(前半から続く)
l ユーロ安の進行
FT July
22, 2012
Time
for Monti to tell Italy the truth
By Ferdinando Giugliano
FT July
23, 2012
Rome
after Monti
SPIEGEL
ONLINE 07/23/2012
Euro
Exit Looming?
Berlin,
IMF To Refuse Fresh Aid for Greece
FP
JULY 23, 2012
Think
Again: The Eurocrisis
BY DAVID GORDON, DOUGLAS REDIKER
「ユーロ圏は解体する.」・・・それはないだろう.確かに,通貨同盟の利益を誇張した支持は薄れるだろうが,ユーロ圏はそもそも政治的な動機で誕生したEUの一部である.戦争の経験からヨーロッパの統一へ向かう政治的な理由は今も強く信じられている.
「すべてギリシャが悪い.」・・・そうではない.もちろんギリシャの政治は悪い.しかし,ユーロは信用リスクや通貨リスクをギリシャから切り離して,危機の条件を作った.
「ドイツが悪い.」・・・これも間違いだ.ドイツは反対したが,その不完全な通貨同盟を受け入れ,最初の10年間,財政状態が悪化する加盟諸国に我慢した.ドイツは共通通貨に大きな政治的関与を示してきた.ドイツはその交渉においても柔軟性を示した.ドイツを非難するのは,特にアメリカで,過去のアメリカが行った国際金融危機への介入と比較するからだ.同じような介入を,ドイツはヨーロッパ諸国にしたくないし,できない.
「危機は一つだ.」・・・「ヨーロッパは解決するための資金を用意した.」・・・「アメリカの対応は失敗だった.」・・・「アメリカ経済への影響は破滅的だ.」・・・
FT July
24, 2012
A
rapid fall in the euro can save Spain
By Martin Feldstein
ユーロ安は,ユーロ圏の輸出を安く,輸入を高くして,ユーロ圏周辺の経常赤字を減らすだろう.また,ドイツの輸出を増やし,その賃金と物価の上昇により,ユーロ圏内の貿易不均衡を抑える.周辺国で純輸出が増えることはGDPを増加させ,増税や政府支出削減による不況を緩和する.それは財政再建を政治的に受け入れやすくするだろう.雇用や企業業績が改善し,銀行の不良債権も抑えられる.
20年前に述べたように,経済条件が大きく異なる諸国が共通通貨を採用することは,経済的に見て失敗であった.労働者の移動も少なく,財政的な移転による自動的安定化も欠くヨーロッパは.アメリカのような通貨圏として機能しない.しかし,既に存在するユーロ圏を解体することは,政府,市民,投資家にとって大きなダメージになる.
ヨーロッパの専門家たちとの会議では,私を「ユーロ懐疑論者」として非難することはなく,彼らと意見が一致することを知った.ユーロ安が,ユーロ圏の解体を回避するために必要であろう.それはアメリカにとってコストをもたらすが,ユーロ圏諸国との貿易額はアメリカのGDPの5%でしかないから耐えられる.
FT July
24, 2012
Politics
is adding to Spanish woes
NYT July
24, 2012
Euro’s
Medicine May Be Making Greece’s Symptoms Worse
By RACHEL DONADIO and SUZANNE DALEY
VOX 24
Jul 2012
Club
Med and the Sun Belt: Lessons from adjustment within a monetary union
Uri Dadush, Zaahira Wyne, Shimelse Ali
FT July
25, 2012
A
cure for the eurozone’s Lehman syndrome
FT July
25, 2012
The
IMF should heed this resignation
By Arvind Subramanian
VOX 25
Jul 2012
End
of game? Don’t bet on it
Charles Wyplosz
究極において,ユーロ圏EZの指導者たちは唯一の道へ進むだろう.それは,ECBがすべての銀行,すべての政府債務を保証し,不良な銀行,不良な政府財政を管理下に置く,ということだ.
これまで起きたことを振り返れば,それがわかるはずだ.
