前半から続く)

l  貧困と制度

WSJ March 16, 2012

The Poverty of Nations

By DALIBOR ROHAC

世界中に存在する貧富の差を説明するのは,地理や文化よりも,制度である.

なぜメキシコは貧しく,アメリカは豊かか? その理由はエンコミエンダの導入である.1521年にアズテク文明が滅ぼされた後,スペイン人は現地人に貢納のシステムを強制した.各エンコミエンダに現地人が割り当てられ,彼らは奴隷労働として使役された.

ヴァージニアやメリーランドでも,イギリス人入植者に荘園システムが強制された.しかし,このシステムは確立できなかった.なぜなら入植者には新世界に多くの他の機会があったからだ.北米の植民地システムは入植者に,少なくとも成人男性に,植民地の統治に関する発言権を与えた.

その結果,メキシコには,多数を犠牲にして少数者を裕福にする政治・経済制度が発達した.他方,アメリカには,多数を豊かにする制度が残った."Why Nations Fail" において,Daron Acemoglu and James Robinsonは二つのことを主張する.1.貧富の差を説明するのは,チリや文化ではなく,制度である.2.制度の違いは,しばしば,歴史的な事件の結果生じた.

現代でも,アメリカで最も裕福なビル・ゲイツは,10億人以上の人間の生活を変革するような製品を自分で創りだした.他方,メキシコで最も裕福なカルロス・スリムは,以前の国営電話会社を買収して,増大する電話通信需要に対する独占的な利益を集めてできたものだ.

Acemoglu and Robinsonは,二つの制度を区別する.「内包的"inclusive"」制度と「抽出的"extractive"」制度である.政治制度が「包括的」であるとき,所有権,法律,秩序が守られ,広く参加が認められる.対照的に,制度が「抽出的」であるとき,社会の一部から他の一部へ,所得や富が抜き取られる.

19世紀のロシアやハプスブルク帝国は「抽出的」政治システムであった.そして,経済機会を拡大するような変化を拒んだ.メッテルニヒの顧問であったFriedrich von Gentzの言葉が引用されている.「多くのものが豊かになることなど,われわれは決して望んでいない.・・・そんなことになったら,われわれはどうやって彼らを支配できるだろうか?

経済成長をもっと深いレベルで理解するためには,われわれは新古典派経済学を超えて,信念や文化規範,社会の諸価値を形成するものについて,経済に及ぼすその効果について,議論する必要がある.

FP Monday, March 19, 2012

Why economic prosperity is still something of a mystery

Posted By Daniel W. Drezner

なぜ南北の朝鮮はこれほど生活水準が違うのか? 韓国はポルトガルやスペインと等しく,北朝鮮はサハラ砂漠以南のアフリカに等しい.それは韓国の約10分の1だ.平均寿命が10年も短い.この差は第二次世界大戦後に生じた.両国は経済を組織する方法がまったく異なっているのだ.

しかし,Acemoglu and Robinsonの挙げたグラフを20年前まで延長すれば,違うものが見えてくる.第二次世界大戦後から1976年に毛沢東が死去するまで,南北の一人当たりGDPは全く同じように変化しているのだ.北朝鮮は中国よりも教育があり,より生産的で,開放的であった.

もしAcemoglu and Robinson1970年代に同じことを研究していたら,もっと違う議論をしただろうし,内包的と抽出的とを比較するのに苦労しただろう.1970年代は,商品輸出が好調であった.


l  イギリス予算案をめぐる論争

guardian.co.uk, Sunday 18 March 2012

My plea to George Osborne: let's have a budget for banks

Guy Hands

guardian.co.uk, Monday 19 March 2012

Britain's tax rules – now written for and by multinationals

Felicity Lawrence

guardian.co.uk, Monday 19 March 2012

It's full-steam ahead for George Osborne's inequality drive

Polly Toynbee

FT March 21, 2012

A Budget without economic significance

By Martin Wolf

FT March 21, 2012

Where is the promise of future hope?

By Matthew Taylor

FT March 22, 2012

Robbing selective Peter to pay for collective Paul

By Samuel Brittan

FT March 22, 2012

Economists will give the chancellor good marks

DeAnne Julius


l  世銀総裁の選考

FT March 18, 2012

End the monopoly: let’s make it a real World Bank at last

By François Bourguignon, Nicholas Stern and Joseph Stiglitz

国際機関のトップ人事における欧米の独占を終わらせる時だ.それは時代遅れであり,非生産的である.開かれた,効率的な選考手続きを決めるべきだ.

