今週のReview
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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保守革命の終わり、 金融危機後の改革、 トービン・タックス、 中国市場のブランド、 国際金融制度:R.アリバー、M.ウルフ、M.フェルドスタイン、 気候変動、 スイス人の不安
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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
FT December 3 2009
The post post-Thatcher era begins
By Martin Wolf
(コメント) 1979年5月4日に、イギリスでマーガレット・サッチャーが首相になり、イギリスを変えました。その後、11年間、彼女は政権にとどまり、翌年に選挙で勝利したロナルド・レーガンとともに、世界を変えたわけです。私は、ガバナンスの革新、だったと思います。
それまでイギリスは、高インフレと低成長、組合との争議に明け暮れていた、と言われます。サッチャーはイギリスの衰退を逆転するため、通貨供給の管理、規制緩和(特に金融部門)、労働市場の弾力化、民営化、を推進しました。1997年以降の労働党政権も、基本的に、この政策を継承したのです。財政赤字を抑制し、インフレ目標を採用し、イングランド銀行の独立性を認め、金融部門の活況を歓迎しました。
しかし、1930年代以来の世界金融危機が起きて、政府は金融部門を救済しなければなりませんでした。マクロ経済的な安定性は失われたのです。不況によって税収も落ち込んで、財政赤字が急増しています。
高成長が消え、金融部門の高利潤も消え、政府は市場から立ち退くべきだ、という議論の前提が失われました。サッチャー改革はイギリス経済を強くしたのでしょうか?
Martin Wolfは、イギリスがヨーロッパ諸国や日本と比べて高い成長を実現したこと、しかし、財政の健全化は不十分であったこと、インフレ的な債務の解消を避けるために、成長率を高めることを重視します。世界が改革よりも、金融緩和でバブルを再燃させることから安易な回復を求めるとしたら、それは危険です。
サッチャーの時代を終えて、私たちは成長政策を中心に据え、金融部門の拡大ではなく、多様な・均衡のとれた経済を目指するわけです。そのために政府は市場を抑圧するのではなく、指導しなければなりません。インフラ投資、研究開発、貯蓄・投資の奨励、それらに必要な移民政策、など。
金融の過熱に依存した市場の拡大は避けるべきだ、と。
FT December 3 2009
Why Obama does not want a multipolar world order
By Zaki Laïdi
The Japan Times: Thursday, Dec. 3, 2009
Realizing an assertive post-American Europe
By JEREMY SHAPIRO and NICK WITNEY
WP Monday, December 7, 2009
Obama, the anti-Churchill?
By Fareed Zakaria
(コメント) オバマの唱えた「多極世界」の秩序は、実際には、まだアメリカが支配的な、しかし、完全に指導力を発揮できない状態です。アメリカの支配が終わって、オバマは「多極化戦略」を採用し、問題によって相手を変えながら、負担を軽減しようとしています。ロシア、中国、そして、意見を統一できたときのヨーロッパ。
オバマは、敗走する帝国の司令官です。明確な目標や計画を示して増派し、撤退のために行動しなければなりません。ソ連を崩壊させたロシアや、ベトナム戦争のアメリカを再現したくないのです。イラクとアフガニスタン。オバマは二つの戦争を同時に戦うつもりはないし、その野心的な目標を実現するため2011年の再選を必要としています。
Fareed Zakariaは考えます。
「かつて大統領になった者の多くは、ウィンストン・チャーチルになる誘惑に勝てなかった。自由や専制君主についての壮大な弁舌をふるい、自由世界の指導者という道義的責任を引き受けた。しかし、オバマは違う。ロシア、イラン、イラク、アフガニスタンについて、その扱い方は冷静な計算によるものだ。リチャード・ニクソン以来、どの大統領にもまして、オバマはアメリカの国益を注意深く定義し、それを達成するための資源に注意し、その獲物から目を離さない。」
BBC 2009/12/03
The world's most powerful banker is humbled
By Kabir Chibber
Dec. 4 (Bloomberg)
Bernanke’s Booby Prize Waits Behind Door No. 1
Caroline Baum
FT December 7 2009
Battle for right to dictate Fed’s future
By Krishna Guha in Washington
The Guardian, Tuesday 8 December 2009
Blame Bernanke
Dean Baker
(コメント) 金融危機を予見できず、特に、ベア・スターンズやメリル・リンチ、リーマン・ブラザーズ、AIG、などの処理をめぐって、不透明で、恣意的に差別化し、特に、金融システムに及ぼす危機の大きさを理解していなかった、とバーナンキは批判されるでしょう。グリーンスパンの下で住宅バブルの条件を見逃していた、という批判も加わります。
サブプライム・ローン危機が起きるや、金融機関を助けるために、緊急の金融緩和を行いましたし、金融機関の保有する証券を2兆ドルも購入しました。それでも危機が沈静化した以上、今、バーナンキを後退させることはできない、というのが、オバマが指名した一つの理由です。
他方、実業界や失業者には、連銀が金融機関を救済するのに熱心であるが、十分に景気回復には役立っていない、という不満が政治家たちを苛立たせます。中間選挙で有権者に演説するには、ここで連銀議長を痛めつける必要があるでしょう。
Caroline Baumは、金融危機の再現を防ぐバーナンキの方法を検討します。バーナンキの連銀は、次のどれを選択したでしょうか?
1.権限を強化した金融監督の諸制度を整備し、危機が生じつつあることを認定して、適切に市場介入する。2.目を閉じて幸運を祈る。3.金融危機を予測する計量モデルを開発する。4.予防こそが最善の治療である。
正しい答えは4です。しかし、上院の委員会で質問されたバーナンキは1に傾きつつある、とCaroline Baumは批判します。それは現在の危機を防げなかったアプローチだ、と。
バーナンキは、他方で、バブルを防ぐために金融政策を使うことを拒むのです。金融政策は物価と雇用のためにだけ使わねばならないから、と。
Krishna Guhaは、上院が求める「狭い連銀」案と、ガイトナー=バーナンキの支持する「広い連銀」案を比べています。金融政策と金融監督とを、分離する方がよいのか、連銀が担うがよいのか?
