IPEの果樹園2009

今週のReview

12/28-1/2

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

銀行のボーナス課税, コペンハーゲン:FRIEDMAN1,JOHN LEELomborg, グローバル・インバランス, 鳩山政権, 財政赤字, アジアのバブル, 時間を支配する, 援助批判

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


NYT December 16, 2009

Bring Back Prussia

By H. D. S. GREENWAY

(コメント) 同じ国家、同じ民族でも、軍事大国化するときもあれば、平和国家を目指すときもあります。プロシアの軍事力が「軍隊の国際金本位制」として世界中で軍事力強化の見本・規範となった時代がありました。その後、ヒトラーによってプロシアは解体され、また、連合軍の占領によってドイツの軍事力も解体されました。ホロコーストを経て、ドイツ国民はマーズ(戦争)からビーナス(美)へと改宗しました。

東西再統一の際にも、ドイツ軍への恐怖がよみがえり、繰り返しヨーロッパ政治を支配していましたが、今、その復活がアメリカによって要請されています。アフガニスタンでアメリカとともに厳しい戦場を支えるのは、イギリスに次ぐドイツ兵士なのです。しかし、軍備や訓練を改善するように、とアメリカ軍は求めます。


BBC 2009/12/18

Iceland knits its way out of crisis

Sigrun Davidsdottir

Dec. 18 (Bloomberg)

Why Franklin’s $100 Bill Now $1,000

William Pesek

The Guardian, Friday 18 December 2009

Who needs casino bankers?

Stephanie Blankenburg

(コメント) アイスランドの金融危機は、本当に、アイスランドの自然や人間が豊かであったから緩和されたのでしょうか? 人びとは投機をやめて貯蓄や編み物に熱心である、と書いています。極北のアイスランドは、なるほど、熱砂のドバイと違うわけです。

アジアでは、バブルの崩壊を予感して、人びとが金の購入に向かいつつあるようです。ドル安が長期化する中で、金本位を組み込んだ「ブレトン・ウッズV」が、ドルの通貨覇権をアジアが協力して奪う、切り札になるかもしれません。

SPIEGEL ONLINE 12/19/2009

SPIEGEL Interview with Banker Steven Green: The New World Order 'Is Already Underway'

(コメント) 金融危機を、銀行家自身はどう思っているのか?  香港上海銀行グループの会長、Steven Greenはインタビューに答えています。・・・銀行家であることを恥ずかしいと思ったのはいつか?

・・・余りにも複雑で、不透明な金融商品を、理解していない人びとに売って儲けたことは、受け入れられないことだった。

しかも、クリスマスを前にして、グリーン氏は英国教会の牧師です。「神よ、資本主義を救い給え・・・」と祈りましたか?

・・・いかなる経済システムにも欠陥はある。資本主義も昨年のリーマン倒産まではよりましなものであった。・・・利潤を追求する際にも道義は必要だ。なぜなら、市場が考慮する合法的な行為のすべてが正当なわけではないから。資本主義を受け入れるというのは、この課題も受け入れることになる。ここにおいて宗教は一定の役割を果たす。

・・・社会福祉のシステムと一緒に、共通の善をなすために働くこと。それがあって初めて、銀行の機能するのである。

しかし、金融危機は何も変えませんでしたね。新しい法律もないし、銀行家たちはボーナスをもらっている。

・・・あなたが考えるよりもずっと多くの変化が起きている。誰もがこの危機から学んだ。それは始まったばかりだが。忍耐強く、注意深く、資本主義システムを変えていく。

ドバイ、ギリシャ、アイルランド、・・・あなたの唱える金融の「新しい世界秩序」とは何か?

・・・アジアへの移行、秩序ある銀行の整理、サブプライム・ローンは合法だったが。それは、銀行業と信仰心の合体でしょうか?

NYT December 20, 2009

Taming the Fat Cats

The Times December 21, 2009

Heed the great stabiliser’s words on banking

William Rees-Mogg

(コメント) イギリスのゴードン・ブラウン首相がボーナスに50%課税したように、オバマも銀行家のボーナスに課税してはどうか、とNYTは主張します。銀行が利潤を上げられたのは、連銀からの低利融資があったからです。この臨時課税で、政府が行うべき多くの公的事業があるからです。

銀行家たちは大騒ぎするだろう。国外脱出や、違憲の訴え、会計事務所と脱税の工夫に知恵を絞るだろう。しかし、そんなことは無視すればよい。ニューヨークとロンドンが一致して課税すれば、シンガポールに逃げる銀行もないだろう。

「目覚めよ、紳士諸君。君たちの対応は不十分だ。」 と、ポール・ボルカーはウォール街の幹部たちが集まった席で話しました。ボルカーは、1933年に導入され、1999年に廃止されたグラス=スティーガル法を復活させるべきだ、と考えています。それは商業銀行と投資銀行とを分離する法律です。共和党のマッケイン上院議員が議会に提案したことを、ボルカーも支持しました。それは、イギリスでビッグ・バンが行ったことと同様です。

米英の金融自由化と証券を利用した複雑な金融商品の売買が、銀行家たちに莫大な成功報償をもたらし、システム全体のリスクを高めました。こうしたすべての仕組みを消去するべきなのです。金融部門の安定化を目指してきたボルカーは、1980年代に高金利政策で世界経済をハイパーインフレから救出したように、今また、バブルと金融破たんから救出しようとしています。

FT December 21 2009

It’s too late to take the politics out of banking

By Philip Stephens

FT December 23 2009

Faith and finance: Of greed and creed

By Patrick Jenkins

(コメント) 利益は企業や個人が受け取り、損失は政府や納税者へ回す。莫大な公的救済融資を受けながら、金融関係者たちはボーナスに課税されると憤慨し、政府に大幅に依存して生き延びているのに、政治介入や規制が増えると言って政府を攻撃する。・・・

彼らの巨額のボーナスは、彼らが言うような才能や努力によって得られたものではない。政府と中央銀行が、パニックと不況を回避するために金融部門を支援した結果でしかない。だからイギリス国民の多くは課税を支持しています。銀行の利益と、経済全体や社会の利益との、バランスの問題です。金融危機は、銀行家たちに多くの報酬を与えることは、社会の長期的な利益を軽視させる結果になった、と示しています。

Patrick Jenkinsも、銀行と倫理・公共心・宗教との関係を述べています。


WP Friday, December 18, 2009

Kissinger: How to make progress on North Korea

By Henry A. Kissinger

(コメント) ボズワース特別大使をピョンヤンに送ったオバマ政権の外交政策は、空しいもののように思います。北朝鮮は15年間も核開発を続けており、その過程で何度も交渉による解決を求められましたが、それは時間を稼ぐだけでした。6カ国協議を抜きにして平和的な解決はないのです。もしそれがわかっているなら、何のためにオバマ政権は二国間交渉の提案をわざわざ取りに行ったのか?

