IPEの果樹園2012

今週のReview

2/20-/25

 

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政治経済システムの抗争 ・・・中国の新権力者 ・・・共和党の大統領候補 ・・・シリア危機の打開策 ・・・ウクライナとロシアの革命 ・・・1930年代 ・・・ニクソン訪中40周年 ・・・米中対立と衰退論 ・・・ユーロ危機の先に ・・・グローバル市場と国家 ・・・Zoellickの世界銀行

 [長いReview]

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主要な出典 Bloomberg, China Daily, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, Global Times (China), The Guardian, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, Project Syndicate, SPIEGEL, VOX, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia, Yale Global そして、The Economist (London)


l  政治経済システムの抗争

FP FEBRUARY 9, 2012

We're All State Capitalists Now

BY NIALL FERGUSON

オバマとロムニーが選挙戦で一致している点は,唯一,アメリカの世界的な指導力が永久に続く,という主張だけだ.しかし,そんなことで勇気を示す競争なら,北京ですればよい.

中国の台頭はアメリカのパワーに挑戦している.アメリカにとって,問題は,どのように対応するべきか,だけである.ケナンが唱えたような「封じ込め」か,キッシンジャーが唱えるような「共生」か? 特に,アジア太平洋では,各国がアメリカよりも中国との貿易を増やしつつあるのだ.IMFの統計によれば,購買力平価でみたGDPは,あと4年で,中国がアメリカを抜く.

しかしある論者たちは,アメリカが直面するのは二つの経済モデルの競争である,という.すなわち,アメリカの市場資本主義と,中国の国家資本主義だ.かつて,1990年代に,アメリカ政府と国際金融機関は「ワシントン・コンセンサス」を各国に求めた.財政規律,赤字削減,課税ベースン拡大と減税,金利や為替レートを市場に委ね,貿易と資本移動を自由化する.1997-98年のアジア通貨危機はそれを怠った「クローニー・キャピタリズム」として非難された.

しかし,アメリカが大恐慌以来の深刻な金融危機を経験してから,中国はその衝撃を回避する能力を通して,新しい「北京コンセンサス」の可能性を示している,と思う者が増えた.ユーラシア・グループのIan Bremmerも,権威主義体制がもたらした国家資本主義の新しさに注目する.このシステムでは,国有企業が重要資源を開発し,雇用を創出し,維持する.特定の民間企業を選別してある部門を委ねる.いわゆる政府系投資信託が余剰金を集めて利益を最大化する.国家は,その政治的目的にふさわしい富を最大化するのだ.

Bremmerによれば,国家資本主義は自由市場を脅かすだけでなく,途上諸国の民主主義を脅かしている.それが拡大するかどうかは,中国に掛かっている.

しかし,中国経済はスターリンの始めた5か年計画を継承しているとはいえ,その重要な問題は市場変動がもたらしたものだ.たとえば,2009-10年の金融緩和が生んだ都市の不動産バブルをどうするか,新しい影の銀行システムが問題になっている.中国のエコノミストには,その解決には国家資本主義を一掃するべきだ,と主張する者もいる.人民大会堂を民営化すればよい,と.

結局,市場資本主義と国家資本主義とを対立させることには意味がない.政府の役割を否定するのは極端なリバタリアンだけだ.シリコン・バレーも,極限的な状況(戦争)において,マンハッタン計画のように,政府の示す方向と支援がその技術を実現した.真の問題とは,急速な成長をもたらすだけでなく,その成果を,公正な形で,市民たちに分配する点で,最も優れた法律や制度があるのはどの国か,ということだ.

国家が経済に占める割合をIMF統計で見れば,一方の極には,東ティモールとイラクがあり,その政府支出はGDPを超えている.他方の極には,バングラデシュ,グアテマラ,ミャンマーがあり,その割合は呆れるほどに小さい.中国の割合は23%であり,30年前の28%から低下した.183か国中の147位である.つまり,世界的に見て,政府支出の割合が低い国だ.ドイツは24位で,48%.アメリカは44位で44%である.国家資本主義とは,ヨーロッパのことであって,アジアではない.