イギリスの経験からも、他国の例で見ても、中央銀行が金融監督も兼ねている国の方が、銀行の危機に早くから行動を起こせた、と指摘します。
Dean Bakerは、バブルを認識することは容易であったし、それを早期に潰すこともできたが、バーナンキは何もしなかった、と批判します。
FP DECEMBER 3, 2009 How the Tricks That Crashed Wall Street Can Save the World BY OLIVER HART, LUIGI ZINGALES
WP Friday, December 4, 2009 A bad omen in Dubai By Sebastian Mallaby
(コメント) この提案はシンプルで、面白いです。英米市場なら効果的かもしれません。
息子が急性アルコール中毒でこん睡状態に陥り、病院に運ばれた、という話で始まります。両親は衝撃を受け、その理由を知ろうとするでしょう。友人や暴飲を勧めた飲み会、未成年にお酒を出した店、甘い口当たりのカクテル、夫や妻を互いに攻めるでしょう。さらには、アルコールを魅力的に宣伝する広告宣伝の在り方を批難したくなります。(それらは、破綻した金融機関を監視する当局や連銀、議会の委員会、格付け会社、ボーナス制度、などを意味します。)
どれも正しいと思いますが、本当にこうした事故を防ぐには、もっと重要な理由をなくさなければなりません。それは、過度の飲酒を促す動機を与えず、むしろ、適度な飲酒に抑える仕組みを内蔵させることです。
金融パニックと不況によって世界に大きな被害をもたらした2008年の金融市場崩壊について、OLIVER HART, LUIGI ZINGALESは、金融ビジネスが間違った動機によって支配されていること、を指摘します。それは、今も取り除かれていません。それはギャンブルに大きく資金をつぎ込んで、儲かれば莫大なボーナスを得るし、損をしても税金で救済される、という意識(文化)です。
「大き過ぎて(あるいは、あまりにも複雑に結びついて)潰せない」という金融当局の姿勢は、たとえ、今回の金融危機が大きな救済融資を国民から非難されていても、なくなっていません。むしろ、リーマン・ショックで分かったように、連銀も議会も、二度と、巨大な金融機関を潰せないのです。
そこで、銀行は二重の準備を求められます。一つは株式発行による自己資本です。これに加えて、長期の劣後債を発行して準備を保持します。しかもその規模は、市場が判定します。なぜなら市場でこの債券の価格が下落すると、銀行は追加の準備を要求されるからです。具体的な仕組みはわかりませんが、OLIVER HART, LUIGI ZINGALESは、これを株価の信用売買におけるマージン・コールと同じである、と説明します。また、CDSの市場で考えています。
さらに、興味深いのは、市場参加者の自己実現的なパニックを抑制するために、自己資本の判定は金融監督機関が行う(ストレス・テスト)と主張し、また、公的な監視や財源が必要ないことから、ユーロ圏のように財政当局が統一されていない場合でも容易に実行できる、と主張します。
国際投資のギャンブル性は、ドバイ・ワールドのニュースにも顕著です。800億ドルの債務を負う都市国家の、最終的に、300億ドルが債務不履行になる、と予想されます。それは、1998年のアジア通貨危機における韓国、220億ドルを超え、ロシアの債務危機にも匹敵するほどだ、とSebastian Mallaby驚きます。
世界金融危機は、不動産開発業者への過剰融資、という(日本も経験した)パニック後の不均衡(それは債務を負った起業や消費者に波及し、不況と失業へ至る)をまだ解消できていないのです。次第に、資産価格は上がり続けるものだ、という雰囲気が一掃されます。
The Observer, Sunday 6 December 2009 President Sarkozy is absolutely right. The City has to be cut down to size Will Hutton
(コメント) サルコジはアングロサクソン型金融資本主義を批判し、もっと古風なEU規模の金融規制を要求しました。その通りだ、シティ(ロンドンの金融街)は、今や、イギリス経済にとってあまりにも肥大化し、余りにも危険である、とWill Huttonは主張します。
1997-2007年、イギリスの成長の半分が、金融、建設、不動産から生まれています。同じ期間に、製造業の産出は国民生産の20%から12%に低下した、と。生産活動は金融ビジネスによって「クラウド・アウト」されたのだ、と政治家たちは言うでしょう。それがサルコジの指摘した真実です。
金融機関が救済された以上、彼らのボーナスに課税することは国民にとってのバランスを回復する十分な理由のあることです。これは、久しぶりに労働党政権が政治的な追い風を得ているテーマです。その厳しい内容が望まれます。
多くの指標が、銀行部門の均衡を欠いた状態を示します。
FT December 6 2009 Bankers had cashed in before the music stopped By Lucian Bebchuk, Alma Cohen and Holger Spamann
The Guardian, Monday 7 December 2009 Now let's tax transactions Stephany Griffith-Jones
(コメント) 世界の金融取引に課税する提案はユートピアではない。Stephany Griffith-Jonesは、債務に陥った国民経済を回復するために、為替取引に課税することは正しいし、実行可能だ、と主張しています。
実際、各国レベルで資本取引に対する課税は行われています。また、トービン・タックスを批判する根拠であった税制の国際協調が難しい、という問題も解決されるでしょう。世界金融危機が主要国の政治状況を変えたからです。フランス、ドイツ、ブラジルが課税を実施し、ベルギー議会のように、それを容易にする措置を取りました。特に、シティを監督するFSAのA.ターナー長官や、ゴードン・ブラウン首相がとービン・タックスを支持したことは重要です。
こうした政治情勢をもたらしたのは、第1に、金融危機と不況で財政赤字や公的債務が増え、しかも、さらに危機や不況対策が必要なことです。たとえ低率の課税(外国為替取引に0.005%)でも、年間、300億ドルの税収が見込まれます。しかも負担するのは少数の富裕層、ヘッジ・ファンドなどを介して頻繁に取引している者に限られます。
