前半から続く)


l  ユーロ危機の終結へ

LAT April 22, 2012

The sadly unpalatable solution for the eurozone

By Wolfgang Münchau

ユーロ危機を終結に向けた第一歩が何であるか,ようやく答えが見えてきた.それはユーロ圏を一つのシステムと見なす銀行の破たん処理・プルーデンシャル規制・預金保険だ.それは銀行システムを国民国家から取り出し,ユーロ圏,もしくは,EUがすべての面倒を見る,という意味だ.ユーロ危機の本質は銀行と国民国家・政府との癒着にあるからだ.

それがユーロ債の発行より政治的に見て容易だから,という説明を,私は信じない.そのコストは膨大であるし,果たしてドイツが銀行と企業との親密な関係を捨てることに同意するだろうか? 確かに,スペインから見た利益はある.銀行再建の責任とコストはユーロ圏全体が担う.しかし,それを各国が受け入れるためには,もっと厳しい危機が襲って,経済状態が悪化するしかないだろう.

NYT April 22, 2012

Europe’s Austerity Wave Reaches Netherlands, Carrying Political Risks

By PAUL GEITNER

guardian.co.uk, Monday 23 April 2012

The Dutch government's fall will mean political deadlock for months to come

Roel Janssen

FT April 23, 2012

A euro parable: the young couple with a joint account

By KennethRogoff

通貨統合を,結婚前に男女が銀行口座をシェアすることで試してみる,という実験にたとえる.最初はうまくいくが,兄弟や姉妹を加え,従姉妹・従兄弟たちを加えると,その中から借金や浪費や失業が問題として現れる.共通のクレジット・カードを解決策と見なすことはできない.

つまり,どういうことか? 通貨圏を維持するには,強力な銀行監督や破綻処理が必要であり,それらは政治的な統合に拠らなければ実行できない.たとえ市場統合が進んでも,政治統合なしに,通貨統合だけで成功することは無理なのだ.グローバル・ガバナンスが不完全な世界で,最適通貨圏は国家でしかない.

guardian.co.uk, Tuesday 24 April 2012

Europe's terrible blunder can be rectified. Remember 1931

Simon Jenkins

なぜ危機を続けるのか? 皆,狂っているのか?  Paul Krugmanは,1930年代を再現して,ヨーロッパの政府が経済的自殺を求めている,と主張した.

1925年のロカルノ条約の理想主義的精神を振り返るのは嫌なものだ.その後,チャーチルは蔵相としてイギリスの金本位制復帰を実行した.アメリカと競争できるまで賃金を引き下げれば,戦前の経済的安定を回復できると考えた.ケインズはそれを狂気と呼んだ.ドルに対して10%過大評価されたポンドは,輸出を挫き,失業とストライキをもたらす.

再び,イングランド銀行と大蔵省は同じような正統派の罠に陥っている.インフレを最大の悪として,戦後最悪の需要崩壊を許すのだ.彼らは,病人を雪の中に寝かせて回復を待つ医者に似ている.

1925年にケインズが正しかったことは,1931年が示した.緊縮策と不況で労働コストを下げるより為替レートを変動させる方が,債務負担を減らすにはインフレの方が,優れている.需要が足りないなら,需要を増やすのが正しい.

ユーロは20世紀最後のロカルノの夢想だ.銀行家,ビジネスマン,労働者,農民が祝福する素晴らしい新秩序を目指した.労働コストは等しく,財政や規制を大陸規模で統一しよう.ヨーロッパ合衆国を実現するため,ヨーロッパの民衆が一つになるまで絞り上げる.

民主主義がこの失敗から救ってくれる.緊縮策を求める政府は各地で敗北しつつある.ヨーロッパは,債務,デフォルト,通貨について,単純な,一晩でできる,集団的な再編成を求めている.戦後のブレトン・ウッズ合意にならうことだ.ユーロ圏は大幅に縮小し,変動レート制の諸通貨が復活する.

そして,われわれも正気に戻る.

