IPEの果樹園2012

今週のReview

7/16-21

 

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オバマとロムニー ・・・インド ・・・大メコン圏開発 ・・・日本の新世代 ・・・アイスランド ・・・アメリカの回復 ・・・ユーロ・サミット ・・・ライボーLiborスキャンダル ・・・新興諸国の政策 ・・・不安定化と国際投資 ・・・マクロ経済学の革新 ・・・アメリカ外交の限界 ・・・中国の挑戦

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX: VoxEU.org, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  オバマとロムニー

NYT July 5, 2012

Off and Out With Mitt Romney

By PAUL KRUGMAN

ロムニーが,経済のことがよくわかるビジネスマンだから,アメリカの雇用を増やす人だから,大統領にふさわしい,と言うのは間違いだ.

ロムニーの活躍したBain Capitalは,プレイヴェート・エクイティ・カンパニーであり.何も生産することはなく,企業の売買で利益を得た会社だ.こうした企業を経営することと,アメリカという国を統治することとは全く違う.

企業は国家ではない.アメリカは,グローバリゼーションにもかかわらず,その生産物の86%を自国で売っている.また,マクロ経済政策の重要な道具,すなわち,金利,税率,支出計画,というものが企業にはない.ハーバート・フーヴァーは優れたビジネスマンであったが,大恐慌を正しく扱えなかった.

Bain Capitalが行った企業売買で,雇用を増やしたケースもあっただろうが,多くは雇用を減らし,賃金を減らし,利益を減らした.中には,企業が倒産した場合でも,Bain Capitalは利益を得た.Bain Capitalが推進したのはアウトソーシングだ.資本主義の原理を重視するロムニーは,企業が利潤を最大化するために生産拠点を外国に移し(offshoring),外国からの調達を増やすこと(out-sourcing)を支持するだろう.前者は否定するが,後者なら良い,とロムニーの陣営は主張しているが,それは間違いだ.

アメリカ人の雇用は減り,この30年間そうであったように,一握りのエリートが莫大な利益を得て,より安い賃金の労働者が増える.それがロムニーだ.

WP July 6, 2012

The imperial presidency revisited

By Charles Krauthammer

FT July 8, 2012

Survival of the weakest: economy vs Romney

By Edward Luce

経済状態が悪いと再選は難しい.しかし,高い失業率にもかかわらずオバマの再選が予想されている.その原因はロムニー陣営の失敗だ.

ニュート・ギングリッチが共和党の大統領候補指名争いでロムニーに敗北した理由について訊かれて応えた.「ロムニーには16人も超資産家が支援していたが,私を支援してくれた超資産家は1人だった.」

経済を決めるのは,中産階級の苦しみだ.選挙もそうである.先週の独立記念日に,ロムニーはニュー・ハンプシャーの邸宅で“Romney Olympics”を催した.また,ロムニーはケイマン諸島やバーミューダのオフショアバンクに9つの口座を持っている,と知られるようになった.どれほど慈善活動に寄付したところで,庶民から見て,オフショアバンキングは脱税だ.

オバマは経済を再生することには失敗するだろう.しかし,ロムニーを倒すことはできる.

NYT July 8, 2012

Mitt’s Gray Areas

By PAUL KRUGMAN

雑誌Vanity Fairは,ロムニーの資産について「灰色のエリア」を特集した.

Georgeとその息子Mitt,二人のRomneyがどのように資産を得たか,その中身を見るとアメリカ経済の変化もわかる.父は自動車の販売で,息子は企業の売買で儲けた.父は資産を公開し,息子は多くを隠している.

選挙とは,要するに候補者の性格を見て判断するのであり,それは金の使い方に表れるだろう.

FT July 9, 2012

Time to get past the stigma of offshoring

By Andrew Hill

NYT July 10, 2012

Mr. Romney’s Financial Black Hole

WP July 11, 2012

The offshoring debate

By Robert J. Samuelson

guardian.co.uk, Thursday 12 July 2012

Mitt Romney's offer of government of billionaires, for billionaires, by billionaires

Robin Wells

アメリカの政治には大金が動く.しかし先週,共和党は,大金がマイナスの側面を持つことを知っただろう.

