IPEの果樹園2010

今週のReview

2/15-/20

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

中国ウクライナの民主的統治、 アメリカの債務危機、 ギリシャの救済:BofingerWyploszMünchauKrugmanKaletsky 鳩山政権と官僚批判、 ユートピア、 超国家機関

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


Feb. 4 (Bloomberg) Biggest Bubble in History Is Growing Every Day William Pesek

(コメント) 中国の外貨準備こそ、史上最大のバブルである、とWilliam Pesekは警告します。24000億ドルに達し、まだ増加し続けています。それはノルウェーのGDPを超えています。しかし、それは他のアジア諸国にも見られます。

IMF融資を受けるには厳しい条件が要ります。しかし、中国の外貨準備を使うには、何の条件も要らない? 中国の利害や外交上の重要性が認められるなら、外貨準備を分けてもらえるかもしれません。すでに、モルガンスタンレーなど、ウォール街の主要な金融機関が救済を受けています。国家でさえも、中国が救世主になるでしょう。

しかし、中国は自分で創り出した外貨準備の累積によって苦しむでしょう。まず、外貨準備を減らすには、莫大な資産の減少を避けられません。それを避けようとすれば外貨準備を増やすばかりです。金を買うか、石油を買うか、資源や企業を買い占めるか? マドフのような投資顧問に頼るか? 結局、どこにも資産分散できません。

「それはフォルクスワーゲンにエアバス・スーパー・ジャンボを押し込むようなものだ。」・・・もしドルの価値が下落すれば、(小国の)中央銀行が投げ売りし始めます。

次に、外貨準備は非生産的です。本来、アジア諸国はインフラや教育、医療、炭素は委縮量の削減、などに多くの投資を必要としています。その資源を外貨準備に積み上げたのは大きな無駄であった、とWilliam Pesekは考えます。

最後に、準備の累積は国内の金融緩和を意味し、インフレやバブルを生じます。アジア通貨危機を経験した結果、通貨危機の再発を恐れ、輸出指向の成長モデルを守るために、逆に、アジア諸国はマクロ経済の不均衡を無視してしまった、と批判します。

WSJ FEBRUARY 4, 2010 Why Antagonize China? By GEORGE GILDER

SPIEGEL ONLINE 02/05/2010 Interview with John and Doris Naisbitt: 'China Is a Country Without an Ideology'

(コメント) 中国やアジアについては、まったく矛盾したような非難と称賛とが示されています。

GEORGE GILDERは、米中の共棲関係が世界資本主義の基盤として確立されており、対中外交を宥和か対決かと悩むべきではない、と考えます。ガイトナー財務長官が中国に温暖化防止やドル安への協力を求めたり、クリントン国務長官がグーグルへの支持や中国に知的所有権の保護を求めたりしますが、それは対決ではありえないのです。

確かに、中国は不必要に台湾に対して軍事的な威嚇を誇示しますが、だからと言ってアメリカが台湾を防衛できるものではなく、その必要もありません。台湾企業の3分の2、約1万社が大陸中国に大規模に投資しており、その額は2000億ドルに達します。大陸に年の半分以上を暮らす台湾人が75万人もいます。

中国は、アメリカと同じようにイスラム過激派の脅威を感じており、台湾産業の投資と技術に依存しています。他方、アメリカの電子産業も半導体に必要なレアメタルを中国が支配するモンゴルから輸入します。

John Naisbittは、変貌する中国の新しい政治経済システムは西側よりも民主的である、と主張します。それは、ないのでは? と思いますが、John Naisbittの示す理由は二つです。

まず、中国の政府は目標を決めて高度な議論を繰り返している。そして意見がまとまらないときは異なるモデルを実際に特別地区でやってみる。地方分権と試行錯誤の余地が大きい。西側ではそのような実験を不公平と考えるだろうが、中国人は異なる制度でもうまく行くのが良い、と考える。そして、それを他の地域にも拡大する。

また、中国の政府には共産主義者がいない。党名は共産党でも、政府を動かすのはイデオロギーではない。John Naisbittは「新しい豊かな社会を目指して、プラグマティックに、一歩一歩前進する」政府である、と考えます。

何が民主主義か? それは民衆が支配することです。中国国民は89%が今の政府を支持しています。メディアは政治家の腐敗や環境問題を積極的に取り上げています。確かに「政府を転覆する」という主張は取り締まられていますが、そのような意見は若いジャーナリストにもほとんど見られない、と。

China Daily 2010-02-05 Asia to play greater role on world stage By Dai Bingguo

LAT February 7, 2010 Back and forth with Beijing

WSJ FEBRUARY 7, 2010 Beijing's Property-Price Dilemma By GENG XIAO

(コメント) 不動産バブルの対策を求めています。長期の成長にもかかわらず、都市化率はまだ46%であり、今後も都市の地価は上昇する、という期待が強くあります。

また、不動産投資はインフレによる資産の目減りを恐れる人びとが注目します。地価上昇はインフレよりも先行し、その供給は制限されているからです。しかも、預金金利がゼロになるような金融緩和がインフレを加速させています。最後に、通貨価値の切り上げが予測されますから、海外からの投資も増えています。

過度の金融緩和を止めること、資本流入が不動産や株式以外の生産的な投資に向かうように、政府は対策を取る必要があります。

The Times February 8, 2010 Why China is stoking war of words with US Bill Emmott

(コメント) Bill Emmottは、中国政府の好戦的な姿勢を、国内改革を推進するためにナショナリズムを鼓舞する戦略的なものだ、と考えます。特に、インフレを抑えるために金融引き締めを行うことは、中国の政策決定の重要な課題ですが、人気のない政策です。しかも、欧米が繰り返し強く求めてきた政策なのです。

それゆえ、西側との対立を演出して、中国政府は政策転換のための政治的な条件を作ろうとします。

The Guardian, Monday 8 February 2010 US and China: Tetchy twins

WP Monday, February 8, 2010 U.S.-China growing pains By Fareed Zakaria

FT February 8 2010 The US can no longer go it alone with China By Jeffrey Garten

(コメント) Fareed Zakariaは、台湾への武器売却、ダライ・ラマ訪米、グーグルなど、米中の対立を、見かけほどは重視しません。両国には互いを必要とする事情が十分に理解されているからです。どちらの政府も、視聴者を喜ばせるためのラフ・プレーを示すに過ぎません。

しかし、二つの事情を重視します。一つは、中国の対米関係に関する認識が変化していることです。もはや西側に頼る必要はない、特に、アメリカは重要な連携相手ではない、と中国政府・国民は考え始めます。

中国がアメリカを必要としたのは、文化大革命によって知識や資本を大幅に破壊してしまったからです。また、ソ連との対立も重要でした。今では、中国にふんだんに資本があふれ、多国籍企業が拠点を設けています。ロシアは弱体化しました。江沢民はWTO加盟のためにアメリカを必要としましたが、それも終わりました。

もう一つの事情は、アメリカ経済の将来です。金融危機を経て財政赤字を増やし、ドル安が進む過程で、中国人は外貨準備で莫大な損失を我慢しています。国際的な影響力が増し、輸出ではなく国内市場に依拠して成長を維持する刺激策が成功しました。それでも、中国は外交を狭く国営気に限定し、グローバルな責任を引き受けるつもりはないでしょう。まだしばらくは、アメリカが必要です。

