IPEの果樹園2012

今週のReview

8/20-25

 

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リアリスト ・・・オリンピック ・・・シリア ・・・ユーロ危機の背景 ・・・ガバナンス ・・・中国の都市化 ・・・南シナ海と釣魚島 ・・・副大統領候補ライアン ・・・住宅バブル救済案

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  リアリスト

FP August 9, 2012

Jim Baker: Realists have been successful stewards of foreign policy

Posted By Josh Rogin

共和党の外交専門家内でネオコンの人々は,ロムニーの政権移行チームにおける安全保障担当者にBob Zoellickを考えている.国家の運営に最も優れたリアリストとして評価されるJames Baker元上院議員がZoellickを称賛している.

ベーカーJames Bakerは,ヘンリー・キッシンジャー,ジョージ・シュルツと並んで,成功した国務長官と見なされている.アメリカ国民が,自分たちの脅威ではない国における戦争で,コストを,人命や財政負担として支払い続けていることに不満を持っているのを知っている.

ジョージ・HW・ブッシュの始動した1990-91年の湾岸戦争は,国際的な連合の形成において,その後のイラクやアフガニスタンにおける戦争よりも,はるかに成功したケースであった.それは戦争を実行しただけでなく,われわれが何をするかについて,アラブ世界も含めた支持を固め,アラブ諸国や他の国がコストを負担した,という意味である.

Bakerは,Zoellickに対する主要な4つの批判に反論している.すなわち,中国に対してソフトすぎる,イスラエル支持の姿勢が不十分だ,冷戦終結前のソ連に対する外交圧力が弱かった,湾岸戦争を支持しなかった.

1989年,天安門の虐殺事件後に中国への強い制裁が行われなかった,という批判についてBakerは反論した.冷戦の多くの制裁が終わる中でも,様々な制裁を行ったが,アメリカ政府は米中関係を維持した.これがソフトである,という批判は間違いだ.

ゼーリック,ベーカー,父親のブッシュが実行した,リアリストの視点は,アメリカにとって重大な利害を脅かさないような諸国への,コストのかかる長期の軍事介入を抑制した.

アサドの体制が続くとは思わない.アメリカは軍事介入以外の方法で,できる限り,アサド失脚を助けるだろう.しかし,直接の脅威ではないシリアへの介入に,慎重であるのは正しい.


l  オリンピック

Global Times | 2012-8-10

Amid Games, British economy gets gold from Chinese

By Tong Li

NYT August 11, 2012

The Soul of the Olympics

By FRANK BRUNI

オリンピックについては,その商業主義や,愛国心,などが議論されたが,NBCの報道に振り回された.プライムタイムを占拠して,競技や選手たちを追った些細な話が,その社会のあり方を伝えてくれる.

「サウジアラビアはそうした国の一つだ.800メートルの競技に出たSarah Attarは,その足も,手も,髪も,すべてを包み隠した.彼女の姿はスタートから観衆の心を貫き,彼女の笑顔は歴史を作る瞬間であった.彼女は懸命に,誰からも大きく遅れて走ったが,彼女がゴールラインに近づくほど,観衆はさらに大きな歓声を上げて彼女を励ました.それから立ち上がって彼女の力走を称えた.まるで,彼女が世界新記録を出したように.」

FT August 12, 2012

China disappointed with medals haul

By Kathrin Hille in Beijing and Vanessa Kortekaas in London

アメリカは46個のメダルを取り,中国は8個も少ない2位であった.29個のイギリス,24個のロシアなど,諸国の陰謀によって中国の台頭が阻まれた,と愛国主義的なブログは慨嘆する.同時に,それでも中国はさらに上昇するぞ,と宣言している.

しかし,中国政府は,ナショナリズムを刺激しないように報道した.金メダルに執着せず,オリンピックに参加することを重視し,過剰な期待を煽らず,国際的な舞台で中国が受け入れられるように努めた.飛び込みで7番目の金メダルを目指したQiu Boがアメリカの選手に負けたとき,金を失ったのではなく,銀メダルを得た,と選手を称えた.

FT August 12, 2012

FT medal table: Who’s on top may surprise you

Martin Stabe

FT August 13, 2012

Olympic Britain can avoid a post-games crash

By Gideon Rachman

Project Syndicate 13 August 2012

Olympolitik

Zaki Laidi

経済パワーとオリンピック・メダルとは関係あるのか? 政治の多極化はスポーツの多極化に示されるのか?

