IPEの果樹園2009

今週のReview

10/5-10

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

地政学と世界政府、 ピッツバーグG20、 中国建国60周年、 リスボン条約、 拡大版スイス、 円高日本の転換

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ただしBG: Boston Globe, CSM: Christian Science Monitor, FEER: Far Eastern Review, FP: Foreign Policy, FT: Financial Times, IHT: International Herald Tribune, LAT: Los Angeles Times, NYT: New York Times, WP: Washington Post, WSJ: Wall Street Journal Asia


The Guardian, Thursday 24 September 2009

A very foreign policy

Tristram Hunt

(コメント) マッキンダーSir Halford J Mackinderの地政学が今も外交政策の重要原理なのでしょうか? 特に、リアリストやネオコンは、同様の発想に向かいます。

1904年にマッキンダーは書きました。蒸気船、電信、機関車が世界を「単一の政治システム」に結びつけた。その結果、「地球のはるか遠くの隅で起きた社会諸勢力のあらゆる爆発が反響し合って、世界政治経済組織の脆弱な要素は砕け散るだろう。」 世界外交はゼロ・サム・ゲームであり、いかなる国も競争相手をたたきつぶすことで勝利を得る。

外交において倫理や美徳を考えるのはむなしい。重要なことはパワーであり、政治的空間を奪取し、保持することだ。歴史が示すように、最も重要な大陸はユーラシアであるから、世界政治の心臓部は東欧にある。東欧を支配する者はユーラシアを支配し、この世界島を支配する者が世界全体の支配者になる。・・・こういった幻想、もしくは、理念があったから、ドイツとロシアとが合同軍を結成する可能性についてイギリス帝国は怯えていた。ヒトラーはロシアと連携し、さらに征服しようとした。また、戦後のアメリカ外交を支配する「封じ込め」政策を築いたジョージ・ケナンも、同様の理念を抱いていた。「われわれの問題とは、ユーラシア大陸の軍事・工業力がまとまって、半島の利益、世界の他の大陸の利益を脅かすのを防ぐことだ。」

H.キッシンジャーもZ.ブレジンスキーも、地政学的支配の応用に徹していた。イラク戦争も、資源をめぐる中央アジアやコーカサスへの介入も、そうだ。

・・・東欧をミサイル防衛網の外に出して、ロシアの影響圏に戻る可能性を開いたことは、オバマ外交のあまりにも重大な失敗だ、とマッキンダーに従うペンタゴンのリアリストたちは不満を強めているのです。

FT September 25 2009

Obama’s age of atonement

By Christopher Caldwell

WP Monday, September 28, 2009

Obama the Gambler

By Fareed Zakaria

(コメント) Christopher Caldwellは、オバマの国連演説を批判します。アメリカ政府から見ると、現実について、グローバル化する世界の利益しか見えません。しかし、アメリカ以外の世界から見れば、それはアメリカの利益でしかないのです。

オバマは「世界政府」に向けて指導力を発揮したい、と考えます。自決権は、今や、協調として表現されます。「各国は国益を追求することを非難される謂れはない。けれど、今や、国益とは強調のことだ。」

オバマは、自分がブッシュの犯した過ちと無縁である、と主張します。だから、簡単に国際協調の指導者として発現しています。しかし、オバマはアメリカの大統領であり、アメリカの行った戦争や過ちから逃れられません。ブッシュ大統領は、少なくとも、イラク戦争が失敗と見なされるまでは、国民の多数に支持されていたのです。

オバマは、悔悟と補償の時代に向けて国民を導き、その費用を負わせます。アメリカは傍観者ではあり得ず、変化をもたらす指導者である、と。しかし、アメリカの行動は自然の法則ではなく、政治的な事実です。なぜアメリカが指導しなければならないのか? アメリカの正当性をだれが認めるのか?

オバマに言わせれば、もはや「国益」などないのです。それは幻想であり、われわれ人民は利益を共有しているのです。・・・こうした理想主義が、ヴェルサイユ条約や国際連盟、不戦条約などに横溢し、そして、次の世界大戦を招いたのです。「ナイーブ」外交のもたらす結果は、すでに予告されています。

Fareed Zakariaは、違う理解です。オバマの国連演説は、アメリカの右派を除けば、広く歓迎されました。これは、オバマの追求する計算されたリアリズムなのだ、と。・・・アメリカには協力する用意があり、国際機関に参加し、国際条約も守る。しかし、その代わり、他国は共通の問題を解決するためにアメリカを助けなければならない。アメリカだけが世界中で苦しむようなことは許されない。

アメリカに対する敵意は、アメリカが妥協を拒むことの安易な口実になっていました。2007年に、アメリカびいきのサルコジがフランス大統領になったとき、ライス国務長官は彼を助けるために彼女は何をすればよいか、尋ねたそうです。すると、サルコジは「世界におけるアメリカのイメージを改善せよ」と答えたそうです。

右派のいんちきリアリズムは、アメリカがロシアや中国と協力できないことを当然としていました。それぞれの国益があり、共通の利益を探すのはナイーブだ、と。しかし、それぞれの国益はあるけれど、共通する利益もあるのです。外交とは、関与の領域を拡大し、より安定した世界を築くことであるはずです。オバマはロシアと中国からNPT体制を強化する同意を得ましたし、ロシアはイランに対する制裁の強化に協力することを告げています。

他国を非難したり、侮辱したりするのは、強さを誇示する安易な方法です。イメージの戦いでは、タフで愚かな方が常に勝利します。しかし、オバマはアメリカ国民が、こうした武闘派・男性誇示の言説が外交ではなく、世界の舞台に通用しないことを理解するほどに、政治的に十分成熟したことに賭けているのです。

ますます多くの国が力を得て、自信を示す時代に、安全保障や経済的繁栄は彼らとの協力を必要とします。

LAT September 29, 2009

Twilight of Pax Americana

By Christopher Layne and Benjamin Schwarz

(コメント) 第二次世界大戦後の国際秩序は、パックス・アメリカーナと呼ばれたように、ワシントン中心の制度でした。それは政治的安定性とグローバルな開放型経済システムを実現しました。しかし、アメリカの富とパワーは次第に他国に追い上げられ、特に、今回の金融危機によって分散化が加速しました。