再び,公的債務に市場圧力が強まっている.・・・再び,メディアは「決定的な,包括的な」政策手段を期待する.・・・再び,政策担当者は市場の「不合理な」反応を非難する.・・・再び,テクノクラートと学者が有権者の嫌う「統合の深化」を求める.・・・再び,政策は限定的にとどまり,一時的に圧力を弱めるだけで,危機を解決できない.
それはスペインに至り,もうすぐイタリアに及ぶ.
スペインでは,銀行が住宅バブルの破裂で信用リスクを生じた.イタリアでは低成長が続き,金融緩和と低インフレを享受した成長の時代にも,巨額の公的債務が残されていた.
そして,ある日,金融市場は不安を感じたのだ.スペインで,「不況になればどうなるか?」,「銀行の救済が必要ではないか?」,そのとき,公的債務は一気に増大するだろう,と.イタリアでは,「金利が上昇すればどうなるか?」,「公的債務は長期的に安定だろうか?」,と.
スペインも,イタリアも,「我々はギリシャではない」と言う.それは2010年初めにギリシャが「我々はラテンアメリカではない」と言ったことによく似ている.その主張は正しいが,市場アクセスが失われたら,外部から救済するしかない.
危機は,ECBが最後の貸し手として行動するまで,終わらない.それは単純な真理だ.そのコストを抑えるには,公的債務の一部をECBが保証するか,金利に上限を課すこともできる.
銀行に資金を入れるのは,銀行を再編することが条件だ.銀行の整理を行うため,ヨーロッパの監視を統一しなければならない.国民国家はそれを嫌うが,アイルランドとスペインがその隠れたコストを顕著に示している.
次に,公的債務も削減しなければならない.安全な資産と認められている政府債券を保有している民間の資産も損なわれる.すべての政府はこれを避けようとするが,延期するほど最終的な損失は大きくなる.即時,強制的な措置を取るしかない.
結局,ECBがあるからユーロ圏は生き残る.しかし,それを修復することはできない.それは政府の仕事だ.政府が公的債務削減を避ける限り,事態が悪化していく.
良いニュースがある.ついに,ユーロが減価し始めたことだ.ユーロ圏の金融緩和も,財政刺激策も,限界に達した.不況がユーロ圏に広がるのを防ぐ唯一の手段は,ユーロが減価し,輸出が増えることだ.ユーロ安はヨーロッパの利益である.
VOX 25
Jul 2012
A
Redemption Pact for Europe: Time to act now
Peter Bofinger, Claudia M. Buch, Lars P
Feld, Wolfgang Franz, Christoph M Schmidt
SPIEGEL
ONLINE 07/26/2012
ECB
Signals Bond Purchases
Markets
Surge after Draghi Vows to Protect Euro
SPIEGEL
ONLINE 07/26/2012
'There's
No More to Squeeze'
Greeks
Live in Dread of Troika Verdict
By Daniel Steinvorth in Athens
WP
July 26, 2012
Europe
must face up to ongoing euro crisis
By Anne Applebaum
ポップソングの低音部がリズムを奏でるように,ユーロ圏は規則的に悪いニュースを発している.たとえば,ドイツの格付けが下がると知らされた.スペインの銀行が救済されるという噂もあるが,ヨーロッパの株価は回復しない.
ヨーロッパは,結局,数十年を経た不正直な政治に直面するしかないのだ.1970年代から,どの政府も債務を増やして支出してきた.支出し,借り入れを増やし,インフレを起こす.この循環は,民主主義の弱い国において深刻だった.スペインは1975年に独裁者フランコが死んで民主化し,ギリシャでは1967年と74年に軍事クーデタがあり,イタリアは第二次世界大戦後だけで60以上の政権が交代した.指導者たちは,年金や政府雇用を増やして,有権者の票を「買った」.銀行はそれを助けた.
しかし,もうそれはできない.指導者は誰も認めていないが,ユーロに参加すれば金本位制と同じだ.個々の政府がコストを他国や次世代に転嫁することはできない.これは「通貨危機」ではない.債務に頼る政府の政治危機だ.政治的な解決策が必要だ.有権者は,自分たちの政府が破産していることを認めるしかない.