FT April 24, 2012

Banks are on a eurozone knife-edge

By Martin Wolf

ユーロ危機を終わらせるために,IMFGlobal Financial Stability Report,そして,最新のWorld Economic Outlookが述べていることは,要するに,1.銀行と政府とがともに悪化する関係にある.2.ECBの金融政策は引き締め過ぎており,成長が遅い.3.競争力のある国がインフレを促すことで,ユーロ圏の調整は容易になる.

最も重要な点は,政治的な危機が拡大していることだ.オランダの政権崩壊,大統領選でユーロ危機がフランスにまで波及すれば,ユーロはおしまいだ.安定化を実行する政府がその正当性を失っている.最大のリスクである無秩序な債務削減の危険を封じ込めるには,資本を銀行システムに強制注入することだが,政府の脆弱な財政状態がそれに耐えられない.

FT April 24, 2012

How to construct a ‘fiscal club’ for the eurozone

Stephen King

FP APRIL 24, 2012

Only Germany Can Save Europe

BY HELEEN MEES

WSJ April 24, 2012

Europe's Phony Growth Debate

Project Syndicate 25 April 2012

A Crisis in Full Flight

Hans-Werner Sinn

ECB1兆ユーロを供給したが調整は促せなかった.危機は深刻さを増している.今や,ECBの供給した資金がスペインやイタリアからの資本逃避をもたらしている.

財政赤字を削るべき諸国は,競争力も回復しなければならない.それはイタリアが10-15%,スペインが20%,ギリシャとポルトガルは30%35%に達する.何十年も停滞を続けるしかないだろう.

ECB経由で安価な融資を供給し続けるしかない,という主張は,資本市場を排して,無気力な公的融資に代えてしまう.すでにドイツ人,オランダ人,フィンランド人は,一人当たり15000ユーロ,17000ユーロ,21000ユーロの貯蓄をECB経由の融資に変えられてしまった.

ユーロ圏が崩壊すればどうなるのか?

VOX 25 April 2012

The euro’s salvation lies in a little less Europe; not more Europe

Avinash Persaud

NYT April 26, 2012

In Europe, a Marriage Is Fraying

By FLOYD NORRIS

もしユーロ圏が失敗した結婚生活なら,破滅的な離婚を回避するために何をなすべきか?

その原則は多くの社会で示されているように,双方が犠牲と妥協を示し,そのルールは夫であるドイツが決めるべきだ,となる.問題の本質は,ユーロ圏内の多くの国がドイツの競争力に対して劣っていることだ.大幅な貿易赤字を出しているのに,通貨は切り下げることができない.ドイツの考えは明白だ.調整のコストは赤字国が負う.

しかし,フランスは特別な仲間だ.ドイツには「特別な歴史」があるから.しかし,フランスの選挙について,ドイツ連銀総裁であり,メルケルの顧問でもあったJens Weidmannは,これまでの約束を守るべきだ,と主張した.それはホランドが当選することへの警告だ.

しかし,ヨーロッパのますます多くの人が,ドイツが正しいとは思わなくなっている.


LAT April 22, 2012

The Cutty Sark not the Titanic is the true tale of Britain today

By TristramHunt

アジアから富をもたらす,非公式の帝国を示してきたCutty Sarkは,今や,中国の投資銀行やイギリスにおける中国人による企業・銀行買収がもたらす富のシンボルとなった.


l  日銀の変身

FP Monday, April 23, 2012

No one in charge in Japan

Posted By Clyde Prestowitz

WP April 23, 2012

Phasing out nuclear

FT April 24, 2012

Last chance for the BoJ to jettison defeatism

By TakatoshiIto

日銀は世界に,ヴァレンタインのチョコみたいなプレゼントを示した.デフレの国で,10年以上もインフレ目標の設定を拒み続けて,ようやく1%のインフレを目標にすると述べたのだ.その後,数週間,円安と株価上昇が続き,心理的な転換点に近づいた.しかし,市場はその姿勢を疑っている.

政治家たちが,15年間もデフレを解消できなかった日銀に憤慨するのは当然だ.国会には,インフレ目標を達成できない日銀総裁の解任を求める議員グループもいる.日銀はこのコミュニケーション不足を解決するために以下のことを実行せよ.

