前半から続く)

l  繁栄をもたらすもの

NYT March 10, 2012

Pass the Books. Hold the Oil.

By THOMAS L. FRIEDMAN

よく聞かれるのだが,「あなたが一番好きな国は,自国以外に,どこですか?」というと,私は「台湾」と答える.なぜか?

台湾は,台風の来る海の中に,何の資源もなく突き出した岩の塊だ.しかし,世界で4番目に大きな金融資産を持つ.彼らは地中を掘っても何も出てこないから,2300万人の国民が持つ才能,エネルギー,知性を耕した.彼らが築いた,民衆のスキルを高める文化こそ,世界で最も貴重な,尽きることのない資源である.

ずっと前からエコノミストたちは「オランダ病」に気付いていた.石油や資源輸出に頼る国は,通貨価値が高まることで安価な輸入品が流入し,競争力を失って輸出もできない製造業を破滅させることだ.同様に,資源に頼る国は,学ぶ情熱を失ってしまう.優れた教師も要らない.

21世紀の世界通貨は「知識」である.学校や生涯学習に投資しない社会は衰退する.この世界であなたが前進するかどうかは,あなたの机を観ればわかる.

NYT March 13, 2012

Capitalism, Version 2012

By THOMAS L. FRIEDMAN

21世紀の資本主義に求められるのは,公的部門と民間部門との正しい関係・バランスである.政府は,制度,ルール,セーフティーネット,教育,研究開発,インフラを提供して,民間部門の革新や投資,リスクを取る姿勢を支援し,成長と雇用をもたらす.政府か,市場か,という単純な選択ではない.


l  アフガニスタン撤退

FT March 12, 2012

A deal with the Taliban is the only way out

By AhmedRashid

アメリカとNATO15万人が撤退を求められるだろう.タリバンとの権力共有と,近隣諸国との合意が必要だ.

WP Tuesday, March 13, 2012

Bring home the troops now from Afghanistan

By Eugene Robinson

guardian.co.uk, Tuesday 13 March 2012

Massacres are the inevitable result of foreign occupation

Seumas Milne

FP MARCH 13, 2012

Mission Incomplete

BY BRUCE RIEDEL, MICHAEL O'HANLON

FP MARCH 13, 2012

What happens to NATO after Afghanistan?

Posted By David Bosco

NYT March 12, 2012

Horror in Kandahar

FT March 14, 2012

War in Afghanistan: From necessity to atrocity

By Matthew Green

WP March 14, 2012

How to end the Afghan mission

By David Ignatius


l  イランの抑止

FP Sunday, March 11, 2012

Top ten media failures in the Iran war debate

Posted By Stephen M. Walt

WP March 15, 2012

Deterring Iran is the best option

By FareedZakaria,

自分が学生だったとき,1980年代初めに,「抑止なんて嘘だ」と学生たちはレーガン政権のCaspar Weinberger国防長官に抗議の声を上げた.

今は,イスラエル政府や,アメリカ中の保守派シンクタンクが,同じように抗議の声を上げている.「抑止なんて意味がない.」・・・浴し,というのは受け入れるのが難しい考え方だ.本能に反する.破壊の予想が平和をもたらす.しかし,その歴史的な証拠は豊富にある.そして,1989年,サッチャー首相はゴルバチョフを歓迎する晩餐会で,乾杯のあいさつをした.

「両国は苦しい経験から共に学んだ.通常兵器はヨーロッパの戦争を防げなかったけれど,核兵器は40年以上にわたってそれに成功した.抑止に代わるものはない.」


WSJ March 12, 2012

Is North Korea Ready for a U-Turn?

By CHUNG MIN LEE


guardian.co.uk, Tuesday 13 March 2012

Don't believe bankers' warnings about a Robin Hood tax

Avinash Persaud


l  人口問題

NYT March 12, 2012

The Fertility Implosion

By DAVID BROOKS

FT March 14, 2012

The end of Asia’s demographic dividend

By David Pilling

YaleGlobal, 14 March 2012

Children of China's Future – Part II

Karen Eggleston, Jean Oi, Scott Rozelle, Ang Sun, Xueguang Zhou


BLOOMBERG Mar 12, 2012

Iceland’s Big Trial, Travesty of Justice: Hannes H. Gissurarson

By Hannes H. Gissurarson


l  信頼,文化,主権

Project Syndicate 12 Mar 12

Europe’s Trust Deficit

Barry Eichengreen

ヨーロッパではさまざまな赤字を埋めることが議論されているが、それらはヨーロッパの制度の欠陥を示している。単一通貨と中央銀行はあるが、通貨同盟が必要とするそれ以外のものがない。