第2に、特に発展途上国などで、脱炭素のエネルギーに向けた投資が今すぐ必要です。しかし金融危機で、その資本調達はさらに困難になってしまいました。コペンハーゲンで開発諸国と発展途上諸国とが合意するためにも、資本移転が重要です。
Stephany Griffith-Jonesは、この二つの目的に応じるために、トービン・タックスからの税収を分割します。半分は課税国が国内の歳入を補い、財政支出や減税に使います。他の半分は、発展途上諸国への環境技術移転に使います。
第3の理由は、金融取引、特に外国為替取引が課税しやすくなったことです。外為市場はますます集中し、自動化が進み、取引も標準化されています。デリバティブで特にそうです。それゆえ、トービン・タックスを課しても、市場から逃れることは以前より難しいだろう、と考えます。
こうして金融取引への国際課税は、市場と政府への信頼を取り戻すことに役立つ、ウィン・ウィン提案である、と主張します。金融危機と環境サミットがこうして結びつく可能性に、人間の行為や発想、ガバナンスの不思議を強く感じます。
The Guardian, Wednesday 9 December 2009 This tax on the City is a bonus Will Hutton
FT December 9 2009 The Fed’s lead role in financial regulation By Gerald Corrigan
WSJ DECEMBER 9, 2009 For Global Finance, Global Regulation By GORDON BROWN and NICOLAS SARKOZY
(コメント) Gerald Corriganは、元ニューヨーク連銀総裁ですが、新しい金融規制・制度改革の方向について、民間金融ビジネスの自由や権利を守るように要望します。ゴードン・ブラウンとニコラス・サルコジも共同でグローバルな規制を求めています。両者の発想には根本的な差があります。
競争的な金融市場はグローバルな成長のために必要であり、ヨーロッパにとっても重要である、また、パリとロンドンとをグローバルな金融センターにする、と主張しています。グローバルな金融ビジネスがもたらす利益とリスクとは、それがグローバルに規制されるとき、最も大きな力を社会にもたらします。金融機関は規制のない場所を求めて逃げるのではなく、帰属する社会との長期的な契約、グローバル・コンパクトを必要としているのだ、と。
IHT December 10, 2009 Britain to Levy a One-Time Tax on Banker Bonuses By LANDON THOMAS Jr.
FT December 10 2009 Bankers will follow the money By Gillian Tett
The Times December 11, 2009 We need bankers more than they need us Anatole Kaletsky
(コメント) 水曜日の良いニュースは、ダーリング蔵相が経済を救出したことだ。そして悪いニュースは、救出されたのは悪い方の経済だったことだ。
銀行やボーナスに課税すれば、彼らはスイス、ルクセンブルグ、アイルランド、香港、あるいは、チューリッヒへ移ってしまう。銀行家の収入に、他の多くの雇用が依存している以上、イギリスはこれを喜べません。
しかし、税収の25%を占める金融部門に対して、それに匹敵する巨額の救済融資を行う意味があったのか? という疑問が残ります。税金は株主たちが支払うことになります。また、銀行部門とそれに関連した需要でイギリスの多くの雇用を維持されている以上、もし銀行がイギリスを出てゆけば、それに代わる雇用を生み出さなければなりません。もしそのような見込みがないようなら、ポンドは一層下落し、生活水準が低下するでしょう。
金融危機の損失はもっと少なくなったかもしれません。もしイギリス政府が早期に金融システムの保証を行い、ノーザンロックの取り付け後に行ったように、資本不足の銀行に資本増強を行わせていたら。また、リーマン・ショックまではコストが抑えられていました。
もしアメリカ政府が市場による均衡を信奉するのではなく、リーマン・ブラザーズを救済して、銀行システム全体を保証していたら、世界不況は起きなかったでしょう。だから、リーマンや銀行家たちを責めるより、もっと真の犯人を責めることです。ヘンリー・ポールソンとジョージ・W・ブッシュ。
The Times December 11, 2009 Not time for Tobin
(コメント) この論説はトービン・タックスに反対です。それは金融危機の治療にならない、と。なぜなら、それは実施が困難で、不可能に近い。世界的な規模の実施は合意できそうもない。たとえ主要国が合意しても、オフショア取引を禁止できない。銀行は取引を隠し、あるいは、海外で行ってしまう。特に、デリバティブの監視は不可能だ。
課税は取引をゆがめる。それは1960年代のアメリカによる金利課税が取引をロンドンに移してしまったという記憶に結びつく。
トービン・タックスは危機を回避できない。たとえ取引に0.1%の課税をしても、パニックになった人々は取引をやめない。そのような場合には税率を引き上げる、という考えは金融システムの健全な機能も大きく損なう。
間違った決定を行った銀行が納税者に救済融資のコストを支払うようにすることが重要だ。
SPIEGEL ONLINE 12/04/2009
Victim of Immigration Policy: The German Forced to Become a Turk
By Jochen-Martin Gutsch
(コメント) 移民政策は人びとの生活にどのような影響を及ぼしているのか?
ドイツのエッセンに生まれたトルコ移民の第2世代、モハマド・エケは、彼の両親が非合法な移民であったため、彼が見たこともない国、トルコへ強制送還されました。その後、彼はどうなるのか?
・・・まるで、『ブレード・ランナー』です。非合法移民を探し出して、強制送還する。彼らに罪はないけれど。彼らはここの人間ではない。・・・ドイツ人が求める、統合とは何か?