中国の台頭は、たとえその意図が破壊的でなくても、アメリカとその国際制度の基礎を掘り崩すでしょう。グローバルな勢力均衡は、徐々にではなく、突如として変化するのです。金融再建、景気刺激策、さらに、二つの戦争、社会保障、それらは長期的にアメリカの財政的な基礎を損なうでしょう。

すでに中国がドルを批判し、日本政府もアジア共通通貨を支持しています。アメリカの通貨は後退を強いられ、それを防ぐためには、アメリカは財政赤字の抑制や増税、高金利を受け入れるしかありません。アメリカの軍事費が大幅に減るとき、アメリカは国際安全保障への関与を制限し、パックス・アメリカーナも終わるのです。そして、世界貿易、金融統合、グローバリゼーションの時代も終わるでしょう。

アメリカはドルによって、銀行の最後の貸手であるだけでなく、最後の消費者でもありました。しかし、G20で世界が期待しているのは、アメリカではなく、中国やインドの市場です。資源においても、核兵器においても、アメリカが国際秩序を築く力は失われました。1930年代と同じように、パックス・アメリカーナの終わりには、世界資本主義の危機が続くのです。

グローバリゼーションは逆転し、ナショナリズムと重商主義が復活し、地政学的な不安定さが強まる。大国が激しく競争し、伝統的な国際政治が未来になる。


BBC 2009/09/24 The end of the Western economic era? By Helena Merriman

BBC 2009/09/25 Greater role for emerging powers

(コメント) リーマンブラザーズ破産後、『資本論』が売れて、資本主義の終わりを議論する者がロンドンにも増えました。John Gray はアメリカの指導力が尽きて、ソ連崩壊と同じように、政府と経済とを結びつけたモデル全体が崩壊した、と述べました。Fareed Zakariaは、重要なパワーシフトが起きている、と考えます。しかし、西側やアメリカは完全に地位を失うまでに至らず、植民地化や文化的な優越を示すことなく、他国と協力しなければならなくなる、と言います。

外交評議会のWalter Russell Meadは、この350年間、不断に金融危機は起きており、それでもリベラルなグローバル・システムの建設は続けられた、と指摘します。こうした革新を吸収する社会こそが、21世紀も重要なパワーの源泉であり続ける、と。他方、Niall Fergusonは懐疑的です。ワシントンやウォール街の示すモデルは疑われるでしょう。問題は、それに代わるモデルがあるか、ということです。そして、人びとは中華人民共和国を見るのです。確かに中国は今年も成長を維持します。しかし、中国経済(そして権力)を支えているのは「共産主義モデル」ではなく、1979年以来、彼らが導入してきた「市場モデル」です。

保守派のFrancis Fukuyamaが論じた、西側のリベラリズムは最後のイデオロギーである、という主張が間違いであったというより、その中心が東に移った、というわけです。・・・結局、『資本論』が売れても、読むには難解すぎるでしょう。

BBCは、世界経済のパワーシフトが、G8からG20へ、IMFの分担金見直しへ、向かうと考えます。G20は国際協調のための新しい制度です。G20により、不況を回避し、各国の経済運営に関する意見を交換し、成長戦略が重要であり、財政刺激策を早期にやめることは間違いであると合意し、将来の金融危機を警戒し、銀行部門の報酬について厳しくチェックします。

Sept. 25 (Bloomberg) Survival of Fittest Becomes Survival of Fattest William Pesek

(コメント) G20の成果、金融のジェットコースターを乗り切る経済を見たければ、ソウルに行けばよい。外国からの資本や外国市場への輸出によって成長を加速する韓国の成長モデルが、リーマン倒産で債務危機を避けられないと言われながら、今や急速に回復しつつあるからです。

しかし、それは政府と癒着した銀行や企業が急拡大する過程で、債務を保証される結果、モラル・ハザードを強めると批判されたはずです。今や、それは欧米にも広まっています。「結び付きすぎていて潰せない(being too interconnected to fail)」、あるいは、最も債務に依存している者が生き残る、というモデルです。逆立ちしたダーウィニズム。

William Pesekは、韓国が1997-98年に経験した激しい整理・淘汰を称賛します。当時、多くのサラリーマンが解雇されたことを家族に言えず、スーツを着て公園に集まっていた、と回想します。その後、現代自動車は高品質の自動車を輸出できる企業になり、GMは衰退しました。

The Guardian, Friday 25 September 2009 An alternative G20 model

SPIEGEL ONLINE 09/25/2009 Pittsburgh Summit: G-20 Relaunched as World's Top Forum By Gregor Peter Schmitz in Pittsburgh

(コメント) ピッツバーグ・サミットのG20コミュニケは予想以上に革新的アイデアを採用しています。すなわち、グリーン・ジョブと再生可能エネルギーへの経済転換を融資する。資本規制を肯定し、タックス・ヘイブンを取り締まる。銀行の部活、縮小、そして閉鎖も推進する。

本気でやる政治指導者たちが集まれば、予想以上にやれるかもしれません。

NYT September 25, 2009 Global Economic Challenges

NYT September 26, 2009 Global Economic Forum to Expand Permanently By EDMUND L. ANDREWS

WSJ SEPTEMBER 25, 2009 G-20 Agrees to Deal on Global Economic Policy By BOB DAVIS and JONATHAN WEISMAN

(コメント) G20は、1930年代の失敗を繰り返さないように、それは保護貿易主義や通貨政策の混乱(金融引き締めや切り下げ競争)を回避することを主要国が共通の目標として宣言し、監視し合うように、組織されたのです。

しかし、金融危機の再発を防ぐ、という目的は、より困難なようです。金融機関の整理や金融制度の改革は進みません。また、グローバル・バランスの回復というテーマで、米中(アジア)の不均衡や為替レートの調整も、具体的な解消策は容易に合意が形成されていません。その一方で、アメリカは中国からのタイヤ輸入に関税を導入し、各国の国民は財政赤字を気にしています。

