IPEの果樹園2009

今週のReview

12/21-/26

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

日米関係, トービン税, アイルランドギリシャ, オバマの平和賞受賞演説, 気候変動:NIEO子供SachsLOMBORGOstromThe Economist, ガイダル, ドバイ後

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


FT December 10 2009

US-Japan: an easy marriage becomes a ménage à trois

By Philip Stephens

(コメント) 中国の台頭が及ぼす、日米の同盟関係再編が、日米双方の認識の差で行き詰まっている、という理解です。民主党政権の誕生と鳩山首相の性格が影響している、と考えます。

日本がアメリカとの同盟関係を軽視するはずがない、という認識と、中国の台頭によってアジア重視の姿勢を具体化しなければならない、という判断は、日米双方に異なった感覚を生じています。それが何か、を示す深い考察は示されていません。

WP Friday, December 11, 2009

Does Japan still matter?

By Fred Hiatt

IHT December 11, 2009

Obama's Japan Headache

By ROGER COHEN

(コメント) 日本は今なお重要だ、という主張よりも、「かつては(日本も)経済的・軍事的な地域を支配しようとした。(今は)中国が台頭し、日本経済は低迷し、人口も減少している。このような日本についてアメリカ人は何も感じていない。」と書かれる方が深刻です。

日米関係の危機は誇張されており、岡田外相も、日本は北朝鮮や中国と単独で対抗する能力を持たない、と認めています。

むしろ懸念されているのは、日本人の敗北主義です。船橋洋一の論説を紹介しつつ、社会が衰弱し、委縮している、と考えます。このように衰退し続ける日本がアメリカとの「より対等な関係」を望むのを心配するより、自民党から政権を奪った民主党がそのような強い姿勢を堅持し、日本人が経済を再生して、この敗北感を払しょくすることは重要だ、とFred Hiatt主張します。逆に言えば、このまま衰退し続けるなら、日本はアメリカの視野から消えてしまうのです。

ROGER COHENの見方では、オバマ政権は「日本問題」に困惑しています。これはオバマを眠れなくするような問題ではないのですが、少なくとも、半導体摩擦より深刻な、地域の安全保障に関わる問題です。

自民党政権を否定し、業界と癒着した官僚による支配を破壊するよう求めた日本国民は、同時に、憲法とその前提、そして対米関係を見直し始めました。日本はより反抗的で、アメリカの決定を黙認するより、論争を好む国になった、と。冷戦後の自民党支配体制解体が、その安保体制現状支持を見直すことにつながるのは、ある意味で当然だ、とCOHEN見ています。

オバマと鳩山は、穏健左派の理想を掲げ、よく似た政治基盤(所得減少と雇用不安に対する中産階級の政権批判)から支持を得て、低下する国際的な地位の立て直し(特に中国との関係と、安全保障問題)を一つの重要な課題として、誕生しました。オバマと鳩山が大きく異なった立場にはないはずですが、同じ「信頼」を語っても、その意味は微妙にずれています(オバマは普天間基地の移転計画を実行すること、鳩山は日米同盟関係の将来)。

アメリカ側には不満と疑念が強まっていますが、COHENは冷静さと忍耐を求めます。沖縄県民の米軍基地に対する反感、また(社民党との)連立政権の制約は変えられない、と鳩山政権の防衛副大臣は語ります。その結果が、結論を出さずに先送りすることでした。この論説は、次の選挙で社民党との連立を解消するときまで、という示唆に及びます。

日本は、ドイツと同様に、戦後の占領体制から離脱従っている。それは当然だろう。しかし、ドイツと違って、東アジアにはまだ冷戦構造が残っており、中国は成長し続け(ソ連と違って)消滅しそうにない。だから、日米の同盟関係と米軍基地は重要であり、互いに欠かすことができない。つまり、オバマは日本の姿勢が固まるのを待ち、戦略的な関係を確認しつつ普天間紀伊問題では柔軟性を示すべきだ、と。

WSJ DECEMBER 14, 2009

Japan Coalition Sees Strains

By ALISON TUDOR

(コメント) ALISON TUDORは、鳩山政権が連立の枠組みに縛られている、と考えます。国民新党の主張により郵政民営化を逆転し、社会民主党の主張で普天間基地を移転しようとしている。こうして政権を維持するための政策変更が、日本政治の特徴だ、という解説まで引用しています。

また、「CIAが私を暗殺しない限り」日本はかつてのようにアメリカの言いなりにならない、と放言した亀井大臣を取り上げています。中小企業への返済猶予を命令する法律を作り、郵政民営化を逆転し、国債発行を増やして公共工事による景気刺激策を復活させた、WSJから見れば、最低・最悪水準の金融担当大臣です。

そして、ついにオバマ政権の要望を無視して、普天間基地移転の交渉を先送りするように求め、鳩山が認めました。

IHT December 15, 2009

Japanese Obsessions

By ROGER COHEN

Asia Times Online, Dec 16, 2009

Searching times for Japan's premier

By Peter J Brown

(コメント) ROGER COHENは、鳩山政権と、日本が開拓したポストモダン個人主義の理想、「オタク」の出現に注目します。もちろん、暴力からセックスまで、何でもありのゲームや漫画などに異常なほど執着する若者たちのことです。オタクたちは、個人主義の極限として、保護された自我が削られることを拒み、信頼できる他者との愛情も拒む。サイバー空間を利用する私たちは多かれ少なかれプラーヴェートな世界にこもり、「オタク」になっていますが、日本ほど極端にそれを追求することはありません。

なぜ日本か?  COHEN4つの要因を指摘します。すなわち、豊かさ、ポストモダン、画一主義、絶望。

この分析が正しいかどうか、それを議論するより面白いのは、COHENが日本の政治や国家を、「オタク」とみなして解釈していることです。かつて、マンスフィールド駐日大使が、世界で最も重要な二国間関係と呼び、アメリカ人が日本によって圧倒されるのではないか、と恐れた時代は遠くに去って、忘れられました。今の日本人は、豊かで、文化的な成熟と無気力を持て余す、ヨーロッパ人に似ています。しかし、ヨーロッパと違うのは、その周辺が世界でも危険な、不安定な地域であることです。

日本社会には憂鬱と不安が満ちています。多くの人にとって、日本経済は破滅を目指し、雇用は見当たりません。完璧主義者や画一化の好きな日本人が、向かうところは自分の内面、それを表現できる漫画やインターネットだけです。・・・そして電子的世界の幻を、孤立しても追い続け、「友愛」を唱える指導者を支持します。