ロムニーのイメージとして,企業の乗っ取り屋に始まり,高速ジェットボートでの楽しみ,ケイマン諸島にあるオフショア口座,ハンプトンズの豪邸,・・・など,大金と共和党との結びつきを象徴するような話が続いた.

Maryland州知事Martin O'Malleyは,日曜日のABCニュースでこれらを断罪した.「ミット・ロムニーはアメリカの負けに賭けたのだ.スイスの銀行口座やタックス・ヘイブン,隠し金を海外に置くというのは,アメリカを敗北させる行為だ.」

ロムニーの失態を重ねる様子から,オバマ政権はようやく革新派の側に正当な地位を占めるようになった.不平等を攻撃し,共和党が中産階級や労働者に加えた打撃を追求する.民主党の救世主が,敵側の共和党が得た莫大な資金であるとは,皮肉なことだ.

LAT July 12, 2012

Kinsley: Outsourcing's bad rap

By Michael Kinsley

WP July 12, 2012

In this election, pick your elite

By Anne Applebaum

「エリート」に対する反感がアメリカにはある.選挙まで4か月を残す今,双方の候補者たちが選択のためのイメージを砂に描く.医療保険,移民,課税,・・・対立候補との違いを示すときだ.

「エリート」というのは,しばしば,自分が嫌いな人々のグループを言う.実際,現代社会にも,さまざまなエリートのつながりがある.選挙で,オバマかロムニーが選ばれるとき,われわれは異なるエリート集団を選ぶのだ.

オバマ夫妻は,WASPアイヴィーリーグ後の,知的な能力主義,「リベラル・エリート」である.他方,ロムニーは,規制緩和後の世界で,金融寡占企業に属する,「グローバル・エリート」である.両者は重要な面で重なっている.しかし,重要な違いがある.

金融寡占ビジネスは,ロンドンの金利スキャンダルが示したように,秘密交渉で大きな利益を得るのがうまい.金利を操作,デリバティブを駆使し,利益を隠し,税金を免れる.他方,能力主義のリベラル派は,公開された栄光を好み,本を書き,ドキュメンタリーを作り,自分を売り込む.オバマは34歳で自伝を書き,ロムニーは37歳でBain Capitalを創設した.

どちらが勝つにしても,彼らは,アメリカを滅ぼしたエリートたちへのポピュリスト革命を支持することはない.ウォール街占拠運動も,ティー・パーティー運動も,自分たちの候補を立てることはできなかった.彼らは,大銀行や税金に対する公衆の怒りを政治に吸収することはなく,エリートの政治を変えることはない.


l  インド

FP JULY 5, 2012

Think Again: India's Rise

BY SUMIT GANGULY

インドは次の超大国か? ・・・と喜ぶのは早すぎる.世界金融危機後も9.8%の成長率を達成したことや,インド企業による欧米企業の買収,グローバルな企業のインドへの直接投資,などがそのような期待を生じる.しかし,たとえば,インドの農業生産はサプライ・チェ-ンの欠陥で30%も失われている.政党や農業団体は,それを改善できる外国投資を拒んでいる.

インドの成長は不可避か? ・・・インドは今も国家主導の成長を脱していない.支配勢力は改革に反対している.政治的に動員された国民に対して媚びる政策が蔓延している.たとえば,農民たちはほとんど電気料金を支払わない.中産階級が憤慨するガソリン価格の引き上げを政治家たちは行わない.こうした補助金が財政赤字を増やしている.インドの指導者は公的部門の肥大化を抑えられないだろう.規制は失敗し,汚職が広まる.

インドは中国を封じ込める? ・・・インドは中国と紛争を繰り返してきたが,アメリカの「戦略転換」には極度に懐疑的である.アメリカの封じ込め政策に加担する気はない.多くのインド人エリートは,それが中国を憤慨させることを懸念するし,政策の独立性や「非同盟」の伝統を重視している.インドは中国に軍事力の整備で遅れ,石油・天然ガスの獲得でも遅れている.しかし,アメリカは大統領選挙で政策が転換するから,封じ込めが宥和に変わる可能性があり,インドは取り残される,と警戒する.

