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IPEの風 11/2/09

中国とインドとの激しい敵対を示すKapil Komireddi論説を読み、これも現実か、と納得します。領土問題や歴史認識、政治的価値・イデオロギーの違いを克服できる対話と信頼を築くことのできる政治家・思想家の時代が、アジアにも待たれます。

政治家・政策担当者の感覚は、それぞれの時点で有力な関係者が示す態度、さまざまな強い意見に影響されるでしょう。支持者からの不満や要望が、彼らの意思決定に作用します。本棚で、『90年代の証言 宮澤喜一 保守本流の軌跡』(五百旗頭真・伊藤元重・薬師寺克行編、朝日新聞)を見つけて、読み始めました。

1章、バブル経済の崩壊。第2章、アメリカとの貿易摩擦。第3章、景気回復への努力。・・・現代日本を形成した時代、その政策を決めたエリートたちの思想や政治的背景を知りたいです。

今なら、その後にバブルの崩壊が起きたことで、プラザ合意後、円高・為替レートの関心に経済政策を支配されない方がよかった、ブラック・マンデーによる株価下落に対しても、金融緩和を続けるより、もっと地価や株価の長期的水準に注意するべきだった、と多くの人が言うでしょう。

今なら、その後の長引く景気低迷やデフレを避けるために、銀行の不良債権を早期に、国家が強制的に(国有化や合併、公的資金で)処理し、財政支出による景気対策を採る場合にも、経済構造の転換(貿易・農業・金融・高齢化・・・中国!)を促すのに、もっと効果的な方法で行うべきだ。また、消費税の引き上げを急ぐべきではなかった、と(少なくとも誰かが)言うでしょう。

意外なほど、アメリカとの貿易摩擦、そしてドル安・円高を促すプラザ合意は、日本(大企業と政府)がアメリカ(大企業や失業者、政府)の苦境を和らげるために同意したことだ、と宮澤氏は明言します。また意外なほど、クリントン政権が求めてきた「管理貿易」や「数値目標」を、強く否定します。中国への最恵国待遇に関しても、民主化や人権問題をまったく無視します。

宮澤喜一、という保守系政治家が亡くなってしまったのは、非常に残念な気がしました。自分が関わった政策転換(プラザ合意の経緯や円高対策、バブルの破裂、日銀との関係、株価の下落に対する政府の財政支出、金融改革、また日本銀行との関係など)について、もっと多くのことを書き遺すべきではなかったか、と思います。

しかし、宮澤氏は国際派・知性派として知られています。多くの日誌や記録、原稿を残しているのではないでしょうか。それらをもとに、この時代を再現する研究を読んでみたいです。

そして文化の日。講義もない、うれしい祝日です。ブックオフまで自転車に乗って、『鬼平犯科帳』の文庫24を探しに行きましたが、残念、見つかりません。藤沢周平も、山本周五郎も、読んだものばかりでした。それなら、スパイ小説か、ハードボイルド、SF、ミステリー、いっそノンフィクションでも、と探すうちに、竹中平蔵の『構造改革の真実 竹中平蔵大臣日記』(日本経済新聞社)を買いました。・・・違う平蔵になったわけです。

なぜ買ったか? ちょうど読んでみたいと思っていた、政治家の日誌、という記述のスタイルが目に留まったからです。ネオリベラリズムと一括して批判されることもある小泉・竹中の構造改革論が、政治の世界では何に支配されていたのか、また経済学者としての説明とどのように一致し、あるいは、矛盾を秘めているのか。郵政民営化を逆転させる鳩山政権の意味を考えるためにも、その誕生過程を知りたいと思いました。

夜は、NHKスペシャル「永田町 権力の攻防B 小泉純一郎と小沢一郎」を観ました。前半は分かりやすく、後半はバラバラな印象でした。今の民主党政権が目指すもの、政治思想や、目標とする社会モデルは、未だ明確でないと批判します。そして、小泉政権と鳩山政権とがオーヴァーラップして見えることに、今さらながら、驚きます。閣僚たちはもっと説明しなければならない、と私も強く思います。NHKQuestion Timeを午後8時から放映してください。前半は日本の政治家に質問し、後半は世界の同様の番組を紹介します。

政治家個人も、政策も、政治システムや内外の制度も、時代の条件に照らして、人びとの関心、不安、熱意、願いなどを吸収し、権力の容器(外殻)となって現実を動かします。宮澤・谷垣のリベラルな保守本流。小泉・竹中のネオリベラルな改革ポピュリズム。安倍・麻生の反共ナショナリズム。鳩山政権の友愛社会的反自民・保革連合。・・・次の容器は?

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