Peter J Brownも、ハネムーン効果の切れた鳩山政権は、その「不決断」の状態を長引かせるかもしれない、と懸念します。それは、内外における権力の不在、につながります。景気は再び悪化し、中国の影響力は増すばかりです。普天間基地の移転問題。天皇陛下の中国指導者との異例の会合。民主党の中国訪問団。・・・アメリカの姿勢が厳しくなり、中国の成長が続けば、不決断に流れる日本政府は窒息します。

WSJ DECEMBER 16, 2009

North Korea's Four-Party Ploy

By GORDON G. CHANG

FP Wed, 12/16/2009

India and Japan's 'China paradox'

By Will Inboden

(コメント) GORDON G. CHANGは、北朝鮮がアメリカとの和平協定を結ぶために、6カ国協議からロシアと日本をはずそうとした、と指摘します。アメリカは非核化と和平・経済援助を取引する方向に舵を切ったかも知れません。

Will Inbodenは、インドと日本の類似性を考えます。すなわち、両国とも中国を最大の貿易相手国としており、同時に、歴史的な安全保障上の紛争を中国との間に抱えています。他方、大きく異なるのは、インドが近年の興隆に自信を深めているのに対し、日本のエリートや国民が人口減少と経済衰退に委縮し続けていることです。

Will Inbodenは、アメリカが中国との間で設置した経済戦略会議を、日本との間にも設けるべきだ、と指摘します。こうしてG2への警戒感を払しょくし、アジアの共通の民主的価値や経済・政治関係の緊密化にアメリカも関与します。


YaleGlobal , 10 December 2009

US Opinion Turns Against the Globalism of its President

Bruce Stokes

(コメント) Bruce Stokesは、アメリカにおける国際主義が、オバマの努力にもかかわらず、不況と失業により孤立主義に押し返されつつある、と指摘します。ブッシュのユニラテラリズムを転換して、G20も、アフガニスタン増派も、コペンハーゲン環境サミットも、オバマは積極的な指導力を発揮しようとしますが、その流れを無視できません。

中国からの輸入品に関税を引き上げるべきだ、という主張が増え、アフガニスタン増派の支持は民主党員の間でも減っています。このアメリカの孤立主義とユニラテラリズムが、日米関係も難しくするでしょう。

FT December 17 2009

A global order swept away in the rapids of history

By Philip Stephens

(コメント) 誰が、21世紀の最初の10年間、国際秩序を変えたのか? 9・11のテロリストたちと、それに反撃すると決めたブッシュ大統領。他方、プーチン大統領は入らない。石油価格の高騰もプーチンの攻撃的な外交姿勢も、ロシアの衰退を反映しているから。

パキスタンとアフガニスタンで、ビン・ラディンとオバマは今も戦っている。核兵器のリスクもある。今後の主要な対立も、イデオロギー間ではなく、国家間で起きるだろう。

アジアの台頭が地政学的に最も大きな変化を意味する。それは中国から周辺諸国、さらにブラジルにも及ぶ。しかし、世界は単純な経路で発展しない。オバマが中国を訪問したときにも、その成果は乏しかった。

新興諸国の発展はグローバルな政治意識を刺激する。衛星放送や、インターネットもそうだ。それは世界的な民主主義を促すというより、短期的には各地の旧秩序を不安定化する。

「アジアは19世紀のヨーロッパに似ている。過去の怨恨は、抑えられたものの、まだ地域をとらえたまま、民族紛争や国境紛争が続いている。20世紀を汚す大国間戦争から、世界が抜け出したと願うが、もしそれが早合点であれば、米中戦争よりもインドと中国の間に戦争が起きるだろう。」

アメリカは正しくも多極化する世界の秩序を維持したいと願っている。そのためにはアメリカが新しい多角的協力を制度化するしかない。コペンハーゲン・サミットは失敗であるが、少なくとも気候変動の危機を意識するような、相互依存の認識は深まっている。

世界は多角的な協力化、狭隘なナショナリズムの衝突か、その岐路に立っている。諸大国は、新旧を問わず、このグローバルな新秩序の指導者であるか、あるいは、犠牲者であるか、証明しなければならない。

FT December 17 2009

A plan to eliminate nuclear weapons

By Gareth Evans and Yoriko Kawaguchi

WSJ DECEMBER 16, 2009

U.S. Disarmament Is Dangerous for Asia

By FRANKLIN C. MILLER AND ANDREW SHEARER

YaleGlobal , 17 December 2009

Bickering by Champions of Globalization in Asia Worries the Region

Sadanand Dhume

(コメント) オーストラリアと日本が議長国となった核拡散防止と核廃絶のための国際会議が開かれ、報告書をまとめました。しかし、その提言は平凡です。

WSJの論説もこの報告書を取り上げ、IAEAの強化や核燃料物質のグローバルな管理、などを支持しますが、米ロの核保有上限設定や先制不使用の提案は間違いだ、と考えます。なぜなら世界は友好的ではなく、ホッブスの描いたままだからです。他国が核保有を急速に増やすとき、自国が削減に励むのか? 核武装した北朝鮮が交渉に応じないのに、核の先制使用はない、と宣言するのか?

だから核廃絶より、核抑止が重要である、と主張します。日本も、アメリカの核の傘があるから、北朝鮮と交渉できるのです。つまり、これは平和を維持するための核武装だ、と。

他方、主要貿易相手国としてインドと中国は、国境紛争を解決し、経済的に協力することによって、多くの利益を得られるでしょう。‘Chimerica’から‘Chindia’です。インドと中国が合意すれば、国際交渉においても重要な役割を果たせるのです。


FT December 10 2009 Why it’s not the end for the City of London By Philip Augar

FT December 13 2009 Banking: City limits By Megan Murphy

The Guardian, Sunday 13 December 2009 Too big to succeed Joseph Stiglitz

WP Wednesday, December 16, 2009 America's decade of dread By Harold Meyerson

(コメント) 金融危機と不況、救済コストをめぐって、労働党政権がシティに対する規制や課税を強化する動きを、Philip Augarなど、金融関係者は牽制します。金融ビジネスはイギリス経済の5-8%を生み出しており、ロンドンが保持する国際的な優位はオフショア金融センターによって急速に失われている、と。湾岸地域も、ユーロ圏も、イギリスとは逆に、独自の金融センターを助成しているのです。

Harold Meyersonは、アメリカの金融街を批判します。「この10年は、恐怖に始まり、恐怖に終わった。ウォール街の、ワールド・トレード・センターを狙った大量殺戮に始まり、ウォール街が手を貸した、経済の収縮によるメイン・ストリートの恐怖で終わったのである。」

この間、ウォール街とブッシュ大統領は、バブル景気やサダム・フセインとの戦争に振り回されたが、彼らの視野に中産階級のアメリカ市民は存在しなかった、と批判します。利益の多くは株式の配当になって富裕層に流れ、苦しみの多くは中産階級を貧困に至らしめた。金融ビジネスばかりが栄え、製造業や労働者は見捨てられました。

ポール・ボルカーのインタビューが引用されています。「近年の金融市場における革新が経済の生産性に何らかの効果を与えた証拠はないと思う。」「私に言えるのは、1950年代、60年代の経済は、こうした革新が無くても見事な成長を実現した、ということだ。」 そして、空洞化の恐怖がよみがえります。貿易や海外投資を増やすことが、それでも、アメリカの国益と言えるのか?