WP Friday, December 4, 2009
Down the wrong path in Afghanistan
By Eugene Robinson
WP Friday, December 4, 2009
A new momentum for Afghanistan
By Anders Fogh Rasmussen
WSJ DECEMBER 4, 2009
The Welfare State and Military Power
NYT December 6, 2009
May It All Come True
By THOMAS L. FRIEDMAN
(コメント) ベトナム民衆が支持しなければ、この戦争には勝てない、というケネディーのインタビューを引用しながら、THOMAS L. FRIEDMANはオバマの増派演説を振り返ります。クロンカイトはケネディーに尋ねました。「この政府は民衆に支持されていると思うか?」 ケネディーは、政策を変えるし、人も変えることができる、と答えています。
ケネディーにもオバマにも、戦争が終わる時期を決めることはできません。それを決めるのは米兵の数ではなく、アメリカが支援している政府なのです。
「アフガニスタンを血溜まりの中に見捨てて撤収したくなかったら、・・・カルザイ政権をまともな、アフガニスタン民衆から忠誠を得られるような政府、それが自分たちの政府であり、守らなければならない政府にすることだ。」 “decent enough,” “ownership” and “self-sustaining.”
THOMAS L. FRIEDMANは、この戦争のもう一つの側面として、パキスタンを取り上げます。パキスタンはインドとの対立に執着して、アフガニスタンでの影響力を保持するため、その手段としてタリバンとの関係を維持しています。パキスタンにタリバンを支援させないためには、インドとの融和を勧めることです。
アフガニスタンの国家再建と、パキスタン・インドの関係改善。オバマの増派が成功するためには、この二つが必要です。
FT December 4 2009 China outsourcing boomerangs on brands By James Kynge
(コメント) 中国市場の変化は、消費者のブランド意識が変化し始め、外国のブランドに対抗する国内ブランドが登場してきたことです。実際、主要な欧米日のブランドを生産する工場が中国にある以上、中国製品が彼らに劣る理由は次第になくなってくるのです。・・・小魚が大魚を食らうのは、一見、自然の摂理に反するけれど、アウトソーシングの末の現実です。
「値札を見れば、アルマーニ制品の価格の何分の1かで買うことができます。人びとはラベルを見ないでしょう。あなたがアルマーニの服を着ているように見えたら、それでいいじゃないですか。」
これは、香港の偽ブランドとは次元の違う問題です。偽物ではなく、本物だから。
「市場規模で見て、中国のスポーツウェアは2009年の72億ドルから、2012年には124億ドルに増大すると推定されている。もしそれが実現すれば、この市場の拡大がいくつかも中国企業をこの業界の世界的なブランドにするだろう。これはスポーツウェアだけでなく、アパレルなど、その他の消費財市場についても言えることだ。」
中国製の傘が安いことを笑っていたのではないですか? しかし、世界最大の傘メーカー、SusinoのWang Anbang社長は、来年、全土で数100店舗を開設し、傘メーカーだけでなく、ブランドを展開する予定です。その後は、海外の企業とも提携します。
・・・外国企業を買収してブランドを得ることは容易だ。中国の資本市場は資金を供給できる。しかし、海外市場の消費傾向を把握することに関心があり、買収には意味がない。
Dec. 7 (Bloomberg) Gross, Roubini Weigh Dueling Chinese Bubbles William Pesek
FT December 7 2009 Tariffs can persuade Beijing to free the renminbi By Robert Aliber
(コメント) 国際金融界の長老(生き証人、生き字引き?)であるRobert Aliberがこうした冒頭の言葉を書くとき、その内容に注目するのは当然でしょう。「国際決済機構は1971年の夏と同じくらい行き詰っている。その当時、貿易不均衡が大き過ぎる、という認識が広がっていた。」
・・・その頃は、日本・円、フランス・フラン、イギリス・ポンドなど、通貨の価値はドルに固定されていた。通貨価値の調整を自ら望む国はなかった。今、問題なのは、米中間の貿易不均衡が持続不可能なことだ。中国の輸出は急激に増加してきたが、不均衡を調整する輸入の増加は起きていない。中国が人民元の増価を許そうとしないからだ。
中国の保有する史上空前の2兆ドルという外貨準備は、雇用を輸入する「近隣窮乏化政策」の結果である。人民元の過小評価は、関税率にして50%から60%に匹敵するだろう。
人民元政策に関わる中国政府の主要動機は、切り上げがもたらす失業の増加だ。さらに、過小評価された人民元は、欧米や日本からのハイテク製品の輸入を抑制し、国内産業の高度化を助けると考える。
中国政府は、アメリカの証券を大量に保有することで政治力を高めてきた。アメリカの金利や財政赤字にコメントしても(反撃を受けないと)平気である。また、中国の貿易相手国が(自国の赤字より)中国の黒字に注目している間は、その要求も穏健なものになる。
こうした中国政府の無思慮な重商主義的政策により、何100万人もの雇用を失ってきたにもかかわらず、アメリカは中国に対して我慢強かったが、我慢しすぎたのだ。中国の通貨政策が与える影響の方が、アメリカ政府の財政刺激策よりも、アメリカの製造業雇用に大きな影響を与えるということが、この愚劣な現状を示している。
中国からの輸入品に、アメリカの輸入額に対して一律で10%の関税を課すなら、この不均衡を解消するために中国が必要な調整を行うことをアメリカは助けることになる。関税導入から6カ月を経過したら、中国の対米貿易黒字が月50億ドルに減少するまで、毎月1%、関税を引き上げる。
その前例が意味することは明白である。1971年8月、アメリカは10%の輸入課徴金を日本やヨーロッパの数カ国に対して導入し、彼らの通貨価値の変動を促した。その成果は即座に得られた。ヨーロッパ諸国はただちに通貨の釘づけを破棄し、日本も1週間後に円のフロートを許した。数か月で、この関税は撤廃された。
中国の輸出品には多くの輸入部品が使われているから、10%の関税は中国の付加価値に対する実質で30%以上の課税になる。家電製品やハイテク製品では輸入部品の率が70〜80%であり、中国の投入要素に対する60〜80%の課税になる。
中国人がアメリカ市場に依存する方が、アメリカ国民が中国製品に依存するよりも重要だ、ということを中国人はすぐに学ぶだろう。アメリカが中国から輸入する製品をすべてが、インドネシア、フィリピン、韓国からも輸入できる。他方、もしアメリカ市場で売ることができなければ、中国には(アメリカ市場に匹敵する)ほかの市場がない。
中国人はアメリカの保護主義を非難して騒ぐだろうし、アメリカの貿易赤字に融資しないと言うだろう。しかし、アメリカの貿易赤字の主要な理由は、中国がアメリカの証券を購入してきたことだ。オバマ政権のこうした行動は、他の選択可能ないかなる政策よりも、大きな雇用を生み出す。
中国政府も、アメリカの保護主義を非難する陰で、中国人民銀行もすでに認めた避けられない調整を始めている。1970年代前半の経験が示すように、いったん行き詰まりが打開されれば不均衡は解消する。そして米中は、北朝鮮やイラン、その他の難しい問題に取り組めるだろう。
・・・オバマ・ショックの準備は日本政府にあるでしょうか?