思うに、北朝鮮を非核化し、朝鮮半島を南北統一するには、アメリカと中国が合意して行動しなければなりません。また、その枠組みから韓国や日本が外れることはありえないし、アメリカも中国もロシアを排除しないでしょう。6カ国協議で合意したことを行動に移し、交渉を理由にした北朝鮮の時間稼ぎを許さないことです。


The Japan Times: Friday, Dec. 18, 2009

Realities of disarmament

By RAMESH THAKUR

NYT December 19, 2009

START and Beyond President

FT December 21 2009

How Obama can earn peace prize

(コメント) RAMESH THAKURは、日本とオーストラリアの元外相(Gareth Evans and Yoriko Kawaguchi)による核軍縮の提案を2つの点で考察します。一つは、両国ともアメリカの核の傘に守られていること。もう一つは、アメリカの核政策がブッシュとオバマでは大きく異なること。つまり、この提案は信用できず、意味がない、という批判を受けるのです。

詳しい紹介はできませんが、国際機関を強化し、核物質の供給面から監視を強化し、核の保有、展開、使用を分離して、緊張緩和し、核に頼らない世界を築きます。リアリズムとアイデアリズムを融合している、とTHAKURは評価します。

冷戦終結から20年を経ても、世界は広島の原爆の15万倍の破壊力を持つ23000個の核爆弾を保有し、核武装国であるアメリカのオバマ大統領がノーベル平和賞を得ました。それは、気候変動と同じくらい人類にとって重大な、しかも瞬時にその破壊をもたらす問題です。

1991年にアメリカとロシアが戦略兵器削減条約Strategic Arms Reduction Treaty (Start)を結んで、その後の交渉は戦術兵器に関しても行われています。日豪の元外相は、実行可能な、しかも、厳格な手続きを含む核軍縮提案を行いました。また、オバマは、他にも核安全保障サミットを開きました。国連は、不完全ながら成果を上げてきた核拡散防止条約(NPT)を拡充するときです。ソ連崩壊後の核拡散を防ぐためにアメリカがマーシャル・プラン以来の大規模な平和への投資を行ったNunn-Lugar programmeもありました。

FTは、オバマが受賞したのは、こうした様々な核廃絶の試みを組み合わせて、世界の核軍拡ゲームを転換する力に期待したからだ、と考えます。

FP Tuesday, December 22, 2009

The Greatest Gifts: A Christmas Post

Posted By Stephen M. Walt

(コメント) 利己的で、敵を倒すことに夢中の国際政治においても、偉大なギフトは存在する。それを示す10の事件を紹介しよう、とStephen M. Waltはクリスマスを祝います。

1.イギリスの奴隷解放運動:1807-67年、2.マーシャル・プラン:1947年、3.ヒトラーの対米宣戦布告:1941年(もちろん、これは意図せざるイギリスへのギフトです)、その他。


The Guardian, Friday 18 December 2009 Gutless, yes. But the planet's future is no priority of ours Polly Toynbee

FT December 18 2009 Africa must exploit all energy sources By Mo Ibrahim

(コメント) Polly Toynbeeは、各国の指導者たちが合意できなかったのは、有権者たちの生活スタイルを変える勇気がなかったからだ、と考えます。

「気候変動は現実に解決策がないのではなく、純粋に政治問題なのだ。」われわれが望むなら、風力でも、太陽エネルギーでも、原子力でも、何であれクリーン・エネルギーを利用できます。しかし、十分の多くの人々がそれを望まなければなりません。生活や支出が変わることを人びとは嫌うのです。ニューオリンズではなく、ニューヨークやロンドン、セント・ぺテルスブルグ、上海が、同時に津波で破壊されなければなりません。破局が起きたときには、すでに手遅れです。

クリスマスに寄せて、市場がすべてを解決することを祈ります。新しい技術が、クリーン・エネルギーを石油や石炭より安くするのです。そうでなければ、政治が奇跡を起こして、私たちが救われるしかありません。

他方、開発と環境は矛盾するのか? アフリカは豊かな国の輩出した温暖化ガスの影響で最大の被害を受けます。たとえ気候変動の国際合意ができても、アフリカはすべての資源を利用する権利がある、とMo Ibrahimは主張します。それは豊かな諸国によって剥奪されるものではなく、より効率的な資源利用を約束された場合に、環境との両立が可能になる、と考えます。

The Guardian, Saturday 19 December 2009 This was a huge step on from our work in Kyoto John Prescott

(コメント) 京都議定書の作成にもかかわったJohn Prescottthe Council of Europe's rapporteur on climate change)は、コペンハーゲンの合意を「失敗」ではない、と考えます。政治家たちは、科学者の予測が正しいことを認め、2度の上昇を許すべきではないと合意しました。そして11日からグリーン・ファンドを設けて300億ドルを提供し、新しい検証システムを始めます。

ジャーナリストたちの質問に対して、交渉担当者たちは「歩き続けて、話し続けている」と彼は答えていました。京都議定書より参加国は多く、法的強制力の圧国際条約を締結することはできないだろう、と考えました。しかも、そのカギを握るのはアメリカと中国でした。

彼らは社会正義に基づいた、発展途上諸国にとってより公平な取引を求めていました。しかし、アメリカの代表Todd Sternが最初の演説でこれを破壊しました。「排出量削減は、政治やモラルの問題ではなく、計算の問題だ」と述べ、一人当たり排出量を完全に無視したからです。オバマ大統領は中国を批判しました。

「アメリカは中国に排出量の削減を強く求めてきました。なるほど産業革命の終わった国はそれでよいだろう。しかし、中国他その他の発展途上諸国は成長を必要としている。この惑星に住む者の半分以上が12ドル以下で生活しているのだから、それは当然だ。」

そして、グローバルな解決策を求めたゴードン・ブラウンの主張を(G20と同様に)称えています。

The Guardian, Saturday 19 December 2009 China ended up as a useful scapegoat Ailun Yang

SPIEGEL ONLINE 12/19/2009 Failure in Copenhagen: Gunning Full Throttle into the Greenhouse by Markus Becker in Copenhagen