世界生産の半分以上を発展途上諸国がもたらし,すでに世界成長の大部分は彼らが実現している.60億から70億の世界人口を代表するのが彼らだ.国籍に関係なく,最も優れた人を選ぶべきだ.貧困を含むグローバルな課題に対して,信頼と信用,協力関係が何より重要である.

世界銀行の理事会は,数名の候補者リストを決める選考委員会を指名する.そして,世界銀行の投票ルールに従って最終選考すればよい.満たすべき基準は,経済政策担当者としての記録,専門的な学識においても非常に優れている,銀行と金融の世界になじみがある,外交的・経営的な技量,という点でIMFのトップと共通している.世銀総裁は,開発政策に関する確かな知識と経験が求められる.

この最後の条件は,発展途上諸国からの候補をよりふさわしいものにする.

WP March 20, 2012

A welcome piece of good economic news

By Michael Gerson, Published:

FP MARCH 21, 2012

Don't Hire This Man

BY SCOTT GILMORE

自分で選挙キャンペーンを始めているが,Jeffrey Sachsは世銀総裁にすべきではない.確かに,東欧の移行経済,アナン国連事務局長のミレニアム開発目標,などに関わり,Nouriel Roubiniが大いに推薦している.

第一に,彼には外交的な手腕が無い.活動家や運動家である.大使館の中ではなく,外で叫ぶ.また,彼には巨大な組織を運営する力が無い.世界銀行は13000人を雇用し,100以上の事務所を構え,1780億ドルの資本を持つ.また,彼は時代の変化にそぐわない.現代の開発は,政府援助ではなく直接投資と貿易によって決まる.Sachsのミレニアム・ビレッジ計画は失敗だ.彼は「ビッグ・プッシュ」の発想から逃れられない.開発のために介入することは限界がある,と認める機敏さも謙虚さも彼にはない.


l  アメリカの増税論争

WSJ March 18, 2012

The U.S. Cruises Toward a 2013 Fiscal Cliff

By ALAN S. BLINDER

FT March 19, 2012

Obama’s tax hikes threaten a new US recession

By Martin Feldstein

guardian.co.uk, Tuesday 20 March 2012

Paul Ryan's deficit-cutting mania: the real agenda

Dean Baker


l  アフガニスタンの無差別殺人事件

NYT March 19, 2012

When the Good Do Bad

By DAVID BROOKS

善良な市民が大量無差別作人を犯すのはなぜか? アフガニスタンで市民16人を殺戮したRobert Balesもそうだ,と友人たちは語っている.

人間の性質を善良なものだと考えるから,その変化を意外であると感じる.しかし,人間も他者を淘汰して生き延び,繁栄してきた生物だ.むしろ,生まれながらの殺戮者である.彼らが殺戮を始めたことではなく,殺戮を思いとどまらせているものは何かを考えるべきだ.共感や自制心が弱められるような条件で生きている者は,殺戮(の想像から行動)に向かう.

連続殺人犯はしばしば魅力的な人物であるが,世間では受け入れられない強い主張を持っている.階級や地位を強く意識し,それに十分な敬意を払わない人々に悪意を増大させる.

WP Tuesday, March 20, 2012

Five disasters we’ll face if U.S. retreats from Afghanistan

By Marc A. Thiessen


l  イラク戦争の教訓

FP MARCH 20, 2012

Top 10 Lessons of the Iraq War

BY STEPHEN M. WALT

イラク進攻から9年.アメリカ国民は撤退を支持している.イラク戦争の教訓とは何か?

1.  アメリカは敗北した.サダム・フセインは大量破壊兵器を持たなかった.アメリカは戦争目的を親米民主主義体制の構築に変えたが,それにも失敗した.そのコストは予想をはるかに超え,しかも世界中でアメリカが嫌われた.今でも戦争を主張する者たちは,この教訓を忘れるな.

2.  アメリカを戦争に向けて操縦することは難しくない.アメリカの経済はイラク戦争にも損なわれなかった.アメリカは戦争を選択できる国だ.イラク戦争を実現した人々がどれほど少なかったか,ということを忘れるな.Thomas Friedmanは,25人を島流しにできたら,イラク戦争は起きなかった,と述べた.