強力な労働組合のあるドイツも、労働組合のない低賃金の中国も、アメリカ向けの輸出で繁栄しています。それでも、アメリカの政治家は産業政策を嫌い、ますます中国の製品に依存するだけでよいのか、と問います。金融ビジネスとグローバリゼーションによって利益を得てしまった政治家やエリート層は、製造業を復活するために政府が税金を使用し、貿易を抑制することを嫌うのです。

The Guardian, Friday 11 December 2009 Now's the time for a Tobin tax George Irvin

The Guardian, Monday 14 December 2009 Time to tax hot money Dean Baker

(コメント) George Irvinは、明快に、トービン税を支持しています。イギリス政府が財政赤字を理由に付加価値税を引き上げるより、金融取引税(FTT)や、より限定的な通貨取引税(CTT)すなわちトービン税を導入する方がよい、と。

BISによれば、2007年の外国為替市場の取引規模は800兆ドル。世界GDPの15倍、その約80%は純粋に投機である、とGeorge Irvinは指摘します。ポンドの取引、34兆ポンドに0.1%のトービン税を課すだけで、GDPの2.8%の税収340億ポンドを得ます。

代表的な二つの反対論を取り上げて反駁します。1.「世界同時に課税しなければ意味がない。金融取引は他の土地で行われるだけだ。」・・・すでに課税は行われているし、金融取引はどこで行われても、技術的に、監視できる。2.「トービン税だけで危険な経済取引は抑制できない。」・・・危険な金融取引には税率を高くする。また同時に、金融機関への監視と規制が強化されるから、自己資本を増やす必要がある。

金融ギャンブルを抑制し、財政赤字を埋めて、グリーン・ニューディールを実現するために、トービン税が支持されるときが来た、と考えます。

Dean Bakerも、反対論に反駁します。アメリカはアル・カイダの資金源を閉じるために金融規制を行い、十分な効果をあげました。他方、ケイマン諸島が反対理由になるとは考えられません。また、バイクダイな取引を行う限られた金融機関を監視する方が、世界中で行われる著作権などの侵害を取り締まるよりも、はるかに容易なのです。

FT December 16 2009

A tax on short-term debt would stabilise the system

By Luigi Zingales

(コメント) 金融取引に課税するというアイデアは政治的な魅力がある。いわゆるトービン税です。政治家たちは、金融危機を起こした銀行家たちを罰する。財政の赤字を埋めるか、IMFの増資に役立ててもよい、と政治家たちは考える。

しかし、トービン税には欠陥がある。1.実行することが困難だ。債券の取引に課税すれば、先物やオプションの取引に逃げ、もしすべてのデリバティブ取引に課税すれば、課税されないような取引が生じるだろう。2.世界中で同様に課税しなければ、取引はオフショアに逃げる。3.危機の再発を防げないだろう。

支持者は、投機的な取引を抑制して、資産価格の投機的な変動を減らす、と主張する。しかし、危機が起きたのは、すべての金融取引が悪いのではなく、一部の者がリスクを取り過ぎたのである。サブプライム・モーゲージの価格がわずかに下がっただけで、短期の、レバレッジを利用した金融仲介が、それを危機に転化した。レポ売買において、銀行の取り付けと同じことが起きた。

なぜ金融機関は短期の借入に頼ったのか? その方が安く、大量に資金を得られ、それゆえ、利潤が大きくなったからだ。短期の融資を行った者は、危なくなればすぐに逃げればよい、と考えた。しかし危険を感じて一人ひとりが出口に殺到すれば、この逃げ道は閉ざされてしまった。価格が急落したのだ。この場合、短期借入の誘因は、社会的に見て、最適な水準を超えていたわけだ。

これは典型的に課税によって対応するべき問題だ。なぜ短期債務に課税しなかったのか? かつてはインフレ率が高く、不安定であったから、短期融資もコストが高く、借換には大きなリスクがあった。しかし、この30年間でインフレ率は抑制され、コストが下がった。連銀の低金利政策と、金融機関の激しい競争、報酬体系は、短期借入・融資への依存を増大させた。そこではシステム・リスクが無視されていた。

だから、金融取引ではなく、債務のすべてでもなく、短期債務に課税するべきだ、とLuigi Zingalesは主張します。特に、金融機関の短期債務に課税するべきである、と。


FT December 10 2009

Debtors in Dublin

The Guardian, Sunday 13 December 2009

A hungover Celtic Tiger

Roy Foster

(コメント) アイルランドのケースです。

2002-07年、アイルランドの民間部門への融資は約2倍に増大しました。そしてパーティーが終わったとき、その住宅価格はヨーロッパで最高になり、建設部門が経済の5分の1を占めていました。EUの平均より、物価は27%、賃金は40%も高かったのです。同じユーロ圏で、為替レートは20%も実質的に増価したことに等しいわけです。

危機の深刻さはそれに対応しています。GDPが7.3%減少し、インフレ率もマイナス3%、財政赤字はGDPの12%です。「アイルランドはウルトラ・オープン・エコノミーである」と記事は指摘します。しかも、為替レートや金利は勝手に動かせません。内需ではなく、競争力の回復がすべてなのです。だから政府は、公共支出を削り、賃金を引き下げました。

そのデフレ的調整は国民を苦しめるけれども、それ以外の選択肢はない、とFTは政府を支持します。こうしてアイルランドはかつての成長モデルに復帰するのです。すなわち、優れた、教育ある労働者を雇用し、ユーロ圏に向けて生産するために、外国投資家がアイルランドに戻るように。

また、厳しい緊縮予算で、その方針が資本市場に信頼されれば、債券価格も回復し、市場金利の引き下げにつながります。

他方、Roy Fosterの意見では、金融ビジネスや不動産投機、政治家たちの失敗のツケを、労働者が支払わされている、ということです。公共部門は破壊され、その労働者たちが緊縮財政の犠牲になっています。

スウィフトの格言を思い出すがいい。「国家の富とは、その人民である。」

The Guardian, Friday 11 December 2009 Debt, deficit, default: where monetarism leads Adrian Pabst

FT December 13 2009 European farce descends into Greek tragedy By Wolfgang Münchau

