今週のReview
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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イタリア移民暴動、 ハイチ大地震、 チリとウクライナ、 ギリシャとラトビア、 De GrauweとSamuel Brittan、 ボルカー・ルール、 共産党銘柄、 日米安保体制、 オバマの不人気、
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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
LAT January 13, 2010 Immigrant unrest in Italy
(コメント) 「アメリカは建国以来、移民と民族の問題に苦しんできた。だから、何世紀も概ね同質的であったヨーロッパにとって、これらが相対的に新しい問題だということを忘れがちである。しかし、このことを思い出したのは、先週、数百人のアフリカ人労働者たちが、3日間の暴動を起こしたからだ。暴動は、イタリア南部カラブリア地方で、若者たちが外国人農業労働者をエア・ライフルで脅したことに対して起きた。」
イタリアには、豊かな北西ヨーロッパに移民労働者を輸出してきた歴史があります。その一方で、農村には労働者の不足に対してアフリカから労働者を輸入したのです。カソリックの国であり、宗教や民族の異なる人口が増加することに反発し、移民問題がイタリア政治を混乱させています。
イタリア政府はブルドーザーで移民たちの住宅を破壊し、約1000人を強制的に移住させた、と言います。合法・非合法の移民労働者たちは、一日30ドル以下で柑橘類や野菜の摘み取り作業に従事し、日頃からマフィアに保護料を支払わされていた、というのです。移民たちがそれを「搾取」と感じるのは当然です。
イタリア人は、農作業だけでなく、介護や子供の世話など、使用人として外国人労働者を雇います。また移民たちは道端で非合法な店を開き、安価な生活品を売買していますが、景気が悪くなると彼らも非難されます。病気の原因だとして非難し、あるいは、モスクを禁止し、中華レストランの提灯を禁止します。移民は子供の教育や国籍でも差別されます。
何よりも、イタリア政府はこの暴動を取り締まったことについて何のコメントも発表していません。マフィアの支配する南部が彼らの支持者であるからだろう、と記事は推測しています。
The Guardian, Thursday 14 January 2010 France needs a real debate on identity Pascal Blanchard
YaleGlobal , 14 January 2010 Beyond Minarets: Europe’s Growing Problem with Islam Shada Islam
BBC, Thursday, 21 January 2010 French burka ban looms Gavin Hewitt
The Japan Times: Thursday, Jan. 21, 2010 Anxiety fuels the rise of European nativists By DOMINIQUE MOISI
(コメント) Shada Islamの論説は的確です。
人口の3%に過ぎないイスラム教徒の移民に対して、ヨーロッパの人々は文化の違いによる摩擦を意識し、移民が多すぎると感じています。さらには失業増の責任をイスラム教徒や移民に負わす、過激な宣伝を繰り返す政治家が増えています。
ヨーロッパの治安、繁栄、安定は、イスラム人口をヨーロッパが統合する能力にかかっています。ヨーロッパの諸政府はそのことを意識し、行動しつつあります。しかし、その関心は国内の治安維持に偏っており、イスラム教徒の移民と人口増加の歴史的背景を無視しています。
ヨーロッパ人は、政治を宗教から分離したように見えながら、自分たちをキリスト教徒の国とみなし、イスラム教徒を「他者」とみなし、政治家でさえ「反感」を抱くことも否定しません。フランスのサルコジ大統領はブルカを攻撃し、ドイツのメルケル首相はトルコのEU加盟に反対します。こうした指導者の言動が、一般市民のイスラム教徒に対する差別的な態度を容認し、奨励しています。
逆に、オランダやイギリスのように、移民を差別する過激な発言は政治をゆがめ、福祉国家を分断し、外国人排斥を強調する集団に地方選挙や議会を混乱させてしまうわけです。他方、イスラム教徒のコミュニティーは自分たちの社会的慣習が認められるよう、ヨーロッパの法律に一定の特例や特権を要求します。
ヨーロッパ社会の伝統的な寛容さが失われ、ユーラビアが建設されつつあるのでしょうか?
Shada Islamは、事実を調査するとともに、それに合った政策を求めます。たとえば、学校教育をどうするか? 社会福祉やテロ対策をどうするか? ヨーロッパが多様な社会であり、そのメンバーが互いを尊敬できることが目標でなければなりません。
DOMINIQUE MOISIもイタリアの移民暴動やフランスを考察しています。ヨーロッパ政治を支配するもっとも強力な要因が「他者(よそ者)への恐怖」となりました。アイデンティティー、生活スタイル、安全、信仰、職場・・・。「イスラム化への恐怖」。
グローバリゼーションの未来に不安を感じる者が増えれば、人びとはアイデンティティーを守ることに向かいます。もし近代化することの負担に耐えられないと思えば、他者とともに成果を高めることより、近代化する過程で現れる他者を排除し、攻撃します。
興味深いことに、フランス人がそれを意識したのは、アルジェリアのサッカー代表チームがエジプトに勝ったときでした。アルジェリアからの移民たちがフランスの通りにあふれて、その喜びと興奮を爆発させました。他方、同じ夜のフランス代表チームが行った試合は無視されたのです。もしアルジェリアチームとフランスチームがパリで対戦したらどうなるのか?
もしフランス人の若者の多くがイスラム教徒になったら、フランス政府はどうするのか? 私たちは、なぜ自国に対して愛着を持つのか? その価値を明確にしなければなりません。アジアの台頭にも、恐怖が正しい対応をもたらすことはないでしょう。
The Guardian, Wednesday 13 January 2010 Will Google stand up to France and Italy, too? Rebecca MacKinnon
Jan. 14 (Bloomberg) ‘Don’t-Be-Evil’ Guys Tell China to Google This William Pesek
(コメント) 中国だけでなく、民主的な国家でも、情報の管理を求めています。
中国の13億人をインターネットのない世界から抜け出すように求めるのは、株主が反対し、他の多国籍企業も追随しないでしょう。マイクロソフト、ヤフー、シスコ・システムズ・・・
FT January 15 2010 China and the west: Full circle By James Kynge
FP JANUARY 15, 2010 Beijing's Foreign Internet Purge BY JORDAN CALINOFF
NYT January 17, 2010 China at Odds With Future in Internet Fight By SHARON LaFRANIERE
The Guardian, Monday 18 January 2010 In America's new cyberwar Google is on the front line Misha Glenny
FT January 18 2010 Why America and China will clash By Gideon Rachman
(コメント) グーグルの中国撤退は、単なる企業の問題を超えて、米中対立の始まりになる、とGideon Rachmanは考えます。なぜなら、アメリカは天安門事件以後も、中国の経済発展は政治的なリベラリズムを強化する、と考えてアメリカ市場を中国製品に開放し、米中関係を友好的に続けてきたからです。その前提は正しくない、と考え直すかもしれません。
ビル・クリントンも、ジョージ・W・ブッシュも、情報化の時代に、自由貿易は中国の政治改革を不可避なものにする、と確信していました。しかし、レーニン主義の独裁政党を強化し、為替レートを政治的に動かしてアメリカの労働者を大量の失業させているのであれば、中国に対して市場を閉鎖した方が良いのではないか? 自由貿易と情報網は、中国が世界市場に依拠して成長するための必要条件ではなかったのか?
