IPEの果樹園2012

今週のReview

9/24-29

 

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リビアの反米デモ ・・・イギリス防衛産業 ・・・尖閣諸島問題の行方 ・・・アメリカの財政・金融政策 ・・・バーナンキのQE3 ・・・日本というスリラー映画 ・・・ECBだけでは解決できない ・・・モルドヴァ ・・・債務破局のサイクル

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  ハイテク選挙戦

FT September 14, 2012

Inside Obama’s HQ

By Richard McGregor

オバマ陣営のスタッフたちは,高度にコンピューターや情報を駆使する選挙戦を指揮しており,マイクロ・ターゲット戦略を適用している.


l  リビアの反米デモ

FP SEPTEMBER 14, 2012

Meet the New Boss

BY STEVEN A. COOK

FP September 14, 2012

The Arab upheavals and Iran's nuclear program

Posted By Stephen M. Walt

もしまだイランの核施設に空爆することが正しいと信じているなら,愚かな素人の作ったビデオがチュニジアからパキスタンまで,反米デモを引き起こしたことを考えてみるべきだ.

NYT September 15, 2012

It’s Not About the Video

By ROSS DOUTHAT

WP September 152012

A fight against religious extremism

By Ahmed Salah

発言や映像を取り締まるのではなく,問題の根源を理解すること.われわれは,アラブの春を経験した中東世界に広がる,世俗派と宗教派の間でしばしば生じる軍事衝突,革命が起きた土地で進む権力闘争を観ている.

WP September 152012

Washington’s role amid the Mideast struggle for power

FT September 17, 2012

Obama not to blame for Middle East anger

By Gideon Rachman

この事件は,ロムニー陣営にとっての贈り物だろうか? 保守派のコメンテーターは一斉にオバマを非難する.「我々は,イスラム圏に対するオバマ外交が溶融し,崩壊するのを観ているのだ」とCharles Krauthammerは述べた.

それは間違っている.オバマが採った政策はアメリカを中東世界の反米運動に対しても有利にしている.共和党員はオバマ外交はカーター政権下の人質事件と同じで,アメリカの弱さを示したから,このような反米行動が起きる,と非難する.しかし,カーター後の反米活動に犠牲となったのは民主党・共和党の大統領と関係ない.

オバマがムバラクを見捨てたからエジプトは混沌に落ち込んだ,というが,独裁者の権力を維持することがアメリカの政策に有利であったとは言えない.むしろ共和党の内部で中東政策は分裂している.孤立主義者,ネオコン,リアリストは,互いに違った政策を支持している.

guardian.co.uk, Tuesday 18 September 2012

The only surprise is there aren't more violent protests in the Middle East

Seumas Milne

Project Syndicate 18 September 2012

Big Countries, Small Wars

Robert Skidelsky

オバマ大統領は,Christopher Stevens大使を殺害した者たちに復讐を誓った.どうやってするかはわからない.

1864年,アビシニアの肯定はイギリスの執政官と官吏数人を人質にした.3年後も,まだ解放を拒んでいたが,イギリスは13000人の軍を送りこんだ.3か月かかって山を越え,イギリス軍は捕虜を解放し,首都を焼き払った.皇帝は自害し,この作戦の指揮官は伯爵となった.

現代でも同じようなレトリックは盛んだが,結果は思わしくない.1960年代のベトナムからアメリカは撤退し,1987年にはソ連軍がアフガニスタンから撤退し,その後のソ連崩壊にも影響した.25年間,5000億ドル,約10万人のNATO軍がアフガニスタンを去るが,タリバンは今もアフガニスタンの大部分を支配している.

明らかに,大国は小さな戦争にも敗北するのだ.もし大規模な軍事力を行使して小国に介入しても,」大国が国益や道義的使命を達成できないとしたら,どうすれば良いのか?

1966年の映画「アルジェの戦い」は,植民地の占領軍が経験するジレンマをうまく描いている.アルジェリアにおけるフランスの支配に対して国民解放戦線FNLが警官の殺害に及んだとき,フランス政府は通常の対策から,次第に反乱の激化と惨劇を経て,落下傘部隊を送り込む.その指揮官は,FNLの指揮官を殺害し,大衆の指令組織を破壊することを目的にしたのだ.

彼らはそのために拷問によって指揮官の居場所を知り,暗殺を実行する.拷問は非合法だが,大佐は説明する.「もしあなたがフランスに留まることを望むなら,その帰結をも受け入れるしかない.」

それは現在の反テロ作戦の原型である.他国における軍の駐留は最小限に抑え,主にCIAのような諜報機関と特殊部隊だけになる.逮捕した容疑者は現地の友好的な政府に引き渡され,彼らが拷問する.そして,集められた情報から「暗殺リスト」が作成される.

