前半から続く)


l  占拠運動と豪邸ツアー

guardian.co.uk, Friday 11 May 2012

Occupy London invites you to meet the 1% this Saturday

Naomi Colvin

ロンドンにあるグローバル資産家の豪邸見物ツアーを組織しました.

FT May 11, 2012

Mexico’s mogul with an eye for a bargain

By Adam Thomson


l  アジアの指導力

(China Daily) 2012-05-11

Manila's antics costly

(China Daily) 2012-05-14

Time ripe for FTA

(chinadaily.com.cn) 2012-05-14

Seeking 'Asian way' to solve Huangyan issue

By Arron Jed Rebena

YaleGlobal, 14 May 2012

Asia as Global Leader – Not So Fast

Ho Kwon Ping

アジアが次の世界を指導するには,インドの政治的分裂,中国の反体制派に抱く居不信,日本経済の低迷,を解決しなければならない.

Project Syndicate 14 May 2012

The Myth of Chinese Meritocracy

Minxin Pei

Bo Xilaiスキャンダルの重要な意味は,中国の政治システムが正当性を維持する「メリトクラシー(能力主義)」という条件を,現実に,全く欠いている,と暴露されたことだ.学位も,地方政府における成長実績も,大幅に水増しされている.

FP MAY 15, 2012

How to Outsmart China

BY JAMES HOLMES

FT May 16, 2012

Nine dragons stir up the South China Sea

By David Pilling

「ドラゴンが多すぎる.」 南シナ海の紛争が頻発する問題について,ある中国専門家は語った.

最近の例はフィリピンとの島の領有に関する紛争だ(Scarborough Shoal in the Philippines and Huangyan Island in China).中国の新聞はフィリピン避難をエスカレートさせて,人民解放軍を派遣せよ,と主張した.しかし,中国政府は抑制した態度を取り,他の面で圧力をかけた.すなわち,20万人のフィリピン農民が生活を維持するバナナの流通を,港に放置して腐らせ,妨害したのだ.また,中国の旅行社はフィリピン向けのツアーをキャンセルした.

フィリピンが島の領有権を主張する実力はない.しかし問題は,中国の主張する領海が,フィリピンやベトナムなど,南シナ海に面する諸国の海岸線まで迫っていることだ.それは,一種の「モンロー宣言」に見える.

中国の長期的な外交原理は,衝突を避け,包括的な国力を高め,徐々に前進せよ,であったという.こうした長期の目標にもかかわらず,現実はかなり混乱している.その原因は,中国政府ではなく,南シナ海に関わる機関が多すぎることだ(Customs Law Enforcement, China Fisheries Law Enforcement Command, the Maritime Safety Administration, China Marine Surveillance, and so on).

彼らは多重化したゲームを行い,より大きな予算を競争的に獲得するため,紛争を激化する傾向がある.こうした海洋をめぐる諸機関が行う「軍備拡大競争」は,政府間の競争より危険である.鑑定を容易に派遣し,それらを包括するルールが作れない.

Global Times | May 16, 2012

Diplomatic obstacles make road to East Asian FTA bumpy

By John Ross

YaleGlobal, 16 May 2012

China’s Aid Emboldens Cambodia

Sebastian Strangio

Project Syndicate 16 May 2012

Hillary Clinton’s Asian Adventure

Jaswant Singh


l  開発政策の模索

Project Syndicate 11 May 2012

Doing Development Better

Dani Rodrik

世銀総裁をめぐるJim Yong Kimとその対立候補(Ngozi Okonjo-Iweala and José Antonio Ocampo)の争いは,開発政策をめぐる論争であった.Kimはボトム・アップ型の開発を支持し, Okonjo-Iweala and Ocampoは経済全体に関する政策の改善を支持した.

二つの観方のどちらが効果的か,判定することは難しい.中国や,韓国,台湾の成果は素晴らしいが,様々な経験は容易に他国に適用できない.

