IPEの果樹園2009

今週のReview

11/16-21

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

東西ドイツの再統一、 ベルリンの壁崩壊20周年と四つの驚き、 ドル安、 バブル、 トービン税、 米中連邦、 オバマの世界戦略

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


FT July 26 2009 Capitalism blamed for new Berlin divide By Chris Bryant in Berlin

FT November 2 2009 Economic parity remains German dream By Bertrand Benoit in Berlin

FT November 3 2009 East and west German differences remain By Chris Bryant in Berlin

FT November 4 2009 Painful legacy fails to dim faith in market By Stefan Wagstyl in Gdansk

FT November 5 2009 Why east Germany is slow to change By Klaus Zimmermann

(コメント) 「東西ドイツの再統一は、史上、最も費用のかかった実験の一つである。ベルリンの壁崩壊から20年たった今でも、問題は続いている。・・・この実験はうまくいったのか? 」

その費用は、12000億ユーロないし16000億ユーロに及びます。それは直接の産業補助金、インフラや政治機構の整備、1670万人の東ドイツ人口の大部分に対する福祉給付を含むのです。最近も、東西ドイツをつなぐ鉄道、S-Bahnが運行を停止して、市民生活に深刻な影響を与えています。株式上場を目指して利潤率を高める対策として、また、安全検査を怠ってきた結果として、市民の足が奪われました。こうして、資本主義に対する不満が生じます。

他方、東欧諸国の平和的な革命は、共産主義時代の遺産を使って旧エリート層やそのネットワークがその後の時代も支配を強めた、と指摘されます。ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、の経験をStefan Wagstyが整理しています。

ベルリンの壁が崩壊した直後に、ウィリー・ブラントは統一社会の原則を示しました。「われわれは同じ国に属する。さあ、一緒に繁栄しよう。」 しかし、東西の格差は「個人化」された、と批判する声が紹介されます。東から、一部の者が裕福な層に加わり、それ以外の多くの者は失業者、移住者、そして、最も貧しい層に追加されました。

だから韓国は、北朝鮮との統一を考えているなら、何をしてはならないかを多く学べるだろう、という声にも言及します。

IHT November 7, 2009 Guiding Germany's Unification By ROBERT B. ZOELLICK

(コメント) ゼーリックROBERT B. ZOELLICKは、ベーカーJames Baker国務長官とともに、ドイツ再統一を実現する交渉の中心にいました。「事態はあまりにも急速に進展し、あたかも不可避であるかのように見えた。しかし、本当にそうだったろうか?」 ・・・そうではない。再統一に関わった人々の信頼、情熱、英知が必要であり、また、まったく異なる結果にもなり得たのです。

指導者と外交官は、この政治的な大地震を、ヨーロッパの新しい政治と安全保障の秩序に転換しました。

ベーカーとゼーリックは、東ドイツ国民が統一への原動力になると確信しました。なぜなら、彼らは同じドイツ人が西側で得たものを自分たちも得たいと願い、それらをいつも西側のテレビで観ていたからです。

ところがアメリカ政府の東ドイツ使節団は、勇敢にも体制に立ち向かった人びとが、統一ではなく、共産主義でも資本主義でもない「第3の道」を望んでいる、と知りました。しかし、大衆はそれをほしがりませんでした。ベルリンの壁が崩壊してすぐに、ベーカーとゼーリックは東ドイツの閣僚や指導者たちが、集まった人々は東ドイツの新しい実験など望まず、西ドイツの繁栄をほしがっている、と悲しそうに語るのを聞いた、と書いています。

彼らは二つの確信を得ます。1.すべてのドイツ人から見て、西ドイツが正当なドイツ国家なのだ。2.事態の進展から、西ドイツとアメリカが統一を実現する勢いが生じるだろう。

他方で、統一にはリスクがありました。すなわち、東から西への大規模な移民が生じるかもしれないこと、またソ連が、あるいは(サッチャーの反対が示したように)ヨーロッパ市民が統一ドイツの出現を恐れ、これを阻止するかもしれない、ということです。こうした事態は、東ドイツの政治的権威を損ない、この地域を無秩序に向かわせたでしょう。

1989年の混乱に対してアメリカが示した戦略概念とは、自由な人民が合意によって政府を享受できる、ということ。より統合化したヨーロッパの枠内で、ドイツの再統一は実現される、ということでした。こうして、自由なヨーロッパの全体がアメリカと結び付き、NATOや、EUとなる大西洋をつなぐより深い紐帯を実現したのです。そのことはまた、当時のソ連と新しい協力の枠組みを必要としました。

この歴史的な瞬間に、アメリカはドイツの民衆とともにある、という姿勢を示しました。19902月、統合に向けて、2+4(東西ドイツと英仏、ソ連、アメリカ)、という交渉形態を採用しました。ソ連が統一を遅らせ、何らかの代償を求めてくる恐れがありました。しかし、ベーカー国務長官は、ドイツ統一はドイツ国民の自由であり、同盟(ソ連か、アメリカか)の選択も含めて、一切の差別的な扱いをしない、と主張したのです。この姿勢は、後世のドイツ人が不公平な扱いを感じることなく、また、アメリカの利益を民主的なドイツ国家と一致させました。

アメリカ政府のスタッフは、アメリカ国民がドイツ統一を強く支持したことで力を得ました。コール首相がポーランドとの国境を認めることにためらったときも、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領はポーランド国民を安心させ、コールの危機を救いました。

交渉の成功は、首脳や外交官たちが個人的な信頼関係を得ていたことに大きく依存しました。コール首相とブッシュ大統領、ベーカー国務長官とゲンシャー外相、シュワルナゼ外相の関係です。

19907月のNATOサミットの前に、ベーカーはシュワルナゼに、NATOが採用すると思われる議決文書を渡しました。アメリカとソ連は、声明文が出る前に、それを利用してドイツ統一をソ連がどのように受け入れるかを相談したのです。

この20年で、ドイツは多くのことを達成した、とゼーリックは称賛します。中東欧諸国をEUと、NATOによる大西洋を結ぶ安全保障に加えました。それが平和のうちにEUの歴史を促したのです。世界経済危機がその最初の試練となりましたが、加盟諸国は相互依存を認識しており、それゆえ、危機においてもヨーロッパが解体することはないだろう、と。

WSJ NOVEMBER 8, 2009 Twenty Years of Stimulus for East Germany By WOLFGANG HUMMEL

(コメント) 経済(学)的に見て、東西ドイツの再統一は失敗作だった、と主張されます。経済を破壊された東ドイツ市民にとって、また1兆ユーロを費やした西ドイツ市民にとって、この政治的統一は、経済改革を伴わない経済停滞をもたらしたのです。

東ドイツは、一見、統一による成果を誇っています。都市の中心は再生され、社会主義時代の建物や高速道路は現代的に再構築されました。しかし、HUMMELによれば、ポーランド、チェコ、ハンガリー、スロヴァキアが何とか自立しているのに比べて、東ドイツは西側によって養われているのです。東の生産と消費のギャップは20%にも及びます。

1990年以来、西側から東側に与えられた財政支援は1兆3000億ユーロ(1兆9000億ドル)です。

これほどの財政支援が経済成長をもたらさなかった重要な原因の一つは、通貨統合の失敗です。1990年、政治的な判断によって、東ドイツ・マルクは500%以上も過大評価されて、西ドイツ・マルクと統一しました(賃金に関しては11、資産に関しても半分で)。当時のやみ市場では101で取引されていたのです。

