IPEの果樹園2009

今週のReview

10/12-17

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

イランとの交渉、 日本の円高、 IMF専務理事Strauss-Kahn、 ドル安が進む、 社会資本・教育への投資、 アジアの地政学、 中国の土地市場、 ユーロ圏の不安、 ブレア大統領、 アイスランドとラトビア、 携帯電話と社会的革新

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


WP Wednesday, September 30, 2009

Economists for an Imaginary World

By Harold Meyerson

(コメント) 「自由市場」を崇拝する経済学者は、偉大な経済学者の別名(ハイル・ブローナーがスミス、マルクス、ケインズ、シュンペーターを称した)、「世俗の思想家たち」に値しない、とHarold Meyersonは考えます

彼らは、コペルニスク以前の天文学者と同じように、内部では整合的な、素晴らしい理論体系により宇宙を説明した。それは地球を中心に星々が回転する、美しい体系であった。しかし、虚偽の科学であり、ガリレオがその確信から自由な視点を示した。

シカゴ学派に代表される自由市場の経済学を批判して、クルーグマンやスキデルスキーが強調するように、今や、ケインズの市場観が再興されています。しかし、問題は彼らが間違いを認めないことです。数学的な正確さを疑わず、正しい数値が手に入れば何でも正しい価格が示せる、と考えます。彼らはバブルや熱狂、狂気を扱いませんでした。モデルの中に存在しないのです。

現在、すべての主要諸国で民間需要の急速な減少を政府が補っているとき、ケインズだけが正しいことを指摘していたように見えます。しかし、経済学はまだ、その教会に迷い込んだガリレオを無視し続けるのです。・・・歴史学や心理学を学ぶつもりはない?


LAT October 1, 2009 Defusing Iran

(コメント) イランを扱うことに単純な答えはない。しかし、外交が最善の選択肢だ。

イランが核武装するのを防ぐためには、イスラエルとパレスチナとの和平が進展する方がよい。しかし、その望みは薄い。また、国連安保理は弱められた制裁を繰り返してきた。それを強めるには、ロシアと中国の支持が要る。彼らは(反米の)イランが核武装しても脅威を感じていない。むしろ、強い制裁は彼らの経済的利益を損ない、もし制裁を受けたイランがその報復に(ロシアと中国の)国内イスラム勢力による反政府活動を支援したら、大きな脅威になる。

こうして外交には成果がなく、また、イランの核施設を空爆することも効果は疑わしい。せいぜい計画を遅らせるだけだろう。一方で、右派はもっと強い姿勢で交渉するべきだ、と言う。しかし、ブッシュ政権の8年間は何の成果もなかった。他方、左派は(ニクソンが中国にしたように)もっと交渉の強い誘因(良い条件)を示すべきだ、と言う。しかし、反米を掲げるイランが宥和できるという保証はない。

こうして、アメリカ政府は飴と鞭を使い分ける政策を続けるしかない。正しいときに、正しい同盟国を見出して、イラン国内の反体制派とも連携し、イランの核武装を防ぐべきだ。

それでも失敗すれば、外交に代えて、核兵器を握った宗教指導者が戦争を起こす危険に協力して対抗する準備が要る。

LAT October 1, 2009 The power, and threat, of Iran By Alastair Crooke

Asia Times Online, Oct 3, 2009 October surprise in US-Iran relations By Kaveh L Afrasiabi

FT October 2 2009 Patient diplomacy opens door to Iran

WP Sunday, October 4, 2009 The Coming Failure On Iran By Jackson Diehl

NYT October 3, 2009 Negotiating With Tehran

IHT October 6, 2009 Iran Assumptions By H.D.S. GREENWAY

(コメント) イランの核武装が地域や国際政治に及ぼす影響をめぐって、それが何を意味し、アメリカや西側は受け入れるべきかどうか、議論しています。

オバマ政権が入国を認めたイランのモッタキ外相は、ワシントンで、平和的な核エネルギーの利用はすべての国の権利である、と主張しました。ジュネーブでの交渉に真剣に望む準備として、両者の意図を疑う余地はないでしょう。そして、IAEAによる査察で一歩前進した、という形の終わり方で、交渉の継続を望んだわけです。

アメリカとロシアが交渉姿勢において協力した、というのも重要だったでしょう。イランはロシアとフランスの施設でウランを濃縮し、平和的な研究に利用すると合意しました。これによって双方が時間を得たのだ、とFTは評価します。

全く悲観的な、交渉に否定的な意見もあります。Jackson Diehl4つの選択肢、1.交渉も、2.制裁も、3.軍事攻撃も、4.反政府勢力への支援も、すべて無駄だ、と考えます。それに代わるのは、イランに対する「封じ込め」の国際協力体制を築くことです。

・・・あるいは、イランの核武装を受け入れる国際安全保障を考える余地はないのか? 結局、イスラエルも、パキスタンも、インドも、アメリカは核武装を認めているのだから。

H.D.S. GREENWAYは問います。「イランの核武装は必然的に中東における核軍拡競争をもたらすのか?」 シーア派のイランが支配することを嫌うスンニー派のアラブ諸国が軍拡競争に入る? しかし、イスラエルが核武装したとき、それは起きなかった。

「ヒラリー・クリントン国務長官は、かつて、アメリカの核の傘を中東の同盟諸国にも拡大しよう、と示唆した。」・・・ちょうど日本にしているように、です。そうであれば、イランが核武装しても、中国が核武装しているように、中東地域の安全保障はバランスを維持できるのではないか?

イランに対しても、かつてソ連がそうであったように、核の抑止力は効果を発揮するだろう。完全な核の報復が確信されれば、核攻撃は選択肢から排除される。また、イランが核兵器をテロリストに流して、アメリカの核テロが起きる、と恐れるべきだろうか? なぜ、規律のないテロ組織に核を渡すのか? むしろ、パキスタンの方が危険ではないか?

