(前半から続く)
l ユーロ・サミット
VOX 7
Jul 2012
An
incomplete step towards a Banking Union
Daniel Gros
FT
July 8, 2012
Eurozone
crisis will last for 20 years
By Wolfgang Münchau
その決定は正しい方向に,しかし,不十分なものであった,と言われる.私は反対だ.その決定は間違った方向であった.
銀行の資本増強をユーロ圏全体で協力することは完全な銀行同盟を必要とする,と彼らは決定した.それは,ブンデス・バンクがそのために完全な政治同盟を要求しているのだから,結局,ユーロ危機が解決するまでには,あと20年を要するだろう.
NYT
July 8, 2012
Europe’s
Missing Union
By DAVID MARQUAND
EUは,希望である.平和的な,法の支配する統合が,大陸に広まる悪魔を打ち消し,民主的規範と制度をその政治文化に定着させるものだ.60年前に始まったプロセスが,世紀を超える独仏の対立を終わらせ,ポルトガル,スペイン,ギリシャのファシスト体制を打破し,中東欧にあったソビエトの傀儡政権を10か国で滅ぼした.
しかし最近,ユーロ圏の危機は統合への政治的な不満を高めている.リンカーン風に言えば,人民の政府,しかし,債券格付け機関のための政府,というわけだ.
民主主義と資本主義は両立できるのか? 両者の不可避的な対立を打開することは可能か? グローバルな市場に直面した主権国家が能力を失うとき,それが無気力や過激な政治集団をもたらす.欧州議会選挙の投票率は減少し,新しい加盟諸国でも有権者はその関心を失っている.フランス大統領選挙の第一次投票で,極右と極左が得た票を合計すれば,決選投票のサルコジやホランドが得た票を超えていた.ギリシャの最近の選挙でも,イタリア,オランダ,ポーランド,オーストリア,ハンガリーの選挙でも,極右の得票が増えている.無気力は,時間をかけて,その病気を広げていく.他方,ポピュリスト的過激派は攻撃的な癌である.両者はともにヨーロッパ民主主義の深刻な脅威である.
テクノクラートの政府は答にならない.ヨーロッパは政治統合に進むべきだ.それしかない.反対派はヨーロッパ官僚を非難し,その決定が国民議会から遠く離れたところで行われることに反発する.しかし,統合は既に国民的な権威による管理を無効にしてしまった.グローバリゼーションがもたらす金融ビジネスのパワーに,個別の国民政府では対抗できない.
無力さを免れようと,各国は隣国に対する優位を得るために統合を破壊する.たとえばイギリスは,自国のルールに合わせたEUだけを望み,ユーロ危機にはわずかな支援も拒んだ.ドイツもそれに劣らず,ユーロ圏が彼らの輸出産業に与えている大きな利益を無視している.ユーロ圏内の赤字諸国と繁栄を共有するというより,メルケル首相は緊縮策と債務との悪循環を強要している.それゆえ,ポピュリスト的な過激派が,まだ,1920年代,30年代の水準に達していないのはまさに奇跡であって,このまま抑制できるはずがない.
政治統合は万能薬ではない.すべてはその構築方法と目的によって決まる.民主的な連邦体制を命ずる「鉄の法則」など無いのだ.臆病さ,想像力の欠如,矮小なナショナリズムが,その実現を阻む.オランドとマリオ・モンティは,60年前のように,メルケルを説得しなければならない.
WSJ
July 8, 2012
How
About a Free-Trade Deal With Europe?
By PAULA DOBRIANSKY AND PAUL SAUNDERS
アメリカは,最も緊密で,最も長期の同盟関係を結ぶヨーロッパで進行中の経済危機に対して,政治的視野と指導性を示し,内外の国益を守るため支援しなければならない.なぜなら,貿易や投資を通じて,ヨーロッパ経済はアメリカ人の雇用やNATOによる安全保障を支えているからだ.
一つの大胆な政策は,米欧による大西洋自由貿易協定だ.それは万能薬ではないが,大西洋間の取引コストを低下させ,長期的に,より多くの雇用と成長をもたらすだろう.そして将来の米欧関係を強固なものにする.