中国は世界第二の経済規模を達成し、それでもLiu Xiaoboのような国内の反体制派・民主化運動を弾圧し続けています。アメリカ議会は、国内の労働組合が中国の為替レートを非難する声も無視できません。グーグルへのサイバー攻撃や情報スパイは、アメリカの安全保障に対する不安を生じています。
Jan. 19 (Bloomberg) Google Sends Right Message to China’s Police State David Pauly
SPIEGEL ONLINE 01/19/2010 Google Under Attack: The High Cost of Doing Business in China By Marcel Rosenbach, Thomas Schulz and Wieland Wagner
BBC, Wednesday, 20 January 2010 What next for Google in China? Maggie Shiels
FP JANUARY 19, 2010 Raging Against the Machine BY AMANDA RIVKIN
WP Wednesday, January 20, 2010 What Hillary Clinton, Google can do about censorship in China By Caylan Ford
The Japan Times: Thursday, Jan. 21, 2010 Citizens lose in Google vs. China By FRANK CHING
(コメント) 「これはインターネットの世界における21世紀の最強国と最強企業を決める闘い、キングコング対ゴジラである。」
グーグルを支持したヤフーに対して、ヤフーと提携関係にある中国のアリババ・グループは「証拠がない」とグーグルに反対しています。しかし、アメリカ政府の機関やインド政府にもサイバー攻撃が行われ、アメリカやヨーロッパの各地にも中国からの攻撃があったと疑われる、という、インドの国家情報顧問の発言が紹介されています。
FBIの報告書は、中国には3万人の政府情報スパイ、15万人以上の民間コンピューター専門家がいる、と指摘しています。彼らはアメリカの軍事・技術情報を奪い、政府や金融部門のサービスを混乱させることを目標にしている、と。
グーグルは利益を失い、中国政府はメンツを失い、中国人は情報利用の自由を失いました。
YaleGlobal , 21 January 2010 China and Google: Searching for Trouble – Part II Jeffrey Garten
(コメント) GoogleとChinaは西側と中国が育てる2匹の怪獣ですが、その理念が異なります。西側は、開放性やグローバリゼーションを追求し、中国側は、管理とナショナリズム、アングロサクソンの影響力を減らすことを目指しています。
しかし、現状を考えるなら、中国側が優勢である、と認めています。西側は債務を累積しており、中国からの投資を必要としています。イランや北朝鮮の核武装を抑えるのも中国の影響力に依存しています。国際政治においても、多くの政府が中国側に気を使い、反対しないでしょう。Jeffrey Gartenは、もし国連総会で投票させたら、中国の検閲に反対するサーチ・エンジン企業は負けるだろう、と書いています。
しかも、グーグルは西側の大企業から支持されないでしょう。中国の生産工場や市場規模に魅せられた西側企業は、中国政府の方針に従います。1980年代・90年代に比べて、西側企業の評価は落ちています。
こうした中国側の優位は、この先も続きそうです。しかし、Jeffrey Gartenは中国に現れた中産階級がもっと情報を求め、中国側のインターネット世界を急速に拡大し、活気づかせる結果として、中国政府の情報隔壁(ファイアー・ウォール)を乗り越え始めるだろう、と予想します。
WP Thursday, January 14, 2010 What we can do to help Haiti, now and beyond By Bill Clinton
The Guardian, Thursday 14 January 2010 Obama's Haiti is not Bush's Katrina Dan Kennedy
(コメント) イラクであれ、ハイチであれ、つまり、ブッシュであれ、クリントンであれ、領土を超えてガバナンスを改善したいという熱意は疑いなく日本人の想像を超えており、その行動が支持されることも、私たちにとって驚きです。ビル・クリントンは書いています。
「大統領として私はハイチの軍事独裁体制を終わらせ、選挙で選ばれた大統領がハイチの政権を握るように行動した。昨年6月、私はハイチの長期的発展を助ける国連特使という使命を引き受け、外国政府の支援、民間投資、NGOsの協力と貢献にハイチからの避難民を増やすよう働きかけた。それは、ハイチが最も必要としている、より多くの仕事をもたらし、よりよい教育、よりよい医療をもたらし、森林伐採を減らし、クリーン・エネルギーをもたらすことに役立つ。」
破壊された建物を撤去し、死者を埋葬し、被災者に住む場所や食糧を与え、医療を受けられるようにしてやりたい。長期的に配置を再建するため、彼らの住宅や雇用、しっかりした学校や医療設備を建設したい。ハイチには政府、企業、市民からの助けが必要である。そのためにも資金が必要だ。ハイチの救援ファンドに協力してほしい。・・・まさにオバマの選挙運動を支えたように、ハイチ20222、これで国連救済基金に10ドルが寄付されます。
ハイチの大地震はハリケーン・カトリーナのように、アメリカ大統領(今度はオバマ)の無能さを暴露する事件になるのでしょうか? 右派のラジオやテレビ番組が、そうだ、と叫んでも、Dan Kennedyは否定します。ハイチはアメリカの51番目の州ではないのだから。
WP Friday, January 15, 2010 Averting chaos in Haiti
NYT January 15, 2010 Help Haitians Help Haiti
FT January 15 2010 Tropical nightmare
NYT January 16, 2010 Resolve Among the Ruins By BOB HERBERT
(コメント) ハイチとは何か? 大地震が来たからハイチは苦しんでいるのではなく、その前も子供たちは病気に苦しみ、簡単に死んでしまった、とBOB HERBERTは回想します。
「何年も前に、ハイチの記事を書いたとき、ある男性が私をピックアップ・トラックの荷台に乗せて、二人の幼い子供を見せに連れて行った。彼らは明らかに病気であった。暖かい夜だったが、二人とも震え続けていた。
その男性は二人の子供を連れて、アメリカに密入国させてほしい、と私に頼んだ。『ここにいたら彼らは死んでしまう。』 アメリカに行けば、彼らは無事に『強く育つだろう』、と彼は言った。
