前半から続く)


l  日本の転換

WSJ September 10, 2012

A Plan to Revive Japan

By TAKEO HOSHI AND ANIL KASHYAP

日本経済が20年間の停滞を脱するために,その原因を究明し,再生の計画を立てるように,われわれは求められた.その報告書には三つのテーマがある.規制の改革,市場開放,マクロ政策の改善.

WSJ September 11, 2012

Japan's Crisis of Democracy

By RICHARD KATZ

WP 09/13/2012

The end of nuclear power? Don’t celebrate yet.

By Fred Hiatt


l  中国のガバナンス

Project Syndicate, 11 September 2012

China’s Evolving Web

Andrew Sheng

市場はさまざまな契約の集積である.国家の役割は,この契約を守らせ,規制し,システムの失敗を回避させることだ.

しかし,新興諸国の市場がそうであるように,中国の市場システムも未熟なものだった.むしろ国家や家族の関係が重要であった.それでも中国が近代的なグローバル・サプライ・チェーンで重要な役割を果たし,急速な成長を実現できたのは,「最高位のガバナンス・アーキテクチャ」が優れていたからだ.それはコンピューターのオペレーティング・システムに等しい.

システムの効率に重要な影響を与える最高ガバナンスは,中国の歴史や文化,制度によって実現可能になった.

FT September 13, 2012

China is losing its manufacturing lead as a production hub

By George Magnus

中国は投資や融資を量的に拡大することで成長する時代を終わるだろう.そして,技術や革新によって成長しなければならなくなる.労働コストの上昇,熟練の不足,政策の差別的な適用,知的所有権は守られず,法の支配が弱い.他方,アメリカの製造業では革新的な小規模企業が頂点を占めている.

オフショア生産拠点の逆転(本国回帰)が始まっている.


l  シカゴの教員組合

guardian.co.uk, Tuesday 11 September 2012

The problem with unions is they're not strong enough

Seumas Milne

WP September 12

In Chicago, a Democratic civil war

By Harold Meyerson

NYT September 12, 2012

Students Over Unions

By NICHOLAS D. KRISTOF


l  銀行改革

guardian.co.uk, Tuesday 11 September 2012

Without banking reform, investing in innovation is too great a risk

Mariana Mazzucato


l  産業政策

guardian.co.uk, Wednesday 12 September 2012

'No industrial policy please, we're British' is out of date

Ha-Joon Chang

Vince Cableの産業政策論は浅薄である.産業投資のための新銀行設立.熟練への投資.政府調達.衛生や安全の基準緩和.

ただし,問題はあるが,イギリスの政策姿勢を転換したことは確かである.30年ぶりに,イギリス政府は産業政策に言及した.それが拒まれていた理由は三つある.1.脱工業化時代になった,2.政府ではなく市場が決める.3.イギリスの文化に合わない.

しかし,金融危機やオリンピックは人々の意識を変えた.危機後の回復も,産業政策の巧みな国(ドイツ,フィンランド,韓国,中国)が優れている.産業政策はイギリスらしくない,というのは,表面的であり,近視眼的でもある.

そもそも近代的な産業政策を開発したのはイギリスだった.R.ウォルポールが,保護主義,補助金,政府調達,熟練形成などを18世紀に行って,綿工業における産業革命を導いた.


l  「アラブの春」と激化する反米行動

guardian.co.uk, Wednesday 12 September 2012

Libyan attack: it should have been clear deposing Gaddafi was the easy bit

Simon Tisdall

アメリカのリビア大使Christopher Stevens3人の大使館員が殺害された.Stevensはリビア介入とカダフィ政権崩壊にも積極的に関わったアメリカ国務省のスタッフだ.犯人はわからない.リビア政府はカダフィ派の犯行と主張するが,超保守派のサラフィストによる犯行という見方が有力だ.

他の武装集団が手を貸したかもしれない.その責任は,直接,間接に,ロンドン,パリ,ワシントンにまで至る.昨年,NATO軍によるリビア介入は,その結果を十分に考慮することなく行われた.しかし,カダフィ打倒は最も簡単な作業である,とわかっていた(そうであるべきだった).その後,イラク型の内線やアフガニスタン型の無秩序になることを防ぐことこそ,はるかに難しい作業なのだ.