さらに,3.アメリカで自由な論争が抑圧された.4.イラク社会の成熟度を見誤った.5.亡命した野心家の言葉を真に受けた.6.占領は難しい.7.反対する者は必ずいる.8.ゲリラ掃討は野蛮だ.9.計画は答にならない.10.戦術や方法ではなく,全体の戦略を再考せよ.


l  ドイツの成長モデル

SPIEGEL ONLINE 03/21/2012

'We Need To Learn from Germany'

How the German Economy Became a Model

By Thomas Schulz in New York

かつて時代遅れと言われたドイツの経済モデルが見直され,今ではアメリカの将来のために求められている.ドイツは,労働時間の短縮によって失業を抑え,不人気で苦痛の多い社会福祉や労働市場の改革を進めた.特に,職業訓練は重要だ.


l  北朝鮮

LAT March 21, 2012

Not the same old North Korea?

By Michael J. Mazarr

WSJ March 21, 2012

You Can't Teach a New Kim Old Tricks

By ANDREI LANKOV

WSJ March 22, 2012

Playing Pyongyang's Games

By MICHAEL AUSLIN


l  ロシアとシリア

FT March 21, 2012

Greece could replace Syria as Russia’s Mediterranean friend

Ian Bremmer

なぜロシアはこれほどシリアを強く支持するのか? それはギリシャが役に立たなくなれば(EUに救済されても),この地域におけるロシアの拠点を,経済的にも軍事的にも,シリアに求めたいからだ.エネルギー供給の長期確保と交換に軍事基地をシリアに要求する.ギリシャ政府にはそのような交渉ができないだろう.

今は無理だろうが,将来,ギリシャ政府はロシアとの交渉をEUとの取引材料にするかもしれない.


l  コミュニティーの回復

Project Syndicate Mar. 21, 2012

Why Fair Trade?

Robert Skidelsky

「フェアトレード(公正貿易・取引)」には長い歴史がある.単なる保護主義と批判されることもあるが,イギリスの現代の運動Fairtrade Fortnight”には有意な目的がある.仲介業者の取る大きな利潤を排除して,発展途上国の農民に支払う価格を引き上げる,というものだ.

その仕組みは,合意された労働・環境基準(最低賃金や農薬の使用禁止)を守ることに対して,補償された価格を支払う,ということだ.貧困国の農業協同組合はFAIRTRADE Labeling Organizationからフェアトレード・マークを得て,スーパーなどで高く売れる.

1980年代から運動は急速に広がり,1997年にはイギリス下院がフェアトレード・コーヒーしか飲まなくなった.2007年末に,600以上の生産団体,58か国の150万人以上の農民が参加している.しかしそれは,ココア,茶,コーヒーなどの世界貿易のわずか1%にも満たない.

価格変動の激しい一次産品に商品在庫を設けることは,1942年にJ.M.ケインズも提案した.農民の所得が安定し,一次産品価格の下落傾向を指摘したR.プレビッシュの理論が,最近の価格上昇で否定されたように見えるが,問題は解決されていない.他方,自由貿易論者はフェアトレードを批判し,農民たちの生産多様化や機械化を妨げる,貧困の維持につながる,という.また,フェアトレードの製品の質は,市場で販売されるものより悪くなる,という.

経済学の支持は得られないが,フェアトレードは続くだろう.フェアトレード運動は無慈悲な価格引き下げや消費礼賛を批判する.コミュニティー回復の行動主義である.

guardian.co.uk, Thursday 22 March 2012

The British high street is dead – let's celebrate

Wayne Hemingway

どの町も同じような店が並ぶ,退屈なタウン・センター(中心地)ばかりなのは,大型のチェーン店が資金力によって土地を支配したからだ.彼らがつぶれて土地が解放されるのは大歓迎だ.若者たちが起業する機会を拡大してくれたら,町は活気を帯びて変化し始める.創造的なコミュニティーが協力して,空き地を再開発した例がある.劇場,クラブ,ギャラリー,カフェ.人が集まって,楽しむことができる場所になるように,独立した店が競い合う.インターネットで買い物することが,すべてを満たすとは思わない.