私は、それができないことを、子供たちを連れていけないことを、説明しようとした。男性はそれを丁寧に聞いてから、ありがとう、と言った。そして、深く絶望しながら、トラックに乗って、走り去ったのだ。」
奴隷制、植民地支配、強大な外国軍の侵略、そこにアメリカも含まれています。そして、醜悪な独裁者たち、自然の猛威。火曜日に襲ったのは、大地震でした。
「ハイチの人民は、フランスの植民地支配に反抗して蜂起し、ナポレオンの軍隊を倒した。奴隷反乱から誕生した唯一の国家である。・・・長年に及ぶ内紛、腐敗、テロ、慢性的貧困、それらをハイチ人民は耐えてきた。」
ハイチ人民は大地震にも負けないだろう、とHERBERTは願います。ハイチがその歴史を学ぶなら。私たちがこの惨禍から立ち直る人道的な協力方法を学ぶなら。・・・人間には魂があり、同情し、犠牲を顧みず、耐えることができる。真に高貴な、決意を固めた魂は、惨禍と不幸の中にあって、その存在を輝かせる。
WSJ JANUARY 16, 2010 Don't Let Haiti Return to the Status Quo By STEPHEN JOHNSON
The Observer, Sunday 17 January 2010 Haiti needs long-term commitment from us all
WP Sunday, January 17, 2010 After the earthquake, how to rebuild Haiti from scratch By Jeffrey D. Sachs
(コメント) 「ハイチが直面しているのは、単なる自然災害ではなく、自然と貧困と政治との地殻変動である。」さらにJeffrey D. Sachsは認めています。自身が起きる前でも、ハイチの約1000万の住民の半数は極貧状態で、斜面に建つ粗末な小屋に住んでいた。2008年のハリケンで受けた被害からも回復できていなかった。政府が対応する力を持たないのは明らかで、またハイチを取り囲むアメリカなどの諸国も、長年、支援と復興を約束していただけで、成果は乏しかった、と。
「過去20年間、アメリカのハイチ介入は民間投資を助けるよりも損なってきた。1990年代初め、アメリカは禁輸措置を解除することでハイチの民主化を支援できると考えた。特に、民主的に選挙で大統領になったアリスティードを政権に復帰させたからだ。禁輸はハイチの脆弱な製造業を破壊していた。」
「しかしその後、アメリカのイデオロギーが転換し、ブッシュ政権は数年にわたってアリスティードを失脚させようとした。最初、国際機関によるハイチ援助をだまして取りやめさせ、事実上、非合法に凍結した。その後、図々しくもアリスティード政権を転覆し、彼を中央アフリカ共和国に連行した。議会はこの浅ましい行為を監視することもせず、単にハイチ人民への親愛の情を示したに過ぎない。」
Jeffrey D. Sachsは、アメリカが今、数百万人ものハイチ人を救えるのに、彼らを見殺しにすれば、のちの世代に破滅のツケが及ぶ、と主張します。そして、緊急支援の注意点や資金集め、さまざまな物資の供給だけでなく、公務員(特に、警察官、教師、看護婦、エンジニア、など)に対する給与の支払いを続けること、1年間選挙を中止すること、貨幣供給の準備をIMFが助けること、食糧援助だけでなく、貧しい農民たちに次の工作を始めるための支援を行うこと、中国が必要な工場を解体して、それらを届けてハイチで組み立て直す、という支援を行えること、など、興味深い具体的な指摘を行っています。
ハイチ再建基金の必要額を推定し、アメリカ政府は直ちに10億ドルを提供するが、その資金調達方法は、銀行家たちの受け取る、決して正当化できない高額のボーナスに対する追徴金で集めるのが良い、と主張しています。
NYT January 17, 2010 Eight Ways to Rebuild Haiti
The Times January 18, 2010 Fear of the poor is hampering Haiti rescue Linda Polman
WP Monday, January 18, 2010 Haiti is dangerously close to new disasters By Anne Applebaum
(コメント) Anne Applebaumはハイチの映像に苦悩し、国境なき医師団に寄付します。しかし、幻想は持っていない、と書きます。自分の寄付で何ができるか、医師の力で何ができるか。この災害は、自然のもたらしたものではなく、人間が創り出した環境で起きたのです。だから、それは繰り返されるのです。
「地震の破壊力は強いが、その衝撃はハイチの市民社会の弱さと法の欠如によって、何十倍にも、何百倍にも強められている。」実際、それは衛星写真でも明らかだ、と書いています。独裁者ノリエガが支配したハイチでは森林伐採が国土を荒らし、地滑りや家屋の倒壊が日常的に起きるのです。他方、同じ島の東側はドミニカ共和国で、豊かな緑が残っています。
ハイチには、また、公共機関や秩序が何もなくなったのです。議会、教会、病院、政府の役所が、すべて倒壊しました。大司教も国連の責任者も亡くなりました。ギャング団が闘争し、救援物資を奪い合っています。このままでは伝染病、大規模な飢餓、そして、内戦状態に向かうでしょう。
ハイチを再建する物資や指揮・監督者は、それゆえ、外から来るでしょう。しかし、アメリカの介入はハイチ人にとって植民地支配のイメージであり、不当な軍事介入や文化帝国主義を嫌っています。・・・ビルとヒラリーがハイチに新婚旅行したことから、今もハイチの支援に本気で取り組むことは、ハイチ人にとって大きな幸運であってほしい、と願います。
The Guardian, Tuesday 19 January 2010 Our Haiti hypocrisy Jeremy Seabrook
FP JANUARY 19, 2010 How to Help Haiti Rebuild By Paul Collier and Jean-Louis Warnholz
The Guardian, Wednesday 20 January 2010 Haiti's suffering is a result of calculated impoverishment Seumas Milne
The Times January 21, 2010 The fault line in Haiti runs straight to France Ben Macintyre
(コメント) ハイチの悲劇は、200年前のフランス植民地が負わされた奴隷制と債務にさかのぼる、とBen Macintyreは主張します。
18世紀、ハイチはカリブ海の真珠、世界最大の砂糖プランテーションを運営し、フランスが支配する富の中心でした。その間、フランスは奴隷たちを酷使して死亡させ、毎年5万人を輸入していた、と。1804年、奴隷の指導者Toussaint L’Ouvertureに率いられた反乱軍がフランス軍を破って独立を宣言します。