Stevensの死はそれを示している.西側の大国は,再び,消すことができない火災を起こした.キャメロンやサルコジが煽り,油を注いだリビア革命は,混沌とした,際限のない暴力に向かっている.カダフィの支配体制が亡くなった後,リビアには国民的な政治指導者がおらず,憲法もなく,制度は機能していない.最も重要なことは,治安が失われたことだ.東部と西部の対立は激化し,政治党派は入り乱れ,カダフィの息子や理論家の裁判に関する論争が激化している.

実効的な中央の権力は失われ,その真空を埋める武装集団が各領地を支配している.武装集団の政府や軍に対する挑戦は急速に増加している.革命によって散逸した武器の85%は,軍でも軍閥でもない,各地の武装集団や犯罪者,宗教的な過激派が保有している.激しい戦闘が行われたMisrataでは政府軍と各派が各地を分割占拠し,国家の中の国家になっている.

政治・経済状態の悪化は極端なイデオロギーが浸透するのを許している.西側の政治家たちは,イラクと同様に,十分な配慮も将来への見通しもなく,複雑な状況に軍事介入してしまった.

NYT September 12, 2012

Libya Attack Provokes Washington Crisis

By PETER BAKER, DAVID D. KIRKPATRICK and ALAN COWELL

FP SEPTEMBER 12, 2012

Don't Give Up on the Arab Spring

BY SHADI HAMID

Christopher Stevensの死をアメリカは無駄にしないだろう.もしオバマ大統領が介入を決断していなければ,リビアは今も独裁者カダフィが支配していただろう.Stevensは,ベンガジの反政府軍に強く支持されていたし,その大義を支持していた.彼は,リビアの国民が誰も観たことが無いビデオを理由に殺害されたのだ.

この裏切りに対して,アメリカ人の多くが「イスラム教徒とは何なのか?」という疑念と憤懣を抱いただろう.反イスラムのフィルムが原因かもしれないが,アラブ諸国には反米感情が蓄積されている.たとえアメリカが正しいことをしても,エコノミストが「非弾力的」と呼ぶように,その行動は反米感情を変えることなく,容易に不満を噴出させるのだ.オバマ政権になってからも,今の方が,ブッシュ政権の末期よりも,アラブ諸国におけるアメリカ支持率は低下している.

彼らの深い反米感情には根拠がある.たとえばアルジェリア政府は,1991年に地域を指導する優れた民主化を行ったが,西側の支援する軍事クーデタによって転覆された.イランでは1953年,民主的に選出された首相がCIAの支援するクーデタで失脚した.彼らは今もその結果に苦しめられている.反米主義は消えるだろうが,一夜にして変化するのを期待しても無駄だ.

アラブ諸国では多くの人々が911にもアメリカやイスラエルがかかわったと考えている.また,アラブの春の後,アメリカは支援に疲れ,中東から撤退することを主張する者が増えるだろう.これは,特に,今の時点で,大きな間違いである.アメリカが撤退すれば過激派が支配を拡大するだけである.

アメリカは長年,アラブの民主主義を挫くような専制支配体制との協力関係を支持してきた.アラブの春はこの矛盾した状態を打ち破ったのだ.アメリカ政府はアラブの春に対する関与を強化しなければならない.今こそ,過激派ではなく民主的勢力を支持するように,人々を説得しなければならない.アラブの民主派はアメリカの支援を求めている.

FP SEPTEMBER 12, 2012

The Tragic Optimism of an American Diplomat

BY JAMES TRAUB

NYT September 12, 2012

Murder in Benghazi

NYT SEPTEMBER 13, 2012

Does Mideast Democracy Complicate Diplomacy?

NYT September 13, 2012

Turmoil Over Contentious Video Spreads to Yemen and Iran

By NASSER ARRABYEE, ALAN COWELL and RICK GLADSTONE

NYT September 13, 2012

What Libya Lost

By ETHAN CHORIN

WP Thursday, September 13

In Egypt and Libya, radicals are jockeying for power

By David Ignatius

FP SEPTEMBER 13, 2012

Libya's Downward Spiral

BY CHRISTOPHER S. CHIVVIS

FP SEPTEMBER 13, 2012

America's Other Army

BY NICHOLAS KRALEV

WP Friday, September 14

The proper U.S. response to Cairo attack

By Robert Kagan

共和党員にはリビアやエジプトへの援助を減らせ,という者がいる.むしろ治安回復の支援を増やすべきだ.エジプトの情勢が重要だ.

