(前半から続く)
l 銀行スキャンダル
guardian.co.uk,
Friday 13 July 2012
Yes,
banking's a mess, but be part of the solution. Move your money!
Deborah Orr
圧力団体であるPositive
Moneyは,銀行の融資が生産的投資よりも住宅購入に向かい,住宅価格の高騰が融資を膨張させて,最後には危険な住宅購入にまで融資して,繰り返し崩壊したことに対して,これを防ぐ行動を促している.銀行のプリンティング・マネーを止めるのだ.
Larry Kotlikoff の提唱するLimited Purpose Bankingがそれを助ける.インフラ投資のための銀行を作って,私たちが住宅融資などのプリンティング・マネーで高報酬を得る銀行ではなく,優れたインフラを望めば,預金を移動させるのだ.この銀行は,サイバー空間で電子マネーを調達することはできず,資本を調達しなければならない.
FT July
15, 2012
Corporate
culture: Lofty aspirations
By Andrew Hill
guardian.co.uk,
Tuesday 17 July 2012
HSBC,
Libor and the cynical ethos of international banking
Charles Geisst
Project
Syndicate 18 July 2012
Finance’s
Crisis of Legitimacy
Simon Johnson
BLOOMBERG
Jul 19, 2012
HSBC
Reminds Us Why Anger at Bankers Is the Norm
By William Pesek
香港上海銀行HSBCのスキャンダルには大喜びしたかもしれない.ウォール街占拠運動が香港で裁かれていたからだ.香港に本店を持つヨーロッパ最大の銀行が,世界の人々に憤慨と攻撃の理由を思い起こさせたからだ.
アメリカ上院の調査が明らかにしたように,HSBCは我々が知っていた以上に99%の人々が抗議しなければならない標的であった.テロリスト,麻薬組織,その他の犯罪集団に資金洗浄をサービスしていた.その取引相手には,北朝鮮,ミャンマー,スーダン,その他の悪の枢軸が含まれる.
アジアのクローニー・キャピタリズムを批判した後,金融街と政治家と犯罪者が結びついた例が欧米でも次々に示されている.シンガポールや香港の方が,ロンドンやニューヨークよりも清潔に見えるほどだ.
西側の腐敗と衰退は,アジアに二つの利益をもたらす.アジアの銀行は独自に融資や債券売買を発達させるだろう.西側の重役たちも脱出に利用する.そして,Bo Xilaiスキャンダルの後,中国でも,金融ビジネスの規律の厳格化が進むだろう.党幹部の腐敗にも監視が強まる.それは中国資本主義を安定化し,責任あるものにするだろう.同時に,競争する西側の利益にもなる.
WP
July 20, 2012
Libor
fraud exposes Wall Street’s rotten core
By Elizabeth Warren
WP
July 14, 2012
We
see all immigrants as legal or illegal. Big mistake.
By Roberto Suro
l エコロジーと伝染病
NYT July
14, 2012
The
Ecology of Disease
By JIM ROBBINS
人間の活動は多くの仕方で自然によって支えられている.すなわち,ecosystem servicesが重要なのだ.たとえば,森は我々が飲む水を浄化してくれる.ハチは,作物に受粉してくれる.
われわれがそれを理解しなければ,エコ・システムは破壊され,われわれにも破壊的影響が及ぶ.伝染病(AIDS, Ebola, West Nile, SARS, Lyme disease,その他)の拡大はその典型である.それは人間が自然にしたことの結果である.伝染病の60%は野生動物から人間に感染しており,その3分の2は自然の中の生活で起きる.
医療だけでなく,経済にとっても重要だ.世界銀行は,貧しい国で家畜がどのように飼育されているか,調査している.東南アジアでは,コウモリの病気が人に感染するようになった.オーストラリアでは馬と一緒に人が死亡した.
「次の大感染が人類に起きるのを防ぐ最善の方法は,専門家によれば,the One Health Initiativeを設立することである.600人以上の科学者と専門家が含まれる世界的計画で,人間,動物,エコロジカルな健全さが相互に緊密に結びついているという視点を発展させ,全体として研究・管理する.」
人類を伝染病から守るには,環境の持続可能性を変形する方法も学ばねばならない.
l ドローンの根拠
NYT July
14, 2012
The
Moral Case for Drones
By SCOTT SHANE
無辜の市民を殺害しているのではない.これは形を変えた戦争である.他の方法と比べて,たとえば,ドレスデン大空襲と比べて,その道徳的な優位も合理的に考えるべきだ.
l アメリカ経済再生論争
FT July
15, 2012
Land
of opportunity can fight inequality
By Lawrence Summers
進歩派は,不平等を減らすために富裕層に課税するべきだ,と主張する.保守派は,すべてが移動可能な時代に増税すれば,ビジネスマンや雇用が海外に流出する,と反対する.むしろ企業家精神を発揮させるべきだ,と.
