今週のReview
11/2-7
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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アフガニスタン戦争、 ドル衰退論、 グローバリゼーション・サイクル、 バブルからの脱出、 東アジア共同体? 竹中平蔵の民主党政権批判、 ブラジルの資本規制、 Krauthammerのオバマ批判、 繁栄指数、 労働組合、 ロシアの恐怖政治、 ラトビア通貨危機
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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia
The Guardian, Wednesday 21 October 2009
Britain fluffed the German question. Now Britain is Europe's great puzzle
Timothy Garton Ash
(コメント) ちょうど20年前に、東ドイツ国民が念願の「自由」を手に入れようとしたとき、イギリスのサッチャー首相はドイツの再統一に反対しました(彼女も「自由」が信条であったはずですが)。この「無益なブレーキ」とでも呼ぶべき歴史的事件から、次に政権を執る可能性が高い保守党の指導者たちは何も学ばなかった、とGarton Ashは批判します。
サッチャーは明確にゴルバチョフにドイツ再統一に反対する意思を伝えて、連携して阻止する合意を得ていました。しかし、アメリカのブッシュ(シニア)はドイツ再統一を支持します。実際、その後の歴史が示したように、サッチャーの懸念と反対は間違いでした。ドイツは軍事的・経済的にヨーロッパを支配しなかったし、厳しい不況にもかかわらず極右の政治運動に国民の支持は得られませんでした。むしろ、ドイツ再統一が東欧全体のEU加盟にもつながったのです。サッチャーの方針に反対していた外務省は、当時の記録を早期に公開して、その失敗の過程を表明し、EUとのかかわりを修正しようとしました。
Garton Ashによれば、かつてヨーロッパの市民たちが心配した「ドイツ問題」は解消され、今では「イギリス問題」が懸念されます。極右の、ナショナリズムを標榜して外国人を攻撃する政党が、主要テレビ局に登場するのは、イギリスです。議会が信用を失い、法体系が動揺し、市民の自由が損なわれ、慢性的なアイデンティティー問題を抱えているのは、イギリスです。世界のどこに帰属するのか、自分たちがどのような国でありたいのか、明確に示すことができないのは、ドイツではなく、イギリスです。
FP OCTOBER 22, 2009 Time for an Afghan Surge BY FABRICE POTHIER
(コメント) 大統領選挙の決選投票は、アフガニスタン政府が民衆の信頼を得、西側民主主義諸国の支援を受け続けるための、最後の機会です。
重要なことは、アフガニスタンの地方都市や市町村における住民の参加であり、2年に及ぶ安全保障の権限と任務の移行を住民の治安部隊が引き受けることです。それは、2001年のボンで合意された国際社会の関与がまったく不十分であったことを確かめ、タリバン後のアフガニスタン国家が分解し、私物化される過程であった、とFABRICE POTHIERは考えます。
カブールの権力者たちは、大金によって行政の長や警察、裁判官のポストを売却し、それらがさらに各地で売却されました。先の選挙は、こうした地方の支配者が得た(もしくは、得られなかった)ポストに対する見返りでした。アフガニスタンの全域が、こうした地方の権力ブローカー、軍閥、タリバン、国際社会の介入が残した、「ガバンス(権力)の真空(a governance vacuum)」、に落ち込んでしまいました。その政治過程は、恐怖と、回避と、買収だけに見えたはずです。不正だらけの大統領選挙は、住民たちにカブール政府や西側が与えるそうした印象を強めただけです。
兵士や資源を与えるより前に、政治戦略を立て直さなければならない、とオバマ大統領が考えるのは当然だ、とPOTHIERは支持します。そしてアフガニスタン政府が、最終的に、治安と社会生活を回復する上で、住民たちの心をつかまねばなりません。
WP Sunday, October 25, 2009 Afghanistan could turn into Vietnam. Let's hope so. By Joshua Kurlantzick
WP Monday, October 26, 2009 Think before surging By Fareed Zakaria
(コメント) チェイニー元副大統領は、オバマがアフガン戦争で躊躇している、と非難してきました。軍の示す未熟な報告に依拠して大統領が他国を侵略し、その勇気や決断力を示すべきだ、というのでしょうか? 時間をかけて、すべての選択肢を検討し、大統領選挙後のアフガニスタン情勢を分析する方が賢明です。
「われわれは第三次の増派を行うべきか?」 これがオバマの問題です。この18カ月間に、アフガニスタンにおける米兵の数は約3倍に増加しています。なぜ過去の増派は効果がなかったのか? さらに増加する理由とは何か?
Fareed Zakaria はthe Battle of Wanatを取り上げます。アメリカ軍が一つの戦闘(数時間)としては最大の死者(9名)を出したWanatは人口のまばらな山岳地帯で、部外者への反感も強く、結局、周辺地域にタリバンが浸透し、撤退してしまいます。McChrystalの物理法則に従えば、もっと多くの兵士がいることで勝利できたのです。しかし、逆にアメリカ軍がタリバンの拠点に浸透する方法もあるわけです。
4万人の増派を決断するか、さもなければ敗北するしかない、というMcChrystalの主張は暴論です。米軍は何をするのか? アフガニスタン側はどこまで補えるのか? むしろ、二つの作戦を組み合わせる併用方式をZakaria は支持します。すなわち、人口集中地帯におけるペトレイアス将軍の対ゲリラ作戦と、その他の人口希薄地帯におけるバイデン副大統領の対テロ作戦です。
FT October 25 2009 Obama is dithering on Afghanistan By Clive Crook
LAT October 27, 2009 Keeping our allies on our side in Afghanistan By Leo Michel and Robert Hunter
(コメント) 同盟諸国からの軍隊と一緒に戦っていることを忘れてはならない、と論説は指摘します。アメリカの兵士だけが勇敢である、と思ってはなりません。同盟軍の兵士も勇敢に戦い、負傷して帰国しても、再び派遣されてくる者もいます。彼らは善をなし、ボスニアで起きた虐殺が繰り返されるのを防ぎたい、と考えます。