しかし、こうした赤字(不足)は重要ではない。ヨーロッパを危機から抜け出せないようにしている赤字とは、信頼の不足である。

第一に、政治指導者と大衆との間に信頼が不足している。ベルルスコーニが典型であった。他の指導者たちも、言うことがころころ変わる。

第二に、ヨーロッパ諸国間で信頼が不足している。ドイツなどが南欧諸国に大規模な支援をしないのは、彼らが支援された諸国の改革を信頼していないからだ。多くの支援を与えれば、改革を止めてしまう、と疑っている。だから、最低限の支援しかしない。危機がすぐに再発する。

第三に、犠牲を求められる社会集団間で信頼がない。イタリアのタクシー運転手は薬局の薬剤師が同様に犠牲を受け入れるなら自分たちの競争と収入減少を受け入れたであろう。しかし、薬剤師が規制を維持できるなら、自分たちの犠牲は彼らの利益を増やすだけだ。

社会的な信頼がなければ改革はできない。ギリシャではこのジレンマが特に深刻だ。信頼は社会によって大きく異なっており、エコノミストたちは、それが歴史的な起源を持つ、と考えている。

500年前にマイノリティーが迫害された地域では、最近でも、エスニックや宗教による対立が激しい。オスマン帝国に支配されたバルカンの諸地域では、その近くにある、より統治に成功したハプスブルグ王朝に支配された地域よりも、政府に対する信頼が低い。また、放牧よりも、農業を行う住民がいた地域のほうが、より広い協力を組織し、その現代の子孫たちも信頼の影響をとどめる。

こうして、明らかに態度は世代を超えて継承される。社会はこうした文化によって形成される。しかしまた、経路依存性は、例外的な変化の「窓」を開くことがある。危機においては、確立された社会の枠組みが崩れ、そうした変化を可能にする。

それゆえユーロ危機は、ヨーロッパが信頼を築くチャンスなのだ。各国の指導者たちは、もっと明確な言葉で語り、有権者との信頼を築くべきだ。EU加盟諸国は相互の信頼を必要とする。そして、構造改革が必要な諸国では、国内の社会的信頼感を高めるべきだ。

この機会を逃すなら、たとえ不可能ではないとしても、ヨーロッパがその財政・経済・制度の不足を解消するのは難しいだろう。

Project Syndicate 12 Mar 12

Whose Sovereignty?

Javier Solana

ギリシャへの融資に関して,ギリシャの主権を損なった,という批判がある.そうだろうか?

国民国家の主権という考えの起源は17世紀,ウェストファリア条約にさかのぼる.各国の国内問題に干渉しないことが国際関係の基本原理になった.しかし,この原理を厳密に追求すれば,各国は互いに物質的・社会的な孤立を維持しなければならない.国家主権を極端に主張すれば,どのような国際条約も成立しない.それは政治的あるいは経済的な主権の移譲を含んでいるからだ.

EU加盟諸国はギリシャ政府に1300億ユーロの融資を行うだけでなく,民間債務を50%カットし,ECBはギリシャ債券に対する収益を放棄した.国際社会における集団的な生活を受け入れるなら,それは主権の一部を失うことである.あるいは,EU加盟国は,グローバルな影響力を得るために,主権の一部を放棄したのだ.

ウェストファリアの主権に戻ることが答にはならない.


l  Goldman Sachsへの批判

NYT March 14, 2012

Why I Am Leaving Goldman Sachs

By GREG SMITH

Goldman Sachsの幹部が辞任し,その理由をNYTに公表しました.世界最大の投資銀行の一つが顧客の利益を実現するより,自分たちの利益を増やすために,彼らを利用し,「操り人形」とバカにしていることを告白し,かつての企業文化は失われた,と嘆いています.

guardian.co.uk, Wednesday 14 March 2012

Beyond Goldman Sachs: the nasty culture

Joris Luyendijk

FT March 14, 2012

The ‘Vampire Squid’ spills its ink

By William Cohan

こうした告白が出現したことが最も意外である.Goldman Sachsは,もっと広報に力を入れるべきだろう.