しかし,両者の考え方は収斂しつつある.すなわち両者とも,診断的,実践的,実験的,状況に特化した戦略を重視するようになっている.我々はその答えをあらかじめ知ることはできず,政策を試すしかないのだ.

BLOOMBERG May 14, 2012

Citi’s Killer App Gives Hope to iPhone Sweatshops

By William Pesek

AppleiPhone は,Steve Jobs のシンボルとして敬愛されているが,同時に,中国の苦汗工場で生産されていることも変わらない.AppleiPads iPodsも含めて,それが中国の工場労働者たちを搾取したという事実だけでなく,世界で貧困を減らすとすれば,何とも素晴らしい.

貧困の理由は複雑だが,世界の30億人が銀行融資を受けられないことも,その一つである.Jay Collinsは,Citigroup Inc. (C)のために,携帯電話による銀行ビジネスのシステムを開発している.かつて,預金口座を開設すれば銀行はトースターをくれたことがある.今度は,銀行に行くとiPhoneがもらえるだろう.そして,世界の貧困層が減るのだ.


l  JPモルガンの巨額損失

NYT May 11, 2012

JPMorgan Chase’s $2 Billion Loss

NYT May 13, 2012

Why We Regulate

By PAUL KRUGMAN

NYT May 14, 2012

End of the Affair?

WP May 15, 2012

It’s time to break up the big banks

By Katrina vanden Heuvel

NYT May 15, 2012

Dancing With Derivatives

By MAUREEN DOWD

WSJ May 16, 2012

Banks Need More Capital, Not More Rules

By ALLAN H. MELTZER

WP May 17, 2012

More Volcker rules might help

By Harold Meyerson


WP May 12, 2012

To stop the war on South Sudan, the U.S. should send weapons

By Andrew S. Natsios


WP May 12, 2012

Five myths about gay marriage

By Jonathan Rauch

同性婚に関する<神話>を挙げて反論する.1.同性婚は結婚の定義を変える.2.同性婚は子供に悪影響を及ぼす.3.信仰の自由と衝突する.4.州による違いは混乱を招くから,すべての者がこれを認めねばならない.5.論争は終わる.

FT May 14, 2012

US gay marriage

guardian.co.uk, Thursday 17 May 2012

Redefining marriage to include same-sex couples would benefit nobody

John Sentamu


NYT May 12, 2012

Saving the Lives of Moms

By NICHOLAS D. KRISTOF


l  日本の「どじょう債」

FT May 13, 2012

Japan fails to deliver a growth strategy

By Mure Dickie in Tokyo

日本はまだ裕福であるからグローバルな市場の圧力を拒むことができる.だから改革は進まず,むしろ後退してきた.郵政民営化も,TPP参加も,そうだ.

FT May 14, 2012

The fish that can save Japan’s economy

By Peter Tasker

Standard & Poorが日本国債の格付けを下げたとき,債券市場は大参事に落ち込むと思っていた.しかし,そうではなかった.債券価格はさらに上昇し,金利は低下したのだ.

世界の債券市場には二種類の悪いニュースがある.一つは,経常収支赤字の膨張したユーロ圏の周辺国.もう一つは,成長の見通しと信頼を損なった諸国だ.

日本の最大の不安は税収の不足だ.ますます多くの労働者が課税最低限の所得を得ていない.企業は土地の長期的な価格下落と相続税によって利益を奪われている.野田首相は消費税を10%に引き上げようとしているが,それは消費を抑制してしまう.むしろ,貯蓄に課税するべきだ.特に300兆円の預金と企業の投資用内部留保だ.

日本は,悪夢ではなく,歴史的な幸運を利用するべきだ.イギリスのオズボーン蔵相が,低金利を利用した,満期100年の長期債発行を準備している,と言う.野田首相も,外国人はあまり食べない「どじょう」に自らをたとえたように,超長期の債券,もしくは永久債を発行して,成長を促すために投資するのだ.「どじょう債」は,外国投資家によって買われないが,日本の円建債券を求める生命保険会社などが購入する.

日本の債券利回りは成長率を超えている.しかし,その差は小さい.ギリシャではない.