SPIEGEL ONLINE 12/14/2009 Interview with Greek Finance Minister: 'Punitive Measures Are Not Appropriate'

SPIEGEL ONLINE 12/14/2009 A Greek Tragedy: Should the EU Save Athens from Bankruptcy? By Wolfgang Reuter

The Guardian, Wednesday 16 December 2009 Papandreou's real route to recovery Matina Stevis

(コメント) ギリシャのケースです。

GDPの125%に達するギリシャの財政赤字が、ユーロ圏の統一を脅かし、ギリシャ国債の格付け低下でヨーロッパの株価が下落しました。Adrian Pabstは書いています。

「もしアテネ(ギリシャ政府)がデフレの中でも過酷な緊縮財政を続ければ、今週の暴動がさらに拡大した規模で再発し、社会不安が高まるだろう。他方、もしギリシャが国債の利払い・返済を停止し、デフォルトになれば、ユーロ圏を離脱するしかないだろう。それに続く危機はイタリアなど他の諸国におよび、ヨーロッパの大建築を崩壊させる脅威となり、グローバルな経済的信頼を大幅に損なうだろう。」

この危機を救えるのはECBの緊急融資のはずであるが、ECBはマネタリズムのドグマに支配されて動こうとしない、と批判します。各国財政赤字の抑制、低インフレを目標とする通貨同盟は、そもそもデフレ的な偏りがある。さらに、金融危機後の金融緩和と量的拡大策を、早くも逆転しようとしている。・・・

それゆえAdrian Pabstは、この歴史的な金融危機に際して、ヨーロッパの金融秩序を改善するように求めます。1.ECBの政策目標に、物価の安定と並んで、成長を同じように重視させる。2.危機に陥ったユーロ圏の加盟国に対して、経済の縮小と債務の膨張が悪循環になるのを防ぐため、一時的な財政救済策を認める。3.インフラや研究開発における長期投資を支援する新しい経済文化を育成する。持続的な成長を高めることで財政を均衡する方が確実な道である。

財政赤字と債務危機のヒステリーを広まるのではなく、マネタリズムを抑えて、高投資・高成長の戦略を政府や政策立案者は目指すことだ、と。

Wolfgang Münchauは、ドイツのメルケル首相が発言したときに、椅子から跳び上がって驚きます。ドイツが、債務国の政府に代わって、他国の財政再建に介入するというのでしょうか? ルールに依拠した財政政策の協調という目標はどうなったのか?

ギリシャの財政危機、債務危機は、EMUの財政安定・成長協定を動揺させる事件です。アイルランドと違って、ギリシャ政府には緊縮財政を実行する安定した政治力がありません。そして、危機が拡大したとき、EMUにはそれを処理するルールがまだないのです。政治家たちのバラバラな発言が危機を深化させています。

そこで、メルケル首相は、危機管理を別の組織によって行うよう求めた、というわけです。EUによる銀行の監督、財政刺激策、構造調整政策、財政危機の管理。

Matina Stevisも、財政赤字を減らすことが景気回復をもたらす道ではない、と考えます。効率性を高めるために、政府が集団的な努力を指導しなければなりません。

WSJ DECEMBER 14, 2009

Politicians and the Financial Crisis

By MOJMíR HAMPL

(コメント) EUでは、金融市場の「混乱」や「投機」、「悪習」を政治家たちが批判します。しかし、金融政策や制度改革は、政治家たちに期待できない、と言われている長期的な目標です。EUでは常にさまざまなレベルで選挙が行われおり、長期的な思考はできません。


FT December 10 2009

America’s job cuts could help boost its exports

By David Hale

(コメント) 失業率が上昇すると、株価が上昇する・・・! それは企業の生産性を高め、利潤が回復すると思うからです。しかし、賃金が上昇して消費が回復すれば、売り上げが伸びて利潤が増大する、と思わないのか?

問題は、企業が雇用を増やし過ぎたのかどうか、ということです。しかもDavid Haleは、生産性の長期の上昇傾向が重要だ、と考えます。企業は雇用を削り過ぎて、景気回復に雇用を必要とするでしょうか? そして、回復過程で高い生産性を維持できるでしょうか?

David Haleは、ドイツや日本に比べて、アメリカは労働者の多くを解雇し、回復過程で雇用し始めるから、高い生産性を維持できる、と考えます。ドイツは雇用を維持するために生産性を犠牲にし、日本は正規雇用を解雇できないから、売り上げが減ると利潤が大きく減少します。

オバマに必要なことは、それゆえ、この生産性の優位を次の成長や雇用につなぐための輸出拡大であり、ドル安に加えて、貿易自由化と競争力政策です。

NYT December 11, 2009 Bernanke’s Unfinished Mission By PAUL KRUGMAN

(コメント) PAUL KRUGMANは連銀に不満です。財政政策は議会によって制約されますが、連銀はもっと行動できるはずだから。

SPIEGEL ONLINE 12/12/2009 Interview with US Economic Recovery Advisory Board Chair Paul Volcker: America Must 'Reassert Stability and Leadership'

NYT December 13, 2009 The Do-It-Yourself Economy By THOMAS L. FRIEDMAN

FT December 14 2009 Three steps to a safer financial system By Philip Purcell

BG December 16, 2009 Economics 101: How little they know By Jeff Jacoby

(コメント) 現在の不況は終わったのか? どうすれば回復するのか? 経済学は余りにもわずかしか正しいことを語れない、と多くのすぐれたエコノミストたちは感じています。

WSJ DECEMBER 15, 2009 The Case for Optimism on the Economy By ALAN S. BLINDER


FT December 10 2009 Patterns in the eye of the beholder By Samuel Brittan

The Observer, Sunday 13 December 2009 Darling's plan was more radical than he got credit for. But it's not enough Will Hutton

FT December 15 2009 Britain’s dismal choice: sharing the losses By Martin Wolf

The Japan Times: Wednesday, Dec. 16, 2009 Saving the U.K. economy By DAVID HOWELL

(コメント) イギリス経済と財政赤字の不安を考えます。増税することや、社会保障を削減することは正しいか?


