IPEの果樹園2012

今週のReview

6/25-30

 

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エジプトの大統領選挙 ・・・ギリシャの選挙 ・・・国際政策協調とG20 ・・・クールな戦争 ・・・イギリス政治 ・・・ドイツへの要請 ・・・リオ国連環境会議 ・・・ロシアのシリア支援 ・・・パキスタン ・・・ケインズと技術的失業

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  製造業

FT June 13, 2012

China’s industries in Mittelstand-off

By Peter Marsh

ドイツの知能と中国の筋力との戦いは,製造業の市場をめぐってグローバルに展開する.昨年,製造業の世界シェアを高めた開発諸国の数少ない国がドイツ(6.3%から6.4%へ)であった.もちろん中国の躍進は続いている(17.7%から19.9%へ).工業の各分野で,世界市場のトップ3社に占める企業数は,ドイツ142社,中国107社,アメリカ97社である.

FP JUNE 14, 2012

Pit of Dreams

BY JONATHAN KAIMAN

BLOOMBERG Jun 14, 2012

Does China’s Next Leader Want the Job?

By William Pesek

アメリカ大統領選挙を決めるのは,中国経済の減速かもしれない.しかし,社会不安を懸念する中国政府の強い姿勢から,減速は数か月ではなく数年先であろう.オバマはヨーロッパを心配するべきだ.

中国が7%や6%に減速するだけでも,その影響はオーストラリア,ブラジル,カナダなど世界中に及ぶ.しかも,その外貨準備の規模を考えれば,ユーロ危機を処理するヨーロッパの指導者たちにも影響する.

習近平の新指導部は,急激な減速を回避するため,こうした刺激策の実施において,地方政府の腐敗・汚職や非効率化をどの程度まで避けられるだろうか? あるいは,改革を避けたフランケンシュタイン経済,日本型の債務累積に至るのか?

WSJ June 18, 2012

China's Party Is About to End

By MICHAEL AUSLIN

WSJ June 20, 2012

Testing Beijing's Metal

By JOSEPH STERNBERG

FP JULY/AUGUST 2012

Red Moon Rising

BY JOHN HICKMAN

地球における米中の対抗は,李白の詠んだ月にまで及ぶ.


l  エジプトの大統領選挙

FP June 14, 2012

That's It For Egypt's So-Called Transition

Posted By Marc Lynch

WP June 15

In Egypt, a sense of dread

By David Ignatius

ムスリム同胞団の指導的な戦略家であるKhairat el-Shaterは,先週に火曜日に警告した.大統領選挙の決選投票は新秩序に移行するが,それは容易な道と困難な道とがある,と.

木曜日,法廷による新しい議会の解散は,その多数を占めていたムスリム同胞団にとって容易に従えない.しかも法廷は,決選投票で旧体制のシンボルである人物が同胞団の対立候補であることを許した.

Shaterの意見では,容易な道とは同胞団の候補であるMohamed Morsiが,木曜日に行われた法的な不確実さによって損なわれることなく,公正な選挙で勝利することだ.その場合,広範囲の統一連合,自由市場の「ルネサンス」,外国投資,ムバラクの作った警察国家からの漸進的な離脱を実現する,とShaterは約束する.

しかし,ムスリム同胞団が敗北した場合について,Shaterが話すのは恐ろしい内容だ.強硬派の元首相,Ahmed Shafiqが勝利した場合,暴力が再現するだろう.エジプトの人民はShafiqを受け入れない.その発表があった最初の日から,人々はタハリール広場に戻るだろう.もし抵抗することを人民が選択するなら,われわれもそれに参加する.だから諸外国がShafiqの政府を拙速に承認しないよう,警告する.

次の革命は,ムバラクを倒した革命よりも平和的に行えず,暴力的になるだろう.街頭デモを管理することはできない.同胞団以外の党派は,もっと暴力を用い,過激な手段に訴える.

ムスリム同胞団と旧体制の間で,どちらも強く支持していない中間派の人々は,不安の瞬間を待つ.「それは,コレラと疫病との選択,イスラム国家と警察国家との選択だ.」と,あるジャーナリストは言う.