どちらの主張にも利点があるが,論争を結果の不平等から機会の不平等に移すことで,ポピュリスト政策の危険を避けて,両者は歩み寄れる.たとえば,公教育の充実だ.
BLOOMBERG
Jul 15, 2012
Hardheaded
Socialism Makes Canada Richer Than U.S.
By Stephen Marche
歴史上初めて,平均的なカナダ人は平均的なアメリカ人よりも豊かになった.エジプトのTV局にインタビューされたRuth
Bader Ginsburg判事は,「2012年に憲法を書くなら,私はアメリカ憲法を手本にはしないだろう」と応えた.
もちろん,幸運が働いた.タール・サンドがあり,中国市場があった.カナダには自然資源が豊富にある.政策においても,カナダはアメリカの政策対立にある双方の良い部分を実行してきた.アメリカの左派は,カナダが社会主義と金融規制を行ったと言い,右派は,1990年代に社会的給付を大幅に削った,と言う.法人税も削減した.
成長は社会プログラムに必要であり,さまざまな社会プログラムが機会の平等と社会的統合にとって重要だ.それらは長期的に成長を高める条件である.資本主義と矛盾するわけではない.カナダの公平を重視する文化がこのバランスを支えた.
カナダを征服することは簡単だ,とトマス・ジェファーソンは言った.しかし,30万人のカナダは800万人のアメリカを撃退した.その後,幸運と,優れた政策と,ヒロイズムがあっても,アメリカを抜くのに200年もかかったわけだ.
guardian.co.uk,
Monday 16 July 2012
Technology
doesn't cause inequality – deliberate policy change does
Dean Baker
WP
July 16, 2012
A
challenge to conservatives
By E.J. Dionne Jr.
FT July
17, 2012
A
conservative growth agenda for the US economy
By Glenn Hubbard
アメリカの成長回復には,財政再建と税制の改革が必要である.オバマにはその気が無い.
アメリカの財政は持続不可能な経路を描いている.数年で,アメリカの債務/GDP比率は第二次世界大戦の水準に達する.最近のAlberto Alesinaによる研究では,増税より政府支出削減の方が長期的な債務の減少と成長をもたらす,と言う.
緩やかな財政再建は景気刺激にもなる.債務の削減は金利低下や輸出増加をもたらすからだ.また,税制が労働意欲や企業家精神,貯蓄・投資,資本配分を妨げている.
アメリカ政府は,初期に財政刺激策を強化する考えを広めているが,それには問題がある.1.危機の構造問題を放置する,2.債務削減や税制改革を無視する,3.危機に対してアド・ホックに対応することが不確実性を増し,投資を妨げる.
FP
JULY 17, 2012
The
Future of Manufacturing Is in America, Not China
BY VIVEK WADHWA
ロンドン・オリンピックのアメリカ・ユニフォームが中国製であることについて,アメリカの不満が爆発した.政府の補助金,低賃金,不十分な規制,通貨価値の操作,などにより,何百万人ものアメリカ人の雇用が中国に流出した,と人々は感じている.
しかし,この潮流は逆転した.今度は中国が心配する番だ.製造業はアメリカに戻るだろう.この傾向を加速するのは,中国の賃金上昇や人民元の増価ではなく,技術進歩である.
第一に,ロボット工学だ.現代のロボットとは,SF映画に出てくるアンドロイドではなく,電子部品を組み込んだ特殊な装置で,遠隔操作される.コンピューターはますます高性能になり,それゆえ,こうした装置も高性能になる.
中国が行っている組み立て作業は,次世代のロボットにとって全く比較にならない.それは労働力よりはるかに安価である.人工知能AIの発達は,自動車の運転を自動化し,i-Phoneの音声認識,Face.comの人相認識を可能にした.さらに「3次元プリンター」がある.
3Dプリンターは,機械部品,埋め込み型医療器具,宝石,服飾に利用されている.その価格も500ドルから1000ドル程度になり,間もなくおもちゃや日用品の多くが(中国ではなくアメリカで)生産できるだろう.再び製造業は地元に戻り,3Dプリンターで生産されるとしたら,なぜわざわざ原料を中国に運んで,再び完成品をアメリカに輸出することなど必要だろうか? もっと各地域で,さまざまな需要に応じて,安価に製造できるのに.