しかしアメリカが経済の復活に失敗すれば、中国が自信を深める中で、中国はアメリカの方針を妨げる力を持ち、かつてアメリカがイギリスの覇権を損なったような不安定さを強めます。

Jeffrey Gartenは、アメリカの姿勢こそもっと現実の変化に応じて修正するべきだ、と考えます。米中の2国間交渉は、中国がまだ貧しい、孤立した国家であったときの手法で、時代遅れです。それはクリントン政権が、アメリカ経済の絶頂期に採った交渉方法でした。

しかし、今では中国の市場も開放され、貧困を減らし、目覚ましい台頭を遂げました。ブッシュ政権下でポールソン財務長官は米中戦略経済会議を設け、貿易以外にも交渉範囲を拡大しました。そしてオバマですが、Jeffrey Gartenによれば、中国の政策変更を求めるばかりで、クリントン政権の姿勢を引き継いでいます。これは成功しません。

中国は外からの圧力に屈することを嫌い、何より、24000億ドルの外貨準備を保有します。国際機関のネットワークに組み込んで、しかも、中国に大きな発言権を認めるときしか、中国政府はその決定に縛られないだろう、と指摘します。

WSJ FEBRUARY 8, 2010 Trading Barbs with China

WSJ FEBRUARY 8, 2010 China's 8,000 Credit Risks By VICTOR SHIH

Asia Times Online, Feb 9, 2010 Hainan fears real-estate bubbles – again By Stephen Wong

Asia Times Online, Feb 10, 2010 China-US ties bind and bruise By Francesco Sisci

China Daily 2010-02-10 Trade war is no option

LAT February 11, 2010 Taiwan comes between the U.S. and China again By Richard Bush

NYT February 11, 2010 The Challenge of China

IHT February 12, 2010 We Want China to Lead By PETER MANDELSON

(コメント) 中国は大き過ぎる。中国は強すぎる。情報通信で狭くなった世界は中国にとって小さすぎる。もはや中国は、孤立した政策や硬直した政策を採用することはできない。


FT February 4 2010 Between the bomb and the barricades By Philip Stephens

The Times February 8, 2010 Will Tehran choose the Tiananmen solution? Amir Taheri

(コメント) イラン問題が複雑化しています。核開発を止めるために、アメリカやEUは交渉し、制裁を課しています。他方、安全保障と経済的な支援や良い貿易条件を与えて合意を促すことと、威嚇と軍事的な破壊とを比較します。

その一方で、イランの神政権威体制に対する民主化要求デモが広がっています。アメリカは情報ネットワークを開放することで間接的な支援を行うにとどまりますが、他方、中国はイランとの貿易関係を拡大し、制裁強化にも反対します。

Philip Stephensは、核開発と民主化との関係を、もし核開発が時間を残しているなら、民主化を支援できる、と考えます。しかし、民主化を外部から支援することは国民的な支持を得る上でマイナスになります。正しい答えは? ・・・わかりません。

イランと比較されるのは中国です。アメリカとの厳しい対立の時代があって、その後、国交回復と貿易や投資を介した成長が始まり、世界経済の重要な一部になっています。では、民主化運動の弾圧は、中国の天安門事件と比較できるだろうか? Amir Taheriはイランの分裂と弾圧強化を指摘し、断固、強硬策を考えます。そして、西側は民主化を支持せよ、と。

FP FEBRUARY 8, 2010 Who Wants to Bomb Iran? BY DAVID KENNER

FP FEBRUARY 9, 2010 How Washington Can Really Help the Greens in Tehran BY ALIREZA NADER, TRITA PARSI

(コメント) FPは、核保有国となったイランが中東における影響力を増大させる、という懸念から、イランの核施設を爆撃するべきだ、という少数派の意見を並べています。また、何もしないことと軍事介入することの間で、民主化運動を支持する中間的な選択肢も検討されています。

SPIEGEL ONLINE 02/10/2010 Iranian Intransigence: Tehran Has Little Reason to Fear Sanctions By Ulrike Putz in Beirut, Lebanon

FT February 10 2010 We must not ignore human rights in Iran By Trita Parsi

The Guardian, Thursday 11 February 2010 Iran's revolutionary road Massoumeh Torfeh

NYT February 11, 2010 Iran, Beacon of Liberty? By REUEL MARC GERECHT

WSJ FEBRUARY 11, 2010 Blame China for Iran's Nukes By MICHAEL DANBY


WSJ FEBRUARY 4, 2010 Sovereign Risk Meets Sovereign Reality By IAN BREMMER AND NOURIEL ROUBINI

(コメント) 大国アメリカの債務危機と小国の債務危機。アイスランド、ラトビア、ドバイ、アイルランド、ギリシャとの違いを考えると・・・・ 大国は国際通貨を発行し、国際通貨秩序を犠牲にできる、などと思います。

IAN BREMMER AND NOURIEL ROUBINIは、小国の債務危機が大国にも及ぶことを指摘します。イギリスの金融システムやドイツの金融システムは、ヨーロッパの小国が債務危機に陥れば根底から動揺するはずです。また、日本の債務危機はいつでも起きる条件があり、アメリカでも政府債務の膨張が始まっています。たとえ日本が対外的には債権国であり、ドルが国際通貨として受領されているとしても、それが永久に続くことはないのです。

EUが小国の債務危機をどのように処理できるか、世界中の投資家が注目しています。それは、高齢化によって貯蓄(それは対外黒字に等しい)を失う日本や、高齢化と低成長により債務を減らせないアメリカの将来にも影響します。アメリカ債券への外国投資家の需要が急速に消滅して、新興諸国がリスク回避としてドルを保有することもなくなるでしょう。

BREMMER AND ROUBINIは、アメリカの高金利と低成長の背景をこうして解釈します。

WSJ FEBRUARY 4, 2010 The Necessity of Obamanomics By ROBERT B. REICH

(コメント) オバマ政権の追加的な不況対策、銀行課税、貿易自由化の頓挫、それらの関係をROBERT B. REICHは解釈します。

三つのことが重要です。1.民間需要が後退する以上、政府は需要を補う必要がある。2.ベビー・ムーマー世代が引退し、貯蓄より消費に向かう。3.政府は国内政治情勢を考慮しなければならない。高失業率と低賃金が、さまざまな反対派の声を強めます。

ROBERT B. REICHによれば、オバマは金融改革を提案し、銀行のボーナスに課税しました。また富裕層に対するブッシュ減税を失効させます。しかし、議会の反対勢力はバーナンキの使命を拒み、オバマ政権の自由貿易協定を妨げます。

オバマはこうした状況で中間選挙に向けた劣勢を挽回しようとしています。

The Guardian, Saturday 6 February 2010 Obama's muddled solutions Joseph Stiglitz

(コメント) マサチューセッツ州の選挙結果は、オバマに悪化する経済情勢の重要性を示しました。オバマは、予想に反して選挙公約を無視し、ブッシュ政権の主要スタッフと方針を継承し、ウォール街を救済することに集中しました。しかし、方針転換するときです。

確かに金融危機が恐慌に転じるのを回避できましたが、その救済コストは莫大な債務をもたらし、人びとは住宅を立ち退き、不況と失業に苦しんでいます。「日本病」のアメリカ型が浸透しつつあります。オバマの政治的な支持基盤が失われつつあります。保守派は救済されたにも関わらず、財政赤字を非難し、医療保険制度や刺激策を非難し、金融ビジネスの自由を要求します。