しかし、その後もフランスはハイチを許さず、800のプランテーションが破壊され、3000のコーヒー農園が失われた、と言います。貿易が封鎖され、旧所有者たちは奴隷制の再導入と侵攻を求めましたが、フランスは債務を負わせて搾り取ることを選択します。1825年、独立を承認する代わりに、1億5000万ゴールド・フランの支払いを要求しますが、それはハイチの年間輸出額の5倍に相当しました。フランスは交渉を拒否し、12隻の軍艦を送って受諾させました。その後、ハイチは122年間も支払い続けます。
1947年に支払いが終わったとき、ハイチの経済は絶望的なまでに歪められ、森林は失われ、貧困と政治・経済の不安定さに沈んでいました。
The Guardian, Thursday 21 January 2010 We can turn Haiti around Kofi Annan
SPIEGEL ONLINE 01/21/2010 Rescue By Sea: American Navy 'Here To Help, Not To Occupy' By Marc Pitzke on the USS Carl Vinson
WP Thursday, January 21, 2010 Rich countries must prepare long-term effort to help Haiti
NYT January 21, 2010 Some Frank Talk About Haiti By NICHOLAS D. KRISTOF
(コメント) 「ハイチの問題はその土地の人びとではない。ハイチ人は賢く、働き者で、親切だ。アメリカのハイチ人は多くが成功している。」
犯罪者と腐敗がはびこり、教育を受けない人びとや迷信が支配する土地に、援助をしても何の役に立つか? ハイチを貧しくしたのは、最初はフランスの支配と債務であり、その後はハイチの因習・邪教であった、と。だからWSJのように、ハイチを助けるために、援助をやめろ、という論説も出るのです。あるいは、イースタリー教授のように考えます。「援助は必要だ。ただし、地震の犠牲者に届くなら。」
ハイチは恵まれた条件にありながら、自国の問題で今も貧しい。カリブ海には戦争もないし、アメリカ市場が近い。衣服の工場を建てるのに、これほど有利な土地はない、と開発経済学者は言うでしょう。ハイチ人は何よりも職場を求めているのに、バングラデシュに衣服工場は経っても、ハイチにはほとんどありません。
「ハイチはこれまでずっと貧しかった。だから将来も貧しいだろう。その宿命論こそが、悪魔との契約である、と。」
FT January 14 2010
FT January 18 2010
A change for Chile
LAT January 19, 2010
Chile's election of conservative tycoon is democratic milestone
(コメント) ピノチェト独裁体制の後、チリの社会民主主義政権はラテンアメリカの進歩を代表する政策を実現してきたはずです。しかし、その継承に失敗しました。僅差で、中道左派の与党勢力Concertaciónを破り、保守派の富豪、ピネラSebastián Piñeraが勝利した、ということです。
政権を握る右派が、過去の保守勢力から完全に変身したことを示し、社会民主的改革の良い部分を継承する姿勢を示せるかどうか、が問われます。そしてチリでも、政府が正しい政策を実現したかどうかよりも、長期政権による政治への倦怠感が転換Change! を求める流れを生んだ、と分析されています。それを民主主義の成熟と考えてよいかどうか。現実に素晴らしい成果を上げた現政権に比べて、ピネラ(航空会社やテレビ局を所有し、俗に「チリのベルルスコーニ」と呼ばれる)の公約は実現する政策をともないません。
最大の問題は、旧ピノチェト政権下で侵された犯罪を公正に裁けるか、ということです。
LATは、ピネラがその支持基盤である政党よりも穏健で、ハーヴァード大学出身のエコノミストでもあり、ピノチェト独裁の時代から抜け出したことを示した、と称賛しています。
BBC 2010/01/14 Ukraine election focuses European minds on gas By Gabriel Gatehouse
FP JANUARY/FEBRUARY 2010 Crimea and Punishment BY ANDERS ÅSLUND
The Guardian, Friday 15 January 2010 Ukraine's colourful elections Leigh Turner
SPIEGEL ONLINE 01/18/2010 Presidential Election in Ukraine: Moscow Is the Clear Winner By Benjamin Bidder in Moscow
FP JANUARY 18, 2010 Seeing Orange BY SAMUEL CHARAP
(コメント) 他方、ヨーロッパでは1月17日のウクライナ大統領選挙に注目が集まりました。それはロシアとウクライナが天然ガスのヨーロッパ向けパイプラインについて紛争を重ねてきたからです。ロシアは利益を、ウクライナは独立を、互いに脅かされる存在です。特に、ウクライナの「オレンジ革命」が、ロシアより西側に近い政権を成立させてから紛争が深刻になりました。EUも、ウクライナの政治家たちが示す妥協と動揺を嫌います。モスクワとキエフが共謀して、EUから利益を搾り取るための紛争ではないか? 天然ガスの地政学は果てしなく続きそうです。
ANDERS ÅSLUNDは旧ソ連圏の優れた研究者です。彼は、ロシアとウクライナほど似た国はない、と強調します。民族や宗教、そして何千年も歴史を共有しているのです。
ウクライナの経済危機は、再び、ロシアに政治介入の機会を与えました。そして200万人のロシア人が住む、クリミア半島の帰属について、ロシアが主権を主張しました。黒海に突き出た半島で、セバストポールはロシア艦隊の重要な軍港です。エリツィンは、ウクライナ独立を認め、ウクライナは軍港の20年間におよぶ貸与を認めました。ソ連時代の覇権を賛美するプーチンは、その領土回復を狙っています。クレムリンが2000年のウクライナ大統領選挙に介入した、と考えられていますが、それは逆にオレンジ革命を刺激しました。
「それ以来、ウクライナとロシアとの関係は悪化し続けてきた。2006年1月と2009年1月、西欧向けのパイプラインでもあるウクライナへの天然ガス供給をロシアが閉じた。2008年、アメリカがウクライナのNATO加盟を唱えると、プーチンはウクライナの存立それ自体を否定すると脅しました。クリミアから8000人の海軍がグルジアに向かえば、ユシュチェンコ大統領はその帰還を拒み、グルジアにミサイルを供給してロシア軍機を撃ち落とさせた。」
ウクライナ大統領選挙は、再びプーチンの介入を問うものです。前の選挙でプーチンが支援した、軍部・国防省を支配するヤヌコヴィッチViktor Yanukovichと、今度はプーチンの支援を受ける、先のオレンジ革命の指導者でもあるユリア・ティモシェンコYulia Tymoshenko首相の一騎打ちです。クリミア半島とロシア民族主義者はプーチンの切り札です。アメリカの関心もクリミア半島にあります。