VOX 9
Jul 2012
In
support of a European banking union, done properly: A manifesto by economists
in Germany, Austria and Switzerland
Michael Burda, Hans Peter Grüner, Frank
Heinemann, Martin Hellwig, Mathias Hoffmann, Gerhard Illing, Hans‐Helmut Kotz, Tom Krebs, Jan Pieter Krahnen, Gernot Müller, Isabel
Schnabel, Andreas Schabert, Moritz Schularick, Dennis J Snower, Uwe Sunde,
Beatrice Weder di Mauro
ユーロ危機を終わらせ,安定的な金融制度を構築するために,銀行同盟は必要である.政府債務危機を銀行危機から切り離し,不況を緩和する.これは,ドイツの100名以上のエコノミストが署名した宣言である.
FT
July 10, 2012
We
still have that sinking feeling
By Martin Wolf
Project
Syndicate 10 July 2012
Europe’s
Divided Visionaries
Barry Eichengreen
ビジョンがあることと,その実行とは別問題である.ヨーロッパは,いつも,実行において不足している.
最近のEUサミットで指導者たちはビジョンに合意した.経済通貨同盟は銀行同盟,財政同盟,政治同盟によって補完させるべきだ.銀行同盟では,単一の金融監督を設け,預金保険と銀行処理メカニズムを実現し,EUの救済基金が,直接,銀行の資本を増強できる.
財政同盟では,欧州委員会もしくは「欧州財務省」が各国の予算に対する拒否権を持ち,政府債務の一部を共有し,各国債務はユーロ債になり,共同の責任を負う.欧州委員会もしくは「欧州財務省」はユーロ債の追加発行と管理を行う.
政治同盟では,各国議会からヨーロッパ議会に権限が移行する.財政・銀行・通貨同盟の構造を決め,責任を持つのはヨーロッパ議会である.EUの日々の行動を担うECB理事会がなどが説明責任を果たすのも,このヨーロッパ議会に対してである.
ビジョンは素晴らしいが,この実現には二つの立場が対立している.直ちに統合を深化させるべきか,そのような拙速な行動は失敗するから,慎重に収斂させるべきか? 一般に,前者はフランス・南欧派,後者はドイツ・北欧派である.
1990年にも,同じ二つの意見が対立していた.一方は,経済政策や制度の収斂を優先し,それに先立って通貨統合することを批判した.他方は,既存の通貨システムが硬直的で,危機を繰り返している,と批判した.制度構築の時間をかけた修練を待っている余裕はないのである.
1992年の為替レートに対する攻撃とパニックが,政治対立のバランスを変えた.ヨーロッパの為替レート制度が爆発して,直ちに通貨同盟を実現する南欧派が優位を得た.しかし残念ながら,その結果は現在の危機に向かい,銀行・財政・政治同盟を必要としている.
通貨統合しなかったとしても,当時,破滅は免れなかっただろう.1992年の危機は,既存システムが不安定であることぉお示していた.ユーロに合意しなければ,一層の破壊的な危機を生じたはずだ.だから指導者たちは大胆な行動を選択した.
今もそうである.行動することは難しいが,破滅は待ってくれない.
VOX 10
Jul 2012
EU
banking union disunites German economists
Urs Birchler, Monika Bütler
FT
July 11, 2012
Why
Europeans should love banking union
By Martin Sandbu
l ライボーLiborスキャンダル
guardian.co.uk,
Sunday 8 July 2012
Wall
Street's link to Libor
Robert Reich
WSJ
July 10, 2012
The
Libor Scandal's Threat to Growth
By DAVID MALPASS
FT
July 12, 2012
Seven
ways to clean up our banking ‘cesspit’
By Martin Wolf
Libor(the London Interbank Offered Rate)スキャンダルは,銀行の評価を完全に打ちのめし,棺桶に入れて釘を打ったものだった.しかし,銀行に愛想を尽かすことが,正しい改革をもたらすわけではない.