パキスタンとの緊張は緩和した? ・・・ インドは優れたグローバル市民である? ・・・ インドの軍事力は大いに改善された? ・・・ ヒンドゥー教徒とイスラム教徒との対立は終わった? ・・・ インドはアメリカの最も有益な同盟国になる? ・・・

Project Syndicate 08 July 2012

The Bell Tolls for India’s Congress Party

Jagdish Bhagwati, Arvind Panagariya

権威主義体制を変えない中国に比べて,インドの自由民主主義には希望がある.しかし,インドの政治に大きな不確実性も現れている.

インドの政治は,20032011年の平均8.5%成長によって根本的に変わった.成長をもたらす指導者が選挙で支持されている.しかし中央の政治は,国民会議派の衰退によって機能しなくなっている.国民会議派は,ソニア・ガンジーへの権力集中と,ガンジー=ネルーという政治的名家の衰退に代わる,新世代の指導者を見いだせていない.

FP JULY 9, 2012

India Singhs the Blues

BY SADANAND DHUME


l  大メコン圏開発

BLOOMBERG Jul 5, 2012

Asia’s Next Booming Economy

By William Pesek

ミャンマーの民主化が進めば,これまで無視されてきた重要な計画が復活する.アジア開発銀行の大メコン圏(Greater Mekong SubregionGMS)開発計画だ.1992, Cambodia, Laos, Myanmar, Thailand, Vietnam and China’s Yunnan Provinceが参加した.アメリカに匹敵する33000万人が暮らす地域だ.立憲君主制から共産主義体制,軍事独裁国家まで,バラバラな政治体制を採る諸国だが,一つだけ共通点があった.それはメコン川だ.

資源が豊富で,協力して貿易を増やせば,アジアの次のフロンティアになる.ミャンマーの開放政策はその新しい出発点だ.しかし,その成功の鍵は三つの問題を解くことにある.すなわち,近隣諸国の友好関係,次の金融危機に対する抵抗力,アジアをめぐる米中の対抗関係,である.

昨年12月,アメリカはクリントン国務長官を含む最高レベルのスタッフをミャンマーに送って,メンコン圏の指導者たちと10年計画に合意した.貿易の開放,市場型の金融政策,資源の活用,インフラ整備,観光,貧困の解消,などである.

地域統合がうまく行くためには,各国が補完的に競争上の優位を発揮しなければならない.すなわち,タイの銀行業や高度な市場サービス,ミャンマーの石油,天然ガス,銅,ラオスの水力発電,ヴェトナム,カンボジアの増大する若年労働者,雲南省は労働者を供給するだけでなく,世界最大の成長経済につなぐ回廊になる.

しかし,日韓の協力や北朝鮮の開発が進まないように,アジアの協力は相互不信によって阻まれてきた.ASEAN10か国も,EU以上に主権を手放さず,金融の開放度,報道の自由,人権に関しても,その姿勢は大きな違いを示す.シンガポールの専門家Tai Huiは,ASEANの統合に懐疑的である以上に,大メコン圏の開発GMSが進むことには懐疑的だ,と主張する.

GMSは,世界金融危機に影響されなかった.資金を十分に利用できていなかったからだ.ヨーロッパの金融メルトダウンのように,次の金融危機を回避できるように,準備しておかなければならない.

それ以上に,GMSにとって中国がエンジンになるかどうか,わからない.たとえば,諸国の政府が中国に求めているのは,中国の巨大ダム建設が下流域において利用できる水を減らすことだ.水不足,土壌の浸食,食糧問題,漁業問題,生態系の破壊,などが生じている.

もう一つの問題は,南シナ海の領有権紛争だ.ヴェトナム,フィリピン,日本とも,海底資源開発で紛争を生じている.それはアメリカのアジア展開によってさらに刺激され,米中の間で,今後の10年に及ぶアジア支配の主導権争いとなっている.それはメコン諸国にとって有利になることもあるが,事態を悪化させるものになるかもしれない.


l  日本の新世代

FT July 6, 2012

Youth of the ice age

By David Pilling

日本に新世代が登場している.