民生の回復にも、独自の取り組みがなされています。同盟諸国の姿勢は、アメリカより動揺しているわけではなく、その国の議会や国民を説得できるのはアメリカの政治家ではありません。アメリカ製(メイド・イン・アメリカ)の作戦が信用されるわけでもないのです。
LAT October 27, 2009 Iraq, Afghanistan and the politics of war
SPIEGEL ONLINE 10/27/2009 The US War on Terror: 'We Need Shock Therapy in Afghanistan Now' Bruce Riedel
(コメント) Bruce Riedelは、さらに多くの兵士と資源がアフガニスタンの戦争に求められる、と考えています。タリバンに攻勢をかけ、その穏健な集団を切り離すためにも、一層のアメリカ軍と物資が必要である。アメリカ政府は、そのための「ショック・セラピー」を行うべきだ、と。
LAT October 28, 2009 Troop level in Afghanistan is the easy part Doyle McManus
The Guardian, Wednesday 28 October 2009 A way out of the Afghan quagmire Najibullah Lafraie
(コメント) 増派は、問題を悪化させるだけかもしれません。外国軍の駐留そのものがアフガニスタン国民の侵略され続けた歴史的記憶を刺激し、反政府性慮奥に味方しています。また、住民たちをタリバン支配下に置いたまま、対テロ作戦に縮小することは無責任です。
増派を避けるために、アフガニスタンの警察や軍隊を訓練することが強調されます。しかし、増派が問題を解決できないように、アフガニスタン警察や軍隊も、歴史的な外国の侵略に対する記憶を共有しており、彼らが協力し続ける保証はありません。
増派と対テロ作戦との中間を主張することも、双方の悪い部分を組み合わせる結果になるでしょう。すなわち、地方は荒廃し、都市はゲリラが襲い、平和も安定性も実現できないまま外国軍の駐留が長引き、アフガニスタン軍の協力を失います。
泥沼を抜け出す道は、イスラム圏から国連の指揮下で軍隊を送り、欧米の軍隊に後退させることだ、とNajibullah Lafraieは主張します。そうすれば、反政府勢力とも交渉できます。
NYT October 28, 2009 Afghanistan Votes, the U.N. Dithers By PETER W. GALBRAITH
(コメント) アフガニスタンの大当r長選挙が不正にまみれていたことを厳しく糾弾して、決選投票の方向に情勢を一変させた、国連事務局のアフガニスタン元副代表PETER W. GALBRAITHが、決選投票における不正を警告しています。3億ドル以上の財源を用意して行った選挙の国際監視も、左記の選挙における不正を防止できませんでした。
その結果、だれが大統領になるにしても、すでに議論されている政治改革を実行しなければ、政府の正当性は高まりません。すなわち、多様なエスニック集団に権力を分散し、議会が首相や内閣を選択し、地方の知事を選挙で決め、各地で選出される代表の権限を強めることです。
FT October 27 2009 Afghans need to find model of democracy By Paul Fishstein
(コメント) アフガニスタンでは「デモクラシー」が何を意味しているか? ハイネケンの缶ビールを片手に自転車を乗り回す少年? 大統領選挙で大規模に買収と不正が行われた結果、デモクラシーの意味が変わりました。責任、市民参加、有権者の意志の実現、などは知られていません。
決選投票における不正とともに、国民の参加が大幅に減る恐れもあります。タリバンは脅迫し、攻撃を繰り返すでしょう。贈賄は減るでしょう。不正な投票・集計操作も難しくなります。アフガニスタン人自身が「民主主義」を機能させるような改革が必要です。
The Guardian, Thursday 29 October 2009 Obama must listen to Gen McChrystal Tom Rogan
NYT October 29, 2009 More Schools, Not Troops By NICHOLAS D. KRISTOF
(コメント) さらに多くのアメリカ軍をアフガニスタンに展開することは、余りにも危険で重大な賭けであり、おそらくは人名と資源が浪費され、タリバンの勢力を単に強める結果になるだろう、とKRISTOFは心配します。他方、アフガニスタンに一人のアメリカ兵を追加で1年間派遣する費用で、学校を20も建設できます。・・・4万人のアメリカ軍が数年も駐留するなら、アフガニスタン国民が全員、博士号を取得できるだろう、と。
もちろん、強硬派は批判します。治安を回復できない土地において、学校など建設しても無駄である、と。しかし、“Three Cups of Tea”の著者であるGreg Mortensonが行っているように、現地の住民と資金を出し合って学校を建設することは成功しています。アフガニスタンは、軍隊よりも、教育や衛生・医療、農業の分野に、もっと多くの投資を必要としています。
アメリカが年間15億ドルの軍事援助を行っているパキスタンよりも、原理主義に抗して、女子の教育に取り組んできたバングラデシュの方が、マイクロファイナンスを受けて、彼女たちが織物業の成功に大きく貢献した、と指摘します。
FT October 28 2009 The west’s strategic options in Afghanistan By Max Hastings
(コメント) アメリカ大統領の兵士たちも不安を覚えているでしょう。パキスタンのジャーナリスト、Ahmed Rashidは、アメリカ軍が増強されなければ、周辺地域にまで「タリバン化」が進むと警告します。パキスタンからアメリカ軍学校で学ぶMehar Omar Khanは、むしろタリバンが貧困から生じている、と考えます。「海を支配しようとするな。島を作れ。」 カブール政府が何をするかではなく、地方で責任ある正直な指導者が選ばれることを重視します。
WP Thursday, October 22, 2009
Detente on ice
WP Thursday, October 29, 2009
Iran: Can Obama play hardball?
By Robert Kagan
(コメント) アメリカの対イラン外交、特に新しい関与政策の評価について。イランは、オバマの関与政策に必ずしも同意せず、ロシアは制裁措置に同意しません。これはオバマの強硬策を試しているだけであり、単なる時間稼ぎではないか?