ビンラディン殺害は,その死亡を確認するために,狙撃部隊によって行われた.しかし,通常の暗殺はドローンが行う.それは無人偵察機であるが,コンピューター操作されるミサイルによって武装もできる.主にパキスタンで,推定3000人が殺害された.

反テロ作戦のもう一つの側面は,民衆の心をつかむ作戦である.アメリカはベトナムで,消費財を配り,インフラを建設した.イラク,アフガニスタンでもそうだ.「国家建設」の市民的な側面は,軍が関わらない方が良い.それはもちろん爆撃や銃撃するより良いだろうが,非対称的な戦争行為である.ドローンを使った,無関係な市民への誤爆と並行して行われる.

倫理的,法的な問題も重要であるが,それを無視しても,拷問や暗殺が政治的目的を達成することはないだろう.アルジェリアに対する対テロ作戦は鎮静化に成功したが,その後,運動は再現し,フランス人たちがアルジェリアから脱出する.

現代の国際社会も戦争の性格を見誤っている.単一の指揮官に従うグローバルなテロ組織など存在しない.それはヒドラのように,旧い頭を切ると,すぐに新しい頭が生えてくる.心をつかむ作戦は不敗をもたらし,介入軍によって設立された政府への信頼を破壊する.

われわれが戦っているのは,われわれがかつて見捨てた,粉砕された国の人々である.その人々が戦うのは,結局,彼ら自身の問題を,彼らの方法で処理する権利がある,と信じるからだ.自治政府は優れた統治よりも良い,という考えを広めたフランス革命を責めるべきだ.

YaleGlobal, 19 September 2012

Middle East Protests: A Salafist Trap

Fawaz A. Gerges


NYT September 15, 2012

World Hunger: The Problem Left Behind

By TYLER COWEN


guardian.co.uk, Sunday 16 September 2012

Occupy and the reasons for our discontent

Mark Greif

BLOOMBERG Sep 21, 2012

As Occupy Wall Street Fades, Powerful Ideas May Live On

By Thai Jones


l  イギリス防衛産業

The Observer, Sunday 16 September 2012

In defence, as in finance, the truth is clear – our future lies in Europe

Will Hutton

ドイツもフランスもスペインも,自国の防衛産業を望んでいる.イギリスのように.しかし,どこでも防衛予算は削減されており,ヨーロッパの防衛産業を統合するしかないだろう.先週,この3か国を結ぶEADSとイギリスのBAEシステムズが合併すると発表した.

4か国が先を争えば,合併は失敗する.しかし,分裂すればヨーロッパの防衛産業は滅ぶだろう.雇用を維持することも,技術のフロンティアを拡大することもできない.それは何年も前から彼らに分かっていたことだ.

イギリスの軍隊が直面している士気の低下,軍備の老朽化,周辺化,は数十年を経ている.それらは金融と同じ問題である.イギリス産業の二つの柱,貿易産業と金融業で,EUとの絡み合いが避けられない.これこそが産業を育て,超国家的ガバナンスと協力により,現代世界の変化に決定力を保持する唯一の方法である.

誰もそう言わないけれど.政治家も,評論家も,産業界の指導者も,はっきりとは言わない.むしろユーロの崩壊を祝っている.彼らはこの2年間何度も崩壊を予言したからだ.しかし,ユーロはまだ生き残っている.必要な改革は実現してきた.欧州安定化メカニズム,ECBの無制限債券購入,ヨーロッパ規模の銀行監視.アイルランドとギリシャでは苦しい不況の中で,苦しみながら実質賃金の切り下げを実現した.

ヨーロッパやユーロに反対する者は,ますます苦別できなくなった.ユーロ懐疑派は,ますます

ヨーロッパ版パーティー運動になってきた.

FT September 16, 2012

A third quest for the holy grail of defence

By François Heisbourg


l  イギリスの財政政策

FT September 16, 2012

Britain risks a lost decade unless it changes course

By Lawrence Summers

イギリス政府は,金融危機後の不況を心配しているときに,急激な財政再建を行った.それはエコノミストたちの予想通り,景気を悪化させ,回復を遅らせた.失われた10年を避けるために,イギリス英府は財政再建を延期して,短期の需要を増やさねばならない.それが構造問題を解消することにもなる.