その結果はすぐに現れました。実質的な労働コストが急上昇して、商品は価格競争力を失い、東ドイツ圏が脱工業化したのです。労働者たちは貯蓄を残した一方で、職を失いました。19年に及ぶ超人的な努力を経ても、東ドイツはこの最初のショックから立ち直れませんでした。現在、東ドイツ企業の95%が50人以下しか雇用していません。大企業は消滅したのです。

また、純粋にポピュリスト的な動機から、賃金の平等化が一気に進められ、特に西ドイツの労働組合がこれを推進しました。生産性が低いままで、賃金は引き上げられたのです。それにとどまらず、週40時間労働、土曜日の営業禁止、超過勤務の禁止、が導入されました。さらに、病気の手当てや、温泉旅行のための数週間に及ぶ休暇、なども加わりました。

東ドイツ企業の負担は、すでに、大き過ぎました。新しい設備を導入しなければならず、その債務を返済しなければなりません。労働者や建物に関する新しい基準や規制が費用を増やします。それにもかかわらず、労働組合の破滅的な戦略は今も続き、鉄鋼労働者は「週35時間労働」を成果として誇示しますが、かつて6万人いた労働者は8000人に減りました。

雇用の喪失には、より大きな弾力性によってではなく、費用のかかる公的な支出プログラムで対応してきました。雇用創出計画、雇用への財政支援、職業訓練、です。ところが、これらはビジネスの実情を反映しておらず、成果を上げていません。政府に支援された雇用増大には限界があり、むしろ企業に雇用されて得られる経験こそ重要なのだ。それゆえ新規雇用を助成することが最も望ましい、HUMMELは考えます

実際には、地方の公的部門がますます多くの雇用を供給し、肥大化と財政赤字が問題になっています。それは、雇用と社会福祉制度の矛盾を強めています。何もしなくてもらえる失業手当より、わずかしか多く稼げないのに、週40時間も働く動機は乏しいだろう、と。

多くの分野で、東ドイツにも西ドイツの法律が適用されました。しかし、それらは高度に発達した西ドイツの企業に対して必要な法律(会社法や会計)であっても、東ドイツ企業にはなじみがないだけでなく、不適当なものでした。その結果、東ドイツ企業な不利な競争を強いられ、西ドイツ企業に市場から締め出されたのです。

20年に及ぶ「東の再建」は、その成果を失いつつあります。1990年以後、低賃金(約25%低い)と弾力的な労働規制、そして通貨価値の下落により、中欧の企業が東ドイツ企業の競争相手になったからです。フォルクスワーゲンやジーメンス、などの主要企業がポーランド、チェコ、スロヴァキアに投資して、営業所を開くだけでなく生産工場を建てました。

こうして東ドイツの再生は、グローバリゼーションとまで言わないにしても、東欧からの挑戦によって色あせています。ドイツ再統一という大きな機会に、西ドイツは老朽化した福祉システムの改革に向けて加速することができなかったのです。そしてHUMMELは、社会福祉の肥大化が東西のイデオロギー論争によって生じたのであるから、再統一によって改革に着手できたはずだ、と考えます。

ところが、結果は西ドイツの福祉システムを東に拡大するだけでした。それが東ドイツを停滞させただけでなく、経済的に見て荒廃させつつあるのです。

The Guardian, Sunday 8 November 2009 East Germans lost much in 1989 Bruni de la Motte

(コメント) ドイツ再統一は、東ドイツthe German Democratic Republic (GDR)で生まれ、育った者の多くにとって、祝うべき事件ではなく、災厄である、と書いています。筆者はポツダム大学で英文学を教える講師として働き、二人の子供を育てました。

・・・海外旅行ができるようになったし、人によっては、物質的な豊かさを味わった。しかし、同時に、社会は崩壊し、失業者があふれ、ブラックリストに載せられ、くだらない物質主義と、自分たちがつくした旧国家を蔑視し、「他人を押しのける社会」が賛美されるようになった。

・・・私の親友は外国語の教師だったが、失業し、ブラックリストになせられた。なぜなら、壁が崩壊したとき、たまたま政府の法律学校で教えていたからだ。彼女は共産党員ではなかったし、全く政治的な人でもなかった。苦労して見つけたのは、学校から排除された若者たちを教える仕事で、それは長期契約がなく、はるかに低賃金である。

・・・私の兄弟は、科学哲学の博士号を持っているが、研究職を失い、その後は全く不似合いな、低賃金で臨時の仕事を得てきたにすぎない。

・・・壁が崩壊した直後、GDR政府は企業を国民の信託として利用しようとした。公営企業は市民のものになるはずだった。しかし、その後、成立した保守系政府は信託を西側の指名した代理人に渡した。その多くは業界関係者だった。すべての資産が急速に民営化され、85%以上を西ドイツ側が購入して、すぐに多くを閉鎖した。170万ヘクタールの農場や森林も売却され、農業従事者の80%が職を失った。

・・・大学、研究所、教職からも、政治的な理由で多くの者が解雇された。100万人以上の大卒者が職を失い、失業質は50%に達しただろう。たとえナチスの政権が崩壊したときでも、このような扱いはなかった。

・・・不幸にして、世界金融危機が起きる前に、これらのことが行われた。

The Times November 9, 2009 Over the Wall

LAT November 9, 2009 Cold War nostalgia Gregory Rodriguez

The Guardian, Monday 9 November 2009 Solidarity under strain Adam Michnik


FP NOVEMBER 5, 2009 Today's Berlin Walls BY JOSHUA KEATING

BBC, Sunday, 8 November 2009 Two decades since the Berlin Wall came down, BBC Mundo looks at walls and barriers around the world which are still standing - or have been put up - since 1989.

BG November 10, 2009 The wall after the wall By Peter Andreas

NYT November 11, 2009 In West Bank, the Economy Offers a Ray of Hope By ETHAN BRONNER

(コメント) JOSHUA KEATINGは、今も残る「ベルリンの壁」を取り上げます。・・・イスラエルとパレスチナを分離する壁;・・・アメリカとメキシコとの間の国境線;・・・朝鮮半島の非武装地帯;・・・インドとパキスタンの間の国境線;・・・中国がインターネットの世界に築いた分離の壁;・・・

BBCが上げた現代の壁も、上記の壁を指摘し、他にも、北アイルランド、サウジアラビア、北アフリカのスペイン領CEUTA AND MELILLA、キプロス、パキスタンとイラン、ブラジルRIO DE JANEIROのスラム、西サハラ、ボツワナとジンバブエ、を挙げています。

Peter Andreasが指摘するように、今も残された多くの壁は、冷戦のイデオロギー対立ではなく、激しい貧富の格差が背景となっています。東西ドイツの壁に代わって、ヨーロッパ国境を分離する壁ができました(ヨーロッパ要塞)。ポーランドは多くのEU諸国に移民労働者を送り出していますが、EU外からの非合法な移民流入を阻止するために負担を引き受けます。

年間約50万人の移民がヨーロッパに流入しますが、彼らの多くは国境で阻止されても、非合法に入国するのです。もはや「鉄のカーテン」はありませんが、国境の監視や警備隊は増えています。かつてベルリンの壁が多くの犠牲者を生んだ以上に、こうした国境の壁は毎年多くの犠牲者を出しています。