オバマ政権は,エジプト革命に多くを賭けてきた.どちらの勝利についても準備している.Morsiが勝利すれば,迅速な援助を与え,彼が経済を前進させるに違いないと考えている.Shafiqが勝利した場合,烈しい弾圧が行われるだろうから,対立が激しい流血の事態にならないように,抑制を働きかける.

驚くだろうが,ホワイトハウスは,外交政策で難しい問題を起こすとしても,Morsiがエジプトの経済的な移行を進める上で最善であると考える.しかし軍事評議会と議会の行方は.まったく予測できない.

FP JUNE 15, 2012

The Five Stages of Egypt's Revolution

BY CHARLES HOLMES

誰が勝利するかは関係ない.選挙後の流血は避けられない.

30秒以内にエジプトを表現するにはそうすればよいか? 数年前に,友人にそう聞かれたとき,エジプトの3M,を示した.軍military,モスクmosque,大衆masses,だ.せっかく大衆がムバラク体制を打倒したのに,次に権力を握るのは,軍かモスクだ.

改革派は,可能なシナリオを意識しておかねばならない.まず,Crane Brinton1938の研究(An Anatomy of Revolution)を読んでみることだ.エジプトの不確実な情勢を理解するための,ある種の「法則」を教えてくれる.

Brintonはわれわれに,次の大統領にだれがなるかは長期的に見て重要ではない,と教えている.MorsiShafiqも二重性格を帯びた,過去の亡霊である.もちろん,それが軍の声であれ,モスクの声であれ,自分こそが革命の真の勝者である,と告げるだろう.しかし,そうではない.革命は彼らを通り過ぎて,振子は過激派に向かう.

巨大な政治転換の力によって,軍もモスクも変化せざるを得ない.ムスリム同胞団は,最初,大衆行動を支持していなかった.しかし,民主化の支持に転換し,支持基盤を拡大して議会の半分を占めている.最高権力を保持する軍事評議会と,短期的な妥協を合意するかもしれない.

しかし近い将来,最も重要な勢力は,3つのMではなく,Eである.失業の増大から外資の流出まで,経済状態は悪化し続けている.観光業は大きく落ち込み,外貨準備は失われた.軍にもこうした問題を処理する力はない.選挙が終わっても,エジプトの議会,大統領,指導部の関係は決まらない.誰も実質的な権力を持たない.こうして政治的なディストピアが誕生する.

政治権力の再分配が起きる前には,軍やモスクから権力が失われる瞬間が来るだろう.エジプト社会の各派閥に利益をもたらし,政治秩序を基礎づけている制度の枠が崩壊する.Brintonは,革命を5段階で考えた.

1段階は体制の崩壊.第2段階が,実効力の無い,穏健な中間派政権が,十分な政治的変革を実現しない.エジプトが,今,どのような政権の妥協を実現できても,こうした段階になるだろう.第3段階は,移行における完全な解体の時期だ.政治的混乱,大衆運動の衝突,暴力が広まってアナーキーに近づく.第4段階,過激な追放の時期.非妥協な恐怖政治や独裁者が現れる.第5段階,過激な指導体制が燃え尽きる.より案敵的な,長期的代表制に交代する.

4段階の狂信者とはだれなのか? 武装したイスラム過激派である可能性が高い.実際,サラフィストなど,過激派は,現在の権力闘争に加わっていない.彼らは沈黙し,フランス革命のジャコバン派,ロシア革命のヴボルシェビキと同様に,軍とモスクとが争いによって,互いに衰弱する時期を待っているのだ.

もちろん,こうした歴史的構造論はしばしば無視される.エジプトの革命は,ロシア革命でもフランス革命でもない.しかし,これまでの経過はその正しさを示している.評議会は権力を持たず,革命を管理することも,穏健化することもできない.すべて革命の結果は街頭で決まる.エジプト革命は終わらない.まだ始まったばかりだ.

FT June 18, 2012

Egypt’s soft coup is following my dispiriting script

By Ezzedine C. Fishere

私はこの10週間,小説を連載している.Bab El-kheroug, or The Exit, Aliがそれだ.その中で,大統領府の年老いた通訳Aliが,息子に宛てて,自分の大統領に対する裏切りを説明する長い手紙を書いている.彼は,202010月の時点で,20111月の革命から続く政治混乱を物語っている.