YaleGlobal , 23 October 2009 China’s North Korea Conundrum: How to Balance a Three Legged Stool Jonathan D. Pollack
Asia Times Online, Oct 24, 2009 Korean summit not such a sick idea By Donald Kirk
WP Tuesday, October 27, 2009 Mr. Kim's scam
(コメント) 北朝鮮と朝鮮半島の将来はどうなるでしょうか? 中国、韓国、アメリカと北朝鮮との2国関係が微妙に変化します。
Oct. 23 (Bloomberg) Dollar’s Doom Puts a Face on New $1 Million Bill David Reilly
(コメント) 100ドル紙幣を超えるような高額紙幣が必要になるとしたら、アメリカにおけるハイパー・インフレの前兆を恐れるべきでしょうか? 1兆ドルの経済規模に応じて、誰が100万ドル紙幣のデザインを考え始めるのか? ・・・バーナンキ、マドフ、ジョージ・W・ブッシュ、ポールソン・・・
NYT October 23, 2009 The Chinese Disconnect By PAUL KRUGMAN
(コメント) PAUL KRUGMANは、金融危機や貿易不均衡に関して、中国(特に人民元)を敵視するアメリカの論調を批判します。人民元の為替レートは市場の需給で決まっていないけれど、それは金融市場の未熟な貧しい小国では当然のことであり、実際、中国はそのおかげでアジア通貨危機を回避できた。しかし問題は、為替レートをどの水準で固定するのか? です。
人民元をドルに対して安定化している結果、2001年ごろからユーロに対してドルが減価することに示されたように、中国政府は通貨を減価させ、しかも生産性を急速に改善し続けています。それは世界中で中国製品の価格を大幅に安くしました。大幅な貿易黒字と為替市場への介入、その結果として、2兆ドルを超える外貨準備が蓄積されています。
アメリカにとってドル安は調整を促す必要な変化ですが、中国にとっては逆に内外の調整を妨げるものです。かつて中国の成長は貧しい諸国に需要や雇用を提供しましたが、今は逆にそれを奪っています。
Asia Times Online, Oct 26, 2009 Why Asia Eventually Must Ditch the Dollar By David Goldman
(コメント) ASEANの指導者たちが2015年までにアジア通貨圏を構築すると話し合ったそうです。David Goldmanは信用していません。しかし、アメリカの債務が膨張して、インフレやバブルが波及してきたら、アジア諸国は何らかの通貨協定を結ぶでしょう。中国の人民元による決済や国債発行もASEANや海外投資家に許され始めています。
Asia Times Online, Oct 29, 2009 Yuan gaining currency beyond China By Russell Hsiao
(コメント) インドネシア、マレーシア、韓国、アルゼンチン、ベラルーシとの間で、中国政府は積極的に人民元と外国通貨とのスワップ協定を結んでいます。国際金融危機やドル安を嫌って、中国政府は人民元による通貨圏を準備する動きを示しています。中国ASEAN自由貿易圏(CAFTA)はその基礎です。
The Japan Times: Thursday, Oct. 29, 2009 Reports of the dollar's death are exaggerated By BARRY EICHENGREEN
(コメント) ドル安が進む理由はいくつもあるので、それを問題にするとしたら、何に対して安くなったのか? どこまで安くなるのか? です。すでに十分に強くなって、銀行や金融システムの不安も続くユーロ圏に対して、あるいは、成長することは拒むような日本の円に対して、ドル安がさらに進むとは考えられません。中国や新興市場の通貨に対してドル安が進むなら、それは歓迎すべきことです。
長い目で見れば、産油諸国が石油価格をドルではなく主要通貨のバスケットで表示し、売買するようになるでしょう。また、2020年より早くは起きないけれど、上海が国際金融センターとなるでしょう。中国の人民元が国際取引を自由化しそうですが、そのときでも、中国は国際通貨の首位に一気に立つことはない、とEICHENGREENは考えます。
アメリカ自身が経済政策を失敗すれば、ドルの突然の衰退が起きるかもしれません。金融政策の混乱や、財政赤字の管理能力を失えば、そのような事態に至ります。金利の急騰、投資の枯渇、成長の減速、などが連鎖的に起きるからです。
逆に、そうでなければ国際通貨ドルの衰退は誇張です。
The Guardian, Friday 23 October 2009
The real threat of immigration
Andrew Green
China Daily 2009-10-23
Policy for floating population
By Yin Deting
The Times October 27, 2009
It’s not immigration we really fear. It’s change
David Aaronovitch
(コメント) イギリスにおける移民問題と中国における出稼ぎ労働者の問題を並べてみます。
イギリス政府の国民統計局は、この20年間で人口は7000万人に達するが、人口増加の70%近くは移民であろう、と予想します。
中国政府は、出稼ぎ労働者を地域に統合する方針を示しました。住宅や社会保障制度が改善されねばなりません。
The Guardian, Friday 23 October 2009 US coal stands in way of Copenhagen Jeffrey Sachs
WP Friday, October 23, 2009 We can afford to save the planet By Eban Goodstein, Frank Ackerman and Kristen Sheeran
The Japan Times: Friday, Oct. 23, 2009 A day to act in the name of planetary justice By PETER SINGER
FP NOVEMBER/DECEMBER 2009 Recipe for Failure BY BRUCE BUENO DE MESQUITA
(コメント) 核廃絶も、地球温暖化の防止も、国際的な合意による実効性のある解決策は実現しそうにありません。
BRUCE BUENO DE MESQUITAは、その理由をゲーム論によって考えます。北朝鮮の核廃絶も、土地交換による中東和平も失敗しますが、同様に、パキスタンに対する援助とアルカイダ掃討作戦は継続されるだろう、と。
主要な温暖化ガス排出国と主要な経済大国、そして国際的影響力のある主要なNGOsについて、彼らの姿勢を0〜100に数値化します。50年から100年、そして500年の温暖化規制を予測すれば、いくつかのシナリオと、長期の予想ができるようです。
「コペンハーゲンの国連気候変動会議は失敗する。その代わりに、こんなことが起きるだろう。今後数10年間は、世界の指導者たちが、京都議定書で提案され、ほとんど無視された目標よりも高い目標を掲げるだろう。しかし、それに必要な厳しい規制は支持されない。世紀の半ばまでに、京都議定書よりもかなり低い目標が強制力を持つようになる。・・・2100年頃には、規制に向けた政治的意志がほぼ完全に消滅する。いろいろな理由があるけれど、特に、新興諸国(ブラジル、インド、中国)が規制に反対し、また、欧米の気勢を求める団体の影響力が低下するから。」
・・・「500年後の世界では、好ましい未来であれば、新しい技術が問題を解決しているだろう。・・・あるいは、他の惑星で。」
IHT October 26, 2009 We Can Do It By BAN KI-MOON
LAT October 26, 2009 Trading in 'cap and trade' By Tim Flannery
WSJ OCTOBER 28, 2009 Has Anyone Read the Copenhagen Agreement? By JANET ALBRECHTSEN
The Times, October 29, 2009 Honesty is a more sustainable climate policy Bill Emmott
(コメント) Tim Flannery は、開発諸国がより高い削減目標を掲げることで、排出量取引を介した温暖化ガスの価格シグナルや技術革新も進められることを指摘します。JANET ALBRECHTSENは、温暖化を防ぐために世界を管理する計画を進める国連を疑います。超国家政府による国際金融取引への世界課税が温暖化対策の財源である、と。
・・・なぜ、これほど科学が進歩して、何でも解決できるという楽観があるのに、地球温暖化は解決できないのか? 人類が皆、明日からヴェジタリアンになれば、地球温暖化は防げるのではないか? 環境保護派が主張するように、風車のエネルギーと配給だけで暮らせばよいではないか?