財政再建の逆転は金融市場の信認を崩壊させる,という反対論がある.しかし,財政赤字の理由は成長できないことである.財政再建を遅らせても成長する方が金融市場の信任を得られるだろう.

FT September 19, 2012

The real lesson from Japan’s lost decade

By Chris Giles

われわれは日本化するのか? 失われた10年を警告することは正しいか?

名目GDPを金融政策の目標に採用することが望ましい.


l  尖閣諸島問題の行方

NYT September 16, 2012

Beijing Mixes Messages Over Anti-Japan Protests

By IAN JOHNSON and THOM SHANKER

Global Times | 2012-9-16

US backing may prove costly for Japan

guardian.co.uk, Monday 17 September 2012

China and Japan: a dangerous standoff over the Senkaku islands

Simon Tisdall

日本と中国の間で領土問題の行き詰まりから,中国全土に抗議デモが起きている.それは日本が尖閣諸島を国有化したことで火が付いた.しかし,これは根深い,多方面に及ぶ,第二次世界大戦の前にまでさかのぼる制度化された紛争の続きである.1931年,満州事変は,日本帝国の中国北部に対する侵略計画であった.

その後の長い,悲しい歴史において取った戦時行動に関する,日本はドイツのような真摯な反省や悔恨を示さなかった,と中国の評者たちは不満を述べてきた.日本の政治家が靖国神社参拝を行うたびに口論を引き起こした.

尖閣諸島の対立はその最新の例であり,日中双方の信頼関係を築く試みは挫かれてしまった.アメリカ政府は日中関係にますます神経をとがらせている.アメリカのLeon Panetta国防長官は,双方の刺激的な行動がエスカレートし,誤解,暴力,そして潜在的には戦争が起きる可能性もある,と警告した.

中国はアメリカの発言を嫌い,特にPanetta国防長官が紛争となっている尖閣諸島にも日米安保条約を含むと明言したことに憤慨した.それはクリントン国務長官が中国と東南アジア諸国に自制と対話を求めたときと同じである.オバマ政権のアジア旋回を,中国は日本などとの中国封じ込め体制であると警戒している.

今回の紛争が異なるのは,日本で政治に変化があったからだ.野田首相はナショナリストの意見を意識し,読売新聞に答えて,尖閣諸島に関する日本の領有権を断定し,積極的な開発のために国有化を明言した.これが中国を刺激したのだ.大衆デモを組織し,漁船団を送り,経済制裁を拡大した.それは激しいものだが,珍しいことではない.対話に戻ることを中国に求めながら,国際法,実効支配,領土問題は存在しない,と野田首相が言及したことは失敗だった.

guardian.co.uk, Monday 17 September 2012

Rage at an elite that has stolen China's soul

Chun Lin

毛沢東の没後36周年が,政府ではなく,民衆によって祝われた.周恩来ともう一人の指導者Chen Yiの銅像の開幕式で,温家宝首相が演説した.人民共和国の父たちは恥辱の100年を終わらせた.われわれはその成果を思い出し,学び,継承しなければならない,と.

その演説の後,日本は尖閣諸島,中国名で釣魚島を「国有化」した.

しかし,温家宝の言葉や街頭を埋める大衆抗議デモを,単なるナショナリズムと見ることは,間違いだ.むしろ,指導者たちも知っているように,多くの者が,外に対して弱く,内に対して腐敗した体制についての不満が蓄積し,中国と近隣諸国との海上紛争に,それを表明する機会を見出したのだ.国内政策への不満を掲げ,毛沢東の肖像画を掲げ,社会の良識に戻るように求めた.

鄧小平の先富論は,中国の庶民から見て.急速な成長やグローバリゼーションだけでなく,モラルの低下や社会・環境のコストをもたらし,革命や社会主義の精神にあった重要な価値を捨て去った.

しかし,所得の両極化を,鄧小平は警告した.「もし百万長者が出るのを許せば,われわれの改革は失敗する.」

FP SEPTEMBER 17, 2012

Dangerous Waters

BY STEPHANIE KLEIN-ALBRANDT

日本政府の尖閣諸島国有化に対する中国政府の反応は,明らかに,対立の水準をこれまでにないものへと高めた.国有化はナショナリストの石原東京都知事による買収を防ぐためであったが,その違いは北京政府にとって重視されず,タイミングも最悪であった.