米欧中の対立は、今後も国際的な行動を制約するのです。

BOB DAVIS and JONATHAN WEISMANは、むしろG20に牙がない(強制力を持たない)点を批判します。制裁や強制メカニズムがなければ、単なるステートメントに終わります。

もし日本と中国が一致して為替レートの調整と内需による景気拡大を宣言すれば、欧米は歓迎したでしょうか。

BBC, Friday, 25 September 2009 New world order, deferred Stephanie Flanders

BBC, Friday, 25 September 2009 G20: History and fudge Robert Peston

BBC 2009/09/26 Will tough new G20 measures work? By Andrew Walker

The Guardian, Friday 25 September 2009 Rich bullies, we need you Paul Collier

(コメント) Paul Collierは、グローバル・ガバナンスの性格を考えます。グローバルな問題に対応するには、一国の政策で足りないことがわかっており、共通の利益を実現する主要国が集まって行動するでしょう。G8は世界経済の管理にふさわしい規模を締めることができず、新しいG20がその行動と監視の主体になりました。

しかし、各国が主権を譲歩するようなことはないだろうから、Paul Collierは、G5(アメリカ、中国、インド、日本、EU)が本当の主体であって、G20でもG2(米中)でもない、と考えます。すなわち、理想主義的なグローバル・ガバナンスではなく、利益の共有する分野で、共同行動を取れるG5が支配する。世界の最も貧しい10億人が世界GDPのわずか1%しか占めていないために、この約60カ国は世界経済に影響を及ぼさない。193カ国の世界を、G5(EUには27カ国を含む)、G103、G60に分割する。そして、中間レベルのG103がフリー・ライダーの誘惑を強く持つ。

つまり、これが現実のグローバル・ガバナンスなのです。新しいG5には中国やインドのように貧しい国があるので、中間レベルのフリー・ライダーを買収するより牽制・処罰するだろう、と予想します。グローバルな問題について、その解決のための枠組みを示し、G20などで主要諸国を監視する。新G5がG103を強制するメカニズムを作ること、それが21世紀のガバナンスです。

FT September 25 2009 New body takes on economic leadership By Edward Luce in Pittsburgh

The Guardian, Sunday 27 September 2009 The G20 fantasy Mark Weisbrot

(コメント) ゴードン・ブラウンはG20の誕生を称えましたが、G20は新しい国際機構・管理局・会議ではない、とMark Weisbrotは注意します。それは、IMFやWTOと違い、意思決定する機関ではないし、実行する組織も手段もないのです。あえて言えば、既存の国際機関が豊かな欧米諸国に偏っているパワー・バランスを(正式にではなく)ある程度修正した場として意味があるのです。

かつてG7がプラザ合意によってドル高を是正したときほど、今では、国際合意で主要国の政策を変更し、世界経済を管理する力はどこにもないのです。

FT September 27 2009 G20 takes charge

FT September 28 2009 Return of the old ways of thinking threatens recovery By Mohamed El-Erian

FT September 28 2009 What did we really learn from the economic crisis? By Emma Bonino

(コメント) FTは、G20を軽視してはならない、と考えます。そこには政治的意志が集まっているからです。指導者たちは次の危機が起きることだけは避けたい、と考えています。幅広い改革案を示しました。世界経済は世界的な統治を必要としていることが理解されています。そして、それは主要諸国が協力することでしか達成できないのです。彼らはこのことをしっかりと記憶し、協働作業を始めました。

Emma Boninoは、G20に意味があるか? と問います。なぜなら、われわれには今より優れた金融システムを作るアイデアがないからです。それでも、救済を繰り返して、金融機関の損失を者気が負担し、他方で、銀行家たちは莫大な給与を得る、という仕組みを続けるのは支持されません。

今後も金融危機を回避できそうにないのに、われわれは危機に対処する正しい方針を持っていません。

戦争の不安、失業者の増加、消費や貿易の落ち込み、その他は、G20によって変えられません。まあだ成果は見守るしかないのです。

FT September 28 2009 Not yet out of the Bretton Woods

FT September 29 2009 America has passed on the baton By Jeffrey Sachs

YaleGlobal , 30 September 2009 Promises, Promises: Will the G-20 Haunt or Help Obama Later On? Steven R. Weisman

(コメント) Jeffrey Sachsは、G20がアメリカから指導的な役割を奪い、G20における真摯な議論が将来のグローバルな危機を回避する能力を高める枠組みである、と信頼を示します。もちろん、国連などを軽蔑する右派は、G20もカダフィの国連演説と同じように荒唐無稽であると断定するでしょう。しかし、Jeffrey Sachsは、仲間による監視の圧力がG20を意義あるものにした、と考えます。実際、指導者たちには解決しなければならない21世紀の多くの課題があり、相互の協力を願っているのです。エネルギー、金融システム、食料、水、気候変動、財政赤字、など。

さらに、G20は三つの課題を無視してはなりません。1.世界の最貧困層を成長に取り込むこと。2.グローバルな条約を創ることのできる国連が加わること。3.G20において地球規模の問題を解決する能力を蓄積すること、です。

Steven R. Weismanも、G20という仕組みがどのように政治的に機能するか、を考察します。オバマでさえ、国際会議や国際協力は国内の政治秩序と難しいバランスを取る必要に追いこみます。過去のアメリカ大統領がそれを嫌ったように、(独仏の求める)国際的な金融規制との整合性、(中国の求める)自国の対外赤字と財政赤字の抑制、です。

かつて日本政府が「外圧」を利用して国内政策を実現したように、オバマもその力学を学ばなければなりません。主要国は、制度化され、明文化された外圧の仕組みを、国内政治に組み込むのです。


NYT September 25, 2009

Two First Steps on Nuclear Weapons

By MIKHAIL GORBACHEV

(コメント) 東欧におけるミサイル防衛システム構築を放棄したこととNPTによる核廃絶とは関係がある、とゴルバチョフは主張します。オバマはロシアの脅しによって譲歩した、という右派の批判は間違いです。アメリカも、ロシアと同じように、イランは長距離ミサイルをまだ開発できない、と判断したのです。そして、ロシアの呼び掛けに応えて、オバマは東欧から中距離核を除くことだ、と。