核兵器製造の知識は広まっている。イランを、その核開発問題だけでなく、異なる関心を持つ国家として国際体制に組み込むことで、唯一、核軍拡競争を回避できる。そして、急速に変化するイランが、将来、それ自身の機が熟したときに民主化するのを待つしかない、とH.D.S. GREENWAYは考えます

WSJ OCTOBER 5, 2009 Iran's Big Victory in Geneva By JOHN BOLTON

CSM October 07, 2009 Albright: Iran nuclear shift shows Obama's policy is working

The Guardian, Wednesday 7 October 2009 It's not just about Iran Hans Blix

(コメント) JOHN BOLTONは、ジュネーブの交渉がイラン側の勝利に終わった、と考えます。合意の細部はイランに都合よく曖昧なままであり、明確に期限もありません。こうした時間を稼いで、イラン政府はウランの濃縮を進めるのです。

オルブライト元国務長官が、オバマ政権の外交についてインタビューに応えています。初の女性国務長官として、外交における服飾・装身具の重要性を指摘します。外国と交渉する糸口になり、シグナルになり、確信を刺激したわけです。

イランに行くとき着る服はどうするか? ハトとワシを並べた襟章を付ける。そして服は緑の記事で、イランの民主化運動に敬意を表する、と答えています。

また、ポーランドやチェコ共和国、そしてNATOを私は強く支持しているが、ブッシュ政権の示したミサイル防衛計画は最初から間違いだった、と考えます。アフガニスタンの軍隊・国家再建にも支援を続けるべきだ、と答えます。

Hans Blixは、イランを説得するためにも、政治体制と安全保障を約束し、中東に非核地域を拡大することを求めます。しかも、そのアイデアは東アジアで、北朝鮮の非核化と関係正常化を交渉する姿勢としてアメリカや日本が示したのです。両者は、オバマが安保理の議長として示した核廃絶の方針に対応します。


FP OCTOBER 1, 2009

Saving the World from Trade Wars

BY PAUL BLUSTEIN

(コメント) 米中間でタイヤへの関税引き上げによる政治的な議論が過熱する気配です。中国はアメリカのタイヤ関税に対してチキンで報復し、さらに悪化すれば、アメリカ財務省証券を売って圧力をかけるでしょう。こうしたときこそWTOの紛争処理が重要であり、また、長期的な自由化のための多国間交渉を前進させるように、と主張しています。


FP OCTOBER 1, 2009

Think Again: Japan's Revolutionary Election

BY PAUL J. SCALISE, DEVIN T. STEWART

FP OCTOBER 5, 2009

The Japanese Greenwash

BY JEFF KINGSTON

WSJ OCTOBER 1, 2009

Tokyo needs to worry more about structural reform than the exchange rate.

Oct. 7 (Bloomberg)

Yakuza’s Series 7 Exam Is Harbinger for Economy

William Pesek

FT October 8 2009

Japan

(コメント) PAUL J. SCALISE, DEVIN T. STEWARTは、日本の政権交代が何も大きな変化をもたらさない、と断定します。政治家も、指導体制も、経済改革も、脱官僚も、日米関係も、東アジア共同体も、自民党と基本的に同じであり、革命的変化は起きない。

中国が人民元の切り上げや成長モデルの転換を求められていますが、日本はどうなのか? 円高に騒ぐよりも、もっと経済構造を変えるべきだ、と求めます。また、太陽エネルギーなどの利用は進まず、原子力発電は国民に嫌われています。為替レートも、成長も、温暖化ガスの排出量削減も、安全保障も、民主党政府は何を考えているのか?

日本の温暖化対策よりも話題を集めるのは、亀井静香です。銀行融資に対する利子支払いの凍結、日銀の金融政策と経団連への批判、によって、亀井ほど投資意欲を凍結する政治家はいないだろう、というわけです。


Asia Times Online, Oct 2, 2009

IMF beats gold-auction drum

By Antal E Fekete

FT October 2 2009

Man in the News: Dominique Strauss-Kahn

By Krishna Guha and Ben Hall

BBC 2009/10/04

Pledge for more IMF help for poor

By Steve Schifferes

The Guardian, Thursday 8 October 2009

The IMF's misguided new mission

Mark Weisbrot

(コメント) ドル安が顕著になって、ユーロでも人民元でもなく、金Goldへの投機的な資本移動が起きるのでしょうか? IMFでは、融資を拡大するために、その金を売却しましたが、金価格の上昇が起きて論争になっています。かつてアメリカ政府は、金準備を減らすよりも、金の先物を売る方がよいと考えました。それができるのは一時的で、最後にはだれもが敗北します。世界のすべてのペーパー・マネー管理者は、金Goldと戦っています。

IMFがわざわざ金を売却するのは愚かではないか? 金Goldは常に、弱者から強者の手に渡る、とAntal E Feketeは指摘します。IMFと金との歴史的な関係を考察します。金への逃避により、金は人びとに保蔵されて、政府が意図した国際金融秩序の再建を阻みます。その後も、金価格の高騰には、金融秩序に対する民間の不満が示されるわけです。

さて、今やIMFとそのトップ官僚Dominique Strauss-Kahnの名声は高まっています。その理由は、金融危機による市場の機能マヒと、主要国間の政治的意図の食い違い、それにもかかわらず国際協調を演出しなければならない事情がIMFにもたらした莫大な融資の財源です。