コペンハーゲンには192カ国から約2万人の代表が集まる、とBill Emmottは紹介します。しかし、特に世界的不況の中で、受け入れ可能な国際的枠組みに合意することは難しいでしょう。
どうも要点をつかめません。たとえば中国の排出量が、予測と全く異なっていることもあるだろう、という点でしょうか? さまざまな温暖化対策が、課税や規制、市場による価格メカニズムも加わって、実効性を発揮するという現実的な解決の道がある、というのでしょうか?
NYT October 23, 2009 Everyman’s Financial Meltdown By RON CHERNOW
IHT October 24, 2009 Heed the Hopeful Science By PAUL A. SAMUELSON
(コメント) RON CHERNOWは、1929年の大恐慌について、主要な歴史を紹介しています。
オバマ大統領は世界大恐慌を回避することに成功した、とケインジアンのPAUL A. SAMUELSONは称賛します。もしマッケインが当選していたら、株価や所得はさらに15%下落していただろう、と予想しています。また、バーナンキの連銀やECBの金融政策も素晴らしかった、と。
中国の成長は日本を追い越し、アメリカにも迫って来ます。それは現実的な予想ですが、その過程は容易なものではないでしょう。歴史が示すように、富裕諸国への輸出によって追いつく新興国は、国際通貨の地位を奪う過程で、この場合、ドルの暴落を導くからです。技術の移転は避けられず、それでも優位を失いたくない国は、常に、保護主義に向かいます。
改善策は、アメリカへの投資家に、ほとんどゼロ金利の国債ではなく、民間分野に分散投資することを勧め、また、科学技術の振興を図ることです。それでも現実の流れは変えられず、調整を避けてはいけません。
WSJ OCTOBER 22, 2009 Preventing the Next Financial Crisis By ALLAN H. MELTZER
(コメント) 逆に、マネタリストのALLAN H. MELTZERは、アメリカが次の金融危機の条件を深めている、と警告します。すなわち、通貨供給が増大し、財政赤字が管理されず、ドル価値が急落する恐れがあるからです。
アメリカの銀行につみあがった余剰資金が、財政赤字を賄うだけでなく、融資も増やして通貨供給がさらに膨張するでしょう。ドル危機が国内のドルが逃避することで始まるかもしれません。あるいは、インフレの加速になるかもしれない、とMELTZERは考えます。
1970年代のインフレは、失業率を重視し、フィリップス曲線を前提した金融政策によって生じました。オバマ政権は同じ過ちを繰り返しつつあるのです。通貨供給を減らし、財政赤字を計画的に削減せよ、と。
The Observer, Sunday 25 October 2009 Mervyn King is right – the time has come to break up the megabanks Will Hutton
WP Sunday, October 25, 2009 Can we find a new direction? By Greg Ip
WP Sunday, October 25, 2009 5 myths about Wall Street pay days By Roy C. Smith
(コメント) Greg Ipは、2冊の新著から、世界金融危機を考察しています。その一つがHarold JamesのTHE CREATION AND DESTRUCTION OF VALUE: The Globalization Cycle. です。
自分の論文や講義にも引き寄せて解釈できる、次の記述に注目しました。「グローバリゼーション・サイクルとは、市場が政治・経済・社会のフロンティアを超えて前進する仕方である。小さな危機はグローバリゼーションを強める。なぜなら、既存の制度や経済主体に安定性を回復する能力があるから。しかし、大きな危機はグローバリゼーションを弱める。なぜなら、国際金融システムが混乱を広める経路となり、各国は参加する動機を失うから。」
NYT October 25, 2009 The State of Financial Reform
FT October 25 2009 Do not ignore the need for financial reform By George Soros
FT October 25 2009 A polite discourse on bankers and bubbles By Wolfgang Münchau
WSJ OCTOBER 25, 2009 Six Steps to Revitalize the Financial System By SANFORD I. WEILL AND JUDAH S. KRAUSHAAR
(コメント) Wolfgang Münchauは、中央銀行がバブルを破裂させるべきか、という問いを再論します。何度も議論されましたが、答えは出ていません。しかし、バブルの判定はできない、という反対意見は否定します。逆に、SANFORD I. WEILL AND JUDAH S. KRAUSHAARは、中央銀行が「大き過ぎて潰せない」という問題に関して論争に参加するのは間違いだ、と考えます。
むしろ6つの条件を示して、資本市場の再生を求めます。1.連銀は金融システムのリスク監視にも責任を持つ。2.複雑な金融商品のテストと決済システム。3.証券化と市場の回復。4.格付け会社の回復。5.自己資本規制や準備金の気勢を見直す。6.重役たちの報酬を長期的収益によって決める。
WSJ OCTOBER 25, 2009 Debtors to the Front
WSJ OCTOBER 26, 2009 Is the U.S. Economy Turning Japanese? By CHRISTOPHER WOOD
(コメント) アメリカはIMFへの関与を下げるべきでしょうか? 増資において投票権を失うことに対抗できるでしょうか? 戦争や領土争いのように注目を集めませんが、IMF増資の割合は国際的発言力にとって重要です。当初は黒字国・債権国の方針が重要でしたが、次第に、債務国の姿勢も重要になりました。また、ヨーロッパ諸国の過剰代表問題と、新興諸国の過少代表問題が関係しています。
CHRISTOPHER WOODが描いたバブル期の日本は面白いうえに優れています。今のアメリカ経済がポスト・バブル期の日本とよく似ている、という彼の指摘は、それゆえに重要です。
自動車販売の不振に対して補助金を出し、住宅ローンにも低金利の融資を行い、金融機関には莫大な融資や保証を与えて、重要な違いもあるけれど、日本の対策と同じような状態になっています。救済すればするほど債務の処理は時間を要します。政府がレバレッジの縮小や株・債券保有のリスク評価を求めるとき、その負担が現れるでしょう。・・・「投資行動が大きく転換し」、「すでにアメリカも流動性の罠にある」かもしれません。