オバマは保守派に妥協して財政赤字を削減しますが、それでは景気が回復しません。ブッシュ政権のもたらしたアメリカの所得格差を解消することに失敗し、むしろ増大してしまいます。なぜ銀行を税金で救済するのか? なぜ財政赤字を増やすのか? なぜ失業の増大を止めないのか? 選挙後にあれほど大きかったオバマの政治的指導力も、今では、大幅に失われています。

つまり、・・・政府の行動が必要だ。それは効果的でなければならないし、政治的指導力が欠かせない。

FT February 7 2010 Stimulus should put cash in poor pockets By Roger Altman

WSJ FEBRUARY 7, 2010 The U.S. Needs an Industrial Policy By JOHN HOFMEISTER

NYT February 8, 2010 America Is Not Yet Lost By PAUL KRUGMAN

(コメント) アメリカが21世紀に入って「失われた10年」を回避するために、JOHN HOFMEISTERformer president of Shell Oil Company)は産業政策が必要だ、と訴えます。

・・・アメリカは何十年間もゼロ成長に苦しんだ。その製造業は「合理化」、「リストラ」、「グローバリゼーション」の信仰に従い、縮小し続けた。中核産業がこぞって消滅し、経営者に短期的な報酬を与えた。

・・・次の10年は無謀な「自由市場」信奉者のせいでマイナス成長を迎え、雇用を輸出するだろう。アメリカの指導的な産業は4つある。ロサンゼルスの娯楽産業、湾岸の情報産業、ヒューストンの石油産業、そして、ニューヨークの金融サービス業、である。ところが、反炭素、反原子力で、既存のエネルギー産業は抑えられ、わずかなグリーン・ビジネスに税金を投入している。娯楽や情報産業は立地を自由に選択し、シリコン・ヴァレーより、ますます政府の支援する中国、韓国、インド、日本、などへ移転してしまう。金融危機と不況に対する怨嗟の嵐に振り回されて、銀行規制や課税は金融サービスの中心をヨーロッパや日本、むしろ中国へ追いやるだろう。

・・・サービス部門は雇用を「アウトソーシング」してしまった。しかし、アメリカ以外の国は雇用を守っている。障壁、社会保障、そして産業誘致政策が行われる。アメリカも、持続的な成長のために熟練労働者や未熟練労働者の雇用と賃金が必要であり、彼らの職場となる製造業が必要だ。

ここには働く意志と能力を持った人々が多くいる。だからアメリカも、製造業を育成し、誘致せよ、と主張します。

アメリカはもはや大国ではない。アメリカは敗北した。そんな気分を払しょくするべきだ、とPAUL KRUGMANは考えます。たとえば、ローマ帝国の崩壊より、18世紀のポーランド解体を考えるとよい。

PAUL KRUGMANは、ポーランドが消滅した理由を議会下院が全会一致原則で運営されたために統治不能になったからだ、と説明します。1795年から約1世紀間もポーランドは消滅しました。それは今のアメリカ議会上院と似ています。

WSJ FEBRUARY 8, 2010 Toward a Different Fiscal Future By R. Glenn Hubbard

FT February 10 2010 A Greek crisis is coming to America By Niall Ferguson

(コメント) Niall Fergusonは、ユーロ圏や地中海の小国が苦しむ金融・通貨危機の広がりを、自分たちと無縁な問題だと思ってはいけない、と主張します。西側諸国には財政赤字が蔓延しています。

ギリシャはユーロ圏の加盟国として特別な困難に直面しています。その枠組みでは、ユーロ圏の救済は好まれず、切り下げることはできず、ユーロ圏の離脱も考えられない。残された3つの可能性として、1.ユーロ圏の合意した財政赤字3%にまで支出を切り詰める、2.デフォルト、3.ユーロ圏の主要国、つまり、ドイツによる何らかの救済、です。

しかし、Niall Fergusonは、アイスランドやアイルランドも、イギリスやアメリカも、問題の本質は同じである、と考えます。それはケインズ主義的な拡大政策のフリーランチ(a Keynesian free lunch)の副作用なのです。

その要点は、1.財政刺激策の効果は、金融緩和に比べて、限られている。2.グローバル化した経済において大きな「漏れ」が生じる。3.財政赤字は予想以上に早く債務危機に至る。

アメリカの公的債務はわずか2年でGDPの100%を超えるでしょう。債務の増大はデフォルト、減価、インフレについて投資家を不安にします。そして高金利が成長を抑えます。特に、民間部門が巨額の債務を抱えるとき、高金利は重圧になります。

アメリカの債券市場が急速に高金利をもたらさなかったのは、連銀と中国の金融政策が政府債券を購入していたからです。しかし、連銀がもうすぐ金融引き締めに入り、中国はすでに購入額を減らしてきました。アメリカ政府債券のトリプルAという評価は低下し、L.サマーズが問いかけたように、世界最大の債務国が世界最強の国家であるという矛盾は維持できません。

ギリシャの危機はドーバー海峡を越えて大陸からイギリスに渡るでしょう。そして、大西洋を越えてアメリカにも渡るのです。


The Guardian, Friday 5 February 2010 Stop the Toyota hysteria Edmund King

(コメント) Edmund Kingは、不況に苦しむアメリカ人がトヨタに抱く怨嗟や慙愧の念をリコール騒動の背景に見ています。リコールは多く発生しており、生産者の責任を果たす姿勢として評価してもよいことです。トヨタが特に多いわけではありません。また、ブレーキペダルの問題が、他のリコール事例に比べて、特に深刻とも思えないと指摘します。

FT February 5 2010 Man in the News: Akio Toyoda By Jonathan Soble and John Reed

FT February 5 2010 Toyota’s long climb comes to an abrupt halt By John Reed in London and Bernard Simon in Toronto

(コメント) トヨタの社長が公式の謝罪になかなか現れず、しかも記者の質問に直接応えないことをFTは批判しています。トヨタを支配する親族の株式はわずかであり、その経営基盤は動揺するかもしれません。

John Reed and Bernard Simonの特集記事は、トヨタの経営方法が世界の経営に取り入れられた半面、トヨタは生産拠点の世界展開によって水準を維持できなかった、と考えます。

BBC 2010/02/06 Recall tarnishes Toyota's spotless image By Alastair Leithead

NYT February 6, 2010 Toyota’s Blind Spot By MATTHEW DeBORD

Feb. 9 (Bloomberg) Naked Driving Gives New Meaning to Toyota Crisis William Pesek

(コメント) 「豊田章男社長の辞任は時間の問題だ。それはかつてない大規模な、まだ拡大し続けるリコールを生じたからではなく、危機に対して感情的な対応に流されたことの責任を負うからだ。この不確かな指導力のせいで、トヨタが失った市場価値は、121日以来、ラトビアのGDPに匹敵する。」

・・・問題を否定し、小さく見せ、マスコミを避ける、というのは、安全性の問題をスキャンダルに拡大した教科書的な大失敗だ。この事件は2010年の日本経済にも影響するだろう。

トヨタはその信頼に値する企業なのか? 潮が引いてから、誰が裸で泳いでいるかわかる。それは鳩山政権や日本経済についても言えることです。

BBC 2010/02/09 Toyota in global recall of Prius

CSM February 9, 2010 Toyota problems with recalls can lead to a new Japan

(コメント) 「政府、企業、社会における硬直的な構造を、日本は変革しなければならない。もしそうしなければ、経済停滞、主要製品のリコール、その他にも問題が悪化し続ける。」