FTはDominique Strauss-Kahnの経歴や思想を詳しく伝えています。フランスの財務大臣を務めた後、彼はIMFがオーソドックスな安定化融資を見直す時期に、トップの地位を得ました。そして20081月のダヴォスで、IMFの官僚が決して主張しないはずの、積極的な財政刺激策を彼が主張したのです。4月には金融危機の拡大がもたらす銀行部門の損失を推定しています。

その後、危機の拡大につれて新興市場、特に東中欧諸国への融資を、通常の融資条件を無視して実行します。それは世界中で論争を刺激しました。イスタンブールの講演会で靴を投げられても、Dominique Strauss-Kahnは冷静に対応し、この抗議は、IMFがもっと多くの説明を大学や銀行、財界に対して行う必要を示している、と結んだそうです。

中道左派の思想を掲げ、社会党の指導者として政治的な戦略家でもあり、剛腕な側面がありますが、今は大いに評価を高めています。サルコジに代わって、大統領として?フランス政界への復帰を狙っている、とも指摘されます。

SDRsの追加配分を貧しい諸国に融資すること、IMFの分担金におけるシェアを変える制度改革についても、Dominique Strauss-Kahnは適役です。

Mark Weisbrotは、肥大化するIMFへの過剰な期待を否定します。IMFは世界中央銀行ではないのです。まず諸国にとって最後の貸し手になるのはIMFではありません。アジア通貨危機でも、アルゼンチンの危機でも、IMFは金融システムの崩壊を放置し(あるいは、悪化させ)ました。そして、今もIMF融資の条件は景気変動を緩和することを目的としていません(むしろ、不況を激しくしている)。

ラトビアについて、Mark Weisbrotは、アルゼンチンと同じ間違いを犯している、と批判します。すなわち、IMF融資は不況により維持できないような水準で為替レートを固定しているのです。むしろ、融資を受けるより通貨価値を減価させる方がよいだろう、と考えます。その場合、ユーロ建ての融資を行った銀行(とくに西欧の大銀行)が困るのです。IMFは今も、アメリカのような、裕福な諸国の銀行と政府によって方針を決めています。


Asia Times Online, Oct 3, 2009

Confusion is currency of the day

By Axel Merk

(コメント) 財政赤字の膨らむアメリカ政府は、これ以上の刺激策を採るより、ドル安やインフレを促して、輸出を増やし、住宅価格を引き上げることを望む状況にあります。もしドル安が進めば、ユーロ高や円高として、そのまま実現されるでしょうか?

残念ながら、ヨーロッパも日本も、ドル安を手放しで歓迎する事情はありません。不況であり、輸出部門や銀行部門への心配があるからです。日本の場合はデフレの心配もあります。

Axel Merkはここで、日本の政策が読めない、予測できない、と書いています。それが非常に危険で、高い代価をもたらす、と。

日本の新しい民主党政権は様々なポピュリスト的アイデアを実現しようとしています。特に、大企業への補助金ではなく、消費者の購買力を高める政策を目指します。日本政府は、どのように大企業より消費者の購買力を増やせるでしょうか? ・・・円高を放置する。

しかし、Axel Merkは、日本ほど予測できない政府はない、と不満を示します。莫大な公的債務が累積している上に、新政権は財政赤字を抑制しつつ、さまざまな公約を実現したのです。累積債務は長期的な視野で先送りできるか、というと、市場(投資家たち)の動きである以上、そうとも言えません。

民主党政権の動きは、官僚を引き下げて、政治家をトップに据える、フランス政府のような姿だ、と感じています。また、主要な支持基盤である労働組合は郵政民営化や郵貯バンクに反対しています。また、地方分権化を進める、と約束しています。

こうしたことは円高にとって何を意味するのでしょうか? 「発展途上国の通貨を分析するのは、簡単な仕事である。しかし、日本はそうではない。日本政府の様々なアイデアは、どう控えめに見ても、どうやって実現するのか見当がつかない。新政権ができて円高が進み、政府はそれを支持した。為替介入はしないと明言し、市場が為替レートを決めるようになった。」

その後も、円高をめぐる情勢は変化し続けています。円キャリー・トレードは減って、この過程で円債務が返済され、円高が進むのです。しかし、同時に世界は投機的な資金にあふれています。すでに金利の低くなったドルが利用できる事情から、投資家たちは予測できない円を嫌い、ドルによる投資を増やしている、と書いています。それはドル高(円安)を促す条件になります。

日本政府が成長を刺激するという期待は、為替市場介入を行わないという説明とともに、円高を進めています。しかし、政府の予想外の政策や日銀の介入が、それを阻止するかもしれません。世界金融危機が沈静化すれば、円が避難所である優位は失われます。

政府の行動と為替レートが予測しにくい結果として、円の為替レートは1ドル85円や80円の円高から、200円の円安まで、大きな不安定さを示し、日本の投資を妨げているのです。

FT October 7 2009

Obama under fire over falling dollar

By Edward Luce and Krishna Guha in Washington

The Japan Times: Wednesday, Oct. 7, 2009

The Chinese have a massive dollar problem

By KENNETH ROGOFF

FP OCTOBER 7, 2009

Debunking the Dumping-the-Dollar Conspiracy

BY DEAN BAKER

WSJ OCTOBER 7, 2009

The Weak-Dollar Threat to Prosperity

By DAVID MALPASS

FT October 8 2009

Asia steps in to support dollar

By Kevin Brown in Singapore, and Peter Garnham and Chris Giles in London

(コメント) インフレ懸念から金価格が上昇し、市場金利が上昇していることに、政治家や投資家は神経をとがらせます。過去6カ月間に、(貿易で加重した)ドルの為替レートは11.5%も減価しました。ガイトナー財務長官は、強いドルを維持するためにあらゆることをする、と語ります。