・・・「次のバブルは、皮肉なことに、西側の回復過程が弱いほど新興のアジア諸国、特に中国で発生する。金利の正常化が遅れるほど、その結果としてアジアのバブルは大きくなる。連銀の金融緩和政策による最大の受益者は、アメリカの消費者ではなく、新興アジア諸国であるから。」
FT October 27 2009 ‘Too big to fail’ is too dumb to keep By John Kay
FT October 27 2009 Obama’s executive pay move is bad policy By Charles Calomiris
(コメント) オバマ政権は、公的資金に頼っている金融機関に対して、その高額給与を削るように求めました。 Charles Calomirisは、こうした決定は金融危機の解決に効果がなく、再発防止にもならない、と批判します。むしろオバマは、支持率が低下したことに対する不安から、国民にアピールする手段を選択したのではないか、と政策決定全般の乱れを疑います。
WSJ OCTOBER 27, 2009 Efficient Market Theory and the Crisis By JEREMY J. SIEGEL
FT October 28, 2009 Narrow banking is not the answer to systemic fragility By Charles Goodhart
(コメント) ナロー・バンキング・システムでは金融危機を防げない、とCharles Goodhartは断言します。金融危機は融資によって起きるが、今回の危機でも決済システムは停止しなかった。銀行をカジノと公共機関に分けることは無駄であり、むしろ逆効果だ。
IHT October 29, 2009 Back to the Bubble By NICOLAS BAVEREZ
(コメント) これまでの対策で十分な効果を上げなかった理由は4つある、とNICOLAS BAVEREZは考えます。1.政策協調の不足、2.銀行部門の健全化に失敗、3.G20が金融緩和を拒んだこと、4.グローバル・ガバナンスの不足、である。
ポスト・ケインズ主義の時代が終わり、アメリカの市場支配が終わり、西側資本主義システムの優位が終わった。バブル経済に戻るのではない、経済モデルと政策手段が必要だ、と。
IHT October 29, 2009 A Balanced Global Diet By NOURIEL ROUBINI
Forbes10.29.09 Doctor Doom: Are Capital Controls In Fashion Again? Nouriel Roubini
(コメント) グローバル・インバランスの解消については、語られるばかりで、実行が伴いません。G20の合意はアメリカや日本、中国のマクロ経済運営に正しい方針を示しました。しかし、IMFには強制力がありません。アメリカの赤字縮小は、日本やドイツの需要によってではなく、中国の黒字縮小でもなく、カナダやオーストラリア、ブラジルの赤字が埋めたようです。
政治的経済的な目標を合意して、IMFの政策監視に従わない国には、WTOを介した懲罰的な関税が導入されるべきだ、と示唆しています。
また、資本規制に関してもNouriel Roubiniが書いています。資本流入規制をめぐって、新興経済の安定的な成長を維持する観点から、支持する意見が強まっています。マレーシアとチリがしばしば言及されますが、新しい合意が形成されれば、新興市場の成長を高めるでしょう。
The Japan Times: Friday, Oct. 23, 2009 Influential Asian groupings By MICHAEL RICHARDSON
IHT October 24, 2009 South Korea Rising By PHILIP BOWRING
(コメント) 東アジア共同体に関する関心は高まりました。しかし、領土問題を非難し合うのは避けているとしても、事務局の設置にも、加盟国の範囲にも、まだ合意は得られないようです。
東南アジア諸国をめぐっても、日中の勢力争いに韓国の進出が加わって、アメリカからの離脱とASEANの方針にさまざまな不確実さが増しています。
難しい問題が多い中で、こうした諸国の目指す方向は、まず共通の経済的利益を拡大することであり、それを基礎にして他の分野でも若いや合意を積み重ね、危機に対処する力を高めることでしょう。協力の成果こそが、共同体にふさわしい信頼を形成するのです。
The Observer, Sunday 25 October 2009 Superpower rivalry, Sino-Indian style Kapil Komireddi
(コメント) 米ソの対立が20世紀の国際秩序を決めたように、21世紀は中印の対立が重要になる、という指摘に戦慄を感じます。
中国政府は、アジア開発銀行のインド向け29億ドルの融資に反対しました。その理由は、融資対象に中国の領土(Arunachal Pradesh東部)が含まれる、ということです。ほかにも、中国はインドに敵対する包囲網(パキスタン、ネパール、ビルマ、スリランカ)を育成しています。
国連の代表権をめぐるインドの対応に関して歴史的な不満を抱き、経済的繁栄に伴いイデオロギー的な支配力を失う共産党がナショナリズムに頼る、という二つの事情から、Kapil Komireddiは(日本と同様に)インドに対する敵意が形成されている、と考えます。これに対してインドは、自国側のインフラと愛国心を高め、日本やアメリカとの協力関係を進め、ダライ・ラマへの抑制を解き放つこと、を考えるべきだ、と。
NYT October 26, 2009 Asean Summit Turns to Widening Free Trade By THOMAS FULLER
The Japan Times: Monday, Oct. 26, 2009 Paranoids feast on China's 'peaceful rising' By TOM PLATE
(コメント) 自由貿易と共通通貨に向かう対話(貿易・投資・交渉制度)は、現代の地域統合の基本原理です。
NYTの記事を読めば、ASEANサミットで見られるのは、中国による貿易・投資・インフラ整備・人民元の利用拡大、と、日豪によるアメリカを含む自由貿易圏、との併存・対抗です。アメリカに比べて中国市場が拡大するなかでは、その近接性や安全保障でも、後者(日豪)が前者(中国)の進展を阻止することはできません。特に、日本がEU型の単一市場を唱えながら、財・サービス・資本・人の域内移動を自由化する国内の合意もないようでは、誰も大きな期待は寄せないでしょう。
他方で、中国とは何か? とTOM PLATEは問います。特に、経済力の増大を急激に軍事力の増強に振り向ける過程に、各国の関心が集まります。もし中国が「和平演変」"peaceful rising"を唱えるなら、台湾に向けたミサイルの数を減らしてはどうか? と提案します。