政府の消費はヨーロッパが世界をリードし,政府の投資では中国が世界をリードしている.世界銀行によれば,GDP28%が中国の公的部門による資本形成である.これは世界最大だ.逆に西側のこの割合は消滅しつつある.むしろ西側の国家は財・サービスへの支出超過による借り手なのだ.ただし,中国の政府による投資は減少しつつある.

こうした投資が成果をもたらしただろうか? 世界経済フォーラム(WEF)が発表するグローバル競争力指数を観れば,2004年以来,アメリカの指数は5.82から5.43へ低下し,中国は4.29から4.90へ上昇した.同じWEFの世界企業重役による判断を観ても,所有権やガバナンスに関する15論点で,14についてはアメリカよりも香港が優れている.2論点では中国が優れている.アメリカが優れているのは投資保護だけであり,驚くほど低評価である.

国家が経済パフォーマンスに関係しているのは明らかだ.経済を効率的にし,同時に,レント・シーキングを最小化することが重要だ.我々は,今や,皆が国家資本主義者である.しかし,その中には様々な異なるタイプがある.シンガポールの開明的な専制国家もあれば,ジンバブエの機能マヒした独裁体制もある.デンマークの平等主義的な乳母国家から,Ron Paulの統治するテキサスのような個人主義の楽園まで.

富をもたらす経済制度と,それを規制し分配する政治制度をめぐって,欧・米・アジア間でも,地域内でも,激しく競争している.

NYT February 16, 2012

Why China’s Political Model Is Superior

By ERIC X. LI

習近平のアメリカ訪問に際して,多くのメディアが「民主主義対権威主義」の対抗を論争している.しかし,それは間違いだ.アメリカは民主主義を政治システムの目標と考えるが,中国の指導者たちは現行の政治システムをより重要な国家目標の手段としてしか考えていない.

数千年位及ぶ人類のガバナンスの歴史において,民主主義は主要な二つの実験を経てきた.一つはアテネであり,もう一つは近代西洋だ.アメリカの民主主義にはわずか92年の歴史しかなく,1965年の黒人投票権を支持する法律ができた後で数えるならば47年である.中国の王朝のほとんどよりも短いのだ.

なぜ,人類にとって最善の政治システムを発見した,などと主張する者が多いのか?

それは現在の民主主義の実験がヨーロッパの啓蒙主義に始まっているからだろう.彼らは二つの基本的な考えから民主主義を支持した.すなわち,個人は合理的である.個人には奪うことのできない権利がある.そして,初期において,産業革命と経済的繁栄,軍事力の爆発が西側世界に起きた.

しかし,その始まりから,民主主義の実験には致命的な欠陥が主張されてきた.たとえば,アメリカのフェデラリストたちは,民主主義ではなく,共和制を求めた.そして人民の意志を制約する多くの手段を用意した.もし,よく言われるように,カリフォルニアがアメリカの将来を示すなら,その将来とは,際限のない住民投票,政治の麻痺と支払い不能である.

アテネにおいては,絶え間ない参加の拡大によって,デマゴギーが政治を支配するようになった.現在のアメリカで,大規模なデマゴギーを動かすには金が要る.アメリカにおける立憲共和制など,名ばかりである.一人一票ではなく,1ドルが一票の政治だ.業界の特殊利益が有権者を操作する.減税と政府支出の拡大ばかりで,ときには自滅的な戦争まで支持した.

西側と中国との競争は,民主主義と権威主義との争いではない.近代西洋は民主主義と人権とを再考の目標にする.他方,中国は異なった道を進む.それが経済発展や国益にかなうものであれば,より多くの人間が政治的決定に参加することも許すだろう.1980年代に政治参加を拡大し,文化大革命のイデオロギー的な制約を克服したが,その行き過ぎは天安門事件を起こした.

民主主義は神が与えたものではなく,必要と国の状態に応じて交渉される特権である,と中国政府は考える.西側は,民主主義を抑えることが必要なときでも,それをイデオロギー的に拒むのだ.その意味で,今のアメリカはかつてのソ連と似ている.どちらも政治システムが究極目的である.


l  中国の新権力者

NYT February 9, 2012

Is China Ripe for a Revolution?