他方、ゼーリック世銀総裁は、アメリカ政府の債務が増えることは、中国政府などが警戒するように、今後もドル安を生じるだろう、と考えます。「ドルが支配的な準備通貨の地位を維持できると思うのは間違いだ。・・・他の選択肢が増えてくる。」 (中国など)ドルの債権者が、アメリカの企業や実物資産を買収し始める、といううわさに市場は動揺します。

KENNETH ROGOFFが注意するのは、ようやく中国もドルの外貨準備を蓄積することが好ましくないことに気付いた、という現実です。それは1970年代のヨーロッパや80年代の日本の経験と、どのように重なるでしょうか? ヨーロッパの貯蓄は、アメリカのベトナム戦争を賄い、さらに世界的なインフレーションによって失われました。

しかし、中国は心配しなくてよい、とKENNETH ROGOFFは主張します。なぜならG20はそのような事態を回避する合意であったからです。主要諸国がグローバル・インバランスの解消に向けて協調するでしょう。・・・中国だけが負担するのではなく。しかし、アメリカの貯蓄は回復するだろうか? 景気が回復すれば、再び債務を増やして消費に向かうのかも知れません。

むしろ中国の方が、市場規模を求めて輸出を促進してきた政策を転換できる体力をつけており、不均衡の再現をもたらさないような転換を実現する、と考えます。それはまた、中国自身が国民のために社会保障制度を整備し、底辺労働者や農村の貧困解消のために貿易黒字を使い、人民元高を享受することだからです。4兆ドルの外貨準備などほしくないだろう、と。

DEAN BAKERは、石油市場がドルによる取引をやめて、ドルへの需要が減少し、ドル暴落が起きる、という陰謀説を紹介します。アラブ諸国がドル安を嫌って、中国や日本、フランスなどと、ドルではなく人民元や円、ユーロでの契約を好むかもしれません。しかしDEAN BAKERは、石油が何で取引されても、ドルの需要には関係ない、と主張します。問題は中国の外貨準備です。

ドル安を嫌うという意味で、アメリカではなく、アジア諸国の中央銀行が(協力して?)ドルの買い支えを行うのは、奇妙な気がします。もちろん、彼らは自国通貨の価値が急速に増価するのを恐れているのです。しかし、今度はECBが、太平洋間で共謀してユーロ高を煽っている、と不満を示します。


FT October 2 2009

Europe’s centre-left suffers in the squeezed middle

By John Lloyd

FT October 4 2009

Prosperity rests on human and social capital

By Michael Milken

(コメント) 中産層は挟撃されています。グローバリゼーションや金融危機が、極端な貧困を解消し、富裕層の富を削ると予想されますが、長期的には、中産階級がますます消滅する傾向が続くのではないか? それは国民国家の政治システムを変質させるでしょう。穏健な社会民主主義、福祉国家、社会党や労働党、といったイデオロギーや制度が衰退する・・・? 逆に、保守的なイデオロギーや右派、軍は、富裕層とも結託し、不況や危機になれば左派的なポピュリズムと改革派の弾圧に強硬手段を行使します。

Michael Milkenの論説は、全く逆に、21世紀を人的資本と社会資本の形成、獲得競争にある、と見ています。各国(民族)は、教育、社会保障、科学的知識の利用、女性が活躍する機会、そして、すぐれた移民たちを引き寄せる魅力によって、この競争に勝利するのです。

教育への投資がどれほど重要であるかは、同じイギリス植民地であったシンガポールとジャマイカの発展を比較するとわかります。1960年代には、両方ともほぼ同じ人口と一人当たりGDP(現在の価値で2200USドル)にありました。その後、ジャマイカは農業、鉱業、観光によって生計を立て、シンガポールは教育に投資して、工業生産力と先端的な技術を得ました。現在、シンガポールの一人当たりGDPは39000ドル、ジャマイカの7倍以上です。

また、同様に、社会資本が重要です。投資家たちは何よりも、その土地の所有権と法の支配が強固であることを重視します。金融市場や雇用の回復も可能です。基本的な真実は変わりません。投資のための注意深い調査、リスクの高い投資には債務比率の抑制、マクロやミクロのレベルにわたる社会科学の広い知識、を求めます。

FT October 6 2009

Time to tackle America’s widening inequality

By Matthew Slaughter

The Guardian, Wednesday 7 October 2009

Inequality caused the 'broken society'

Anne Perkins

SPIEGEL ONLINE 10/08/2009

The Apprentice: Germany's Answer to Jobless Youth

By Jack Ewing

(コメント) 金融危機の後、各国がさまざまな改革を試みたが、今や重要な課題が残されています。それは所得分配の不平等です。たとえば、アメリカでは、不平等が保護主義の要求に結びついています。

しかし、労働者の熟練を高めることは容易ではありません。戦後の期間を経てようやく達成された水準だからです。むしろ、3つの方法が注目される、とAnne Perkinsは指摘します。1.多国籍企業を地域の発展に取り込む。アメリカは多国籍企業の世界的展開から、もっと多くの有益な影響を受けるように行動します。2.税制による所得再分配の適正化です。社会保険制度です。3.労働市場の積極的な支援です。

あるいは、ドイツは伝統的な徒弟制を新しい形で復権させるつもりです。新しい労働需要に制度が適応できるかどうか。


NYT October 3, 2009

Nobody Likes Us? Who Cares?