1.銀行には金が集まる.不正のチャンスに満ちている.2.それゆえ,罰則を重くし,もっと情報を公開させることだ.3.銀行は自己資本を増やさねばならない.なぜなら銀行の倒産が心配されたからLiborスキャンダルは起きた.4.それは100%準備銀行ではない.5.問題は,リスクによる評価,である.6.銀行のリテール(小口)業務を継続しつつ,銀行の整理を実行できることだ.銀行グループ全体が危機に対しても十分な資本を持たねばならない.7.リテール・バンキングと投資銀行とを分離するべきだ.
銀行家たちを聖者に変えることはできないだろう.しかし,われわれは銀行家に及ぼすインセンティブを変え,銀行ビジネスの構造を変え,規制を変えることができる.それゆえ私はレバレッジを抑制し,情報公開を徹底させるように求める.国家が投資銀行を守らねばならない,という発想は根本的に間違っている.失敗した投資銀行は破産させるべきだ.そのためにも,リテール・バンキングの囲い込み(the ringfencing of retail banking)は重要だ.
NYT
JULY 12, 2012
The
Market Has Spoken, and It Is Rigged
By SIMON JOHNSON
驚くべきことに,事情をよく知る同業者や専門家たちは,バークレイズの不正行為を法的に問うより,それを容認し,同情する姿勢を示した.これは経済学的に見ても,政治的影響においても,重大な誤りだ.
いわゆるLiborは,10通貨に関して,翌日から12か月まで15種類の満期を持つ金利が,毎日,公表されている.デリバティブ取引の想定額は360兆ドルに達する.バークレイ単独でこれを操作することはできないが,他の銀行と共謀して,特定の人々や銀行にとって都合の良い形で,金利を操作していた.Libor "panel"には18の銀行が所属する.
5つの弁解が横行した.1.長年の習慣だ.2.誰でもやっていることだ.3.誰も犠牲にはならない.4.監督機関が悪い.5.わずかな違いでしかない.こうした言い訳はすべて間違っている.
権力は腐敗する.金融市場の権力も完全に腐敗してしまった.金融仲介の依拠するべき正当性が何もかも失われたのだ.
VOX 8
Jul 2012
Beyond
the curse: Policies to harness the power of natural resources
Rabah Arezki, Thorvaldur Gylfason, Amadou
Sy,
l 新興諸国の政策
FT
July 9, 2012
Brazil:
After the carnival
By Joe Leahy in São Paulo
過去10年間,ブラジル経済は大豆や鉄鉱石の輸出が増えたおかげで驚くほど成長し,2010年には7.5%に達した.主に中国市場向けの輸出である.今,ブラジルは初めて戦略の方向性を再検討している.
「アメリカのように消費し,ヨーロッパのような充実した社会保障を得て,新興経済としての高成長を持続する.」 ブラジル最大の民間銀行Itaúの主任エコノミストは彼らの望みを表現した.それは新興諸国が共通に悩む問題だ.彼らは経済モデルを見失った.「灯台の無い海を航海しなければならない」と,Raghuram Rajanは言う.
インフラ整備の遅れ,制度改革の政治的限界,インフレの高進,通貨価値の上昇,技術者・熟練労働者の不足,不況回避のための信用膨張と不良債権問題,資本の浪費,国内貯蓄の不足,外資への依存,・・・
FP
JULY 11, 2012
The
End of the Vietnamese Miracle
BY GEOFFREY CAIN
Project
Syndicate 11 July 2012
The
New Global Economy’s (Relative) Winners
Dani Rodrik
世界経済は第二次世界大戦後の,新興諸国にとって最高の機会に満ちた時期を終えるだろう.事実上,すべての先進諸国で不平等が増し,中産階級が苦しみ,高齢化が進み,財政赤字が増えている.失業者が増す中で,政治的な紛糾が続くだろう.民主主義諸国はますます内向きになって,国際政策協調への関心を失っている.主権を重視し,自国の優位にこだわる中国,インド,ブラジルのような新興諸国が協調に熱心だ,とは決して言えない.