ギリシャのナショナリストたちは,ドイツの権威主義的な決定に不満を持つ.しかし,ギリシャンに貸す者は誰でも,ギリシャがその行動を変えた証拠を求める.イタリアの指導者,マリオ・モンティは,市民に真実を語り,改革を進めた.しかし,今週,財政破たんしたシシリーは,非常事態を宣言するほど悪化した.
この政治不安は,救済の前ではなく,後で発生している.彼らは確かにもっと支援を必要としている.しかし,ドイツの政治家も有権者に説明しなければならない.ドイツから資金を得ている国はない.危機で得をする国はない.ドイツの金利は低く,ドイツの銀行は大陸規模で最大の融資を行っている.これは限界の隣国を「救済」するのではなく,ドイツの利益だ.
しかし,ドイツ国民はそれを理解せず,南欧諸国民も他の選択肢はないと認めない.8月は,伝統的に金融危機の季節である.何かが起きるだろう.
FT July
22, 2012
A
trade deal worth making
l 大銀行の分割
BLOOMBERG
Jul 22, 2012
HSBC
Needs CEO Who Will Clean Up and Break Up the Bank
By Simon Johnson
FT July
25, 2012
Ex-Citi
chief Weill urges bank break-up
By Tom Braithwaite in New York and Shahien
Nasiripour in Washington
BLOOMBERG
Jul 25, 2012
Weill
Says Break Up Citigroup: Now He Tells Us
By James Greiff
FT July
26, 2012
Sandy
Weill stages an epic conversion
BLOOMBERG
Jul 22, 2012
The
One Capitalism That Dare Not Speak Its Name
By Pankaj Mishra
l 中国の軍事と外交
Global
Times | 2012-7-22
Will
SE Asia become a battleground?
By Tommy Koh
NYT July
23, 2012
China
Sends Troops to Disputed Islands
By JANE PERLEZ
WSJ
July 25, 2012
China
Shifts Course, Lets Yuan Drop
By BOB DAVIS And LINGLING WEI
SPIEGEL
ONLINE 07/26/2012
Summer
Stress
China's
Elite Wrangle Over New Leadership
By Wieland Wagner in Beijing
Project
Syndicate 26 July 2012
Calming
the South China Sea
Gareth Evans
南シナ海は,台湾海峡,朝鮮半島と並んで,東アジアの紛争危険地帯である.中国が部隊をthe Paracel Islandsに展開し,紛争海域に海軍を頻繁に派遣している.その強硬姿勢はASEANの外相会談を分裂させ,45年間で初めて,共同声明の無いものにした.
シンガポールから台湾まで,南シナ海は世界第二の輸送頻度,世界輸送量の3分の1が通る重要海域であるから,海軍を増強した中国が,支配を拡大するように行動するのは驚くべきことではない.近隣諸国との間で,要求がますます強硬なナショナリズムの内容を帯びてくるなら,米中の対立にも発展しかねない.
法的,政治的な領土紛争は,海底資源や航行権も絡んで,あまりにも複雑で,誰にも答えが出せない.中国が2009年に示した点線の領域には全海域が含まれる.ベトナム,フィリピン,マレーシア,ブルネイが,その領有権を主張する海域と重なっている.
紛争は,これらの国が承認している,国連の海洋法が排他的な経済水域を認めたことにも関係する.そうでなければ,主権が及ぶのは12カイリにすぎない.中国がこの海域の利用を独占することを恐れているのだ.
意味のある対応を示して,中国のナショナリズムを煽ってはならない.ある報告書(the International Crisis Groupによる)が示したように,中国の権力移行期に,複数の行政機関と人民解放軍が支配領域の拡大をめぐって競争している.中国政府・外務省の対応は,国際的な法的制約を理解しており,冷静である.
2002年,中国政府はASEANと,リスク低下と信頼醸成に関する政策に合意した.この合意に戻って,その上で,新しい多角的な行動基準を示すのが良い.そして原則を認めて,領有紛争の最終的な解決を保留したまま,資源の共同開発を可能にすることだ.