しかし、ゴルバチョフが言うほど、核配備はなくならないでしょう。地上ではなく、海に依拠して進むからです。そして、その方が軍縮交渉は難しい。


FT September 25 2009 Bumps on the pitch queer the Chinese century By Geoff Dyer

(コメント) 金融危機にもかかわらず景気を維持できる中国は、国際政治の舞台でもますます影響力を強めています。しかし、中国の時代はまだ来ない、とGeoff Dyerは考えます

1.まだ大変貧しい。一人当たりGDPでは、イラクやコンゴと変わらない。2.2兆ドルの外貨準備は、強さではなく、弱さの証拠である。強いのは低金利で借りれるアメリカだ。3.人民元や国内の金融改革はまだ何十年もかかる。4.法の支配が不十分で、安心してビジネスできない。5.ウィグルやチベットの騒乱が示すように、国内の政情不安がある。6.共産党の支配する政治システムの改革が余りにも遅い。・・・支配エリートにアイデアが枯渇してしまう。

YaleGlobal , 25 September 2009 Challenges for China at Sixty – Part I Pranab Bardhan

The Japan Times: Friday, Sept. 25, 2009 China's two-sided 'miracle' should warn the ebullient By DAVID HOWELL

(コメント) 毛沢東が言うように、現実は矛盾に満ちている。中国経済は共産党が支配するけれど、収奪的な資本主義システムを駆使して、目覚ましい成長を実現した。実際、富を蓄えた起業家の多くが共産党幹部の子弟である。労働者たちは権力者の気まぐれに呻吟し、貧困にあえいでいる。共産党が解消するはずであった現実が、今も大規模に再現している。

中国経済がまだ世界GDPの8%でしかないので、世界景気を引き上げる「機関車」にはなれません。しかし、皮肉なことに、欧米諸国でグローバルな資本主義への疑念が強まる中で、中国だけは21世紀も開かれた資本主義システムが繁栄することを信じ、その救済に向かいます。

NYT September 27, 2009 The New Sputnik By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) 中国は自分自身の経済発展によって死滅しつつある、とTHOMAS L. FRIEDMANは考えます。この大不況によって、中国は工業化から環境規制と新エネルギー開発に方針を転換します。それは、呼吸するために、飲み水を得るために、汚染されない農産物や魚を食べるために、そうしなければならないからです。

中国がグリーンになれば、われわれは中国製のおもちゃではなく、中国製の電気自動車や太陽電池、エネルギー効率に優れたスフとウェアを買うようになるでしょう。それは、1957年にソ連が人類初の人工衛星を打ち上げたことで、アメリカ社会が衝撃を受けて科学技術に全力で取り組んだ、21世紀の「スプートニク・ショック」になるだろう。

中国は、我々のような旧式のエネルギー依存社会をバイパスできるかもしれません。すでに太陽発電パネルを生産する世界最大の企業が、金融危機後の市場を150億ドルと予想しています。

YaleGlobal , 28 September 2009 Challenges for China at Sixty – Part II Frank Ching

FP SEPTEMBER 28, 2009 The Party's Not Over BY JOHN LEE

(コメント) JOHN LEEは主張します。中国だけで「底辺の10億人」がいる、と。彼らはまた、中国共産党の支配する開発モデルのアウトサイダーです。共産党は、ケ小平の改革路線で豊かになった2億人強の中産階級や共産党員から強く支持されていますが、残りの10億人はいつまで支持するでしょうか?

中国は、すべての人々がもっと経済の成長過程に参加できる、民主的で透明な制度を必要としているのです。

LAT September 30, 2009 What in the world is China? By Nina Hachigian

(コメント) Nina Hachigianは、60年間で中国が大きく変わったことを強調します。世界から孤立していた中国が、今ではIMFやWTOのような国際機関に加盟し、国連の平和維持活動にも協力しています。その影響力は強まって、新しいアメリカのようにふるまっている、とアメリカ政府のスタッフが言ったそうです。

中国はその力を使って何をするのか? 国際基準を高め、世界の公共財を供給する責任を、その負担も含めて、引き受けるのか? 世界のゼロ・サム・ゲームの側面では、中国が利益を見出さないことに協力しません。環境や人権について、中国は利益を見出すでしょうか? 

The Guardian, Wednesday 30 September 2009 China's 30 missing years Isabel Hilton

FT September 30 2009 China’s sixty years of living dangerously By Jonathan Spence

FT September 30 2009 Optimism endures through China’s upheavals By David Pilling

(コメント) David Pillingは、チャン・イーモウ監督の映画『生きる』を紹介しながら、中国の発展の歴史を振り返ります。激しい社会革命と政治路線の転換(大躍進、文化大革命)、それに振り回された農民たちが、今では生活を豊かにする機会を争っています。

FT September 30 2009 The party organizer By Richard McGregor

FEER October 1, 2009 The Next Chinese Revolution by Daniel Lynch

(コメント) Organization Department(中国共産党の中央組織部)は、巨大な権限を持った権力の中枢です。重要な政府組織、あるいは、民間部門にまで、その人事権が支配を組織し固めています。「それは、アメリカで言えば、その州知事と代理を任命し、主要都市の市長を任命し、連邦規制当局の責任者、また、GE、エクソン・モービル、ウォルマートなど、トップ50社のCEO、最高裁の判事、ニューヨークタイムズ、ウォールストリートジャーナル、ワシントンポストの編集長、テレビ局やケーブル放送局のトップ、イェール大学、ハーヴァード大学など、重要大学の学長、ブルッキングズ研究所やヘリテージ財団など、シンクタンクの所長、を決める。」

中央組織部が、激しい政治闘争や権力者の腐敗、汚職に関わる可能性は高いが、その情報はますます高度に秘匿される傾向があります。国民に対しては閉ざされ、任命について何の説明もありません。

Daniel Lynchは、中国経済の現状をこう考えます。「もしアメリカで、輸出の減少によりGDP成長率が4%から2%に下がったから、連邦政府は2兆ドルの財政刺激策を実施し、連銀は通貨供給量を25%増やす、と言ったらどう思うか?」 ・・・そんなことはあり得ない! アメリカなら。しかし、中国は実行しています。5860億ドルの政府支出はGDPの13%に相当します。

