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IPEの風 2/15/10

ギリシャやハイチ、アメリカやウクライナの論評を読みながら思いました。

もしユートピアが現実に存在するとしたら、それは通貨同盟でしょう。私たちは、<日本>という通貨同盟を生きています。単なる惰性だ、と考えるかもしれません。しかし、やはり経済活動の現実と政治システムとが合致し、次々と生じる内外のショックを、集団的な統治能力によって切り抜けてきた成果ではないでしょうか。

ユーロは、異なる政治体制を含む16カ国が採用する共通通貨です。日本もかつては異なった国に分かれていた時代があったでしょう。異なる通貨圏があったわけです。今も、中国とアメリカは固定レート制度を採用し、暗黙の経済・政治同盟を維持しています。ユーロ圏であれ、日本であれ、米中であれ、人びとは共通の金利と為替レートの下で生きるために、政策に関する協議を行い、赤字主体への融資や財政的支援を提供し、程度の差はあれ、安全保障や治安、社会保障、保険による所得移転を介して助け合います。

確かに政治統治は失敗することがあります。デフォルトや債務切り捨て、救済融資や切り下げといったことは、個人でも企業でも、容易に行えません。しかし、危機が深まれば費用と便益に関するバランスが変化し、長期の利益に対する政治の見方も変化します。戦争も通貨危機も、秩序の転換・調整過程で起こります。

特に、不確実な将来の利益と現在の苦境は同様に比較できず、誰もが現状を変えた方が有利である、という判断に傾くときがあるでしょう。人種差別や、特定の問題・イデオロギーに固執する政治集団が、ばらばらな党派の中で、異常に大きな影響力を示すときもあります。そのような状況で、指導者たちは安定した政治基盤を得られず、結局、短い政治生命に対して、長期の破壊的な影響は予測しても意味がなく、軽視され始めるのです。

ユートピアや、非正統的な政治経済思想が、社会を変える力を得るのもそんなときです。

以前、ケンブリッジの研究者に質問したときに得た答と、The Economistが紹介していたM.フリードマンの言葉が一致していることに驚きました。「既存の政策に代わるオルタナティブを開発すること。それらを生かしておくこと。政治的に不可能なものが政治的に不可避になるときが来るまで。」

人口30万人のアイスランドでも、1億人の日本でも、3億人のユーロ圏や、10億人を超える米中同盟でも、それに代わるさまざまな思想や制度が危機の中で登場する機会を待っています。

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私が思うような読者は、いなかったのか。伊豆先生にも言われたように、病気を機会に、この試みは閉じます。

4月からは学生の皆さんに利用してもらうよう、もっと簡潔に、IPEの材料を載せます。

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電車の中で,The Economistを読んでいました.台湾をめぐる米中関係や,ギリシャ危機と財政赤字の抑制,つまり,安全保障と財政に関して,アメリカも,EUも,中国や日本も,さまざまな制度を介して調整していることに感心します.

これが私の思うIPEです.

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