1.日銀による資産購入の範囲と規模を拡大する.株式や債券のインデックス・ファンド,不動産投資信託や外貨建資産も購入する.そのために,リスク資産保有によって損失が出た場合のすべての責任は政府が肩代わりする,と明言せよ.

2.投資家を促して,日銀の量的緩和策は資産価格の上昇によるインフレ率の引き上げを目指している,と明言せよ.

3.日銀は,アメリカ連銀が示した中央銀行の信念を明言せよ.すなわち,長期的な物価水準,インフレ期待に影響を与えることこそが,中央銀行である,と.

余りにも長く,日銀は無力であるふりをしてきた.その意味で,日銀は日本の長期衰退の共犯者である.その敗北主義者の姿勢を打ち破るときだ.

NYT April 26, 2012

An Aging Japanese Town Bets on a Young Mayor for Its Revival

By HIROKO TABUCHI

WSJ April 26, 2012

Japan's Third Opening, Closed

アメリカ訪問でTPP参加を正式に表明するはずだった野田首相は,その姿勢を後退させた.


l  独裁者の追放

FP APRIL 23, 2012

More Than Just Remembering

BY MADELEINE ALBRIGHT AND WILLIAM COHEN

Atrocities Prevention Boardの設置は,アメリカ大統領が世界の大量虐殺を防ぐことに対する責任を認めるための仕組みとして,画期的な一歩だ.それは単に海兵隊を送る決定に限らない.

guardian.co.uk, Thursday 26 April 2012

Now Charles Taylor has gone, Sierra Leone is on the rise

Aminatta Forna

内戦終結によって,シエラレオネ経済は好況を迎えた.かつての独裁者Charles Taylorがハーグの国際司法裁判所で有罪となったことは喜ばしい.経済ブームが,概ね,鉄鉱石や金,チタニウム,アルミニウム,など,資源採掘によるものであるのは事実だが.沖合の油田発見には中国投資家が殺到している.

シエラレオネの内戦は,この国の人々にとってTaylorの有罪よりも多くのことを意味している.その裁判について,人々の意見は様々だった.裁判所は武装グループの指導者たちを裁いた.人々は政治指導者たちの責任をも問題にした.彼らの無能さが腐敗と統治の破壊をもたらし,真空状態の国にTaylorを呼び込んだ.

51年前に独立を宣言したとき,シエラレオネは他のアフリカ諸国より恵まれていた.官僚や専門家の中産階級がいたのだ.しかしその後,彼らは無気力な態度を取り,独裁者Siaka Stevensが反乱を恐れて警察と軍隊を骨抜きにした.Foday SankohTaylor(そしてカダフィ)の支援を受けたRUFでリビアから乗り込むと,それを撃退する力がなかった.そこには仕事も希望もなく,失うものの無い憤慨した若者たちが集まっていた.

シエラレオネは最悪の経験を通して,民主主義が政府や軍隊を不断に監視する必要を学んだのだ.人々の政治的な成熟こそが平和を維持するだろう.

FT April 26, 2012

The Charles Taylor verdict shows that future despots have nowhere left to hide

Mark Malloch-Brown


FP Monday, April 23, 2012

Former Icelandic PM convicted for negligence over financial collapse

Posted By Joshua Keating

NYT APRIL 23, 2012

Iceland’s Ex-Prime Minister Convicted on Charge Related to Financial Crisis

By JULIA WERDIGIER

WSJ April 24, 2012

The Financial Crisis on Trial

By HANNES H. GISSURARSON

アイスランドの元首相,Geir H. Haardeは,2008年の国際的な金融危機において,世界で最初に,そして唯一,裁判にかけられた政治指導者となった.

しかし15人の判事たちはHaardeの有罪を限られた形でしか認めなかった(すなわち,重大な問題で会議を開くことが少なかった罪).それは国会として告発を指導してきた左派政権の敗北である.実際,Haardeが銀行を救済しなかったことは,現在のユーロ圏で危機を生じている問題を回避させたのだ.