こうした新しい国際環境において,優位を維持する国の条件は三つある.1.財政赤字の抑制,2.世界市場に過度に依存していない,3.民主主義体制が確立されている.
なぜなら,公的債務がGDPの80-90%を超えると,経済成長を低下させるだろう.その理由は,財政政策が使えず,金融市場がゆがみ,増税をめぐる内紛が激しくなるからだ.分配と赤字削減をめぐる紛争が,政府に,投資を促す長期の構造変化をもたらす重要政策の実施を困難にする.しかし,多くの先進諸国はこの水準を超えている.
Project
Syndicate 12 July 2012
The
East Asian Miracle Revisited
Andrew Sheng, Geng Xiao
l 不安定化と国際投資
FT
July 9, 2012
Crumb
of comfort for investors in a leaderless world
By Gillian Tett
アメリカの財務省証券に集中している,市場の不安から生じた資本の流れは,次第に,分散化の傾向を示している.オーストラリアへ,シンガポールへ,地政学的な視点から,世界の投資家は資産を分散しつつある.アメリカの築いた国際秩序は,G5,G7,G8,G20や,中国など新興諸国に守られていても,溶解しつつある.
いつまでも夢のような解決策を探すのではなく,なだらかな不安定化の時代に,投資家たちは適用できる仕組みを獲得したのかもしれない.
l マクロ経済学の革新
FT
July 9, 2012
Krugman
and Layard suffer from optimism bias
Stephen King
金融政策が限界に達したら,財政刺激策がある.Paul Krugman and Richard Layardは,中央銀行による財政への融資を求めている.
ワイマール共和国やジンバブエのことを心配することもなく? 財政赤字が危機の原因ではない,と言うだけで,次の危機につながらない,とは言えない.次の景気回復で赤字を解消できる,という楽観論の根拠もない.かつてのような住宅バブルを回復することなど望めないのだ.
Project
Syndicate 10 July 2012
Is
Inequality Inhibiting Growth?
Raghuram Rajan
金融危機後の大不況に関して,その原因を正しく認識しなければならない.二つの証拠が顕著である.1.財・サービスへの需要が減った.2.アメリカにおいて,経済成長の成果が富裕層に偏っている.ヨーロッパでは諸国間の差が開いている.
進歩派のエコノミストたちは,不平等や労働者・中産階級の政治力を弱めたアメリカの政策を批判する.融資と住宅価格の上昇がもたらした幻想は消えた.他方,ヨーロッパで住宅バブルを生じたのはユーロ圏の周辺部における金利低下であった.
競争の激化と新技術が高度な熟練と才能を持つ労働者に有利に働いた結果,所得格差が拡大したのである.それは政府の富裕層に対する優遇策より,自由化政策の結果である.短期的な金融緩和と,規制緩和された信用の拡大がバブルを刺激した,と言うのは,進歩派と反対派に共通する.しかし,大陸ヨーロッパを見れば,規制緩和よりも労働者への保護政策が成長や競争力を奪っている.アメリカと同様に,ヨーロッパでも若年層が失業のコストを集中的に強いられている.
それゆえ対策として,時間はかかるが,アメリカにおける教育の改善,新しい職場に求められる労働者の熟練を養成するべきだ.またヨーロッパでは,緊縮政策を緩和し,赤字に融資しつつ制度改革を実行する政治に支援を与える必要がある.これはユーロ危機の過程で,ドイツが求めた改革を裏切られてきたから,受け入れることが非常に難しい政策だ.ドイツは制度改革を先行させるよう求めている.
ヨーロッパの成長が回復すれば,次第にアメリカのような不平等が現れるだろう.しかし,ヨーロッパが真に恐れるべきは,アメリカの失業ではなく,日本の停滞である.
FT
July 12, 2012
Move
America’s economic debate out of its time warp
Jeffrey Sachs
アメリカの政策論争は時代錯誤に陥っている.一方では,レーガノミスクの遺した悪影響を全く無視して,富裕層への減税と貧困層への給付削減が主張されている.他方では,最近の財政刺激策が無効であったことを無視して,Krugmanなどが粗暴なケインズ主義を叫んでいる.