タハリール新聞の多くの読者はこの長い,暗黒のトンネルに,出口はあるのか,と問う.小説では,出口を見出すまでに9年かかっている.エジプト人は,それがもっと短いことを願うだろうが.

軍部とムスリム同胞団とが対立することを,驚く市民はいないだろう.20111月から,軍は大衆的な抗議活動を同胞団の陰謀と見なしてきた.そしてあらゆる手を使ってこれを弾圧した.旧来の強硬派が指導する同胞団は,革命勢力や民主的な協力団体を排除し,特に女性や,キリスト教徒という意味で,社会の重要部分に恐怖を広めた.どちらの勢力も権力を分かち合うことはなく,革命派や民主派を許容するつもりもない.あたかも最終決戦のために舞台を準備しているようだ.

大統領選の第1回投票が終わるや,裁判所は2011年に反政府運動の参加者を殺した警官たちを放免した.数日後に,法務大臣は軍事警察や秘密警察が任意に誰でも逮捕・監禁できるようにした.翌日,憲法裁判所は,選挙を組織した法律が違憲であると決定し,同胞団が支配的な議会を解散した.同時に,国営メディアが同胞団への攻撃キャンペーンを再開した.

もしShafiq将軍が当選すれば,同胞団がこの「ソフトな軍事クーデタ」にどのような反撃を行うのか,わからない.われわれ皆が,20111月が再現されたような既視感を覚える.

しかし,それは間違いだ.エジプトは大きく変化した.若者の思考や行動,その期待が大きく変わったのだ.挫折と失望を繰り返しても,社会のあらゆる部分で政治への参加意識は高い水準を保っている.裕福な者も虐げられた者も,教育ある者も文字を読めない者も,リベラル派もイスラム主義者も,皆が政治と社会の変化を求めている.そして革命に失望した人々は改革を受け入れる.遅れているのは,あらゆる党派の政治指導者たちだ.誰もまだ,この変化への渇望をつかみきれていない.

人口の大部分を占める若者たちは,イスラム勢力と軍との二者択一を超える道を見出すだろう.小説ではそれまでに9年の混沌を要したが,もちろん,小説家は誇張を好むものだ.

NYT June 18, 2012

The Betrayal of Egypt’s Revolution

By SARA KHORSHID

FP JULY/AUGUST 2012

Was the Arab Spring Worth It?

BY HUSSEIN IBISH

BLOOMBERG Jun 19, 2012

Could Egypt’s Crisis Doom the Arab Spring?

By Noah Feldman

FT June 20, 2012

Egypt has not had a coup, merely a return to the 1950s

By William Dobson


l  ギリシャの選挙

LAT June 14, 2012

All pain, no gain in southern Europe

Doyle McManus

NYT June 14, 2012

How Greece Squandered Its Freedom

By NIKOS KONSTANDARAS

選択をできる限り明確にしておくことだ.改革か停滞か? ヨーロッパか孤立か? 苦しみながら前進するか,服従という偽りの喜びか? 

われわれには深刻な欠陥のある対抗者しかいない.新民主主義党は中道右派の,改革をしくじった政党だ.過去のやり直しでしかない.救済融資にも反対したし,脱税対策にも取り組まなかった.しかし,今は自分たちこそユーロ圏に残れる責任ある政党だ,と主張している.

反対の極は,12のラディカル党派が集まったSyrizaだ.ヨーロッパ全域に左派の改革を拡大する,と主張している.救済融資の合意は直ちに無効にして,しかも我々への融資を継続するように要求する.そんなことをすれば,即座にユーロ圏を離脱し,混乱と予測不能な状況に陥るかもしれない.

余りにも不確実な未来を逃れて,自分の甥とその妻はドバイの職を得て移住し,田舎には都市から失業者や年金生活者が入って来て,土地を耕し,事態の一層の悪化に備えている.成功した弁護士である友人は,顧客が破産するのを見て,農業による暮らしを考えている.自分の年老いた両親は,新聞記事にある医薬品不足の情報を気にしている.

Syriza 37歳の指導者Alexis Tsiprasは,彼が言うほど新鮮な風ではないだろう.その政策は明らかなポピュリストである.緊縮策に反対する人々の支持を集めて,主流派を追い出し,既存の政策を破棄し,銀行国有化,最近の民営化を元に戻す,という.