The Guardian, Friday 11 December 2009 Kissinger's fantasy is Obama's reality Pankaj Mishra

WP Friday, December 11, 2009 War and peace By Eugene Robinson

LAT December 11, 2009 Obama's faith in diplomacy backed up with firepower

NYT December 11, 2009 President Obama in Oslo

(コメント) オバマのアフガニスタン増派について、パキスタンのジャーナリストは大きな矛盾を批判しました。ノーベル平和賞の受賞講演もそうです。アメリカ大統領は非現実の世界に住んでおり、議会や情報機関はだまされやすく、メディアはお世辞に流される、と。議会はこうした生半可な真実に振り回される大衆の代表です。

圧倒的な空爆で民衆を含めて殺戮しておきながら、アメリカ軍の制約とは、自分たちの財政的な負担なのです。そして大統領の周りには、彼の理想と厳しい決意を称えるコラムニストやインテリが侍ります。

しかし、オバマのノーベル平和賞受賞演説は、むしろ、その軍事力を支持する内容が注目されました。Eugene Robinsonは、その異例の演説を引いています。平和賞授賞式でオバマは述べました。何千人もの若者が遠くの土地で戦闘に参加する。彼らはそこで人を殺し、また、殺される。自分はそのことに責任を負っている、と。"I'm responsible for the deployment of thousands of young Americans to battle in a distant land. Some will kill, and some will be killed."

オバマは、戦争の本質や必要性について、学術論文のような議論を展開した、と。それはオバマがアフガニスタンへの増派を決めるまでに、その支持論と反対論を吟味した過程を描くものでもありました。

すべての選択肢がよくないものだった、とオバマは振り返ります。たとえば、今、撤退を開始するのは危険だ、と。アフガニスタンやパキスタンがアメリカに及ぼす脅威は現実に存在する。だから増派して、アフガニスタンの軍を整備し、タリバンを撃退し、同時に、20117月という期限を決めて、撤退の開始を命じました。それがカルザイ政権に改革を促す圧力になると期待します。

歴史を振り返って、戦争は常に悲劇であるが、ときには必要である、とオバマは結論します。だから問題は、軍事力を、いつ、どのように使うか、である、と。人道的な見地からバルカン半島を、破綻国家としてのソマリアを、また、イランや北朝鮮が示す核武装計画を、挙げます。そして、われわれが住みたいと思う世界と、現実に住む世界を区別します。

Asia Times Online Dec 12, 2009

Obama embraces realist-liberal tradition

By Jim Lobe

IHT December 12, 2009

Obama's Nobel Speech: Sophisticated and Brave

By TED WIDMER

(コメント) キング牧師の非暴力は、ヒトラーの台頭を阻止するには不十分である、とオバマは主張します。状況によっては、戦争が正当化される、とオバマは主張します。そして、中国がイランや北朝鮮の核武装を助けないように、ヨーロッパがアフガニスタンへの増派を支持するように、求めます。アメリカの孤立主義こそが、世界を戦争の危険に向かわせる、と国民に警告します。アメリカは国際的なルールに従って、さらに重要な役割を果たすべきなのです。

この演説は余りにもカーター的で、また、余りにもウィルソン的です。アフガニスタン戦争が失敗に終わり、国際協調が成果を上げないリスクが大きいからです。その時、オバマの主張は非難されるでしょう。今はその洗練された、勇気ある主張を、聞くことです。

LAT December 13, 2009

Obama doctrine emerges in Oslo speech

Doyle McManus

FT December 13 2009

A Nobel speech that summoned the spirit of Cicero

By Simon Schama

(コメント) 戦争だけでなく、敵対的な国家を国際秩序に組み込む「グローバル外交」の発展を指導する「オバマ・ドクトリン」も述べられています。スーダンや北朝鮮をオバマはどうするつもりなのか? まずは開放政策を求め、もし外交を拒むときには、主要諸国で厳しい制裁を決める。この、関与と制裁、そして忍耐が必要です。

しかし、虐殺をおこなうような体制には、その代価を支払うときが来るはずです。オバマはアフガニスタンの増派で、戦争を正当化するケースを示しました。同時に、アメリカは世界中で戦争するつもりはない、と語ります。オバマはオスロで外交政策の基本を語りました。それには国際協力が必要です。

その苦渋に満ちたオバマの決断を、キケロにたとえます。戦争と平和、どちらがオバマなのか?  Simon Schamaは、オバマの人間的なリアリズムを称えます。

The Guardian, Sunday 13 December 2009 Blair's crime of hubris Jonathan Steele

The Times December 14, 2009 Intoxicated by power, Blair tricked us into war Ken Macdonald

The Guardian, Monday 14 December 2009 Blair sold Iraq on WMD, but only regime change adds up Hans Blix

(コメント) 他方、イギリスのイラク侵攻を命令し、その判断を正当化したブレア首相は、今、特別委員会によって決定の正当性を問い直されています。


SPIEGEL ONLINE 12/11/2009

Fears of Eurabia: How Much Allah Can the Old Continent Bear?

(コメント) ヨーロッパにおけるイスラム教徒への差別や、移民増加に伴う社会不安を、各国はどのように吸収し、あるいは、その社会的・文化的な分断化を解消しようとしているのか? ドイツ、イギリス、フランスなどが紹介され、「ユーラビア」への不安と、ヨーロッパのベルギー化が指摘されています。

The Guardian, Saturday 12 December 2009

Immigration: the test case

Nick Saville


WP Friday, December 11, 2009

The new socialism

By Charles Krauthammer

(コメント) 気候変動の抑制を目指す国際機関を、Krauthammer1970年代・80年代の「新国際経済秩序(NIEO)」と同じものだ、と批判します。それは第3世界諸国が国連の組織を乗っ取り、豊かな国から貧しい国へ、富を移転する道具にした時期である、と。

富を移転する理由は何か? 「平等」です。「グローバルな社会主義による富の再分配」を目指した(そして植民地化の代償を求めた)政治運動であった、と。しかし、それは腐敗した官僚制度しか生まず、サッチャー=レーガンの保守革命と80年代初めの債務危機によって終わったのです。

しかし、貧しい者(実際は、国家)への再分配は政治運動として滅びることなく、社会主義に代わる大義名分を見つけました。それが、環境保護主義、です。しかもKrauthammerにとって受け入れがたいのは、それが貧しい国の独裁者や、ヨーロッパの人道主義政治、国際機関の官僚たちだけでなく、ワシントンで大いにもてはやす者がいることです。特に環境保護局(EPA)のキャンペーン。

EPAは、その誕生以来、何でも規制したがる。二酸化炭素排出量を規制するためには、経済や社会を統制することも辞さないだろう、とEPAの姿勢を攻撃します。社会主義が崩壊して、多くのレッドはグリーンに化けた。エリートによる権力の集中と官僚支配、ただし、その目的は階級的抑圧の廃止ではなく、地球を救うこと。

地球を炭素から解放する国際秩序(New Carbon-Free International Order)には反対する者もいる。環境を規制し、支配するのは、EPAではなく議会でなければならない。


FT December 11 2009

Inflation returns to China

By Geoff Dyer in Beijing

Dec. 14 (Bloomberg)