1992年,冷戦が終わってすぐのバルセロナでは,アメリカと旧ソ連の合わせたメダル獲得数が全体の4分の1であった.2008年の北京では,世界が新しい2極化を示した.アメリカと中国のメダル獲得数が全体の5分の1であった.

しかし今回,単に二極化が進むのではなく,ヨーロッパ諸国の健闘や,アジア,カリブ海諸国の躍進が目立った.オリンピック・パワーには4つの要因が作用しているだろう.1.人口規模,2.スポーツの伝統,3.スポーツ政策,4.経済発展.

「明らかに,経済発展は重要である.」多くの資源を必要とするスポーツも多い.こうした競技に,カリブ海やアフリカの諸国のメダルは少ない.メダルを多く取った10か国はすべて中国,ロシアと,OECD諸国であった.

guardian.co.uk, Tuesday 14 August 2012

The busted British economy needs more than just Olympic spirit

Simon Jenkins

オリンピックは,少数の人間に莫大な費用をかけて,単純な目標を達成する.経済成長は,これとまったく異なる.

キャメロン首相は,"Team GB's work is done"とイギリス選手を称え,次はイギリス経済を立て直す番だ,と宣言した.経済をオリンピック選手にたとえるのは,危険なナンセンスだ.肉体の鍛錬,競争心,ボランティア精神.・・・しかし,王室の葬儀でも,フットボールの勝利や敗北でも,それで何が変わったこともない.オリンピックと景気回復とは関係ない.フットボール狂の町でも,その景気はチームの成績で説明できない.オリンピックを観た人たちがイギリスの製品をより多く買う,という首相の説明は妄想だ.

一過性のスポーツ大会に93億ポンドを支出して良いのなら,それを経済が本当に求めている市場の買い手に与えてはどうなのか? 需要の枯渇に苦しむ市場が助けられたら,人々の笑顔にオリンピック・スマイルを観ただろう.

WSJ August 15, 2012

Usain Bolt's Taxes

ボルトは2010年のロンドンにおける競技を欠席した.イギリスで勝っても稼げない.ボルトはパリで競技に出る,と代理人は語った.


l  シリア

FP AUGUST 10, 2012

The Next Proxy War

BY ROBERT HADDICK

「シリアにおける戦闘は,イラン(シーア派)と,アメリカに同盟するスンニー派との,ペルシャ湾西側における戦いの一つにすぎない.過去において,この代理戦争はレバノンやイエメンで行われ,イラクが次の戦場になるだろう.イランが核武装すれば,競争はほぼ確実に激化する.シリアの結果に関わらず,アメリカの同盟者たちはイランとの安全保障の競争が深化することを覚悟し,待っている.」

WP August 11, 2012

How, when and whether to end the war in Syria

By Kenneth M. Pollack

NYT August 14, 2012

What Syria’s Rebels Need

By BARTLE BREESE BULL


l  ユーロ危機の背景

SPIEGEL ONLINE 08/10/20

More Power to Brussels?

Germany Considers Holding EU Referendum

By Florian Gathmann and Philipp Wittrock

Project Syndicate 10 August 2012

Europe’s Summer Reading List

Barry Eichengreen

8月,ヨーロッパの指導者たちは休暇で海辺へ移動する.誰もが,何も重要なことは起きないし,9月に戻ってくる,と考えている.2007年,サブプライム危機も,1992年,EMS危機も,8月に起きた.それは忘れておこう.

せめて,彼らが休暇で読むべき本を教えておこう.Milton Friedman and Anna Schwartzの『アメリカ金融史』は最優先の一つだ.特に,大恐慌の章で,危機が高まる中でも,不十分な行動しかとらなかったアメリカ連銀の話に冷や汗をかくだろう.しかしよく読めば,Friedmanは,銀行の破たんを止めるために債券購入の協調を指導しなかったことを厳しく批判するのは避けている.危機は止めるよりも起こさないほうが良いのだ.

次に薦めるのは,Charles Kindlebergerの『大不況下の世界』だ.Kindlebergerは,危機を回避するために指導力が必要であると主張している.当時のアメリカがその役割を引き受けなかったことを批判するが,今のヨーロッパではドイツに責任があるだろう.