イギリスの元首相、トニー・ブレアはヨルダン川西岸を訪問し、パレスチナ人たちが国家を建設すれば、多くの経済的な機会を利用できる、と支持しました。隔離壁の一部の交通が再開され、携帯電話が情報を交換し始めます。経済機会は交渉の動機になるだろう、と。

LAT November 6, 2009 Reagan at the Berlin Wall By James Mann

The Guardian, Friday 6 November 2009 Renewing 1989's rejection of totality Antony Lerman

The Guardian, Friday 6 November 2009 How capitalism let Hungary down Gyula Hegyi

(コメント) 「私が子供の頃、学校の歴史の教科書には、こんな写真があった。『1930年代、人の市場』・・・それは、若者や老人が貧しい身なりで市場に立っている写真だ。彼らは裕福な人がやってきて日雇い仕事に連れて行ってくれるのを待っている。私は、1世紀前のアメリカ南部にあったという奴隷市場を思い出した。」

・・・何年もたってから、この写真の記憶がよみがえった。90年代初め、人口わずか1000万人のハンガリーで、150万人の仕事が失われた。資本主義的な移行過程で、工業部門が消滅した。1989年以前は、西欧に旅行した時しか、ホームレスを見たことがなかった。しかし、ブタペスト中にホームレスが横たわり、私のかつての級友たちも職を失った。国営や組合が運営していた宿泊所は民営化され、あるいは、閉鎖されてしまった。年老いた年金生活者が自分の夕食を売って、お金を得ようとしていた。ある日、私のアパートに近いブタペストのモスクワ広場で、巨大な「人の市場」が開かれた。それは写真とそっくりで、ハンガリーが資本主義を免れた40年間、全く変わっていなかった。

SPIEGEL ONLINE 11/06/2009 SPIEGEL ONLINE Interview with Lech Walesa: 'It's Good that Gorbachev Was a Weak Politician'

FP NOVEMBER 6, 2009 Who Brought Down the Berlin Wall? BY CHRISTIAN CARYL

FT November 6 2009 The Wall may have fallen but not enough changed By Frederick Studemann

WSJ NOVEMBER 6, 2009 The Berlin Wall of Aid: When Will It Fall? By GLENN HUBBARD

IHT November 7, 2009 The False Promise of 1989 By KENNETH WEISBRODE

The Guardian, Saturday 7 November 2009 Winners and losers of 1989 Joschka Fischer

(コメント) 1989年の勝者と敗者は誰か・・・と、Joschka Fischerは考えます

多くの革命的な変化がありました。ソ連とその帝国は消滅し、冷戦という国際秩序は解体しました。多くの独立国家が誕生(再生)しました。南アフリカのアパルトヘイトが終わり、アジア、アフリカ、ラテンアメリカでいくつかの内戦が終結しました。イスラエルとパレスチナも和平の姿勢が今までになく接近しました。ユーゴスラビアは解体し、内戦とエスニック・クレンジングを生じました。

アメリカは勝者です。しかし、イラク戦争と金融危機を経て、その特別な地位が動揺しています。特に、ジョージ・W・ブッシュ大統領はマイナス要因を拡大しました。9・11というマイナスの要因をプラスに変える機会も失いました。中東和平、エネルギー政策、地球温暖化デモ、アメリカは政策を誤りました。

ヨーロッパ、特にドイツは、1989年、11・9の最大の勝者です。ドイツは再統一し、EUは加盟国を増やして、大陸規模の統合が実現しました。共通通貨を導入しましたが、ヨーロッパ憲章は失敗し、21世紀に向けた政治構造が停滞しています。国際政治における新興勢力の間で、その影響力が大きくそがれる懸念を強めています。ドイツもNATOやEUの中で統一したものの、世界金融危機でも積極的な行動を採らず、自国本位です。

ロシアは最大の敗者です。政治社会的な危機を深め、政治的な統一や復活の幻想をもてあそんでいます。国民の寿命は短くなり、インフラや研究、教育への投資が欠けています。経済は国際競争力を持たず、貧富の差が開いて社会的な分断が強まっています。

G8は敗者、G2(アメリカと中国)が勝者です。G8の役割はG20に代わられ、G2に向かう新しい世界秩序が模索されます。東から西にパワーがシフトしたというよりも、500年間のヨーロッパの世界支配が終わった、ということです。

そして、この20年間を将来から見れば、地球環境の限界が漸く世界の主要課題の一つに認められた時代、となるでしょう。ベルリンの壁からコペンハーゲンの国際会議へ、主権国家といえども、世界的に行動し、協力しなければならない、ということです。

CSM November 08, 2009 When the Berlin Wall came down By Bill Glauber

The Guardian, Sunday 8 November 2009 The wall was the real 9/11 Victor Sebestyen

The Guardian, Sunday 8 November 2009 What's left after 1989? Ian Buruma

The Observer, Sunday 8 November 2009 I love Europe, but I despair of the EU Henry Porter

The Observer, Sunday 8 November 2009 Two cheers for the world after the fall of the Berlin Wall Andrew Rawnsley

(コメント) 20年たって、この地球はより豊かで、自由で、多角的な、予測できない、しかも、かなり恐ろしい場所になったが、それでもあの残酷な壁が分断していた世界に比べれば、恐怖は少なく、圧倒的に支持されるだろう。・・・ただし、そう言うためには、必ず、その複雑な成果を考察してからでなければなりません。

FT November 8 2009 Human rights are the highest form of realism By John McCain

LAT November 9, 2009 Hungary was the first rip in Iron Curtain By Mitchell Koss

WP Monday, November 9, 2009 After the wall fell By Anne Applebaum

(コメント) 多くの魅力的な論説を書くAnne Applebaumですが、彼女は、119ではなく、118を記念しました。

多くの会議や出版物、知識人や政治家たちのコメント。それらよりも、彼女は旧東ベルリンの大通り、Unter den Linden を歩き、the Brandenburg Gateをくぐります。今のこの世界を、118まではだれも想像できなかったのです。メルケル首相自身が、ドイツの再統一を考えることなど愚かであるし、ベルリンの壁がなくなることも考えられなかった、と語っています。

多くの達成されなかったことを基準に、この20年を批判する人々をApplebaumは支持しません。その当時、さまざまな恐ろしい、邪悪な未来が予告されていたのです。ナショナリズム、羽生田や主義、ネオナチが強まるとか、ドイツは第4帝国を目指す、と言われました。共産主義者の魔女狩りを批判する声もありました。ポーランドのNATO加盟は、そのアイデアを罵倒されました。実際、ユーゴスラビアは内戦になり、ロシアは失地回復に紛争を起こしました。

現実を見れば、中央ヨーロッパは、史上かつてないほど平和と繁栄を享受しています。先例のないこの20年がもたらした成果を、若者たちは歓迎するでしょう。

NYT November 9, 2009 20 Years of Collapse By SLAVOJ ZIZEK

BG November 9, 2009 After collapse, jubilation, fear, and uncertainty By Marton Radkai

(コメント) エコノミストたちは23000億ドルの財政支出を非難するが、その効果はプラスであった、とMarton Radkaiは考えます。不況地域が太陽電池パネルの生産拠点として復活した例もあるからです。それでも大量解雇は回避できなかった、と。東側と西側の心理的な壁があることを指摘します。

WSJ NOVEMBER 9, 2009 From Berlin to Baghdad By FOUAD AJAMI

(コメント) 同様の革命が、いつかアラブ世界にも波及するでしょうか?