guardian.co.uk, Thursday 15 March 2012

Why Greg Smith was right about Goldman Sachs

Larry Elliott

FT March 15, 2012

Goldman’s ‘muppets’ need treating like true clients

By Frank Partnoy

FT March 15, 2012

Mr Smith goes to Wall Street

BLOOMBERG Mar 14, 2012

Yes, Mr. Smith, Goldman Sachs Is All About Making Money: View

BLOOMBERG Mar 15, 2012

Why Joe Nelson Left Goldman Sachs: The Ticker

By William D. Cohan –


guardian.co.uk, Thursday 15 March 2012

The poor: always with us, necessarily not us

Barbara Ehrenreich for TomDispatch, part of the Guardian Comment Network

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The Economist, March 3rd 2012

How to rig an election: Weighing the votes

China’s capital control: Set the money free

The politics of economic reform: The bees get busy

The economics of reform: Stroking the furnace

Companies and productivity: Small is not beautiful

Charlemagne: Tough talk, no strategy

Japan’s currency: Wonupmanship

(コメント) 投票を操作する,あるいは,不正選挙,が民主化の要求にこたえる独裁者の対策です.あるいは,民主的な独裁者の基盤でもあるわけです.ロシアが念頭にあるのでしょうが,北朝鮮の99.97%という投票率で全員が当選する,という「選挙」もすさまじいですが,もっと「現実的な」不正選挙を,支配者たちに指南しています.

1.テレビを押さえる.しかし,叩き潰してはいけない.弱小で,資金不足の反対派は容認する.しかし,メイン・ニュースの主役は自分たちだけだ.そしてテレビは,あなたの勝利を称え,あなたの立派な政治家としての人柄を紹介する.スポーツや慈善事業も紹介すればよい.

2.反対派は,外国とつながりがあり,資金を得ている.国家に忠誠ではなく,よそ者だ.分断を促し,個人の弱点を公表する.もちろん,あなたの情報は国家機密だ.

3.選挙区を操作する.アメリカでも盛んにやっていることだ.反対する者の選挙区は寄せ集めて,あなたの支持者だけに選挙区を書き直す.なんなら,あなたを支持する囚人や軍人にも投票させる.

4.政党の条件を認定する法律はあなたが握る.嫌な候補者は,どれほど些細な書類の不備でも,その候補資格を失う.あなたが好きな反対政党を育てておく.

5.投票日には,外国人やジャーナリストが選挙を監視するように招く.細かい点までやかましい者も,最後の瞬間だけ呼べばよい.外国資金による選挙監視の信用できないことを国民に注意する.

6.選挙運動はあまりしないほうがよい.国家のために多忙を極めるあなたは,選挙にかまっていられない,などと言っておく.

7.投票日には,貧困地域に無料の食事を与え,酒もふるまう.あなたに反対する者がいる地域では,投票所を遅く開き,早く閉じてしまう.投票用紙は足りなくなり,人々は投票所に続く長蛇の列で待つしかない.

8.それでも結果が心配なら,あらかじめ投票した用紙の詰まった偽の投票箱も用意しておく.今ではコンピューターで集計するから,結果を操作するのはもっと簡単だ.・・・

さて,中国についての記事があります.その内容より,中国政府・政府機関もしくは指導部のメンバーが世界銀行と協力して改革を促す報告書を作成していることが興味深いです.

また,どこの国にも中小企業を保護する政策,制度,補助金があります.しかし大企業に比べて,中小企業の生産性は低く,ユーロ危機の原因となった南欧諸国の競争力低下をもたらした,と記事は批判しています.

EUが軍事力を持たず,「制裁」を武器に外交を展開することに限界を指摘します.また,日銀の政策が円安をもたらし,円高で韓国企業に市場を奪われた日本企業の苦境を緩和している,と言います.金融政策はドルやユーロに注目しているけれど,企業にとってはウォンが重要なのです.

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IPEの想像力 3/19/12

日本政府は消費税引き上げと社会保障制度の見直しを進めている.日銀はデフレ脱出の戦略を示し始めた.震災からの復興を目指す人々の願いが,バブル崩壊後の「瓦礫」をも処理する力になるのでしょうか? 内閣府のホームページを観て,私は日本政府・官庁が示す様々なプログラムや制度に励まされました.