By STEPHEN R. PLATT

今から100年前,1912212日,6歳の幼児であった皇帝が退位して,2000年続いた王朝の最後であった明王朝は滅んだ.しかし,北京にこのことを祝う様子はない.今は共産党の指導体制が世代交代し,副主席であるXi Jinping習近平が主席となるはずだ.このようなときに過去の体制転換や王朝の崩壊は思い出したくない.

明王朝を倒したのは,海外からの軍事的・金融的な支援を受け,共和制のナショナリズムというイデオロギーを掲げる,高度に組織された革命軍であった.現在の共産党が恐れるのは,そのような脅威ではない.しかし,膨大な,未組織の,地方における反乱だ.

中国の経済成長は,繁栄する沿海部と貧窮する内陸部とのはなはだしいギャップを作りだし,地方政府における汚職の蔓延をもたらした.人々は怒っている.土地収用に抗議する老人から始まった武漢の反乱,チベットや新疆ウィグル,内モンゴルなど,数えきれない少数民族の反対が起きている.

それらはある意味で,新王朝が滅ぶ50年前に,事実上,王朝権力の終焉をもたらした太平天国の乱に匹敵する.その反乱には最大で2000万人が参加したと言われる.1850年代の中国南部も,今と同様に,経済の混乱と汚職,道徳的な真空状態が生じていた.地方には貧民があふれ,北京の王朝は彼らにとってあまりにも遠く,存在しないに等しかった.広東語を話す支配層と少数派の客家Hakkasとの間で土地の権利をめぐる武装闘争が起き,太平天国の乱は始まった.自分をキリストの最も若い兄弟であると信じるHong Xiuquan洪秀全が加わって,反乱は宗教的な信念を持つようになった.

注目すべきは,その運動が広まる迅速さと自然発生的な性格である.それは何年も準備した革命運動ではなかった.洪秀全たちが加わって正規軍を突破すると,反乱軍は北上するにつれて数十万の農民が加わった.反乱に加わることで失うものを何も持たないような,様々な絶望と困窮の中に暮らす者が多くいたのだ.太平軍はその年に南京を占領し,満州民族を虐殺し,内乱が終結するまでの11年間,ここを彼らの首都とした.

1950年代,60年代の子供たちは,学校で大変天国の乱を共産党の先駆け,洪秀全を毛沢東の先進的な先祖と教えた.しかし今,学校でそのように教えることはなくなった.中国共産党が革命的ではなくなったからだ.むしろ近年では太平軍が非難され,その迷信や党派的な暴力は社会秩序を脅かすものだった,と言われる.そして太平軍を弾圧した将軍,Zeng Guofan曽国藩は,何世代も,王朝の支持に走った裏切り者とされてきたが,その名誉を回復した.逆に,儒教的な忠誠心と自制心に富む理想的な歴史上の人物として,人気が高い.その弾圧姿勢は,今の中国政府がFalun Gong法輪功に対して採る政策に似ている.共産党政府は,地方のさまざまな反乱が必ず合同する,と恐れているのだ.

太平天国の乱は西側にも教訓を与えている.明朝政府は外国を見下し,憎悪していた.他方,太平軍の側では外国勢力を農民の解放者と見なした.今や,アメリカを訪問する中国共産党の習近平副主席に対して,それを歓迎するメディアには,太平軍と同様に,地方の反乱を天罰とみなす隠された声がある.共産党が中国人民によって打倒されることを期待している.

しかし,注意しておかねばならない.太平天国の乱で崩壊寸前であった清朝を支援したのは,まさにイギリス政府であったからだ.当時のイギリス経済は,それほど大きく中国市場に依存していた.特に,1961年にアメリカが南北戦争で市場にならなくなってから.イギリス政府は反乱軍が中国で勝利するようなリスクを冒せなかったのだ.イギリスは清朝政府に武器や軍艦,軍事顧問を提供し,その勝利に貢献した.

現在の経済状態を見ても,アメリカは中国との貿易に致命的なほど依存しているため,もし中国が内部からに反乱に直面したら,政府を政治や人権で批判できないのではないか,と思うほどだ.われわれもまた,中国の革命が敗北することを願うのだろうか?