By JOHN R. MILLER

BBC 2009/10/04

US economic power 'is declining'

FP OCTOBER 5, 2009

Think Again: America's Image

BY PETER KATZENSTEIN, JEFFREY LEGRO, THE APSA TASK FORCE ON U.S. STANDING IN WORLD AFFAIRS

FP Tue, 10/06/2009

Obama's self-defeating "realism" in Asia

By Michael J. Green

(コメント) アメリカは世界で嫌われ、あるいは、必要とされていますが、アメリカの経済的な衰退は、その役割を次第に負担と感じるはずです。・・・いや、ゼーリックに言わせれば、グローバルなバランスの回復に向かって世界経済が多様化しているわけです。イスタンブールのIMF・世銀総会では何を話し合ったのか?

PETER KATZENSTEINたちの論説は、アメリカに関するイメージを扱います。オバマ効果にもかかわらず、アメリカの経済・軍事政策に対するグローバルな不満は強く存在しています。オバマへの強い期待感は、逆に、アメリカの利益や国内政治にしたがう外交政策に対する不満で、大きな揺り戻しの地震が起きる前兆でもあるわけです。

アメリカの地位は歴史的に変化しています。それは、信用と尊敬、によってあらわされる、と考えます。すなわち、アメリカは言ったことを実行できるか、アメリカは外国の政治家や民衆の気持ちを代弁してくれているとみなされるか、です。両方を得ることは難しく、マキャヴェリの格言が生きています。「君主は、愛されるよりも恐れられる方が安全である。」

アメリカの超越的なパワーが嫌われる、という意見に反対します。なぜなら、地域や時代によって関心が異なれば、アメリカのパワーへの好感や嫌悪感が異なるからです。また、その地域に主要なパワーが存在するか、それがどう振る舞うか、によっても異なります。アメリカの地位は、エリートと民衆の間でも異なります。

リンドン・ジョンソン大統領がベトナムから撤退できず、ブッシュ大統領がそのブッシュ・ドクトリンを転換してから急速に力を失ったように、アメリカの地位は非常に重要です。短期的な政策評価だけでなく、アメリカの国際的な地位と評価に与える長期的な影響を、外交政策の決定においても明確に分析しておく必要がある、と主張します。

Michael J. Greenは、オバマ政権の外交が、人権や民主主義を重視する側面と、ネオコンの価値に支配された外交からの撤退、という側面を混在させて、独裁国家に対する「ソフト・パワー」を損なうものだ、と考えます。


The Guardian, Sunday 4 October 2009 Obama's Kennedy moment on Afghanistan Simon Tisdall

NYT October 4, 2009 10 Steps to Victory in Afghanistan

(コメント) シカゴのオリンピック開催に失敗し、憔悴して帰国したオバマ大統領は、国内政治の苦境に直面していますが、最悪の報告をしなければなりません。

オバマも、ケネディーと同じように、この戦争を決定的に重要だと認めても増派を見送る決断をするのでしょうか? 選挙演説にもかかわらず、アフガニスタンでの戦争は敗北しつつあります。アメリカ軍は撤退して、アフガニスタンの軍隊を訓練し、情報を提供する役割にとどめます。タリバンやアルカイダは、特殊部隊や空爆、買収によって封じ込めるだけで、完全な征服を求めません。

反政府軍の掃討について。アメリカ軍は、国民から正当に支持されたアフガニスタン政府と協力して、公正な課税と信頼できる政府職員、財政当局、地方の裁判所、などを確立するべきだ、とDAVID KILCULLENは考えます。ほかにも、自爆テロの防止、敵を取り込み、警察を再建し、腐敗を終わらせ、・・・提言をNYTは紹介します。

IHT October 5, 2009 Now Comes the Hard Part By KAREN DONFRIED and MITCHELL B. REISS

The Guardian, Sunday 4 October 2009 Obama's war: a huge decision awaits Peter Preston

WP Monday, October 5, 2009 No Rush to Escalate By E.J. Dionne Jr.

FT October 5 2009 How the west can exit the Afghan quagmire By Maleeha Lodhi and Anatol Lieven

(コメント) それは政府や権力の崩壊をうかがわせる状況のようです。アフガニスタンが? そして、ホワイトハウスも? アメリカ政府は、勝利、を定義できません。兵士たちの命が失われているのに。しかも、単純に撤退することもできません。この地域の不安定さを90年代に放置したことが、9・11につながったからです。アメリカ軍の存在は、むしろタリバンへの支持を集めているかもしれません。そして、この論説はアフガニスタンの政治改革を提案します。

CSM October 06, 2009 A Muslim solution for Afghanistan By Arif Rafiq

WP Tuesday, October 6, 2009 If We Lose Afghanistan

The Guardian, Wednesday 7 October 2009 The war within the White House Olivia Hampton

NYT October 7, 2009 Beijing’s Afghan Gamble By ROBERT D. KAPLAN

(コメント) アジアの地政学が将来どうなっているか、はカブールの南部に見える、とROBERT D. KAPLANは主張します。アメリカ軍が治安を維持する土地で、中国の国営企業が豊富な地下資源を採掘する、というわけです。何百億ドルもの価値がある銅、鉄、金、ウラニウム、希少金属。NATOはアフガニスタン社会の安定化にできる限り関わることを避けており、その横で、中国は資源を求めます。彼らは世界で最も危険な土地に入るリスクをいといません。

つまり、アフガニスタンにおいて米中の利益は一致したのです。中国はアフガニスタンの資源を採掘することで、住民には雇用を、政府には税収をもたらします。アメリカはもはや極端な理想を求めず、最低限の治安維持に絞って活動しています。道路やエネルギーのパイプライン、インド洋からの物資搬入、など、中国の要求と一致します。こうして、アメリカはアルカイダやタリバンを相当し、中国は資源と地政学上の地位を得るのです。

問題は、アメリカ兵が命を落としている横で、中国企業が利益を得ていることです。アメリカ政府は脱出戦略に殺到し、中国政府はとどまって利益を上げることに殺到します。さらに、・・・とROBERT D. KAPLANの想像は続きます。パキスタンをイスラム勢力は支配すればどうなるか? インドは両側からイスラム勢力に攻撃されることを恐れるでしょう。また、ロシアがこの地域に進出すればどうなるか? こうしてアメリカは、意図せずに、広大な帝国の守備隊を担います。

NYT October 9, 2009 An Islamic Solution By ABOLHASSAN BANI-SADR

(コメント) あるいは、アメリカは自由主義を支持するイスラム諸国の支援を得て、アフガニスタンの秩序回復を委ねるべきでしょうか?