WP September 14, 2012

Anti-American Protests Over Film Expand to Nearly 20 Countries

By DAVID D. KIRKPATRICK, ALAN COWELL and RICK GLADSTONE

Project Syndicate 14 September 2012

Blood Sport Politics

Anne-Marie Slaughter

民主主義は殺し合いではない.アメリカ人が恐れたのは,独裁者を倒した後,選挙による専制支配が誕生することだった.

アメリカは,国民に支持された憲法の下,独立した司法に従い,国際監視を受け入れる,自由で公平な選挙によって生まれたすべての政府を支持する,と明確にしなければならない.


l  無人攻撃機による支配

FP SEPTEMBER 12, 2012

Take Two Drones and Call Me in the Morning

BY ROSA BROOKS


l  選別する超大国

FT September 13, 2012

The US is becoming a selective superpower

By Philip Stephens

外交政策が大統領選挙の焦点にはならない.景気回復と中産階級の雇用が重視される.アメリカの外交官が殺害されて,中東の反米デモが広がっても,それは変わらない.

未来の歴史家は,アメリカの世界における役割が変化し始めたときとして振り返るだろう.リビアへの介入で主導権を取らず,シリアへの介入を躊躇し,アフガニスタンからの撤退やアジアへのバランス回復に強調点を置くオバマ政権を観ると,アメリカのイメージが変わったとわかる.アメリカは,グローバルな公共財を守る国ではなくなり,国益の厳しい再評価を始めたのだ.新しい国際システムを築くような大風呂敷は広げず,アメリカを中心に勢力均衡を図り,同盟関係を組み直す,言うなれば,選別的な超大国になろうとしている.

これは,新興諸国,特に中国が台頭してきたことの結果である.イラクとアフガニスタンの失敗を経験して,アメリカの国際的な冒険主義は失われた.財政再建のために,軍事予算は削られていく.

アメリカの後退は,アメリカが地政学的に安全であり,資源も豊富で,エネルギーや食糧を自給でき,優れた大学,先端技術,経済的ダイナミズムを持っていることから可能になる.他方,中国は,疑い深い近隣諸国に囲まれ,重要な資源を外部に依存しているから,サウジアラビアの安定化により大きな関心を持つだろう.世界は戦後秩序をますます解体し,大国間の競争と,つぎはぎだらけの多国間主義に変化していく.アメリカは重要な利害を持つ地域の安定化に関わるけれど,それ以外の地域は他の大国に委ねるかもしれない.

しかし,他の大国は負担を嫌がり,競争激化は不安定化と安全保障の欠落をもたらす.パックス・アメリカーナを批判してきた者たちが,すぐに,その消滅を嘆くようになるだろう.


l  世界経済の混迷

Project Syndicate 13 September 2012

Fiddling at the Fire

Nouriel Roubini

ユーロ圏,アメリカ,中国,それ以外の主要国でも,政治家たちは改革に失敗し,世界経済の悪化は止められない.皆が問題を先送りし,悪化させている.

guardian.co.uk, Friday 14 September 2012

The crisis is global, yet our politics remains stubbornly national

Jonathan Freedland

Project Syndicate 14 September 2012

Hard Truths About Global Growth

Michael Spence

レバレッジによる巨額の投資による高成長は終わり,債務の削減と低成長が実現しつつある.財政再建も難しい.分配問題と社会の結束が重視されるだろう.消費が減らされることを,誰も支持しない.それは特に,新興市場の減速を厳しいものにする.


l  ベトナムから帰化したドイツの経済大臣

SPIEGEL ONLINE 09/14/2012

German Economy Minister Philipp Rösler

'Vietnam Is a Part of My Life'


l  イスラム式死刑宣告を受けて

FT September 14, 2012

The lessons of Rushdie’s fatwa years

By Michael Ignatieff


l  貿易促進策が重要だ

VOX 14 September 2012

Trade facilitation matters!

Gary Clyde Hufbauer, Martin Vieiro, John S.Wilson

******************************

The Economist September 1st 2012

Four more years?

China’s economy: Slow boats

Apple v Samsung: iPhone, uCopy, iSue

Africa, oil and the West: Show us the money

Buttonwood: Democracies and debt

(コメント) The Economistは,アメリカ大統領選挙でロムニーを支持しました.それにもかかわらず,ロムニーは大きく後退しています.この記事は,それについての言い訳です.オバマは希望を奪ったのにネガティブ・キャンペーンで成功した.ロムニーは希望を示せたのに共和党の文化戦争に埋没した.