バンクーバーやコペンハーゲンを見よ.政府がインフラを整備するのを待つのではなく,小さな店が働く街にするため,足を運ぼう.我々がギャラリーやカフェに通えば,退屈な大型チェーン店の廃墟が,自分たちの町としてよみがえる.


WP Thursday, March 22, 2012

French attacks highlight the country’s immigrant challenge


l  欧米金融政策と政治

FT March 22, 2012

The Fed and ECB should be trading places

By Sebastian Mallaby

前例のない金融緩和の試みは,今後,続けられるのか?

「ドラギの介入はヨーロッパの問題の緊急性を解消した.しかし,ECBの新しい行動主義が,大胆な政策をさらに拡大して,慢性的疾患の治療に及ぶかは,まだわからない.ヨーロッパの周辺諸国は,債務が多すぎるし,競争力が無い.もしECBに金融緩和をさらに拡大し,ドイツのインフレ率を引き上げても続けるだけの強い意志があれば,ユーロ安という形で,競争力の問題を裏口から解決できる.」

他方,アメリカの連銀が金融緩和の継続に慎重であるのは,経済的な理由によるものではない.1990年代でも連銀は政治圧力に敏感であった.共和党の「連銀廃止」を唱える金至上派が勢いを増す現在では,さらに慎重になっている.共和党の右派は,アメリカ版「ドイツ問題」を創造しようとしてきた.この政治を無視して,正しいことを行うには,連銀がタフな意志を持たねばならない.そうでないとしたら,何百万ものアメリカの労働者たちが失業したまま,さらに長く耐えるしかない.


WSJ March 22, 2012

What's Killing Japanese Electronics?

By RICHARD KATZ

日本の電機会社は軒並み赤字を出している.彼らは円高を非難するが,問題は経営にある.製品の開発と変化に対応できず,商品の売込みにも失敗した.韓国企業と対比すればわかる.損失を出す分野から撤退が遅れるのは企業構造によるものだ.オーディオ・ビデオ時代の繁栄は,デジタル時代の衰滅をもたらした.東京の若者たちもAppleに集まり,Sonyには来ない.

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The Economist, March 10th 2012

The dream that failed

Innovation in China: From brawn to brain

Japan after the 3/11 disaster: The death of trust

Taiwan, America and meat wars: Gored

The National People’s Congress: Satisfy the people

Banyan: The Buddha and the tigers

Manufacturing: The end of cheap China

Brazil, Mexico and trade: Two ways to make a car

Charlemagne: Mario, put on your toga

(コメント) 潰えた夢,というのは,原子力エネルギーが約束したはずの豊かな未来です.福島原発事故によって,電子力への期待は失われました.特集記事もありますが,何やら,説得的とは思えません.原発はすでにコストが計算できなくなって,民間企業で取り組む者はいないのです.

日本の震災から1年を描く記事は,空き地に注目します.被災地の復興は遅い.中央政府の怠慢,官僚のセクショナリズムと省庁の決定がそろわないこと.企業はエネルギーの自給に向かい,生産拠点を海外に移転し,国民は政府を信頼しなくなる.政治への幻滅と不満が強く,大阪の橋下人気が本物なら,円からの逃避も本物になる? 第二次世界大戦の敗戦に似ている.

台湾やチベットに関する考察も,何か他人事とは思えませんが,やはり中国に関する記事が面白いです.賃金上昇は何を意味するのか? 企業は中国から離れるのではなく,一部の低賃金労働力に強く依存する企業だけが貧しい国へ移り,多くの企業は中国沿海部に留まる.特に,中国の市場としての魅力,部品産業の集積やインフラ,膨大な労働力の供給は今もここにしかない.

イタリアの首相が,イタリア財政の立て直しに成功しただけでなく,優れた外交力を発揮して,EU内の政治交渉を再生させたことを称えています.緊縮財政協定を決めたなら,経済成長協定も決めてドイツを説得しよう.ドイツ,フランス,イギリスに同意できる分野を示して交渉に参加させた.

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IPEの想像力 3/26/12

小宮山厚生大臣が京都のみやこメッセで「税と社会保障の一体改革」の説明をする,というので参加してみました.何が記憶に残っているか,と言えば,私にとっては三つです.