(コメント) Ailun Yang head of Climate and Energy, Greenpeace China)は、中国がコペンハーゲン・サミットの合意を妨げたという主張に反撃します。中国は合意形成の立役者になろうと意図してやって来た、と。

しかし、発展途上諸国が反対に回って、その指導的な地位を占めるはずの中国から離れたこと、また、アメリカが中国を犯人に仕立てる戦術に出たこと、これらによって中国は国際合意を演出できなくなりました。中国は主要国のスケープゴートに利用されたのだ、と。

The Times December 19, 2009 Not Just Hot Air

The Guardian, Saturday 19 December 2009 This marked a turning point in human nature Colin Blakemore

(コメント) 多くの限界はあるが、サミットは成功だった、と考えています。「主要国が合意したこと。公共財に関する疑いをすべての者が抱く中で、それを達成できたこと。今や政策担当者は、自国に帰って議論を巻き起こし、国民に支持されることを通じて気候変動を防ぐ。」

Colin Blakemoreも、意識の変化を指摘します。すなわち、グローバル・ヴィレッジにはグローバル・マインドが必要です。王制から独裁、立憲民主制から共産主義まで、192カ国が地球環境のために犠牲を受け入れたのです。

「過去5000年において、国家間の合意をもたらしたのは軍事力化経済力、政治イデオロギーや宗教であった。コペンハーゲンが示したのは、最終合意にたとえ欠陥やこじつけがあるとしても、新しい国際外交のパワーが働き始めたことである。・・・それは、科学だ。」

・・・「海面はすでに上昇しつつある。一人で沈むのか。あるいは、一緒に泳ぐのか。」

WSJ DECEMBER 19, 2009 Copenhagen's Lesson in Limits

WSJ DECEMBER 20, 2009 Time For Plan B By NIGEL LAWSON

The Guardian, Sunday 20 December 2009 The road from Copenhagen Ed Miliband

WP Sunday, December 20, 2009 Was Copenhagen a success?

WP Sunday, December 20, 2009 One cheer for Copenhagen

(コメント) WSJは、中国など、発展途上諸国の排出量が正しく計測できるのか、不透明性が合意を妨げた、と主張します。中国を買収して排出量の枠組みを作ろうとしたヨーロッパの試みが失敗したのです。

イギリスの元蔵相であるNIGEL LAWSONは、国際的な排出量削減の条約などやめるべきだ、と考えます。・・・コペンハーゲン合意は、単に、ヨーロッパを閉め出して、中国とインドがアメリカとの秘密交渉に応じた結果でしかない。そして、ブラジルと南アフリカも部屋に呼ばれた。

会議で決まったのは、今後3年間の「気候援助」、300億ドルだけだ。その後、2020年まで1000億ドルに増額される。しかし援助を、どの国が、どれだけ受け取るのか、その条件は何か、何も決まっていない。

この完全な失敗の原因は、世界経済を脱炭素化するコストが莫大であるにもかかわらず、その利益は遠い将来で、曖昧な上に、炭素を基本にした燃料は安く、しかも予想される将来にわたって安いだろう、ということだ。それは石油業界や石炭を利用する業界の政治力が強いからではない。

今や、気候変動の国際会議をやめる時だ。新しい方針は、これまで人類がしてきたように、気候変動に対して人類が適応することだ。気候変動には利益もある。そして、エネルギー技術や温暖化への適応、移住などに、政府は投資するだろう。そのこと自体、各国政府が行うことであって、国際会議や国際条約は必要ない。

NYT December 20, 2009 Off to the Races By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) THOMAS L. FRIEDMANも、国際会議の失敗を認めますが、その代替案は違います。

The Earth Day strategyは失敗でした。グローバル・コミュニティーが気候変動という人類の脅威に立ち向かう。排出量を制限し、検証し、貧しい諸国には資金を移転する。そして技術移転を促すのだ。・・・それが成功するには、それほど大きな嵐を世界が経験するときです。

しかし、この国際会議で共有された知識と環境への懸念は、各国を対策に向けて動かし始めました。しかも、開発諸国の政府や企業は各国の排出量規制とともに、それを発展途上諸国の排出量削減や、熱帯雨林の保護で達成する枠組みに合意したのです。

アメリカ、中国、ヨーロッパ、日本、ブラジル、・・・誰が最初の技術を発明できるか、the Earth Raceが始まりました。電気自動車、蓄電池、太陽電池、風力発電、各国は開発に向けて投資し続けています。それらは裕福な国のぜいたく品ではなく、急速に発展途上諸国にも普及します。

FT December 20 2009 Copenhagen: A discordant accord By Fiona Harvey, Ed Crooks and Andrew Ward

FT December 20 2009 Dismal outcome at Copenhagen fiasco

(コメント) 国際会議の合意形成がどのような過程であるか、FTの論説は紹介しています。そして、コペンハーゲン合意を「重要な突破口だ」と称えるオバマの信用は、その会議と同様に損なわれました。殴り合いのケンカよりはましでも、考えられる中でも最悪の無内容な合意です。

確かに気候変動の防止には集団行動が必要であり、フリー・ライダーを抑えなければなりません。しかし、最大限主義者の考える、排出量に関する世界条約を求めることは非常に困難でした。FTは、もっと大きなプラグマティズムと柔軟さを求めています。

アメリカのキャップ・アンド・トレードも、中国の炭素集約度の削減も、新しい合意に組み込むべきです。炭素排出権の価格の監視や、より緩やかな協力、発展途上諸侯への技術移転を促す援助など、さまざまな形に分解して、2国間交渉によって解決できるでしょう。

The Times December 21, 2009 Selling a low-carbon life just got harder Jonathon Porritt

BBC 2009/12/21 What did Copenhagen achieve? By Tom Brookes and Tim Nuthall

The Guardian, Monday 21 December 2009 Copenhagen's failure belongs to Obama Naomi Klein

The Guardian, Monday 21 December 2009 Beyond ecological imperialism Jayati Ghosh

The Guardian, Monday 21 December 2009 European solutions to climate change Éloi Laurent and Jacques Le Cacheux

(コメント) 持続不可能な「経済成長」を目標とした政策から抜け出すことが重要な課題でしたが、国際会議は各国の利害対立によって支配され、「環境帝国主義」の戦場になってしまいました。