Benjamin Bidderが伝えるところでは、第一次投票でヤヌコヴィッチが勝利しました。決選投票は分かりません。しかし、いずれの候補もNATO加盟を訴えておらず、ロシアとの関係改善を目指すという意味で、プーチンの勝利でした。
WSJ JANUARY 14, 2010
Greece and the Single Currency
FT January 19 2010
The Greek tragedy deserves a global audience
By Martin Wolf
BBC 2010/01/20
The dark side of Greece's economic ills
By Paul Moss
FT January 21 2010
Greece will fix itself from inside the eurozone
By George Provopoulos
(コメント) ギリシャの経済・財政・通貨危機は続いています。それはギリシャの起源、2600年前のリディアにおけるコイン鋳造にまでさかのぼることができる、とWSJは書いています。債務を支払うために悪鋳(コインの質を落とす)を繰り返す歴史でした。1980年代には20%のインフレ率であったギリシャが、ユーロ圏の財政赤字の上限をはるかに超えて支出を続けていることは、ユーロ圏解体の予想を強めています。
Martin Wolfによれば、ギリシャはヨーロッパの財政赤字という「炭鉱のカナリア」でしかありません。インフレと財政赤字を抑える戦いで、ギリシャがユーロ圏の30年戦争における戦場となるわけです。この戦いがギリシャにとって苦しいのは、財政赤字の削減コストを緩和する為替・金融政策を失っているからです。世界の主要経済を比較しても、ギリシャは最も需要の抑制的なユーロ圏に属してしまいます。
しかも、ギリシャの競争力はユーロ圏内で悪化しています。ユーロに帰属したことで金利の低下を楽しみ、投資や消費にふけったツケがコスト上昇となって残された、と言えるでしょう。この問題は、ユーロ圏に属してブームとバブルを味わった他の諸国にも共通します。
しかも、たとえ苦しい財政赤字削減を行っても、それによる金利低下の利益は小さなものであって、その過程で深刻な不況を経験すれば財政赤字を増やし、有権者の不満も抑えられません。ギリシャには4つの未来があります。1.ユーロ圏離脱。2.ユーロ圏による救済。3.自主的な財政再建。4.債務不履行。
Martin Wolfは、デフォルトは経済危機を深刻にするだけであるし、ユーロ圏離脱も政治的な破滅であろう、と考えます。特に、ユーロ圏が不安を強め、他の脆弱な加盟諸国に危機が波及して、国際金融市場を麻痺させます。ではユーロ圏がギリシャの財政赤字を救済するのでしょうか? Martin Wolfはこれにも否定的です。そのモラル・ハザードが余りにも深刻だ、と考えるからです。それができるとしたら、ユーロ圏が加盟国の財政再建を直接管理することでしょう。つまり、緊急時の政治統合が進むわけです。
いずれも非常に難しい以上、可能な限り、ギリシャは自主的な再建策を繰り返すほかない、と結論します。その苦しみを緩和するのは、ECBの金融緩和とユーロ安による輸出です。ところがアメリカも日本も、中国までも、同じようなことを考えるなら、いずれの希望も挫かれます。1930年代、金本位制を離脱して独自通貨という「安全弁」を各国が得たのは、このような状況であった、というド・グローブの示唆を紹介しています。
ギリシャ中央銀行のGeorge Provopoulos総裁(ECB理事)は、ユーロ圏離脱がどのような結果を招くか、それらを示すことで自主再建を説得します。
The Guardian, Friday 15 January 2010
Mark Weisbrot
FP Friday, January 15, 2010
Top Risk No. 9: Eastern Europe -- Elections and Unemployment
By Ian Bremmer and David Gordon
NYT January 18, 2010
After Dubai
(コメント) ラトビアのブームは世界金融危機と不況によって終わり、やはり財政赤字と通貨危機を生じています。しかし、ここではユーロをまだ採用しておらず(しかしユーロとの固定レートを守り、ユーロ加盟への政治的意志が強い)、IMFによる融資と財政再建が行われてきたわけです。Mark Weisbrotは、その再建策を批判します。「ラトビアの首都リガにおいて、コーヒーショップには客がおらず、建設工事はすべて止まり、人びとは国外へ出稼ぎに向かった。」・・・2年間でGDPの24%を削るのがIMFの仕事か? これはアメリカの大恐慌で最悪の時期よりもひどい数字です。
不況時に財政緊縮策を続ける政府など、欧米にはないはずですが、ラトビアではそれが主張されます。ユーロとの固定レートを守る唯一の道だ、という理由で。過大評価された固定レート制を維持するために不況を続けるのは、アルゼンチンと同じです。しかも、ラトビアのような小国は、為替レートを大きく切下げるとインフレが生じます。その後も、通貨価値の安定化は期待できません。
Mark Weisbrotは、インフレよりも不況・失業を重視し、インフレ加速や通貨不安の危険性(そして国際的波及)を誇張するIMFの考え方を批判するわけです。IMFの使命は、過剰な債務の削減や為替レートを適正水準に安定させることであり、政府と協力しなければならないはずです。IMFは大国に対してだけケインジアンだ、と。IMFが心配しているのは、ラトビアの危機がバルト3国に波及し、融資している西欧の諸銀行、特に、オーストリア、スウェーデン、ベルギー、フランスに及ぶことです。
ドバイはアブダビが救済します。しかし、東欧、バルト海にかけて、通貨・金融危機と不況、そして、できたばかりの民主的選挙という劇薬が混じっています。NYTは、この劇薬を飲むには、欧米諸国が銀行に行ったような、金融救済を脆弱な諸国に拡大するほかない、と主張しています。
FT January 14 2010 Separating investment banks will not make us safer By Marc Lackritz
(コメント) グラス=スティーガル法を再建しよう、というアメリカ議会の動きに反対しています。その理由は、金融システムが全く変化したことを忘れているからです。1933年のグラス=スティーガル法を再現しても、新しい金融危機の多くは防げないだろう、と主張します。
この分離がまだあったときでも、1987年の株価暴落は防げなかったし、1980年代のS&L危機、90年代の不動産融資問題、97年のアジア通貨危機は防げなかった。「危険な活動」はいたるところにある。融資は多すぎたし、レバレッジを使いすぎたし、不透明で、監視も不十分だった、と。
商業銀行にとって「何が危険すぎるのか?」 保証? 証券化? 融資活動それ自体? 技術革新とインターネットが金融市場を全く作り変えてしまったのに、グラス=スティーガル法が膨大な資源をつぎ込んで、それを決めることを望むのか?