1.「曾孫の代まで先取りしている.」

つまり,この年金は積立ではなく,賦課方式なのです.自分が払った年金を自分が受け取るのではなく,年金制度への加入者が一定の掛け金を払い続け,資格を満たす者には一定の年金を支給してくれる.もし支払額(あるいは受給者)が多いのに掛け金を上げない(支払う人が減る)と,赤字になるわけです.

これだけなら,給付と負担とをバランスしなければならない,という話です.まあ,それも簡単ではないと思いますが.

その上に深刻であるのは,子供の数が減って,平均寿命も延びた上に,成長率が下がった(所得が増えない,あるいは,富裕層と貧困層が増えた),ということです.子供の数が多ければ,老人への年金給付を負担するのも簡単です.65歳以上の老人1人を,1965年には労働者9.1人が支え,2012年には2.4人が支え,2050年には1.2人が支える,というので,胴上げ型,騎馬戦型,肩車型,と呼んで解説しています.

これは大変でしょう.特に90年代以降(バブル破裂後),国が借金を保証するか,赤字を税金で補てんするようになってしまいます.結局,今の老人は曾孫の支払う年金を受け取ってしまっている,というのです.・・・それは早く止めてもらいたい,と私も思いました.

2.「ギリシャになるとは思わないが,国際的な責務がある.」

今,払っている若者は,将来の年金を受け取れないのではないか? という質問がやはり出ました.バランスできないまま年金制度が崩壊して,赤字の大きい団体は年金支給額を大幅に減らす,といったようなことになるのではないか? と思いました.

年金・社会保障制度を立て直さないと,それを政府が肩代わりするしかない.どうせ政府が肩代わりするなら,いくらでも赤字にして良いのだ,と思ってしまう.しかし,赤字を税金で埋めることは国民も支持しない.すると解決は先延ばしになり,国債で埋めることになる.その結果,財政破たんが深刻になるから,ギリシャのように政府が信用を失って,金利が上昇し,債務が雪だるま式に膨張し始める.よほど厳しい緊縮策を取るか,それができないときは,インフレを起こして債務を帳消しにするのがよい,という議論が出るはずです.

私などは,物価が緩やかに上昇する,リフレ政策を支持しますが,インフレが加速して(円安も)止められない,という状態と区別はつかないのだ,という反対があるわけです.

小宮山大臣が答えていたのは,ここで消費税を上げる政府の姿勢を示すことが,たとえすべての赤字を解消するまでにはならないとしても,債務を減らす力がある,と市場に示すことになる,という点だったと思います.その通りでしょう.

3.子ども・子育てへの支援+貧困・格差対策 ⇒ 少子化対策,成長政略

以上の2点は自民党でも公明党でも,社民党や共産党でも,同じように主張すると思います.その解決策をどう設計するか,において異なったやり方を論争することは重要です.どんどん審議して,よいアイデアを競ってほしいです.

民主党が政権を取った意味は,さまざまな政策の考え方を転換する点にあったはずです.貧困・失業・少子化・子育て,というテーマこそ,消費税引き上げと社会保障制度の全体を組み換えるとき,それを指導する基本思想なのだ,と感じます.もっと,そのことを主張してください.

働きたくても仕事が無い,働いても賃金が余りにも安い,雇用が短期,不安定で,すぐに解雇される.将来の生活が不安で,結婚もできない.子供を育てる力もない.若い人が非常に苦しんでいる.そうだとしたら,もっと雇用や就労の在り方を変えてほしい,起業や転職・再雇用もスムーズにできる,失業を恐れない,正規・非正規の差別的な扱いを許さない,そして,再教育や就労支援が本当に役立つように,制度を変えていくべきだと感じます.

社会保障制度が新しい労働者たちの長期的生活設計を支援し,企業や経済の成長にもプラスになるなら,その他の多くの問題にも積極的に取り組む条件となるでしょう.日本には素晴らしい社会保障制度があるから,その他の革新が促された,と言えるようになってほしいです.

お話を聞いて,そんなことを考えたら,支持したくなりました.

私にとって,それは東北被災地への調査旅行の最後でした.「ダムから人へ」という思想を東北で実現しなければなりません.無駄な公共投資を抑えて,民間の投資と雇用を拡大できるような,新しい社会保障の素晴らしさを,被災地でこそ証明してください.

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