いずれの政党も危機の回避に本気で取り組まず,膨大な債務をどうするのか示す気が無い.人々は,もしギリシャがユーロ圏を離脱すれば,資産をもっと安く買い戻せる,と考えて資金を国外に移転する.他方,毎日必死に働いて税金を支払う国民は,改革と前進を支持しているが,だれに投票したらよいのかわからない.

すでに銀行預金は800億ユーロも引き出された上に,毎日,5億から8億ユーロが失われていると聞く.なぜエコノミストたちはギリシャの離脱について合唱しているのか? 火山は鳴動し,隣人は強盗に遭い,社会が前進をあきらめたから.

1453年にオスマントルコに支配される前のコンスタンチノープルの市民たちも,1922年に小アジアから追い出されたギリシャ人たちも,1946-49年に内戦へ落ち込む無辜の市民たちも,そう感じていたように.

FT June 15, 2012

Greek exit will be an economic and political nightmare

Lorenzo Bini Smaghi

ギリシャのユーロ離脱を議論することが流行である.Tsipras氏は,ギリシャが決断すれば,ユーロを離脱できるし,自国の通貨を回復できると考えている.しかし,それほど単純ではない.

1.国民は新しい通貨を使用しないだろう.新通貨は急速に減価し,インフレが進む.融資を拒んで財政赤字を維持する場合,烈しいインフレは避けられない.そのような通貨を好んで受け取る者はいない.契約はユーロに比例して決められ,自国通貨ではなくユーロが使用されるだろう.

2.ユーロ圏を離脱することは明らかにリスボン条約違反である.これを守るために,欧州委員会や条約締結諸国,被害を受けた企業や市民は,ギリシャを欧州裁判所などに告発する.これに応じない場合,各機関はギリシャに制裁を科すだろう.それを避けるためには,ギリシャはこうした国際機関から離脱するしかない.

たとえギリシャがEU諸国との新条約に向けて交渉することに各国が同意するとしても,直ちに,不安に駆られた市民は銀行預金を引き出し,外国に移すだろう.ギリシャ市民や政府に対する融資はすべて停止される.そうなれば政府は,年金,医療日,公務員給与のような基本的な支払いもできなくなる.

ユーロからの離脱は経済的にも政治的にも悪夢でしかない.その理由は,ユーロ圏が単なる経済・通貨同盟であるだけでなく,たとえ不完全ではあっても,政治同盟であるからだ.

FT June 15, 2012

Is it time for Europeans to migrate?

By Gillian Tett

Project Syndicate 15 June 2012

Greece’s Catharsis?

Yannos Papantoniou

guardian.co.uk, Saturday 16 June 2012

Greece: chronic insecurity and despair – welcome to life in a broken state

Nikos Konstandaras

NYT June 16, 2012

Whatever Greek Voters Decide, the Euro Looks Likely to Suffer

By NELSON D. SCHWARTZ

guardian.co.uk, Sunday 17 June 2012

A Syriza victory will mark the beginning of the end of Greece's tragedy

Costas Douzinas and Joanna Bourke

The Financial Times Deutschland は先週のヘッドライン "Resist the demagogue"を載せた.それはギリシャ語で書かれていた.ギリシャ人に,左派のSyrizaを拒否し,右派の新民主主義党へ投票するよう求めた,恐怖と恫喝の選挙運動支援だ.それはギリシャ人が自分たちの政府を決める権利を否定する運動である.

ドイツ首相のAngela Merkel, 欧州委員会委員長のJosé Manuel Barroso, イギリス蔵相のGeorge Osborneまで,ギリシャ人が右派を支持するように求めた.この経済的,人道的な災厄をもたらした緊縮政策の転換を阻むことが彼らの目的である.The Guardianは,その政策の人道的な惨状を伝えてきた.日曜日の選挙では,平和時における最悪の破壊行為を終わらせることが問われている.

Syrizaの政策は,この間違った政策を終わらせる.その象徴は,最低賃金と失業給付を緊縮策前の水準に戻す公約だ.Syrizaの勝利がギリシャの悲劇を終わらせ,世界にそのメッセージを伝える.