WSJ May 16, 2012

The Green Bad Idea Japan Needs

By JOSEPH STERNBERG

FT May 17, 2012

Truth behind Japan’s free and open market

By ClydePrestowitz


l  シリアの国際監視

BLOOMBERG May 13, 2012

Creating Syria Safe Zones Is a Dangerous Step Toward War

By Aaron David Miller -

FT May 16, 2012

Three ideas to end the stalemate in Syria

By Anne-Marie Slaughter

暴力的な弾圧は続いている.シリアの国境地帯に避難所を設定する提案を,トルコは拒む.反政府派に武器を供給することも,十分な効果をもたらすのは難しい.ロシアに圧力をかけてシリア政権の支援を控えさせることもできない.

新しい和平の仕組みを考えよう.まず,これはシリア政府と反政府運動の戦いではなく,暴力の行使と非暴力による政治との戦いである.ロシア政府も暴力の停止を求めている.次に,シリア国内には多くの市民による監視能力がすでにある.彼らは携帯電話やパソコンで,武器使用の事実を映像として送ってくる.国連はセンターを設けて平和のための情報を集積し,公開する.最後に,各国政府はこの情報を基に,シリア政府が「住民を保護する責任(R2P)」を果たしているか,判断するべきだ.シリア政府だけでなく,すべての立場の暴力が行使されないように監視する.


WSJ May 13, 2012

NATO's First Step on Missile Defense

By ANDERS FOGH RASMUSSEN

WSJ May 17, 2012

Revitalizing the Atlantic Alliance

By PATRICK KELLER AND GARY SCHMITT

Project Syndicate 17 May 2012

Why Europe Still Needs Nuclear Deterrence

Imants Liegis, Linas Linkevičius, Janusz Onyszkiewicz


FT May 15, 2012

Era of a diminished superpower

By Martin Wolf

FT May 15, 2012

America’s very own safe haven curse

Ian Bremmer

BLOOMBERG May 16, 2012

American Decline a Mirage in a World That’s Rising

By Ezra Klein


FT May 15, 2012

Towards a more disarmed world


Project Syndicate 16 May 2012

The Death of Inflation Targeting

Jeffrey Frankel

FT May 17, 2012

When a monetary solution is a road to perdition

By CharlesPlosser

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The Economist, May 5th 2012

Chen, China and America

A dam on the Mekong: Opening the floodgates

Charlemagne: Going for growth, but how?

Chinese carmakers: Still in the second gear

(コメント) 陳Chen光誠氏のアメリカ大使館駆け込みに関して,記事は的確な指摘を行っています.

Chenは,貧しい地方の出身で,子供のときに視力を失いました.独学で弁護士になった後,農民の闘争を弁護してきた,と書いてあります.Chenは,反体制派の知識人ではないし,Ai Weiweiのような都市出身のエリート芸術家でもなかったのです.身体障碍者の権利に関する活動は,地方政府の称賛するものでした.しかし,一人っ子政策や強制的な不妊手術に反対する女性たちの活動に関わって4年間投獄され,その後も19か月の自宅軟禁状態にあった,と記事は紹介します.

さて,軟禁状態を脱して北京のアメリカ大使館に保護を求めた経緯や,大使館を出て,病院に入ってから,アメリカ大使館の扱いに抗議した事情の真相に関しては,まったくわかりません.興味深い考察は,米中関係に関しての問いかけです.1.アメリカの優れた外交官がChenを中国に戻るよう説得したのか? それほど愚かなのか? あるいは,経済戦略会議のためにChenを売った,悪人なのか? 2.かつて中国外交の基本は「良好な対米関係優先」であった.しかし,金融危機後は,それが変わったのか? 3.中国国内の指導部交代で,新世代の指導者たちは,国民に法の保護を提供しなければならないと承知しているだろう.人々の多くが生活水準を高めたが,それに取り残された農民や都市貧困層がいる.さらに成長の減速が,特に,地方政府への不満を生じやすくなっている.政府は国民の不満を吸収できる法的な制度を必要としている.