環境保護と成長を組み合わせたグリーンな成長や、非物質的な経済の拡大を楽観視するのではなく、John Bellamy Fosterのエコロジーによる資本主義批判?を採用しています。問題は自然の制約ではなく、社会システムを制御不可能にしてしまったアメリカ帝国主義だ、という理解が説得的かどうか。

SPIEGEL ONLINE 12/21/2009 Selfishness Abounds: Copenhagen Reveals a Vicious Circle of Mistrust An Editorial by Christian Schwägerl

SPIEGEL ONLINE 12/21/2009 Consequences of Copenhagen: Forget the Club of Rome, This is the Club Of Losers By Christoph Seidler

(コメント) チャイメリカ(Chimerica)と地球の救済は両立するのか? なるほど、これも「帝国主義」の問題です。クラブ・オブ・ローマから、クラブ・オブ・ルーザーへ。国際交渉が失敗した構造を多角的に解剖する記事です。

NYT December 21, 2009 Copenhagen, and Beyond

IHT December 21, 2009 Copenhagen’s One Real Accomplishment: Getting Some Money Flowing By JAMES KANTER

(コメント) NYTは、コペンハーゲン・サミットがまさに崩壊しようとしていたとき、オバマが到着して、わずか13時間の滞在でしたが、中国などと合意案を作成できたことを称賛しています。特に、発展途上諸国への1000億ドル援助の約束と、中国の検証システムへの参加、を指摘します。

気候変動を防ぐには、世界的な規模の調整メカニズムが必要だ、という文章を読むと、それが国際通貨制度を説明しているのと同じ枠組みで議論できるように思います。

FT December 21 2009 Lessons of the Copenhagen discord By Thomas Kleine-Brockhoff

(コメント) 混乱する国際会議の教訓として、Kleine-Brockhoffは7つの教訓を示します。1.中国は集合行為を拒むだけでなく、それを強制されることも拒んだ。2.富裕諸国と貧困諸国との対立の構図が解けなかった。本来は、汚染者負担の原則を実現しなければならない。3.多くの問題が関係する複雑さに交渉システムが耐えられなかった。4.国連は機能マヒに陥った。すなわち、一国一票制、満場一致、NGOsなどの「草の根民主主義」。5.国際政治の多極化が交渉の困難を増し、カオスをもたらした。6.ヨーロッパは環境問題で世界を指導する役割を果たせず、交渉の敗者になった。7.NGOsなど、市民社会の運動は力を増した。

YaleGlobal , 21 December 2009 Copenhagen: Yet Another Giant Beginning with an Uncertain End Scott Barrett

FP DECEMBER 21, 2009 How China Stiffed the World in Copenhagen BY JOHN LEE

(コメント) コペンハーゲン合意は、アメリカが中国を組み込むための「罠」であった、とJOHN LEEは考えます。中国は国際的な枠組みに縛られることを拒んできました。そこでオバマとクリントンは、発展途上諸国への1000億ドル環境援助を約束した記者会見で、すべての国は炭素排出量の世界的な検証システムに従わねばならない、と条件を示したのです。もし中国がこれをも拒めば、発展途上諸国は1000億ドルの約束を奪われたとして中国を非難したでしょう。

温家宝はこれに激怒しました。なぜか? 中国は統計データを偽って、経済成果を誇示する(失策を隠ぺいする)政治体制を続けているからです。国際機関がこれを暴露するような事態を決して受け入れられない、とJOHN LEEは温家宝の異常な怒りを説明します。

中国で環境問題のデータを集めるために、国際的な科学者やエコノミスト、検査官、ジャーナリストたちが活動した結果、北京だけでなく、地方政府の官僚たちが行う妨害や不正であり、官僚支配の根幹が全く機能していない、という実態が知られるようになりましした。官僚たちは権益を守り、恣意的な法の施行を悪用し、虚偽の報告によって経済成果を誇張してきたのです。

地方政府が北京の求める成長目標を達成できないことはめったにないのです。地方政府がデータを捏造しているとしても、中央政府は検証しません。この透明性の欠如により、中国は国際的な機関による検証システムに反対するのです。温家宝は、ヨーロッパやアメリカの政治指導にしたがう検査官や科学者たちが、北京の権力に従う中国の地方官僚や国営企業の幹部たちの目標達成を監視し、改善する命令を出すだろう、ということに憤慨したわけです。

京都議定書が認めた炭素排出量削減の仕組みと、それを管理するthe Clean Development Mechanismは、その約半分、10億ドル以上を中国に対して認めました。しかし最近、中国の多くの風力発電計画が資金を得るための不正申請ではなかったか、という疑いを生じています。それを検証するシステムはないし、北京からの提案もありません。

コペンハーゲン合意は、「ディール(取引)」として、オバマが譲歩したのです。中国を引き出すことにアメリカ政府は失敗しましたが、議会はこれを受け入れないでしょう。

The Times December 22, 2009 Down from the Summit

BBC 2009/12/22 Why did Copenhagen fail to deliver a climate deal?

BBC 2009/12/22 Copenhagen fails green investors By Damian Kahya

FT December 22 2009 We should change tack on climate after Copenhagen By Bjørn Lomborg

(コメント) 大山鳴動して鼠一匹、とBjørn Lomborgは書いています。目標数値もなく、行動計画もなく、強制力もない「合意」。

これで地球環境の政治運動に冷水が浴びせられ、関係者の目が覚めただろう。炭素排出量を世界レベルで規制する、というリオ=京都=コペンハーゲン・アプローチは何も生み出さない。もっと技術的に優れた、政治的に受け入れ可能で、経済的にも効率的なアプローチが求められる、と。

現在のグリーン・エネルギーに依存するだけでは、2050年までに倍増すると予想されている需要に対応できません。炭素燃料よりもグリーン・エネルギーを安くし、世界GDPの0.2%、1000億ドルをエネルギー技術革命に投資することがLomborgの提案です。

Asia Times Online, Dec 23, 2009 Copenhagen miscalculation By Francesco Sisci

NYT December 23, 2009 The Copenhagen That Matters By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) デンマークとアメリカはこれほどなぜ違うのか? 温暖化を防ぐにはエネルギーを転換しなければなりませんが、そのために有効な政策、たとえば炭素税をアメリカは採用しません。デンマーク国民は、わずか500万人の小さな国ですが、1973年の石油危機に対して、中東からの石油輸入に依存することをやめて、エネルギー安全保障と新産業を興す長期計画を採用しました。