Goldman’s Bonuses Shouldn’t Beat Saving Planet

William Pesek

WP Monday, December 14, 2009

Brazil's China headache

By Sebastian Mallaby

(コメント) 中国をめぐる考察です。輸出が回復するまで、中国政府は人民元の増価を許さない、という方針が、インフレやバブルの懸念と重なって来ました。

また、2兆ドルを超える外貨準備を持つ中国が(トービン税より)、温暖化防止の国際的な基金を拠出する第一の候補に挙げられます。他方、アジア諸国民が所得水準の上昇にともない、ガソリン車を大量に購入する世界を想像することは困難です。

Sebastian Mallabyの論説は興味深いです。繁栄と政治的安定を実現した(そしてワールド・カップやオリンピックの開催を予定する)ブラジルに、その条件を失う危険があるとしたら、それは通貨レアルの増価です。この1年間で、ドルに対して3分の1も増価しました。これに対処するには、ブラジル政府が中国と対立しなければなりません。

レアルの上昇をもたらしたのは、アメリカの金利低下と中国の対ドル固定政策です。アメリカは金融危機後、急激に金利を下げました。資本はより高い金利を求めて、例えばブラジルに流れています。ブラジルがアメリカの金融政策を変えさせることはできません。他方、中国は金融危機後、人民元の増価を止めました。ブラジルの製造業は中国からの輸入に対抗できません。

ブラジルに対策はあるでしょうか? 資本流入を抑えるために金利を下げれば、国内の過熱やインフレが悪化します。資本流入に課税しますが、抜け穴ができます。為替市場に介入して、レアル売り・ドル買いをすれば、価値の減るドルを大量に保有しなければなりません。関税を引き上げて輸入を抑えれば、報復を呼びます。

結局、国内政策は不十分であり、アメリカに金利を上げるよう求めるか、中国に人民元の増価を求めなければなりません。アメリカは金利引き上げを受け入れませんが、中国の人民元は増価することが中国自信の利益である、とMallabyは考えます。問題は、ブラジルが中国との友好関係を演出してきたことです。

FT December 17 2009

Reforms that will help China maintain its growth

Guo Shuqing

China Daily 2009-12-17

Sharing the development experience of Beijing

By Robert Wihtol

(コメント) Guo Shuqingは、イギリスの産業革命と比べて、中国の工業化はその規模が重要な違いをもたらす、と考えます。たとえば、一次産品への需要が急増し、また、世界の貯蓄が急速に増加しています。

中国の影響がどうなるかは、その成長が日本のように減速するかどうか、にかかっています。日本のような停滞を避けるためには、とShuqingは書きます、中国政府は6つの点で改革を目指すべきだ、と。すなわち、1.都市と農村の格差を抑える。2.金融システム(そして、企業や個人への金融サービス)を改善する。3.教育・訓練などによって人的資本を高める。4.エネルギー効率の改善や環境保護を進める。5.内需主導の成長に転換する。6.海外投資を増やす。それが敵対的な投資をみなされないようにする。・・・いずれも常識的で、日本が努めてきたことですが、不十分であったかもしれません。

Robert Wihtolは、中国式成長モデルを輸出する、という政治宣言です。


FT December 13 2009 Trust the public on climate change By Clive Crook

The Guardian, Monday 14 December 2009 This is bigger than climate change. It is a battle to redefine humanity George Monbiot

(コメント) 人類が環境を守るのではなく、環境問題が人類を再定義する。また、これは「拡大種族」と「抑制種族」との最初のグローバル大戦なのです。

BG December 14, 2009 Green and prosperous? Denmark leads the way By Philip Warburg

WP Tuesday, December 15, 2009 Anti-climate change, anti-human By Anne Applebaum

(コメント) 環境保護団体や市民運動の寄せ集まりが発する支離滅裂なメッセージは、何を意味しているのか? とAnne Applebaumは問います。

デンマーク警察は、窓ガラスを割ったり、自動車に放火したりする集団を1000人ほど逮捕しました。環境や気候変動を憂慮する団体の主張は、ときには、人類をバイ菌として数え、ときには、人を消費するエネルギーや炭素排出量で計算し、削減対象にします。もしそんな単純化が許されるなら、大量破壊兵器は再評価されるかもしれない、と。

Applebaumは、再生可能なエネルギーを支持し、炭素税を導入するべきだと考えています。世界が化石燃料への依存を減らすことは、環境を守るだけでなく、安全保障面でも大きな利益をもたらすでしょう。

しかし、こうした子供じみた環境保護運動に振り回されてはならない。

NYT December 15, 2009 Four Sides to Every Story By STEWART BRAND

FT December 15 2009 How to hold the rich to their word By Jeffrey Sachs

(コメント) 気候変動を防止するためには、1992年の国際合意に、発展途上諸国へ必要な財源を移転することが明記されていました。なぜなら、貧しい国にとって、国際合意にしたがって炭素排出量を削減することは耐えられないコストであったからです。Jeffrey Sachsは、気候変動についても、開発目標についても、裕福な国は財源問題をいつも避けている、と批判します。それは次の選挙が気になる政治家たちの修正であるとしても、長期的な地球環境や合理的なコストの抑制に反しています。

気候変動の国際的枠組みが機能するためには、新しい、追加的に、十分な規模の、予測可能な財源移転が約束されなければなりません。このことを開発諸国の政治指導者たちは国民に語りませんでした。彼らは自国のコストができるだけ小さくて済むように立ち回ったのです。

すでに、アフリカの開発援助に向けた国際合意を満たす過程でも、各国は同じような先送りとごまかしを示しました。まともにその責務を果たそうとしているのは、いくつかの小国だけ(デンマーク、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン)です。他方、EUの提案は、2020年までに1000億ドルという、曖昧で無責任な目標額だけです。

要するに、ここで欠けているのは「評価方式」です。IMFの加盟国がクォータにしたがって融資額や決定権を得るように、また、国連が加盟国にその分担金の支払いを求めるように、開発援助や気候変動防止にも、財源を各国が分担する明確な評価方式が必要です。

気候変動に関して、諸国は「汚染者負担」原則に依拠して削減量を決定しなければなりません。それは透明で、汚染の程度に比例し、適切な誘因が与えられた、しかも、管理しやすいものでなければなりません。たとえば政府は、炭素税や排出権のオークションを行い、歳入を得ます。国際法の下で、各国はその一部を国際的な目的(開発援助や気候変動防止)に使用し、残りを自国のために利用します。

開発諸国は、年間150億トンの二酸化炭素を排出しており、もし「評価方式」に従いトン当たり3ドルを徴収すれば、年間500億ドルが生じる。さらに、中国など、所得水準が上昇する新興諸国は財源の移入から移出に変わり、貧しい国も財源の移転を卒業していく。こうして、開発援助と気候変動防止は同様の枠組みにおいて機能し始めるのです。