共産党政府は権力と特権的な地位を失いたくないが,法の支配も望んでいる.それは両立しない.一人の盲目の弁護士が,その将来を問う存在になった.

他にも,メコン川のダム建設,ユーロ圏の「成長協定」という幻影,中国自動車産業の蠢動,に興味を持ちました.

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IPEの想像力 5/21/12

映画「スラムドッグ・ミリオネア」を観ました.

ムンバイ(ボンベイ)のスラムと,都市の急速な成長を舞台にした物語です.

主人公はサリームとジャマールの兄弟です.彼らの母親は,反イスラム暴動において殺されます.猛烈な雨の中,帰る家の無い少女ラティカを一緒に小屋で泊まらせ,三銃士のように,仲間になります.貧しい子供を集めて食事を与え,物乞いに組織する土地の犯罪集団に拾われます.歌のうまい子供は盲目にして,物乞いをさせます.(同じように)ジャマールを呼びに行ったサリームは,ジャマールと駅まで逃げたものの,遅れたラティカの手を放して兄弟だけで列車に乗り込みます.兄弟は,とんでもない稼ぎや窃盗の類を重ねて,何とか生き延びます.そしてジャマールは,その後もラティカを探し続けます.

ラティカと再会し,ジャマールが2人と別れた経緯は飛ばします.コール・センターのお茶汲みをしていたとき,ジャマールは兄と再会します.しかしラティカは,ムンバイの急速な成長を足場に富を得た,地域を支配する親分の妻でした.サリームはその親分に仕えています.ラティカを取り戻すために,ジャマールは「クイズ・ミリオネア」に出ました.

「クイズ・ミリオネア」のもたらす興奮とは何なのか? と思いました.インドのスラムに生きる子供たちの明るさ,苛烈な貧しさとともに,富の持つ力がこれほど解放的で,未来への可能性を与えるものであることに驚きます.スラムドッグからミリオネアになる夢を,インドの家庭は共有できるのです.なぜなら,スラムが瞬く間に高層ビル群に変わるのを実際に見ているから.

ありえないような,ラティカに対するジャマールの変わらない純愛を,<運命>と呼ぶのは,インドの変貌に翻弄される人々の願いを表していると思います.

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中国の陳誠氏をめぐって,米中間の外交的な取引が行われたのではないか,と非難する意見に,私は違和感を抱きました.

1に,アメリカが<人権>を重視するより,中国との関係を損なわないように,陳氏を引き渡したとしても,その政治的判断を,何もしない私たちが<人権>を基準として否定することはできない,と思うからです.<人権>は,抽象的な理想であり,<平和>や<富裕>などがそうであるように,現実の絶対的な基準ではありません.そして,それ以上に,理想を実現する具体的な過程を教えてはくれないのです.

2に,中国政府が<秩序維持>を理由に,陳氏の行動を規制,監視することは,彼らの政治的な判断として,ありうると思うからです.確かに,<合理性>や<秩序>は大量虐殺を実現する道具になります.しかし,大量虐殺があったことで,その政治支配や社会の仕組み,民族や文化それ自体を否定するのは間違いでしょう.その変化を導いた具体的な条件,様々な選択にかかわった人々の事情,そこに加わった圧力,偶発的な結果の多様性などを理解することが重要です.同様に,中国政府が確立した領土的な秩序を,単に,否定することは<外交>の原則にならないと思うのです.

3に,<政治的自由>や<民主的な意思決定>を支持するジャーナリストたちが,アメリカを非難し,中国を非難することは,陳氏の自由や,中国政府の政治改革,経済成長を,人々の政治参加による新しい<秩序>の実現として主張するなら,それ自体が政治的な判断である,と思うからです.天安門事件や,チベット,ウィグル,台湾,香港の反政府活動がそうであるように,新しい<秩序>を実現する命がけの闘争を外の世界に伝えるジャーナリストたちは,境界を越えて<外交>や<秩序>に関わるよう求めています.

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インドの映画と中国の人権,外交について,こんなことを考えました.

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