FP DECEMBER 8, 2009 Where's the Chinese Toyota? BY ALEXANDRA HARNEY
FT December 8 2009 Why China’s exchange rate policy concerns us By Martin Wolf
(コメント) 為替レートは自国にとってだけでなく、貿易相手国への影響も考慮しなければならない、とMartin Wolfは書きます。特に、大国になれば。
中国は「大国」になったのであり、これまでのように国際通貨制度への影響を無視した政策はとれません。人民元の調整を求めたEUに対して、胡錦濤主席は応えました。「中国は他国の保護主義によって発展を阻まれている。」「中国は、合理的で、均衡する水準に、人民元を安定させるだろう。」
Martin Wolfは4つ反論します。1.不況の程度を考慮すれば、保護主義は抑制されている。2.通貨価値の抑制は輸出補助金や関税と同じである。3.2兆ドルを超える外貨準備がたまっている。4.中国経済も世界経済も、その結果、不均衡を生じている。
世界的な規模で競争力を調整することに失敗した例がすでに2つあった。すなわち、1920年代・30年代に、アメリカの台頭があったとき、また、1960年代・70年代に、ヨーロッパと日本の台頭があったとき。しかも、中国の世界市場統合はそれ以上に重要です。なぜなら、中国経済の世界GDPに占める比率は急速に上昇しており、中国は一層開放的であるからです。
しかも、中国の管理為替レートは、その調整の負担を他国に転嫁します。現在、金融危機の影響で不況が続く中で、中国のこうした政策はカナダや日本、ユーロ圏で通貨の増価を強めています。その上、現在の国際通貨制度の性格により、国際通貨の発行国であるアメリカと、貿易黒字国には、市場による調整の圧力が働きにくいのです。
今、アメリカの家計が金融破たんによって消費をしなくなければ、中国の莫大な貯蓄を吸収する者がいません。だから、政府が巨額の財政赤字を累積し始めたのです。金融システムを再建し、以前のような民間部門の支出を回復するか(危険であり、金融危機を再発する)、輸出を伸ばすか、対外赤字諸国は後者を望んでいます。中国は、それを吸収する主要な役割を担える黒字国です。
この調整は、赤字国、黒字国の双方にとって、長期的な利益です。
中国は、その過程で、国内の政策的な歪みを是正し、消費や雇用を増やせるでしょう。他方、もし中国が「過剰」生産力を維持して輸出を続け、赤字国が内外の需要を超える不均衡を減らすために国内の「過剰」生産力を減らした場合、何が起きるか? 深刻な不況です。赤字国は財政赤字を拡大し、世界中で財政危機が頻発します。
協調的な調整を行うべきです。そうでなければ保護主義が高まるでしょう。それは過去に経験したことです。
Asia Times Online, Dec 9, 2009 'Good peg' illusion By Chan Akya
(コメント) バブルと危機をもたらしたドバイは「バッド・ペッグ」、国際的な市場統合と安定性を維持する中国は「グッド・ペッグ」。そんな分類は間違っている、と指摘します。
「不可能の三角形」からは、すべてのペッグが不幸な形で終わると予想されます。アジアには、中国、香港、マレーシアがあり、アメリカとユーロ圏も比較しています。
WSJ DECEMBER 9, 2009 China's New Security State By WILLY LAM
(コメント) かつて、ブレトン・ウッズ体制は国内の福祉国家を欧米諸国が維持する国際的な枠組みである、と考えられました。しかし中国の考えるセキュリティーは、国防であり、治安です。まだ、社会福祉が最も重視されてはいないのです。
NYT December 10, 2009 Recession Elsewhere, but It’s Booming in China By KEITH BRADSHER
(コメント) アメリカの貯蓄と中国の消費。世界を正常な均衡に導く二つの調整は続くか?
LAT December 6, 2009 What can be accomplished at the Copenhagen conference?