それは、世界経済の救済としてではなく、中国共産党が建国60周年を祝うために必要な回復策であったからです。「中国の興隆」という政治的バブルである、とDaniel Lynchは書いています。中国人の楽観論では、2020年代の末に、政治・経済・文化の面で、中国の国力はアメリカを超越するのです。もしこの政治的バブルが破裂したら、高学歴でナショナリズムに敏感な若年層が不満を強め、権威主義的な国家にとって危険な政治問題になるでしょう。

銀行融資は急激に増大しているが、それを利用できるエリートたちは住宅市場のバブルで富を増やしているだけで、貧困層は飲み水や食べることにも不自由しています。都市の出稼ぎ労働者が2000万人から4000万人も昨年の冬以降に失業しています。それゆえ消費は冷え込み、物価は下がっているのです。欧米向けの輸出が回復するまで、中国政府はこのようにして待ち続けるのでしょうか?

中国の成長率は低下するでしょう。しかし、それが正常であると人々が受け入れるでしょうか? もし増幅されてきた人々の期待が挫かれ、その不満を政治システムとして受け止めるために自由化や民主化を(エリートたちが今はまだ想像もしないほど)進めるのでなければ、政治不安はどこに向かうかわかりません。

China Daily 2009-09-30 China's magic to break those doom spells By Tian Ye

WSJ SEPTEMBER 30, 2009 Communist China at 60

(コメント) Tian Yeは考えます。これまで、国際関係、食糧、政治システム、世界市場参加、などについて、中国の崩壊を予言する多くの者がいたけれど、すべて間違っていた。むしろ世界経済が崩壊するなかで、中国の成長は維持された。今こそ、政治経済社会の中国的発展様式を定義する時だ、と。

しかしWSJは、187000人もパレードする共産党の建国行事を疑います。偉大なプロレタリア人民は行事に参加できない、と。・・・「共産党は孤立した姿で行進する。それは強くはあるが、自信を失い、統治する人民から切り離されている。」

国有企業による経済支配は、景気悪化を緩和するために銀行を政府のATM(現金自動支払機)として利用するために、金融改革をストップしてしまった、と。

Asia Times Online, Oct 2, 2009 China's eye on African agriculture By Carl Rubinstein

CSM October 01, 2009 On its 60th anniversary, China is still crushing freedom By Joanne Leedom-Ackerman

(コメント) 最近の新しい動きは、中国によるアフリカ投資です。資源を求めて、食糧を求めて、アフリカに投資を増やしています。

他方、人権を無視して逮捕・拘留されている人びとが、国際的な影響力を得た建国60周年にとっての大きな汚点となっています。劉暁波Liu Xiaoboの釈放を求める運動が紹介されています。

The Guardian, Thursday 1 October 2009 China at 60: Nostalgia and progress Fu Ying

SPIEGEL ONLINE 10/01/2009 Marching in Lockstep into the Future: China Celebrates 60th Anniversary of Communist Rule By Andreas Lorenz in Beijing

WSJ SEPTEMBER 30, 2009 Sixty Years of Chinese Communism By GORDON G. CHANG

(コメント) こうした軍事パレードに感心するな、とGORDON G. CHANGは警告します。大衆動員とマス・ゲームなら北朝鮮の方がうまくできる。記念行事は共産党支配体制の有効性も、信頼性も、活力も、示すものではない。

IHT October 1, 2009 Eight Ideas Behind China's Success By ZHANG WEI-WEI

(コメント) 中国の興隆を支えた8つのアイデアを整理します。

1.事実を重視。2.人民の暮らしを改善。3.全体を重視。4.政府の積極的評価。5.民主化よりもガバナンスの改善。6.高い能力に対する儒教的な伝統。7.学習。8.調和。・・・中国はこれからも西側に学ぶだろう。そして貧困を解消し、文明の衝突を回避する。


LAT September 25, 2009

Hard truths about Uzbek cotton

By Tom Harkin

(コメント) ウズベキスタンの独裁体制が、児童労働によって綿花栽培を拡大し、利益を上げている、と批判します。綿花を積む日雇いの子供たち(615才)が約200万人もいる、と。


BBC 2009/09/26

EU treaty stirs Irish grassroots

By Cathy Grieve

FT September 27 2009

Yes please, Ireland

FT September 29 2009

Irish vote shows Europe’s lack of legitimacy

Larry Siedentop

The Japan Times: Wednesday, Sept. 30, 2009

Irish voters weigh the Lisbon Treaty again

By JOHN O'BRENNAN

The Times, October 1, 2009

Forget the Lisbon treaty. Europe’s on the right path

Bill Emmott

FT October 1 2009

Europe loses its Lisbon hiding place

By Philip Stephens

(コメント) 27加盟国がEUとして統一した政治的意志を示せるか? そのための制度改革が問われています。EUを、より効果的に、より透明に、より民主的にする、とFTは指摘します。もしアイルランドの300万人がこれを再び拒めば、リスボン条約の批准はこのまま終わるでしょう。そしてEUは政治的な混乱に向かいます。

フランスとオランダでEU憲章が拒否され、EUの理想主義は後退し、各国でナショナリズムが強まっている、と懸念されました。しかしアイルランド国民は、金曜日の投票において、リスボン条約を予想以上の大差で承認しました。バブルと不況、失業の責任を政府に求めるけれど、ユーロやEUは必要だと考えたのです。

国民国家や議会から、どこまで、権力はEUに移譲されるのか? 何が主権や民主主義の基礎となるべきか? 市場や通貨が統一され、情報が共有される中で、どこまで市民は国家によって権利を行使し、保障されるべきか? それでも人びとは、不安になれば、国民国家への帰属や民族のアイデンティティーに頼ります。

もしそうであれば、ナショナリズムが内向きの、権威主義的なものに代わることを防ぎ、オープンな、リベラルなナショナリズムとしてEU統合の基礎に加えるために、新しい制度改革(の正当化)が必要だ、という政治的転換が起きつつあるのでしょう。