さまざまな警告や制裁を組み合わせて北京は対応しているが,特に,この海域を法的な支配領域として示したことは重要である.北京から見て,この40年間,日本が不当に実効支配してきた島を取り戻すことを意味するからだ.その姿勢は,日中の共同資源開発を目指すことや,南シナ海で明確な定義をしないまま紛争を継続することと,明らかに異なっている.

釣魚島周辺海域における「法的強制力を確保するため」,北京政府は海洋監視船を6隻派遣した.この海域で操業する1000隻の漁船を保護する,という.この対応は,明らかに,内外の政権に対するイメージを意識したものだ.中国の多くのアナリストは,国有化が中国の指導部交代を狙った,日本政府による不安定化の試みである,と疑っている.貧富の格差拡大,腐敗の蔓延,インフレの高進,住宅価格高騰,指導部内の対立の噂,などが人々の不満を蓄積している.このようなときに,国益を裏切ることは許されない.

しかし,ナショナリズムの高揚を放置することは,北京政府の将来の政策選択を制約するだろう.大衆はますます多くの情報を得ており,その主張は瞬時に広がる.政府がナショナリズムの満ち引きを操作する能力は失われていく.インターネットを駆使して,中国の監視船の衛星写真も手に入る.紛争海域を守れないと,政府の行動を批判するだろう.

過去に起きた海上の衝突は,日本の海上保安庁と中国の民間漁船であった.次はそうではない.

FP SEPTEMBER 17, 2012

Trouble in the South China Sea

BY BONNIE GLASER

アメリカは,中国がますます影響力を高めるアジア地域において,そのバランサーとしての役割を求められている.中国は経済的な地位を高めるにつれて,それを外交的に利用する姿勢が明白だ.他方,アメリカ政府は公平な姿勢を示し,逆に,中国に対して明確に反対する立場を取りにくくなっている.小国を犠牲にして,米中間で有利な取引をするという疑念を払しょくし,ASEANの役割を重視するべきだろう.

FP September 17, 2012

Will trade keep the peace in Asia?

Posted By Clyde Prestowitz

イギリスの穀物法廃止に際して,Richard Cobden は書いた."Free trade is God's diplomacy and there is no other certain way of uniting people in the bonds of peace."

日本,韓国,台湾,中国は,互いに密接に貿易をおこなっている.しかし,ほとんど経済的価値のない岩礁をめぐって軍事衝突も懸念される紛争を過熱させている.

4カ国は地域の包括的な自由貿易協定に合意している.アメリカは,韓国と日本に軍隊を駐留させており,安全保障を約束している.中国や台湾の貿易と成長にも,アメリカは深く関わっているが,成長とともにナショナリズムを強め,攻撃的になった.アメリカの不安は深刻だ.

BLOOMBERG Sep 17, 2012

Chinese Riots on Japan Pit Confucius Against Self-Interest

By Adam Minter

中国人にとって,危機に際しては,国家がすべてであり,個人は無である.それは儒教の思想であり,皇帝や共産党が好むものだった.儒教の伝統は,個人よりも集団行動を重視する姿勢に現れる.

中国の集団主義は,単なるトップ・ダウンではなく,草の根にまで浸透している.しかし週末の抗議デモは,日系の商店やレストラン,工場に対する破壊と略奪に及ぶ,あまりにも激しい暴力となった.政府系のChina Dailyでさえ,「合理的な愛国主義」を求めたほどである.

中国人の所有物にまで集団的な破壊行為が示されたことは,中国における,個人よりも国家や集団を重視する長年の教育に原因がある,という意見をネット上で見る.謙虚さよりも憎しみを煽り,人民の愛国心を刺激するなら,状況によって暴力行為も避けられない,と.

こうした穏健な見方が中国にも表れるようになった.

2012-09-17 (China Daily)

Japan must act responsibly

2012-09-17 (China Daily)

Consider sanctions on Japan

By Jin Baisong

2012-09-17 (China Daily)

Rational patriotism needed

FT September 18, 2012

Tokyo and Beijing must step back from the brink

By Minxin Pei

国内経済情勢や国内政治から考えて,互いに,外交上の対立など起きてほしくないはずの日本と中国が,深刻な紛争を生じて,軍事衝突の危険まで冒そうとしている.この危機は,熟慮に富んだ外交術が用いられていたなら,十分に回避できた危機であるだけに,残念だ.

中国にも,日本にも,政治指導部が外交問題で譲歩しにくい状況がある.満州事変の記念日とも重なった.しかし,両国の指導部が強い姿勢でエスカレートを止めるべきだ.中国は国営メディアの反日報道を抑制する.警官を配置して日本人や日系ビジネスの安全を確保する.政府艦艇を紛争海域に送らず,日本の保安艦艇との衝突を回避する.