私の「果樹園」では,ご覧のように,Barry EichengreenDani RodrikThomas L. Friedmanが繰り返し登場しています.他にも常連の「思想家」(革新的なアイデアを提示する者をそう呼ぶなら)が何人かいます.ここに更新した「今週のReview」でも,Eichengreenは「信頼」や「文化」が「危機」を契機として制度やガバナンスが変わり,飛躍をもたらす,と議論しています.またRodrikは,全体として富を増やすような貿易や技術変化,投資による競争であっても,その分配上の効果が,それをもたらす過程において公平でなければ受け入れられないことを指摘します.

そうだ,と私は思いました.これこそ被災地に生きる人たちが感じていることではないでしょうか? 彼らの感覚を,その苦しみを,無念さを,憤りを,結晶するための優れたアイデアを,彼らは提示してくれている,と.

実際,もし復興庁が国会のそばになければならないというのであれば,復興庁の若手職員はできるだけ被災地から採用し,国会には被災者の代表からなる復興委員会を常設するべきでしょう.そして主要な会議に彼らの代表を臨席させて,政治家たちは被災者に対する説明責任を果たしてはどうでしょうか? 審議内容が被災地の現実を無視している,あるいは,正しく理解していない,と思えば訂正を求めるでしょうし,そのことを国民や被災地に伝えるでしょう.

Washington Post に投稿したYoshihiko Nodaは,アメリカ人が読みたいと思う,被災地や日本の積極的な復興イメージを表現しています.そういう意図で書かれた文章なのでしょう.野田総理という人は,弁は立たないけれど,まっとうなことを誠心誠意訴える点で,優れた指導者になるかもしれません.しかし,現実の復興はまだまだこれからであるのに,このような文章を載せるのは納得できない,と思う人が被災地には多くいると思います.

Eichengreenが述べたように,ユーロ危機の源泉は「信頼の欠如」なのです.政治家は国民から信頼されず,近隣諸国が互いを信頼できません.そして,改革に伴う痛みを受け入れない点で,社会の各集団が互いを信頼できず,それは分配上の公平さを指摘したRodrikと共通しています.これは被災地を代弁し,野田首相と日本国民について言われたことでもあるはずです.

沖縄の米軍基地問題も,消費税と社会保障制度の一体改革も,TPPも,被災地の復興も,明るい側面を強調するYoshihiko Nodaの考えだけでは受け入れられません.厳しい現実を直視する中で,政治の求心力を発揮し,「信頼」や「文化」を再生して初めて言えることです.もっと国民に向けて語りかけ,被災地に立って,人々の中で発言することが重要です.

せめてラジオで,被災地からの手紙を読んでもらい,彼らにこたえる努力を始めてはどうでしょうか?

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BSTBSで「開高健の遺した言葉」を観ました.特に記憶に残ったのは,「漂えど沈まず」と「助けてくれ」です.開高は,戦後の焼け跡を最初期の作品に描き,ノンフィクションにも多くの優れた仕事を残しました.東京オリンピックやベトナム戦争の中で人間を観察し,それを小説にしたのです.

しかし,ベトナム戦争の経験はあまりにも強烈で,それを作品として昇華することはできなかった,という印象を受けました.開高は人間不信の傷を抱えたまま,釣りに(そして食や酒に)逃れ,モンゴルの自然を賛美したようです.文学にはいろいろあり,100人の文学者がいたら100の文学があるけれど,共通しているのは,「助けてくれ」という叫びだ,という文学観が痛切です.闇三部作は完成せず,198912月に亡くなります.彼が書くはずだった最後の闇は,バブルに酔い,その後に迷走した日本であったかもしれません.石原慎太郎が無神経にも「罰」と呼んだ,大震災の街を歩いて,開高なら書けたノンフィクションを読んでみたい,と思いました.

Friedmanは,しばしば台風が襲う,海に突き出た岩で暮らす人々が繁栄を実現している<台湾>を称賛し,彼らを見習って,豊かな資源を持つ国も資源に依存するのではなく,たゆまず学ぶことを勧めています.大震災から日本が何を学ぶのか,まだ答えは出ていません.

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