FP NOVEMBER 10, 2009 Europe After the Berlin Wall: 4 Surprises BY MOISÉS NAÍM

(コメント) ベルリンの壁崩壊がもたらした世界の変化は、壁の崩壊以上に驚くべき結果をもたらした、とMOISÉS NAÍMは考えます。

1.ヨーロッパ市民にとっての主要な脅威は、ソ連から中国に変わった。・・・しかも、軍事的脅威というより、その経済力によって。ソ連の脅威はもっぱら軍事的なものであり、しかも行使されませんでした。ところが中国の脅威は、すべてのヨーロッパ市民が日常生活で感じています。安価なテレビ、高価なガソリン価格、雇用の不安。中国的な資本主義の方が、ソビエト的な共産主義よりも、はるかに深刻な変化をヨーロッパに加え続けるでしょう。

2.ユーロの誕生。・・・ベルリンの壁が崩壊しなければ、ドイツがマルクを放棄することも、フランスがフランクフルトのECBに金融政策を委ねることも、他の14カ国が自国通貨を放棄してユーロを採用することも、考えられなかった。ヨーロッパ諸国にも深刻な影響を及ぼした世界金融危機の後、ドルの地位が揺らいで、ヨーロッパの通貨に対してドルの価値が急落するなどと、想像することはできなかった。ユーロはかつてユートピアであったが、今や、誰もが疑わない現実である。

3.EU拡大にもかかわらず、ヨーロッパの地政学的な力は失われた。・・・通常、同盟の強さは加盟国の数に比例する。加盟国が増えるほど、その国際政治における影響力は強くなるはずだ。しかし、EUの加盟国が6カ国から15カ国、27カ国と増加し、世界最大の経済規模と民主主義や社会政策のモデルとみなされているのに、国際的影響力は顕著に低下した。人権擁護でも、アフガニスタンへの派兵でも、金融危機における支援でも、中東和平でも、EUはアメリカよりも多くの兵員、多くの資金を費やしながら、影響力を低下させた。それは、EU内部で統一した行動が取れず、決定力を欠くからだ。

4.古いヨーロッパにおけるイスラム圏からの移民、新しいヨーロッパにおけるアメリカへの親近感。・・・ヨーロッパ人口の10%、都市部では30%が、イスラム圏からの移民で占められるようになった。人びとは「外国人が多すぎる」という不満を持っている。「ユーラビア」という言葉が、その不安を表している。また、反米感情の強いヨーロッパで、旧ソ連圏の新加盟諸国では、経済、政治、文化、さらに軍事面でも、アメリカへの親近感が強い。このどちらも、ベルリンの壁があった世界では想像できなかった変化だ。

FT November 10 2009 Victory in the cold war was a start as well as an ending By Martin Wolf

(コメント) 共産主義から解放された諸国は、20年を経て、資本主義の金融危機に苦しんでいます。これをどう考えたらよいのか?

Martin Wolfは、危機にもかかわらず共産主義に戻る国は一つもなく、むしろ改革を支持する政府が成立した、と指摘します。しかし、同時に、金融機関の救済に費やした資金は14兆ドルに達しており、これは(一時的な)国家社会主義である、と断定します。

その教訓とは、金融市場のバブルがもたらす破壊力をもっと重視しなければならない、ということです。資本主義に代わる経済体制はないけれど、その通貨・金融システムには重大な欠陥があるのです。1930年代の危機は正しく学ばれて、その後の制度に反映されました。今また、資本主義の学習能力が試されています。

世界的な需要の不均衡を調整し、過剰な信用の拡大をチェックし、通貨・金融市場のショックに強い経済を設計しなければなりません。銀行部門の賭けと報酬を是正し、市場は国家によって厳しく管理されるでしょう。特にバブルは抑制され、国際通貨システムも過剰債務を抱えた超大国の通貨に依存してはなりません。

The Guardian, Tuesday 10 November 2009 Fall of the Berlin Wall: The lost decades

The Guardian, Wednesday 11 November 2009 Europe's next chapter starts now. It rests on looking beyond our borders Timothy Garton Ash

(コメント) ベルリンの壁崩壊の記念式典でTimothy Garton Ashが観たのは、それがヨーロッパ内部で達成したことでした。しかし、EUはまだ新しい制度を築き、トルコなど、新しい加盟国を増やすでしょう。そして、世界最大の政治共同体として、ロシアを民主化し、エネルギー政策を示し、地球温暖化を防ぐこと、さらに、裕福な北の世界と貧しい南の世界とを隔てる壁を低くすることが目指されます。EUは目的ではなく手段になった。今後、ヨーロッパの外に多くの課題が待っている、と主張します。

The Guardian, Wednesday 11 November 2009 The real lesson of 1989 is that nothing is ever settled Seumas Milne

IHT November 12, 2009 End of Whose History? By KISHORE MAHBUBANI

(コメント) シンガポールの中国系知識人は、ベルリンの壁崩壊を異なる視点で見ています。「歴史の終わり」、「西側の勝利」、・・・「アメリカとヨーロッパだけが残った」。そんなイデオロギーは、オバマ大統領が中国共産党の指導部と初めて会談する現実と全く合致しません。むしろ、「西側の終わり」、「パワーはアジアに移る」、「アジア復興」というべきです。

西側の文明に代わるオルターナティブはすべて消滅した、と考えたF.フクヤマも間違いを認めています。幸いにも、レーガンやグリーンスパンが唱えた政府の破壊というイデオロギーを、アジア(特に中国)は採用しませんでした。西側は、アジアの復興を一緒に祝うのか? あるいは、衰退の運命に従うのか?


FT November 5 2009

Time for a debate on immigration

By Martin Wolf

(コメント) すべての者がどこにでも住んで、働くことができる。それは権利だ、と考えるなら、移民を規制することは間違いです。しかし、Martin Wolfは移民は特権である、と考えます。すなわち、受け入れられる数が国によって限られているのです。人口過密は経済的なコストを伴います。そして、イギリスの平均所得は世界の平均所得の5倍はあります。だから、移民が多すぎるときは、移民を規制することが必要なのです。

移民の数字を確認し、その利益とコストを考えます。予測では、2030年までにイギリスの人口は7000万人に達しますが、その増加は移民とその子供から生じます。2007年、イギリスへの移入民数は237000人でした。1997年以後の10年間に、約300万人が流入しました。世帯の増加数の40%が移民家族であり、すでにロンドン都市部の学校では、生徒の半数以上の第一言語が英語以外の言葉です。

移民の利益は、移入民の経済・社会的な性格によって異なります。また、その影響は受け入れ側の住宅供給やインフラの状態によっても異なるでしょう。社会的な多様性は利益をもたらしますが、余りにも多様化するとコストが生じます。住民との信頼関係や共通の価値観が失われれば、コストが増加します。たとえば、移民たちが異なる価値観を変えることなく、コミュニティー内で集中して住む場合、互いの不信感が増すでしょう。