FP FEBRUARY 10, 2012

Bull in the China Shop

BY DANIEL BLUMENTHAL

WP, February 12, 2012

Why there is a ‘trust deficit’ with China

By Editorial Board

NYT February 12, 2012

China’s Heir Apparent

By HO PIN

FP FEBRUARY 13, 2012

The Insider

BY KERRY BROWN

SPIEGEL ONLINE 02/14/2012

Xi Jinping's US Visit

China's Next Leader Takes Center Stage

By Wieland Wagner

共産党の貴族.妻と娘.政治的・知的な機能マヒ.後継指名.その経歴と信条.

FP FEBRUARY 14, 2012

Rooting for Xi

BY JEFFREY BADER

中国をこの先の10年にわたって指導するであろうXi Jinping習近平を迎えるにあたり,アメリカ人は中国のことをよく知るべきだ.アメリカ国内における中国への感情は大きく分裂している.それを理性よりも感覚で操作する宣伝も続いている.

アメリカに挑戦し,台頭し続ける中国に関する解説は,自分たちにイデオロギーを反映するものだ.軍事関係者,企業や労働組合の幹部,アメリカ経済の変調やアメリカ政治システムの停滞を憂慮する者,ネオコンと外交のタカ派,民主化と人権を推進する運動,アメリカの衰退は避けられないと信じる者,などが,中国のイメージを作っている.

しかし,現実の中国をよく観てほしい.

中国の成長はこの40年間で,毛沢東主義を脱し,改革を進めてきた結果であり,真に称賛されるものだ.その経済,軍事,外交における影響力は増大している.しかし,GDPや軍事支出の急増によっては示せない,はるかに複雑な現実が中国国内にはある.

その一人当たり所得は約4000ドルであり,アメリカの10分の1でしかない.一握りの企業は世界的な競争に参加するブランドであるけれど,他の多くの企業が国内・地域市場にとどまり,世界的な下請けに位置している.貧富の格差は発展途上諸国の中でも最も大きい.環境破壊と水の不足は国民の健康を脅かしている.

国際的な関心を集めた少数の反体制派だけでなく,多くの市民が,北京政府は参加型の政治システムを築くべきだが,それを怠っているという不満を持っている.インターネットが政府に都合の悪い情報を市民に広めて,隠すことができなくなった.中国人はアメリカ人と同様に権力の乱用を許さないだろう.不満を示す手段を欠いているが,武漢,重慶市,チベット,各地の抗議はそれを示している.

習近平が支配するのは,この途方もなく複雑な問題を抱える国家である.彼が問題を先駆的な改革によって対応するかどうか,それはまだわからない.しかし,アメリカが中国非難に偏れば,それが改革を助けることはないし,中国はアメリカをパートナーではなく敵とみなす.

オバマ大統領の中国外交は,様々な意味を含むものだった.中国の台頭と成長を歓迎する.そして,それが貿易,投資,海洋法,通貨,などに関する国際法と規範に矛盾しないように求める.アジア太平洋地域における(アメリカの)同盟諸国・近隣諸国と協力して,中国の台頭が安定性を損なうものではなく,それに貢献するものであるように求める.

オバマはそのために同盟関係を強化し,西太平洋における軍備を削減しないのであって,東アジアサミットのような多角的組織化に進んで加わろうとしている.イランや北朝鮮についても,胡錦濤主席や中国との協力を重視してきた.台湾への武器売却も,それによって馬英求の再選をもたらし,台湾海峡の緊張は今までになく抑えられたのだ.

米中両国にとって脅威とならない国際環境を作り出し,公平で成長志向の貿易と投資の枠組みを作りたい.中国には,アメリカの西太平洋における存在を,中国の平和的な台頭を妨げるものとしてではなく,円滑に促すものの一部として語るべきだ.習近平との対話は重要である.アメリカは保護主義を取らない.なぜならそれは短期的に支持されるけれど,長期的には非生産的であるから.しかし,同時に,習近平には,それが単なる選挙の宣伝ではなく,貿易不均衡に対するアメリカ国民の強い不満であることも理解してほしい.

アメリカは,改革を進める中国のパートナーである.

LAT February 16, 2012

How to handle China's Xi Jinping

By Timothy Garton Ash

個人が歴史を作る.

もしソ連共産党の最後の指導者がミハイル・ゴルバチョフでなかったら,世界は今のような姿ではないだろう.だから,中国の次の指導者,習近平の考え方と価値観は重要である.

