IPEの果樹園2012
今週のReview
5/14-19
*****************************
人権と米中関係 ・・・緊縮策の政治的敗北 ・・・ロシアのプーチン ・・・アメリカ連銀と景気対策 ・・・フランス大統領オランド ・・・シンガポールの政治改革 ・・・オバマの同性婚支持表明 ・・・中国と「法の支配」
[長いReview]
******************************
主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP:
Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian,
LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project
Syndicate, SPIEGEL, VOX,
WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)
l 人権と米中関係
NYT May
3, 2012
Dissident’s
Plea for Protection From China Deepens Crisis
By MARK LANDLER, JANE PERLEZ and STEVEN LEE
MYERS
中国の全盲の人権活動家,陳光誠(Chen Guangcheng)が,アメリカ大使館に保護を求めた.陳氏は政治亡命を求めていない.中国に留まって家族との再会を望むが,治安当局の今後の対応に不安を強めている.アメリカ大使館は自発的に戻るような圧力をかけたことはない,という.他方,中国政府は一時的な留学としてアメリカへの出国を認める方針だ.米中経済戦略対話を数日後に控えて,双方ともこの問題を早期に解決したい.アメリカでは,この外交処理の問題をロムニーも取り上げ,大統領選挙に向けた争点になりつつある.
WP May
4, 2012
U.S.
& China: Regularly disappointing each other
By John Pomfret
中国人の多くは,アメリカが混乱に陥っているにもかかわらず,道義的な権威を自慢することを嫌っている.アメリカ人の多くは,中国が,大国になりたがるが,ふさわしい責任を果たす気が無いことに不満である.アメリカの商人たちが中国に上陸してから229年たつが,相手国に満足したことはめったにない.
Wang Lijun とChen Guangcheng,2人の保護によって米中関係の紛糾は新しい局面に入った.2月に,Bo Xilai の部下の警察署長Wang Lijunがアメリカ領事館に保護を求めた.中国人は,政治的な理由で,アメリカを称賛したり,敬意を示したりすることはできない.しかし,エリートたちはアメリカの大学に指定を留学させ,政府はアメリカの金融資産に投資している.Wang Lijunの行動は,彼の告発(と彼の命)を守っただろう.
Chen Guangchengは,一人っ子政策による強制的な不妊手術を受けた人々の告発を代表する全盲の弁護士です.この「犯罪」のせいで,彼は投獄され,誘拐され,殴打されてきた.2010年9月に釈放されたが,その後,地方の治安警察と地元の犯罪組織により,裁判なしに拘禁された.治安警察の影響力は絶大であり,その予算は中国の防衛予算よりも大きい.
先月脱走したChenは,北京のアメリカ大使館に逃げ込んだ.
FP MAY
4, 2012
Friends
Like These
BY DAN BLUMENTHAL, LARA CROUCH
BLOOMBERG
May 4, 2012
Obama’s
Audacity Goes Missing in Chen’s Ordeal
By William Pesek
Chenの行動は,今後,もっと多くの大使館駆け込みを誘発するだろうか? 共産党の指導部交代に関わるような,幹部による重大な秘密漏えいが起きるだろうか? それは,「アラブの春」を恐れる指導部による激しい弾圧に至るのか?
2008年の経済危機は,アメリカよりもはるかに貧しい,発展途上国である中国を,アメリカの最大の債権国にした.をある時点で,アメリカ政府は人権よりも債券市場を,すなわち,債券市場の安定性を脅かすことのできる中国政府の投資動向を,重視しなければならないだろう.
同時に,アメリカが人権を中国に対して主張できないもう一つの理由がある.アメリカは8年間も,裁判なしに,まるで独裁国家のテロ掃討作戦と同じく,国際法を犯してイラクに侵攻し,囚人たちをグァンタナモ基地に拘束したままである.
アメリカは,世界に対して釈明しなければならない借りが多くあるのだ.