イギリスや世界が、次第にアメリカのようになるとしても、ときには、その過程を遅らせる必要があるでしょう。


FT November 5 2009

How to fill the gaps left by dollar decline

By Mohamed El-Erian and Ramin Toloui

(コメント) ドルに代わる国際通貨は考えられないけれど、ドルの現状はもはや国際通貨であり得ない。・・・どちらの主張も説得的です。要するに、二つのシナリオの中間で、ドルは危機を避けながら、次の支配的な国際通貨が決まるまで、なんとかその役割を果たし続ける、というわけです。

Mohamed El-Erian and Ramin Tolouiは、さらに一歩進めて、国際通貨の役割を別々に検討し、ドルを支えるか、それに代わる手段を考えます。かつて、C.P.キンドルバーガーが示した国際公共財としてのドルの5つの役割(1.最終消費市場、2.マクロ政策協調、3.為替レートの安定的な調整、4.国際的な最後の貸手、5.景気循環と逆に変動する長期投資)に加えて、今日の金融市場を前提に、さらに二つ(6.リスクの少ない、真にトリプルAの債券を供給し、金融市場に基準を示す、7.深い、予測可能な市場を提供して、それによって他国は金融仲介を改善する)を追加します。

しかし、それ以上考察は進みません。アメリカは金融市場の秩序に十分な注意を払い、財政赤字を抑制しなければなりません。G20やIMFがマクロ政策協調と為替レートの安定的な調整を促すでしょう。また、中国の人民元は次第にその利用を拡大するでしょうが、それはドルを補完するに過ぎません。

問題は、旧システムに戻ろうとする動きであり、また、各国が独自に通貨制度や金融市場を利用し、ナショナリスティックな理由で国際対立を軽視する場合です。主要国は、国内でも、国際会議でも、グローバルな公共財の供給を増やす形で、積極的に政策を変更しなければなりません。

FT November 6 2009

Bullion quest is no golden opportunity

Nov. 9 (Bloomberg)

Roubini Versus Rogers Is Right Debate for 2010

William Pesek

WP Thursday, November 12, 2009

Gambling with the dollar

By George F. Will

(コメント) 金価格が1000ドルを超えました。それはドル不安を意味します。インドが大量に購入しています。中国も、ドルの債券を持ちすぎて、金に交換するかもしれません。

他方で、アメリカは連銀も連邦政府も、金融危機と不況に苦しんでいます。最悪の危機を脱したにしても、失業は減らず、金融機関は回復する見込みも立ちません。財政赤字が膨張し、アメリカの公的債務は世界中の金庫に充満しています。もしも金利が上昇したら、アメリカ政府は破産し、あるいは、もしも(それゆえ投資家たちによって)売却されたら、ドルの価値が急落するのではないか? そのことをだれもが知っており、最大の投資国である中国政府は、今のところ、ドル価値が維持されるようにアメリカに求めています。

結局、アメリカは債券市場を維持しなければなりません。金利を上げて、貯蓄を増やすのでしょうか? あるいは、逆に資産価格に再びインフレを促すことで、金融機関の回復を早め、住宅所有者やアメリカ政府の債務負担を軽減するのでしょうか? 非常事態を強調する連銀と政府の行動から、リフレ政策はすでに始まっている、と見る者が増えています。

確かに、アメリカはワイマール共和国のような脆弱な政治経済状態にありません。ハイパーインフレーションを起こさず、その前に、インフレの加速を止める力があるはずです。しかし、経済取引の中に入り込んだインフレが、サーモスタットで調整できるエアコンやオーブンのような具合に、ちょうど良いところで止められるとは、誰も信じていません。


WP Friday, November 6, 2009

Obamacare's nasty surprise

By Martin Feldstein

(コメント) オバマ政権の医療保険制度改革Obamacareを根本的に批判します。それは医療保険の支払いを増やし、医療保険を利用する人を減らすだろう、と。なぜなら、準備されている法案では、健康状態に関わりなく、保険会社が医療保険に加入させることを強いるからです。より高度な医療は保険から排除され、プレミアムの支払いが必要です。それはプレミアムの支払いを躊躇させて、加入者を減らし、さらにプレミアムが高価になります。


 (China Daily) 2009-11-06

How to handle global economic imbalances

By Yao Yang

WP Monday, November 9, 2009

The next economic bubble?

By Robert J. Samuelson

FT November 9 2009

Not all bubbles present a risk to the economy

By Frederic Mishkin

(コメント) 英米からの「世界的不均衡の調整」論は、えてして、人民元の為替レートを弾力化・増価させ、それはドル安を意味し、中国のさまざまな内需拡大策を強調します。しかし、中国からは何を要求するのでしょうか? どのようなバランスの回復が目指されるのでしょうか? Yao Yangの論説は明確なイメージを持っています。すなわち、中国の「都市化」と「金融市場改革」を加速する、ということです。

「都市化」は中国人の生活水準を向上させ、消費を促し、内需による成長を維持するでしょう。金融市場改革では、特に中小企業の資金調達に応じる小規模あるいは中規模の銀行を増やすべきだ、と主張します。もちろん、金融サービスを充実させて、国民のさまざまな需要にも、(ドルや外国銀行ではなく)人民元でこたえるべきです。

先週、紹介したNouriel Roubiniのバブル再来論が関心を集めています。一般に、マネタリストや保守派はケインズ主義的な金融緩和や政府介入の増大を嫌います。ルービニが主張したこと(バブルの形成と破裂)を的確に要約して、Robert J. Samuelsonは反論します。物価は上昇していない。また、低金利やドル安が、アメリカをキャリー・トレードの最悪の供給基地にしていない。

ルービニの警告は無意味ではないが、アメリカの不況回避策はまだ根拠があり、バブルを恐れるのは早すぎる、というわけです。

WSJ NOVEMBER 6, 2009

The Man Who Predicted the Depression

By MARK SPITZNAGEL

(コメント) 信用の膨張から危機への循環メカニズムを1920年代に考察したオーストリアの経済学者、ミーゼスLudwig von Misesに関する論説です。

政府が信用の増加を推進し、市場で決まるよりも低い水準に金利を抑えるなら、一時的に投資、雇用、消費が増えるでしょう。しかし、それは人びとの貯蓄や投資を狂わせ、不健全で、持続できないようなビジネスを繁茂させます。それらは信用の膨張が終われば自壊するでしょう。

ミーゼスに従えば、ゴミ金融credit gavageやインフレを許さず、消費を促進するより、貯蓄と返済を促すべきです。すべての失敗したビジネスは倒産させ、政府が救済してはなりません。

ところが、大恐慌によって注目を集めたミーゼスの『貨幣論』が1934年に英語で出版されたにもかかわらず、1936年にケインズが『雇用、利子、貨幣の一般理論』を出版したために、結局、忘れられた、とこの論説は惜しみます。なぜなら、その後の金融政策の間違いや、現在の異常な経済政策は、ミーゼスではなくケインズが支持された結果だからです。


FP NOVEMBER 6, 2009

All for One?

BY ANNIE LOWREY

(コメント) リスボン条約が創り出すEU大統領は世界(国際秩序)を変えるだろうか? 