NYT October 4, 2009

In China, the Red Flags Still Fly for Mao ...

By KANG ZHENGGUO

NYT October 4, 2009

... But Deng Is the Leader to Celebrate

By EZRA F. VOGEL

(コメント) 作家、KANG ZHENGGUOの語る、何度かの建国記念日の追憶が興味深いです。建国60周年の中国についても、彼は書きます。

「・・・何千、何万の警察官とボランティアが治安を維持するために送り込まれた。共産党は天候を制御しようと試みたし、ハトが飛ぶのさえ管理しようとした。反体制派は監視下に置かれるか、投獄されていた。私は過去30年間に中国の物質的に大きく前進したが、毛沢東が今も明らかに共産党の家父長である、と思わざるを得ない。」

ハーヴァード大学のEZRA F. VOGEL教授は、真の革命を祝福されているのは30年前のケ小平だ、と書いています。彼は西側の助言を聞くことのできる人物でした。

Oct. 5 (Bloomberg)

Red Miniskirts Eclipse Mao Jackets at China Bash

William Pesek

FP Mon, 10/05/2009

Is China "acting like a great power?"

Stephen M. Walt

(コメント) 毛沢東の肖像をプリントしたジャケットよりも、赤いミニスカートが人気でしょう。それは中国が達成した成果です。中国の成長モデルと起業家精神は、3億人を貧困から抜け出すことに成功しました。しかし、まだまだ多くの課題が残されています。

William Pesekは、14兆ドルのアメリカ市場が縮小するときに、それに依存せずに成長する道を見出すこと、これまで豊かになった諸国が経験しなかった複雑な成長過程で経済危機を回避すること、を指摘します。そのためにも中国は、人民元の取引を自由化(金融市場を開放)し、貧富の格差を抑制し、言論や情報に対する統制を廃止しなければなりません。

The Japan Times: Tuesday, Oct. 6, 2009

Challenges for China concern political future, not economics

By BRAHMA CHELLANEY

FT October 7 2009

Seeds of change in rural China

By James Kynge

(コメント) BRAHMA CHELLANEYは、中国が、世界市場による成長と国内権力の独占という、矛盾した秩序の下で、パワーを急速に拡大している、と指摘し、今後、極端なナショナリズムに向かうか、台湾や韓国のような劇的な民主化を平和裏に行うか、選択に直面する、と考えます。国内秩序の転換を成功させるのは、ある程度まで、主要諸国が台頭する中国を受け入れる仕方によるでしょう。

1989年の天安門事件を、主要諸国(特にアメリカの歴代大統領)がどのように受け入れ、世界市場に組み入れることで、現在の矛盾した秩序を実現可能にしたか、という問題と重ねます。

James Kyngeは、貧しい農村の生活が土地所有権の売買によって大きく変化し、生活水準を向上できるかもしれない、と指摘します。それは単に土地の売買を自由化するだけでなく、農民に銀行融資など、金融サービスを利用する途を開くのです。農村でも融資を受けてニュー・ビジネスを始める者が増え、土地が集約化されて大規模農場や近代的なコングロマリットが進出し、病気になっても保険があれば病院で治療を受けられます。

農地は「概ね不活発な資産」a largely inert assetであった、とJames Kyngeは書きます。それが、1990年代に住宅市場を導入したように、活発に取引されて、人びとに資産として活用され、ブームをもたらすのです。市場によって組織された労働が「生産的労働」である、というアダム・スミスを思い出します。

そして、金融市場の不安定性やバブル、所得分配の不平等を、今、世界中が問い直しているように、中国も問われるでしょう。

IHT October 7, 2009

Taiwan and China

By PHILIP BOWRING

WSJ OCTOBER 7, 2009

Microfinancing China

By VIKRAM AKULA AND TARUN KHANNA

(コメント) 台湾とマイクロファイナンス。台湾は次第に香港化して行き、中国の農村は次第に都市化・近代化して行きます。


FT October 4 2009

Diverging deficits could fracture the eurozone

By Wolfgang Münchau

FT October 5 2009

Europe’s plot to take over the world

By Gideon Rachman

(コメント) Wolfgang Münchauは、ドイツの新しい保守連立政権が減税や改革をある程度進め、金融システムの再建にも成功する、と楽観します。他方、ユーロ圏は政府間の対立が激しくなる、と恐れています。一方は、フランス。スペイン、イタリア、ポルトガル、ギリシャ。他方は、ドイツ、フィンランド、オーストリア、オランダ、です。

フランスのサルコジ大統領は、マーストリヒト条約が示す2015年の財政目標を無視する、と宣言しました。他方、ドイツは財政健全化を進めています。独仏のユーロ圏における財政政策の協力関係が放棄されたのです。

Wolfgang Münchauは、独仏の双方にマーストリヒト条約合意をめぐる失敗があった、と考えます。財政赤字をGDPの3%に抑える、というルールだけでなく(それは修正されました)、ドイツの憲法問題やフランスの今回の発表は、双方が条約を無視しています。フランスは芸税政策を多用して、サプライサイドの景気浮揚を試みるでしょう。それは同一通貨圏内の実質的な切り下げ競争です。

10年以内に、とWolfgang Münchauは予言します、ドイツ国内でユーロ圏を離脱した方がよい、という議論が強まるだろう、と。

Gideon Rachmanは、G20がEU方式の政治交渉を採用している、と考えます。G20はG2(米中)でも、G3(米中欧)でもなく、EU政治を国際政治にもたらす「トロイの木馬」である、と。

WSJ OCTOBER 4, 2009

How the EU Got the Irish to 'Yes'

By ANNE JOLIS

CSM October 05, 2009

How the Irish 'yes' vote helps Europe – and the US

By Stuart Eizenstat and Anthony Luzzatto Gardner

SPIEGEL ONLINE 10/06/2009

Brussels Riddle: Will Blair Become Europe's First President?