彼が文化大革命で苦しんだこと.改革派として,父に同情するが,プラグマティスとである.姉妹がカナダに住み,娘はハーヴァード大学で学ぶ.共産党の指導部に多くの人脈があり,人民解放軍とも親しい.2009年,メキシコにおける西側への痛罵は有名だ.

個人が歴史を作るが,その望むようにはいかない.中国共産党には集団指導体制が確立している.また,中国国内には経済的社会的な緊張が高まっており,解決困難な問題が多くある.街頭デモから,インターネットを介したミニブログまで,世論の重要性が増している.しかも,その多くは非常にナショナリスティックだ.

米中の大国間対立が太平洋を挟んで軍備拡大をもたらす古典的なケースが展開されるように見える.どうすれば,西側は中国を包摂し,中国は西側を包摂できるのか?

最近,愚かな例と優れた例を見た.ミュンヘンの安全保障に関する会議で,中国外務省の副大臣,Zhang Zhijunは,アジアの人民は西側と異なる道をゆく,と述べた.西側は,中国の進むに任せるべきである.南シナ海には何の問題も,自由な航海を約束しよう,と.

私の隣でその話を聞いていたアメリカのJohn McCain上院議員は,ベトナムの船は中国の船によってケーブルを切断された,と述べた.ベトナム人民は,中国による2000年の支配を忘れない.チベットでも人民が犠牲になっている.アラブの春は中国にも来る,と.もちろん,こうしたジョン・ウェイン風の西部劇は,アメリカのカメラと聴衆に向けられているのだ.・・・愚かな例だ.

その後,オーストラリアの外務大臣で,中国語を話せるKevin Ruddが厳しく述べた.ヨーロッパの人々は,今,何が起きているかを十分に理解していない.中国は10年で世界最大の経済になる. 200年ぶりに民主主義ではない国家,500年ぶりに西側ではない国家が,世界最大の経済を支配するのだ.

この地域には戦略的な重要問題がひしめいている.朝鮮半島,台湾海峡,インドとパキスタンの対立.アメリカの覇権はもはや失われた.太平洋の平和は,われわれの時代における最大の戦略的な挑戦である.そして,中国においてもこの30年間で個人の自由や豊かさが広まったことを指摘した.しかし,法の支配や良質のガバナンスを実現するにはまだ時間がかかる.つまり,先の二人の見解を退けて,Ruddは「我々はグローバルな価値を一緒に作る必要がある」と述べた.

これこそが正しい.よい例だ.米中は国際秩序について対話しなければならない.どちらの価値も正しい.共通の基盤はあるはずだ.調整できるところも,妥協できるところもある.単に同意できないことを合意するだけでも有益だ.それは失敗するかもしれないが,模索を拒むことは致命的な過ちだ.

習近平とオバマは,オーストラリアの海岸で一緒に夏を過ごし,静養するべきだろう.ラッドを加えて,話し合うのがよい.


FP Thursday, February 9, 2012

Do I believe in international law?

Posted By Stephen M. Walt

リアリストは国際法を否定している,という非難に反論する.国際法も国際制度も重要な役割を果たしている.しかしリアリストは,大国がそれを無視することもできると認めている.制度の限界について,マルチラテラリストよりも厳しい見方をしている.国際制度は,その重要な点では,バランス・オブ・パワーに制約されているのだ.

リアリストから見れば,軍事介入を主張するマルチラテラリストたちが,国際法や国際機関,制度を重視しながら,自分の関わるプロジェクトを守るためには,簡単にそれらを無視するほうが理解できないことだ.


l  共和党の大統領候補

guardian.co.uk, Friday 10 February 2012

Election 2012: the return of 'culture wars'

Gary Younge

アメリカの大統領選挙は,今のところ経済をめぐって争われるようだ.しかし,共和党の保守的価値観がいつテーマになるか,わからない.

NYT February 11, 2012

We Need a Second Party

By THOMAS L. FRIEDMAN

共和党の大統領候補選びを観ていると,本気で大統領選挙に勝つ気が無いように思う.共和党は対立するイデオロギー集団に乗っ取られてしまったのだ.堕胎反対派,移民排斥運動,婚姻の神聖さを守る保守派,政府の縮小を求めるリバタリアン,政府を廃止する反税金派.