NYT December 6, 2009 Will Big Business Save the Earth? By JARED DIAMOND
(コメント) ジャレド・ダイヤモンドの壮大な科学歴史小説?を読んだ人なら、彼が環境問題について何を考えているか知りたいでしょう。環境保護団体の執行委員会や企業の役員を引き受けて、その経験から考えています。
この論説は、大企業が必ずしも環境破壊の推進者ではなく、環境保護の先頭に立つ場合もある、と主張します。ウォル・マート、コカコーラ、シェブロン、を例に挙げて、大企業が環境保護に積極的に行動していることを指摘します。
企業は、コストを節約するためにエネルギー効率を高めます。3社を批判する環境団体も多いでしょう。しかし、ダイヤモンドは具体例を挙げて支持します。3社はそれぞれに、すなわち、ウォル・マートは輸送コストや梱包の問題、行魚資源の問題から、コカコーラは水供給と温暖化防止の問題、ボトルやエネルギー消費、など、そしてシェブロンについては、油田とその周りに広がる環境保護地帯への投資、を紹介します。
なぜ民間企業が環境保護に投資するのか? 重役によれば、それには次のようなメリットがあるのです。1.汚染防止はその除去よりも低コストだ。2.クリーンな開発で地域住民からの反感を回避する。3.世界中で環境規制は強化されるから、後で高コストになる。4.先行的な環境保護の取り組みは競争的地位を優位にする。5.被雇用者のプライドを高め、良い人材を長く雇用できる。
大企業を敵視せず、環境保護に積極的な企業をもっと評価するべきだ、と考えます。
FT December 6 2009 Business must champion low-carbon growth By Nicholas Stern
The Guardian, Sunday 6 December 2009 Copenhagen must be a turning point. Our children won't forgive us if we fail Gordon Brown
(コメント) サルコジ大統領とグローバル金融規制を唱えた同じ週に、イギリスの首相、ゴードン・ブラウンは国際環境サミットの指導者たちに合意を求めました。
「これまで数10年間も、解決するのは不可能で、手が届かないし、機能しないと思われてきた、グローバルな問題にわれわれは直面している。」とブラウン首相は書いています。しかし、「破滅的な気候変動は、奴隷制、女性の抑圧、大量失業、そして熱核戦争よりも手に負えない問題ではないのだ。」・・・真にグローバルなコミュニティーとして、われわれが協力するなら、破滅を免れる決定的な最初の行動をこの2週間で取ることができる、と。
CSM December 7, 2009 edition At Copenhagen, the US should partner with India By Kurt Waltzer, P.R. Shukla and Semil Shah
NYT December 7, 2009 An Affordable Truth By PAUL KRUGMAN
(コメント) 地球規模の温暖化というのは科学者の陰謀か? 気候変動を抑制する政策は雇用と成長を損なうのか?
PAUL KRUGMANは、気候変動の防止は実行可能であり、欠かせない、と考えます。研究によれば、大幅な温暖化ガス排出量の削減を行っても成長への影響は軽微であり、むしろ不況の今は気候変動を抑える新しい投資が大いに景気回復にも有効です。
温暖化を防ぐ方法はいろいろあるから、必要なことはそれに経済的な動機を与えることだけです。右派のイデオローグは、資本主義システムには無限の適応力があるから、環境問題も解決できるし、何も課税や規制をするべきではない、と主張します。しかし、PAUL KRUGMANは酸性雨の経験を指摘します。当時も右派は反対し、その結果は失敗でした。事前に規制した方が、はるかにコストを抑えられたでしょう。
温暖化の防止を合意できれば、たとえば、いますぐにビルのエネルギー効率を改善する投資が始まります。
WSJ DECEMBER 7, 2009 Global Warming and Mt. Kilimanjaro By BJøRN LOMBORG
(コメント) タンザニアのキリマンジャロ山頂で氷河の後退する現象を地球温暖化の証拠と主張する環境保護団体があります。だから気候変動は恐ろしい、とタンザニアの農婦に教えるとしたら、それは正しいことか?
BJøRN LOMBORGは反対します。実際、氷河の後退は1890年以来起きている、と。その原因も、気候分布が地域的に移動したことです。タンザニアの人々にとって重要なことは、まず教育によってエイズの恐ろしさや予防法を知ることです。・・・たとえ氷河が後退しても、その周りの人がエイズで死に絶え、誰も住まなくなっていたら何の意味もないのです。
CSM December 7, 2009 edition The Copenhagen climate talks: It's time to consider 'how' to solve climate problems By Anthony Giddens
(コメント) たとえ国際合意を達成しても、それを守る国はあるでしょうか? 京都議定書は、石油危機に際して再生可能エネルギーに転換し始めたスウェーデンやデンマークを例外として、ほとんどの国が目標を達成していません。
張って途上諸国に新しい開発モデルを示し、国際関係にも新しい制裁を含む合意を形成し、過度の都市化を免れた地域コミュニティーに支持されるような、新しい繁栄のモデルを示さなければなりません。
新しい発想が必要です。そのためにも、Anthony Giddensは多国間協定より、2国間合意を重視します。たとえば米中間で環境に関する技術移転を促すような、特許権の緩和と貿易摩擦の回避を組み合わせた合意ができるかもしれない、と。
FT December 8 2009 What Copenhagen can learn from the Montreal protocol By C. Boyden Gray
IHT December 9, 2009 The Earth Is Crying Out for Help By THOMAS LOVEJOY
WP Wednesday, December 9, 2009 Copenhagen's political science By Sarah Palin
Asia Times Online, Dec 10, 2009 Hopenhagen's dirty secret By Pepe Escobar
(コメント) それと並行して、中国では爆発的に自動車が売れています。温暖化ガスの排出規制など合意できるでしょうか?