YaleGlobal,
4 May 2012
Scandal
Erodes China’s Soft Power, Frank Ching
Project
Syndicate 04 May 2012
Chinese
Shadows
Ian Buruma
日本を含めて,東アジアでは政治がしばしば舞台の裏で決まる.しかし,中国では,すべてが舞台裏で,すなわち,国民が何も知らないところで決められる.Bo Xilaiの変わったところは,政治的な野心を公言していたことだ.日本の政治家や,マフィアのボスと同じように,中国の共産党幹部も権力への意志をあからさまに公言しない.Boは,アメリカの政治家のように,これを要求した.中国のボスたちは,日本と同様に,政治スキャンダルを利用した.そして,中国の伝統として,妻の犯罪を家族全部に関わらせた.
政府による弾圧が守ろうとしているのは,共産主義でも,毛沢東でもなく,中国共産党の築いた資本主義システムである.だから,Boも,Chenも,家族とともに抹殺され,あるいは,アメリカ大使館に逃げるのだ.
WP May
5, 2012
Why China’s Chen Guangcheng matters
By Kathleen Parker
FP MAY
7, 2012
The Debacle That Wasn't
BY DAVID ROTHKOPF
米中とも危機を強調し,過剰反応を示さなかった.Chen Guangchengをめぐる外交交渉は,米中関係の成熟を示すものだった.
WSJ
May 7, 2012
How
to Manage the China Relationship
By JON HUNTSMAN
FP May
8, 2012
Double
debacle in Beijing
Posted By Clyde Prestowitz
FP May
9, 2012
What
I learned about Sino-American relations yesterday
Posted By Daniel W. Drezner
WSJ
May 8, 2012
China's
Soft Power Deficit
By JOSEPH S. NYE JR.
l 緊縮策の政治的敗北
guardian.co.uk,
Friday 4 May 2012
European
elections: the false promises of populism
Jan-Werner Mueller
フランスやギリシャの,極右から極左まで,救済融資を嫌っている.ヨーロッパ中に,ポピュリズム政党が乱立している,というが,何がポピュリズムなのか,まともな定義を聞いたことはない.単に,民主主義政治の正統性が失われるとき,有害なポピュリズム党派が現れる,ということにすぎない.
「ポピュリスト」という非難は,国民投票や選挙で敗北したエリートたちが,彼らの好まない結果を攻撃するために使う最後の手段である,というポピュリストからの攻撃に遭ってしまう.フランスのル・ペンも,ハンガリーのオルバンも,そうだ,私はポピュリストだ,と肯定するだろう.ポピュリズムとは民衆を守るという党派である,と.
人民の名で語ることがポピュリズムの定義にはならない.それは,すべての政治家たちがしているから.単純化した,偽の解決策を主張する,というのも,「普通の市民に」わかるような言葉で話す,すべての政治家が望むことだ.明確な分割を示す線はどこにもない,というべきだ.
ポピュリズムを,減税,移民排斥,など,特定の政策目標で定義することもできない.また,たとえば,「第三の道」・社会民主主義に失望した労働者や,グローバリゼーションに脅かされる中産階級の下層,あるいは,ヨーロッパのルンペン・プロレタリア,というような特定の有権者の属性でも区別できない.どんな場合でも,グローバリゼーションへの不安は蔓延しているが,ポピュリズムはそうではない.
ポピュリストたちは,純粋な,同質的な人民と,腐敗した,あるいは少なくとも思いやりのないエリートとを対比する.そのようなエリートたちと人民(政体)を代表しない階層との共謀を攻撃する.すなわち,政治社会の頂点と最底辺である.ポピュリストたちの想像では,エリートたちというのは「グローバルな資本主義」に奉仕し,同時に,自分たちとは違う,自分たちに寄生している貧しい者たちに多くの関心(そして金)を費やし過ぎる.たとえば,オランダのイスラム教徒や東欧移民を非難し,ロマ(ジプシー)を非難し,ギリシャではトルコから入ってくる移民を非難し,アメリカではアフリカ系アメリカ人の下層を非難する.エリートもマイノリティーも,社会に寄生している点で同じものである.ブラッセルは移民の味方である.すべてのEU反対者がポピュリストではないが,ポピュリストはすべてEUに反対する.