経済学者の本だけでは休暇にふさわしくない.そこで,Ron Chernowの書いた伝記『Alexander Hamilton』が良いだろう.その多彩な生い立ちや独立戦争における働き,初代大統領ワシントンの財務長官として,独立戦争の債務を州から連邦財政に統一した.当時も連邦主義を嫌う声は強かった.モラル・ハザードを現代のヨーロッパ諸国が心配するように,ハミルトンも州の債務を引き受けるとき,1回きりであると認めさせた.ビジョンと外交手腕が求められる.

最後に,ヨーロッパの指導者たちはBarbara Tuchmanの『8月の砲声』を読書リストに加えるべきだ.孤立してみれば合理的な事情を説明できる個々の決断が,その意図せざる結果として,ヨーロッパを第一次世界大戦に至らせたことを描いている.誰も現代のヨーロッパで戦争が起きると予想していないが,ヨーロッパは金融的な意味での「サラエボ」に接近している.南欧の端で起きた危機に油断しているなら,Tuchmanを胸に刻むことだ.

NYT August 11, 2012

German Austerity’s Lutheran Core

By STEVEN OZMENT

WSJ August 12, 2012

How We'll Build European Monetary Union 2.0

By OLLI REHN

3年のユーロ危機と,13年の歴史は,重なっている.財政赤字と対外赤字とを減らすために,赤字国は財政の緊縮と競争力の回復が求められている.その条件を示して,融資の利用可能性を提示している.しかし,赤字国の政策余地は限られている.ECBも危機を鎮静化できていない.

債務を共有化する決断は政治的に重大である.アメリカの財政危機にも共通した問題がある.

SPIEGEL ONLINE 08/13/2012

Finnish Prime Minister Jyrki Katainen

'There Are No Simple Tricks to Resolve the Crisis'

VOX 13 Aug 2012

Avoiding an Italian bailout: Why and how

Francesco Giavazzi

ヨーロッパの指導的エコノミストでモンティ首相の顧問でもあるFrancesco Giavazziは,イタリアとスペインとの違いを強調し,EFSFの融資を受けずに,公的な資産の売却,民営化を進め,郵便局からつなぎ融資を行うように求めている.

Spain has no options, but Italy does.

FT August 14, 2012

ECB is right to ask for more eurozone action

By RobertRubin

ECBは,公的債務を購入する用意があると発表しながら,その条件を以前と同じように示したことで批判されている.しかし,債券購入は時間稼ぎでしかない.厳しい条件が無ければ,改革は進まない.公的債務をリスクから隔離しても,問題は解決しないのだ.

ECBが無限に危機を回避させることはできる,と主張する者がいる.発行済みのすべての公的債券を市場で買い取り,借り換える債券も,新規発行もECBが購入すればよい.しかし,メキシコ,アジア,ロシアの危機で1990年代にわかったことは,政策転換をともなわない危機の救済では意味がない,ということだ.それは広範な資本逃避をもたらし,そうなったらどれほど巨額の融資でも間に合わない.

現在,ユーロ圏からの資本逃避は,公的・民間資産,銀行預金,銀行間資産取引,など,すべての金融資産に広がっている.それは,ユーロ安を生じ,輸出を増やす以上に,一層の金融資産売却と悪循環をなしつつある.政策変更の条件を付けないECB融資を増やしても,それは債務の貨幣化,そして,中央銀行そのものの信用喪失につながる.

資本逃避を補うようなECB融資は,時とともに,破滅的なインフレや一層大規模な危機に向かう.

ユーロ圏の改革プログラムが緊縮的なことを批判する声も多い.しかし,十分な赤字削減が市場の信認を回復し,金利を下げる条件であることを忘れてはならない.それが成長を損なうような規模であってはならないため,財政規律,銀行の自己資本強化,たとえば,ドイツ市場の需要を刺激してユーロ圏諸国に開放するような,成長の促進策が含まれる.

問題は,改革が遅れることで,債券利回りが上昇し,経済状態が悪化し,市場の信認が低下し,一層の改革が求められることだ.もしそれが難しくなれば,主要な経済で債務を大幅に削減しなければならず,その破壊的な伝染が広がる.

ユーロ圏は長期的な制度改革を必要としている.しかし,それが行われるとしても,当面の問題には役に立たない.ECBからの融資と,改革のための政策転換を組み合わせるしかないのだ.