さらに,ナノテクノロジーと新素材がある.これらは「分子製造業」を可能にする.原子のレベルで製造するのだ.アメリカは旧製造業を消滅させて,産業を継続的に革新する能力で中国の製造業を圧倒するだろう.Googleが最新型のNexus 7タブレット型コンピューターをアメリカで製造することに決めたのは,その始まりに過ぎない.
2020年の夏,オリンピックに出場する中国チームのユニフォームがアメリカ製の技術で3D印刷されたことに,抗議する人々の怒りが爆発する.
guardian.co.uk,
Monday 16 July 2012
Chicago's
teachers could strike a blow for organised labour globally
Richard Seymour
l 日本文化
FT July
16, 2012
My
time in Japan’s closed nuclear village
By Gregory Clark
福島の原発事故に日本の「文化」が関係したかどうか,議論になっている.私は事故の前に3年間,原子力安全委員会に属した外国人として,意見を述べたい.
日本人が強者に従う・追従する文化を持つから原発事故を防げなかった,というのは間違いだ.委員会でそのような態度はなかった.アメリカやソ連よりもはるかに厳格に安全性を議論していた.しかし,閉ざされた心理的な障壁は影響したと思う.私は,原発反対派も委員会に加えたらどうか,と意見を述べた.しかし,彼らはそれを一笑しただけだった.もし委員会が反対派も加えて検討していたら,現在,反原発運動はもっと抑制できただろう.
日本人が示す集団意識,関連する大企業などにも及ぶ仲間・家族の感覚は,反対意見を受け入れない人々に広く見られた.それは重大な警告だ.日本の他の多くの例で,組織的な「隠ぺい工作」が知られているからだ.独立した外部の意見を聞くことは重要だ.
男ばかりの,閉じた集団で,少数の有名大学卒業者だけが支配する姿勢,「御用学者」,非常時の計画を立てない迷信的な政治感覚,こうしたことは問題だ.
日本人は,文化の良い側面を残し,悪い面を捨てるべきだ.
WSJ
July 16, 2012
Japan
Fends Off a Bear and a Dragon
By MICHAEL AUSLIN
2012-07-17
(China Daily)
Noda
clutching at straws
By Zhou Yongsheng
l コンゴ
FP
JULY 16, 2012
Hope
But No Change
BY MVEMBA PHEZO DIZOLELE
オバマはコンゴ民主共和国の再建を諦めた.それは,彼が上院議員のとき,ヒラリー・クリントンやその他の議員と一緒に成立させたコンゴ救済・安全・民主化推進法(2006年)に背くものだ.コンゴ政府は機能していない.政治指導力がなく,軍隊は無能で,治安・安全保障も維持できない.
l シリア
Project
Syndicate 16 July 2012
Into
Syria without Arms
Richard N. Haass
シリアへの軍事介入でも,シリアの反政府派への武器援助でもない,アサド体制を終わらせる他の支援策が必要だ.たとえば経済制裁を強化すれば,シリアのエリートがアサドを支持しなくなるだろう.また,彼らがロンドンやパリに来る方法を減らす.アラブ諸国,ロシア,国連にも働きかける.
l ロンドン・オリンピック
guardian.co.uk,
Tuesday 17 July 2012
London
2012: don't be a sceptic – this isn't just about the Games
Dave Hill
guardian.co.uk,
Tuesday 17 July 2012
G4S
should make it easier to beat the privatisation racket
Seumas Milne
SPIEGEL
ONLINE 07/17/2012
London
2012
A
Preview of an Olympic-Sized Fiasco
By Marco Evers in London
FT July
18, 2012
Games
and guards
guardian.co.uk,
Thursday 19 July 2012
Cap
private rent and build more council homes
Ken Livingstone
l 財政政策の論争
LAT July
18, 2012
It's
the fiscal cliff, stupid
2013年1月1日,共和党があらゆる政府の提案を拒めば,「財政の崖(fiscal cliff)」が現れる.一時的な減税は終わり,政府の支出削減が始まって,景気が悪化するだろう.
VOX 19
Jul 2012
Austerity
is unavoidable after a bout of profligacy
Daniel Gros
「緊縮策がヨーロッパの成長を奪った」と,今では多くの著名なエコノミストたちが合意している.しかし,少なくとも中期的なデータはこれを支持しない.
2007年にバブルが破裂してから,アメリカはユーロ圏より大きな財政刺激策を採ったが,両者の経済パフォーマンスは非常に似ている.
緊縮策とは,政府の財政赤字の水準ではなく,政府の支出を削ることである.では,何を削るのか? アメリカ,ユーロ圏,イギリスを見れば,いずれも2009年のピークから,2012年までに,GDP比で約3%の削減を行っている.野蛮な緊縮策がヨーロッパを襲った,というのは間違いだ.特に,イギリスは最大の金融・財政的な拡大策を採ったが,1人あたりGDP成長率は最低だ.