日本は,「国有化」という言葉に代わる法的表現で中国への配慮を示す.日本の政治家たちは国内選挙向けの強硬発言を抑える.

重要なことは,双方が外交交渉を再開し,一歩退くことだ.

FT September 18, 2012

Beijing and Tokyo’s island challenge

BLOOMBERG Sep 18, 2012

Why Outrage Over Islands Full of Goats Is Crazy

By William Pesek

日本人は「尖閣諸島」と呼び,中国人は「釣魚島」と呼ぶ.私がもっとふさわしい名前を与えよう.「山羊の島」である.

この人も住まない,ヤギしかいない岩礁をめぐって,日本人と中国人は戦争も辞さないと主張する.外交官は互いを非難し,アメリカのLeon Panetta国防長官は軍事的な「暴発」を警告する.世界経済の現状において最も好ましくない事件だ.

今すぐ,愚かな口論を終わらせることだ.野田佳彦と胡錦濤は停戦を合意する.あるいは,彼らが,その愛着を示す島で会談すればよいだろう.もしくは,ホワイトハウスで会って,オバマ大統領が合意を仲介してもよい.

中国にも,日本にも,国内政治が問題なのだ.中国の指導部交代に対して,日本では大震災から18カ月を経ても復興の歩みは遅く,デフレや政治的混迷で銀行も企業も日本経済のかつての誇りを取り戻せない.その横では,急速に増大する中国経済がある.

石原慎太郎は,日本の影響力が失われるのを嫌い,尖閣諸島の買収を計画した.日本の政治家たちは,支持率が下がると中国を強硬に非難して注意を惹く.しかし,最近の日本政治は変わった.かつての異質な右翼団体と違って,家族連れがデモに参加する.

中国も日本も,この緊張関係を解消するときだ.アジアは自由貿易協定を結び,株式市場や債券市場をリンクし,移民,課税,会計に関する基準を調和させる.何兆ドルもアメリカ財務省証券を購入して保有するより,その資金でアジアに何ができるか考える方が良い.

そして石原は,貴重な税金を使わなくても,十分に裕福なのだから,自分で島を購入し,移住してはどうか? 山羊たちが歓迎してくれる.

NYT September 18, 2012

In China, Panetta Says U.S. Focus on Asia Is No Threat

By THOM SHANKER and IAN JOHNSON

WSJ September 18, 2012

These Anti-Japan Protests Are Different

By LINDA JAKOBSON

WSJ September 19, 2012

China's Nationalist Furies

2012-09-19 (China Daily)

Worrying echoes of the past

Global Times | 2012-9-18

US diplomacy lesson in equal engagement with China, Japan

NYT SEPTEMBER 19, 2012

The Meaning of the China-Japan Island Dispute

By DIDI KIRSTEN TATLOW

FP SEPTEMBER 19, 2012

The Problem with Patriotism

BY CHRISTIAN CARYL

統制の無いナショナリズムの高揚は,両国のリベラルな民主主義に有益な条件を創るとは思えない.愛国心を指標とした政治は,異なる意見の間で寛容さを求める民主主義と矛盾する.

香港で,北京政府の導入しようとした愛国教育に反対した民主派の団体の指導者が,同時に釣魚島防衛委員会として島への上陸に成功し,日本の海上保安庁に逮捕された.北京派の団体はこれを愛国的行動として賛美し,彼は英雄になっている.

“Burning 5-star flag in Hong Kong Island, raising 5-star flag in Diaoyu Islands. Serious split personality disorder!”

愛国心は民主主義を確立し,それを守るためにも重要な役割を果たすが,その強烈な感情を政治的に利用される場合も多い.そして,中国に広がる反日デモは,政府の意図や管理を超えてしまい,政治不安をもたらす恐れがあり,日本では政治の右傾化を刺激する.双方の政治は極端な主張を強め,衝突の危機を招くのだ.

一つの希望は,民主化された台湾が双方との良好な関係を望んでいることだ.台湾政府は日中の領土紛争に効果的な仲介を果たし,東アジアでも民主主義が機能することを示す機会となるかもしれない.

(China Daily) 2012-09-19

Japan has to change attitude

By Sun Cheng

Project Syndicate 19 September 2012

The Next Task for China’s New Leaders

Ana Palacio

中国共産党の指導部交代と次の政治体制にとっても,法の支配を確立し,国民を安心させることは正統性を高めることになる.