WP Tuesday, February 9, 2010 Toyota's plan to repair its public image By Akio Toyoda

(コメント) WPに豊田章男社長が対応策を説明しています。1.点検する、2.外部から顧問を招いて安全対策の委員会を設ける、3.顧客の苦情に迅速に対応する。

なるほど、鳩山=小沢政権にも必要だと思います。しかし、これが倒産前のGMと比べて優れているのか。同じ様な経営コンサルタントの作文に思えます。

IHT February 10, 2010 In Move to Contain Crisis, Toyota Details Hybrid Recall By HIROKO TABUCHI

BBC 2010/02/10 Toyota bows and the Japanese art of apology By Jeff Kingston

The Guardian, Thursday 11 February 2010 Toyota undone by Japan's work ethic? Jenny Holt

(コメント) 謝罪も勤労精神も、「日本人」がテーマです。Jeff Kingstonは、オバマ大統領が日本の天皇と会見し、日本風にお辞儀しようとしたが、余りにも背が高い・低いので、握手しながら深く頭を下げてしまい、アメリカのマスコミに激しい非難を浴びたことを思い起こしています。

他方、トヨタ社長のお辞儀はあまりにも軽率で、事態の推移を無視した無責任な姿勢であった、と。日本のメディアも批判的に伝えていました。しかも、彼はスティーブ・ジョブズと違って、禅文化の中で育っている、と。・・・それはオリンピック基準を満たさない。

他方、日本の労働倫理や規範も問われています。日本のエンジニアは性格であるが、その経営手法は労働者を消耗させ、眠気を催し、努力を引き出せていない、と。特に長時間の拘束を批判します。・・・事故が起きても当然だ。


The Guardian, Friday 5 February 2010

Stop private firms exploiting poor states

Kevin Gallagher

WP Monday, February 8, 2010

Time to trade

(コメント) Kevin Gallagherは、環境規制の弱さと貿易拡大の利益が小さいことを理由にCAFTA(the Central American Free Trade Agreement中米自由貿易協定)に反対します。

WPは、雇用を増やすために輸出を促進する、と述べたオバマ大統領の姿勢を問います。


SPIEGEL ONLINE 02/05/2010 Interview with German Government Economic Adviser: Euro Zone 'Could Cope with Greek Bankruptcy' Peter Bofinger

(コメント) なぜEUはギリシャを救済しないのか? ギリシャの破綻を待っているのか? という問いに、Peter Bofingerは明確に応えます。「全く逆である。ギリシャが厳しい局面を迎えるのは正しい方針に基づいている。もしギリシャにEUが資金を与えれば、それは間違った先例となる。問題を抱える他の国も救済しなければならないだろう。」

しかし、ユーロ圏の信認が損なわれるのではないか? 「他の通貨圏に比べて、ユーロ圏はそれほど悪くない。債務比率はアメリカよりも良い。」 ギリシャが破綻してもユーロ圏は対応できる、なぜならギリシャ経済はユーロ圏全体のGDPのわずか2.6%でしかない。また債務のGDP比は88%だが、アメリカは92%、日本は197%だ。カリフォルニア州は破綻寸前だが、そのGDPはアメリカ経済全体の13%もある。・・・

さて、それでも債務を放置するべきではないので、BofingerはEUの共通基準を設けて債務からの脱出を協力するべきだ、と考えます。透明性を確保し、互いの健全化を信頼できるものにします。また、同時に、国際通貨制度にも不満を述べています。すなわち、人民元の過小評価です。

Bofingerは、人民元が過度に安く固定されている、と主張し、これは関税による保護がWTOによって禁じられているから、中国政府は為替レートで国内市場を保護し、輸出を増やしているのだ、と批判します。そのせいでユーロ圏はますます需要(雇用)を奪われています。

サルコジ大統領が言うように、為替レートの決定を世界的な機関が行い、自由な外国為替市場を廃止するべきか? 「キャリー・トレードによる投機のようなものは一掃したい。」 Bofingerは、ブレトン・ウッズ体制の考え方は間違っていなかった、と主張します。アイスランドも、資本の流入と増価を阻止するべきだった、と。

そこで、各国が為替レートを決定できるように、Bofingerが提案するのは、ドル、ユーロ、人民元、の3極通貨制度です。3極間では為替レートが完全に金利差で決まります。その他の国は三つの通貨のどれかを選択して固定します。IMFが各国の政策を監視し、利己的な政策介入を阻止します。これは、中国(人民元の国際化を推進する)にもアメリカ(ドルの衰退を抑制する)にもヨーロッパ(貿易や投資の安定化と促進)にも利益になる、と考えます。いずれの国も、通貨的な混乱を避けなければ回復できない以上、この3極通貨体制に参加するはずだ、と。

NYT February 5, 2010 Fraying at the Edges By FLOYD NORRIS

FT February 5 2010 My big fat Greek conspiracy theory By Charles Wyplosz

(コメント) 「なぜギリシャか? なぜ今か?」 むしろイタリアや日本ではないのか? Charles Wyploszは<陰謀説>考えます。なぜなら、投機家たちが納税者の負担で危険な利益を膨らませているからです。

まず、ギリシャ政府はデフォルトするのではないか、という不安を煽ります。ギリシャ政府がデフォルトしても経済は悪化するだけであり、もしデフォルトするとしたら金融市場が債券を拒否するときです。次に、ギリシャの経済規模は小さいが、その伝染は致命的である、と救済を求めます。ポルトガルやスペイン、イタリアまで破綻するのはユーロ圏の崩壊につながります。

しかも、フランスやドイツの銀行が高利回りのギリシャ債券を、アメリカのサブプライム・ローンと同じように、大量に購入している、と噂します。アメリカが主要金融機関をすべて救済したように、金融市場の核になる機関は破綻を放置できません。ギリシャも同じだ、というわけです。

こうして、金融投機はいつものように大きな利益を得られるのです。なぜAIGを救済したのか? とポールソンやガイトナーが議会で質問されたように、ギリシャ救済も問われるでしょう。AIGと違って、時間がなかった、という言い訳はできません。

FT February 5 2010 Markets on a high wire

WSJ FEBRUARY 5, 2010 Greeks Bearing Debt

NYT February 6, 2010 Debt Problems Chip Away at Fortress Europe By LANDON THOMAS Jr.

NYT February 7, 2010 Is Debt Trashing the Euro? By LANDON THOMAS Jr.