China Daily 2009-10-26 Japan at Crossroad By Han Dongpin
China Daily 2009-10-26 East Asian community a target By Liu Junhong
(コメント) 中国の政府系メディアは、日本と東アジア共同体に関するこんな論説を載せています。「第二次世界大戦後も日本はアメリカに占領されてきた。日本の独立は名目的なものでしかない。・・・他国が自国の領土内に軍事基地を持てるのは、独立国家でないからだ。」
この点で、中国と日本の新政権とは意見が一致する・・・? そのように共鳴し、あるいは、挑発しているのでしょうか? 東アジア共同体に関しても、アメリカからの干渉と日本の揺らぎに反発します。
WSJ OCTOBER 26, 2009 Trading Away the Asia-Pacific
(コメント) アジアの市場自由化について、アメリカを除いて、中国が先行的に実現することを、WSJは嫌います。EU型の統合化が実現するかどうかは、将来の問題ですが、いま問われているのは、アジア市場においてアメリカの地位を中国が浸食していく、という戦略的な意味です。
アジア諸国はすでに中国の経済圏に統合されつつあります。しかし、同時に中国への警戒感を強く残している国もあるのです。その意味でも、アメリカ政府はもっとアジア諸国の地域協力に対して発言し、日本やオーストラリアの提案を支援するべきだ、と。
Asia Times Online, Oct 27, 2009 Rice tariffs snarl ASEAN single market By Marwaan Macan-Markar
FT October 27 2009 Asian co-operation must gain currency
(コメント) アジア開発銀行(ADB)総裁の黒田東彦氏が、アジアの政策協調を実行する効果的な手段として、共通通貨を推進しています。ADBの増資に合意し、チェンマイ・イニシアティブの強化にも成功した、と。
しかしFTは、2兆ドルを超える中国の外貨準備や、日本、インド、韓国、タイ、シンガポールの1兆ドルに及ぶ外貨準備に比べて、1200億ドルの合意は重要な意味を持たない、と否定します。また、黒田は為替レートの安定化と調整(さらに共通通貨)は、企業が中国に生産拠点を設けて「フィジカル・ヘッジ」できたと(間違って)考えるより、すぐれている、と指摘します。それはまた、アジアの資本市場を発達させ、各国の国債市場を発達させます。
こうした主張は説得的ですが、FTは中国が人民元で周辺諸国との取引を拡大し、通貨圏を追求する動きを指摘し、共通通貨には関心を示していない、とその可能性を否定しています。
The Japan Times: Tuesday, Oct. 27, 2009 Painful past must be put to rest for good By DOMINIQUE MOISI
(コメント) 中国の若者を教えていて、その「けんか腰のナショナリズム」に戸惑う、とDOMINIQUE MOISIは書いています。彼らは中国の学校で教えられた歴史しか認めず、批判されることを嫌う。バルカン半島と中国を比較して、その「記憶」と「歴史」との関係が大きく異なっていることに注目します。バルカンの人びとにとって、EU加盟は最良の心理療法なのです。あるいは、フランスでは今も、ナチスの占領に協力したヴィシー政権の記憶によって、冷静な考察が妨げられています。
中国人にも、歴史は繰り返されないために記憶するだけでなく、それを乗り越えるためにもあると理解されることを望みます。
Asia Times Online, Oct 28, 2009 As ASEAN dithers, the US circles By Simon Roughneen
China Daily 2009-10-28 In search of a truly regional community By Xu Changwen
(コメント) Simon Roughneenは、アジアの多様性と人権問題を指摘しています。Xu Changwenは、鳩山の提案が第二次世界大戦中の「大東亜共栄圏」と似ている点を指摘し、さらに、さまざまな提案があることを比較します。
WSJ OCTOBER 28, 2009 The Truth About Asian Integration By RAZEEN SALLY
(コメント) RAZEEN SALLYの論説は優れていると思います。地域統合をいくら議論してもっ実効性の合う合意は難しく、むしろアジア地域の成長は他の地域に開かれていることで実現してきた、と主張します。それゆえ、さまざまな統合について論争するよりも、「一方的な自由化unilateral liberalization」をさらに深める方が有益である、と。すなわち、貿易だけでなく、投資や技術者の移動に関しても市場による統合化を推進するのです。
地域統合は万能薬ではない。中国を拠点とした「グローバル・サプライ・チェーン」を利用して、さらに各国の生産を世界中に結びつける方が、さまざまな協定で近隣諸国の市場を共有するよりも優れている、というわけです。
FT October 28 2009 Asian summitry that hides a battle for influence By Kevin Brown
(コメント) 鳩山のアメリカを含む提案より、中国の主張に影響力がある。なぜなら、アジア諸国から輸入を増やして、景気回復に貢献しているのは中国だから。8%成長を実現し、インフラ投資や通貨スワップに資金提供しているのも中国だから。
FP Fri, 10/23/2009 Tokyo smackdown By Michael J. Green
(コメント) 日本の新政権の外交政策は、日米同盟の重要性を軽んじる点で危険である。しかし、来年の参議院選挙で民主党が多数を取れば、社民党との連立は解消し、もっと現実的な、中国や北朝鮮の脅威に重点を置く外交政策が展開されるだろう。だから、今は鳩山政権を追い込まない方がよい、とMichael J. Greenは考えます。
FT October 26, 2009 Japan needs more aggression in warding off deflation By Kumiharu Shigehara
(コメント) 日本の円高とデフレに対して、カナダやスウェーデンの中央銀行が行った非正統的な金融政策を紹介し、日銀も新しい政策を取るべきだ、と主張します。
The Japan Times: Wednesday, Oct. 28, 2009 It's Italy for America and Japan for Europe By HANS-WERNER SINN
WSJ OCTOBER 30, 2009 Japanese Reform Gets Lost in the Mail By HEIZO TAKENAKA
(コメント) ECBは、日本の経験から学んで、バブル破裂後のデフレとユーロ高、長期の停滞を回避できるでしょうか?