アメリカ政府は,不用意な表現で,紛争を刺激してはならない.そして,海洋法の議会による批准手続きを進めることだ.それは,資源の平和的な共同利用が可能になる原則を示している.
Project
Syndicate 26 July 2012
Is
China Losing the Diplomatic Plot?
Kishore Mahbubani
「2016年には,購買力平価で見て,中国の世界経済に占めるシェアがアメリカのシェアよりも大きくなる.これは天地を揺るがす変化である.1980年,アメリカのシェアは25%であったが,中国はわずか2.2%でしかなかった.しかし,地政学的な力量を30年間について観れば,それを最も必要とする時に,中国人はまだ失っているようだ.」
平和的に,静かに,世界の最高位に就ける,と思うほど,中国の指導者たちはナイーブでも愚かでもないだろう.しかし,中国の行動は外交上のポイントを失っている.
日本に漁船を解放させ,北朝鮮が韓国民を殺害したことに抗議せず,インドとのパスポート発行に摩擦と障害を生じた.特に,ASEAN外相会談で,議長国のカンボジアがコミュニケの作成を拒んだのは,中国の圧力があったからだろう.それは2002年のFTA合意から10年に及ぶASEANとの重要な信頼関係を損なった.特に,かつて中国はASEANの統一がアメリカとの緩衝地帯を確保すると考えて支持したが,今は,ASEANを米中間で分断しつつある.
中国のこうした姿勢は,犠牲の多い,意味のない勝利Pyrrhicである.
破線で囲まれた海域を主張することは,紛争を拡大するだけで,国際法にも支持されない.むしろ,インドネシアと私的に合意したように,紛争を回避する方が良い.中国の外交的柔軟性は,非常に異なる二人の指導者,毛沢東と鄧小平が,領土問題で譲歩することを受け入れた点に示されるものだ.
しかし,集団指導体制・複数政党支配に向かう中国の指導者たちが,二人と同じような強い政治権力を持つことはない.経済規模で世界最高位に就いても,地政学的な交渉力は低下するだろう.
NYT July
22, 2012
At
Caterpillar, Pressing Labor While Business Booms
By STEVEN GREENHOUSE
guardian.co.uk,
Monday 23 July 2012
Sackings
expose the harsh reality of Poland's junk jobs
Peggy Watson
guardian.co.uk,
Wednesday 25 July 2012
The
Walmart model and the human cost of our low-price goods
Juan De Lara
NYT JULY
22, 2012
The
Moral Hazard of Drones
By JOHN KAAG and SARAH KREPS
l 破局と病理
FT July
23, 2012
We
have entered the world of disaster economics
By Gillian Tett
債券市場は狂ったか? ユーロ危機が,アメリカ財務省証券やドイツ国債にも波及し始めた?
エコノミストのRobert
Barroは,一人当たりGDPが10%以上低下するような事態を「破局」
“disaster” と定義した.それは20世紀に58回起きたが,1950年以降では2回だけだ.投資家たちは,“disaster”が起きるリスクを意識し始めたかもしれない.
投資家が資産を買うのは,二つの意味がある.収益と,保護である.投資家は,disaster riskが低いときは前者を求めるが,それが高くなると後者を求める.デフォルトのリスクが低い国では,国債は株式よりも「保護」を与えるが,そのリスクが高くなると,株式と国債が連動する.
これまで“disaster”が起きないような時代は,既に変化しつつある.世界が“disaster”経済学に向かい,債券市場も長期的に低迷する.ドイツやアメリカでもインフレの爆発や政治不安が高まれば,債券市場もクレディッと・デリバティブも連動するだろう.
Project
Syndicate 23 July 2012
Bubbles
without Markets
Robert J. Shiller
金融危機後,市場の変動を抑える政策を人々は探している.しかし,市場における投機的なバブル,熱狂からパニック,悲観主義への循環は,これまでも,市場と関係無い社会的病理現象として起きてきた.