FT August 14, 2012

Northern Ireland: A peace to protect

By Jamie Smyth

アイルランド経済の極度の悪化は,民間武装組織の流血の記憶へとつながる.特に,IRAと違って,個人が組織した反政府集団は,犯罪を資金源としていた.

SPIEGEL ONLINE 08/14/2012

Turkey and the Euro Crisis

EU Membership Losing Its Appeal

By Kristina Karasu in Istanbul

SPIEGEL ONLINE 08/14/2012

Nostalgic and Narcissistic

France's Obsession with the Past Hinders Reform

By Mathieu von Rohr

NYT August 14, 2012

Hollande Pledges Order After Rioting in Northern France

By STEVEN ERLANGER

VOX 14 Aug 2012

ECB: No free lunch

Marco Annunziata

guardian.co.uk, Wednesday 15 August 2012

Why Germans love the enigmatic Angela Merkel

Jochen Hung

ユーロ危機を悪化させた張本人と非難されても,メルケルAngela Merkelの国内支持率は非常に高い.ドイツ人の70%がメルケルをユーロ危機解決に最もふさわしい人物として選び,49%が首相にふさわしい人物の名前に挙げた.

ドイツ人は,派手な指導者を嫌う.ヴィルヘルム2世やヒトラーに従って,破滅的な世界戦争を経験したからだ.より穏健な,誠実な指導者に投票する.コールやメルケルがそうだ.

国際的なメディアは彼女に優れたビジョンが無いと批判するが,その慎重な政治スタイルこそドイツ国民が彼女を信用する理由である.大きなアイデアを嫌うのは,戦後ドイツの政治文化になっている.かれらは20世紀最大の思想,ファシズムとコミュニズムを,その思想だけでなく実践として,最悪の形で味わったのだ.

メルケルへの高い支持は,メルケルが女性であり,中年の,子供がいない物理学者であり,プロテスタントの背景を持つが,カソリックの保守的なバヴァリアの父親たちを説得でき,ドイツの旧工業地帯で働く女性たちや,ベルリンのボヘミア的な知識人にも,その関心を反映してくれると思わせる人物であるからだ.メルケルは,普通のドイツ人たちが苦しむ難問,指導者とは何か,を解決してくれる.

FT August 15, 2012

Greece should not be sacrificed for the euro

By GeorgePagoulatos

FT August 15, 2012

Spain: Autonomy under fire

By David Gardner

FT August 15, 2012

Madrid’s dilemma

Project Syndicate 15 August 2012

Early Retirement for the Eurozone?

Nouriel Roubini

ユーロ圏の解体が避けられないのであれば,それを遅らせることは事態を悪化させる.しかも,極端に悪化させるだろう.

大規模な公的融資で改革の時間を与えることができるのか? 公的な社会保障の削減と政治的な反動で,危機は崩壊に至る.解決すべき課題を観れば当然だ.経済格差の解消,不況,銀行システムと金融市場のバルカン化,公的・民間債務の維持不可能な水準,競争力を回復するための内的切り下げやデフレ,モラル・ハザードをもたらす非対称的な調整,不十分な融資への政治的反発,最適通貨圏の条件を欠く状態.

むしろ,早期の解体を認めて,単一市場とEUを守ることだ.

VOX 15 August 2012

Italy’s 'this time it’s different' moment: Reaction to Giavazzi

Charles Wyplosz

イタリアはスペインと違って救済融資を受けるべきではない,とFrancesco Giavazziは主張する.しかし,不満足な均衡への移行は避けられないだろう.・・・「ギリシャはラテンアメリカではない.」「アイルランドはギリシャではない.」「ポルトガルはアイルランドではない.」「スペインはポルトガルではない.」「イタリアはスペインではない.」・・・そのたびに間違いであった.

Reinhart and Rogoff (2009)が示したように,政策担当者が「今度は違う」と主張するのは,悪化を止められない前兆である.それぞれのケースで基礎的条件は異なっていたが,金融市場から通常の金利で資金を得られなくなった.市場における複数均衡のロジックは逃れられない.

2009年にギリシャが危機になる必要などなかったように,1997年の韓国,1986年のメキシコ,1982年のチリも,危機になる必要はなかった.しかし,いったん危機が起きると,その予測に失敗した専門家たちが,危機になる多くの政策失敗を挙げて,債務期限を過ぎた国に厳しい評価を与えた.

