壊しつつある,と感じている.両者が見ているのは,ユーロ圏システムが持続できない,ということだ.共通の金融政策と各国別の財政政策.規制されない金融の流れと各国別の金融保証・規制.財の単一市場とサーボス・労働市場の分割.

しかし,債権国と債務国の双方に利益をもたらす穏健な政策を支持する姿勢は,メルケル首相やショイブレ財務相が示しているけれど,ドイツが言うと注目されない.

ユーロ圏は,短期の遺物(財政赤字,不況,競争力)と長期の持続可能性(各国債務,金融市場,銀行)という問題を解決するため,同時に合意・妥協するべきである.債権諸国は,債務国が二度と債務危機を起こさず,債務を返済するなら,当面の不況対策と制度改革を支援するため追加融資に合意するだろう.持続可能性と遺物が切り離されるなら,合意は成立しない.

妥協は次のような合意を含むはずだ.1.ユーロ圏諸国は「財政安定化のルール」に合意する.すなわち,長期の債務/GDP比率.収斂化の比率.景気循環を抑える財政政策.それに応じて,遺物としての債務の共有化も行えるだろう.ルールは各国の政策が守り,それに失敗すると,たとえば,欧州委員会がその国の付加価値税を引き上げる.

2.ユーロ圏諸国は公的債務のソルベンシー基準を透明化する.これを満たせない場合は,支払い不能となり,破産処理に従う.3.ユーロ圏諸国は共通の金融規制に従う.金融機関は同じように規制され,預金保険を用意され,個別に再建・破産処理される.4.ヨーロッパの構造基金が成長の維持や赤字諸国の競争力を高めるために投資される.こうした改革によって,ECBはインフレ抑制の目標に集中できる.

SPIEGEL ONLINE 10/16/2012

New Powers for Brussels

Germany's Schäuble Presents Master Plan for Euro

VOX, 16 October 2012

Banking union for Europe - risks and challenges

Thorsten Beck

VOX, 17 October 2012

Coping with financial crises: Latin American answers to European questions

Eduardo Cavallo, Eduardo Fernandez-Arias

guardian.co.uk, Thursday 18 October 2012

Is the eurozone crisis nearly over?

Ha-Joon Chang, Alistair Darling, Costas Lapavitsas, Phillip Inman, Luis Garicano and Olaf Gersemann

Ha-Joon Chang ・・・そうは思わない.1.世界経済の悪化などがあれば,ECBが再び介入できるかどうか,わからない.2,緊縮策をこれ以上続ければ,ギリシャなどで社会不安が高まり,投資家が警戒して,一層の不況に向かう.緊縮策は失敗に終わる.

Alistair Darling ・・・オランド大統領が言うように,不況は債務と同じくらい重大な問題だ.景気回復には,1.銀行の自己資本強化と不良債権処理.2.ギリシャ問題の解決.3.成長と財政赤字削減に向けた信頼できる計画,が必要だ.

FT October 18, 2012

My vision for the future of Europe

David Miliband

Project Syndicate 18 October 2012

Europe’s Flawed Banking Union

Howard Davies


後半に続く)