(コメント) 金融市場の関係者やエコノミストたちはギリシャとユーロ圏の不安をどう見ているのでしょうか? LANDON THOMAS Jr.は、EUが財政破綻や通貨危機を管理する協力機関を設置する力はなく、IMFが介入するべきだ、というものです。

逆に、Paul De Grauweは、政治(そして財政政策)統合を伴わない通貨統合は長期的に維持できない、と指摘します。他方、Daniel Grosは、救済を合意していないEUが動くのは難しく、IMF融資を利用する方が良い、と考えます。また、ギリシャ政府が財政を引き締めることに関しては不信感が強くあります。Joseph Stiglitzは不況と財政赤字を悪化させるIMF融資に批判的です。

結局、IMF融資もないまま、その融資条件に匹敵する緊縮政策を実行することで金融市場の信認を得る、というわけです。つまり、IMFに代わってゴールドマンサックスが融資する。他方で、これまでと同様に投資家の判断を誤らせた格付け会社に批判が向かいます。

The Guardian, Sunday 7 February 2010 Loans alone will not save Greece Kenneth Rogoff

(コメント) Kenneth Rogoffは、ギリシャがアルゼンチン型のデフォルトを避ける、と考えます。そのための財政再建を、今まで財政破綻を繰り返してきましたが、今度こそ実行するわけです。反対する人々が首都の街頭を埋め、地下経済に向かうかもしれません。しかし、ユーロ圏にとどまるには財政赤字の削減をするしか道はない、というわけです。

FT February 7 2010 Greece and the eurozone: halcyon no more By Ralph Atkins and Kerin Hope

FT February 7 2010 Europe needs to show it has a crisis endgame By Wolfgang Münchau

(コメント) IMF融資を主張する者が軽視しているのは、それによってユーロ圏の将来が疑わしくなるという予想です。EUは、財政破綻の加盟国を自分たちで処理できない以上、ユーロ圏の将来も管理できないでしょう。こうして、19929月のEMS危機と同じように、固定相場制の崩壊が近付きます。あるいは、IMF融資が財政破綻をさらに悪化させて、金融危機に終わったアルゼンチン(そして、ロシア)のケースにギリシャは近いだろう、という不安が生じます。

不安を断つ仕組みが分かりません。支払い不能の政府は、最終的にデフォルトになり、他の政府にも波及します。

Wolfgang Münchauは、明確な危機管理政策の合意を求めます。それは加盟国を喜ばせるものではいけません。最低でも、主権の一部は停止されます。厳しい緊縮予算で生きることを強いられます。これによって市場が自動的な感染を招くことはないでしょう。そして、ユーロ圏解体の不安とも切り離されます。

WSJ FEBRUARY 7, 2010 Time for the Euro Zone to Grow Up By MARCO ANNUNZIATA

(コメント) ユーロ圏の未成熟を示すのは、ギリシャとカリフォルニアとの比較です。ドイツの賃金抑制とギリシャの財政赤字は、ユーロ圏内の対外不均衡や物価・賃金の格差を拡大し、競争力を奪います。

ギリシャもカリフォルニアになることです。EUはヨーロッパ合衆国になって、政治統合・財政統合を実現することです。そうでなければ危機を繰り返し、国際競争の中で埋もれて行くでしょう。

SPIEGEL ONLINE 02/08/2010 Greek Debt Crisis: How Goldman Sachs Helped Greece to Mask its True Debt By Beat Balzli

The Guardian, Monday 8 February 2010 An epic task for Greece Matina Stevis

NYT February 8, 2010 European Central Bank in a Squeeze By JACK EWING

Feb. 9 (Bloomberg) ‘PIGS’ Crisis Is Opportunity for Euro to Stand Up Matthew Lynn

(コメント) EU諸国は救済融資を拒み続けています。ECBは、この危機を利用して、デフォルトの仕組みを合意し、新しい基金を設けるだろう、とMatthew Lynnは考えます。いわばEU版IMFです。その結果、ユーロの価値は高められます。

SPIEGEL ONLINE 02/09/2010 An EU Protectorate: How Brussels Is Trying to Prevent a Collapse of the Euro By Armin Mahler, Christian Reiermann, Wolfgang Reuter and Hans-Jürgen Schlamp

(コメント) 解決策として検討されるのは、1.EU債券、2.2国間金融支援、3.IMF融資、です。ヨーロッパ議会がギリシャをEUの保護領にする可能性にも言及します。

FT February 9 2010 Berlin looks to build Greek ‘firewall’ By Tony Barber in Brussels

(コメント) ドイツの首都、ベルリンでは、ギリシャの危機からユーロ圏を隔離する対策、防火壁、が検討されます。

WSJ FEBRUARY 9, 2010 Germany Considers Loan Guarantees for Greece By DAVID CRAWFORD AND MATTHEW KARNITSCHNIG in Berlin, and CHARLES FORELLE IN BRUSSELS

BBC, Tuesday, 9 February 2010 The Greek crisis is Europe's crisis Paul Mason

NYT February 9, 2010 Anatomy of a Euromess Paul Krugman

(コメント) Paul Krugmanは、ユーロ圏の危機の核心は、ギリシャではなくスペインだ、と主張します。スペインの経済規模はギリシャと違ってユーロ圏に影響し、しかも、スペインの危機は慢性的な財政赤字の結果ではなく、ユーロ圏内の非対称的ショック、だからです。

スペインはユーロ成立後の金利低下と資本流入で不動産バブルを生じ、ドイツに比べて高いインフレ率を続け、ユーロ圏内の大幅な赤字を示していました。それは古典的なトランスファー問題でした。しかし、スペインは金利を上げることができません。その後、バブルが破裂すると、国内需要は減少し、しかも、物価や賃金の上昇で競争力を失ってしまいました。急激な不況になっても、金利を下げ、通貨価値を減価させて競争力を回復することができません。

スペインの場合、財政赤字は危機の原因ではありません。ブームの間、財政黒字が続きました。その後、急激な不況と失業を緩和するために財政赤字が増大しています。EUの政策担当者たちが責任を負うべきだ、とPaul Krugmanは批判します。いまさらユーロ圏を解体するコストは大き過ぎるから、ユーロ圏を機能させるような財政と労働市場の統合化を求めます。

WSJ FEBRUARY 9, 2010 Greece Is Bankrupt (Morally, At Least) By TAKIS MICHAS

The Times February 10, 2010 Greek tragedy

BBC 2010/02/10 Greek PM pledges to slash deficit

BBC, Wednesday, 10 February 2010 No more euro déjà vu Stephanie Flanders

(コメント) ドイツ政府は2国間の救済や債務保証を検討しています。そして、救済するけれど、これは例外である、と言い訳します。Stephanie Flandersが批判するのは、処理の透明性が欠けている点です。そして危機が再発します。

The Guardian, Wednesday 10 February 2010 Better Greece than Iceland Dan Roberts

(コメント) ギリシャを救済するべきか、あるいは、リーマンブラザーズのように破綻させるべきか? EU蔵相会議は決めなければなりません。しかし、ブラッセルやベルリンは、その代償として何を要求するのか? これはグローバルな不均衡に対して中国が果たした融資と刺激策を、ユーロ圏においてドイツが果たすことを意味するのか?