共和党の唱える自由市場経済学は1920年代に回帰するものだ.貧困解消や,環境規制,社会福祉を認めたM. フリードマンやF. ハイエクよりも粗雑な議論である.彼らが目指すのは富裕層のリバタリアニズムであり,経済や社会がどうなっても関係ない.
他方,Krugmanの唱える1930年代の世界には,総需要の不足だけが存在する.政府債務問題はなく,グローバルな競争力の問題もなく,財政刺激策の乗数は予測可能で持続し,十分に大きい.短期の財政支出を計画する政治家は信頼でき,減税と財政支出,短期の支出も長期の公共投資も区別しない.
なぜこうした空虚な論争が広まるのか? おそらく二つの理由が重要だ.1.世界には雑音が多く,メディアのメッセージが重要だ.つまり,短く,鋭い,誇張されたアイデアが繰り返されて,聴衆を増やすのだ.経済学もメディアのブランドでしかない.2.世界はグローバルな規模の新しい挑戦に直面している.ところが経済学は新規な課題を扱うのが下手だ.硬直的で,イデオロギーに支配され,過去の証拠に依拠して,後ろ向きの議論しかしない.
マクロ経済学が重視するべき新しい現実とは,1.金融市場はグローバルであるが,規制はナショナル,あるいは,それ以下だ.2.労働の在り方が変わったのに,労働市場も労働者もそれに適応できない.低熟練労働は,ますますオフショア生産や,移民,機械が行い,高所得国の中産階級は,職場を確保する唯一の方法として教育,熟練,それを支援する労働政策に拠るしかない.3.課税はますますスイス・チーズのように穴だらけで,富裕層や企業のタックス・ヘイブン利用を止められない.4.新しい人類史の時代に入った.グローバルな成長は,個別の国の成長戦略ではなく,資源の制約や気候変動によって決まる.5.資本や富裕層への課税が難しくなる一方で,急速な高齢化とともに年金・医療の財政負担が急増する.すべての政府が長期多岐な財政破たんに直面する.
金融・財政,労働市場,課税,エコロジー管理,予算管理,投資促進,などをすべて転換する新しい経済戦略が必要だ.1920年代や1930年代の経済学が支配する論争を無視して,21世紀のマクロ経済学を発見するべきだ.
l アメリカ外交の限界
NYT
July 9, 2012
Clinton
Digs at China From Neighboring Mongolia
By JANE PERLEZ
FT
July 11, 2012
Clinton’s
talk of democracy in Asia lacks precision
By David Pilling
FP
JULY 11, 2012
Talking
a Great Game
BY CHRISTIAN CARYL
Project
Syndicate 11 July 2012
Energy
Independence in an Interdependent World
Joseph S. Nye
Project
Syndicate 11 July 2012
Obama’s
China Card?
Malcolm Fraser
WSJ
July 13, 2012
The
South China Cede
l アラブの春
NYT
July 9, 2012
Libya’s
Election
WP
July 10, 2012
Libya’s
all-important post-election steps
FT
July 11, 2012
Beware
old troubles in the new Egypt
Richard Haass
l 中国の挑戦
FT
July 10, 2012
The
family fortunes of Beijing’s new few
By FT Reporters
NYT
July 10, 2012
A
Confucian Constitution for China
By JIANG QING and DANIEL A. BELL
モンゴルにおけるクリントン国務長官の演説は,市民に情報を隠し,自由な言論を弾圧し,指導者を選ぶ権利を否定している,とアジアの諸政府を批判するものだった.しかし,西側が思う以上に,中国は民主的である.民主制と権威主義体制,という二元論が,優れた他の可能性を排除している.
中国の政治的未来は,西側のような複数政党による選挙ではなく,長期的な儒教の伝統である「徳政(人道的な権威)」によって決まるだろう.選挙による権威だけが政府にとって正当性の源泉ではない.
民主主義の欠陥も広く知られている.多数支配が道義的な善である保証はない.また,短期的な利益が長期的な,また,人類の利益と衝突する場合,地球環境のように,民主主義が必ず正しい決定を下すとは言えない.