1995年に「就活」をしたKumiko Shimotsuboは,「就職氷河期」の始まりに出あった.このジャパン・ドリームを描く機会,大学から大企業への道,が失われたことを知って,彼女は新しい道を探した.今,彼女の名刺には,“Bilingual Writer/HR Consultant/Intercultural Facilitator”と書かれている.日本の企業システムでは,いったん大企業内の昇進メカニズムから外れると,二度と戻れない.

安定した企業の良い職場と思われていたものが消えて,雇用の確かな将来は失われた.就活を諦めた若者たちは,社会的な差別を受ける,とShimotsuboは言う.「二度とチャンスはなく,より低い階層に生きるしかない.」 彼女と同じような失望を,日本の何百万人もの若者が味わった.望みのない最低の仕事でも引き受けるか,あるいは,仕事を探すのも諦めて,親の家でゲームやネット・サーフィンをしながら毎日を過ごす若者が増えた.

正規雇用から臨時雇用・パート・派遣労働者への転換は,所得の格差を拡大した.企業は正規雇用社員を削るより,新規雇用を減らして臨時雇用に替えた.多くのパートタイム労働者には,東京でも時給1000円足らずしか支払われない.地方都市ではもっと少ない.日本社会は平等だというイメージが失われ,今まで見たこともないような不公平な世界と感じている.

Shimotsuboは,横浜の国際思考の高校で学び,英語がうまかった.その能力を活かして,日本の雇用システムを飛び出し,外資企業の日本支社における人事部に職場を見出した.彼女は,日本企業でなら望めない人事部長のポストを,若くして得たが,それでもジャパニーズ・ドリームを奪われた悔しさを感じている.

若者たちは,成長というものを知らない.日本では経済が常に縮小してきた.それゆえ,彼らの夢も縮小する.

Noritoshi Furuichi, 27, PHD student: ‘Not many 20-year-olds would want to return to that system’

しかし,同じバブル後の世代でも楽天的な見方をする者もいる.Furuichiは,昨年,『絶望の国の幸福な若者たち』を出版した若い社会学者である.日本の若者たちが,前世代のような,「サラリーマン」の父親,その「メイド」でしかない母親のように暮らしたい,とは思っていない.

Furuichiによれば,20代の若者たちの約4分の3,かつてないほど多くが満足しており,幸せだと感じている.若者たちは,東京の姿と同じように,急速に変貌する現実に合わせて変化しているからだ.経済が繁栄していた時期も,人々はGDPを増やすことに熱狂するあまり,生活を楽しめなかった,とFuruichiは言う.

今日,確かに職場は不確実でも,人々はその時点を満足して生きている.競争によって強いられるのではなく,自分のために生きているのだ.それは自分で決めて,自分の責任で生きる生活であり,それゆえ,自営業を始めたり,ボランティアや趣味に生きたり,異なるライフスタイルを楽しめる.

出生率の低下を,悲観論者は,富裕化や都市化の結果ではなく,若者たちが貧しく,将来を悲観しているからだ,と言う.Furuichiはそれに反対する.それは,新しい環境における合理的な決定,幸せを最大化する彼らの新しいライフスタイルなのだ.

Yoshi Ishikawa, 28, works at ETIC, supporting entrepreneurs: ‘We are more interested in quality of life’ 名古屋大学で経営学を学び,テキサス,バルセロナ,東京で経営コンサルタントをしたが,満足できなかった.気仙沼で,津波に漁船を奪われた漁師たちへ,消費者と直接につながる新しいビジネスを開拓する指導を行う.それが大きな報酬をもたらさなくても,彼はより大きな満足を得ている.

Noriaki Imai, 26, social entrepreneur: ‘Living has become too hard … the sense of community has weakened’

Yuri Takeuchiは,商社マンの父親とともに,人生の半分はアメリカで育った.東京大学法学部から三菱商事に入った.企業における女性の役割について,その偏見に驚いた.彼女はそうした旧タイプの生活はできないと思う.

若者は,より多くの選択肢を得て,幸せになったのか? かつてのような競争から自由になって幸せになったのか? 日本社会は,アメリカや中国,韓国,インドと比べて,豊かであり,平和であるから,何かに迫られて働くことが無い,とTakeuchiは言う.日本の若者たちが満足し過ぎているとしたら,他国のもっと野心的な若者たちが急速に追い抜くだろう.