左派の一部には,ポピュリストの民主主義的な可能性を支持する者がいた.それは近視眼的で,自己本位の観方であるが,政治参加を求める正しい主張である,と.しかし,これは間違いだ.ポピュリストたちは,代表制や偉大な指導者の有無ではなく,共通の特徴を示している.それは,人民の道徳的な純粋性を正当性の根拠にすることだ.それはエリートやマイノリティーによって脅かされている.
彼らに迎合しても,長期的には無意味だ.サルコジはル・ペンに迎合したが,ポピュリストにとっては,サルコジよりル・ペンである.他の選択肢はない,と主張したサッチャー(やメルケル)と似ているが,テクノクラートはポピュリズムの正反対だ.唯一の政策と,唯一の声(ただし,なんでも言える).彼らは相互に強め合う.テクノクラートは民衆を怒らせ,ポピュリズムの脅威は民主主義を無視させてテクノクラートに権力を委ねる.
政治家たちは,選択肢があることを認めなければならない.そして,政策や制度の改革をめぐって真剣に議論することだ.それは純粋なアイデンティティやポピュリストの本能とは関係ない.
SPIEGEL
ONLINE 05/04/2012
Greece's
Dilemma
When
the Only Real Choice Is Protest
By Julia Amalia Heyer in Athens
WP May
4,2012
Europe
finds austerity a tight fit
By Harold Meyerson
緊縮策は成功しない.それは不況を悪化させ,政治的な過激派をヨーロッパ中で増やした.ヨーロッパ統合への支持も失われている.財政再建の合意では,赤字を減らすことで投資が増えるはずだった.しかし,緊縮策を撮った国は不況になって,投資も減ってしまう.債券を進んで購入する投資家はいない.オランドのような左派だけでなく,イタリアのモンティも,緊縮策より成長を重視するよう求めている.
1930年代の教訓は,大きな痛みを伴って,再発見されつつある.
FT May
6, 2012
The
only solution to the eurozone crisis
By Wolfgang Münchau
銀行の資産が失われた以上,それは破たんし,混乱を避けるためにESMが吸収するしかない.
guardian.co.uk,
Monday 7 May 2012
The
euro alternative to Greek default and the drachma
Dean Baker
ギリシャの選挙で敗北したのは緊縮策に合意した二大政党であった.1976年にギリシャの独裁体制が終わってから政権に就いた政党はこの二つであった.緊縮策は,健全な経済に向けてガバナンスを改善するより,苦痛そのものが目的になってしまった.
他の選択肢はある.ユーロ圏離脱とドラクマの再生は,一時的に金融的な混乱があるとしても,安価になった観光や農産物で売り上げを増やすだろう.ユーロ建債務を負うものがデフォルトになるが,それでもこの状態を続けるよりましだ.
アルゼンチンは2001年末にドルとの固定制を破棄し,3か月間経済は急落したが,2002年の第2四半期には安定し,それから6年半の拡大を実現した.
ギリシャのユーロ圏離脱には,他の選択肢がある.ECBが緊縮策を完全に放棄することだ.ECBが債務の一部を貨幣化し,同時に,インフレーションを促す.
FT May
7, 2012
Monetary
policy is no panacea for Europe’s ills
By Jens Weidmann
guardian.co.uk,
Monday 7 May 2012
Greece
takes a leap into the dark, driven by defiance and despair
Maria Margaronis
FT May
7, 2012
We
must move beyond growth versus austerity
Jeffrey Sachs
有権者は緊縮よりも成長を求めている.しかし,成長は政策ではなく,政策の結果である.
マクロ経済学は,この点について,4つの学派がある.ケインズ派は,一時的な財政赤字で総需要を増やすことを支持する.完全雇用の回復とともに,緩やかに財政を均衡化する.自由市場派(ヨーロッパのリベラル,アメリカの保守派)は,ビジネスの規制緩和と政府支出・税の削減により,民間部門の投資を雇用を刺激する.赤字削減強硬派は,予算赤字を減らして政府の信用を改善する.構造派は,公共支出の増大と増税を主張し,財政赤字に反対する.教育,雇用,銀行の自己資本増強において,政府の役割を重視する.