アイルランドとドイツの投票結果は、イギリスの選挙にも影響し、保守党の勝利した後、イギリス政府の選択を制約するという意味で重要だ、とBill Emmottは主張します。ヨーロッパ憲章にもリスボン条約にも、Bill Emmottは反対しました。しかし、これ以上、リスボン条約の論争に関わることは政治的な時間の浪費であり、アイルランドの承認によってEU統合を進めるべきだ、と考えます。

EUは、結局、かつてイギリスが主張したような、市場統合の重視、政府間協議の重視、に向かっています。フランスのサルコジがそうであり、ドイツの選挙でメルケルが新しい連立政権を組めば、一層、サッチャー型の自由市場を改革のエンジンにするでしょう。だから、イギリス保守党もEUと敵対する姿勢を誇示するのではなく、協力することで政治目標を実現するべきです。

Philip Stephensも、リスボン条約が支持されることを願います。EUが国際的な役割を果たすためには、制度改革が必要です。ヨーロッパ大統領を決めてアメリカやロシアと交渉し、ヨーロッパ議会の役割を高め、多数決原理を使って、迅速な決定メカニズムを取り入れるでしょう。それはヨーロッパ合衆国を目指した初期の理想と似ていませんが、ヨーロッパの政治的意志を形成する助けになるでしょう。少なくともこれで、重要な問題を先延ばしにする口実がなくなるのです。


The Guardian, Sunday 27 September 2009 Does Tehran have a Plan C? Richard Dalton

NYT September 28, 2009 The U.S.-Iranian Triangle By ROGER COHEN

FT September 28 2009 Iran tests the world’s collective will By Gideon Rachman

WP Tuesday, September 29, 2009 A Big Card To Play in Iran By Anne Applebaum

NYT September 29, 2009 How to Press the Advantage With Iran By FLYNT LEVERETT and HILLARY MANN LEVERETT

SPIEGEL ONLINE 09/30/2009 Iran Nuclear Conflict: Tehran Unwilling to Compromise Despite American Overtures By Dieter Bednarz and Erich Follath

(コメント) イラン政府は国際交渉において情報を提供しなかった秘密の核処理工場を持っている、とわかりました。右派は予言したとおりだと喜び、対話を目指しているオバマ政権にとっては打撃です。

WP Wednesday, September 30, 2009 Forget the Nukes By Robert Kagan

WP Wednesday, September 30, 2009 A Human Rights Lever for Iran By Andrew Albertson and Ali G. Scotten

FT September 30 2009 Time for diplomacy to end the stand-off with Iran By John Kerry

LAT October 1, 2009 The power, and threat, of Iran By Alastair Crooke

SPIEGEL ONLINE 10/01/2009 The World from Berlin: 'The West Has No Good Options with Iran'

IHT October 2, 2009 Iran Again: Is Everyone Bluffing? By IMMANUEL WALLERSTEIN

(コメント) イランの指導者は国民の安全に関心がない。アメリカ政府はイラン指導部が交代することを願っています。もしイランが民主化されたら、核兵器の廃止に応じるでしょう。

いや、もし民主国家なら、イランは核を保有できたでしょうか?

IMMANUEL WALLERSTEINは、イランが核保有国になりたいと考えるのは、当然であり、避けられないことであり、地政学的な破滅でもない、と考えます。なぜならイランは、インド、パキスタン、イスラエルが核を保有する地域で、守られていないからです。「国際社会のルールを破った」とイランを非難するのは、どの「国際社会」なのか?

アメリカもイランも、互いの国内政治問題に苦しむ結果として、新しい核処理施設を問題にしたに過ぎません。ロシアも中国も、アメリカを刺激しないように、制裁に反対しつつも協力する姿勢を示すだけです。オバマはイランを軍事攻撃するでしょうか? アフガニスタンで国内の支持を失っているのに、それどころではないでしょう。


The Guardian, Sunday 27 September 2009

Misunderstanding modern war

Stanley Kober

WP Sunday, September 27, 2009

Let's Beat the Extremists Like We Beat the Soviets

By Andrew J. Bacevich

LAT September 27, 2009

Obama's choice in Afghanistan

Doyle McManus

SPIEGEL ONLINE 09/28/2009

US Foreign Policy Expert Richard Haass on Afghanistan: 'This Is No Longer a War of Necessity'

(コメント) アフガニスタン戦争をアメリカはどのように戦うべきでしょうか? どれほど武器で優越していても、どれほど民主主義の理想が優れていても、武器を持って侵入する外国人たちを歓迎する住民はいないでしょう。ブッシュの勝利宣言や、ナポレオンのモスクワ占領を考察しながら、ナショナリズムと抵抗を軽視しないように、Stanley Koberは訴えます。

世界中でアメリカがゲリラ戦を引き受けるのではなく、過激派を封じ込める「新しい冷戦」を組織するべきだ、とAndrew J. Bacevichは考えます。

他方、Doyle McManusは異なった視点で考えます。アメリカはアフガニスタンで、最小限のゲリラ戦を行うべきか、それとも最大限の支援をアフガニスタン政府とその経済・社会の再建に与えるべきか? 大統領の顧問やペンタゴンの意見は分裂しています。しかし、撤退だけは誰も支持しません。もしアフガニスタン政府がアフガニスタン人民を代表しているなら? ゲリラに勝利するには、国民に支持された政府が必要です。

Richard Haassがインタビューに応えています。


BBC 2009/09/28

Can Germany reform its economy?