「幸せな世代」というのは冗談だろう,とFuruichiも考える.日本は危機に向かっているのだから.莫大な債務と国際的な孤立によって得る,満足な生活など,続くはずがない.自分の両親の面倒を見る準備もしていない.

WP July 6, 2012

Japan’s nuclear meltdown could have been prevented

NYT July 7, 2012

A Lost Deal for South Korea and Japan

第二次世界大戦から70年近くが経つのに,韓国と日本は互いの反目を解消できない.その結果,真の信頼できる生産的な関係を築けず,安全保障を低下させている.北朝鮮と中国の軍事,ミサイル防衛に関する情報共有を合意することに失敗したのだ.アメリカがアジアの同盟諸国と防衛を担うことに支障をきたすかもしれない.

日本政府は承認したが,韓国では烈しい政治論争が起きて,その将来はわからない.

FT July 9, 2012

Stop blaming Fukushima on Japan’s culture

By Gerald Curtis

国会の事故調査委員会は,原発事故を日本の文化に結び付けた.それは間違いだ.個人の責任を問わない姿勢は問題である.文化ではなく,その地位に就いていた人が重要である.

FT July 9, 2012

Save the Senkaku from jingoism

尖閣諸島をめぐって日本と中国におけるジンゴイズム(好戦的な愛国主義)は,相互にエスカレートしており,高まるけれど下げることが難しいラチェット効果をもたらす.

日中は共同開発できるはずだし,野田首相による国有化も(石原都知事による買収計画を阻止し)中国との外交を通じて安定的な交渉に乗せる過程として受け入れられるならば,鎮静化に向かうだろう.

FP July 9, 2012

Is it a copout to blame Japanese culture for the Fukushima disaster?

Posted By Joshua Keating

WSJ July 9, 2012

Japan Steps Up to the South China Sea Plate

By IAN STOREY

中国との領有権紛争が激化すれば,日本政府は,フィリピンやヴェトナム,そしてASEANと共同の防衛行動を取るだろう.日本は海上輸送路を支配される懸念と,南シナ海における戦術を東シナ海においても中国が展開する懸念とを,強めているからだ.

2012-07-09 (China Daily)

Noda sends a bad signal

Global Times | 2012-7-9

China holding back strength over Diaoyu Islands, for now

By Zhou Yongsheng

日本政府はthe Diaoyu Islands(尖閣諸島)の領有権紛争について,韓国の主張する竹島,ロシアの主張する北方4島と著しく異なる対応を採っている.韓国は与党の政治家が竹島を訪問し,ロシアはメドヴェージェフ首相がthe South Kuril Islandsに二度目の公式訪問をした.

日本は中国政府が主張する主権を軽視している.こうした態度を取る日本に対しては,中国と台湾から強硬な反応が起きるだろう.日本は鄧小平が示した姿勢,領土問題を今は扱わない形で,友好関係を深める方針を思い出すべきだ.

Global Times | 2012-7-9

Diaoyu issue needs more than diplomacy

BLOOMBERG Jul 9, 2012

A Disaster Made in Japan

By William Pesek

黒川検証委員会の報告書は,野田政権の原発処理キャンペーンを後退させた点で,強い懸念を持つ日本国民の勝利である.

Global Times July 11, 2012

Naval exercises routine, not warning to Japan


l  トリシェとシュレーダー

FT July 6, 2012

Lunch with the FT: Jean-Claude Trichet

By Martin Wolf

WSJ July 6, 2012

Gerhard Schröder: The Man Who Rescued the German Economy

Gerhard Schröder By RAYMOND ZHONG


l  アイスランド

FT July 6, 2012

Iceland recovers from its financial delusions

By Tim Harford

NYT July 7, 2012

A Bruised Iceland Heals Amid Europe’s Malaise

By SARAH LYALL

金融危機後の処理に関して,アイスランドは驚くほど成功している.国際借入の多くを早期に返済し,失業率は6%程度であるが,さらに低下しつつある.ヨーロッパ諸国の多くは不況に囚われているが,アイスランドはことし2.8%で成長すると期待される.

しかし,アイスランドの成功を,ヨーロッパのもっと大きく複雑な国に適応するのは慎重であるべきだ,と専門家は言う.