それぞれの学派に当てはまる人物を挙げれば,Paul Krugman and Ed Miliband はケインズ派,Martin Feldstein and Mitt Romney はアメリカの自由市場派であり,Thatcherites and Hayekians がヨーロッパから合流する.赤字削減強硬派はGeorge Osborne, Angela Merkel, and Mario Draghiである.私自身は構造派であり, おそらく Francois Hollande もうそうなるだろう.オバマ大統領は,赤字削減強硬派のほかのすべてになったことがある.
ケインズ派は4つの点で間違っていると思う.
1.現実の総需要は予算赤字の安定した関数ではない.一時的な減税策や,個人地方政府への財政移転は,支出されるより貯蓄になるだろう.そして赤字は債券市場に嫌われる.
2.ヨーロッパの不況が2番底になったのは,総需要の問題ではなく,ゾンビ銀行と信用の枯渇,さらに,いまだにECBの役割が明確でないことに原因がある.
3.製造業が失われたのは,若者が十分な技能・熟練を持たず,アジア諸国との競争に負けたせいである.
4.ケインズ派が認める以上に,債務のGDP比率は重要だ.債務の原理返済で他の必要な支出が削られてしまう.資本市場もこれを気にするから,一時的な財政赤字による刺激を嫌うのだ.
自由市場派と赤字削減強硬派は,ともに,社会の不平等化という現実に背を向けている.マクロ経済学の論争は,経験的なものではなく,イデオロギーによるものだ.OECD諸国の中でも,社会民主主義的な北欧諸国やオランダ,社会的市場モデルのドイツが,財政赤字の抑制,雇用創出,競争力で,優れた成果を示している.
それにもかかわらずドイツがギリシャなどに厳しい緊縮策を求めるのは,ブームと破綻の原因が,規制緩和されたドイツの銀行による融資拡大であったことを認めたくないからだ.それを認めれば,政治家たちは銀行の自己資本増強に(公的資金を使う)強い圧力を受ける.
北欧が示すように,社会民主主義的,あるいは,社会的市場モデルが意味する構造学派の考え方こそ,フランスのオランド新大統領が選択する道であろう.すなわち,社会的目的に,環境保護に,技能の習得に,積極的にかかわる政府が望ましい.
SPIEGEL
ONLINE 05/07/2012
The
EU's Black Holes
Saving
the Euro Will Require Banking Sector Reform
By Martin Hesse, Christoph Pauly and Anne
Seith
FP MAY
7, 2012
The
Earthquake in Greece
BY LOUIS KLAREVAS
Project
Syndicate 07 May 2012
Europe’s
Misguided Search for Growth
Daniel Gros
いわゆる「財政合意」は,ドイツがユーロ圏救済ための基金を受け入れ,ECBによる1兆ユーロのLTROを認める条件であった.これは15年前にドイツが,マルクを捨ててEMUに参加する条件として,“Stability Pact”財政協定を求めた過程と同じである.それは,1997年,成長を条件とした協定“Stability and Growth Pact” (SGP)に変えられた.
成長を実現することに政治家が努力するのは当然だろう.しかし,問題は何ができるのか,である.いま議論されているとこは,1996-97年の議論と変わらない.EIBは政府の保証を条件としており,南欧政府にはその力が無く,また中小企業への融資は行えない.
南欧版の「マーシャル・プラン」を求める意見もある.インフラ投資は既に行われてきたし,今では南欧に十分な投資がなされ,むしろドイツのインフラ投資が必要だ.ドイツには,援助が無くても,インフラ投資のための資金調達が可能である.そして,完全雇用下でドイツがインフラ投資をすれば,それは輸入や建設労働者の流入として南欧を助けるだろう.残念ながら,ドイツのインフラ投資は地方レベルで強い反対にあう.
ヨーロッパが選択すべきは,緊縮に加えた南欧へのマーシャル・プラン,ではない.南欧は緊縮策に加えて労働市場を改革し,それと組み合わせて,ドイツやオランダなどトリプルAの格付けを持つ諸国がインフラ投資を増やすことだ.さらに,ドイツがサービス部門の規制緩和をして,南欧の改革を支援することが望ましい.