YaleGlobal , 6 November 2009

Awaiting Climate Accord, Governments Toy With Dubious Measures

Doaa Abdel Motaal

(コメント) コペンハーゲンの国際気候変動サミットは、成果が期待できるのでしょうか? 主要国のあいまいな態度は、金融危機と世界不況によって、国際政治の関心が温暖化から離れていることを示しています。「経済成長を維持しながら、温暖化ガスの排出を減らし、地球環境を守ることができるか?」とDoaa Abdel Motaalは問います。

もし国際会議による多角的な合意ができなければ、各国は独自に規制を始めるでしょう。それは規制を有効にするための国際取引に関する介入を含んでおり、国際貿易や国際投資のパターンに影響します。

Doaa Abdel Motaalが指摘するのは、次のような点です。温暖化ガスの気勢に対して、何もしない企業は確かに成長を妨げる。しかし、温暖化ガスの排出を抑制する革新を求めて、先端的な企業が急速に成長するだろう。また、国際競争力の問題は誇張されている。多くの財やサービスの消費は地域内に偏っている。他方、温暖化規制を免れるような免除規定や補助金は、むしろ規制の効果を失わせ、同時に、世界経済の重荷になるだろう。・・・


FT November 7 2009 Brown floats idea for global tax on banks By Chris Giles in St Andrews, Scotland

BBC 2009/11/07 Mixed response to transaction tax idea By Andrew Walker

FT November 8 2009 How we can restore trust in financial institutions By Gordon Brown

(コメント) イギリスから提案され、いよいよG20はトービン税を導入するのでしょうか? グローバル均衡成長を目指すには、世界的な規模で、金融の過熱を抑える明確な手段が必要です。世界金利がないのであれば(アメリカの金利が適当でないとしたら)、トービン税が支持されます。

しかも、この問題は、次週のコペンハーゲン会議を成功させる条件である、温暖化ガス排出削減を新興諸国や貧困諸国と合意するための「グローバル・ファイナンス」にも結びつきます。救済された銀行のボーナス規制にとどまらず、世界金融のカジノから地球環境を守るための資金を得よう、というわけです。

イギリスのゴードン・ブラウン首相が「トービン税」採用を示唆した数時間後に、アメリカのガイトナー財務長官はそれを否定しました。フランスの高官は、最近、このアイデアを肯定的に言及したばかりです。他方、IMFのストラス・カーン専務理事は、この単純すぎるアイデアが成功するには多くの技術的な問題がある、と否定的です。

ブラウン首相が示した他のアイデア、システム・リスクを反映した保険料の引き上げ、銀行倒産に必要な準備金、経済条件によって自己資本を変動させること、はアメリカからも支持されています。イギリスはIMFに対して、こうした問題に関する報告書を要請しました。

The Japan Times: Sunday, Nov. 8, 2009 No alternative to a new world architecture By GEORGE SOROS

(コメント) ソロスにとって、これはアメリカに代表される国際資本主義と、中国的な国家資本主義との選択です。

・新しい国際会議、ニュー・ブレトン・ウッズを開くべきだ。 ・アメリカ、中国、貧困国、など、国連・安保理が参加するべきだ。 ・特に、銀行の破産処理、資本規制、に関する国際ルールを決めるべきだ。 ・対外債務に依存して成長できないように、各国(特にアメリカ)の通貨制度を改めるべきだ。 ・人民元がドルに代わるまで、危機に際して増発できるSDRsが有効だ。 ・中国がアメリカに代わって、成長についても、指導的な役割を果たすだろう。 ・中国は、国際的な役割を担い、世界から支持されるためにも、その軍事国家のスタイルを転換しなければならない。

・・・同じような論争を、私たちはアジア通貨危機の後にも聞きました。そして例えば、当時、(トービン税ではなく)アジア通貨基金が実現を阻まれたのです。

The Times November 9, 2009 Which will come out on top: paper or gold? William Rees-Mogg

(コメント) 支配的な貨幣を決めることは、支配者を決めることだ、とWilliam Rees-Moggは考えています。すなわち、もし紙幣なら銀行家たちが、もしSDRsならIMFを介した政治家たちが、もし資金ならすべての市場参加者たちが、金融(そして世界の経済取引)を支配するのです。

インドの準備銀行がIMFから200トンの金を購入しました。金価格の上昇(・・・かつて1オンス35ドルだった金が、今や1100ドル)から、最初の普遍的な貨幣制度、金本位制の理論に戻って、1971年のニクソン・ショックについても語られます。紙幣と金との戦いは、権力者の争いでした。スリランカが続き、中国も金を購入し始める?

19世紀にも、銀行家たちは他の銀行の債務を紙幣として受け取ることを好まず、金に代えて保蔵しました。この伝統は、現代の中央銀行家にも引き継がれています。特に、アジアの銀行家たちは、帝国諸国やアメリカの紙幣の購買力が失われることを経験し、不満を強めています。

ここで、1970年代の論争においてジェームズ・トービンが登場します。トービンは金とドルが交換できなくなって投機が強まることを予想していました。それは紙幣の発行(そしてインフレや減価)に対する歯止めも、通貨投機への安定化も、無効にする恐れがあったのです。この投機による不安定化を抑えるために、トービンは課税を提唱しました。

イギリス政府や左派のエコノミスト、Oxfamなどが支持しても、アメリカ政府やIMFは支持しません。1980年代に、スウェーデンが一国で資本取引に課税したけれど、投資家は海外で取引するようになって効果がなく、失敗だった、と判断されました。

面白いのは、William Rees-Moggが、膨張する財政赤字を減らすために、英米が協力して資本取引に課税するかもしれない、と考えている点です。もし厳しい不況が再現し、ドル安にも苦しめられるなら、トービン税が必要です。そして、トービン税がなければ、各国は金を購入して、独自に金融秩序を模索し始め、結局、経済は政府によってではなく、市場の権力に支配されるのです。

The Guardian, Monday 9 November 2009 Making Wall Street pay Dean Baker

FT November 9 2009 Brown’s damp squib

The Guardian, Tuesday 10 November 2009 Don't let a backlash knock out Tobin tax John Hilary


WP Sunday, November 8, 2009 For China trip, lose the old baggage By Zachary Karabell

(コメント) 米中のトップ会談で何を語るのか?・・・世界経済、貿易・通貨摩擦、炭素の排出抑制、コペンハーゲン・サミット、台湾。

東アジア共同体なんて実現しそうにない、と思う内に、米中連邦が誕生するかもしれません。たとえばZachary Karabellは、もうひとつの米中会談の議題を示します。

1.中央銀行の統一。金利や為替レートを動かす金融政策について、今はアメリカ側が決めています。他方、中国はドルに固定し、アメリカの金融政策を輸入してきました。しかし、中国側の不満を無視して、アメリカは金融政策を決めることができなくなっています。それゆえ、相互依存の重要性を認識し、中国とアメリカで合同の金融政策委員会を開くのです。

2.知的所有権の論争に終止符を打ちます。それに代わって、アメリカ企業はもっと技術革新に投資します。あるいは、米中の合弁企業で技術と生産、流通を管理します。

3.中国製品に、一層のアメリカ市場におけるシェアを認めます。その過程で、中国企業はアメリカの技術を必要とします。一方では、中国側が技術に関連するアメリカ企業を買収することを広く認めて、中国側でもアメリカ企業の株式取得をさらに認めます。

4.環境分野でも米中は協力して方針を示します。新エネルギーに向けた技術開発やインフラ投資を、米中が協調する利益は莫大です。

5.軍事対立に縛られた発想を捨てます。日本は自律させ(日米安保の終わり)、台湾は香港の形にならって統合します。すなわち、台湾(そして、日本)は自律し、より開放的で、異なる政治体制を維持するが、より緊密に中国と結び付く。