Charles MacKay’が1841年に出版した本(Memoirs of Extraordinary Popular Delusions and the Madness of Crowds.)は,歴史的な例として,ミシシッピー・バブル,サウス・シー・バブル,チューリップ・マニアを挙げた.そして,非市場型の例として,錬金術のブーム,審判の日,財宝探し,星占い,磁石を使った医術,魔女狩り,十字軍,を挙げた.
こうした例は我々から遠い時代のことに思うだろうが,共産主義運動もそうであった.1958-61年の中国政府による大躍進は,農業の集団化や工業化の飛躍を強いて,熱狂の末に,資源が浪費され,飢餓で数千万人が死亡した.大躍進にはポンツィ・ファイナンスの側面がある.毛沢東は現地視察と専門家の報告から,小規模の溶鉱炉が失敗するという危険を知っていた.しかし,運動の破局を恐れて,ポンツィ型の投資を続けるマネージャーと同様に,それが失敗するような懸念を一切示さなかったのだ.その後の文化大革命も,思想が社会的に感染することを計算に入れた政治運動だった.
現代の金融市場の崩壊は,それと同じではない,という意見もあるだろう.その違いは,さまざまな専門家や専門機関が,常に新しい情報で,作業の中身をチェックしているからだ.こうした機関が発達することで,深刻な経済崩壊の伝播は不可能になるだろう.
l リバランシング
FT July
23, 2012
A
slowdown is good for China and the world
By Michael Pettis
中国の低成長を恐れるべきではない.それはリバランシング(均衡の回復)が始まったことを意味するからだ.
中国の成長は投資に頼りすぎている.もっと消費の割合を高めるべきだ.そのためには,賃金を上げて,人民元を強くして,なにより,実質的な低金利の形で,国民に課税し,投資に与えられている補助金をなくすべきだ.実質金利の引き上げは,中国が国内のリバランシングを促す重要な政策である.
リバランスが成長の減速を意味することから,われわれはそれを懸念する.しかし,低成長と聞いてパニックを起こし,中国に政策の逆転を求めるべきではない.むしろ,中国はついに問題を解決する政策を採ったのだ.それは成長率を低めても,需要を減らすわけではない.中国の投資に資源を輸出している諸国は困るだろうが,資源の国際価格は下がり,中国の国内消費が増えることで,アメリカなどは純輸出を増やす.
リバランス政策は,中国の政治社会を不安定化するだろうか? いや,そうではない.成長率は落ちても,国民の消費はもっと急速に伸びるからだ.投資や輸出部門に関わる政治エリートたちは利益を失い,烈しく反対するかも知れない.しかし,彼らを除くわれわれすべてにとっては,歓迎すべきことだ.
Project
Syndicate 24 July 2012
How
the West Was Re-Won
Dominique Moisi
Project
Syndicate 26 July 2012
Recovery
and Equality
Isabel Ortiz, Matthew Cummins
BLOOMBERG
Jul 23, 2012
If
You’re So Rich, How Come You’re So Miserable?
By William Pesek
l マグナ・カルタ
guardian.co.uk,
Tuesday 24 July 2012
How
the Magna Carta became a Minor Carta, part 1
Noam Chomsky for Tom Dispatch, part of the
Guardian Comment Network
guardian.co.uk,
Wednesday 25 July 2012
How
the Magna Carta became a Minor Carta, part 2
Noam Chomsky for Tom Dispatch part of the
Guardian Comment Network
YaleGlobal,
24 July 2012
Three
Myths About the Arab Uprisings
Ellen Lust, Jakob Wichmann
l シリア
NYT July
24, 2012
Syria
Is Iraq
By THOMAS L. FRIEDMAN
シリアは多くの点でイラクに似ている.多宗派,マイノリティーによる支配,バース主義のイデオロギーと,暴力による支配.
イラクの教訓とは,サダムの国がスイスに変わるには,ホッブズの戦争状態を避けられない,というものだ.もし優れた外部の軍隊が助産婦として介入しなければ,不信と恐怖がともに支配する移行期を,内戦が行き詰まらせる.