BBC, Friday, 15 January 2010 Will Obama's tax go global? Robert Peston
NYT January 15, 2010 Bankers Without a Clue By PAUL KRUGMAN
(コメント) 政府の金融危機原因究明委員会が始まりました。金融界の指導者たちは何を答えたか? 「金融危機は繰り返し起きている。」という言い訳を、PAUL KRUGMANは強く批判します。危機は長く抑えられていたが、大恐慌の教訓を忘れたとき、金融システムは不安定化した、と。他にも、「ハリケーンと同じように、だれにも予測できない。」「神の御業ではないが、多くの人びとの行為によって起きるものだ。」・・・言い訳ばかりです。
PAUL KRUGMANは、金融危機を偶然とは考えません。政策や制度変更の結果として、その条件が形成されました。
FT January 15 2010 Obama is right to clobber Wall Street
(コメント) アメリカの大衆はいつも銀行家たちを法廷に引き出したいと願っている、とFTは書いています。しかし、これは単なるポピュリズムの政治ショーではないのです。危機への救済融資や財政資金の投入は、銀行家と株主たちを以前より豊かにしました。他方、政府は最初の1250億ドル投入だけでも470億ドルの損失を被っています。アメリカ国歌はその不均衡を正す権利があるのだ、と。
FT January 17 2010 Smarter ways to punish a banker By Clive Crook
FT January 17 2010 Ominous lessons of the 1930s for Europe By Paul De Grauwe
(コメント) 現代のわれわれが知っておくべき大恐慌の教訓をPaul De Grauweは整理します。ECBも日銀も、この論説を真剣に読むことでしょう。
すなわち、1.十分な貨幣供給。2.景気が回復するまで、財政再建を延期する。これらは危機への対策として世界で一斉に行われました。しかし、十分に学ばれていない教訓がある、というのです。それは金ブロック(フランス、イタリア、ベルギー、オランダ、スイス)のデフレです。今も同様に、ユーロ圏が増価とデフレに苦しんでいます。
De Grauweは、1930年代との類似性を強調します。当時も今も、英米が金本位制を離脱して金融緩和し、通貨価値を切り下げました。金ブロック諸国はその結果として、20〜30%も通貨が過大評価された、と言います。それは現在、金融危機後の英米における金融緩和と量的拡大策に対して、より慎重なECBの姿勢がユーロ高をもたらし、そのドルに対する過大評価の幅とほぼ一致するわけです。いずれの場合も、ヨーロッパの輸出は減少し、デフレが長引きました。
なぜユーロ圏は、1930年代の金ブロックと同じ失敗を侵すのか? De Grauweは、その原因を経済学の正統的な理解に求めます。当時、経済学の正統派は金本位制を維持することを主張しました。今、正当派は中央銀行に物価の安定を求め、為替レートは市場に委ねるべきだ、と主張します。それゆえECBは、ユーロ高を是正する金融緩和には消極的です。
しかし、当時も今も、対外不均衡や為替レートの過大評価を放置することは国内の均衡回復を妨げ、大きなコストをもたらします。De Grauweは、中央銀行が為替レートに影響できない、という反対論を、誤解である、と否定します。中央銀行は、通貨を供給することで、いつでも為替レートを減価できます。英米の中央銀行が金融緩和を積極的に行う一方で、ECBが限られた金融緩和しか行わず、通貨供給の増大を嫌った結果、ユーロの増価が過度に進んだのです。
もちろん、英米にもインフレ再燃の危険があります。しかし、ユーロ圏のデフレ長期化をECBは無視してはならないのです。・・・日銀も。
FT January 17 2010 Banking: Rarely pointed finger By John Plender
The Guardian, Monday 18 January 2010 Extend bank tax to do the business Dean Baker
FT January 18 2010 Bank fee has merits but lacks financial clout By Mohamed El-Erian
(コメント) オバマ政権が考える銀行への追徴金“Financial Crisis Responsibility Fee”を批判します。特に、それが個別金融機関の行動をゆがめるだけで本当に必要な金融市場の構造や制度の改革を先送りしてしまう、とMohamed El-Erianは主張します。
銀行は、矛盾した要求を示されています。一方では、不況から脱出するために融資を増やすように求められます。他方で、バブルを責められ、リスクの高い融資を増やすな、と求められています。これらを同時に満たすことは、現在の金融市場・制度では不可能でしょう。
NYT January 20, 2010 Taxing Wall Street Down to Size By DAVID STOCKMAN
(コメント) 金融部門に課税して取引を縮小し、バーナンキが個別の融資を指導できる、という考え方を批判します。
BBC, Thursday, 21 January 2010 Obama to break up banks Robert Peston
BBC 2010/01/21 Q&A: Obama's bank curbs By Martin Webber
FT January 21 2010 Obama in declaration of war on Wall Street
NYT January 22, 2010 Obama Moves to Limit ‘Reckless Risks’ of Big Banks By SEWELL CHAN and ERIC DASH
(コメント) 「ボルカー・ルール」とオバマは呼びます。オバマの金融改革では、元連銀議長のポール・ボルカーが望んだように、銀行の持ち株会社は、ヘッジ・ファンドやプライヴェート・イクイティ・ファンドを所有したり、投資したり、支援したりすること、そして、自己勘定売買を禁止されます。オバマはまた、巨大銀行が市場シェアを拡大することを制限するつもりです。
共和党は政府介入を嫌う対抗案を提出します。また、市場では銀行株が売られています。
IHT January 22, 2010 Sweden’s ‘Stability Fee’ on Banks Gains Global Attention By MATTHEW SALTMARSH
The Times January 22, 2010 Cross of Goldman
(コメント) アメリカ政府はスウェーデン政府と協力して、銀行救済のコストを銀行自身に支払わせる新しいアイデア(a “stability fee,” or direct levy on banks)を追求しようとしています。
人類を、「金の十字架」ではなく、「ゴールドマンサックスの十字架」に磔にした、という非難の声が高まります。しかし、こうしたポピュリズムに応じるオバマ政権の金融規制は、銀行の規模やビジネスを制限し、そのコストを高めてしまう、とThe Timesは批判します。
Asia Times Online, Jan 15, 2010