NYT June 17, 2012

Greece as Victim

By PAUL KRUGMAN

ギリシャについて間違ったことが多く語られている.ギリシャ人は怠惰ではない.逆に,ヨーロッパのほとんどの国よりも長時間働いている.特に,ドイツ人よりも長く働いている.ギリシャ人は歯止めのない福祉国家など持っていない.社会的給付のGDP比で見て,スウェーデンやドイツよりも小さい.

では,なぜギリシャは財政破たんに近いのか? ユーロのせいだ.

15年前も,ギリシャは楽園ではないが,危機でもなかった.失業は破滅的なほど高くなかったし,世界市場で支払いを続けていた.

しかし,ユーロに参加してから,突然,人々はギリシャへの投資を増やし,主に政府の赤字を賄って,好況とインフレが続き,競争力を失った.誰もがユーロ・バブル病に罹ったのだ.アメリカのような中央政府があれば,地域の財政破たんは自動的に救済される.

つまり,ギリシャの問題はヨーロッパ官僚たちの傲慢さに原因がある.彼らは中央政府が無いまま,単一通貨を導入しても大丈夫だと考えた.そして彼らは,通貨問題はすべて南欧の怠け者が起こした,と主張している.南欧諸国がもっと苦しめば,すべてはうまくいく,と.

ギリシャの選挙では何も解決しないだろう.

もし危機を脱するとしたら,それはまだあるかもしれないが,ドイツとECBが自分たちの間違いに気づき,支出を増やす政策を採ることだ.まさにインフレを高めるのだ.ギリシャは,他国の自信過剰がもたらした犠牲者,という歴史になる.

FT June 18, 2012

Greece has won Europe a respite – now it must use it

By Gideon Rachman

FT June 18, 2012

Time to act: euro collapse would define our era

By LawrenceSummers

債務諸国も債権諸国も正しい.債務諸国が言うように,緊縮策や内的切り下げは成長をもたらさない.成長率をはるかに超える金利を何年も強いられれば,どのような経済も悪化するのが当然だ.経済が縮小する中で構造改革を実行するのは非常に困難である.しかも,政治統合を各金融統合には大きな危険がある.

他方,債権諸国が言うように,一層の統合化には二つの問題がある.だれが債務の支払いを管理するのか? また,その規模はどれくらいか? アメリカが南西部のS&Lを救済したとき,その財政移転額はGDPの少なくとも20%に達したが,ヨーロッパはこれを迅速に行う決断ができるのか?

FT June 18, 2012

Samaras’ victory offers relief but no answers

Stephen King

FT June 18, 2012

Back to the 1930s: the hammer, sickle and swastika

AristidesHatzis

SPIEGEL ONLINE 06/18/2012

Interview with World Bank President Robert Zoellick

'Time Is of the Essence' in the Euro Crisis

NYT JUNE 18, 2012

One Wall Street Seer Says the Greek Tragedy Is Near

By ANDREW ROSS SORKIN

Project Syndicate 18 June 2012

Reinventing the European Dream

Anne-Marie Slaughter

ユーロ危機とエリザベス女王のジュビリーとは,何も共通していないようだが,一つの重要な教訓がある.すなわち,積極的な物語が重要であることだ.それなしには勝利できないだろう.

特に,ギリシャには今こそ過去と未来とをつなぐシンボルが必要だ.しかし,世界最初の民主主義の下で,王様を作るのは不可能だ.それはホメロスが称えた地中海世界の中心になることだろう.特に東地中海の天然ガスを開発することで,それが夢ではなくなる.パイプラインの建設によって地域の平和と繁栄を強化するだろう.

シューマン・プランが,新しい理想を示すことで,戦禍に苦しむヨーロッパ大陸の統合を始めたように,ギリシャとキプロスに平和と繁栄をもたらし,さらに中東や北アフリカにもそれを拡大する.指導者たちは,荒涼とした緊縮策を唱えることでは目標を実現できない.

guardian.co.uk, Tuesday 19 June 2012

Golden Dawn and the rise of fascism

Spyros Marchetos

FT June 19, 2012

A bitter fallout from a hasty union

By Martin Wolf

FP JUNE 19, 2012

Flirting with Disaster

BY PATRICIA TAFT

破綻国家指数の高い諸国の上位には,アフリカ,アジア,中東の国が並ぶ,しかし西側も例外ではないだろう.ギリシャがその候補だ.