By Carsten Volkery

FT October 6 2009

Blair would be a good choice for Europe

By Charles Grant

The Guardian, Thursday 8 October 2009

Would Europe back President Blair?

Simon Tisdall

(コメント) リスボン条約によって、EUは大統領と外務大臣を得ることになり、アメリカとの交渉や国際政治における発言力を増すでしょう。もちろん、EU内の統一が必要です。

トニー・ブレアがEU大統領になることは、それを促すでしょうか?  Carsten Volkeryの記事は、ヨーロッパ市民たちがジョージ・ブッシュの友人であったブレアを自分たちの大統領とは思わない、と伝えています。ブレアは、1.小国の代表ではなく、2.加盟する27カ国の中でEUの制度(ユーロやシェンゲン協定、EU財政)を取り入れることが少なく、3.ヨーロッパ市民が反対する中で、アメリカのイラク侵攻に手を貸した。

Charles Grantによるブレア支持論は的確です。1.イラクに躓いたけれど、ブレアの政治家としての成果は素晴らしい。北アイルランドでも、中東でも、リスボン条約の合意についても。2.EUを国際政治の主役にできる。小国の政治家ではできない。3.ヨーロッパ市民にEUの仕組みや機能を語り、宣伝する偉大なセールスマンになれる。4.保守派とも協力できる。次のイギリスの政権が保守党によってEUに敵対しても、ブレアならイギリス国民に堂々とEUの役割を擁護するだろう。ブレアはイギリスにおいて保守勢力を取り込んできた。

ブレアが大統領であれば、EUを帝国のように示すことはないし、必要なら指導者たちの頭を叩いてでも合意を形成する指導力とアイデアを持っている。

しかし、もしドイツが反対すれば、ブレアはあきらめるしかないでしょう。


SPIEGEL ONLINE 10/05/2009

Germany Must Redefine Its Relations with the US

Guido Westerwelle

(コメント) ドイツの新政権がオバマのアメリカとどのような関係を築こうとするか、日本の新政権と類似性も多くあるでしょう。


WSJ OCTOBER 5, 2009

How the Fed Can Avoid the Next Bubble

By IAN BREMMER AND NOURIEL ROUBINI

(コメント) 今後の連銀の課題を要約すれば、1.財政赤字を貨幣化しない(ハイパーインフレを招く)。2.大幅な緩和状態からの出口戦略を実行する。3.(救済融資を繰り返したが)金融政策の独立性を守る。4.資産価格のバブルを回避する政策基準を示す。5.金融システムの監督能力を高める(システム・リスクの回避)。

しかし、「行うより言うは易し」である、と。財政赤字を金融緩和で貨幣化しないことは、景気の回復を頓挫させる恐れがあります。もし景気を重視して金融引き締めが行えないなら、次のバブルを回避するために、金融システムのリスクを監視する役割が重要になる、と考えます。政府は、同時に、金融機関が国際的な融資より国内融資を増やすように求めています。

こうして、効率的な金融市場の再生が、各国の重要課題になっています。連銀は、財政赤字や金融機関の救済から早く撤退し、正常化を進めることが必要です。「大き過ぎて潰せない」問題を解決するには、金融機関の準備やリスク管理、レバレッジの抑制が求められます。

金融システムの安定性を維持することで、中央銀行は物価の安定と成長とを実現できる、と。

Asia Times Online, Oct 7, 2009

How to disarm the liquidity bomb

By Martin Hutchinson

FT October 7 2009

The crisis demands we finish what we started

By Christine Lagarde

FT October 7 2009

New monetary target

By Tom Braithwaite

(コメント) Martin Hutchinsonの描く正常化の過程はもっと大きな苦しみと危険を意味しています。金融危機後に何をするべきか、Christine LagardeTom Braithwaiteの論説も、金融システムと政策の将来に関わります。・・・連銀を廃止せよ、という叫声に押されて。


FT October 5 2009

Iceland’s steamy waters

By Andrew Ward

(コメント) 主要銀行の破たんから1年たって、アイスランド経済は回復したでしょうか? 富豪たちの資産は、部分的であれ莫大なものが、生き残ったようです。Bjorgolfur GudmundssonJon Asgeir JohannessonLyour and Agust Gudmundsson、そして、彼らのゴッド・ファーザーであるオッジソンDavid Oddson元首相もアイスランドの有力新聞の編集者に就任し、政治的復活もありそうです。特別検察官たちは金融犯罪を40件以上捜査しましたが、彼らは免れています。

Johanna Sigurdardottir首相は、経済の安定化と回復を強調します。失業率は7.5%であり、アメリカよりもはるかに低いです。為替レートの減価で輸出が刺激となりました。しかし、GDPの10倍に達した対外債務はどうなったのか? アイスランドの回復に向けた苦痛は、まだ始まってもいないのです。51億ドルのIMF融資の条件である財政赤字削減が始まり、住宅融資の返済猶予も終わります。