'Made in China' gets a new gloss
By Benjamin A Shobert
(コメント) 「メイド・イン・チャイナ」のブランドを高品質として宣伝する世界戦略を中国政府が始めました。「メイド・イン・チャイナ。世界とともに。」それは政治・外交戦略であるだけでなく、中国が最高級の世界企業にとっても生産拠点として重要だからです。
WSJ JANUARY 18, 2010
China Has Less Industrial Slack Than You Think
By PAUL CAVEY
NYT January 20, 2010
Is China an Enron? (Part 2)
By THOMAS L. FRIEDMAN
FP JANUARY 20, 2010
Singing in the Rain
BY ASHBY MONK, GORDON L. CLARK
(コメント) 中国の1兆4000億ドルにおよぶ金融緩和はインフレの危険性を高めている、とPAUL CAVEYが警告します。THOMAS L. FRIEDMANは、中国のバブル破裂を考察します。
もし中国のバブル破裂を予想して資産を空売りするとしたら、それは共産党銘柄だ、とFRIEDMANは考えます。中国経済は、まったく異なる二つの部分からなっています。その一方、伝統的な国営企業軍をCommand Chinaと呼びます。他方、沿海部の諸都市、香港、上海などに集中する、起業家精神に富んだ、高度な技術にも対応し、吸収できるような企業軍をNetwork Chinaと呼びます。後者の企業はビジネスの情報を活発にやり取りし、インターネットの自由を重視します。
政治的な理由でグーグルを追放し、ネットワーク・チャイナ企業軍を衰退させるなら、21世紀も中国は低賃金の輸出品と政治弾圧を得意とする国にとどまります。
ASHBY MONK, GORDON L. CLARKは、中国の外貨準備を考えます。それは中国政府による投資機関、the China Investment Corporation (CIC)を巨大化しています。特に、世界金融危機は資本市場を枯渇させ、西側企業や金融市場の警戒心を溶解させ、CICの影響力を飛躍させるでしょう。
CSM January 21, 2010
China: the world’s next great economic crash
By Gordon G. Chang
FT January 21 2010
By Samuel Brittan
FT January 21 2010
The west is wrong to obsess about the renminbi
By Michael Spence
(コメント) ポンドは安くなる方がよい。人民元は強くなる方がよい。それが協調のルールとして合意できるでしょうか?
Samuel Brittanは、ケインズの不安を思い出します。『平和の経済的帰結』で述べたように、ケインズはヨーロッパの投資機会が不足し、貯蓄が過剰になるだろう、言い換えれば、「心理的な法則」により完全雇用は達成できない、と考えていました。その後、20世紀には、前半の大恐慌と戦争を経て、後半は貯蓄過剰ではなく、その過少(そして完全雇用とインフレ)が問題になったのです。
ケインズの不安が再生するのは、中国における過剰貯蓄が生じてからです。もし西側諸国が財政赤字を競争的に削減すれば、世界の雇用は急激に減少します。Samuel Brittanは、西側が統一した財政政策を取れるなら、銀行の再建が済むまで財政赤字を拡大しなさい、と教えればよいが、それができない以上、各国は輸出を伸ばす競争になる、と指摘します。
中国の政策を協調させることは期待できません。その結果、Samuel Brittanは、イギリス政府が財政赤字を恐れる必要はなく、もし金融市場がそれを嫌ってポンドを安くするなら、それを歓迎すればよい、と結論します。
またMichael Spenceは、人民元の切上げを求めることに反対します。むしろ、中国の成長が続くことで貿易黒字が減少することを歓迎するべきだからです。
FP Friday, January 15, 2010
Why there can't be a Nixon-to-China moment in Tehran
By Michael Singh
WSJ JANUARY 21, 2010
The Soft Power Solution in Iran
By JAMES K. GLASSMAN AND MICHAEL DORAN
(コメント) イランへの関与政策が1972年の「ニクソン訪中」のように劇的な成果を上げる見込みはない、とわかりました。何が異なるのでしょうか? 中国は、スターリンの軍事的な脅威に対処するため、アメリカとの和解に向かったのであり、アメリカの説得が成功したわけではない、と指摘します。また、逆に冷戦期の「封じ込め」を唱える者にも、封じ込め政策のコストやイラン核保有による中東や国際秩序の転換を無視しないよう求めます。
JAMES K. GLASSMAN AND MICHAEL DORANは、アメリカに対する最大の脅威をイランに見なして、それを取り除くために、軍事攻撃、イラン体制との妥協、イランの体制転換、を考えます。最後の選択肢がにわかに現実味を帯びる中で、アメリカ政府にできることを提示します。
Jan. 18 (Bloomberg) He’s Not Steve Jobs, But This Tycoon May Fix It William Pesek
Jan. 21 (Bloomberg) Guys, Gals Hooking Up Is Sexy Idea to Trim Debt William Pesek
(コメント) 日本が変わるとしたら、管直人財務大臣と稲盛和夫からである、とWilliam Pesekは期待します。
日本の国債を減らすためには、何であれ新しい発想が必要です。特に、1.出生率を上げ、2.生産性を上げ、3.日本株式会社を改革しなければなりません。
WSJ JANUARY 18, 2010 JAL Hits Turbulence
WSJ JANUARY 20, 2010 Keynes Killed JAL The airline fell victim to infrastructure stimulus gone terribly wrong. Is China next? By JOSEPH STERNBERG
(コメント) 日本における空港の過剰供給が日本航空を破産させました。この空港の過剰を理解するには、1990年代の不況において財政刺激策として、ケインズのインフラ投資に対する日本人政治家の狂信を理解しなければなりません。そして、この病気は日本だけでなく、たとえば、中国でも顕著です。
FT January 19 2010 Ozawa destruction
China Daily 2010-01-19 Japan should focus on East Asia By Xue Li
WSJ JANUARY 21, 2010 The North Asia Security Split By CAROLYN LEDDY
(コメント) 中国のChina Dailyは、鳩山首相の南京訪問や東アジア共同体を(異なる加盟国で)支持し、WSJは日本の核武装を懸念します。
WSJ JANUARY 19, 2010 Playing Politics With Japan's Money Supply By ROBERT MADSEN