Project Syndicate 19 June 2012

Greece and the Limits of Anti-Austerity

Mark Roe

Project Syndicate 19 June 2012

Clarity about Austerity

Michael Spence

VOX 19 June 2012

The euro’s future begins now: Escaping debt traps and moving towards sustainable

Pier Carlo Padoan   Urban Sila   Paul van den Noord

悪循環を好循環に替えることはできる.アメリカのように完全な政治統合を実現し,財政を統合することだ.その決断によって債務処理のコストも大幅に抑えられる.しかし,どうすればそれが政治的に実現するか,その答えを知る者はいない.中期的に見れば,緊縮=構造調整と成長とは矛盾しない.

FT June 20, 2012

Don’t count on Germany’s economic surrender

By David Marsh

ここには歴史的なパターンが再現している.債権者と債務者の対立はエスカレートする.しかしドイツの要求は,いつも,最後に妥協をもたらした.

VOX 20 June 2012

The Eurozone’s May 2010 strategy is a disaster: Time to pay up and end this crisis

Charles Wyplosz

マーストリヒト条約は個別の政府を救済することを禁止している.そこで2010年に,ギリシャを「特異な,例外」として救済融資したが,それは間違いであることがはっきりした.多くの国に拡大したユーロ危機の解決策は,債務の組み替えであり,そのためにECBが最後の貸し手として銀行と政府に融資することしかないだろう.今こそ,メルケル首相はドイツの拒否を翻すときだ.

ドイツの国民はしばしば問題を,債務者が約束を破る道義的な問題,と見なしてきた.債務国が政策を失敗したのであれば,それを返済するのは救済すべきでない.しかし,問題はさらに複雑だ.すなわち,ユーロ圏の財政規律を破ったのはどの国か? その結果はどうなるべきか? 通貨同盟全体としてのコストとは何か?

2007-08年の政府債務/GDP比率は,ギリシャとイタリアが違反しているのは明らかだが,多くの国が60%の前後にあるグレー・ゾーンだ.また,アイルランドやスペインが銀行の監督に失敗したのは明らかだが,その他の諸国,特にフランスとドイツはグレー・ゾーンだ.完全に疑えないのは,少数の小国だけである.

その結果,緩やかな処罰としての緊縮策は意味が変わってしまう.それは将来世代の改善をもたらすよりも,「緊縮的な拡大」という暴論と相まって,現在の経済悪化を促した.ラトビアを成功例と見なしたことは間違いである.

ギリシャでは,もはや道義的な非難も間違っていたことがわかる.債務は維持可能にならず,危機の波及は抑えられず,これほどの経済悪化をもたらすモラル・ハザードの予防にも意味がない.緊縮策の逆転が必要だ.

政府の債務を引き受けた銀行の救済コストはだれが支払うのか? ECBは,不十分な救済を繰り返してコストを増大させてきた.危機が長引くほど経済状態は悪化する.そして負担できる国は減ってしまう.

マーストリヒトの救済禁止条項は,放漫財政の国を他国の納税者が救済しなくて済むように書かれたものだ.しかし,20105月にはメルケルが率先してこれを破った.そのときはコストが小さいと思えたから.ギリシャに続いて,アイルランド,ポルトガル,スペインを救済した.

ユーロ圏の納税者たちは自分たちが選んだ政治家に裏切られた.ユーロ圏を解体するのは,それを救済するよりもコストが大きい.

NYT June 20, 2012

Europe Needs a Federal Reserve

By AARON TORNELL and FRANK WESTERMANN

BLOOMBERG Jun 20, 2012

What’s So Special About the Euro Currency Area?

By Caroline Baum

NYT JUNE 21, 2012

The End of the Euro Is Not About Austerity

By SIMON JOHNSON


l  ラトビア

VOX 15 June 2012

Lessons from Latvia

Olivier Blanchard

FT June 21, 2012

Latvia is no model for an austerity drive

By Michael Hudson and Jeffrey Sommers


後半へ続く)