正統性とは,単に,民衆が支配者について考えることではなく,支配者が支配する権利を持つかどうか,それを決定する要因なのである.Gongyang Zhuan(春秋公羊伝)によれば,正当性は天地人によって決まる.
WSJ
July 10, 2012
China's
Coming Economic Transformation
By ANDREW BATSON
NYT
July 11, 2012
China’s
Economy, Still Strong
By STEVEN RATTNER
中国経済の悲観論は行き過ぎだ.それはアメリカが中国について政治的安定性や指導層の交代,汚職や経済データの操作などを強く懸念することで誇張される.そのような感情や懐疑論を除けば,中国経済の可能性はまだまだ楽観できる.
中国の成長が投資率の高さや資本効率の低下,住宅バブルの崩壊,など不安材料を示すとしても,アメリカ経済と比べて,まだはるかに資本ストックは少なく,資本の非効率性より投資がアメリカにとっては不足しており,住宅価格の下落率は9か月でたったの2.2%でしかない.
FP
JULY 10, 2012
Insourcing
BY VIVEK WADHWA
オバマもロムニーも議論しないアウトソーシングの理由は,アメリカの移民法が優秀な移民企業家のアメリカにおける起業を妨げていることだ.
NYT
JULY 11, 2012
Open
Education for a Global Economy
By DAVID BORNSTEIN
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The Economist June 30th 2012
London’s precious brilliance
Special report: On a high – London
Central banks: Don’t give up
India and China: Friend, enemy, rival,
investor
Population and recession: Europe’s other
crisis
Regulating the arms trade: A dirty
business
Free exchange: The real wealth of
nations
(コメント) 世界都市,ロンドンに関する考察は,次に紹介します.中央銀行の決める金利低下と,不況による人口増加率の減少.どちらも大不況との悪循環が懸念されます.
インドと中国の関係が深まり,特にインドにおいて悩ましいものとなっています.なぜなら自由化によって,二国間の貿易不均衡が拡大することを止められないからです.インドの赤字を融資するのは,また,中国からの投資です.それでよい,と思えないのは,インドと中国が広大な国境地帯で領土紛争を抱え,何度も衝突した核保有国だからです.
他方,国際武器取引の規制に関して,ガバナンスの効果をどのように確保できるでしょうか?
最後に,国連の報告書が「諸国民の(真の)富」に関する報告書を出しました.富は三つに分類して,「製造業によって得た」物的資本,人的資本,自然資本,を推定します.すると日本(!)が,アメリカを抜いて,一人あたりの富で見た世界最大の国になります.GDPでは中国に抜かれましたが,「真の富」を見れば,日本は中国の2.8倍もあるのです.・・・えっ,本当に?
この推定を指導したケンブリッジ大学のSir Partha Dasguptaは,推定に問題があることを認めています.しかし70年前のGDPもそうでした.経済の成果を測定するとき,GDPを重視するより,「真の富」にもっと注目するべきです.
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IPEの想像力 7/16/12
先週末は,大腸内視鏡検査,という検査入院で疲れました.Reviewを休みにしようか,と考えていましたが,祭日もあったので何とか書きました.
この欄は,The Economistの特集記事で埋めることにします.テーマはロンドンです.オリンピックの話だろう,と思ったら,全然違いました.
世界都市Global Cityといえば,ロンドンとニューヨークでしょう.今では,シンガポールや上海,ドバイ,など,新しい競争相手が現れています.Leaderの要点は,イギリス(国家)の経済が衰退する中でも,ロンドンの経済は拡大していることです.記事はそれを,良いことである,と主張しています.もちろん,反対意見があることを承知しています.
ロンドンの住民たちLondonersにとって,世界都市の繁栄がマイナスの面を持っていることも記事は重視します.住宅価格高騰,交通渋滞,「人種暴動」,・・・などを嫌って,その不満が政治を動かし,政策や規制を強化します.それらがロンドンを衰退させてしまう,と記事は心配します.