イラクが現在少しでも(内戦より)ましな状態を維持しているとしたら,アメリカが武装した数万人の軍隊を,助産婦として配置しているからだ.すべての立場からかなり信頼され,確実に恐れられ,合意による政治に向けたイラクの移行を監視している.シリアにも,同じ助産婦が必要だ.
しかし,オバマ政権はシリアに軍事介入しないし,国民もそれを支持しないだろう.
シリアには二つの未来しかない.一つは,新しいイラクになる.もう一つは,エスニック・クレンジングを放置して,より同質的な国家に変化する.
イラクに駐留するアメリカ軍は,内戦状態が周辺に拡大するのを抑え,エスニック・クレンジングを抑えている.そして,内戦がそれ自体で燃え尽きたとき,すなわち,すべての党派が消耗し,より分離したとき,アメリカはようやく各党派の妥協と合意を促し,シーア派は多数派として支配権を握り,スンニー派は権力を失っても弾圧されず,クルド人は自立を達成する.ただし,その過程は膨大な人命を失わせる.
助産婦のいないシリアが,同じような転換を実現するには,驚きが加わるしかない.すなわち,アサドに反対する諸勢力が政治的に同盟し,アメリカ,トルコ,サウジアラビアの支援を受ける.そして新指導部はアラウィー派やキリスト教徒の穏健派と和解し,多数派による支配的秩序を築く.
さもなければ,内戦の火が消えるまでに,住民は長期間の苦しみを味わうことになる.
Project
Syndicate 25 July 2012
The
Middle East after Assad
Joschka Fischer
WP
July 26, 2012
The
‘day after’ in Syria
By David Ignatius
l アフガニスタン
FT July
25, 2012
Lessons
from my talks with the Taliban
By Anatol Lieven
私と同僚は,先週,ドバイで,タリバンの重要な関係者4人と話し合った.タリバン指導部とアメリカ政府との間で,主要問題に関する合意が成立する可能性は,アナリストたちが信じている以上に高い.
4人のうち3人は,アメリカ軍が2014年以降もアフガニスタンに駐留することを認めた.彼らが強調したのは,これが「降伏」ではなく,包括的な和平合意の一部であることだ.
タリバンは,中央集権的な体制,強い国民軍を望んでいる.それは軍閥支配への退行や,近隣諸国からの侵略を防ぐために欠かせない.権力を国内の他の勢力と分かち合うことも,タリバンは認めている.しかし,ハミド・カルザイとその仲間による支配を決して受け入れない.彼が大統領のまま行う選挙も信じない.
アメリカ政府は,タリバンと合意するために,現在の同盟相手であるカルザイの勢力を権力から排除するだろうか? アメリカ政府関係者にカルザイへの不満が広まっているから,合意は可能である.特に,大統領をカルザイが家族に継承させる考えには強く反対している.豊富な退職金とアメリカ化湾岸諸国への移住を勧めるだろうか?
YaleGlobal,
26 July 2012
Reform
Sprouts in North Korea?
John Delury
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The Economist July 14th 2012
Comeback kid
America’s economy: Points of lights
Russia’s economy and the World Trade
Organization: A chance to get down to business
Lexington: The China-bashing syndrome
South American integration: Mercosur
RIP?
Quantitative easing: QE, or not QE?
(コメント) 世界の景気後退が懸念されていますが,アメリカはヨーロッパ(そして中国)に比べて金融危機の処理に大きく前進している,という記事です.銀行は救済されるだけでなく,自己資本の増強や債務処理を求められ,アメリカ経済を健全化,あるいは,均衡回復に向けて転換しつつあります.それはまた,ドル安による世界貿易の均衡回復も助けられて,アメリカは輸出部門を急速に拡大し,所得格差の問題をともないつつも,新しいエネルギーや情報関連産業に向けて労働者外装している,と言うわけです.
ロシアがWTOに加盟して,世界市場に開放される利益を活かせるかどうか,中国がWTO加盟で実現した成長に比べて,さまざまな問題が指摘されています.他にも,モンゴル,韓国,アフガニスタン,タイ,ハワイ,ヒューストン,ナイジェリア,などの話が面白いです.