そして、Zachary Karabellは、この話を信じない人も多いだろうが、EUが始まったころ、1957年に、イギリス外交官がそれを信じなかったことを指摘します。「そんな条約は、署名されるはずがない。たとえ署名されても、議会で批准されるはずがない。そして、たとえ批准されても、実行されるはずがない。」 ヨーロッパ人は、より大きな安全保障と繁栄とを求めるなら、国家管理をやめるべきだ、と知っていた。

かつて不可能と思われたことも、将来、実現するだろう。われわれがその発想を受け入れて、政治的意志を示すなら。

WSJ NOVEMBER 8, 2009 The 'Beijing Consensus' Won't Last By GORDON G. CHANG

(コメント) 中国がインターネットのアクセスを禁止したのは、ドイツの1989年を特集したサイトです。おそらく、中国の天安門事件が同じ年に起きたからでしょう。この検閲は、中国の政治体制の弱さを示しています。

GORDON G. CHANGは、中国の「奇跡」を「北京コンセンサス」と呼び、他国(たとえば、ベトナム)が受け入れているような状況が続くことはない、と考えます。中国が成長したのは、私的所有や民間企業の自由を認めたからです。それは共産党が発明したわけではありません。

その結果、かつて経済の停滞がベルリンの壁やソ連を崩壊させたように、今では急速な成長が北京の政治支配を崩壊させるでしょう。フランス革命前にトクヴィルが指摘したように、農民たちは不満を強めています。そして、韓国や台湾が示したように、民主革命後の社会は成長を可能にするのです。

ゴルバチョフは改革を急ぎ過ぎた、という北京の理解は間違っています。自由化は、その成功に伴って政府の管理を超えて進みます。モスクワと北京は、共産主義体制が崩壊に至る異なった経路を示すだけである、と。

FP NOVEMBER 9, 2009 When Obama Goes to Beijing BY CHENG LI AND JORDAN LEE

FP NOVEMBER 9, 2009 The Rift that Began in Tiananmen Square BY CHEN JIAN, JEFFREY A. ENGEL

LAT November 10, 2009 China, the U.S. and Taiwan By Dennis V. Hickey

(コメント) アメリカから台湾への武器売却(F16戦闘機など、46億ドル)に、中国政府は強く抗議しています。それは米中間の他の重要な交渉を妨げるかもしれません。

そうではない、とDennis V. Hickeyは考えます。アメリカ・中国・台湾の相互利益を実現するウィン・ウィン・ウィン・シナリオもあるのです。実際、2002年に、中国の江沢民主席は当時のブッシュ大統領に提案しました。すなわち、中国が台湾に向けている1500基の弾道ミサイルを撤去することと交換に、アメリカは台湾への武器売却をやめる、というものです。

IHT November 11, 2009 Beijing's Path Forward By JOHN WATKINS Jr.

SPIEGEL ONLINE 11/11/2009 Reluctant Partners: Global Crisis Makes US More Dependent on China than Ever By Gabor Steingart and Wieland Wagner

FT November 11 2009 China hints at stronger renminbi By Geoff Dyer in Beijing

(コメント) 同じような相互利益を、米中は通貨政策でも考える余地があるでしょうか。

WSJ NOVEMBER 12, 2009 An Agenda for Obama in China By MICHAEL BARBALAS

Asia Times Online, Nov 13, 2009 China trade surplus shadows Obama visit By Olivia Chung

(コメント) 貿易、環境問題でも、米中協調と国際合意によって、国際機関が重視される可能性が高まります。ただし、技術協力・移転、所有・企業買収、資本移動などを促す必要があり、WSJはその基礎として知的所有権と貿易自由化の推進を重視します。


FT November 9 2009 The open question in Obama’s Afghan plan By Philip Stephens

WP Tuesday, November 10, 2009 Why 'Surge Light' won't work By Richard Cohen

FP NOVEMBER 10, 2009 Please Send More Than Troops BY ASHRAF GHANI

The Guardian, Wednesday 11 November 2009 A new language for the Afghan conflict James Spencer

NYT November 12, 2009 America’s Defining Choice By NICHOLAS D. KRISTOF

(コメント) アフガニスタンをめぐって、オバマは決断を遅らせています。そして、鳩山政権と同様に、非難されています。おそらく、軍の要請よりも縮小した増派を認めて、他方でカルザイ政権を強く揺さぶってでも政治改革を進めるでしょう。


WSJ NOVEMBER 9, 2009

Australia Will Survive the Greenback's Fall

By SINCLAIR DAVIDSON

(コメント) ドル安に対して、世界中で介入や規制が行われています。しかし、オーストラリアは何もせず、自行通貨の増価を受け入れています。金融政策は国内の経済状態のみを目標に決められるからです。それはアジア地域では異例のことです。

ドル安の事情は明らかです。アメリカは金融危機を回避するための緩和政策と貿易赤字の縮小を必要としています。他方、アジア諸国が為替レートの増価を恐れるのは、「オランダ病」が起きると考えているからです。

SINCLAIR DAVIDSONは、オランダ病への対策に反対します。通常、政府投資信託を海外に設立したり、海外からの投資に課税したり、輸出産業や技術革新を助ける補助金を出したりします。しかし、オーストラリアは増価を市場の「創造的破壊」として受け入れ、通貨価値の増大に対する企業の積極的な反応を引き出すことに集中せよ、というのです。

もしすべての国がこのように対応すれば、アメリカで安価になった資産や企業を海外から買収し、こうしてアメリカは財政赤字の負担を実物で支払うしかないのです。


WSJ NOVEMBER 9, 2009 Japanese Missile Defense Matters By BRIAN T. KENNEDY

FT November 11 2009 Okinawa hovers at the negotiating table By David Pilling

FT November 11 2009 Okinawa outcry

The Japan Times: Wednesday, Nov. 11, 2009 Yet another 'Battle of Okinawa' By GAVAN McCORMACK

The Japan Times: Wednesday, Nov. 11, 2009 A good time to remember the ANZUS alliance's fate By RALPH A. COSSA and BRAD GLOSSERMAN

Asia Times Online, Nov 12, 2009 Clouds over Tokyo and Seoul By Eli Clifton

IHT November 12, 2009 Creaky Alliance By MICHAEL AUSLIN

WP Thursday, November 12, 2009 Reshaping an Asian partnership By Sheila A. Smith

(コメント) 海上や潜水艦に依拠したミサイル防衛網の一環として、沖縄の米軍基地は重要である、とBRIAN T. KENNEDYは主張し、日中関係の改善を求めて沖縄の計画を変更する鳩山政権の姿勢を批判します。

しかしDavid Pillingは、沖縄の歴史を紹介して、民主党政権が沖縄県民に基地を強制できない事情を理解する余地を英語圏において示しています。

オバマと鳩山はアジアの新しい地域政治システムを構築する意志とアイデアを示せるでしょうか?