確かに,アイスランドは重要な点でヨーロッパの政策と異なった対応を採った.三つの大銀行は救済せずに倒産させた.しかも,国内預金の返済は保証し,住宅所有者や倒産に直面していた企業の債務は免除した.

キャッシュ・フローはプラスでも,資産がマイナスになった企業を倒産させることが,あの状況では,ドミノ効果をもたらしただろう.それゆえ,債務免除が金融機関をプラスの利益にして,経済を回復させ,失業を減らしたのだ.

アイスランドには有利な点があった.政府債務は少なく,社会保障制度が充実していた.通貨は変動レート制で,2008年に大幅な減価による輸出の拡大が輸出を助けた.アイスランドは,北欧諸国やIMFからの融資に頼らず,自力で借り入れることができた.しかし,他面では,インフレ率が危機直後は20%近くまで高まり,住宅所有者の債務もインフレ連動型で,返済負担に今も苦しんでいる.通貨の減価は輸入品を耐えがたいほど高価にした.資本規制による企業の不便さより,為替レートの暴落に対する不安が上回った.

政府やIMFは,アイスランドのケースをモデルとして賛美し過ぎている,とロンドン・スクールのエコノミストJon Danielssonは批判する.彼らは危機の最悪期を脱したかもしれないが,まだ将来の回復は描けていない,と.


l  アメリカの回復

FP JULY 6, 2012

America the Absent

BY KATI SUOMINEN | JULY 6, 2012

アメリカ経済の回復は遅く,世界経済の危機脱出は新興市場の輸出依存によって行き詰まっている.世界経済が回復するために欠けているものは,アメリカの指導力だ.

20世紀の開放市場と経済安定性を促進する制度的枠組みは,1944年のブレトンウッズ協定で代表されるが,それはアメリカのもたらしたものだった.その後も,1970年代のG5G7G8や,ワシントン・コンセンサス,WTOも,それを継承した.

銀行の規制緩和,金融の規制緩和もアメリカに始まり,世界に波及したが,世界的な規模で金融の利用度を高め,消費や起業を促した.アメリカ・ドルは世界の尊ぶ準備通貨であり,グローバルな取引費用の低下と国際貿易の増加に役立った.この四半世紀,金利は低下し,インフレ率も抑えられた.

1980年以来,世界GDP4倍,世界貿易を6倍以上,直接投資の残高を20倍,証券投資のフローが年に訳200兆ドルと世界経済の4倍にしたグローバリゼーションも,アメリカがもたらしたものである.こうしてアメリカの築いた国際制度を,中国やインドなど,新興諸国も決して損なうことなく,その中で発言力を高めようとしている.これこそがグローバル・ガバナンスの現状である.

しかし,アメリカの秩序は代わるものが無いけれど,危険な状態にある.ヨーロッパの債務危機,WTOのドーハ・ラウンド,など,21世紀に向けた挑戦はとん挫している.政策協調よりも,主要諸国の「囚人のジレンマ」が,為替レートの操作や資本規制,保護主義の波,金融ナショナリズムをもたらしている.

既存秩序の設計者であるアメリカの指導力が失われたのだ.国際指導力の真空状態において,気まぐれな金融市場,拡大する国際収支不均衡,国家資本主義の拡大,近隣窮乏化政策,など,世界的無秩序が生じつつある.

内外の改革を実現するアメリカの指導力が回復されるとき,他の諸国もルールに依拠した競争に戻る.

WP July 9, 2012

Why U.S. economic policy is paralyzed

By Robert J. Samuelson

WSJ July 9, 2012

What's Wrong With the Federal Reserve?

By ALLAN H. MELTZER

FT July 10, 2012

Why the US recovery remains weak

Roger Altman

アメリカの失業率が高いままであるのは,経済の回復が遅いからだ.その理由は2008年の金融危機がもたらした資産の減少,信用市場の崩壊にさかのぼる.アメリカの住宅所有者は,この間,住宅価格の下落や資産価値の低下で,20%も純資産を失った.彼らが消費を抑制するのは当然だ.金融機関も,住宅モーゲージも,損失をもたらした.


後半へ続く)