少なくともアイスランドのように放置されることはないのです。マーストリヒト条約が始めた通貨同盟により、ギリシャが救済される後で、ドイツはユーロ圏内の財政赤字をもっと厳しく管理しようと決意します。他方、ユーロ圏内の周辺地域では、不況期における国民の苦しみをもっと金融政策や財政政策に反映させようとします。一層の政治・財政統合が要求されるでしょう。

The Guardian, Wednesday 10 February 2010 Keeping the eurozone afloat Claus Vistesen

The Guardian, Wednesday 10 February 2010 The euro: Continental drift

SPIEGEL ONLINE 02/10/2010 Athens Under Pressure: Berlin Considers Greek Bailout as Unions Strike

FT February 10 2010 Tough love is best for Greece long term By José Maria Brandão de Brito

(コメント) ECBは、昨年の金融危機に対して明快な金融緩和と危機回避の対策を講じ、成功しました。他方、ギリシャの財政危機には救済することを拒んでいます。前者は外部のショックに対する危機回避でしたが、後者は内部の財政破綻と金融規律に対する無思慮の結果である、と考えるようです。

しかし、この二つには関係があります。危機回避のための金融緩和は速やかに引き締めなければなりません。他方、ギリシャの財政破綻がEUとして処理できなければ、金融市場の不安は続き、金融引き締めや成長の回復が遅れます。

IHT February 11, 2010 Europe Closing In on Plan to Avert Greek Debt Crisis By STEPHEN CASTLE and NICHOLAS KULISH

FT February 11 2010 Europe decides what union means

(コメント) 放漫財政の加盟国を、ドイツ人が自分たちの貯蓄を使って救済するだろうか? 賃金や年金を切り下げられるギリシャ人労働者たちが、政府の緊縮予算を支持するだろうか? どちらも、このままの制度で、長く維持される望みはないでしょう。

FTは、ギリシャの破綻からユーロ圏が解体するうわさを無責任な妄想として否定します。EU諸国はギリシャ支援に合意し、ユーロ圏の協力に向けた長期的な基礎を固めるでしょう。

問題は、救済が金融市場の規律を破壊することです。それに代わって、IMF融資とギリシャへのEUによる財政支援、という折衷案を支持します。そして、金融市場がギリシャ債券を拒んだとき、また、市場の不安が他の赤字国債券に伝染したとき、IMF融資を事前に用意して、自己実現的な金融パニックを予防します。

The Times February 11, 2010 Greek tragedy won’t end in the euro’s death Anatole Kaletsky

(コメント) Anatole Kaletskyは、ギリシャの救済をヨーロッパ合衆国の誕生に向けた大きな前進と見て、連邦主義者を祝福します。

なぜなら、ギリシャへの救済はドイツではなく、リソボン条約の122条によって、欧州理事会の加重投票が決めるからです。その支援額は必要なら無制限に増やせます。支援策はドイツ政府から独立に、フランスやイギリスが求めて来たような「ヨーロッパ政府」が実施するのです。しかも、ギリシャ債券がヨーロッパ諸国の政府によって保障されるなら、資本市場はその購入を控える理由が亡くなって、実際に支援策を発動する必要もないでしょう。

ただし、問題は残ります。一つは、財政破綻する政府が救済されるというモラル・ハザードが生じます。地中海諸国は欧州理事会で支援策を安易に求めるかもしれません。それゆえ、すでにギリシャ政府が決めたように、財政引き締め策が重要な条件になります。

さらに問題は、債務国の不況が長引くことです。ギリシャが財政再建のために不況に苦しむ間、投資家は不安を感じます。それは、ユーロ圏の他の財政赤字国も加えて、それらの高金利と不況の負担を増やすのです。しかも、ドイツ政府は輸出による景気回復と迅速な財政再建を計画しています。

他の選択肢として、ドイツがもっと金融緩和し、赤字国から輸入を増やすことも考えられます。その方がギリシャの負担は軽減されるのです。Anatole Kaletskyは、ギリシャ悲劇の結末が長期的に何であるか、まだ誰にも分からない、と結びます。

BBC 2010/02/11 EU ready to help Greece on debts

BBC, Thursday, 11 February 2010 Thinking the unthinkable Stephanie Flanders

(コメント) ヨーロッパ人が考えられない、必要な解決策。1.ギリシャ債務の部分的な免除、2.ドイツのインフレ目標を高めに修正すること。

BBC 2010/02/11 Why Greece's problems matter By Jorn Madslien

Feb. 11 (Bloomberg) ‘PIGS’ in Rescue Lipstick Are Uglier Than Default Mark Gilbert

The Guardian, Thursday 11 February 2010 Why the EU had to bail out Greece John Palmer

The Guardian, Thursday 11 February 2010 Not quite a bailout David Gow

SPIEGEL ONLINE 02/11/2010 Tackling Greece's Debt Crisis By Susanne Amann

WP Thursday, February 11, 2010 Europe could use its own Tea Party By David Ignatius

(コメント) かつて右派のポピュリズムがヨーロッパで果たした役割を考えると、ヨーロッパの政府の肥大化をチェックする保守派の声がアメリカより小さいのは理解できます。しかし、ギリシャの救済に合意したとき、もっと財政赤字の削減についてもヨーロッパ諸政府に圧力を加える必要があった、とDavid Ignatiusは主張します。共通通貨を守ることが、財政赤字を放置し、破綻や経済停滞を誘発する事情に加わるかもしれません。

FT February 11 2010 EU pledge on Greece fails to calm fears By Ben Hall and Tony Barber in Brussels and David Oakley in London

WSJ FEBRUARY 11, 2010 The Committee to Save Greece

(コメント) 「ドイツが主導するギリシャ救済は、ギリシャだけでなくユーロ圏全体の債務同盟を暗黙のうちに築く「トロイの木馬」になりそうだ。」

イタリアも、ポルトガルも、スペインも、ドイツが債務保証を与える。逆に、他国の放漫な財政でドイツの信用が損なわれる。ドイツはまさにこれを避けるために、マーストリヒト条約に、ECBは加盟国政府の債務危機を「救済しない」という条項を入れたわけです。そして、公的債務がGDPの60%を超えない、予算赤字はGDPの3%を超えない、という参加資格を求めました。(イタリアやギリシャがその条件をクリアするために統計をごまかした、というのも事実のようです。)

しかし、この条件も2003年にドイツ自身が逸脱し、制裁を行わないことで失効しています。また、財政健全化に対してギリシャ国民は街頭に出て抗議し、民主的な政府やEUに強く反対しています。WSJは、また、Joseph Stiglitzが、ギリシャ政府の顧問となって、財政赤字を支持し、危機の責任を投機に向けていることを強く非難しています。

もしドイツがユーロ圏の債務を保証するなら、次は加盟諸国の財政を管理するか、あるいは、それに失敗してユーロ圏の解体に向かうか、でしょう。WSFは、IMFによる間接的な財政管理を勧めています。それは、民主主義の下で他国に財政規律を加える「政治的なカバー(保護膜、隠れ蓑)」になるからです。

Asia Times Online, Feb 12, 2010 Euro trash? By John Browne

Feb. 12 (Bloomberg) Goldman’s Contagion Warning Is Greek to Markets William Pesek

NYT February 12, 2010 Europe Commits to Action on Greek Debt By STEPHEN CASTLE

(コメント) いわば財政・金融・通貨面におけるPKO平和維持軍なのです。しかし、ファン・ロンパイ大統領との話し合いで示されたIMFも参加する救済提案を、ドイツは拒みました。

メルケル首相は、加盟国が自国の財政を安定させて共通通貨ユーロを維持することに責任を負うべきだ、と述べ、ギリシャ政府から救済の要請がない、という点を重視しました。ギリシャ救済はドイツ国内の政治的な支持を得られず、また憲法にも違反する恐れがあります。

しかし、たとえドイツが否定しても、他のEU首脳は救済策が必要と認めています。フランスの担当者はギリシャをリーマンブラザーズにたとえてドイツの決断を求めました。しかし、メルケル首相は、ギリシャが真に崩壊に直面したときしか、ドイツの有権者に説得することはできない、と主張します。ドイツ蔵相Mr. Westerwelleも、白字小切手は出せない、と断言します。十分に厳しい条件で救済しなければ、次はユーロが市場の攻撃にあうだろう、と。