WSJ DECEMBER 15, 2009 Time for a Smarter Approach to Global Warming By BJORN LOMBORG

(コメント) あまり効果のない方法で温暖化を防止するため、他の目的に財源を振り向けなくなることを、BJORN LOMBORGは批判します。気候変動の脅威に最もさらされている世界の貧しい人びとにとって、緊急に必要な改善策が多くあります。マラリアの予防やエイズ対策、子供たちへの食事や学校が提供できる方が、彼らの生活を改善できるからです。

「マラリアを例に取る。多くの推定によれば、何もしなければ2100年までに人類の3%がさらにマラリアに感染する。最も効率的な温暖化ガスの削減策は、地球の気温が工業化前よりも平均で2度上昇するのを防ぐために(それがG8の提案だが)、2100年までの経済成長を年に40兆ドル失わせるだろう。そして、それはマラリアの脅威に直面する人々にはほとんど影響しない。逆に、年に3兆ドルを蚊よけのネット、環境に安全なDDTの散布、新しい治療法への補助金として支出すれば、10年以内にマラリアの感染者を半減させられる。言い換えれば、同じ支出によって、二酸化炭素の排出を減らすことも人の命を救うこともできるのであり、78000人の命を救うことの方が賢明であろう。」

・・・気候変動の対策に合意して支出を求めれば、各国は開発援助を犠牲にするだろう。支援の食糧が減り、エイズ予防が放棄され、新しい病院や学校ができず、水や衛生状態が悪化する。

The Guardian, Wednesday 16 December 2009 Mr Obama, here's your Copenhagen speech George Monbiot

(コメント) 「議論しなければならない、好ましくない真実を見ようとしない人々もいるが、気候が崩壊する脅威は通常の政治的要求を超えるものだ。」

「私が今日発表した社会の転換は痛みを伴うものだ。仕事を失うものや、すでに行っていた投資が無駄になる企業もあるだろう。しかし、こうした革命的な変化がすべてそうであるように、破壊された以上の雇用が生み出されるのだ。」

・・・もし私がひるんだら、将来の世代が私を許すことはない。

The Guardian, Wednesday 16 December 2009 Copenhagen: the sound of silence Nick Dearden and Tim Jones

SPIEGEL ONLINE 12/16/2009 Nobel Laureate Elinor Ostrom: 'Climate Rules Set from the Top Are Not Enough'

(コメント) 2009年のノーベル経済学賞を得たオストロムElinor Ostromが環境保護についてインタビューに答えています。

その要点は、互いの信頼を築くことで、環境を保護することが自分たち(自分だけでなく、みんな)の利益になることを理解し、行動するだろう、ということです。正しい条件があれば、私たちは長期的な、公的な利益のためにも、生活スタイルを変え、必要な行動を取るのです。そして、それは上からルールを強制することではない、と考えます。

ルールが機能するのは、こうした信頼に依拠するコミュニティーがあるからです。コミュニティーの参加者は、効果的に監視され、処罰されます。誰もが互いを知っているからです。また、ひとびとはルールを変える権限も持っています。逆に、上から押し付けるルールは、それを免れようと思えば、役人を買収できます。人びとはルールから排除され、それを守ると必ずしも合意していません。

オストロムも、こうしたコミュニティーの統治原理を地球環境や環境サミットに適用することは難しいと認めています。しかし、同様に、世界中から集まった指導者たちは、小さなコミュニティーを形成するために話し合い、合意を形成できれば、それを守ることに信義をもって、自国の国民にも参加を求めるでしょう。

オストロムは、資金と多次元アプローチに言及します。温暖化防止の実行には貧しい諸国への資金移転が必要です。それが成功するかどうかは、額ではなく、不正・腐敗をチェックすることです。不正防止制度こそが温暖化防止の決め手なのです。また、政府間ではなく、都市や村の行動を重視します。

フライブルグの自転車道を例に挙げています。フライブルグの住民たちは、自転車道や駐輪所などを整備して、自動車に頼らない生活を始めました。それは環境を守るだけでなく、自分たちも健康で、幸せにしています。自動車に頼らない街に変わっていきます。こうした試みが各地で起きて、政治家たちにも抗議の声が強まることで、地球環境は変わるだろう、と。

FT December 16 2009 Leaders must now agree climate deal

FT December 16 2009 Copenhagen’s nuclear glow

LAT December 17, 2009 The wrong way to cut greenhouse gases By David B. Rivkin Jr. and Lee A. Casey

(コメント) 反対派もアメリカには多いのでしょう。特に、ブラジル、中国、インド、ロシアといった新興諸国が排出量の削減を拒む限り、アメリカは参加するべきでない、とこの論説は主張しています。日本の産業団体や政府も同様の条件を繰り返しています。

一方的な行動も、気候変動を防ぐ有効な手段ではなく、むしろ貿易における他国の利益になってしまう、と主張します。

The Guardian, Thursday 17 December 2009 Better to have no deal at Copenhagen than one that spells catastrophe Naomi Klein

WP Thursday, December 17, 2009 World leaders remain far from a deal in Copenhagen

NYT December 17, 2009 Two Days and Counting

(コメント) たとえアメリカや日本が行動しないとしても、その選択はアフリカに大きな不利益をもたらします。世界の平均気温が2度上昇するとき、アフリカの予想気温は3度から3.5度上昇します。アフリカの5500万人が飢餓に瀕し、35000万人から6億人が水不足に直面するでしょう。

裕福な国も、貧しい国も、同じ大気の中にあり、彼らが二酸化炭素を減らすことに遅れるほど、どこかでそのコストを支払います。


WSJ DECEMBER 13, 2009

Taiwan's Détente Gamble

By Leslie Hook

Asia Times Online, Dec 15, 2009

Courtship and censure in US's China policy

By Benjamin A Shobert

(コメント) 香港は中国に帰属し、台湾は中国の影に入りました。民主的な政府を望む2300万人の人びとが、100マイル離れた中国大陸から1500基のミサイルによって狙われています。内戦が終わる条件とは何でしょうか?