・・・産業界が炭素税を嫌っていたが、これによって企業はエネルギー効率を高め、技術革新を強いられた。1990年以来、デンマークは温暖化ガスの排出を14%減らし、GDPを40%以上も増やしたがエネルギー消費量はほぼ一定である。政府は燃料への課税をエネルギー技術の研究開発投資に補助金として還元した。今やエネルギー技術がデンマークの輸出ん11%を占める。

アメリカの政治家たちは、ガソリン1ガロン当たり1セントの増税をするのも「政治的な自殺行為だ」と叫んで反対します。「なぜそんなことができたのか?」とTHOMAS L. FRIEDMANは尋ねました。

「私たちは福祉国家を維持してきたし、それをずっと将来も続けたかった。だから過去にこだわらず、勇気を持って革新したのだ。」・・・今、アメリカの失業率は10%であるが、デンマークは4%ほどです。エネルギー、医療保険、教育、財政赤字。アメリカ政治についてFRIEDMANが危惧する点は、日本についても当てはまります。

China Daily 2009-12-23 Will we depreciate or appreciate Earth? By John Coulter

CSM December 23, 2009 After Copenhagen: five solutions to help melt the global trust problem By Seth Freeman

(コメント) まるでビートルズの歌のように、西側諸国が「透明性」や「検証」を求めれば、発展途上諸国は「外部干渉」や「帝国主義」を批判し、アメリカが「確認」を求めれば、中国は「自律」や「尊重」を求めます。

コペンハーゲンの合意形成を破壊した「信頼の欠如」に対して、Seth Freemanは解決策を提案します。1.内部の検査を拒むとしたら、容易に観測できる他の手段(衛星や気象観測、海洋の汚染監視)で合意する。2.行為ではなく結果に注目する。3.中国以外のすべての主要国が検証システムに合意する。4.中国が外国からの査察を嫌うなら、検証の監督者を中国側の人物に与えてもよい。5.査察を目的とせず、取引の利益を強調すること。査察はその副産物でしかない。

SPIEGEL ONLINE 12/24/2009 The Threat of Pollution Tariffs: Economists Warn of a Climate Trade War By Markus Becker and Christoph Seidler

(コメント) コペンハーゲン・サミットが失敗した以上、西側諸国は環境保護のための関税を導入し、貿易戦争が始まるのでしょうか? ジョン・ケリーのように、アメリカの政治家たちは、失業した労働者に、温暖化規制のない中国など、途上諸国に工場が流出しているから雇用が失われている、と演説します。ヨーロッパでも、サルコジ大統領をはじめ、パリやベルリンから同様の演説が聞こえます。

他方、専門家たちは、そのような「環境帝国主義」が効果的な手段にはならない、と警告します。中国製品の輸入を抑えるほどの高い関税率を課すことは難しいでしょう。そして、中国の報復と貿易戦争が、アメリカなど、主要国の経済を悪化させます。また、WTOも環境保護関税を認めないでしょう。そして記事は、賃金が安いという理由で生産拠点を移してきた工業諸国が、その環境の高いコストを考慮するという問題に答えるべきだ、と結んでいます。

IHT December 24, 2009 The Road From Copenhagen By FRANK E. LOY and MICHAEL A. LEVI

The Japan Times: Thursday, Dec. 24, 2009 Aftermath of Copenhagen By GWYNNE DYER

The Japan Times: Thursday, Dec. 24, 2009 No winners emerge from COP15 conference By FRANK CHING


The Guardian, Saturday 19 December 2009

Gaza must be rebuilt now

Jimmy Carter

The Guardian, Tuesday 22 December 2009

Lift the Gaza blockade

Nick Clegg

FT December 23 2009

The need for peace in the Holy Land

(コメント) 環境に関する会議は開かれても、ガザ地区の生活状態を改善することはないのです。どのような分野の国際交渉・協力も、30年間に及ぶパレスチナ難民の状態をアメリカ、EU、ロシアの安全保障理事会が解決できなければ、真剣な試みとは受け取れないでしょう。世界に多くの新しい紛争が加わり、北朝鮮やイランの核の脅威は熱核戦争も勃発するほどの深刻な危険を示していますが、ガザ地区の不正義を忘れる理由にはなりません。

イスラエルの入植をやめさせ、ガザ地区の生活を再建できるように、制裁と交渉を組み合わせた大国間の協力を示すことです。キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の聖地が、繰り返される戦火と占領、非人道的な支配の土地であることは、祝祭や金融危機、国際会議の続く今も、人びとの和解や理解の限界を示す暗澹たる現実です。


The Observer, Sunday 20 December 2009

All that I admired about Tony Blair is being destroyed by his lack of humility

Anthony Seldon

(コメント) トニー・ブレアの伝記作家によるブレアの評価です。大量破壊兵器について十分な照明をできなかったこと、戦後統治に関する計画をアメリカに委ね、詳しく検討しなかったこと、国論を分裂させ、反対派の意見を聞こうとせず、戦争が正しく管理されなかった責任を認めないこと。

労働党の指導者として、イギリス国民の感情をつかみ、チャーチル以来の偉大な政治的成果を上げながら、イラク戦争について自己正当化だけを繰り返す姿は、国民の反発を強めました。


FT December 20 2009

Developing economies can help cure global imbalances

By Kemal Dervis

WSJ DECEMBER 21, 2009

The 'Global Imbalances' Myth

By ZACHARY KARABELL

(コメント) 「グローバル・インバランス(世界的不均衡)」に関して、米中間の不均衡が是正されることを求めるとしたら、それは間違った結果をもたらすでしょう。一方で、アメリカはドル安を進め、家計が貯蓄を増やして、輸出による需要を必要としています。他方、それに見合って中国の黒字を減らすことはできません。そのためには長期にわたる成長モデルの転換が必要になるからです。もし急激に黒字を減らそうとすれば、中国の過剰生産力と企業倒産や不良債権、成長の悪化を招くだけでなく、中国向けの輸出で経済を拡大している周辺地域に破壊的な影響を与えます。中国の成長は世界経済にとってプラスであり、それを抑えることは望ましくないのです。中東産油諸国(石油価格の上昇)や日本の黒字(国内デフレ)も続くでしょう。

では、アメリカに代わって、誰が赤字を引き受けるのか? Kemal Dervisは、それが新興市場や発展途上諸国である、と考えます。世界には、中国以外にも、投資を融資を吸収して成長を高める地域があるのです。確かに個別で見れば、こうした諸国は投資家たちの信頼を得ていません。それゆえ、国際機関による融資、インフラ投資や法整備、投資保険、IMFによる外貨準備の補充、など、世界の均衡的な成長を促す投資を支援する必要があります。また、各国の社会・経済政策を改善することです。