しかし,そんなことを本気で主張するなら,アメリカが直面している重大な課題には応えられない.われわれは政治システムを解放する第三の政党を求めるべきか? その願いはかなわないとしたら,野党である共和党に真の建設的な保守主義を回復してもらうしかない.それができないとしたら,民主党の最良の政治家たちは交渉し,妥協する,相手がないまま,その最悪の政治家たちが空想的な考え方を実践しようとするだろう.

アメリカが直面している次の三つの課題に,共和党は現実的な代案を示せない.第一に,グローバリゼーションと情報革命が,高度に結合した世界を強化しつつある.この世界では,教育,革新,才能が今まで以上に大きな報酬をもたらす.この世界には開発諸国も発展途上諸国もなく,高度想像力国家(HIEs)と低級想像力国家(LIEs)だけがある.

アメリカが繁栄するためには,インフラや成人教育,才能豊かな移民に投資し,リスクを取ることを促し,その無思慮を抑制する規制を築き,研究活動へ公的融資を与え,ヴェンチャー資本に大きな成果をもたらす必要がある.アイゼンハワーやジョージ・HW・ブッシュがそうであったように,企業や個人がグローバルに競争するのを助ける,現代にふさわしい政府と民間とのパートナーシップが必要だ.

第二の課題は,債務と社会的給付とのバランスを回復することだ.増税し,税制を改革し,給付と防衛とを削らなければ,解決することができない.しかし,共和党は1ドルの増税をも拒んだ.これは保守派ではなく,(政府を否定する)ラディカル派だ.

第三の課題は.地球の汚染や温暖化を生じないように,我々の将来におけるエネルギーをどうするか,である.世界人口は2050年までに,70億から90億に増加する.しかも彼らの益々多くがアメリカ人のように自動車に乗り,食事をし,生活したいと思っている.アメリカ人が20億人もいる地球なんて,ありえない.だからエネルギー効率とクリーンなパワーが次のグローバル産業なのだ.ところが,今の共和党は石炭・石油産業のロビイストに丸め込まれて,そうした問題自体を否定する.

共和党が保守派として,アメリカの21世紀を真剣に民主党と論争しなければ,この国は政治が成熟する前に飢え死にするだろう.


NYT February 10, 2012

Egypt’s Never-Ending Revolution

By STEVEN A. COOK

Project Syndicate 2012-02-10

Opening Europe’s Mediterranean Window

Ana Palacio

ムバラクが失脚してから1年がたつけれど,今もアラブ世界は動揺し続けている.EUは,特に隣接する地中海の南部と東部に対して,もっと積極的に関与する必要がある.

若者たちは失業に苦しんで革命を起こしたが,外国投資家はエジプトに集まるよりも逃げ出している.EUはマグレブ諸国とのより実効力のあるートナーシップを築くべきである.改革を進めるイスラム諸国に対して,EUは援助や貿易,投資の拡大をもたらすだろう.太陽発電やインフラ整備がEUによって支援される.

マグレブ諸国は,世界でも域内貿易が非常に低い地域である.インフラ整備はEUとの貿易だけでなく,域内貿易を増加させる.EUと繁栄を分かち合うことで,彼らは革命の成果を手にし,EUも域内の経済停滞を克服する.


l  シリア危機の打開策

WSJ FEBRUARY 10, 2012

A Kosovo Model for Syria

By FOUAD AJAMI

1999年,安保理決議が得られなかったクリントン大統領は,アメリカの名誉にかけてジェノサイドを許さず,コソボへの介入をNATO軍によって行った.オバマはそれに学ぶべきだ.

コソボ空爆は11週間続き,3万回以上出撃した.それはセルビアの経済的・軍事的なインフラを破壊し,ミロシェビッチの戦争遂行力を挫いた.ブレア首相は地上軍の投入を示唆し,クリントンも覚悟したが,コソボ独立でアメリカ軍の投入を抑えることができた.この戦闘においては一人のアメリカ兵も犠牲にならなかった.