アメリカにも非常にデフレ的な地域がある.アイルランドとスペインは,アメリカのネヴァダとカリフォルニアである(そして,ギリシャはプエルトリコだ).
Krugman and Layardは「緊縮策を止めろ」と言う.しかし,現在の赤字削減では,英米が2007年以前の赤字水準に戻るのでも2017年である.もちろん,2008年に民間需要が落ち込む中で,政府が需要を支え,大恐慌を避けたことは正しい.しかし,政府部門にも赤字削減が必要だ.
失業や生産の減少をもたらすが,だから緊縮策は採るな,と言うのは間違いだ.それは,財政赤字による刺激策が期待されたほど大きな利益はない,という意味であり,赤字を抑制するために必要な緊縮策のコスよりも小さい可能性がある,ということだ.
Project
Syndicate 19 July 2012
The
First World’s Fiscal Follies
Jeffrey Frankel
財政均衡を短期的にも目指すべきか,財政赤字で景気刺激すべきか,先進経済は意見が分かれている.前者は経済を縮小する効果があり,後者は長期的な持続可能性とモラル・ハザードに関する懸念がある.
どちらにせよ,論争は現在の位置をめぐる議論になる.もし好況なら財政黒字を出すべきだし,不況なら財政赤字を増やすべきだ,と.しかし,ケインズ経済学が信用を失ったのは,こうした財政政策の景気に応じた「ファイン・チューニング」を政治家が実行しなかったからだ.むしろ,景気を増幅するような財政政策を採った.政府が,景気の過熱やインフレ,バブルを強めたのだ.
政治では,景気が良いと財政規律を無視し,景気が悪くなると,財政再建のタカ派が強くなる.Ronald Reagan,George H.W.
Bush,Bill Clinton,George W. Bush,彼らのすべてが景気変動を強める財政政策を採った.そして第二の世界恐慌を避けるために,オバマは財政刺激策を提案するが,2009年2月の最初のケースを除いて,財政規律に目覚めた共和党に阻まれる.
こうした財政政策の失敗は,かつて発展途上諸国が「景気変動を拡大する財政政策」として批判された.しかし,その後,中国,チリ,マレーシア,韓国,ボツワナ,インドネシア,といった新興市場の政府は行動を変えた.2003-07年のブームで財政状態を改善し,不況に備えたのだ.それゆえ,2008-09年の世界不況にも財政刺激策を採れた.
彼らは,「先進諸国」が忘れた反循環的な財政政策の意味を教えている.
guardian.co.uk,
Thursday 19 July 2012
Without
the EU, we're just Little England to Beijing and Delhi
Jonathan Todd
l 不平等な社会
Project
Syndicate 19 July 2012
The
Bad Society
Robert Skidelsky
不平等はどこまで許容されるべきか? この30年間の精神では,人々は「汚らわしい金持ちだ」と思われることなく,富を増やせた.「ニュー・エコノミー」では,豊かになることがすべてだった.彼らは税金からも逃れ,再分配も恐れる必要が無かった.
1970年,アメリカのCEOが得た税引き後の所得は,平均的な労働者の30倍だった.しかし,今では263倍である.1970年代後半以来,アメリカの最富裕層(上位20%)の税引き後の所得は,最貧困層(下位20%)の所得の5倍も速く増加した.さらに重要なことは,平均所得と所得の中央値との差が増大し続けている.
競争的な市場システムでは,人々の報酬はその価値に等しいはずだ,という.富は頂上から滴り落ちる“trickle-down”のであり,これを促すしかない.あるいは,貧しい人々の人的資本“human capital”を改善する.
こうした経済学的な説明は,ピラミッドの頂点にいる富裕層に魅力的なものだ.結局,富を協力して生産するとき,個人の限界生産物を測定する方法などない.頂点の報酬は,似た者同士が比較して決めている.
過去には,所得の差に公平性や合理性を求められた.知識や熟練,責任の求められる仕事は高い報酬をもたらした.その格差を決める頂点と底辺との繋がりが維持されていた.経営者のトップでも,平珍的な賃金の20倍~30倍を超える所得を得ることはまれだった.医者や弁護士でも,手を使う労働者の賃金のおよそ5倍であった.
こうした関係が破壊されて,人間の活動を評価するコモン・センスが失われ,報酬を計算する怪しい方法が広まった.もっと貧しい者の富を増やすこと,もっと才能のある者を所得と関係なく教育することが,社会の富を増やす優れた方法である.