By Tim Weber

The Guardian, Monday 28 September 2009

Angela Merkel, the new Maggie Thatcher

Alan Posener

The Guardian, Tuesday 29 September 2009

Germany's political centre is empty

Claus Offe

(コメント) ドイツ経済の改革について、さまざまなことが議論されます。しかし、メルケルが勝利すれば、大連立が解消され、メルケルはサッチャーになれるのです。

Claus Offeは、この選挙によって、メルケルの新しい「ブルジョア連立政権」が支持された、とは考えません。選挙結果は、社会民主党とグリーンが敗北し、キリスト教民主同盟と自民党、左派政党が勝利しました。政治的な両極分解が進んだ、と言われます。

しかし、選挙は争点が見失われていました。金融危機のコストをどうするのか? 原子力発電をどうするのか? アフガニスタンやEUをどうするのか? 移民政策や移民の社会統合をどうするのか? すべては議論されないままでした。有権者の関心は低かったのです。

社会民主党が再生するには、左派政党を含むだけでなく、グリーンも統一するような、新しい政治的アイデンティティーを確立しなければなりません。市場自由主義の右派は、ますます労働市場の「弾力化」を進め、社会制度を解体するでしょう。他方、左派はそれらを強化することで労働者が「弾力的に」行動することを助けるのです。

もし選挙の結果でドイツが優れているとしたら、他のヨーロッパ諸国のような、排外主義的右派が支持されていないことです。

SPIEGEL ONLINE 09/29/2009

The World From Berlin: 'Merkel Must Now Show Leadership -- By Doing Nothing'

NYT September 29, 2009

Victory for Angela Merkel

The Guardian, Wednesday 30 September 2009

Europe must decide if it wants to be more than Greater Switzerland

Timothy Garton Ash

(コメント) ドイツが安定した政権を確立したとすれば、その重要な課題は外交政策、国際関係に求められるでしょう。アイルランドの投票とともに、Garton AshはEUが、単にスイスの大陸版ではない、国際的な役割に導くことをメルケルに期待していません。・・・しかし、それでいいのか? と問います。

アメリカや中国、インドから見れば、ヨーロッパは素敵な観光地であり、政治経済は退屈で、国際政治における役割を失っています。それはドイツが注目されるたびにヨーロッパが国際政治の中心であった時代に比べて、平和を実現し、繁栄を分かち合った、という歴史的な成果を示しています。再統一してもドイツは、退屈で、国際政治の焦点とならない道を選びました。

Garton Ashは、ドイツの社会民主主義が終わった、とは考えません。ヨーロッパ各国は十分に社会民主主義を実現しています。もしイギリスが次の選挙で保守党のキャメロンに政権を取らせるとすれば、それはブレアがサッチャー主義を引き継いだように、キャメロンがブレア主義を引き継いだからです。ヨーロッパ規模で政治の中道化が進み、成長、何よりも雇用、が重要なのです。

ヨーロッパ人は21世紀に何を望むのか? ・・・a Greater Switzerland? それぞれの地域政府(スイスのカントン・郡)が、安全保障、繁栄、自由、社会保障、を市民・シチズンに提供し、他方、非市民・デニズン(移民労働者)にはいくらか劣ったものを提供する。それが世界で最も住みよいスイスの街なのです。そして、ヨーロッパ全土でも? 彼らは、それ以外の難しい選択を示そうとしない。

もし長期的に考えるなら、ヨーロッパ版スイスを願うことは、それが成立する条件を失うことに無関心であることを意味する、とGarton Ashは批判します。ヨーロッパ外交を示すことで、諸大国の間でも、その条件を実現し続けなければなりません。

同じ理由で、Garton Ashアイルランドのカントンがリスボン条約を支持することを願います。

IHT October 1, 2009

Germany Unbound

By ROGER COHEN

(コメント) 解き放たれたドイツ! ヨーロピアン・ビヒモス。

選挙後のドイツを診断します。よりナショナリスティックな政治表現が求められます。ドイツの政治は、アメリカとの関係改善よりも、ロシアとの関係拡大が中心です。冷戦に勝利し、ソ連が崩壊したのも、アメリカの軍事力ではなく、ドイツのデタントが成功したからです。ロシアはドイツの最大の貿易相手国であり、地理的にも歴史的にも深い関係があり、天然ガスを大量に供給しています。

ドイツ人はナチスがロシア人に与えた犠牲を償うという気持ちがあります。ソ連が崩壊したとき、アメリカはロシアへの支援に失敗しました。それはドイツ人にとって、ワイマール共和国の崩壊を連想させます。ドイツ人はオバマが指導するアフガニスタン戦争に加わることを望みません。近代ドイツの政治的遺産である社会民主党が、東ドイツの政治的遺産である左派政党とともに、歴史のゴミ箱に捨てられることを願うでしょう・・・?


Sept. 28 (Bloomberg)

Living, Dying by Currencies Is No Way to Succeed

William Pesek

WP Monday, September 28, 2009

Japan's 'Change' Agenda

By Fred Hiatt

(コメント) 日本の新政権が最初に向き合う経済問題は、どうやら円高のようです。藤井財務大臣の介入否定論が、かつてのルービン財務長官による「強いドル」擁護論ほど、明確な意図を持っているのか、むしろプラザ合意の前までレーガン政権が採っていた介入否定論を想起します。

William Pesekは、それが短期的には資本企業を苦しめるが、長期的には、日本にもアジアにも望ましい、と応援します。日本と中国が為替レートの増価を容認すれば、アジア諸国も増価を抑制する必要がなくなるでしょう。・・・問題は藤井が、国内輸出企業(そして彼らが選挙区で重要な支持基盤である民主党議員)の不満に耐えられるか、である。

鳩山政権は、過去の自民党政権と違って、消費者の購買力を直截に刺激したい、と主張しています。円高容認もその説明を一貫して強めるときです。JALの整理ともかかわらせて、日本が新しいアジアの発展モデルを示すかもしれない、とPesekは期待します。

Fred Hiattは、保守的なWPの読者に、鳩山政権のより正確なイメージを与えます。

NYT September 29, 2009

Rising Yen Leads Japan Into a Tricky Balancing Act

By BETTINA WASSENER

Sept. 30 (Bloomberg)

My Hot Underwear Is About to Take Paris by Storm

William Pesek

NYT October 2, 2009

Chinese Economic Juggernaut Is Gaining on Japan

By HIROKO TABUCHI

(コメント) 1ドル=88.23円という円高が株価を下げ続ければ、新政権の支持率も下がるかもしれません。円高の理由はいろいろあります。選挙結果や短期金利の差、そして、輸出依存から内需型へ、という政策転換。将来、日本が円高を恐れなくなるとしたら、アメリカ市場よりも、東アジア(特に中国)との市場統合が進むからでしょう。