ZACHARY KARABELLは、「グローバル・インバランス」論自体を批判しています。不均衡はむしろ急速な成長の結果であり、条件でもあります。技術の移転や、貿易、投資・融資が成長を国際的にも波及させることは、歴史的に見て、多くの成功例がありました。


WSJ DECEMBER 20, 2009

Japan's Risky Rapprochement With China

By KELLEY CURRIE

FT December 21 2009

Japan: The spectre of stasis

By Mure Dickie

(コメント) KELLEY CURRIEは、NHKのニュース解説と同様、鳩山政権が中国に近付き過ぎて日米関係を損なっている、と危惧します。

鳩山政権の主張を文字通りに受け止めるとしたら、Mure Dickieのような期待と不安が生じます。この政権交代は、明治維新以来の日本の姿を変えるものである。民主党は、特に、バブル崩壊から20年を経て、ようやくその遺産を処理し、少子高齢化による人口減少という新しい問題に取り組み、何よりも日米同盟関係のバランスを「より対等なもの」に変更して、東アジアへの関与を強める、と宣言したわけです。

普天間基地移転の再検討、郵政民営化の逆転、官僚支配の打破(事業仕分け、予算編成)、など、民主党政権は衆議院における多数によって成果を上げています。

問題はむしろ政策である、とFTは指摘します。普天間基地をめぐるアメリカ政府との交渉が日米間の軋轢を強めていること、子供手当など、福祉予算を増額することに対して財源不足が深刻なこと、小沢一郎の民主党支配と鳩山政権との関係、特に、亀井静香を金融担当大臣にして、連立政権を組んだことは、鳩山内閣の政策に不調和を生じています。

政治献金疑惑や、円高と株価低迷、失業問題など、難しい問題が生じて、マニフェストの実現だけで支持を訴えることができなくなるでしょう。鳩山内閣に求められるのは、バブル崩壊後の日本経済と財政の再建を期待できるような、将来の経済成長モデルを政策として示すことです。


BBC 2009/12/21

Greek finances face 'credibility gap'

By Shaun Ley

Dec. 23 (Bloomberg)

Greek Default Beats Bailout, Lehman Lesson Shows

Mark Gilbert

(コメント) ギリシャの不況と財政悪化問題です。それは、ユーロ圏内の金融破たんという複雑な「信認問題」を生じます。


The Guardian, Monday 21 December 2009

Segregation in Bradford

Samia Rahman

SPIEGEL ONLINE 12/23/2009

Christopher Caldwell on Muslim Integration: 'It's Much Better If Things Are Discussed Openly'

(コメント) 移民問題から人種暴動へ、そして、社会統合化が重視されるようになりました。少なくとも、政策としては。

また、ヨーロッパにおける移民排斥の現象について、Christopher Caldwellがインタビューに応えています。イスラム教徒によってヨーロッパが征服されてしまう、という不安が強まっていますが、それはオープンな議論によって克服できる、と。それによって、イスラム教徒の文化も、ヨーロッパの社会・政治構造も、双方が変化するのです。


NYT December 21, 2009 A Dangerous Dysfunction By PAUL KRUGMAN

BG December 21, 2009 Health reform lessons, via Haiti and Peru By Heidi Behforouz

WP Wednesday, December 23, 2009 Labor's messy health-care bargain By Harold Meyerson

NYT December 23, 2009 Americans Without Work Putting Jobs First

The Guardian, Thursday 24 December 2009 Victory on healthcare reform Sahil Kapur

(コメント) アメリカで上院を通過した医療保険制度改革法案について。


FT December 21 2009

Third time lucky for Basel rules?

(コメント) 金融危機と国際規制と言えば、バーゼル合意です。国際的な銀行業務に対する共通の基準を設けましたが、規制は金融市場の変化に遅れてしまいます。逆に、金融危機を促した、という面もあります。BISは、バブルの抑制や新しい金融技術・金融機関にも対応した規制を考えています。

ボーナス規制でも、「大き過ぎて潰せない」問題でもなく、銀行ビジネスの健全化とリスクの正しい扱いを促す国際規制が最も重要だ、とFTは考えます。


FT December 22 2009

Why market sentiment has no credibility

By Robert Skidelsky

(コメント) 不況を緩和するために政府が需要を補っているのに、その意味で重要な財政赤字を人びとが非難するのはなぜか? ・・・日本政府やメディアも考えてほしいです。

金融危機に始まる不況はイギリス経済を大きく損ない、それは税収を落ち込ませて、財政赤字を膨張させました。(日本もそうです。)ところが、早くも金融関係者からは、財政赤字が大き過ぎる、健全化せよ、という「市場の」声が強まっています。

Skidelskyは、経済学を知る者なら当然のこととして、財政赤字を「循環的赤字」と「構造的赤字」に分けます。構造的な赤字については、増税や支出削減が必要です。そこで、この破局的な民間需要の落ち込みに対して、それを緩和する財政赤字の政府提案に強い反対の声が上がるのはなぜか? と考えます。

こうした「“market sentiment”市場の声(投資家心理)」が基づいているのは、次の二つの信念です。一つは、経済は常に完全雇用状態である。もう一つは、一時的に完全雇用から離れるとしても、政府が間違った介入を行わなければ、正常な調整過程が迅速に完全雇用状態を回復する。すなわち、救済融資や財政刺激策など、赤字を増やすことはやるべきでない。

その信念によれば、財政支出(赤字)は無駄とインフレをもたらすだけであり、本当に破局的な瞬間を回避するときは沈黙しますが、それさえ過ぎれば財政再建が常に正しい、というのです。あるいは(穏健かつ慎重な財政均衡論者は)、債務によって膨張した経済規模は回復されることがないから、今、赤字を増やして、将来、景気が回復したら赤字を解消できる、という主張を受け入れません。「バブル経済」を前提にした予算案は持続可能ではない、と考えるからです。

Skidelskyは、この慎重・倹約論(旧式のピューリタニズム)に反対します。過去の不況を観れば、回復に転じれば生産は力強く増大した、と。(この点は、日本の経験を考えるなら、同様の経済停滞を考える余地があると思います。)

他方、完全雇用状態が市場によって、財政赤字なしに、すぐに回復できる、という信念も間違っているとSkidelskyは考えます。保守派は、政府介入が正常な調整と回復過程を妨げている、と主張しますが、事実に反しており、赤字の大きな部分が金融救済であることを無視している、と批判します。