ところが経済学は分配の問題を無視している.それは大多数の人々を良質の生活から排除し,民主主義(平和的に社会の争いを処理する仕組み)が依拠する社会的な結束を破壊する.
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The Economist July 7th 2012
Science’s great leap forward
The LIBOR affair: Banksters
China’s capital controls: The more
special economic zone
(コメント) ほかにも読み始めたのですが,概ね,少し眺めて,止めました.
ヒッグス粒子は,何か,面白いというより,まるで分らないものです.質量が生まれることを説明する? それはないだろ…? なんでも「粒子」と呼ぶのは,物理学の習性か? などと思ってしまいます.「神の粒」か「神の素」か,一般相対性理論がすっきりしているのに,ほかの理論がばらばらである,ブラック・マターを説明できない,・・・物理学者とは何なのか? 理論があり,観察があり,整合性を議論する,という姿勢に「神」を感じます.
LIBORの不正操作が,利益をもたらすカルテルであり,金融パニックを回避するシステムの集団的な安定化でもある,と記事は指摘します.他方,中国が資本規制を解除する作業を,新種のEPZとして進めています.
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IPEの想像力 7/23/12
二名町の子供祭りがありました.ところが,猛烈な雨が昼前から降って,午後になってますます滝のように降り注ぎました.公園のお祭りは中止ですが,くじ引きと景品の引き渡しは小学校の講堂で継続する,というような放送を流す車が,来たように思います.
景品をもらいに行くと,お祭りを待っていた子供たちが,何人も一緒に小学校の方へ歩いていました.子供の手を引くお母さんや,話しながらゆるゆると歩くおばあさんたちもいます.猛烈な雨が夕方にはすっかり上がり,空の一部には晴れ間ものぞく,実にさわやかな夕暮れとなりました.涼みながら散歩するには最適の夕べです.
歩くうちに,私の胸には,これほど多くの人が集まってくることについて,不思議な気分が湧き始めました.まるで,何十年もさかのぼった,どこか,自分が子供のときの町を歩いているような気分です.実際,炎暑の町にはだれ一人おらず,いや,炎暑でなくても,まるでゴーストタウンみたいに人気のない住宅地なのです.
もしお祭りのおかげで,こうして街に人の流れがよみがえるのなら,時々,お祭りをしてはどうか,と思いました.
多くの人が本当は生活しているのだ,と感じるのは,大規模スーパーと,病院の中だけです.大規模スーパーを歩くと,一体どこで,誰がこれほど多くの商品を作ってくれたのか,と,サンタクロースを迎える幼児のようになりますし,病院内で順番を待つ多くの高齢者の中に呑み込まれると,一体この費用をだれが負担しているのか,と,生産者の減少していく福祉国家の財政基盤に不安を感じるエコノミストの訴えに共鳴します.
市場はどこまで許容されるべきか?
もしすべてが小さな社会関係の中にあれば,子供たちは町の公園や商店街,校庭などに集まり,遊ぶ相談をしたのではないでしょうか.ゲーム機を使って部屋で遊び,インターネットや携帯電話で情報を交換するより,本当は,その方が町は生き生きしたでしょう.近所のそろばん教室や習字の先生の家に集まって,彼らが楽しく遊ぶ声も聞こえません.塾の時間が増えて,いろいろな子供たちが一緒に遊ぶ時間を奪いました.
世界各地から届く膨大な輸入品が大規模スーパーの棚を埋めることもなく,医師や看護婦が誰から給与をもらって大きな病院を維持するのか,不安に思うこともなかったでしょう.店は小さく,商品は少なく,小さな医院も町が負担します.
グローバルに広がった市場によって,確かに優れた機会や資源が利用可能になって,私たちを豊かにしていると思います.しかし,多くの間違った結果や望ましくない生き方に私たちは制約されているのではないか,と思います.市場は,それが有益な結果をもたらしているのかどうか,小さな社会で話し合うべきです.社会的に見て望ましい分野に限り,注意深く利用されることを,本当は常に監視して,議論しなければならない仕組みなのです.
LIBORやHSBCスキャンダルを見て,あるいは,アメリカ大統領選挙の不平等論争を読んで,私はそう思いました.Skidelskyの言うように,もっと広告や富裕層には課税し,富裕層の政治資金によって政策が影響されない方が,社会の富は増えるでしょう.
それは,ユーロ圏が崩壊の危機に瀕しているように,円を揺るがす不安を生じるかもしれません.しかし,ユーロ危機を脱するとしたら,人々が市場の利用の仕方を真剣に話し合うようになるからでしょう.
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