実際,問題は政治(成長の統治)です.金融市場のネットワークも,移民の流入も,ロンドン市長の権力が及ぶものではありません.金融市場を規制するのはイギリス政府やイングランド銀行であり,EU官僚,ECBです.それでも,ますます多くの外国生まれの住民がロンドンの政治,経済を変化させ,外国からの資本が住宅市場や投資,企業に重大な影響を及ぼします.
ロンドン市政にとって重大な問題は,グリーン・ベルトの維持・撤廃や,交通渋滞と,それを抑える(乗り入れ自動車への)時間制追徴金システム,あるいは,ヒースロー空港の新滑走路建設問題,です.移民たちが様々な居住区を形成する中で,ガバナンスを新しく制度化する試みと,その限界が,都市政治に具体的な姿を与えます.
特集記事では,こうした問題の詳しい中身も含めて,世界都市ロンドンの解剖を試みています.つまり,ロンドンをめぐる歴史地理です.
外国人,すなわち,ローマ軍がイングランドを征服したとき(43AD),テムズ川に架けた橋からロンドンが生まれた,というのも面白いです.最盛期はヴィクトリア女王のころ,産業革命を経て,世界貿易と銀行・金融ネットワークの中心にロンドンが位置したときでした.しかしロンドンの人口は1940年代から減少し,1980年代になって再び増加しました.
ロンドンは政治の産物です.政府の自由化政策,最近の例は,サッチャー政権が行った1986年のビッグバンです.金融規制を緩和し,ロンドンの金融街に多くの外国金融機関が集まり,取引を活発に行って繁栄しました.もはや大英帝国の首都ではなく,グローバリゼーションの中心都市であり(時間帯によりヨーロッパとアフリカを管理する),それゆえウィンブルドン現象(イギリス企業・経済の衰退)も同時に進んだわけです.
都市の富は,巨大なネットワーク効果によって生じるようです.金融街の成長は,多くの外国人とともに技術や熟練をもたらし,富裕層は資金を,貧困層は勤勉な労働力をもたらしました.ロンドンに人を集めた要因に,優れた教育機関が挙げられています.世界中の戦乱,政情不安,政治的弾圧,などが,頂点と底辺から,外国人に寛容なロンドンへの移民を増やします.
たとえ外国から人口が流入しても,十分なインフラが投資されれば,住民たちは彼らをもっと歓迎できたかもしれません.移民の波は次々に起きました.17世紀のユグノー,19世紀のユダヤ人,1950年代,60年代の西インド諸島人,1970年代,80年代の南アジア人,今は世界中から移民が流入しています.ロンドンの所得分配は不平等化し,犯罪や暴動が増えています.
ロンドンでは,中心地から外へ向けて,西から東へ向けて,繁栄が波及し,言い換えれば,社会的・経済的な地位が低下します.ロンドンの成長とともに,移民たちもEast Endから抜け出しますが,新しい移民が来てそこに住みました.ロンドン東部開発は,たとえば,サッチャー政権時に,Docklandsがカナダの開発業者(Olympia & York)により進められましたが,貧困の海に浮かぶ繁栄の島に留まりました.しかし,鉄道や地下鉄の延長で,貧しいけれど革新的な若者たちが集まり,東部の繁栄も始まります.
人口増加による,交通渋滞,空港の機能障害,住宅価格高騰,暴動,がロンドンの姿を変えるでしょう.The Economistは,ロンドンを広域化・高層化し,グローバルな市場取引と人材を招き入れて,それに必要なインフラを整備するよう求めます.イギリスが衰退する中で,グローバル都市の地位をめぐる競争は激化しているからです.他方,都市の中にも森林を求め,平等やコミュニティーを求め,社会保障や低所得者のための住宅整備,質の高い公共交通や公教育,グローバルな富裕層への規制・課税,などを求める政治が組織されます.
政治がロンドンを滅ぼすでしょう.銀行家たちは憎まれ,富裕層や移民は拒まれるようになりました.特集記事は,ロンドンの繁栄がイギリスを豊かにしている,と訴えます.しかし,その繁栄を住民たちに及ぼす力は,ロンドン市長にないのです.
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