各国は危機に至る脆弱性を抱えている.だから危機は起きるのだ.しかも,いったんこの自己実現的な危機が起きると,その影響は波及し,他国も危機に感染する.

イタリアの脆弱性は財政赤字だ.1990年代初頭にプライマリー・バランスを黒字化したと自慢するが,すでに債務はGDP110%に達している.その債務水準では成長を損なう恐れがある.危機の前から,イタリアは日本の20年に及ぶ経済停滞と似ていた.

次の候補はフランスだ.緊縮財政は危機回避に失敗する.市場は以前から,債務を減らすには成長の回復しかない,と結論している.Monti首相の構造改革は,その効果を示すのに何年もかかる.それまで債務は増えるだろう.

イタリアは貧困国ではない.しかし,富裕層に課税できるだろうか? ラテンアメリカの富裕層は,課税を嫌って即座に逃げ出した.また,危機の最中に公的資産を売却するのは,むしろ,非生産的なことだ.

確かに違いはある.選挙の前に厳しい措置は取れない,というのもわかる.しかし,それを避けるのは,危機の経済・社会・政治的コストを強めることである.

全く異なる条件を示すことだ.すなわち,ECBが最後の貸し手となって,ユーロ危機回避のため政府と銀行を支援するのだ.ドイツがそれを嫌うなら,イタリアも,フランスも危機を免れず,ユーロ圏を失うドイツも,船とともに沈む.

SPIEGEL ONLINE 08/15/2012

Greece Before the Abyss

Only Bankruptcy Can Help Now

A Commentary by Stefan Kaiser

NYT August 16, 2012

For Europe’s Economy, a Lost Decade Looms

By JACK EWING

既にヨーロッパ全体が「失われた10年」を経験している.人々は経済停滞の効果に苦しんでいる.それは失業に示されるだけでなく,教育や研究開発にも十分に投資されない.

「日本人は銀行の処理を決して行わなかった.ヨーロッパは教訓を学ぶべきだ.」


l  ガバナンス

SPIEGEL ONLINE 08/10/20

The Craft of Ruling

Which Country Has the Best Government?

By Bernhard Zand

金融危機や債務危機,イラク,アフガニスタンにおける戦争は,「ガバナンス」"good governance"という問題を強く意識させた.西側の諸機関がその信用を失ったのだ.意見が分裂したままのヨーロッパは,新興の中国やブラジルから何を学ぶべきか? 世界はどのように統治されているのか?

もしアジア,アフリカ,ラテンアメリカから数百万人の難民・移民を西側が受け入れていることから見れば,その政治システムの優位は明らかだ.冷戦終結によって西側が最終的に勝利した,という主張もあった.しかし,911とアフガニスタン,イラクの戦争,金融危機から経済の悪化は,西側のガバナンスに対する疑いを強めた.

Charles Kupchansは,ガバナンスに関する需給のギャップが拡大している,と考える.欧米に血の政治システムで同時に不満が高まっているのは偶然ではない.資本規制のような,伝統的な政策手段は利用できなくなったが,民主的な政府は選挙のたびに有権者の要求を受け入れる.犠牲を求めるより,利益を約束することが多い.グローバルな課題に取り組む余裕はない.

抜け目ない市民がそれを利用する.その結果,若者の失業率は50%を超え,工業所得の富の分配は悪化し,ピッツバーグの鉄道橋を更新する方がドバイに世界最高層のビルを建てるよりも時間がかかる.

しかし,選挙を回避できるシステムでも,経済危機の結果を免れることは難しい.中国の温家宝首相は,自ら「不安定,不均衡,協力を欠いて,持続不可能」な現在のシステムを改革せよ,と求めた.最近まで,西側の政治システムは湾岸諸国の王政を改革するモデルを示していた.しかし,アラブの春や世界金融危機で,それも変わった.

政府の最善の形態に関する論争は,プラトン,アリストテレスの時代から続いている.政府の行動は数十年後に影響が現れるから,実証研究は難しい.ドイツのthe Bertelsmann Stiftung 2007年以来,OECDに加盟する31か国について "Sustainable Governance Indicators",人口200万人以上の国について"Transformation Index"を発表している.それによれば,1位はスウェーデンで,最下位は北朝鮮だ.デンマークは3位,ドイツは11位である.しかし,中位の順位は疑わしい.フランスは,チリ,トルコ,メキシコに劣るのか? 