ここに挙げた三つの話題は,1.アメリカ大統領選挙の,特にロムニーによる中国バッシング,2.南米における自由貿易より地域政治統合に関する批判,3.量的緩和策など,非伝統的金融政策に関する考察です.
中国,自由貿易,金融政策,これらが新しい世界の可能性を示す理解の鍵なのです.
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IPEの想像力 7/30/12
オリンピックは変だ,と多くの人が思っているはずです.なぜこれほど,国威高揚や,ナショナリズムを鼓舞する演出になったのでしょうか? 北京でも,ロンドンでも,なんだかわからない自国民の宣伝と,勝つことへの興奮,他国民への攻撃性が称賛されます.
こんなことが,戦争の代わりにスポーツだから,奨励されてよいとは思いません.
オリンピックがスポーツを通じた人々の親交と,優れた選手への競技者と観衆の称賛を示す祭典であるなら,組織委員会は行動原理を改めるべきでしょう.ゲーム性の強い競技を排する.国籍や民族性を誇示しない.貧しい土地や戦乱で荒廃した土地から来る選手たちに配慮する.混成チームによる競争や,偶発性による敵対国との協力関係も重視するような,スポーツによる宥和プログラムを開発する.
たとえば,中国政府は四川省大地震の復興について,「対口援助」,という制度を設けました.被災地への支援を各省に分けて,復興を委ねたのです.それは裕福な省に被災地の再建を競わせる意味もあったと思います.オリンピックでも,貧しい国や選手を,豊かな国が支援してはどうでしょうか.一緒に参加する競技も設けます.
中央銀行は,そのような金融政策の競争を繰り広げています.QE(量的緩和策)の影響やEZ(ユーロ圏)の危機,人民元の国際化が,世界経済のフロンティアを大きく変える重要な意味を持つ時代なのです.ジェームス・ボンドやデビッド・ベッカム,エリザベス女王やポール・マッカートニーの話題ではなく,繰り返し暴動の起きたロンドン東部やイングランド北部,南アジアからの移民コミュニティー,ロシアやインドから邸宅を購入する新しい超富裕層,LIBORやHSBCなど,シティのスキャンダル,ユーロ危機がオリンピックに与えた影響,などを知りたいです.
『学生のためのフィールドワーク入門』を読んで,<地域>を認識するとは,どういうことか,説明する言葉に興味を持ちました.それは「あなたがAさんという人と親しくなっていく過程」にたとえられます.インタビューの形で,ある村落・共同体の個別家計を調査することと,イスラム文化圏か,上座仏教圏か,という問題が共通のテーマを示します.景観や自然環境,気候や水系,土地利用,商品作物の耕作面積,その栽培・流通主体,灌漑のあり方,村落の建物や配置,加工工場,季節による農業のサイクル,など,さまざまな観察の注意点が説明されています.
<地域>は,こうして次第にイメージを形成し,観察者の意識の中に誕生します.国家の開発計画ではなく,<地域>の発する問題として,そのメッセージを感じるようになる,と.主要通貨による金融政策の影響が世界化する時代に,<地域>というものを発見する手法で,現実を理解したい,と私は思ったのです.
この手法は,ロバート・カプランが地理・安全保障・国際政治の変化を解釈する方法と似ているな,と思いました.カプランは,しばしば地理的な制約を重視します.それは自然環境と輸送路・文明の伝播ルートであったり,古代からの文明が累積した文化的地層であったりします.それは,アメリカ軍による大規模な軍事介入によっても変わりません.
オリンピックの国家間競争に感じる私の違和感は,世界金融危機とその後の調整過程・景気対策や,イラク,アフガニスタン,シリア,などの安定化と関係があるのです.
人間が生まれながらに持つ能力に,大きな差は無いし,金メダルを取るような天与の才能を発揮する人は極めて少ないけれど,地球上に均一に存在するだろう,と私は思います.そうであれば,金メダルの数を争うオリンピックは,残酷で,野蛮な,自国民優位=他民族蔑視の舞台ではないでしょうか?
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