The Observer, Sunday 12 February 2012

We can't stop the bloodshed in Syria without talking to Assad

Nicholas Noe

FT February 12, 2012

Stopping the Syrian carnage

guardian.co.uk, Monday 13 February 2012

The Arab League has misjudged its actions on Syria

Abdel Bari Atwan

Project Syndicate 2012-02-13

Turkey’s Test

Anne-Marie Slaughter

オーストラリアは1999年,国連に権限を与えられて,Timor-Lesteに軍を送った.それはインドネシアの改革も促した.ブラジルも,2004年に,ハイチへ軍を送った.国連による安定化は各地域の主要な国家にその役割を求めている.

確かにシリアの安定化はハイチよりもはるかに危険である.しかし,もしパラグアイやウルグアイが不安定化し,政府が国民を大量に虐殺し始めたら,世界はブラジルがそれに対応する指導力を発揮するよう求めるだろう.アフリカであればナイジェリアが,アフリカ連合や西アフリカ経済共同体の要請で軍を送るだろう.

経済成長によってだけでなく,トルコは,中東から北アフリカにかけて,その外交的な影響力と発言力を増している.シリア政府の民衆弾圧に反対し,非武装地帯を設けて市民が軍の暴力を免れるよう提案してきた.トルコはこの地域の重要な位置にあり,安定化にとって欠かせない.言葉だけでなく,行動するときだ.

FT February 14, 2012

Kosovo shows how the west can intervene in Syria

By Radwan Ziadeh


l  ウクライナとロシアの革命

Project Syndicate 2012-02-10

The Snow Revolution’s Orange Shadow

Anders Åslund

ロシアの「雪の革命Snow Revolution」は,2004年のウクライナで起きたオレンジ革命にたとえられる.しかし,その重要な違いを知っておくべきだろう.

どちらの革命も,汚職や,法の支配が欠けた状態に対する抗議運動であった.アラブの春とは違い,どちらも社会・経済危機によって起きたのではなく,平和的な革命である.今までのところは.

大義は必ずしも勝利をもたらさない.ウクライナのオレンジ革命からロシア人が学ぶべき教訓とは,1.新しい民主派は旧支配層との役に立たない政治的妥協や新憲法などに騙されやすい.2.民主化を続けるには指導者の選択が重要だ.ウクライナのViktor Yushchenkoは革命を裏切った.3.ロシアは,グルジアと同じように,腐敗した旧官僚層を追放し,若い,教育のあるスタッフに入れ替えるべきだ.4.民営化のやり直しは避けるべき有害な提案だ.


l  1930年代

FT February 10, 2012

False dawns and public fury: the 1930s are not so far away

By Martin Taylor

偏見,誤謬,誇張,迷信があふれている.1930年代もそうだった.スケープゴートが求められ,銀行家が狙われる.富裕層がすべての損失を支払うべきだ.移民や難民は排斥される.寛容さを認めるつもりはない.デマゴーグが広まるのは,今のところ,苦境にあえぐ南欧よりも,ずっと裕福な北欧である.

アメリカは気難しくなり,内向きになった.アメリカのパワーを失った国際機関や計画がどれほど衰退するか,予想をはるかに超えて深刻だろう.新興諸国が軍備を拡大し,ちょうど1930年代に国連が無効になったように,国際秩序が弱まっている.シリアの紛争継続,イランへの制裁はそれを示し,保護主義の拡大もそうだ.EUは既に加盟国への権威を失った.

投資銀行や金融技術は嫌われるようになったが,そのアイデアは決して消滅することはない.主要国の中央銀行は世界経済を安定化する大きな責任を負っている.債務の縮小は始まったばかりだ.その長期に及ぶ結果は日本が示している.政府債務が増えて,破壊的な効果を及ばす.

最も重要なことは,悪化するしかないときに,政府がそれを増幅してはいけない,ということだ.ブラッセルやフランクフルトに集まって指導者たちが述べたことは間違っていた.すなわち,銀行の破たんは政府債券の破綻につながる.政府のデフォルトはユーロの破滅である.ユーロの破滅はEUの崩壊である.こうした世紀末的な警告は自己実現的な悪夢になった.

政治家たちは次の再選を目指すのではなく,世紀的な評価をもっと気にすることだ.

guardian.co.uk, Thursday 16 February 2012

The 'second Great Depression' saviour myth

Dean Baker


(続く)