中国製の安価さと日本製の高品質を組み合わせたら、世界市場でも無敵ではないか? と思うのは、それを実現する経営技術を必要としますが、ユニクロによって実現されつつあるようです。日本の不況にもかかわらず、円高や人口減少を恐れるより、むしろ世界に進出して成長を続けるユニクロにPesekは注目します。

「日本がどこまで下落するのか想像もできない」というエコノミストの言葉をNYTは伝えています。「1980年代後半、日本の一人当たりGDPはアメリカを抜いたと示唆され。しかし、それは2007年も34300ドルにとどまり、アメリカよりも25%少なく、世界第19位である。」

世界の企業番付からも日本企業は消えました。中国とアメリカの企業に圧倒され、トヨタが22位で最高。100位以内に入った他の企業は、わずか5社です。資産家の番付でも、ユニクロの柳井が76位で、メキシコ、インド、チェコの資産家たちに負けます。貿易黒字でも外貨準備でも、中国に負けています。

中国を安物の靴を輸出する国だ、と思っている日本人が、まだ多くいることこそショックなのです。


WP Monday, September 28, 2009 Costly Carbon Cuts By Bjorn Lomborg

NYT September 28, 2009 Cassandras of Climate By PAUL KRUGMAN

The Guardian, Tuesday 29 September 2009 It's the climate, stupid John Prescott

The Guardian, Tuesday 29 September 2009 It's too late to seal a global climate deal. But we need action, not Kyoto II Jeffrey Sachs

The Guardian, Thursday 1 October 2009 The global north-south carbon divide Jayati Ghosh

(コメント) コペンハーゲンの気候変動に関する国際会議が迫っています。恐ろしい事実が明らかになっても、それが余りにも好ましくないので、人びとの関心が向かいません。これまでの常識を変えることも難しいのです。そのようなテーマを、次の選挙が気になる政治家に議論させることは不可能です。

Jeffrey Sachsは、気候変動の予防策が(南の成長を妨げて)南北の格差を拡大することはないし、協力することで双方とも利益を得られる、と主張します。技術移転や金融的支援を促す枠組みを合意し、北の諸国が支援するべきだ、と。


FP Mon, 09/28/2009

Does the dollar have any enemies greater than its "defenders"?

David Rothkopf

FT September 29 2009

Why narrow banking alone is not the finance solution

By Martin Wolf

FT September 29 2009

How to tame the animal spirits

By John Plender

IHT October 1, 2009

I.M.F. Calls for Overhaul of Financial System

By CARTER DOUGHERTY

(コメント) ドルが衰退しても、銀行を分割しても、国際金融システムが改善された、とは言えないようです。Martin Wolfはナロウ・バンク“narrow banking”提案を検討します。政府介入や金融規制は次の危機をもたらすでしょう。John Kayが支持したのが、銀行を「公共機関」と「カジノ」とに分けることです。ナロウ・バンクは、完全に流動的な資産(おそらく国債)だけを保有します。しかし、その場合でも銀行が信用創造し、また融資を社会的に配分するのであれば、リスクは残るでしょう。また、他の金融機関にも融資します。

銀行家のアニマル・スピリッツを抑制するべきでしょうか? John Plenderは、金融危機後、注目されている改革案を示しています。

FT October 1 2009

More capital will not stop the next crisis

By Raghuram Rajan

(コメント) 資本はコストを意味するから、金融規制によって多くの資本を準備させておくことは、銀行の側に回避の動機を呼び起こします。むしろ、条件付きの資本を調達させる方が効果的である、とRaghuram Rajanは提案します。

資本は特殊な債券を発行して資本を調達します。この債券は、二つの条件によって、自動的に株式に転換されます。すなわち、1.銀行の損失など、客観的な指標で金融危機が近付いたと判断される場合。2.銀行の資本額が一定の水準よりも下がる場合。こうして、危機の際に救済されて納税者の負担で生き延びる銀行が減るのです。

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The Economist September 19th 2009

The revival of Pittsburgh: Lessons for the G20

Chile’s presidential election: The strange chill in Chile

Charlemagne: In knots over headscarves

Schumpeter: Taking flight

(コメント) 製鉄で栄えた旧工業都市、ピッツバーグが、20年あまりで復活した話はとても興味深いです。現在、最も多くの雇用をもたらしているのは医療センターです。80億ドルの事業規模で、5万人を雇用します。医療と教育が主要な成長産業です。1980年代の初め、雇用は毎年5万人も流出したそうです。衰退した工場の跡地はウォーター・フロントの公園が整備され、35の大学が誘致され、コミュニティーも産業界も再生に努めました。ピッツバーグ・シンフォニー・オーケストラやオペラのあるハイテク技術開発センターとして、その住環境の魅力が多くの専門家・技術者を集めます。G20の指導者たちが集まって、その経験から学ぶことだ、と。

他にも、チリの成長と貧困・不平等の解消に貢献した、女性大統領の話。ベルギー、アントワープの「多文化主義」を採用した優れた学校が、伝統的なイスラム教徒の生徒たちによって紛争を生じ、スカーフ禁止に至る経過を伝える記事。

シュンペーター、という新しい論説蘭が設けられて、資本主義による革新の素晴らしさと危険性を説得的に描く内容も、大いに感心します。「エリザベス女王は多くの絹のストッキングを持っていた。」「資本家は、エリザベス女王がさらに多くのストッキングを持つことではなく、工場の女工たちがますますわずかな労力でストッキングを買えるようにすることに関心を持つ。」 資本主義は大衆の生活水準が向上することによって成功する。ただし彼は、「ビジネスに成功した者が個人の王国を追求し、ライヴァルを倒すためには何でもする、ということもよく知っていた。」


The Economist September 19th 2009

Economic vandalism

The International Monetary Fund: Back from the dead

The IMF assessed: A good war

Tobin Tax: The wrong tool for the job

Japan’s new government: Poodle or Pekinese?

(コメント) オバマの保護主義を批判し、IMFの復活を歓迎し、トービン税を批判します。鳩山政権の外交・安全保障に関しては、全く信用していないようです。