また,アイスランド経済は伝統的な海洋資源,滝や温泉による再建に成功し,ユーロ危機にもかかわらず,アイスランド通貨の価値だけが今も回復を示している.


l  核兵器削減と不安定化

WP April 23, 2012

Nuclear weapon reductions must be part of strategic analysis

By Henry A. Kissinger and Brent Scowcroft

新しい核兵器削減交渉にわれわれは賛成だ.アメリカが核のない世界を目指すことも支持できる.しかし,過去2世代にわたって平和を維持し,核兵器の使用を防いできた戦略的な安定性を守り,高める必要がある.8つの教訓がある.

核兵器の過度の削減は,不意の攻撃による不安と,戦略的な安定性を失う危険を意味する.

第一に,核兵器の削減によって,攻撃する国の受け入れ可能な水準にまで報復能力を下げてはならない.第二に,受け入れ不可能なダメージを予想するとき,アメリカ国民にとっての水準を,他国について同一視してはならない.・・・第八に,アメリカは核による攻撃を抑止すると約束した同盟諸国の信頼を確保しなければならない.核兵器削減交渉において彼らが不信を抱けば,対抗するための独自の核武装を招く.

確実な検証手続きと透明性が重要である.


l  インドのミサイル発射とアジアの軍拡競争

FP APRIL 23, 2012

Fire in the Sky

BY JASON MIKLIAN, SCOTT ROECKER

インドの大陸間弾道ミサイルは成功した.シン首相はそれをインドの誇りと称賛した.それは北朝鮮とインドが行ったミサイル発射実験の結果とともに,その国際的な反応は,対照的であった.インドが中国に対して抱く対抗心は重要な理由の一つだ.

中国とインドがアジアの軍拡競争を刺激する危険性を無視することはできない.冷戦の教訓を学ぶかどうかは,両国に掛かっている.今は,ナショナリストたちが喜ぶ様を眺めるしかない.

Global Times | April 23, 2012

India's security expansion not targeted at China

Global Times | April 25, 2012 01:00

Ishihara using Diaoyu as arrow to pierce China

By Yu Jincui

東京都の副知事,猪瀬直樹は,釣魚島Diaoyu Islands(沖縄県・尖閣諸島Senkaku Islands)を買収する資金を公募する計画を発表した.石原慎太郎が買収を進める目的は,日本のナショナリズムを高揚させ,右派勢力により大きな政治権力を与えることである.

石原の次の計画は釣魚島訪問であると言われる.もし右派政治家が中国を挑発するなら,中国は断固とした対応に出るべきだ.

NYT April 25, 2012

Pakistan Says It Test-Fires Nuclear-Capable Missile

By SALMAN MASOOD


SPIEGEL ONLINE 04/25/2012

The Grand Experiment

German Pirate Party Attempts to Reinvent Politics

By Sven Becker, Dirk Kurbjuweit, Peter Müller, Marcel Rosenbach and Merlind Theile

ドイツの「海賊党Pirate Party」が既存政治のシステムや支配者たちに反抗し,それに成功した.先週,海賊党のマネージャーMarina Weisbandは,キリスト教民主同盟のMichel Friedmanが主宰するテレビ番組に出た.Friedmanは海賊党を「ナチ,レイシスト,反ユダヤ主義者」と非難していた.反撃が始まっていた.


NYT April 25, 2012

Egypt’s Chaotic Election


l  アイデアの奴隷

Project Syndicate 26 April 2012

Ideas over Interests

Dani Rodrik

政治理論は非常に単純化して理解されている.つまり,力を持つ者が望むものを得る.金融規制は銀行家の利益を実現し,税制は富裕層の利益に従う.

グローバルに見ても,外交政策は国益を実現する.他国への配慮や国際社会の利益はどうでもよい.民主制でも独裁制でも,国際政治でも,多数に有害な,少数者の特殊利益が実現する.

しかし,こうした説明はしばしば誤解を招く,なぜなら,利益は固定したものでも,あらかじめ決められたものでもないからだ.利益はアイデアによって形成される.我々は何者であるか,何を達成するのか,世界はどうのように動くのか,様々な信念が我々に作用する.アイデアのレンズを通して,自己利益は認識される.

企業が競争力を高めるには何をするべきか? ある企業は労働者の一部を解雇し,生産をコストの安いアジアに移転する.しかし,他の企業は労働者のスキルに投資し,より生産的で,忠誠心のある労働者を得ることで,コストと品質における優位を得る.企業の選択は,自分のコストと利益に関する計算がかかわる,様々なシナリオの主観的な評価による.