"This is about trust."とドイツ蔵相は強調します。それは、ギリシャ政府も、ドイツ国民やフランス大統領も、スペインやアイルランド、賃金を削減される労働者たち、市場で債券を購入する投資家たちも、同じように主張する言葉でしょう。


YaleGlobal , 5 February 2010

Will Japan Emerge from its Shell? – Part II

Daniel Sneider

FT February 8 2010

Japan’s debt woes are overstated

NYT February 9, 2010

In Toyota Mess, a Lesson for Japan

By MARTIN FACKLER

Asia Times Online, Feb 11, 2010

Japan's deflation pledges lose currency

By Catherine Makino

(コメント) 領土問題、海底油田開発、など、日中間の紛争は残ったまま、民主党政権は中国との関係改善を目指します。しかし、アメリカ軍を沖縄から追い出して、日本政府は北朝鮮や中国の軍備拡大とどのように対峙するのか? Daniel Sneiderは悲観的です。

ギリシャより日本の方が危険ではないか? Is Japan, mired in debt and deflation, the next Greece? という疑問をFTは考えます。1.純債務はGDPの100%以下である。2.金利が低いから負担が少ない、3.消費税は5%でしかないから上げる余地がある、4.国内で保有されている。

むしろ日銀はデフレを解決して、政府とともに成長率を上げるべきだ、と主張します。

GMのたとえと同じように、トヨタにとって危険なことは日本経済にとっても危険です。リコールも、デフレも、技術も、労働者も。

The Japan Times: Thursday, Feb. 11, 2010

Critical role for bureaucrats

By KEVIN RAFFERTY

(コメント) 鳩山首相がイギリスの政治改革から学ぼうとするのは、やめたほうがよい、とKEVIN RAFFERTYは忠告します。むしろタイへ行くことです。日本、イギリス、タイ(人口規模はイギリスと同じ)、いずれも憲法により、王制と議院内閣制とが併存する国です。

政治家に比べて官僚は長期の改革を指導できる、政治家と官僚とのパートナーシップが築かれるべきだ、とタイのKorn Chatikavanij蔵相は語ります。それらは、かつてイギリスでも重要でした。しかし、サッチャーからブレアに至る政治改革の流れが、政治顧問たちを招き入れて「改革」を続けました。

イギリス政府が官僚制を破壊し、議会を無視して、政治顧問たちと重要な決定(イラク戦争を含む)をするようになった、と引退した官僚たちは批判します。イギリス政府は、「高潔、透明、客観性、説明、責任」といった、統治のための重要な価値を満たしていない、と。

鳩山首相は、官僚たちを非難するより彼らを正しく指揮し、法案を十分に国民に説明して、メディアや議会における議論に付すべきだ、とKEVIN RAFFERTYは主張します。


The Japan Times: Friday, Feb. 5, 2010 Sunday's stakes in Ukraine By NINA KHRUSHCHEVA

CSM February 8, 2010 Ukraine election result -- a balancing act

FP FEBRUARY 8, 2010 The Revolution is Dead. Long Live the Revolution. BY DAVID J. KRAMER

SPIEGEL ONLINE 02/08/2010 Tymoshenko vs. Yanukovych: Ukraine Remains Divided after Runoff Election By Benjamin Bidder in Kiev

FT February 8 2010 Oranges and lemons in Ukraine By Gideon Rachman

(コメント) Viktor Yanukovich2004年のオレンジ革命において悪者でした。ロシアに支援され、選挙を工作した人物です。しかし、今回の選挙では立場が逆転しました。

「西側の論者は三つの概念をあまりに性急に同じようにみなし、しばしば関連付けて言及します。すなわち、民主的な、西側に親近感のある、優れた統治。」 2004年で成立したYushchenkoの体制は、民主的で、西側に親近感を持っていましたが、国内統治(特に経済改革)に失敗しました。有権者は、この無能な政府に反対したのです。

Gideon Rachmanは、EUが東方拡大によって、当時、加盟国の増大を躊躇するようになっていたことを批判し、ウクライナやグルジアの民主化革命の成果として、EU加盟を求めます。

FT February 8 2010 Ukrainian U-turn?

The Times February 9, 2010 Orange Eclipse

The Guardian, Tuesday 9 February 2010 Ukraine: Unhappy return

WP Tuesday, February 9, 2010 Ukraine's democratic evolution on hold, for now By Anne Applebaum

(コメント) 「すべての革命は反革命を引き起こす。」 しかし、選挙結果は反革命ではない。Anne Applebaumは、民主主義とは気に入らない支配者を人びとが追放できることだ、と考えます。

Yushchenkoの支配下では、土地改革も、ソ連時代の企業の民営化も、何も進みませんでした。政治家は問題を回避し、経済危機が繰り返され、通貨価値は暴落しました。だから問題は、新しく選出された指導者Yanukovychが有権者を満足させる統治を実現できるか、です。

WP Tuesday, February 9, 2010 Did Ukraine's presidential election reverse its 'color revolution'?

IHT February 10, 2010 Curing 'Ukraine Fatigue' By STEVEN PIFER

The Guardian, Wednesday 10 February 2010 The sight of Ukraine's lumpen victor should stir the EU's own into action Timothy Garton Ash

(コメント) ウクライナは、ロシアのような偽装された民主主義ではなく、真の民主主義であることを示しました。

FT February 11 2010 Bulgakov is once again our guide to Ukraine By Misha Glenny


LAT February 7, 2010

Lower-wage jobs can spur the economy

By James N. Adler

WP Sunday, February 7, 2010

Five myths about how to create jobs

By James Manyika and Byron Auguste

(コメント) もっと雇用を増やしたい、というアメリカでも日本でも、世界中の政府が抱えている問題です。低賃金の雇用が迅速に増やせるなら、その方が良い、とJames N. Adler考えます。

オバマは雇用対策として、金融安定化の資金から中小企業向けに300億ドルを用意しました。しかしJames Manyika and Byron Auguste5つの神話を批判します。1.この2年間で700万人以上が失業し、毎月20万人以上が労働市場に参加します。緊急対策では解決できません。2.中小企業だけでなく、大企業も雇用対策に必要だ。3.グリーン・ジョブやバイオでは小さすぎる。4.生産性上昇が雇用を破壊するわけではない。それは経済全体の成長をもたらす。5.輸出の増加だけで解決できない。移転された工場を呼び戻すことは重要ではない。


FT February 7 2010

How to make a bank raise equity

By Oliver Hart and Luigi Zingales

CSM February 8, 2010

Big banks are too big – and unproductive

By David R. Francis

FT February 10 2010

Hurried reforms will not get banks lending

By Martin Jacomb

(コメント) 景気や雇用問題の対策として、金融制度改革も重要です。金融不安により株価が急落するなど、一定条件下で資本に転換される偶発転換社債(Contingent Convertible Bond、通称Coco)は金融危機を防ぐ対策として効果的か? いわば、自動的な自己資本増強を制度化します。銀行が破たんするときも救済融資を行わず、納税者の負担を回避できるかもしれません。あるいは、単に巨大銀行の分割を回避する口実でしょうか?