財政赤字は金利を高めて、民間投資を妨げているでしょうか? 実際は、民間需要の落ち込みを緩和して、その分金利の低下を遅らせることしかしていない、と。むしろ民間貯蓄は、投資を拒んで政府証券に流れ込んでいます。他方で、イングランド銀行は大量の通貨を供給するために政府証券を購入し、金利は歴史的な低水準を維持しています。

政府が財政支出しなくても、ポンドの為替レートが大きく下落して輸出が伸び、外需を利用できる、という議論にもSkidelskyは反対します。保守派は、財政赤字による高金利は、財政を均衡させる過程で低下するから、ポンドが大きく減価するはずだ、と主張します。1931年にイギリスが金本位制を離脱したときに起きたように、というわけです。

Skidelskyは、財政赤字を抑えることで減価が生じる、という証拠はない、と考えます。IMFの研究に基づいて、財政赤字を減らしたことで減価したケースは、74の内の14ケースでしかなく、為替レートに影響しないか、財政支出を増やして減価するケースが多かったのです(刺激策が国内需要を増やして、輸入増や減価をもたらす)。

不況になれば金利は低下する、という法則もなく、むしろ現金のまま保蔵する量を増やしてしまうでしょう。金利を下落させ、為替レートを減価させるには、こうした保蔵者の需要を満たすまで十分に中央銀行が通貨供給を増やさねばなりません。

「市場の声」をそのまま政策の基準にしてはならない、とSkidelskyは考えます。2007年にしたがった「市場の声」が、2008年になって危機を生じました。政府は、彼らを選んだ有権者たちの利益を代表して行動しなければならないのであり、シティの利益や「市場の声」ではないのです。

China Daily 2009-12-24

How Asian economies can avoid asset bubbles

By Louis Kuijs

(コメント) アジア経済はアメリカの金融政策から自立する必要があります。このままでは資産市場のバブルが膨張し、危機を招くでしょう。流動性が豊富に供給される結果として、香港やシンガポールの不動産から、中国の美術品市場まで、アジアの資産価格が上昇しています。

アジアの経済成長に期待して長期資本が流入すること、また、為替レートをドルの固定(もしくは介入によって増価を抑制)している場合、アメリカの金融政策を輸入してしまうこと、が注目されています。アメリカは国内の経済情勢を考えて金融緩和政策を続けるでしょうから、生産力の余剰や失業率から見て、アジア諸国の経済にとって望ましい金融政策ではないのです。

アジア諸国は様々な政策で金融緩和の弊害を除去しています。特に、準備の積み増し、不動産融資の抑制など、規制の強化です。株式市場への融資や新規上場も抑えています。しかし、オーストラリアを除いて、どの国も金融政策の引き締めには慎重です。

しかし、規制の強化だけでなく、金融政策と為替政策の関係も再考しなければなりません。この点で、欧米の議論は変動レート制への移行を促していますが、Louis Kuijsは、資本流入の重要性を評価して、二つのケースに分けています。なぜなら安定した成長にとっての問題は、金融引き締めによって資本がどの程度流入するか、だからです。

すなわち、もし資本流入が重要であれば、為替レートの変動を抑制したまま、過熱した経済や資産市場の抑制を金融引き締めに頼ることはできません。アジアの資本移動が自由な小国の場合、資本規制を考えるか、通貨の増価を許すべきです。その場合、競争力の低下を心配するに違いないが、公式・非公式の通貨協力をアジア諸国は行うべきである、と指摘します。

他方、もし資本移動が重要でなければ、すなわち、資本規制が行われており、国内貯蓄が十分にあれば、金融引き締めを行うことです。中国経済はこのケースです。国内の通貨供給に比べて、資本流入はそれほど重要ではないからです。また、他のアジア諸国でも、資本規制を強化して金融引き締めを行うケースもあるでしょう。

たしかに、インフレだけに注目すれば金融引き締めに消極的かもしれませんが、資産バブルを放置することの危険性は今回の金融危機で世界が学んだ教訓です。他にも、資本流入を抑えることに役立つ金融改革や債券市場の充実、長期の貯蓄手段、株価や地価のキャピタル・ゲイン課税、などが指摘されています。

そして為替レートの弾力化も、一方的な投機を許さず、金融政策の自律性を高める上で、検討すべき課題の一つなのです。


FT December 22 2009

Time: Hour power

By Clive Cookson

(コメント) 「1793年、フランスの革命政府は時間を10進法で示した。すなわち、1日を10時間、1時間は100分とした。しかし、それはナポレオンが伝統的な24時間、60分に戻すまで、12年間しか続かなかった。24時間のシステムは古代エジプトとバビロニアにさかのぼる。」

時間(と空間)の尺度を支配する者は、政治秩序の究極的な支配者です。

1949年、毛沢東は中国の6つの時間帯を一つにまとめて、共産主義の強力な中央支配を象徴的に示した。その制度は、西域の人々に多大な苦しみを与えたが、続いてきた。彼らは公式の時間に合わせて、冬季には暗闇の中で仕事をした。」

最近、メドヴェージェフもこの点に注目し、ロシアの時間帯が異なることを、経済効率の点で非難しました。極東のウラジオストックではモスクワの営業時間と2時間しか重ならないのです。かつて、ソ連は多くの時間帯を持つことが誇りでした。他方、今も中国は単一の時間帯で動いています。

時間を統一する権力は、公共輸送手段の発達に依拠していた、とClive Cooksonは指摘します。「19世紀前半まで、どこでもその地域の時間が使われていた。それは日時計から導かれ、教会の時計やその他の公共の建物の時計が基準となった。たとえばブリストルの正午は、ロンドンよりも10分遅かった。」

「人びとが馬車から鉄道で移動するようになると、こうした地域ごとの時間は不便になった。グレート・ウェスタン鉄道は1840年に時刻表をグリニッジ標準時(GMT)に合わせる先鞭をつけた。」地方の町は反対しましたが、他の鉄道会社も追随し、さらに電報がGMTを採用しました。議会は1880年にGMTを公式自国と決めました。

地球上を時間帯に分割する場合、純粋に考えれば、経度が15度進めば次の時間帯に進むことになります。しかし、地理的・政治的要因がこれを複雑にしました。

アメリカでは異なる時間帯を超えて列車を運行するために、その過誤を防ぐため、1883年、シカゴを基準として時刻表を作りました(Chicago General Time Convention)。アメリカの子午線は、急速に国際基準としての合意を得つつあった王立グリニッジ観測所を基準としていました。フランスだけが強い反対を示したそうですが、1884年に国際会議で認められます。