FP SEPTEMBER 19, 2012

The Fifty-Megaton Elephant in the Room

BY JEFFREY LEWIS

双方が軍事的な弱さを認めないことは,成果につながる交渉を妨げる.核兵器の蓄積が進めば,安全保障上の懸念を取り除くために,米中でも「相互確証破壊」を議論するときだ.

NYT September 20, 2012

Sleepy Islands and a Smoldering Dispute

By MARTIN FACKLER and IAN JOHNSON

BLOOMBERG Sep 20, 2012

China and Japan Must Break Out of History’s Trap

By Pankaj Mishra

日本と中国の歴史は何度か逆転し,現在の政治を制約している.

19499月,毛沢東は中華人民共和国の成立を宣言した.「中国人民は,人類の4分の1を構成している」と警告し,「人民は今や立ちあがった.彼らはもはや愚弄されたり,侮辱されたりする国民ではない.」

中国は日本帝国の侵略と戦い,アメリカに支援された蒋介石と戦ってきた.しかし,今も,インド,インドネシア,モンゴル,フィリピン,ベトナム,といった周辺各国との国境紛争を抱えている.

かつて中国は儒教文化を周辺各国に輸出し,何世紀にもわたって日本の「先生」であった.しかし,19世紀後半,中国は外国勢力の侵入でメロンのようにスライスされる一方,日本は近代国民国家として自力で再構築した.

日本はその後,中国との戦争に勝利し,台湾を併合し,西側モデルに依拠した帝国になろうとする.多くの中国知識人が日本に亡命して,日本の新しいパワーを学ぼうとしていた.

孫文Sun Yat-Senは生涯の多くの期間を日本で暮らしたが,最後に書いた.「日本は今や力による支配という西側文明を身に付けた.しかし,正しさによる支配という東洋の文明も保持している.現在の問題とは,日本が西側文明の強硬派となるのか,東洋を導く先駆者となるのか,ということだ.これが日本人民の前にある選択である.」

両国の歴史教科書は都合よくねつ造されたままだ.日本は戦時下の野蛮な行為を伝えず,東南アジアの解放者のように描き,中国は毛沢東のもたらした災難を伝えず,日本の膨張主義を人類最大の犯罪であったと主張している.

中国はソ連に対する同盟相手としてニクソンに受け入れられ,アメリカと日本が関係を修復した.その後,中国経済は開放されて外国との貿易や投資を増やした.それでも日中関係は,インドとパキスタンのように,歴史的に刻まれた対立に制約されている.双方が相手国の邪悪なイメージに囚われている.

両国の教科書が改善されるには長い時間を要し,その間,中国のユニクロは脅威に直面することがあるだろう.しかし,ある時点で,より大きな,パワーを持つ国家が立ち上がって,大胆かつ寛容な打開策を示す.1924年,孫文は指摘したように,日本はどのような国になるかを選択すべきだった.今,その機会は中国にある.中国の台頭が真に平和的であり,力よりも正しさを重視するということを示すときだ.

FP September 21, 2012

Why doesn't China just buy the Senkaku islands?

Posted By Stephen M. Walt

尖閣諸島を簡単に説明すれば,

Japan seized control of the islands following a war with China in 1895. The United States administered them from 1945 to the early 1970s. Japan regained control in 1972, when ownership was reacquired by a private family. Nobody lives there.

ところが,今年の初め,東京都の右派知事が,もし実現すれば世界史上かつてない遠方の東京郊外となっただろうが,買収計画を発表した.これを阻止するために日本政府が買収したが,それは中国を刺激し,全土に抗議デモが広がったのだ.

双方が主権を主張するこの島をどうすればよいのか? かつて,主権国家は互いに領土を売買した.アメリカはルイジアナやアラスカを買ったのだ.もし日本政府が約20億ドルで民間人からこの島を買うのであれば,同じ額(あるいは市場が決める価格)で中国政府に売ってはどうか?

これを阻むのはナショナリズムだ.中国が自分の島を得るのに日本に支払うことはあり得ないし,日本は,たとえ誰も住まないような岩礁でも,それを売ることにより国民の誇りを失う.

しかし,隣人との境界争いを買収で解決することは面倒な法廷闘争より合理的である.日本は台頭する中国に対して,地域の合理的な大国になれるかどうか,アメリカに比べて中国が真に地域を指導できるか,国際的に評価する(そうでなければ批判する)機会を得る.

もちろん,両国とも説得できないだろう.彼らは東アジアにおける安全保障上の競争を激化させる.


後半へ続く)