竹中平蔵氏の批判は予想された内容です。・・・郵便貯金は、24万人を雇用し、3兆ドルに及ぶ資産を運用している。保険と銀行を兼ね、預金だけでも20兆円に達する世界最大の銀行である。民間の金融機関と競争条件が同じでない。政府の財政赤字(国債)を吸収するために利用され、非効率である。財政投融資を裏から復活させたに等しい。株式の売却を取りやめ、日本の資産市場を刺激できなくなる。国営企業や政治的なコネで国民の貯蓄を無駄遣いする。高齢化に必要な日本経済全体を活性化する機会を失う。・・・
むしろ、鳩山政権や亀井大臣は、正面からこれらを反論しなければならないはずでした。国民の貯蓄を利用して、どのようにもっと雇用を生み出し、効率的に資産運用し、民間の金融機関と競争させ、明確な財政規律を与え、資産市場の整備に役立て、財政投融資に政治的なコネを許さず、高齢化に向けた日本の社会システムを再構築できる、と示す責任があると思います。
WP Sunday, October 25, 2009
A new North American union
By Jim Hoagland
The Guardian, Tuesday 27 October 2009
Trading on thin ice
Kevin Gallagher
(コメント) NAFTAを見直すなんて、とんでもない。むしろ、もっと完全な地域経済統合を目指して、さらに政治や安全保障も含めた「スーパーNAFTA」が必要だ、とJim Hoaglandは主張します。他方、Kevin Gallagherは、アメリカとコロンビアとのFTAが資本規制を排除している点を、金融危機(拡大)の条件になる、と強く批判しています。
The Observer, Sunday 25 October 2009 Yes, President Blair really would be good for Europe Jackie Ashley
The Observer, Sunday 25 October 2009 Is Tony Blair the right man to be president of Europe? Charles Grant and Henry Porter
The Guardian, Monday 26 October 2009 Making this ruthless liar EU president is a crazy plan. But I'll be backing Blair George Monbiot
FT October 26 2009 Europe does not need a big shot By Gideon Rachman
The Guardian, Wednesday 28 October 2009 Two people are needed to get Europe's voice heard in the world. And it is the other one who is more likely to be British Timothy Garton Ash
FT October 28 2009 Blair is the wrong man for EU job
CSM October 29, 2009 EU presidency would be bully pulpit for Blair By John Hughes
(コメント) イギリスの元首相、トニー・ブレアがEU大統領になるべきか、論争が続いています。
Charles GrantはEUを強化すると考える支持派、Henry Porterはイラク戦争の責任を重視する反対派です。ほかにも、3人の支持派、3人の反対派、が意見を表明しています。
Gideon Rachmanは、まだブレアのような指導者をEUが持つべきではない、と考えます。Timothy Garton Ashは、ブレアを支持する理由と反対する理由を示し、FTはブレアがイギリス国民のEU支持を強めることに失敗した点で反対します。
FT October 25 2009
The Fund should help Brazil to tackle inflows
By Arvind Subramanian and John Williamson
WSJ OCTOBER 27, 2009
The Big Mac's Currency Lesson
(コメント) ブラジルが資本流入を規制したことは、非常に重要であり、象徴的である、とArvind Subramanian and John Williamsonは強調します。
新興市場への大規模な資本流入がバブルとその破たんをもたらし、金融危機の引き金になると理解されたなら、資本流入に課税し、規制することは支持されるべきです。課税が免れるという理由で、税制を否定するのは愚かであり、適当な課税方法や規制の在り方を助言するべきでしょう。そして何より、資本規制は「市場に反する」というマイナスの烙印を押され、市場で大きな不利益を被ることが、望ましい資本流入対策を採れなくしています。
IMFは、資本自由化をイデオロギーとして提唱し続けた歴史を反省し、むしろブラジルの資本規制を支持し、協力するべきだ、とSubramanian and Williamsonは主張します。
SPIEGEL ONLINE 10/26/2009
Interview with Charles Krauthammer: 'Obama Is Average'
(コメント) 保守派の論客Charles Krauthammerによる激越なオバマ批判です。・・・オバマは、6歳の子供でも言えることを、ユートピアニズムで実現できる、と思うような人間だ。オバマは、経済を破滅させ、国際機関に服従して自由を放棄する、・・・アメリカに破滅をもたらすだけの、天使を気取った凡人である。
もしかしたら、これは政治的ジェノサイドを呼びかける一種の「虐殺ラジオ」なのか? と思うほど容赦ない100%の死刑宣告です。アメリカの保守派はマッカーシズムを再現し始める・・・?
The Guardian, Monday 26 October 2009 Karadzic isn't the only one on trial Martin Bell
NYT October 27, 2009 Trying Karadzic
(コメント) ボスニアのセルビア人指導者として大量虐殺を指揮したとされるカラジッチRadovan Karadzicの裁判について。カラジッチ被告はヘイグで開かれた戦争犯罪法廷への出席を拒否しました。8000人のイスラム教徒がスレブレニカで殺害された事件も含まれています。
ミロシェビッチは、判決の前に心臓まひで死亡し、裁判が終えられませんでした。
FP Mon, 10/26/2009
Measuring the difference between Finland and Zimbabwe
By Will Inboden
(コメント) 何が繁栄をもたらすのか? 経済成長、有能な政府、幸福、平和、安全をもたらす諸国に共通の特徴とは何か? ロンドンのシンクタンクthe Legatum Instituteが発表した報告書2009 Prosperity Indexによれば、調査対象となった104カ国の中で、1位はフィンランド、104位はジンバブエでした。
上位を占めるのは北欧とアングロサクソン諸国です。アメリカは9位。特に、起業家、革新、民主的制度、で優れているため、衰退論を退けます。BRICsでは、ブラジル41位、インド45位、ロシア69位、さらに、中国は75位です。その理由は、民主的制度、人権、社会資本、が劣っているからです。また、パキスタン、イラン、ジンバブエ、スーダンは、たとえ経済が安定していても、安全保障問題や独裁政治において、低い評価となっています。
アメリカの外交政策に関して、1.内政と外交を分けるひつようはない。たとえば、医療保険制度の改革論争は、内外の重要課題だ。2.米欧の分断は誇張されている。共通の社会システム、価値観を世界に実現するため協力できる。3.テロとの戦いや独裁者の追放は、経済的機会や政治的自由、人的資本(教育・医療・福祉)などの長期目標を加えるべきだ。すなわち、世界の「フィンランド化」を目指す。
FT October 26 2009
Unions need to focus on jobs of the future
By Michael Skapinker
(コメント) 労働組合がストライキによって賃金を引き上げることは、今でも、国民から政治的支持を受ける社会改革の一部なのでしょうか? 銀行のボーナス・カットを求めたオバマ政権や郵政民営化を逆転しつつある鳩山政権にも、組織率の低迷に悩む(そして、派遣職員や任期付き教員の増加をなし崩しに受け入れる)大学教職員の労働組合にも、この論説が参考になるはずです。
・・・イギリスの郵便局員が2日間のストライキを行いました。郵便物は溜まり、到着は遅れ、学校の願書も届きません。ますますインターネットの使用が増えるでしょう。アマゾンは、郵便局に頼らず、もっと組合から自由な配達業者のサービスを拡大する、と顧客に説明しています。
イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、そして日本でも、労働組合の組織率は低下しています。組織率が上昇したのは、フィンランド、デンマーク、スウェーデン、ベルギーだけです。それらの国では、労働組合が政権に参加しており、失業保険が施行されています。
「私はこれを喜んでいない。独立した労働組合は自由な社会の印である。いかなる独裁国家もそれを許さない。」と、Michael Skapinkerは書きます。
組合の衰退は、企業重役の報酬が爆発的に増大する傾向と併存しています。その原因は、新規雇用者が参加しないこと、若者の文化的な変化、を指摘します。インターネットで情報を得て、何でもそろえる世代には、組合に入って組合費を支払い、しかも長時間の会議に拘束されるのは馬鹿げています。彼らの多くは短期・一時的な雇用です。
労働組合とは、彼らの親たちの世代が守る遺物でしかありません。組合が存在する理由は今も強いけれど、現実の変化に合わせて変化しなければならない、と考えます。マイクロソフトの一時雇用労働者も参加し、インターネット上で加入を呼びかけ、労働者たちの再訓練と新しい雇用への適応を助けねばなりません。
Oct. 27 (Bloomberg) Four Ways to Pull an Economy Out of Recession Matthew Lynn
NYT October 27, 2009 The Case for More Stimulus
FT October 27 2009 How mistaken ideas helped to bring the economy down By Martin Wolf
FT October 28 2009 How to avoid a repeat of the Great Crash By Peter Clarke
(コメント) 不況からの回復を政策が助けるには何をするべきか? ・・・当然、さまざまな論説があります。
CSM October 27, 2009
An American decline would undermine global security
By Steve Yetiv
(コメント) アメリカが衰退すれば、世界の安全保障は低下する。中東で、アジアで、テロ、核拡散、石油、自由貿易、・・・アメリカの果たす役割は重大です。中国が、あるいは、主要諸国の協力が、部分的に補うとしても、アメリカが衰退することを願い、それに加勢するより、21世紀もアメリカが役割を果たしてくれる方がよい、と主張しています。
The Times, October 28, 2009
Three cheers for the death of old economics
Anatole Kaletsky
The Guardian, Wednesday 28 October 2009
A new economics in an imperfect world
Joseph Stiglitz and George Akerlof
(コメント) ジョージ・ソロスが設立したINET(Institute for New Economic Thought)は、数学に頼った経済学の失敗を顧みて、異なる伝統と分析方法を追求するものを助けています。それを紹介するAnatole Kaletskyは、サッチャー=レーガンの政治革命が利用した経済学の三つのアイデアを批判します。すなわち、1.合理的期待、2.効率的市場、3.人間行動の数学モデル、です。
政治家たちは、社会を改造する免罪符を得たようなものでした。所得の不平等、産業の解体、起業家や銀行の重役たちが得る莫大な報酬、その他、社会が避難してきたことを、市場の「合理的な」結果として受け入れさせたからです。それは政治的なテーマではなく、科学の非人格的な問題とされました。
しかし、そのような意味で、アダム・スミスやケインズ、ハイエクは、決して経済学者(数式を並べて、計量モデルで予測する技術者)ではなかった、とAnatole Kaletskyは指摘します。
Joseph Stiglitz and George Akerlofも、INETに賛同しています。・・・「アイデアが重要だ。」
WP Thursday, October 29, 2009
(コメント) ロシア、チェチェンの人権活動家たちを襲う政治的殺人について。
コーカサスのイングーシ共和国における治安部隊の暴行を批判したMaksharip Aushevは、白昼の高速道路で自動車を運転中に停止させられ、銃弾を浴びて死にました。その2か月前には、隣国チェチェンで子供のために慈善活動を行う団体の責任者であったZarema Sadulayevaが、その夫とともに射殺され、自動車のトランクに詰め込まれていました。7月15日、チェチェンでもっとも有名な人権活動家であったNatalya Estemirovaが殺害された事件に続くものです。1月19日には、クレムリンからわずか数ブロックの繁華街で、人権擁護の弁護士Stanislav Markelovと、ジャーナリストのAnastasia Baburovaが殺害されました。3年前の同じ月には、Anna Politkovskayaが殺害されたのです。
彼らに共通するのは、チェチェン、イングーシ、その他のコーカサス共和諸国で、ロシアの治安部隊が無辜の市民に対して行う非合法な殺人、拷問、強姦について、責任を追及していたことです。プーチンはこの国家が支援する殺人部隊を止められるけれど、沈黙を続けています。メドヴェージェフはわずかに注意を払いましたが、影響力を持ちません。
・・・スターリンの時代以来、これほど政治的殺人があからさまで、ありふれたものになり、恐怖に満ちたときはなかった。
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The Economist October 17th 2009
The war in Afghanistan: Obama’s war
Afghanistan and Pakistan: Obama’s faltering war
Lexington: To surge or not to surge
(コメント) オバマがアフガニスタンやパキスタンの戦争に次第に行き詰まり、深く関与するしかなくなっていく現状について、さまざまな意見と選択肢を整理しています。たとえ井戸を掘っても、それが従来からの水利関係の権利や支配を侵して反発を買う、という指摘があります。単なる戦闘ではなく、住民への説得と彼らの意志をめぐる獲得競争です。
「増派するべきか? せざるべきか? ・・・それが問題だ。」 オバマはハムレットだ、と保守派が批判します。
The Economist October 17th 2009
Currencies: Lessons of the lat
Latvia, its neighbours and eastern Europe: Baltic brinkmanship
Brazil’s recovering economy: Juggling technocrats and party hats
(コメント) 小国ラトビアの通貨・経済危機は、バルチック3国、さらに東欧諸国にとって、EU金融危機処理の実験台となります。これが失敗すれば、危機は各地で深まるでしょう。
一方では、香港のように固定レートを維持したまま、賃金や物価を下げることのできる弾力性を実現するのでしょうか? あるいは、経済危機や失業の圧力で、切り下げ(とデフォルト)を余儀なくされるのでしょうか? もし今後も資本流入を前提に経済運営を考えるなら、デフォルトや法の改正は排除されます。
あるいは、EU規模で、さらには、ブラジルのように国際規模で、資本移動や通貨危機に対処する合意されたルールをEUやIMFが示し、それに依拠した政策として市場を規制することでしょう。
The Economist October 17th 2009
Battle of the clouds
Trade unions in Canada: All struck out
Postal strike: On the brink
Russia: Soviet words and deeds
Economics focus: Reality bites
(コメント) クラウド・コンピューティングがどのような世界を拓くのか、情報であれ、金融であれ、もっと多くの人に利益をもたらし、危機を回避・緩和できるような仕組みが、並行して、築かれるように要求・監視できませんか?
他にも面白い記事として、カナダのストライキ。イギリスの郵便局のストライキ。そしてロシアの政治論争・・・クレムリンの真向かいに建つケバブ・レストランが、反ソビエト(反対側に立つから)、というジョークの通称を正式な店名にして、最近のプーチンが助長した極右メディアや団体に攻撃され、ソ連時代を賛美する諸勢力と批判派との論争になった事件。
政治と制度が重要です。Economics focusのノーベル賞受賞者に関する要約が秀逸です。