「ホーペンハーゲン(Hopenhagen)のお祭りから何が生まれるとしても、石油に依存した、高速ターボ型資本主義システムの疾走を止めることはできない。われわれの知っている日々の生活は、その大部分が、本質的に父と子と聖霊の周りを回転し続ける。すなわち、中国、アメリカ、中東産油諸国、である。」
The Guardian, Thursday 10 December 2009 How to finance a climate change fund George Soros
(コメント) 気候変動を防ぐためには発展途上諸国への技術移転とそれを(一気に)実現する資本が必要です。しかし、その資本を提供できる国がありません。
George Sorosは、すでに資金はある、と考えます。すなわち、IMFのリザーブ勘定に保有されているSDRです。これを使用しても財政赤字にはなりません。また、IMFの保有する金Gold(歴史的な価格で保有されている)も利用します。
2009年の9月、G20でSDRの追加発行が決まりました。2830億ドルが発行され、そのクォータにしたがって1500億ドル以上が上位15カ国に配分されます。そして、こうした国ではSDRを使用することなく、外貨準備の一つとしてIMFにリザーブされているのです。
開発諸国は、毎年、100億ドルを出資することに加えて、1000億ドルをこのリザーブから25年のSDR融資をスペシャル・グリーン・ファンドにします。このファンドも発展途上諸国の環境保護対策に融資するのです。温暖化ガスの排出を減らすだけでなく、こうした事業は地方の持続的な成長や農業、雇用をもたらします。
LAT December 7, 2009
Stem the flow of blood diamonds from Zimbabwe
By Tiseke Kasambala
(コメント) 人権擁護団体Human Rights Watchの調査員は、ジンバブエの鉱山で行われている拷問、強制労働、その他の人権問題を消費者に知らせるべきだ、と主張します。もしそれがジンバブエからのダイヤモンドであれば、買ってほしくない。
NYT December 7, 2009
Europe’s Minaret Moment
By ROSS DOUTHAT
WP Tuesday, December 8, 2009
In Switzerland, towers of fear
By Anne Applebaum
(コメント) スイスの田舎町でイスラム教寺院の戦闘を禁止する住民投票で支持が半数を超えたのは、頑迷さや、宗教的不寛容ではなく、むしろ、恐怖心・怯え、であった。しかも、それは単に「外国人」や「外の世界」への恐怖ではない。・・・それは、何か?
スイス人は新聞を読み、テレビを観ます。そして、イスラム教徒の増加に伴って、近年、ヨーロッパ各国で分離独立派や過激なイスラム原理主義が問題になっていることを心配します。その問題の源に、要するに、数世代を経てもなお、イスラム圏からの移民はヨーロッパ市民と融和できない、という事実がある、と理解します。イスラム教徒は今も異なったコミュニティーで、異なった学校へ通い、異なった慣習や法律を尊重するのだ、と。
ヨーロッパ各国はこの問題に対応できません。そして、デンマーク人が婚姻を規制し、フランス人が宗教的なシンボルを学校で規制したように、自分たちの市民的権利を制限しなければならない事態に直面しています。スイスの尖塔禁止は、こうした現象の一つなのです。想像以上に、イスラム原理主義への恐怖はヨーロッパ政治の底流を形成しています。・・・「極右」政治運動の活性化、トルコのEU加盟問題、など。
融合した多くのイスラム教徒たちが差別されるような尖塔の禁止をスイス人が支持したのは、彼らがイスラム原理主義者を決して望まないからです。
The Guardian, Wednesday 9 December 2009
Sarkozy is half right: all Europeans must understand the Swiss mistake
Timothy Garton Ash
The Guardian, Wednesday 9 December 2009
France and the Swiss minaret vote
Nicolas Sarkozy
(コメント) 「洞窟や格納庫で祈る人々を尊敬できるだろうか?」と、サルコジはスイスの尖塔禁止に応じています。それは信仰の自由を侵す以上に、もっと多くの問題と結びついています。
Timothy Garton Ashは、「彼らは(学校で)言葉や歴史、市民としての倫理や価値を教えているのか? それによって生徒たちは自由な国家の完全な参加者になる。」と問います。そして、その姿勢を明確にしたのは、たとえば、BBCの政治討論番組で極右BNPの指導者を公正に批判した、イスラム教徒の保守的政治家Sayeeda Warsiであった、と指摘します。
WSJ DECEMBER 7, 2009
The Politics of Japan Post
WSJ DECEMBER 7, 2009
Bringing JAL Back From the Brink
By PETER HARBISON
FT December 8 2009
Japan attempts another stimulus
The Japan Times: Wednesday, Dec. 9, 2009
Doom and gloom scenarios for lifeboat Japan
By GWYNNE DYER
WSJ DECEMBER 10, 2009
Teachable Moment From Tokyo
(コメント) 日本に関する話題です。WSJは、郵便貯金を日本の経済停滞と政治的クローニズムの源泉として批判します。JAL救済も、競争的な市場を妨げる政治介入です。そもそも政府が経営して赤字企業が再建できるのか? 労働コストや年金負担で行き詰まったのは、欧米航空業界と同じです。それに加えて、政治的保護と介入が採算を無視してきました。
その一方で、景気の評価は分かれますが、もし「二番底」やデフレが深刻なリスクであれば、日本経済は景気対策を必要としています。
他方、WSJは財政刺激策を批判します。18か月間で5回の刺激策を繰り返しても、日本の消費や投資は停滞し、デフレから抜け出せません。企業は政府の援助に頼り切っています。日本経済はアジアで最弱になり、労働者も投資家も疲弊した結果、税収は大幅に減少しています。
GDPの200%に達する国債の増発で政府支出の資金を集めることが日本にとって望ましいのか? 政府の赤字支出による景気回復は答になりません。
Asia Times Online, Dec 8, 2009 Calculated ambiguity in the South China Sea By Peter J Brown
Asia Times Online, Dec 9, 2009 India displays multi-vector diplomacy By M K Bhadrakumar
NYT December 10, 2009 Uneasy Engagement: China’s Economic Power Unsettles the Neighbors By MICHAEL WINES
Asia Times Online, Dec 11, 2009 China unveils its new worldview By Willy Lam
IHT December 11, 2009 Rethinking the Pacific By PHILIP BOWRING
The Japan Times: Thursday, Dec. 11, 2009 Asia's new strategic partners By BRAHMA CHELLANEY
(コメント) アジアをめぐる国際関係の緊張について。東シナ海、中国、インド、インドネシア、日本、貿易、為替レート、太平洋。アメリカはいつまで、アフガニスタンではなく、日本や韓国のような豊かな国の防衛を助けるために負担を引き受けるのだろうか? 中国の重商主義に対抗し、アメリカ企業の利益を守るために必要か?