The Guardian, Monday 8 February 2010

The power of utopianism

Mike Marqusee

(コメント) 先週、移民問題にもユートピアがあったように、私たちにはユートピアを想像する力があります。「政治とは可能性の芸術だ。」という言葉を、現実との妥協として理解してはなりません。「政治は、可能性を再定義する芸術だ。」

現実の条件に耐えることを説くのではなく、むしろ不正義や貧困、差別や暴力の犠牲となっている人びとが、それに耐えているだけではいけないと確信し、行動することで「政治」が動き始めるのであり、真の「政治家」はこうした現実に我慢できない人々なのです。・・・

不可能であると言われたことを願う人々を「ユートピア主義」と批判するのは正しくない。現実を重視する政治は、正義や公正さについて社会を問うことの真摯な発想に対する、より大きな、共通の脅威である。他方、ユートピアは人びとの運命にも影響する強力な動機を与える。インドの独立も、アメリカのアフリカ系国民が求めた市民権運動も、彼らの言葉と行動は、彼らを抑え込んでいた可能性の領域から、彼らを解放した。

ユートピアは、不正な、非合理的な、不必要な、社会的枠組みを問い直す。そして、政治において社会を変えることで、彼らは可能性それ自体を変えるのだ。

The Guardian, Monday 8 February 2010 Let sex workers advertise Thierry Schaffauser

(コメント) ユートピアではセックスがどうなるのか? この記事(Schaffauserは、パリで7年間セックス・ワーカーであった、と書いています)はセックス・ワーカーの非合法化、広告禁止に反対しています。誰でも生活状態を改善したいし、セックスの欲求はなくならない、自由を売り渡すのは他の労働者と同じだ、と。家族制度や賃金制度に対する、最も古い反問の一つでしょう。

NYT February 8, 2010 The Dream of Zero By ROSS DOUTHAT

(コメント) ユートピアでは核兵器もない? 戦争はなくなるでしょうか? 「核兵器のない世界」はオバマのユートピア、と批判されます。

しかし、シュルツ元国務長官があいさつした“Global Zero”運動はユートピア集団ではありません。ロシア、インド、ドイツ、などから政府の元国防関係者が参加しました。しかも、記事は「これ(核兵器の廃棄)は安全保障を改善するだろうか?」と問います。アメリカの「核の傘」がなくなれば、アジアや中東で、核軍拡競争が起きるに違いない、と。核廃絶の前に、地域安全保障の枠組みが各国に信頼されなければなりません。

BBC 2010/02/10 The Mandela moment that changed South Africa James Robbins

(コメント) ユートピアでは差別がない。20年前に、ネルソン・マンデラが釈放された時から、南アフリカの人種差別制度撤廃はユートピアでなくなります。ショットガンや催涙ガスで基本的人権を抑圧してきた人種差別社会が消滅して行きました。

しかし今も、スラム街はそのままあり、黒人たちは自由であるけれど貧しい。マンデラが亡くなれば、後はどうなるのか? 黒人たちは経済の力を得ていない。

The Japan Times: Sunday, Feb. 7, 2010 Rebirth of Haiti begins with education effort By CESAR CHELALA

NYT February 10, 2010 It’s All About Schools By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) ユートピアへの道は教育から始まる? 人びとの基本的な必要を満たせずに、ハイチの社会が再建できるだろうか? 医療も、インフラも、雇用も、必要です。農業や森林を復活させ、貧しい人々を雇用して、彼らが支出できるなら、地域経済の回復を刺激できます。ハイチを離れた多くの医師やエンジニアなどが、一時帰国してハイチの復興を助けるように、彼らに賃金を支払いうことです。

THOMAS L. FRIEDMANは、イエメンの学校を改善するよう求めています。「イエメンでアルカイダを攻撃するために発射されているミサイル1基ごとに、(その資金で)少年や少女に科学や算数、批判的思考を教える近代的な学校が50校は建設できるでしょう。」

貧しいイエメンはイスラム原理主義者の教えを広める格好の標的になっています。

FT February 10 2010 US military: Arms and the man for change By Daniel Dombey, Sylvia Pfeifer and Jeremy Lemer

(コメント) ユートピアの軍隊。革命は銃口から生まれる? アメリカ軍は世界の何を守るのか? 2006年からアメリカ国防長官となったRobert Gates21世紀にどのような国際秩序を描くのか、世界の辺境までアメリカ軍を動かし、結果的に、社会を根底から変革します。

15560億ドルの財政赤字と6930億ドルの軍事予算。軍隊はもう一つのビヒモス、怪獣(そして軍産複合体)、です。その再編には、医療保険制度改革と同じような(それ以上の)政治的困難があります。

The Japan Times: Thursday, Feb. 11, 2010 The best way to rebuild Haiti By ROBERT B. ZOELLICK

(コメント) 災害の後、ユートピアが築かれる。国際的な支援と民間部門の投資、アメリカ市場の開放。政治的安定性、治安、効果的な政府、そして投資と経済発展とが互いに結び付いています。アチェが復興したように、ハイチも復興します。

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The Economist January 30th 2010

Regulating America’s banks: Stage prop

Regulating banks: Garrottes and sticks

Populists and bankers: Strange meeting

Buttonwood: No what they meant

Economics focus: From bail-out to bail-in

(コメント) アメリカの銀行制度改革について。特に、「ボルカー・ルール」は何をもたらすでしょうか? なぜ発表されたのか? それは、サマーズでも、ガイトナーでもなく、アメリカ政治の伝統的ポピュリズムです。

銀行家たちの大罪を糾弾するアメリカ国民の声に、左派ではなく右派のポピュリズムが呼応しています。人によっては、ワイマール共和国を滅ぼしてヒトラーを政権に就けた人びとの末裔、と見るかも知れません。

ボルカー・ルールは期待されている結果を実現できるのか? 記事は否定的です。銀行に対する規制は、金融市場で緊密に結びついた、それ以外の金融機関が救済を必要とする場合を防げません。また、規制には予想外の結果が伴います。アメリカのレギュレーションQや金融ビッグバン、BISによる自己資本規制に関するButtonwoodの記事は的確です。

では金融救済と金融システム破綻との間に、他の選択肢はないのか? リーマンブラザーズを閉鎖せずに迅速に債務処理をしながら取引を続ける提案が説明されています。


The Economist January 30th 2010

Reforming European economies: The cruelty of compassion

China in Central Asia: Riches in the near abroad

Scarcity and globalisation: A needier era

(コメント) ヨーロッパの好きな「社会的結束」について、The Economistが批判します。それは組織や制度のインサイダーに有利でアウトサイダーを差別し、公的部門(労働組合が強い)が肥大化するのを許してしまう、と指摘します。ギリシャの財政破綻の背景には、このヨーロッパの改革拒否があるというわけです。

広大な土地と資源はあるが、人口希薄で貧しい中央アジアと、膨大な人口と急速な工業化・軍事化を急ぐ中国が隣り合っています。中央アジア諸国が中国との貿易や投資を歓迎しつつも、移民や土地の取得に不安を強めているのも当然です。

21世紀の国家が対処しなければならない脅威とは何か? 国家のパワーはそれに対して効果的であるために何を目指すべきか? そのようなブルッキングズ研究所の報告が紹介されています。新しい脅威とは、戦争よりも資源や水、食糧の不足、そして、長期にわたって生じる人口変動、環境破壊やパワー・シフトの結果が、何かを契機として爆発的な変化を生じることです。その危険性と対応策を国家に教える上で、超国家的な専門科学機関が重要な役割を担います。