政府は地熱の利用による産業再生、EU加盟やユーロによる安定化を推進します。しかし、アイスセーブの預金払い戻し問題に対する国民の反発、それが条件となっているIMF融資やEU加盟への反対は強く、Sigurdardottir首相の指導力を損ないます。アイスランド国民は非常に内向きになってしまい、a creeping “paranoia” in politicsが見られる、ロシアや中国に助けを求める主張も出ている、と伝えています。

FT October 7 2009

Fog in the Baltic

FT October 7 2009

Latvia / Nordic banks

(コメント) ラトビアも金融危機が懸念されていました。2010年の予算案をめぐって、ラトビア政府とIMF,EU、ノルディック諸国(特にスウェーデン)との論争a war of wordsが激しくなっています。住宅融資の多くをスウェーデンの銀行が行いました。ところがラトビア政府は、不況と債務に苦しむ国民を助けるために、住宅債務を住宅の市場価格に制限する法律を提案しました。それは為替レートのユーロに対する固定性も破壊します。


LAT, October 7, 2009

Dust-Up: Economic recovery and jobs

WP Wednesday, October 7, 2009

Recovering the New Deal Ideal

By Harold Meyerson

LAT October 7, 2009

Obama, labor's lackey

By Matthew Continetti

FT October 8 2009

US jobs subsidies

(コメント) 失業の増加に直面して、のアメリカ政府は一層の不況対策を行うべきでしょうか? 日本でも論争が始まっています。Dean Bakerは、労働者たちの責任ではない失業のもたらす弊害、子供たちの長期的な損失を述べて、ケインズの示した刺激策を支持します。他方、Maya MacGuineasは、雇用の回復に至る時間を短縮する利益と財政赤字増大のコストとのバランスを考えます。

Harold Meyersonは、「新しい正常化」を批判します。アメリカ経済は成長や雇用を生み出せるのか? 製造業の雇用が10人に1人しかいないアメリカで、高賃金の雇用は不動産や金融サービスで増えていました。それらが金融危機で破壊されたわけです。アメリカ経済はこの先、過剰消費や過剰債務に頼る高成長を回復できません。「新しい正常化」の経済は、もっと低い成長率と、もっと高い失業率を受け入れるしかない?

Harold Meyersonはこれに反対します。政府が投資し、雇用するべきだ、と。実際、テネシー知事はやりました。自分たちのWPA(Work Projects Administration)を実行したのです。それは社会主義の細胞ではなく、ニューディールの復活だ。

Matthew Continettiは、ペイリン支持の立場で、労働組合に肩入れするオバマを批判しています。FTは、景気回復に向かっているとしても失業者の増加が続く今、政府が雇用を正しく支援するべきだ、と考えます。そして、公的債務を増やさないように。


WP Wednesday, October 7, 2009

Russia's War on Words

By K. Anthony Appiah

(コメント) Anna Politkovskayaが殺されて3周年を記念する集会がモスクワでありました。チェチェンの人権問題を報道した勇敢なジャーナリストでしたが、そのアパートで銃弾を浴びました。ロシアでは多くのジャーナリストたちが暗殺されています。7月にはNatalya Estemirovaが誘拐され、殺されました。Estemirovaは、昨年、人権団体からPolitkovskayaを記念する賞を授与されています。

K. Anthony Appiahは、それがロシアの民主主義を阻む大きな問題であり、権力から独立した批判的なメディアがないからだ、と主張します。

地方のジャーナリストたちも例外ではありません。EstemirovaPolitkovskayaの葬儀で称えた人権団体は、その後、閉鎖されています。こうしたジャーナリストたちの暗殺が、ロシア政府の黙認や秘密警察の協力、隠ぺいによって、盛んに行われているのは明白です。ロシアは反対派を黙らせるために、もはや収容所を必要としない。テロで黙らせる、と。

ロシアのジャーナリストたちを守るために、私たちはできることをすべてしなければなりません。独立した言論なしに民主主義はなく、ロシアの民主主義は単にロシアだけの問題ではないから。

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The Economist September 26th 2009

The power of mobile money

Mobile marvels: A special report on telecoms in emerging markets

Financial innovation and the poor: A place in society

East Africa’s drought: A catastrophe is looming

(コメント) 携帯電話が新興市場どころかアフリカの経済や社会を変える、という話は刺激的です。経済発展を障害となってきたインフラの不足、教育や情報の不足、近代的な貨幣・信用システムや決済・融資のメカニズム、起業家の叢生、といった問題が一挙に動き始めます。

金融システムや金融革新と言えば、バブルや強欲や破壊的なイメージばかりが広まっているけれど、そうでもない、という特集記事を読みました。

東アフリカの干ばつや飢饉が周期的に起きるというのに、温暖化や政治システムの崩壊が加わって、その周期が短くなると指摘しています。金融危機は貧しい、飢える者への関心や支援も枯渇させます。


The Economist September 26th 2009

Baltic economies: Feeling a bit fragile

Hungary’s economy: Back from the brink

Buttonwood: Chucking the buck

Economics focus: Much ado about multipliers

(コメント) バルチック諸国やハンガリーの金融崩壊が東欧全体からユーロ圏に及ぶ、という警告は外れたようです。しかし、IMFやEUによる融資によって回避された危機が、各国政府による国際交渉の紛糾で再発します。ブームのときに政治腐敗を正せなかった諸国が、危機の処理について政治的な意志を示し、苦しい時期にも国民を団結させる、とは期待できません。

ドル危機のさまざまな背景を解説して、結局、アメリカが再構築した戦後秩序の前の時代にさかのぼります。また、政治家たちが景気刺激策でもめているけれど、経済学者たちも「乗数」がどの程度か、さまざまな条件や仮説が対立して結論が出せないのです。