NYT May
8, 2012
Few
Options if Europe Turns Away From Austerity
By JACK EWING
VOX 8
May 2012
Weekend
elections: Democracy and the fiscal compact
Francesco Daveri
FT May
9, 2012
Desperately
seeking a bailout for Spain and its banks
By Nouriel Roubini and Megan Greene
スペインの銀行システムがどれほど大きなブラック・ホールを抱えているのか,だれにもわからないが,スペイン政府はようやくその処理に手を付けた.Bankiaなどへの資本注入を計画している.しかし,スペイン経済自体が大量失業に苦しむ不況の中であり,銀行救済が財政赤字を悪化させ,不況も激化するから,政府の財政破たんに及ぶ危険がある.
理想的には,今すぐに,スペインの銀行をEUが救済して資本増強するのがよい.しかし,融資条件を介して改革を進めたいドイツは反対しており,スペイン政府もEU市民に銀行を支配されることを嫌っている.結局,事態が一層悪化してから,救済することになるだろう.
この状況は,ユーロ危機の展開を観察してきた者に,強烈な既視感を与える.アイルランドの銀行救済と財政破たん,ギリシャとポルトガルの景気悪化と救済融資は,ここでも繰り返されている.ただし,大きく異なるのは,その規模だ.はるかに大きなスペインに対して,同じような救済が繰り返せるかどうかは,恐ろしい賭けである.
不況を緩和するために,ECBは金融を拡大し,ユーロを安くして,ユーロ圏の中核諸国は財政刺激策を取り,周辺における緊縮策も最初は少しずつ行い,国際的な防火壁を高くして,債務の免除を行う.こうしたことが,ブラッセルやフランクフルトや,ヨーロッパ諸国の政府によって実行されないなら,ユーロ圏は周辺からゆっくりと崩壊へと進む.
FT May
9, 2012
A
hole in the heart of Spanish banking
NYT May
9, 2012
Europe
May Need More Power to Deal With Bank Crisis
By STEPHEN CASTLE
WSJ
May 9, 2012
The
European Revolt Against Reality
By JOSEF JOFFE
ヨーロッパが求められている選択とは,"Mitterrand for All" or "Schröder Does Europe"? オランドが行った演説は,サルコジを責め,メルケルを責め,現実を無視することだった.彼の行動を,市場が判断するだろう.
guardian.co.uk,
Thursday 10 May 2012
Now
it is Ireland's turn to reject the austerity fantasy
Gavan Titley and John O'Brennan
FT May
10, 2012
Greece
is falling out of Europe
By Philip Stephens
問題は,有権者の怒りが答にならないことだ.緊縮策は拒んだが,有権者はユーロ圏にとどまることを求めている.それはできないだろう.無秩序なデフォルトに向かう.
現在の問題を作ったのは,過去数十年のギリシャ政治である.今やギリシャ経済は崩壊し,政治的にも支配政党が大敗してバルカン化が進んだ.
ユーロを離脱してドラクマを復活させ,切り下げることで,苦痛なしに解決できる,というのは間違いだ.財政再建にも,競争力回復にも,ギリシャは厳しい改革を避けられないし,切り下げは生活水準の大幅な低下と銀行システムの崩壊,国際的な信用の失墜でしかない.
FT May
10, 2012
A real
alternative to austerity economics
By Samuel Brittan
SPIEGEL
ONLINE 05/10/2012
Breaking
a German Taboo
Bundesbank
Prepared to Accept Higher Inflation
guardian.co.uk,
Friday 4 May 2012
Argentina
and the magic soybean: the commodity export boom that wasn't
Mark Weisbrot
l ロシアのプーチン
FT May
4, 2012
My
father’s message to Putin from a prison camp
By Pavel Khodorkovsky
FT May
6, 2012
To
Russia with love: how Putin can secure his legacy
By Ruchir Sharma
拝啓 ・・・プーチン殿
成長にとって,政治システムが民主的かどうか,は重要ではない.指導者が成長を促すことを知っている必要があるだけだ.ロシアの平均所得が10年間で2000ドルから1万3000ドルに上昇したことは,あなたの権力が安定していた成果だ.
しかし,権力を長期に保持する者は改革を見失い,既得権層に取り込まれる.成長を10年以上続けた指導者としては,シンガポールのリー・クァン・ユーがいる.引退しても彼の名声はゆるぎない.あなたが彼から学ぶとしたら,ロシア経済に次のような改革を行うことだ.