同様に,内外の脅威を退け,貧しい国の独裁者は,どうやって権力を維持するだろうか? ある独裁者は輸出指向の経済を築いた.他の独裁者は軍人や仲間に多くの報酬を与えた.東アジアの件主義体制は前者に当たり,中東世界は後者だった.

中国はどのような国際システムを望むのか? 既存の多角的な国際システムを強化するのか? あるいは,自国の優位を得やすい二国間交渉を張り巡らすのか? また,ドイツのメルケル首相は,国内の政治的立場を高めるためにギリシャに厳しい緊縮策を呑ませるのか? あるいは,債務負担を平原するような,緩やかな条件に変えるのか? そしてまた,アメリカの利益は世界銀行の総裁を直接に指名することで最も高められるのか? あるいは,アメリカ人でなくても,最もふさわしい候補に協力する方がよいのか?

その激しい論争には終わりがない.我々には利益の様々な認識があるのだ.それは我々のアイデアによって異なる.

では,アイデアはどこから来るのか?  政策担当者は流行の奴隷である.何が望ましいアイデアかは,雰囲気が,時代精神が決める.「ずっと前に死んだエコノミストのアイデア」とケインズは言ったが,それではまだ足りない.この数十年間の自由化や金融的過剰がもたらしたのは,ほとんどが生きているエコノミストたちだ.

エコノミストたちが愛するモデルには,その根っこに政治的な邪悪さを持つ,組織された特殊利益が配置されている.その影響力は,責任を伴う.

WP, Thursday, April 26, 2012

The Swedish model for economic recovery

By Robert J. Samuelson

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The Economist, April 14th 2012

Games on

Scotland and home rule: It’ll cost you

Germany’s economy: Modell Deutschland über alles

Banyan: A (slightly) more muscular Japan

Lexington: The real back yard

Charlemagne: The commission conundrum

(コメント) オバマとロムニーの選挙戦は激しい攻撃になる,と記事は予想します.なぜなら予備選を通じてロムニーは自分を,社会的支出を削減する「厳格な保守派」である,と自慢したからです.それでも彼を信じていない右派を選挙に動員するためには,彼らのオバマに対する怒りを刺激するしかありません.他方,オバマも,もはや新人として両党の分裂を和解させる治癒者の姿勢を示すことなどできません.すでに分裂したアメリカ政治がますます両極化していきます.

スコットランドが北海油田の利益を独り占めできるから独立は支持されるのか? しかし,小さなスコットランドが債券市場で今のような格付けや金利を維持することはないし,金融市場によるショックは厳しい結果(「北海のアテネ」)をもたらすとわかりました.ユーロに参加するという最初の見通しを転換しています.

ドイツ経済の優秀さを世界は見習うべきなのか? そうでもない,と記事は考えます.特に,ユーロ圏でドイツの進める緊縮策や不均衡の調整は嫌われています.あるいは,日本は(少し)本気で防衛力を示して,アメリカの負担を軽減し,アジアにおける安全保障の連携を図るために,北朝鮮のミサイルを撃墜する姿勢を取りました.中国のミサイルではなく.

また,アメリカ政治がばらばらになって苦しむ中で,ラテンアメリカ諸国は繁栄を示しつつあります.ユーロ危機やEUの内部対立が激化するほど,欧州委員会の役割は重要ですが,この組織がどのような民主的基盤を得ているのか,判然としません.

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IPEの想像力 4/30/12

北朝鮮のミサイル発射が失敗し,インドの大陸間弾道ミサイルは成功しました.これで,インドによる核攻撃の射程は,中国からオーストラリア,中東世界にまで広がりました.

私たちも,正常な国家としての自衛を求めて,ただちに核武装するべきでしょうか? 

中国の政府・英字紙Global Timesが,北朝鮮やインドのミサイルをどう扱ったか,そして,南シナ海の領土紛争とアメリカの関与をどう扱ったか,を考えると,同じ「ミサイル発射」や「領土紛争」でも,異なった意味を持つことがわかります.