SPIEGEL ONLINE 12/08/2009 Timebomb for the Euro: Greek Debt Poses a Danger to Common Currency By Wolfgang Reuter
FT December 9 2009 The price of hubris
BBC 2009/12/10 Greeks fear times will get tougher Philip Pangalos in Athens
The Guardian, Thursday 10 December 2009 Sick Ireland takes a bitter pill Francess McDonnell
(コメント) ギリシャとアイルランドの通貨・金融危機について。ただし、ギリシャはGDP比で99%が135%に増えるという、通貨同盟の原則をめぐる危機です。ギリシャの国債が市場で暴落し、離脱を選択することになれば、ユーロ圏を不安定化する懸念があります。
FT December 8 2009
A new spirit of solidarity rises in the South
By Asha-Rose Migiro
The Guardian, Thursday 10 December 2009
Helping Brazil to help itself
Kevin Gallagher
(コメント) 南のFDI受入額や南からのFDI投資額が、北のFDIを超える可能性があります。なんなん貿易や投資が南南協力を拡大し、国際貿易・通貨制度に新しい可能性を生じるでしょう。
Kevin Gallagherは、ブラジルの資本規制について書いています。ワシントン・コンセンサスは破棄されました。IMFは通貨危機の回避や為替レートの円滑な調整に向けて、資本規制も含めて、新興諸国の経済運営に協力し、支援しなければなりません。ブラジルや中国への政策監視がその試金石です。
WP Wednesday, December 9, 2009
Obama's FDR moment
By Harold Meyerson
WP Wednesday, December 9, 2009
Mr. Obama's jobs plan
(コメント) 不況や失業が深刻になれば、ますますF.D.ルーズベルトやリチャード・ニクソンが言及されます。政策の大きな転換が求められるからです。銀行の富に課税し、政府が直接に、中小企業や雇用の創出に支出する計画が始まっています。
戦争と雇用問題を解決したとき、すぐれた指導者として認められるのです。
FT December 9 2009
The dollar’s fall reflects a new role for reserves
By Martin Feldstein
(コメント) ドル暴落、ドルへの不信任、ドルの退位・・・そのような転換は起きていない、とMartin Feldsteinは考えます。それは国際通貨としてのドルが、「準備通貨」ではなく「投資通貨」になったことを示すのです。
かつて、戦後の国際通貨制度は固定レート制を維持し、そのために各国は外貨準備を維持した。それが「準備通貨」としてのドルであった。しかし、この制度は維持できなくなって変動制に移行し、為替レートの変動が不均衡を調整するから「準備」は不要になるはずであった。入門的なテキストでは。
実際は、為替レートの大きな変化を政府は抑制しなければならず、各国は市場介入のための「準備」を必要とした。ところが、これもアジア通貨危機が示したように、投機的な売買で危機を免れなかった。基礎的条件が危機を排除するケースでも投機的な売りで危機が起きたため、為替レートの安定化を望む国は、ヘッジ・ファンドなどの投機的資本移動よりも大きな外貨準備を保有するしかなかった。
各国は為替レートを過少に評価して維持し、貿易黒字で莫大な外貨準備を保有し始めた。こうした準備は不均衡の調整や為替レートの安定化に必要であるというより、不安定化する投資に対抗するために政府が保持する基金である。こうした基金として、今後も、資本市場の発達したアメリカの発行するドルが最も重視されるだろう。
基本的に「投資通貨」としてのドルは、ポートフォリオの分散によって価値を安定させる手法が採用されるから、一部がユーロなどに転換していく。この過程では「ドル不安」や「ドル暴落」が懸念されるけれど、ポートフォリオ・バランスが調整されればドル安は終わり、その過程でアメリカの貿易赤字が減って、ドルの供給は抑えられる。それゆえ、ドルの価値は回復するだろう。
現在のドル安は、こうした国際通貨制度の移行を表現するものである、と。
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The Economist November 28th 2009
The quiet American
Europe’s motley leaders: Behold, two mediocre mice
Charlemagne: We are all Belgians now
Deflation in Japan: The curse of defeatism
Tackling Japan’s debt: A load to bear
Parallels between Japan and the West: Same chords, different tune
(コメント) 米欧日が政治経済に鬱屈を重ねているとき、次の危機が生じれば、ますます協調は難しいでしょう。ドバイのバブルであれ、朝鮮半島であれ、イランや中東紛争であれ、現在の不利な情勢を何とか打開したいと考える政治集団が偶発的な、あるいは計画的な危機を生じます。
オバマの外交政策に疑いが強まっていることも、ヨーロッパ政治は、スイスではなくベルギーを目指す、というのも不安ですが、日本が安全保障上のヤドカリとバブル崩壊後の冬眠状態を、鳩山政権が良い方向に変えてくれるという期待がしぼむことも心配です。・・・日本はヤドカリのまま殻を捨て、冬眠状態のまま世界に間違いの手本を示し続ける、というイメージが強まります。
そんなことはない、という明確なメッセージが日本政府から伝わって来ません。
The Economist November 28th 2009
Spain’s economic troubles: Unsustainable
Fighting poverty in emerging markets: The gloves go on
Dubai’s debt: Standing still but still standing
Buttonwood: A developing bull market
Economics focus: Systems failure
(コメント) スペインの不況対策、中国・ブラジル・インドの貧困対策、ドバイの再建、新興市場のバブル、が紹介されています。
日本がバブル崩壊後にどのような改革を実現できたのか、それと比べて、今回の危機に対する金融システムや国際通貨制度に関する改革論は優れているのか、政府関係者の反省・再評価と迅速な行動(そのチャンス)が重要だと思います。銀行は同じような行動を取り、互いに結び付いており、個別のリスク管理では危機に対応できません。また、その救済と再建の道筋や国民が負わされるコストは不透明で、深刻かつ長期的です。
銀行融資にどのような準備を求めるか、景気循環やリスクの性格を考慮し、また多国籍化した銀行に対しては(ユーロ圏やロンドンのような金融センターにとって)もっと適当な基準が必要だ、と指摘します。