(コメント) 日銀の「金融政策の独立性」は間違って利用されている、と批判します。デフレの解決は政府ではなく日銀の責任である、と。
BBC 2010/01/21 Is Japan's economy a warning for China? By Roland Buerk
BBC 2010/01/21 China economy sees strong growth
BBC 2010/01/21 China's challenge: Quality and quantity By Chris Hogg
(コメント) BBCの特集記事です。日本がいよいよ中国に経済規模で抜かれます。その背景と影響を考えています。そして、中国も同じ失敗を犯しつつあるのか? と問います。
IHT January 22, 2010 A New Japan, a New Asia By G. JOHN IKENBERRY and CHARLES A. KUPCHAN
(コメント) 筆者たちは民主党系の重要な研究者です。論説の内容は、彼らの政治的・理論的な方向性から見て、予想できるものです。しかし、アメリカ政府にとっては、方針転換を明言した者であり、また、日本政府にも本気で成し遂げる覚悟がいるでしょう。
すなわち、鳩山政権は、日本国民が日米安保条約にだけ依存する体制から離脱することを望んでおり、アメリカとの対等な関係、対中関係の改善を求めているわけです。G. JOHN IKENBERRY and CHARLES A. KUPCHANは、これをヨーロッパと同じ文脈で理解します。独仏の和解や、ソ連崩壊後、ドイツの東西再統一後、ヨーロッパはアメリカの安全保障や外交から独立した姿勢を示し、イラク戦争にも反対しました。それでも、より多くの安全保障の負担を引き受け、アフガニスタンでは兵士を送っています。
日本政府も中国と和解し、東アジア共同体を築き、アメリカとは独自な姿勢と協力関係を築くことが、21世紀には必要なのです。アメリカ政府もそれを支持しなければなりません。・・・日米安保体制の使命は終わりました。
NYT January 19, 2010
The Pragmatic Leviathan
By DAVID BROOKS
(コメント) なぜマサチューセッツで敗北したか? なぜオバマは支持され亡くなったのか? それは、オバマ政権の性格がアメリカ国民の伝統と対立し始めたからだ、と考えます。
DAVID BROOKSは、イギリス人が考えると、リヴァイアサンは身体や筋肉が国民で、その頭や感情は王様である。しかし、新天地に渡ったアメリカ人は違う、と指摘します。アメリカの土地は広大であり、それを開拓したのは起業家、科学者、コミュニティーの建設者たちです。危機においてだけ政府の下に団結し、それ以外は、政府は自分たちを助けるだけの存在です。
オバマ政権は、金融危機・不況に直面して、このアメリカ人のバランス感覚をオバマは失った、と批判します。余りにも多くの課題を引き受け、余りにも多くの問題に対して改革を実現しようとしています。金融、医療保険、エネルギー、自動車、住宅、教育・・・ その欲張りすぎたプラグマティズムは、支持者を混乱させています。
あたかもオバマは「リヴァイアサン」を創り出し、その頭脳になったように見えます。有権者はそれを嫌います。むしろ、オバマは「政府機関が国民生活に対して、控えめに、手助けとなり、彼らを支援したい」ということを示すべきなのです。
The Times January 21, 2010
Obama should have blamed Bush, not bankers
Anatole Kaletsky
(コメント) マサチューセッツ知事選挙で、なぜオバマの支持する民主党候補は敗北したのか? なぜオバマの進歩的な政策は支持されないのか? 世界中で左派が敗退するのはなぜか? このままでは、たとえオバマが再選されても、議会は共和党が支配し、アメリカは長期のレイムダック政権になるだろう、とKaletskyは憂慮しています。国際秩序を再編するアメリカのグローバルな指導力が一層必要とされる事態が、これから頻発するかもしれないのに。
Anatole Kaletskyの解釈は説得的です。すなわち、危機が深まるほど保守派は地位や資産を守ると主張し、特に資本主義システムを守るため容易に団結します。他方、勝利した後、改革派は具体的な計画について必ず分裂する、というのです。この政治的バランスを変えるには、改革派が保守派の間違いを厳しく攻撃し続けることであり、もっと限定した目標に対して、具体的な計画を掲げて統一した要求を貫くことです。
オバマは失敗していますが、1981年にレーガンはこれに成功しました。不況の責任を前のカーター政権にあると攻撃し続けて、2年後に回復するときまでに、有権者はカーター政権の失政を記憶し、景気回復をレーガノミクスの成功と解釈したのです。他方、オバマは就任演説でブッシュ政権の失敗を非難せず、景気回復のために自分が責任を負うと宣言したのです。それは勇敢で、過去の政治対立を払しょくする重要な努力でしたが、結果的に、有権者は失業の増大をブッシュ政権やその自由市場イデオロギーではなく、ますますオバマの失敗をみなすようになりました。
Anatole Kaletskyは、1980年代前半と同じように、今後、アメリカ経済は急速な回復を実現するかもしれないが、このままでは、その成功をもたらしたのはオバマ政権ではなく、保守派の権力奪還であった、と有権者が信じる懸念が強まっている、と指摘します。
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The Economist January 9th 2010
Bubble warning
The ganger of the bounce
Banyan: From the charm to the offensive
Icelandic finance: Is it a blizzard?
Buttonwood: Voting away your debts
Charlemagne: Old Spanish practices
Nokia tries to reinvent itself: Bears at the door
China’s export prospects: Fear of the dragon
Goats in the Netherlands: Caprine contagion
(コメント) 金融危機を回避するために行った緊急対策は、次のバブルや国際収支不均衡を急速に準備しています。特に、新興市場や中国の動きに注目が集まります。
中国と言えば、いつまでソフトな外交を続けるつもりか? そのうち権力外交に復帰するという予想は当然あります。また、いつまで世界恐慌からの脱出に成功した、と自画自賛し続ける気か? そのうち貿易摩擦で世界中の市場から締め出され、通貨・貿易戦争の引き金に触れるはずです。
アイスランドの債務支払いは、より一般化して、債務による危機回避や不況緩和策を支持する有権者が、債務返済には反対する、という矛盾となります。また、スペインの不況も、EU加盟やユーロ圏が素晴らしい理想ではなく、一時の利益や甘えでしかなかった、と知れば、ギリシャのように離脱騒ぎに巻き込まれます。
小国フィンランドの世界企業ノキアが大国の餌食になるのか? それ以上に心配なのは、同じく小国オランダに広まりつつあるヤギの伝染病です。その強烈な感染力とヒトへの感染は、世界恐慌やユーロ圏崩壊の新しい引き金でしょうか?