Global Timesだけでなく,Wall Street JournalThe Economistも,日本政府がミサイルを撃墜する姿勢を示したことに,特別な関心を示しました.貿易と投資,インフラ整備のための政府借款だけでなく,アジアの安全保障に関しても,日本は積極的な姿勢を示して,交渉に参加しつつあるのです.(日本における報道は,田中防衛大臣の失態や,ミサイル発射の情報が遅い,など,幼稚で愚か,という印象でした.)

石原慎太郎の尖閣諸島買収計画について,Global Timesは意外に穏当な対応策を唱えています.たとえば,中国国営放送が釣魚島を天気予報の画面に含めるとか,学校で歴史をもっと詳しく教えるとか.(台湾と一緒に大挙して漁船で押し寄せ,島を占拠する,という対応ではありません.)むしろ,これは日本の右派政治家によるナショナリズム高揚を狙った政治宣伝だ,と批判します.その姿勢に,日中政府間で,領土問題をナショナリズムのエスカレーションに結びつけない,という合意ができていると感じます.それは,中国政府自身が,国内の若者の間に,インターネットを介してナショナリズムが高まることを警戒しているからでしょう.

もし中国において日本製品・企業への不買運動や反日デモが広がれば,確かに,日本国内でも右翼政治家の発言が注目され,既存の政治指導者や政党を非難する強硬派が影響力を強めるかもしれません.それはReviewの読者に,フランス大統領選挙(「フランスは小さな島になった」)や,アメリカ大統領選挙(「あるときは大言壮語,あるときは支離滅裂,またあるときは,機能マヒ.」)を連想させるでしょう.

私が思い浮かべたのは,キッシンジャーとスコウクロフトが指摘した「戦略的安定性の破壊」,という警告です.多くの国が核兵器や弾道ミサイルを得た世界では,アメリカとソ連だけが多くの核兵器を配備して,安全保障の傘を同盟諸国に広げた世界よりも,核戦争の危険がはるかに高い,と冷戦の戦略家たちは考えるはずです.

同時に,アメリカの退役軍人が年に6500人も自殺するほどの心的障害を抱えて,イラクやアフガニスタンから帰還しています.戦略家にとって,「受け入れられないダメージ」を与える報復とは何でしょうか? すでに,アメリカの多くの家族はそれを受けました.アジアでは,日本政府・企業も,欧米諸国や韓国,台湾と競争して,インフラ整備と工業力移転を進めました.成長するアジアの中産階級市場に向けて,日本企業も製品輸出や現地工場を増やしています.円滑な融資やパニックの回避は,共通の安全保障と言えるでしょう.

「平和」や「国益」というのは,どのように決まるのか? 中国は,日本やアジア諸国と一緒に,安全保障に参加しないのか? アメリカによる核の傘で,確実に日本を守れるのか? あるいは,「不戦条約」の理想が実際に信頼される時代が来るのか? ・・・それらは,いずれも未来へのシナリオとして意味があり,それを強く信じる人たちが増えるなら,実現する可能性を持ち始めます.

強大な軍事力の整備計画として,緊密な相互の貿易・投資協定と多国間の不戦条約として,理想を唱えて失敗した軍人や政治家が歴史の各層に多く眠っています.私は彼らを非難しないし,軽視してはならないと思います.意見が対立することより,両極化を避けるべきです.

国内政治が分裂し,国際システムが弱いとき,小さな衝突や金融破たんが,予想を超えて急速に,大きな軍事紛争や恐慌へと拡大します.大国も,国際機関も,安定化に向けた強い姿勢を示さず,指導者や官僚たちは自分の地位を高め,守るために危機を利用し始めます.

領土紛争,資源・エネルギー開発,アジア各地を結ぶインフラ整備,海上輸送の安全,核兵器とミサイルの管理・抑制,直接投資と貿易自由化,金融システムの安定性,出稼ぎ労働者の権利,様々な分野の市場アクセス,失業と地域格差の解消,など,これから国境を超えて議論されるでしょう.

日本と中国は,衝突や紛争を繰り返しながら,安定化のためのメカニズムを築きつつある,と考えてもよいのでしょうか? 私はそのことを,日本や中国の政治家たちに真剣に考えてほしいのです.

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