馬英求総統は、軍事的にも対決姿勢を失いませんが、中国との経済交流をソフト・パワーとみなします。そして、台湾海峡も、朝鮮半島に劣らず、アメリカの役割が重要です。アメリカによる武器売却を中国政府は非難し、アメリカ議会でも問題になります。しかし、たとえ中国からの農産物や労働者を阻止しても、貿易や投資で統合した結果、台湾経済の空洞化が急速に進みました。

人民元があふれる中で、台湾経済の自律性はいつまで主張できるでしょうか? そして、政治的な独立は? 馬英求は、逆に、貧しい、遅れた農業国であった台湾を、民主主義をともなう近代的な経済に転換したように、その影響で中国も転換するだろう、と考えます。大陸からの旅行者たちは、ここで個人の自由と権利を尊重する社会を観る、と。


NYT December 14, 2009

Paul A. Samuelson, Economist, Dies at 94

By MICHAEL M. WEINSTEIN

The Times December 15, 2009

Wealth of Nations

(コメント) ポール・A・サミュエルソンと言えば、経済学の代表的な教科書(1948年から30年近く、20カ国語に翻訳され、5万部を売った)の著者でした。線形計画など、経済学を数学化する時代に向けて扉を開けました。1970年のノーベル経済学賞を得ています。

「注目すべき多面性を持って、サミュエルソンは経済問題のほとんどあらゆる問題についてアカデミックな思考を作り変えた。マルクスが労働価値説で意図したことを、サミュエルソンは株価のランダムな変動によって考えた。数学はすでに社会科学者によって使用されていたが、サミュエルソンは数学を経済的思考の主流にした。シンプルな数学的仮定から強い理論的予測を導く方法を示した。」

サミュエルソンのおかげでMITは経済学教育の聖地になり、多くのノーベル賞受賞者を輩出しただけでなく、ケネディーとジョンソンの経済政策を指導しました。NYTはその偉業を長文の記事でたたえています。The Timesの短い記事は少し気が利いています。株価は過去の5つの不況について9つを予測した、とサミュエルソンは書きました。数学的な正確さを現実と同一視しない、慎重さや軽妙さをも示したのです。

「フォークはいつも最後に洗う、と彼は言いました。なぜなら、核戦争が起きれば、洗わなくて済むから。もちろん、彼はそれを証明する数式を示せたでしょう。」


NYT December 14, 2009

Dubai Grows Up

By CLAUDIA PUGH-THOMAS

The Guardian, Thursday 17 December 2009

When this gaseous burp explodes in the desert air, we'll still have the Burj Dubai

Simon Jenkins

SPIEGEL ONLINE 12/17/2009

Peak of Megalomania: The Tower of Dubai

By Erich Follath and Bernhard Zand

(コメント) ドバイに関する考察です。


WP Tuesday, December 15, 2009

Why Iran can't be contained

By Danielle Pletka

FT December 17 2009

Dealing with Iran

Asia Times Online, Dec 18, 2009

Iran blasts off ahead of countdown

By Kaveh L Afrasiabi

(コメント) イランの核武装を阻止する交渉が決裂しました。それはアメリカに封じ込め政策を選択させるものでしょうか?  Danielle Pletkaは、核武装したイランを封じ込めることはできないだろう、と警告します。

歴史が示すように、核武装した国で処罰を受けた国はありません。封じ込め論は冷戦時代の特殊な条件に依存しています。米ソ間で、開戦のコストはあまりに大きく、核兵器のパワーだけを争い、使用することを考えませんでした。イランはアラブ諸国を代表していませんし、アフマディネジャドだけが核のボタンを押せるわけでもないのです。

FTは制裁について述べています。アメリカの制裁は、これまで効果的でないものが多かった。それは制裁対象の国だけでなく、友好諸国の利益をも損なったからです。もし制裁を行うとしたら、イランの石油輸出を封鎖する、といった措置ではなく、すべての主要な諸国(中国やロシアも)がその制裁を受け入れ、イラン国民が受け入れるものでなければなりません。


BBC 2009/12/16

Yegor Gaidar: Right man at the right time

By Andrei Ostalski

The Times December 17, 2009

Another Country

WP Thursday, December 17, 2009

Russia's Yegor Gaidar championed freedom

(コメント) 1992年、対外債務とハイパー・インフレーションによって政府の破産が近付いていたとき、ガイダルは、戒厳令による物資の配給と完全な市場自由化のどちらかを選択しなければならない、と感じました。ガイダルの自由化政策、もしくは「ショック・セラピー」がロシアを破滅させたと誤解されているけれど、そうではない。ガイダルは破滅への道を回避したのだ、とBBCの記事は考えます。官僚制ではなく、消費者が価格を通じて経済を決定する。それを実行したのです。

ガイダルは西側諸国を説得し、債務の組み換えを成功させて、ロシアを破滅から救いました。逆に、その後の経済安定化を前提とした繁栄を享受しながら、プーチンの支配体制はガイダルの自由化を逆転させることで国民から支持されています。

FT December 16 2009

Russia: Shift to the shadows

By Charles Clover

(コメント) 秘密警察や軍隊、スパイなどによるネットワーク、いわゆる「シロビキsiloviki」が支配するロシアの政治体制に関する分析です。体制が内外において安定化するにつれて、シロビキの重要性は低下していくかもしれない、と。

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The Economist December 5th 2009

Stopping climate change

Getting warmer: A special report on climate change and the carbon economy

(コメント) 破局的な気候変動を防ぐ温暖化の費用は,世界GDP1%程度であり,負担可能です.環境保護の技術がないのではなく,政治的な合意が欠けているから,また,環境保護に対する市場参加者への十分な動機付けが与えられないから,温暖化は止められないのです.京都議定書は,条約を批准した国と,そうでない国との対立を生じました.また国際環境会議は,裕福な諸国と貧困諸国との間で,財政的移転をめぐる対立を生じました.

しかし,彼らの立場は実際には大きく異なっていたし,国際体制の欠如よりも,多くの間違った政策が環境保護を失敗させている,とThe Economistは考えます.

特集記事の内容は,簡潔で,明快であったと思います.気候変動は,それが確実であるかどうかよりも,不確実であっても多きなコストをもたらすリスクを,事前の投資によって抑制できる点で合理的である,と考えます.その解決策は,化石燃料に依存した経済を,長期的に,炭素を排出しない経済に換えていくことです.そのさまざまな方法も,コストも,わかっていますが,問題は,それを分担すること,確実に実施させる(詐欺的な取引を防ぐ)ことです.

炭素税と規制が組み合わされ,中国も国際合意に参加するでしょう.なぜなら中国自身の意識が急速に変化しつつあるからです.

 


The Economist December 5th 2009

The surge in Afghanistan: The perils of keeping everybody happy

Risk after Dubai: When sovereign doesn’t mean safe

Nuclear proliferation: An Iranian nuclear bomb, or the bombing of Iran?

Mexico and America: Gently does it

The Panama Canal: A plan to unlock prosperity

Charlemagne: The Swiss in the middle

The restructuring of Rusal: Saving the oligarchs

The repercussions of Dubai: Dishdashed

Gulf financial centres: Hub thumping

Economics focus: Default lines

(コメント) ドバイ・ショックで政府の債務不履行が注目され,ギリシャの財政破綻やユーロ圏の不安が生じています.政府が資金を使って銀行や企業の救済に動くことを,いつか市場は恐れ始めます.