1.モスクワの株式市場には製造業の株が一つもない.国家の経済支配が大きすぎて,民間投資を締め出している.2.道路,橋,鉄道など,インフラ投資を増やすべきだ.3.モスクワは,世界のどこよりも10億ドル以上の大富豪が多くいる街だ.100万ドルの資産家は少ない.4.金融を仲介する銀行も少ない.ナイジェリア並みだ.
もっと製造業を育て,中産階級を増やし,輸送インフラに投資し,中規模の企業を増やすことだ.
FT May
8, 2012
The
paradox of Putin’s third term
WP May
8, 2012
Russia’s
strongman is losing his grip
By Masha Lipman
FT May
4, 2012
Britain
should still consider joining the euro
Peter Mandelson
l スーダン
NYT May
4, 2012
In
Sudan, Give War a Chance
By GÉRARD PRUNIER
FP MAY
4, 2012
The
Accidental Peacemaker
BY JAMES TRAUB
中国政府は,かっつてない行動を取った.スーダン政府に対する制裁決議に,棄権ではなく,賛成したのだ.スーダン,南スーダン,両政府に対して,戦闘を止めて交渉の席に就くよう求める決議である.それは,単純な「ウィン・ウィン外交」の終わりである.
l インド
NYT May
5, 2012
Never
Mind Europe. Worry About India.
By TYLER COWEN
l 北朝鮮
NYT May
5, 2012
North
Korea’s Performance Anxiety
By WILLIAM J. BROAD
l アメリカ連銀と景気対策
WP May
5, 2012
An
economic boom ahead?
By David Ignatius
WP May
7, 2012
Battle
of the beards’: Paul Krugman vs. Ben Bernanke
By Robert J. Samuelson
「髭の対決」(Paul
Krugman vs. Ben Bernanke)と呼ぶべきか.ポール・クルーグマンとベン・バーナンキは,金融政策をめぐって厳しく対立している.クルーグマンが連銀の金融政策を,失業や低成長に対して臆病過ぎる,と批判し,バーナンキは,無謀だ,と反対した.
連銀は大胆な金融緩和を行ってきたが,それでも力強い成長は実現できなかった.クルーグマンは,インフレ率を,今の2%程度から,5年間,3~4%にまで上げるよう求めている.なぜならそれは消費や投資を促し,債務の負担を軽減するからだ.しかし,バーナンキに言わせれば,企業がインフレ率の安定性を信じているからこそ,連銀は積極的に金利を下げることができる.もしインフレを目指すと唱えたら,こうした金融政策の弾力性は失われる.
インフレ期待が変化すれば,労働者も,消費者も,投資家もそれを見込んで選択し,景気の回復を妨げるかもしれない.あるいはまた,インフレ率の上昇が始まれば,1970年代後半のように,それは容易に止まらないだろう.
NYT May
7, 2012
The
Structural Revolution
By DAVID BROOKS
アメリカの景気について,循環論者と構造論者が対立している.左派は,景気循環的な不況だけを重視し,生産能力に比べて有効需要が足りないから,政府に需要刺激策を求める.
左派にもいるが,多くの中間派と右派は,低成長のもっと構造的な問題を重視する.長期的に形成された構造的な欠陥を解決しなければ,刺激策は財政赤字を増やすばかりで役に立たない.たとえば,グローバリゼーション,技術変化,熟練・教育,など.
シカゴ大学のRaghuram
Rajanは,金融危機前の成長に戻ることは正しくない.金融部門の膨張のような,多くの間違った要因で需要を高めていたからだ.もっと生産的な用途に資本を向けるべきだ,と構造論を支持した.
ドイツは,構造論だけを主張していたが,成長の必要も認めつつある.アメリカの政治家には循環論者がおらず,オバマは最小の改革を求めている.ロムニーやポール・ライアンは構造論だが,議会共和党の減税論に流されている.
FT May
8, 2012
Stop
beating up on Ben Bernanke
Raghuram Rajan
FT May
10, 2012
A
cautionary tale of inflation and growth
By Mark Carney
(後半へ続く)