経済効率のため、あるいは、節約のために、政治家は時間帯を変え、夏時間と冬時間を変えます。しかし、体内時計と一致しない生活は不快であり、自分たち本来の生活リズムを奪われることになります。


The Times December 22, 2009 Help Iranians. Stop worrying about the bomb Nader Mousavizadeh

The Guardian, Tuesday 22 December 2009 This is no smoking gun, nor Iranian bomb Norman Dombey

WP Wednesday, December 23, 2009 As Ahmadinejad bullies the West, unrest grows in Iran

Asia Times Online, Dec 24, 2009 Hard choices for Iran in 2010 By Kaveh L Afrasiabi

NYT December 24, 2009 There’s Only One Way to Stop Iran By ALAN J. KUPERMAN

(コメント) イランの核危機はどこまで迫っているのでしょうか? 国際交渉による非核化を拒んだ体制内強硬派と、街頭における反政府行動との最近の対立が、このまま激しくなれば、核危機への影響も懸念されます。

ALAN J. KUPERMANは、イランに有利な提案を拒否されたことで、アメリカは核不拡散を実行するため、イランの核施設を空爆するときが来た、と考えます。それは、効果的で、報復を限定でき、世界中の潜在的な核武装計画に対して、核不拡散体制の実効性を高めるでしょう。


The Guardian, Tuesday 22 December 2009

The perfect gift? How about an end to loneliness – and not just at Christmas

Jonathan Freedland

The Guardian, Tuesday 22 December 2009

Tis the season to be sociable

Khaled Diab

(コメント) 若者、失業者、老人・・・クリスマスの孤独について。イギリスでは孤独な人たちを社会に取り込む活動が行われています。

イギリス人は内向的であるが、ベルギー人はもっとそうだ、と書いてあります。エジプトでは、まるで違います。


FP DECEMBER 23, 2009

The End of Influence

BY BRAD DELONG, STEPHEN COHEN

(コメント) 資金、英語、文化。20世紀において、アメリカはイギリスの衰退とともに頂点に立ちました。今も、イギリスのような衰退の時期に入ってはいない、と考えます。しかし、アメリカは自律した中心、資金や文化を世界に供給する役割を、次第に失っています。ネオリベラリズムの終わりとは、中国など、主要国間の結び付きを不可欠の条件と意識する時代の始まりです。


Foreign Affairs, January/February 2010

Banned Aid

Jagdish Bhagwati

(コメント) 援助は貧しい国を豊かにしない、とインド出身の世界的な経済学者であるJagdish Bhagwatiは書いています。それは、彼がDambisa Moyoとの共著で主張したことです。Moyoは、ザンビア出身のエコノミストで、ハーヴァードとオックスフォードに学び、ゴールドマンサックスや世界銀行で働きました。援助に関する彼女の攻撃は、コフィ・アナン前国連事務総長やルワンダのカガメ大統領によって称賛されました。

Moyoは、援助政策がロックスターやハリウッドの俳優によって決められることに憤慨し、また、ジェフリー・サックスのように科学や道徳的断罪によって議論されることも嫌います。彼女の立場は、むしろ援助を批判した古典的な研究者、P.T.バウアーに近い、と言います。

なぜ援助を批判するのか? 援助は主に、豊かな国の道徳的な責務として、また、貧しい人びとを豊かにすることで、正当化されています。しかし、実際の援助は決してそのようなものにはなりません。援助額はしばしば技術的に決められます(GDPの1%とか、ハロッド=ドーマー・モデル)が、援助は国内貯蓄を補うのではなく、むしろ減らします。援助が所得格差を減らせば移民も減るはずですが、そのような成果も見られません。結局、大規模な援助を議会で正当化したのは、冷戦の必要、でした。

援助はむしろ、無駄と汚職の源泉となります。援助を受ける者は、貧しい状態から抜け出す条件としてではなく、援助を続けさせる条件として、貧困が望ましいと考えるのです。IMFだけでなく、世界銀行にも、援助政策のモラル・ハザードが起きている、と批判します。

援助を効果的なものにするため、受け入れ政府に様々な条件を付けるようになりました。かつてローゼンシュタイン=ロダンが指摘した、「吸収能力」が再論されるべきです。今や、基礎教育や衛生・医療サービスの供給などが援助と一緒に要求されます。しかしMoyoは、援助がそれを実現する望ましい手段なのか? と問います。

では、Moyoは何を支持するのか? 彼女は、貧困を解消するのは成長であり、その最も優れた条件は援助よりも自由化政策である、と考えます。大きな援助を受けなくても、どのような政治改革の条件を満たせなくても、インドと中国は自由化政策に転換することで成長を実現し、貧困を大きく減らしました。


NYT December 24, 2009

A Most Meaningful Gift Idea

By NICHOLAS D. KRISTOF

WSJ DECEMBER 24, 2009

China Steals Christmas

WSJ DECEMBER 24, 2009

There Is No Joy in Toyland

By ANNE M. NORTHUP

(コメント) クリスマスの時期には、NICHOLAS D. KRISTOFのように、ギフトを貧しい諸国の子供たちに、援助を効果的に行うNGOに、与える提案があります。さまざまなチャリティ・ファンドがグローバルなギフトを行う世界は、多分、少しでも住みよいと思うのですが。

他方で、WSJの論説のように、クリスマスのニュースに隠れて、反体制の民主化運動指導者Liu Xiaoboを有罪にする中国政府のやり方を非難し、また、クリスマスのギフトがどれもが中国製で、消費安全基準を守らず、アメリカ国内の労働者たちを失業させたままであることを憤慨する記事もあります。

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The Economist December 12th 2009

Toyota slips up

Britain’s public finance: Class warrior

National Health Service: After the gold rush

America in the world: Pay any price? Pull the other one

The Copenhagen climate talks: Filthy lucre fouls the air

The Red Cross movement: How much evil can you not see?

Nepal’s floundering peace: Back to the brink

Indonesia’s coal rush: Sooty success

(コメント) ギリシャとアイルランドを除いて,私が面白いと思った記事は,トヨタ:何と短い世界一,イギリスの医療サービス,アメリカ:覇権国はやめた,コペンハーゲンと赤十字:理念と国際機関,ネパールとインドネシア,でした.