かつてフランスのド・ゴール大統領は,「246種類もの異なるチーズがある国をどうやって統治するのか?」と不満を述べた.アメリカ政府もジャガイモ生産者のロビーに反する法律を通せない.ブラジルの2000万人,中国の3億人が貧困から抜け出し,中産階級になるという課題について,ド・ゴールなら何というだろうか?

このシリーズは,ブラジル,中国,デンマーク,アメリカを取り上げる.

SPIEGEL ONLINE 08/10/20

From Poverty to Power

How Good Governance Made Brazil a Model Nation

By Erich Follath and Jens Gluesing

Project Syndicate 15 August 2012

Why Are Governments Paralyzed?

Michael Spence, David Brady

世界各地で適切な政策対応が欠けている理由は何か? 第一に,指導力の不足a “leadership vacuum”が挙げられる.第二に,複雑な状況,意見の対立,その中で積極的な行動を取るには大きなリスクが伴う.政治家たちがリスクを取らなくなったから,個人としても集団としてもリスク回避risk aversionが強まる.第三に,新しい条件の中で政策の効果が失われたsimply ineffective.しかも,既得権を守る人々の反対が強い.

ガバナンスや法・政治システムの構造にも違いがある.安定した条件と変化する条件では,の祖増しいシステムの性格が異なるだろう.行動の自由が制約されるポピュリズムと,説明責任が足りないオートクラシー(専制)との間で,政治システムには大きな違いがある.

指導力に不満を述べるのは,エリートの中で相互の信頼が欠けているからである.困難な選択には社会的結束が必要だ.危機の原因を解明し,失策の責任を分かち合い,公平な分担で柔軟な解決策を採用すること.特に,安易な答えなどないことを認める必要がある.


l  中国の都市化

NYT August 11, 2012

Two Prisms for Looking at China’s Problems

By TYLER COWEN

FP SEPT/OCT 2012

Weapons of Mass Urban Destruction

BY PETER CALTHORPE

中国は過去5年間で2万マイルの高速道路を建設し,予定より13年も早く国家ハイウェイを完成して,アメリカの州間ハイウェイ建設より4倍速く実現させた.2020年までに,中国の都市人口は35000万人(すなわち現在のアメリカの人口)増える,と予想されている.

・・・それは単に都市の活力,生存可能性,エネルギー効率の問題ではなく,地球の健康を損なう問題である.1950年代,60年代,アメリカが失敗したように,中国人も失敗するだろう.しかも,彼らは豊かになる前に,ますます肥満になり,不幸になる.

FP AUGUST 13, 2012

Building a Better China

BY RICHARD DOBBS, JAANA REMES

新興市場における人口の都市化は,巨大なマーケットをもたらす.110ドル以上で生活する人口は,基礎的な衣食住を超える商品にも支出する.それは1990年の12億人から2025年には42億人に増加する.その中の半分は,まだ小規模な都市に住んでいる.急速な都市化は,住宅や事務所,レストランなどを建設し,コンテナや水道を必要とするように,世界経済に新しい支出をもたらすだろう.

FP AUGUST 13, 2012

China's Debt Bomb

BY JONATHAN KAIMAN

FP AUGUST 13, 2012

Unlivable Cities

BY ISAAC STONE FISH

中国の巨大都市は素晴らしい景観を誇るが,人が住むには恐ろしい悪条件が広がっている.かつてロンドンがそうであったように.それは複雑な歴史を積み重ねた結果である.改善への努力はまだ一部でしかない.

FT August 15, 2012

China’s very different election show

By David Pilling

アメリカでは4年の一度の大統領選挙が近づいているが,中国の指導部も,いつ,どこで決まったかわからないまま,10年毎の交代を準備している.アメリカでは,二人の候補に関する事実上あらゆることが知らされるが,中国では新しい指導部に関して,実質的には何も知らされない.

2270人の代表が新指導部を承認する日がいつになるのか,まだ国家機密である.ロンドン・オリンピックの金メダリストも選出されている.Bo Xilaiの公判も関係するだろう.

リベラルに近い指導者はどうなるのか,国内の治安担当者はだれか,成長の重心を国内需要に転換できるか,金利や銀行融資はどうなるか,外交政策は,・・・? 彼らのテレビ討論が観たい.

Project Syndicate 16 August 2012

China’s Next Transformation

Andrew Sheng, Geng Xiao


後半へ続く)