中国の金融危機からの回復策には行き過ぎもあってバブルが懸念されます.指導部内の意見対立が生じ,その結果として,リバランシングが放置されているとしたら,それは良いことだ.特許制度の正統性を損なうAppleの訴訟戦略には反対する.アフリカにおける資源採取のもたらす政治腐敗には国際監視が欠かせない.

民主主義とは,富を奪う,貨幣を増発する,債務を増やして踏み倒す,危険な政治体制でした.その弊害を抑えるためには,金融政策だけでなく,財政政策に関しても独立した委員会を設け,ギリシャやイタリアのような慢性的赤字国は,超国家機関に監視させるべきである.

・・・日本も率先して世界を革新する政治家を生んではどうでしょか?

******************************

IPEの想像力 9/17/12

アジアの敵対的ナショナリズムと,イスラム圏における反米デモの拡大が,友好や平和を築くため尽くしたいと思う人々に衝撃を与えたでしょう.その敵対的なムードが深刻な結果をもたらすパワーは,イデオロギーが事実を無視し,また,特定の権力の正統性に結びつくほど,現実を変える水準に達します.

・・・日本人は鬼だ.

戦争と占領体制下における残虐行為について,イデオロギー的な分割が深まっています.あるいは,預言者ムハンマドを冒涜した,という怒りが反米デモとして世界各地に広がり,外国企業・文化にも向けられます.

それは,日本を含む世界中のリビジョニスト(歴史訂正論者)たちを刺激します.民族の真実は,国家の永続性や無謬性を絶対視する姿勢に結びつくでしょう.他方,戦後の国際秩序は正統性を失い,通貨であれ,文化であれ,その土地に固有の根拠を強く求められるようになります.各地の憲法改正は何を目指すのか?

・・・「アメリカ衰退」とコストの分担.

国際協調が唱えられる一方で,国益が重視されます.地域統合と覇権争いが強まり,秩序再編と軍備拡大競争を刺激しています.アメリカは国際秩序の改革や維持のために特別な役割を担う,という主張が後退し,他国の民主化や人権に強い関心を示さなくなり,国内の雇用や大統領選挙の行方が重要になっています.

コスモポリタンな市民的秩序を代表するのは,国境を超える企業でしょうか? その意味で,支配体制の正当化と反日運動の結末が,商店や工場の略奪,放火に至ったのは,世界の「無法さ」を強めたと思います.

ユーロ圏でも,アジアでも,成長と不平等,社会秩序の動揺と将来への不安,景気減速が,分裂症的な議会政治に代えて,国家介入と制度の権限強化,専制政治に優位をもたらします.

・・・一人っ子政策と富裕化

かつてアメリカがそうであったように,中国が変われば世界も変わります.一人っ子政策で,人々の意識はどのように変化したのでしょうか?  都市化や富裕化,市場化と競争の激化,自動車の普及で,社会は効率化するとともに個人化し,旧来の社会的規範は,共産党のイデオロギー以上に,大幅に無視されるかもしれません.

中国では,資本主義システムを支持する楽観論が後退した,と言います.豊かになることは素晴らしい,と主張できるのは,社会の開かれた可能性,能力主義とその教育機会の平等さ,弱者に対する社会的に合意された支援策,などがともなうからでしょう.

携帯電話とインターネットが普及し,ネット上の書き込みや噂が広がり,情報や映像のねつ造も匿名による非難や中傷も,放置されている世界で生まれる「若者の暴徒化」は,民主主義の形を変えるでしょう.この条件を政治的に利用する競争が起きています.

ナショナリズムというオリンピックには,観客として参加することは許されず,生死をかけて走るしかない.民族国家だけが軍事的・文化的生存の防壁である.そのような仮想民族的脅迫意識こそ,成長減速や経済衰退の国家型ナショナリズムではないか,と思いました.

しかし,中国が変われば,国際秩序の解体とナショナリスティックな競争のイメージも大きく変わると思います.さまざまな意見を取り入れて,環境破壊の防止や,社会的な弱者への支援,国際的な通貨・金融システムの改革に,中国が取り組む時代は来るでしょう.20年後の未来に,その可能性を高める姿勢を,主要国は採るべきです.

・・・イスラム圏と儒教圏の政治的成熟

既存の秩序よりも,戦争による新秩序を求める人々が増えることは,避けられないことではないのです.

ゼミ生が教えてくれた宮崎哲弥『映画365本:DVDで世界を読む』がとても面白くて,これから近所のレンタル屋さんにジョギングする楽しみが増えました.

******************************