FT November 10 2009

Obama has lost his way on jobs

By Jeffrey Sachs

FT November 12 2009

Simple truths about the economy

By Samuel Brittan

(コメント) オバマの景気刺激策にもかかわらず、まだ失業者が増えています。Jeffrey Sachsは、3つの対策を主張します。1.輸出促進(ドル安と貿易信用)、2.教育・再訓練(特に若者を雇用する)、3.社会資本(エネルギー転換や技術革新)、です。

他方、「金融政策による刺激は黒魔術ではない。」と、Samuel Brittanは批判しています。消費者は完全に金融危機や不況を恐れ、債務を減らし続けるでしょう。世界の貯蓄・投資バランスが変化しないとすれば、たとえ極端に金融緩和しても、アジアの過剰貯蓄を欧米の消費で補うことはもはやできないのです。


WP Tuesday, November 10, 2009 'Strategic reassurance' that isn't By Robert Kagan and Dan Blumenthal

(コメント) オバマの外交・安全保障政策がようやく輪郭を示し始めました。保守派の論客がオバマの対中「戦略的相互安心'Strategic reassurance'」外交を批判します。

オバマは、現代において、パワー・ポリティクスやゼロサム・ゲームの有効性を否定します。しかしロシアに対して、オバマ政権はグルジアの侵攻と国境変更を受け入れました。ロシアの帝国的な「影響圏」に関する脅迫に、言葉では反対しても、NATOは容認しています。

中国訪問で'Strategic reassurance'をオバマが売り込んでも、アジアこそ世界パワー・ゲームの中心舞台となっています。中国は経済成長を軍事拡大に利用し、アメリカの軍事力を周辺地域から一掃したいと願っています。それは、第二次世界大戦後、中華人民共和国が存在しないときに決められたアメリカ中心の国際秩序に、彼らが満足していないことからであり、当然なのです。

アメリカの対中外交は、中国を世界市場に参加させ、アジアにおける勢力均衡をアメリカに友好的な側に傾けておく、という二つの原則で成り立ってきました。しかし、オバマの'Strategic reassurance'政策はこれと異なり、間違った歴史的類推に依拠しています。19世紀末、イギリスがアメリカに西半球の覇権を譲ったように、アメリカは中国の台頭を阻むつもりはないのだ、と中国を安心させることが目標なのです。

しかし、イデオロギー的に英米は同類であり、20世紀の危険に満ちた世界を緊密な政治同盟によって助け合うことは、英米関係において前提できました。同じような認識は、民主的なアメリカにも、権威主義支配体制の中国にも、全くありません。リアリストの中国人にとって、東アジアにおけるアメリカとの競争は明白なゼロサム・ゲームです。

「戦略的相互安心'Strategic reassurance'」政策は成功しません。その結果として残るのは、アジアの親米・同盟諸国における動揺と不信感です。

(China Daily) 2009-11-10 Regional design in Asia-Pacific By Pang Zhongying

WSJ NOVEMBER 10, 2009 Trade Agenda for APEC By MARK BORTHWICK

FP Tue, 11/10/2009 A crib sheet for President Obama's upcoming Asian summitry By Daniel Twining

FT November 11 2009 America risks being left behind in Asia By Evan Feigenbaum

(コメント) 外交評議会の研究員であるEvan Feigenbaumは、アメリカがアジアにおける影響力を失いつつある、と危惧しています。

アジアの成長を牽引する市場を提供できるとか、信頼できる通貨や安全保障を提供できる、という今までの状況が、金融危機や中国の台頭で変化しています。特に、アジア諸国が地域統合に積極的な発言をすることを、アメリカは支持しなければならないでしょう。それはEUの経験によって刺激されます。

問題は、アジアの地域協力が、通貨や債券市場に関して、アメリカを含まない形で進んでいることです。このままオバマ政権が積極的な提案をしなければ、アメリカは不利な条件にとどまるかもしれません。むしろWTOを軸にした自由化交渉を成功させて、地域主義の弊害を取り除くべきです。もしアメリカがそのような指導力を示せなければ、その真空を埋めるのは中国だろう、と。

WSJ NOVEMBER 11, 2009 The Road Ahead for APEC By TIMOTHY GEITHNER, SRI MULYANI INDRAWATI AND THARMAN SHANMUGARATNAM

(コメント) ガイトナー財務長官はシンガポールにおけるAPEC首脳会議に向けて、グローバリゼーションの継続を唱えます。危機の教訓として、将来の力強い、安定した、均衡のとれた成長を実現するために、一緒に働こう、と主張しています。その通りですが、具体的な政治・経済行動、改革の焦点がありません。

Nov. 12 (Bloomberg) Obama Meets Asian Bankers Who May Call His Loan William Pesek

The Japan Times: Thursday, Nov. 12, 2009 APEC remains toothless By GREGORY CLARK

(コメント) APECの多様性は、ASEANやG20、そして拡大されたEUと同様に、その内部に様々な問題を抱えており、実際には積極的な行動が取れない、ということでしょう。


FT November 11 2009

US: Decline but no fall

By John Plender

Asia Times Online, Nov 11, 2009

Which big country will default first?

By Martin Hutchinson

(コメント) John Plenderは、アジアの興隆に比べて、アメリカの衰退を考察します。実際、オバマ大統領はあたかも(取引銀行に追加の融資を頼む社長さん、でなくとも・・・)王様にあいさつする勇敢な騎兵隊長のように見えます。

確かに、アメリカは世界最大の債務国であり、ドル価値の減少が目立っています。金融危機や世界中のテロ、不安定化によって、アメリカの地位が低下する中で、最も優位を示し始めたのは中国です。

しかし、中国の脆弱さは同様に明白です。輸出産業はもっと貧しい国からの競争に直面するでしょう。労働人口は減少し、他方で、社会不安は高まっています。他方、アメリカの高等教育や技術革新の能力は優位を保っており、軍事費においても突出しています。

アメリカがその財政赤字を管理し続けるなら、また、いわゆる帝国の過剰拡大によって自壊しなければ、国際秩序は協調によって安定的に維持されるでしょう。

アメリカの政府債務が破綻する可能性を、Martin Hutchinsonは、他の債務国と比較しています。すなわち、アメリカ、日本、イギリス、ドイツ、中国、フランス、の中央銀行家や政治指導者たちが競争しています。一つ興味を持ったのは、アメリカやイギリスもデフォルトの可能性はあるが、もし彼らがデフォルトするなら、その前に、債務/GDP比率200%になる日本がデフォルトするだろう、という一種の「感染」の可能性です。

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The Economist October 31st 2009

Falling fertility

Fertility and living standard: Go forth and multiply a lot less

Postal services: Sort it out

Capital control: Raining on India’s parade

Banyan: Himalayan histrionics

Charlemagne: Declining Europe’s place in the world

Buttonwood: Bribing the markets

(コメント) 簡単に。出生率の低下が世界各地で起きています。これは、一時的に成長を加速する効果があるでしょう。ガバナンスがその利益を実現するだけの準備をしていれば。環境問題の解決に向けて世界が動き出すことです。

e−メールによって郵便配達が失業します。民営化を逆転させても、この変化は止められません。しかし、政治介入がもっとも大きな役割を期待されている分野でもあります。インド政府の資本規制について、The Economistは支持しません。危機を免れたという自慢も、もっとほかの方法で実現できただろう、と主張します。

Buttonwoodは、単に民間需要が落ち込んだのではなく、将来に不確実性が高まったとき、金融緩和で投資を増やすのは弊害をもたらす、と考えています。慎重な貯蓄者を罰し、無謀な投機家を奨励するからです。ケインズの「金利生活者の安楽死」命題?